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© 2008 Microchip Technology Inc. DS01078A_JP - ページ 1 AN1078 はじめに 環境意識の高まりにより、エアコンや洗濯機などの 家庭用電化製品の省エネ性能を向上させる高度な モーター制御手法に対するニーズは今後も高まる 一方であると予想されます。これまで、高度なモー ター制御ソリューションは独自のソースを利用す ることでのみ実現されていました。しかし新世代の デジタル シグナル コントローラ (DSC) の登場によ り、高度なモーター制御アルゴリズムを低コストで 実装することが可能となりました。 例えばエアコンの場合、モーターの速度変化に対す る応答性を高める必要があります。省エネ性能と静 音性に優れた製品を作り出すには、高度なモーター 制御アルゴリズムが必要です。こうした環境面の要 求を満たす有力な手法として、FOC (Field Oriented Control) が注目されています。 本アプリケーション ノートでは、マイクロチップ 社の dsPIC ® DSC ファミリを使用した永久磁石同期 モーター (PMSM) のためのセンサレス FOC アルゴ リズムの実装について説明します。 FOC アルゴリズムを使用する理由 従来の BLDC モーター制御手法では、ステータを 6 ステップ プロセスで駆動するため、出力トルクに 発振が生じます。6 ステップ制御では、一対の巻線 を励磁してロータが次の位置に達すると、モーター が次のステップに整流されます。ロータ位置はホー センサで判定して、モーターを電子的に整流し ます。より高度なセンサレス アルゴリズムでは、ス テータ巻線に発生する逆起電力を使用してロータ 位置を判定します。 6 ステップ制御 ( 台形波制御ともいう ) の動的な応 答は、洗濯機には適しません。これは、負荷が 1 のウォッシュ サイクル内で動的に変化すること、お よび負荷が負荷の種類や選択したウォッシュ サイ クルによっても変化するためです。更に、フロント ロード式洗濯機の場合、負荷がドラムの上側にある ときは重力の力がモーター負荷と反対方向に働き ます。こうした動的な負荷の変化には、 FOC などの 高度なアルゴリズムでなければ対応できません。 この制御方式は電化製品のモーター制御の低コス ト化にもきわめて大きな効果があるため、本アプリ ケーション ノートでは電化製品における PMSM ベースのセンサレス FOC 制御に焦点を絞って説明 します。また、モーターを液体中で使用する場合や、 ワイヤ ハーネスの設置が困難などの理由で位置セ ンサや速度センサを設置できないアプリケーショ ンでも、センサレス FOC 方式ならそうした制約な しに使用できます。 PMSM は永久磁石を使用してい るロータによって一定のロータ磁場が生じるため、 電化製品で使用するときわめて高い効率を実現で きます。加えて、ステータの磁場は巻線の正弦波分 布によって生成されます。誘導モーターに比べ、 PMSM モーターには小型でパワフルという特長が あります。しかも、ブラシを使用しないので DC モー ターに比べ電気的ノイズが少ないのも特長です。 モーター制御にデジタル シグナル コント ローラを使用する理由 dsPIC DSC には、次に示すようなモーター制御に理 想的な周辺モジュールが内蔵されているため、洗濯 機やエアコンのコンプレッサなどの電化製品に適 しています。 パルス幅変調 (PWM) ADC (Analog-to-Digital Converter) 直交エンコーダ インターフェース (QEI) コントローラ ルーチンの実行とデジタル フィルタ の実装に dsPIC DSC を使用すると、MAC 命令と小 数演算を 1 サイクルで実行できるため、コードを最 適化できます。また、dsPIC DSC には飽和保護ハー ドウェアが用意されているため、飽和機能が必要な 処理でオーバーフローを回避できます。 モーター制御では電流センサがきわめて重要な機 能であるため、DSC には高速で柔軟な A/D 変換機 能が求められます。dsPIC DSC ADC は、入力サ ンプルを 1 Msps の速度で変換でき、入力を 4 つま で同時に処理できます。ADC には複数のトリガ プションがあり、安価な電流センサ抵抗を使用して 巻線の電流を計測できます。例えば、 PWM モジュー ルで A/D 変換をトリガできる機能を利用すると、特 定のタイミングで入力を検知する ( スイッチング ランジスタを使用してセンサ抵抗に電流を流す ) 流センサ回路を安価で実装できます。 著者 : Jorge Zambada Microchip Technology Inc. PMSM モーターのセンサレス FOC 制御 ご注意:この日本語版ドキュメントは、参考資料としてご使用の上、最新情報に つきましては、必ず英語版オリジナルをご参照いただきますようお願い します。

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AN1078PMSM モーターのセンサレス FOC 制御

ご注意:この日本語版ドキュメントは、参考資料としてご使用の上、最新情報につきましては、必ず英語版オリジナルをご参照いただきますようお願いします。

はじめに

環境意識の高まりにより、エアコンや洗濯機などの家庭用電化製品の省エネ性能を向上させる高度なモーター制御手法に対するニーズは今後も高まる一方であると予想されます。これまで、高度なモーター制御ソリューションは独自のソースを利用することでのみ実現されていました。しかし新世代のデジタル シグナル コントローラ (DSC) の登場により、高度なモーター制御アルゴリズムを低コストで実装することが可能となりました。

例えばエアコンの場合、モーターの速度変化に対する応答性を高める必要があります。省エネ性能と静音性に優れた製品を作り出すには、高度なモーター制御アルゴリズムが必要です。こうした環境面の要求を満たす有力な手法として、FOC (Field OrientedControl) が注目されています。

本アプリケーション ノートでは、マイクロチップ社の dsPIC® DSC ファミリを使用した永久磁石同期モーター (PMSM) のためのセンサレス FOC アルゴリズムの実装について説明します。

FOC アルゴリズムを使用する理由

従来の BLDC モーター制御手法では、ステータを6 ステップ プロセスで駆動するため、出力トルクに発振が生じます。6 ステップ制御では、一対の巻線を励磁してロータが次の位置に達すると、モーターが次のステップに整流されます。ロータ位置はホール センサで判定して、モーターを電子的に整流します。より高度なセンサレス アルゴリズムでは、ステータ巻線に発生する逆起電力を使用してロータ位置を判定します。

