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L2 気体分子運動論 熱力学は、系と外界との間のエネル ギーのやりとりを記述する経験則で ある。 準静過程では、熱力学第一法則に まとめられる。 dU=TdS-pdV 復習

dU=TdS-pdV · 2020. 12. 10. · P(v2)d3v = (m 2πkT)3/2exp[− mv2 2 kT]d3v 速度が にある確率分布はマクスウェル 分布; [v,v+dv] で与えられる。 mv2 2 が自由粒子のエネルギー

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L2 気体分子運動論

熱力学は、系と外界との間のエネルギーのやりとりを記述する経験則である。  準静過程では、熱力学第一法則にまとめられる。

         dU=TdS-pdV

復習

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分子を仮定してミクロな理論からマクロな量を求め 1.1 ベルヌーイの公式

熱力学+α がわかる

α:理想気体の場合

          (1700−1782)

内部エネルギー U=3NkBT/2 kB=ボルツマン定数=1.38x10−23J/K

ダニエル・ベルヌーイ

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バーは平均を意味する

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ベルヌーイ家

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 内部エネルギー U=3NkBT/2

                  単原子分子1こあたりの運動の自由度は、

x,y,z の3方向、すなわちNこの分子に対して、3N自由度。等分配則   1自由度あたりのエネルギー=kBT/2

 

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常温300Kに対して

kBT=4.14x10-21 J=1/40 eV

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エントロピーを計算しよう気体の内部エネルギーについてベルヌイの式

U =3NkT

2と ボイル・シャルルの法則 pV = NkT を用いて

エントロピー  に対する表式を求めよ。

ヒント: 第一法則     

を積分せよ

S(U, V )

dU = TdS − pdV

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dU = TdS − pdV に  を代入するとp =NkT

V

dU = TdS − NkTdVV

= T[dS − NkdVV

]

これに、ベルヌイの式  を代入して整理するとT =2

3NkU

3Nk2

dUU

= dS − NkdVV

積分して

S =3Nk

2logU + NklogV + const .

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第1法則を偏微分で書いた式

(∂S∂U

)V =1T

(∂S∂V

)U =pT

S =3Nk

2logU + NklogV + const . に

を代入すると

U =3NkT

2pV = NkT

を再現する。

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第3回目のミクロカノニカル統計においては、エントロピー S(U,V) の表式をボルツマン公式により計算して、ベルヌイの公式

を導く

U =3NkT

2

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定積比熱と定圧比熱

dU=TdS-pdV=d’Q-pdV=d’Q-d(pV)+Vdp

体積Vを一定とすると

d’Q/dT=dU/dT=Cv

圧力を一定とすると Cp=d’Q/dT=dU/dT+d(pV)/dT=dU/dT+NkB

=Cv+NkB

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定積比熱

Cv=dU/dT=3NkB/2

定圧比熱

Cp=dU/dT+NkB=5NkB/2

断熱指数(比熱比)

γ:=Cp/Cv=5/3

γ =Cp

Cv=

53

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25

CP CV

γ=CP/CVJK-1mol-1 JK-1mol-1

JK-1kg-1 JK-1kg-1

1 He 4 4.002620.78 5/2R 12.47 3/2R

1.665192 3116

2 O2 32 31.88929.33 7/2R 21.01 5/2R

1.40919.8 658.8

3

CO2 44 44.01037.14 28.83

1.29843.9 655.1

NH3 17 17.30135.48 27.17

1.312051 1570

CH4 16 16.04335.74 27.43

1.302228 1710

- CP - CV = R

https://ja.wikipedia.org/w/index.php?title= &oldid=64411726

2017 6 11 ( ) 07:57 UTC

-

単原子分子について はよく合っているが

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チャットで ご質問をどうぞ

10分間休憩

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ジェームズ クラーク マクスウェル(1831−1879)

統計学を物理に 導入した

 ファラデーとともに電磁気学の祖

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  確率論の歴史おそらく、賭博から始まっただろう。 サイコロの原型は動物の骨だという。  

パスカル

パスカルとフェルマーの往復書簡  賭博を途中でやめた場合の賞金の 分配の仕方を論じた。  数学的な確率論は、大数の法則の ヤコブ・ベルヌイからだという。 その後、ガウスによる中心 極限定理。

 保険業への応用: 1812年 ナポレオン戦争のころ   “Scottish Widows”

ガウスヤコブ・ベルヌイ

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2.2 マックスウェル分布1コの分子の速度が [v,v+dv]の区間にある確率を としよう。3次元の場合

に対して、積になる 

P(v2)dv

[vx, vx + dvx][vy, vy + dvy][vz, vz + dvz]

P(v2x )dvxP(v2

y )dvyP(v2z )dvz

空間の等方性から、これは

に等しい。

すなわち, )

P(v2x + v2

y + v2z )dvxdvydvz

P(v2x + v2

y + v2z ) = P(v2

x )P(v2y )P(v2

z

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マックスウェル分布 P(v2) v2

V

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1

正規分布

6

正規分布の密度曲線下の面積

μ μ+σ μ+2σ μ+3σμ-3σ μ-2σ μ-σ

青で塗りつぶした面積は, 全体面積の68.3%青で塗りつぶした面積は, 全体面積の68.3%

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Homework #2

常温300Kの空気分子の平均的速度

<mv2

2> =

3kT2

v ≈3kTm

kN = R = 8.31,mN = 29X6X1023X1.64X10−24X10−3

≈ 500m/s

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まとめ

P(v2)d3v = (m

2πkT)3/2exp[−

mv2

2

kT]d3v

速度が にある確率分布はマクスウェル

分布;[v, v + dv]

で与えられる。mv2

2が自由粒子のエネルギー E であることを見れば、

指数関数は e− EkT (ボルツマン因子)である。

次章では、ボルツマン因子を導出する。

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内部エネルギーの計算U = N <

mv2

2>

マクスウェル分布を用いて平均<…>を計算する。

∫ P(v2)mv2

2d3v = ∫ (

m2πkT

)3/2exp[−mv2

2

kT]mv2

2d3v

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∫ (m

2πkT)3/2exp[−

mv2

2

kT]mv2

2d3v = (

m2πkT

)3/2(−∂∂β

)∫ exp[−βmv2

2]d3v

ここに 右辺のガウス積分を実行してβ =1

kT ∫ exp[−βmv2

2]d3v = (

m2π

β)−3/2

したがって

<mv2

2> =

32β

=32

kT

U =3NkT

2を再現する

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