6 ステップ制御 ( 台形波制御ともいう ) の動的な応答は、洗濯機には適しません。これは、負荷が 1 回のウォッシュ サイクル内で動的に変化すること、および負荷が負荷の種類や選択したウォッシュ サイクルによっても変化するためです。更に、フロントロード式洗濯機の場合、負荷がドラムの上側にあるときは重力の力がモーター負荷と反対方向に働きます。こうした動的な負荷の変化には、FOC などの高度なアルゴリズムでなければ対応できません。

この制御方式は電化製品のモーター制御の低コスト化にもきわめて大きな効果があるため、本アプリケーション ノートでは電化製品における PMSMベースのセンサレス FOC 制御に焦点を絞って説明します。また、モーターを液体中で使用する場合や、ワイヤ ハーネスの設置が困難などの理由で位置センサや速度センサを設置できないアプリケーションでも、センサレス FOC 方式ならそうした制約なしに使用できます。PMSM は永久磁石を使用しているロータによって一定のロータ磁場が生じるため、電化製品で使用するときわめて高い効率を実現できます。加えて、ステータの磁場は巻線の正弦波分布によって生成されます。誘導モーターに比べ、PMSM モーターには小型でパワフルという特長があります。しかも、ブラシを使用しないので DC モーターに比べ電気的ノイズが少ないのも特長です。

モーター制御にデジタル シグナル コントローラを使用する理由

dsPIC DSC には、次に示すようなモーター制御に理想的な周辺モジュールが内蔵されているため、洗濯機やエアコンのコンプレッサなどの電化製品に適しています。

• パルス幅変調 (PWM)• ADC (Analog-to-Digital Converter) • 直交エンコーダ インターフェース (QEI)コントローラ ルーチンの実行とデジタル フィルタの実装に dsPIC DSC を使用すると、MAC 命令と小数演算を 1 サイクルで実行できるため、コードを適化できます。また、dsPIC DSC には飽和保護ハードウェアが用意されているため、飽和機能が必要な処理でオーバーフローを回避できます。

モーター制御では電流センサがきわめて重要な機能であるため、DSC には高速で柔軟な A/D 変換機能が求められます。dsPIC DSC の ADC は、入力サンプルを 1 Msps の速度で変換でき、入力を 4 つまで同時に処理できます。ADC には複数のトリガ オプションがあり、安価な電流センサ抵抗を使用して巻線の電流を計測できます。例えば、PWM モジュールで A/D 変換をトリガできる機能を利用すると、特定のタイミングで入力を検知する (スイッチング トランジスタを使用してセンサ抵抗に電流を流す ) 電流センサ回路を安価で実装できます。

著者 : Jorge ZambadaMicrochip Technology Inc.

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AN1078

デジタル シグナル コントローラによるモーター制御

dsPIC30F モーター制御ファミリは、次の種類を含む一般的なモーターの多くを制御できるよう、専用の設計がなされています。

• AC 誘導モーター (ACIM)• DC ブラシ モーター (BDC)• ブラシレス DC モーター (BLDC)• 永久磁石同期モーター (PMSM)dsPIC30F モーター制御ファミリに基づくアプリケーション ノートは、これまでにいくつか公開されています (「参考文献」項参照 )。これらのアプリケーション ノートは、マイクロチップ社のウェブサイト (www.microchip.com) で入手できます。

本アプリケーション ノートでは、dsPIC30F6010Aの特にモーター制御に適した周辺モジュール ( モーター制御 PWM および高速 ADC) を利用して PMSMのセンサレス FOC を実行する方法について説明します。dsPIC30F6010A の DSP エンジンは、ここで必要となる高速算術演算をサポートしています。

DMCI (Data Monitoring and Control Interface)

DMCI (Data Monitor and Control Interface) は、MPLAB® IDE への迅速で動的な統合が可能です。一定範囲内の値、オン / オフ状態、ディスクリート数値で変数を制御してアプリケーションの動作を決定するようなプロジェクトで使用します。必要に応じて、アプリケーションのフィードバックはグラフィカルにも表現できます。例えば、モーター制御やオーディオ処理アプリケーションなどがこれに該当します。

DMCI には次の特長があります。

• 9 つの制御用スライダーと 9 つの制御用 [Boolean]( チェックボックスのオン / オフ ) ( 図 1 参照 )

• 35 の制御用入力フィールド ( 図 2 参照 )• 4 つのグラフ ( 図 3 参照 )このインターフェースでは、スライダーや数値の直接入力、または [Boolean] チェックボックスなどを自由に組み合わせてプログラムのシンボル ( 変数 )を動的に割り当てることで、プロジェクトに即したナビゲーションが可能です。そして、これらのコントローラをインタラクティブに操作して、MPLABIDE 内のプログラム変数の値を変更できます。グラフは、プログラムで生成されたデータを表示するよう動的に構成できます。

アプリケーションの特長

本アプリケーション ノートの目的は、マイクロチップ社のデジタル シグナル コントローラを使用してPMSM のセンサレス FOC をソフトウェア ベースで実装する方法を解説することにあります。

この制御ソフトウェアの特長は次のとおりです。

• PMSM のベクトル制御を実装。

• 位置および速度の推定アルゴリズムにより、位置センサが不要。

• メイン モーターとしては定格 1.5 kW のエアコン用コンプレッサを想定。

• 速度範囲は 500 RPM ~ 7300 RPM。

• 制御ループの周期が 50 µsec のとき、ソフトウェアが要求する CPU への負担は約 21 MIPS (CPU 全体の約 2/3)。

• アプリケーションには 450 バイトのデータ メモリ ストレージが必要で、ユーザー インターフェースを含めると約 6 K バイトのプログラム メモリが必要。このメモリ要件を満たせば、dsPIC30F デバイス ファミリで も小型で安価なdsPIC30F2010 ( 本稿執筆時点 ) でも十分に動作します。

• オプションの診断モードを有効にすると、内部プログラム変数をオシロスコープ上でリアルタイムで観測可能。この機能により、制御ループの調整が容易です。

• 本アプリケーション ノートの内容は、dsPIC30Fおよび dsPIC33F ファミリのすべてのモーター制御デバイスに適用可能。

注 : DMCIツールの機能は変更されることがあります。上記の DMCI ツールに関する情報は、本稿執筆時のものです。

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図 1: [DYNAMIC DATA CONTROL] インターフェース

図 2: ユーザー定義データの入力フィールド

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図 3: データのグラフ表示画面

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システム概要

図 4 に示すように、モーターのシャフトには位置センサがありません。その代わりに、インバータの一部である低インダクタンスの抵抗を使用してモーターの電流を計測しています。モーター巻線を駆動するパワー段として、3 相インバータを使用しています。パワー インバータに組み込まれた電流センサおよびフォールト生成回路が、システム全体を過電流から保護します。

図5に、この3相トポロジと電流センサおよびフォールト生成回路の実装方法を示します。

インバータの左側に示した 初のトランジスタは力率補正 (PFC) 用のもので、本アプリケーションノートではカバーしていません。

本アプリケーション ノートで基準とするハードウェアは dsPICDEM™ MC1 モータ コントロール開発ボード (DM300020) であり、マイクロチップ社のウェブ サイト(www.microchip.com)で入手できます。電源モジュールには、低電圧用 ( 大 50V) と高電圧用 ( 大 400V) の 2 種類があります。本アプリケーション ノートでは、改造された高電圧電源モジュール (DM300021) を使用しています。これらのモジュールについては、付録で詳述します。

図 4: システム概要

PWM1H

PWM1L

PWM2H

PWM2L

PWM3H

PWM3L

Buffer

OE

RD11

3-PhaseInverter

RE9

AN0

AN1

FLTA

Ia

Ib

Over Current

3-PhasePMSM

Starting Torque Demand

VR1

VR2

Speed Demand

AN7

AN2

S4Start/StopRG6

RD0

RD1

RD2

RD3

LCD

DB4

DB5

DB6

DB7

EN

RS

R/W

RD13

RC3

RC1

dSPI

C30

F601

0A

Faul

t Res

et

User’s Interface

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図 5: 3 相トポロジ

PWM1H

PWM1L

PWM2H

PWM2L

PWM3H

PWM3L

115/230 VAC

PMSMMotor

Ia

Ib

< CurrentLimit

Fault

Optional Power Factor Correction

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AN1078

フィールド オリエンテッド制御 (FOC)

視点の問題

FOC ( いわゆるベクトル制御 ) の動作原理を理解する方法の 1 つは、座標参照系の変換プロセスを頭の中でイメージすることです。AC モーターの動作をステータ側から見ると、ステータには正弦波電流が入力されるように見えます。この時変信号により、回転磁束が生じます。ロータの速度は、回転磁束ベクトルの関数で決定します。静止した視点で見ると、ステータ電流と回転磁束ベクトルは AC 量のように見えます。

ここで、自分がモーターの内部に入り、回転するロータの横を、ステータ電流によって生じる回転磁束ベクトルと同じ速度で回転していると考えてみてください。この視点で定常状態のモーターを観察すると、ステータ電流は定数値のように見え、回転磁束ベクトルは静止しています。

終的に必要なのは、ステータ電流を制御して目的のロータ電流 ( 直接には計測できない ) を得ることです。ステータ電流は、座標参照系を変換すると、標準的な制御ループを使用することによりDC値のように制御できます。

ベクトル制御のまとめ

次に、間接ベクトル制御についてまとめます。

1. 3 相ステータ電流を測定します。この計測により、ia と ib の値が得られます。ia、ib、ic の間には次の関係が成り立つので、ic の値は計算で求められます。ia + ib + ic = 0

2. 3 相電流を 2 軸系に変換します。この変換により、計測値 ia および ib、そして計算値 ic の 3 つから変数 iα と iβ が得られます。iα と iβ は、ステータの視点から見ると時変直交電流値です。

3. 制御ループの 後のイテレーションで計算された変換角度を使用して、2 軸座標系をロータ磁束に合わせて回転します。この変換により、iα および iβ から変数 Id および Iq が得られます。Id と Iq は、回転座標系に変換された直交電流です。定常状態では、Id と Iq は定数となります。

4. Id と Iq、およびそれぞれのリファレンス値を使用して、偏差信号を生成します。

• Idのリファレンスがロータ磁束を制御します。

• Iq のリファレンスがモーターのトルク出力を制御します。

• 偏差信号は PI コントローラに入力されます。

• コントローラから Vd と Vq が出力され、この電圧ベクトルがモーターに送られます。

5. vα、vβ、iα、iβ を入力として、新しい変換角度を推定します。この新しい角度に基づいて、FOC アルゴリズムは次の電圧ベクトルをどこに配置するかを判断します。

6. PIコントローラから出力されるVdおよびVqの値を、新しい角度を用いて回転し、静止座標系に戻します。この計算により、次の直交電圧値vα と vβ が得られます。

7. vα と vβ の値を再び 3 相の値 va、vb、vc に変換します。この 3 相電圧値を使用して、目的の電圧ベクトルを生成するための新しい PWMデューティ サイクル値を計算します。変換、PIイテレーション、逆変換、PWM 生成を含むすべてのプロセスを図 6 に示します。

本アプリケーション ノートの次項以降で、これらの各ステップを詳述します。

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図 6: ベクトル制御のブロック図

α,β

α,β

α,β

d,q

d,q

a,b,c

PI PI

SVM3-Phase Bridge

NREF IQREF

PI

Vq

Vd

ia

ib

Motor

Speed (ω)

∑ ∑

- -

-

IDREF

Position and Speed

Estimator

Position Vα

Iq

Id

Θ

InverseParkTransform

InverseClarkeTransform

ParkTransform

ClarkeTransform

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座標変換

一連の座標変換により、トルクと磁束の時不変値は、典型的な PI 制御ループで間接的に決定および制御できます。この処理は、まず 3 相モーター電流の計測から始めます。事実上、これら 3 つの電流の瞬間的な合計は 0 になります。つまり、3 つの電流値のうち 2 つを計測するだけで、残りの 1 つを決定できます。このため電流センサは 2 つで済み、ハードウェア コストを削減できます。

dsPIC DSC では、3 相電流計測を 1 つのシャントで実装することも可能です。詳細はマイクロチップ社までお問い合わせください。

クラーク変換

初の座標変換はクラーク変換といい、ステータを基準にした 3 軸の 2 次元座標系を、リファレンスを維持したまま 2 軸の座標系に移動します ( 図 7を見るとわかるように、ia、ib、ic は独立した位相電流です )。

図 7: クラーク変換

パーク変換

ここまでの手順で、ステータ電流は軸 α-β と呼ばれる 2 軸の直交座標系で表現されています。次の段階では、これをロータ磁束に合わせて回転する別の 2軸座標系に変換します。この変換には、図 8 に示すパーク変換を使用します。この 2 軸回転座標系を、d-q 軸といいます。Θ は、ロータ角度を表します。

図 8: パーク変換

PI 制御

相互に影響する 3 つの変数を個別に制御するために、3 つの PI ループを使用します。ロータ速度、ロータ磁束、ロータ トルクがそれぞれ別個の PI モジュールで制御されます。この実装方法は従来から使用されているもので、図 9 に示すように(Kc*Excess) 項を使用して、積分のワインドアップを制限します。Excess は、無制限出力 (U) から制限出力 (Out) を減じて求めます。Kc 項と Excess を乗算し、積分の累積 (Sum) を制限します。

図 9: PI 制御

PID コントローラの基礎知識

PID (Proportional Integral Derivative) コントローラの詳細については、このアプリケーション ノートの目的からはずれるため省略します。ただし、ここでは PID の動作の基礎について簡単に説明します。

PIDコントローラは閉制御ループにおける偏差信号に応答して、被制御量を調整することで目的のシステム応答を達成することを意図しています。制御対象となるパラメータは、速度、トルク、磁束などの測定可能なシステム量です。PID コントローラの利点は、1 つまたは複数のゲイン値を調整してシステム応答の変化を観察することによって、コントローラを経験論的に調整できることにあります。

デジタル PID コントローラは、周期的なサンプリング間隔で実行されます。システムを適切に制御するには、コントローラの実行頻度が十分であることが前提条件となります。制御対象のパラメータの実際の測定値から目標値を差し引いたものが偏差信号となります。偏差の符号は、制御入力に必要な変化の方向を示します。

コントローラの P ( 比例 ) 項は偏差信号を P ゲインで乗算したものであり、これによって偏差の大きさの関数としての制御応答がPIDコントローラから出力されます。偏差信号が大きくなるにつれてコントローラの P 項も大きくなり、大きな補正量が出力されます。

α

βClarke

ab

(c)

ia + ib + ic = 0iα = iaiβ = (ia +2ib)/√ 3

βb

a,α

c

iβ is

IqIdPark

iαiβθ

Id = iα cosθ + iβ sinθIq = -iα sinθ + iβ cosθ

βq

αiα

is θIqId

d

Kp* Err + Ki * ∫Err * dtInRef

FB (Feedback)

Out

-

Err = InRef - FB U = Sum + Kp*Err If (U > Outmax) Out = Outmax else if (U < Outmin) Out = Outmin else Out = U Excess = U - Out Sum = Sum + (Ki*Err)-(Kc*Excess)

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AN1078

時間とともに、P 項の効果によって全体的な偏差が小さくなっていきます。ただし、偏差がゼロに近づくにつれて P 項の効果は小さくなります。多くのシステムにおいて、制御対象のパラメータの偏差はゼロにきわめて近くなりますが、ゼロに収束することはありません。この結果、わずかな定常偏差が残ることになります。

コントローラの I ( 積分 ) 項は、このわずかな定常偏差を取り除くために使用します。I 項では、偏差信号の連続した累積値を計算します。このため、わずかな定常偏差が時間とともに大きな偏差へと累積されます。この累積偏差信号を I ゲイン ファクタで乗算したものが、PID コントローラの I 出力項となります。

PID コントローラの D ( 微分 ) 項はコントローラの速度を高めるために使用され、偏差信号の変化のレートに応答します。D 項の入力は、直前の偏差の値から現在の偏差の値を引いて求めます。この偏差の差分を D ゲイン ファクタで乗算したものが、PIDコントローラの D 出力項となります。

システム偏差の変化が速いと、コントローラの D 項から得られる制御出力も大きくなります。PID コントローラには、D 項を実装していないものもあります ( それほど多くはないのですが、I 項を実装しないものもあります )。例えば、本アプリケーションではモーター速度変化の応答時間が比較的遅いため、D 項は使用しません。このような場合に D 項を使用すると、PWM デューティ サイクルが過剰に変化してアルゴリズムの動作に影響をきたし、過電流誤動作が生じる可能性があります。

PID ゲインの調整

PID コントローラの P ゲインは、全体的なシステム応答を設定します。コントローラを 初に調整する際は、I ゲインと D ゲインをゼロに設定します。次に、過剰なオーバーシュートや発振が発生しない範囲で目標値の変化にシステムが良く応答している間は P ゲインを増やしていきます。P ゲインの値を小さくするとシステムの制御が「緩やか」になり、P ゲインの値を大きくすると「急峻な」制御となります。この時点では、システムが目標値に収束する可能性は稀です。

P ゲインを適正に選択したら、I ゲインをゆっくりと増やしてシステム偏差がゼロになるようにします。多くのシステムにおいて、I ゲインはわずかな量で十分です。I ゲインを大きくしすぎると I ゲインの影響が P 項の作用を上回り、全体的な制御応答が遅くなってシステムが目標値付近で発振します。発振する場合、通常は I ゲインを減らして P ゲインを増やすことで問題が解決します。

本アプリケーションには、積分誤差によって出力パラメータが飽和した場合に発生する積分のワインドアップを制限するための項が含まれています。それ以上に積分誤差が増大しても、出力には影響しません。累積誤差が減少するには、出力が飽和を始めたときの値よりも下まで減少 ( アンワインド ) する

必要があります。この本来不要な誤差の累積を、係数 Kc で制限します。多くの場合、この係数は Ki と同じ値に設定できます。

3 つのコントローラのいずれにも、出力パラメータの 大値があります。これらの値は UserParms.hファイルに記述されており、デフォルトではSVGen()ルーチンで飽和が発生しないように設定されています。

制御ループの依存関係

本アプリケーションには、3 つの相互依存した PI 制御ループがあります。外側のループがモーター速度を制御します。内側の 2 つのループは、変換後のモーター電流 Id と Iq を制御します。前述のとおり、Id ループは磁束を制御し、値 Iq はモーター トルクを制御するという役割を果たしています。

逆パーク変換

PI イテレーションの後、回転軸 d-q に 2 つの電圧成分ベクトルが得られます。これは、相補的な逆変換により 3 相モーター電圧に戻す必要があります。そのためにはまず、2 軸の回転フレーム d-q を、2 軸の静止フレーム α-β に変換します。この変換には、図 10 に示す逆パーク変換を使用します。

図 10: 逆パーク変換

逆クラーク変換

次に、2 軸の静止座標系 α-β を、ステータの 3 軸 3相の静止参照座標系に変換します。数学的に、この変換は図 11 に示す逆クラーク変換で実行します。

図 11: 逆クラーク変換

VαVβ

InverseVdVq

θ

Vα = Vd * cosθ - Vq * sinθVβ = Vd * sinθ + Vq * Cosθ

βq

αVα

Vs θVq Vd

dPark

Vr1Vr2Vr3

Vr1 = VβVr2 = (-Vβ + √ 3 * Vα)/2Vr3 = (-Vβ - √ 3 * Vα)/2

βVr2

Vr1,α

Vr3

Vβ Vs

Inverse Clarke

DS01078A_JP - ページ 10 © 2008 Microchip Technology Inc.

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AN1078

空間ベクトル変調 (SVM)ベクトル制御で 後の処理となるのが、3 相モーター電圧信号に対するパルス幅変調 (PWM) 信号の生成です。空間ベクトル変調 (SVM) を使用すると、3 相のそれぞれに対してパルス幅を生成する処理は、いくつかの簡単な等式に簡略化されます。この実装方法では、逆クラーク変換が SVM ルーチンにたたみ込まれており、更に計算が簡略化されています。

3 つのインバータ出力はそれぞれ、2 つの状態のいずれかとなります。つまり、インバータ出力は + バス レールまたは − バス レールのいずれかに接続されるので、出力の状態は全部で 23 = 8 通りが考えられます ( 表 1 参照 )。このなかで、3 つの出力がすべて + バスまたは − バスに接続された 2 つの状態については、いずれの相でもライン間電圧が存在しないため、NULL 状態と見なされます。このような状態は、SVM スターの原点にプロットされます。その他の 6 つの状態は、図 12 に示すようにそれぞれ 60度ずつ異なる回転角度のベクトルとして表現されます。

図 12: 空間ベクトル変調

空間ベクトル変調処理により、合成ベクトルはすべて隣接する2つのベクトルの成分の合計として表現できます。図 13 では、UOUT が目的の合成ベクトルです。このベクトルは U60 と U0 の間のセクタに存在します。ある PWM 周期 T において、T1/T では U0

が出力され、T2/T では U60 が出力されるとすると、この周期の平均が UOUT となります。

図 13: 平均空間ベクトル変調

T0 は、有効な電圧が巻線に印加されていない、すなわちNULLベクトルが印加されている時間を表します。T1 と T2 の値は、一部修正した逆クラーク変換を使用すれば、それ以外の計算なしで求めることができます。Vα と Vβ を逆にすれば、SVM スターから 30 度シフトした座標軸が得られます。この結果、6 つのセグメントのそれぞれにおいて 1 つの軸がそのセグメントの正反対に位置しており、残りの2 つの軸は対称にセグメントの境界にあります。これら 2 つの境界軸に沿ったベクトル成分の値が、T1と T2 に等しくなります。計算方法の詳細は、CalcRef.s および SVGen.s ファイルのソースコードを参照してください。

図 14 に示すように、PWM 周期 T において、T1/Tではベクトル T1 が出力され、T2/T ではベクトル T2が出力されます。その他の期間は、NULL ベクトルが出力されます。dsPIC30F はセンター アラインPWM として設定されており、周期の中央で波形が左右対称となります。この構成とすることで、毎周期ごとにライン間で 2 つのパルスが得られます。実質的なスイッチング周波数は 2 倍になり、パワー デバイスのスイッチング損失を増大させずにリップル電流を低減できます。

表 1: 空間ベクトル変調のインバータの状態

U60(011)U120(010)

U180(110) U(111) U(000) U0(001)

U240(100) U300(101)

U60(011)

UOUT

T2/T * U60

T1/T * U0 U0(001)

T0 = Null VectorT = T1 + T2 + T0 = PWM PeriodUOUT = (T1/T * U0) + (T2/T * U60)

Phase C Phase B Phase A Vab Vbc Vca Vds Vqs Vector

0 0 0 0 0 0 0 0 U(000)0 0 1 VDC 0 -VDC 2/3VDC 0 U00 1 1 0 VDC -VDC VDC/3 VDC/3 U600 1 0 -VDC VDC 0 -VDC/3 VDC/3 U1201 1 0 -VDC 0 VDC -2VDC/3 0 U1801 0 0 0 -VDC VDC -VDC/3 - VDC/3 U2401 0 1 VDC -VDC 0 VDC/3 - VDC/3 U3001 1 1 0 0 0 0 0 U(111)

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図 14: 周期 T における PWM

PWM1

PWM2

PWM3

T0/4 T1/2 T2/2 T0/4 T2/2 T1/2 T0/4T0/4

T

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PMSM モーターのセンサレス FOC 制御

このアルゴリズムで重要な要素となるのは、FOC で必要となる整流角度をどのようにして計算するかという点です。以下、本アプリケーション ノートの本項では整流角度 (θ) とモーター速度 (ω) の推定方法について説明します。

センサレス制御の手法による FOC アルゴリズムの実装では、位置センサを使用せずにモーター位置を推定します。図 15 は位置推定機能の概略ブロック図です。

モーターの位置と速度は、電流の計測値と電圧の計算値に基づいて推定します。

図 15: 位置推定機能のブロック図

InverterPWM1H

Fault

Ia

Ib

PMSMMotor

Position and Speed Estimation

I

FOC Control

V

Vcc

θω

ω REF

dsPIC® DSC

PWM1LPWM2HPWM2LPWM3HPWM3LP

WM

A/D

A/D

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モーター モデル

PMSM モーターの位置は、巻線抵抗、巻線インダクタンス、および逆起電力で表現される DC モーターのモデルを使用することで推定できます ( 図16 参照 )。

図 16: モーター モデル

このモーター モデルから、式 1 によって入力電圧が得られます。

式 1: デジタル化したモーター モデル

パラメータ F および G の計算

モーター モデルには、個々のモーターに合わせて修正が必要な 2 つのパラメータがあります。そのパラメータとは F ゲインと G ゲインで、次の関係が成り立ちます。

定数 R と L は、シンプルなマルチメータで計測します。例えばライン間抵抗を計測した場合、F および G ゲインに使用する R は計測値を 2 で割った値となります ( 位相抵抗が必要なため )。インダクタンス L の計算にも同じ手順を適用します。例えば、このアルゴリズムを使用して 8 kHz の制御周波数で新しいモーターを駆動し、ライン間抵抗の計測値が5.0Ω でライン間インダクタンスが 10 mH の場合、モーター モデルのパラメータは次のとおりとなります。

es

Motor

R L

vs

is

vs Ris L ddt-----is es+ +=

ここで :

次の式を使用して is の解を求めることでモータ電流が得られる

デジタル表現では、 この式は次のようになる

is の解を求める

または

is (n + 1) = F•is(n) + G•(vs(n) - es(n))

ここで

is = モーター電流のベクトル

vs = 入力電圧のベクトル

es = 逆起電力のベクトル

R = 巻線抵抗

L = 巻線インダクタンス

Ts = 制御周期

ddt-----is

RL---–⎝ ⎠

⎛ ⎞ is1L--- vs es–( )+=

is n 1+( ) is n( )–

Ts--------------------------------------- R

L---–⎝ ⎠

⎛ ⎞ is n( ) 1L--- vs n( ) es n( )–( )+=

is n 1+( ) 1 Ts–RL---⋅⎝ ⎠

⎛ ⎞ is n( )TsL----- vs n( ) es n( )–( )+=

F = 1 – T •RL

s

G = TLs

F = 1 – T •RL

s

G = TLs

F = 1 – Ts•RL = 1 – (1/8 kHz)• (5.0Ω/2)

(10 mH/2)= 0.9375

G = TsL =

(1/8 kHz)(10 mH/2) = 0.025

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電流オブザーバ

位置および速度の推定機能は、電流オブザーバがベースとなっています。このオブザーバは、式 1 に示すようにモーター モデルをデジタル化したものです。次の変数と定数があります。

• モーター位相電流 (is) • 入力電圧 (vs) • 逆起電力 (es) • 巻線抵抗 (R) • 巻線インダクタンス (L) • 制御周期 (Ts)• 出力補正係数電圧 (z)

デジタル化モデルとは、ハードウェアをソフトウェアで表現したものです。ただし、電流の計測値と計算値を一致させるために、図 17 に示す閉ループを使用してモーターのデジタル化モデルを補正する必要があります。

モーターをハードウェア表現 ( 濃色表示の部分 ) とソフトウェア表現の 2 通りで考え、これら両方のシステムに同じ入力 (vs) を与え、電流の計測値 (is) とモデルによる電流の推定値 (is*) を一致させると、デジタル化モデルの逆起電力 (es*) とモーターの逆起電力 (es) は同じになると仮定できます。

図 17: 電流オブザーバのブロック図

デジタル化したモーター モデルの補正には、スライド モード コントローラ (SMC) を使用します。SMC は、モーターで計測した電流値とモーターのデジタル化モデルで推定した電流値の誤差の符号を計算する総和点で構成されます。計算で求めた誤差の符号 (+1 または -1) を、SMC ゲイン (K) で乗算します。この SMC コントローラの出力が補正係数(Z) となります。このゲインをデジタル化モデルの電圧項に加算し、この処理を電流の計測値 (is) と推定値 (is*) の誤差が 0 になるまで ( すなわち、電流の計測値と推定値が一致するまで )、毎制御サイクルごとに繰り返します。

逆起電力の推定

補正後のデジタル化モデルは、入力電圧 (Vs) と電流(is*) に関する変数値が同じであるモーター モデルとなります。デジタル化モデルの補正が完了したら、次は補正係数 (Z) をフィルタリングして逆起電力 (es*) を推定します ( 図 18 参照 )。逆起電力の推定値 (es*)をモデルに対してフィードバックして、毎制御サイクル後に変数 es* を更新します。変数 eα および eβ (es のベクトル成分 ) を使用して、θ の推定値を計算します。

図 18: 逆起電力の推定モデル

PMSM+K

-K

Slide-ModeControlleris

is*

z

-

+ Sign(is* - is)

Vs

*Estimated variable

ddt

i*s =RL

i*s + 1L

(v - e* - z)s s

Hardware

-

arctaneαeβ

efiltered*s θ*LPF

e*s

LPFz

ddt i*s = R

Li*s + 1

L(v - e* - z)s s-

From Slide-ModeController

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逆起電力フィルタリング

フィルタリングの実現には、式 2 の 1 次デジタルローパス フィルタを使用します。

式 2: 1 次デジタル ローパス フィルタ

カットオフ周波数の値はスライド モード コントローラ ゲインの選択に依存し、実験的に設定します。

1 つ目のフィルタの出力は、2 つのブロックで使用します。最初のブロックはモデルそれ自体であり、次の電流推定値 (is*) と、θ の推定値 (θ*) の計算に使用します。2 つ目の 1 次フィルタは、モーター モデルの出力信号をよりスムーズにするための計算に使用します。

逆起電力とロータ位置の関係

逆起電力を 2 回フィルタリングすると、θ を計算できます。es と θ の関係は、図 19 に示すグラフに基づいて説明できます。

図 19: 逆起電力と θ の関係

このグラフのプロットは、逆起電力のベクトル成分(eα および eβ) とロータ角度 (θ) に関する三角関数を示しています。逆起電力のベクトル成分の逆正接を計算し、θ を求めます。式 3 に、この関数をソフトウェアで実装する方法を示します。

式 3: θ の計算

実際の実装では、CORDIC (COordinate Rotation byDIgital Computer) という反復的数値計算アルゴリズムを使用します。このアルゴリズムは高速で、しかも浮動小数点の実装ほどメモリ容量を必要としません。本アプリケーション ノートでは、CORDIC アルゴリズムの説明は省略します。

y n( ) y n 1–( ) T2πfc x n( ) y n( )–( )⋅+=

z をフィルタリングして e* を得るには、T をサンプリング周波数 fpwm ( この場合、8 kHz) に置き換えて、次の式を得る

ここで :

e(n) = 次の逆起電力の推定値

e(n-1) = 直前の逆起電力の推定値

fpwm = デジタル フィルタが計算される PWM 周波数

fc = フィルタのカットオフ周波数

z(n) = フィルタリングされていない逆起電力。この逆起電力は、スライド モード コントローラから出力される

e n( ) e n 1–( ) 1fpwm-----------⎝ ⎠

⎛ ⎞ 2πfc z n( ) e n( )–( )⋅+=

eα eβ θ1

0.5

0

-1.5

-1

-1.5

11 21 31 41 51 61 71 81 91 101|||||||||||||||||||| |||||||||||||||||||| |||||||||||||||||||| |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||

1.5

θ = arctan (eα , eβ)

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速度の計算

θ の計算時にフィルタ機能を適用しているので、計算で求めた角度を使用してモーター巻線を励磁する前に、位相を補正しておく必要があります。θ の補正量は、θ の変化の速度、すなわちモーターの速度によって決まります。θ の補正は、次の 2 段階で実行します。

• まず、補正前の θ の計算値に基づいてモーターの速度を計算する。

• 上記で計算した速度にフィルタを適用してから、補正量の計算に使用する ( 図 20 参照 )。

図 20: 速度計算のブロック図

速度の計算は、まず θ の値を m サンプルにわたって累計し、その累計値を定数で乗算します。式 4 に、本アプリケーション ノートで速度計算に使用する式を示します。

式 4: 速度の計算

ここで :

速度計算の信号をよりスムーズにするために、Omega (ω*)に1次フィルタを適用してFilteredOmega(ω*filtered) を得ます。1 次フィルタのトポロジは、逆起電力フィルタリングに使用したものと同じです。

位相補正

補正前の θ とフィルタリング後の速度を計算したら、フィルタリング処理に起因する遅延を除去する必要があります。これは、モーター速度によって決まる補正オフセット θ (_OffsetTheta) を、補正前の θに追加する形で実行します ( 次式参照 )。

位相補正は、個々のモーターごとに微調整することを推奨します。本アプリケーションでは、8 つの速度範囲に分割して位相補正をしました。スロープの値および位相補正成分の定数は、各速度範囲で異なります。表 2 に、上記の式で使用する位相補正の値の式を示します。

表 2: 位相補正の式

arctaneαeβ

ω = Σm-1

i=0(θ(n) - θ(n-1)) . Kspeed LPF

θ* +

+

θ*comp

ω*

ω*filtered

Omega (ω) = モーターの角速度

Theta (θn) = 現在の θ の値

PrevTheta (θn-1) = 直前の θ の値

Kspeed = 目的の速度範囲とするための増幅係数

m = 累積した差分 θ の数

ω θn θn 1––( )

i 0=

m

∑= Kspeed⋅

Speed Range(FilteredOmega)

Phase Compensation Formula (__OffsetTheta)

Minimum – 0.09375 θoffset = 00.09375 – 0.1875 θoffset = 4ωfiltered + 0.3750.1875 - 0.2876 θoffset = 2ωfiltered 0.2876 - 0.38095 θoffset = ωfiltered + 0.28760.38095 - 0.475 θoffset = ωfiltered + 0.28760.475 - 0.568 θoffset = 0.5ωfiltered + 0.52510.568 - 0.756 θoffset = 0.25ωfiltered + 0.66710.756 - Maximum θoffset = 0.125ωfiltered + 0.748275

θ*comp = θ* + θoffset

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位相補正の式の変更

本アプリケーション ノートのソース コードを収録した ZIP ファイルには、ユーザーが角度補正の式を計算する際に役立つスプレッドシートが含まれています。ここでユーザーは、速度 (RPM) およびその速度で補正する θ の値を入力します。例えば、500RPM で位相補正を 30 度とする場合は、[Speed(RPMs)] フィールドに「500」と入力し、[AngleCompensation (Degrees)] フィールドに「30」と入力します。すると、線のスロープおよび式の定数がスプレッドシートによって計算されます。

同じスプレッドシートで、ユーザーは速度を RPMから Q15 のフォーマットに変換するために、次のパラメータを定義する必要があります。

Ts: PWM の周期

Kspeed: 速度定数

m: 1 回の速度計算につき累積した差分 θ の数

Pole Pairs: モーターの極ペアの数

フローチャート

FOCアルゴリズムはPWMと同じレートで実行されます。このアルゴリズムは、PWM からのトリガによって、2 つの巻線に対する A/D 変換 (2 つのシャント抵抗およびモーターのリファレンス速度を設定するポテンショメータを使用 ) が実行されるように構成されています。A/D 割り込みが許可され、アルゴリズムが実行されます。図 21 に、A/D 割り込みサブルーチンの全体的な実行内容を示します。

図 21: A/D 割り込みサブルーチン

図 22 に、スライド モード コントローラを使用してモーターの位置と速度を推定する処理を示します。

A/D Interrupt

-

Use Clarke Transform to Convert

Phase CurrentsFrom 3-Axis to 2-Axis

Use Park Transformto Convert

2-Axis Currents to Rotating Coordinate System

Use Slide Mode Controllerto Estimate

Motor Position and Speed

Run PI Controllersfor

Currents and Speed

Use Inverse Park Transformto Convert

Rotating Coordinate Systemto Axis Stationary System

Use Inverse Clarke Transformto Convert

2-Axis to 3-Axis

Use Space Vector Modulationto Update

PWM Duty Cycle

End of A/D Interrupt

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図 22: モーターの位置と速度の推定 モーターの起動

逆起電力の推定値に基づくセンサレス FOC アルゴリズムでは、逆起電力の推定値を得られるだけの小速度が必要です。このため、モーター巻線を適切な推定角度で励磁する必要があります。この問題に対処するため、モーター スタートアップ サブルーチン ( 図 23 参照 ) を開発しました。

モーターが静止しているときにスタート / ストップボタンを押すと、dsPIC DSC が一連の正弦波電圧を生成してモーターが回転し始めます。モーターは固定加速度で回転し、FOC アルゴリズムは電流 Id とIq を制御します。角度 θ ( 整流角度 ) は、加速度に基づいて増加します。

図に示すように、位相角度は二乗のレートで増加し、一定のモーター加速度が得られます。θ が開ループ ステート マシンで生成されている間も FOCブロックは実行され、トルク成分電流と磁束成分電流を制御します。モーター起動に必要なトルクの目標値に設定するには、外付けのポテンショメータを使用します。このポテンショメータは、機械的負荷特性に応じて経験的に設定されます。この起動サブルーチンにより、モーターを起動させるための一定のトルクが供給されます。起動処理の終了時には、ソフトウェアは閉ループのセンサレス制御に移り、図 6 に示した位置および速度の推定機能によって θを取得します。

Filter Output FromSlide Mode Controller

to EstimateBack-EMF

Use Slide Mode Controllerand Motor Model

to EstimateMotor Currents

Slide Mode Controller

Accumulated Theta count = m?

Yes

No

Filter EstimatedBack-EMFto Create

Smoother Signal

UseEstimated Rotor Position

to CalculateRotor Speed

Compensate ThetaBased on

Speed Calculation

End ofSlide Mode Controller

Subroutine

FilterEstimated

Speed

Use Arctangent to ComputeEstimated Motor Position

Based onEstimated Back-EMF

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図 23: モーターの起動

Motor Start Up

PI

PI

-

-

θ

d,q

α,β

Motor

α,β

a,b,c

Position

Iq ref 3-PhaseBridgeSVM

Iq

Id

ia

Id ref

Vq

Vd

d, q

α, β

ib

t

θ

(VR1)

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メイン ソフトウェア ステート マシン

FOC アルゴリズムは、ソフトウェア ステート マシンとして視覚化するとよく理解できます ( 図 24 参照 )。 初の状態ではモーター巻線に電流は流れておらず、システムはユーザーがスタート / ストップボタン (開発ボードの S4スイッチ )を押すのを待機します。ユーザーがスタート / ストップ ボタンを押すと、システムは初期化状態に入り、すべての変数が初期値に設定され、割り込みが許可されます。次に、スタートアップ サブルーチンが実行されます。このルーチンではトルクの電流成分 (Iq)と磁束の電流成分 (Id) が制御され、傾斜した整流角度 (θ) が生成されてモーターが回転を始めます。

スタートアップ サブルーチンが終了すると、システムはセンサレス FOC 制御に切り替わり、実行スレッドに速度コントローラが追加され、前述の方法でスライド モード コントローラ (SMC) が θ の推定を開始します。モーターがセンサレス FOC 制御状態に入ると、リファレンス速度が外部のポテンショメータから継続的に読み出されます。また、スタート / ストップ ボタンを監視して、ボタンが押されるとモーターを停止します。

システムに何らかの障害が発生するとモーターは停止し、再び S4 が押されるまで Motor Stopped 状態に戻ります。このステート マシン図には、ソフトウェアのすべての状態およびシステムの状態遷移を引き起こす条件が記載されています。

図 24: メイン ソフトウェア ステート マシン

Reset

Initialize Variables and

Peripherals

Motor Stopped

InitializeVariables forRunning the

Initialize PI ControllerParameters

EnableInterrupts

Motor Running Start Up

ReadReference

Torque fromVR1

MeasureWindingCurrents

ConvertCurrents

Iq and IdExecute

PI Controllers

Iq and Id

IncrementTheta

Ramp

Set NewDuty Cycles

SVM

Motor Running

Sensorless FOC

ReadReference

Speed

MeasureWindingCurrents

ConvertCurrents

Iq and IdEstimate

usingCalculate

Speed

CompensateTheta

Speed

ExecutePI Controllers

for Speed,

Set NewDuty Cycles

SVM

Stop Motor

A/D Interrupt

A/D InterruptEnd of Start Up Ramp

S4 Pressed

S4 Pressed or FAULT

S4 Pressed or FAULT

Motor

to

for

Based onusing

Iq and Id

using

Based onTheta

SMC

from VR2

to

Initialization State

Start-Up State

Sensorless FOC State

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DSC ベースの FOC 制御の利点

モーター制御に DSC を採用することによる大きな利点の 1 つは、共通のデザイン プラットフォームを多くの用途に応用できることにより、電化製品の製造効率が向上することです。これにより、電化製品のメーカーでは、PMSM など各種モーターにセンサレス FOC アルゴリズム制御を使用した電化製品を低コストで多品種展開できるようになります。

このようなソフトウェア ベースのモーター制御設計では、制御パラメータを変更するだけでカスタマイズが可能であり、短期間で多くの市場に対応できます。

多拠点でのコラボレイティブ デザインの手法をとる電化製品設計チームを配備することの多いメーカーの場合、ファームウェアの知的財産 (IP) 保護も大きな問題となります。ある電化製品の FOC を拠点 A で実装し、ユーザー インターフェース ボードは拠点 B から取り寄せ、システムの 終インテグレーションは拠点Cで実施というようなケースも珍しくないのです。

このような設計手法では、各設計チームの所有するIP の扱いが問題になることがよくあります。マイクロチップ社のdsPIC DSCファミリにはCodeGuard ™セキュリティ機能があり、コラボレイティブ デザイン環境における IPの保護をサポートします (詳細は www.microchip.com/codeguard 参照 )。

結論

本アプリケーション ノートでは、DSC を利用してセンサレス FOC アルゴリズムなどの高度なモーター制御方式を電化製品のアプリケーションに実装する方法を説明しました。dsPIC DSC のプログラミングは MCU のプログラミングと同様なので、電化製品の設計者は短期間でモーター制御アルゴリズムを設計してプロトタイプをテストすることが可能です。

また、PMSM、BLDC、ブラシ付き DC (BDC)、ACIM モーターなどの多岐にわたるモーター プラットフォーム間でのアルゴリズムの移植を容易にする DMCI など、強力な IDE ベースのツールが用意されているため、モーター制御の微調整も容易になります。

マイクロチップ社からは、こうしたパラメータの調整を支援するリソースが数多く提供されています。詳細は、弊社の担当セールス エンジニアまたはアプリケーション エンジニアまでお問い合わせください。

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付録

ハードウェア リソース

本センサレス FOC アプリケーションの実装に使用するハードウェアのコンポーネントは、次のとおりです。

• dsPICDEM™ MC1 モータ コントロール開発ボード (DM300020)

• dsPICDEM™ MC1H 3 相高電圧電源モジュール(DM300021)

• 東芝キャリア製コンプレッサ モデル HD187X1-S12FD

MC1 開発ツールはマイクロチップ社のウェブ サイト (www.microchip.com)で入手できます。コンプレッサを既にお持ちの場合は、次のモーター パラメータを参照してください。

ハードウェアの改造

購入直後の状態では、高電圧電源モジュールの公称出力は 0.8 kVA です。PMSM のエアコン用コンプレッサを、上述のパラメータに表される負荷で駆動するには、この電源モジュールを改造する必要があります。この改造を完了するには、ボードを筐体から取り外す必要があります。

ここで説明する改造は、システム設計上必要なものとして許可されています。いうまでもなく、ユーザーの判断でこれ以外の改造をした場合の機能性や安全性は保証できません。なお、適任である有資格者のみがシステムを使用するようにしてください。

ボードの改造 ( 図 25 参照 )手順 1:

大電流用ジャンパを追加し、電源とデジタル信号のグランドを共通にする。

手順 2:実装済みの電流センサ シャント抵抗を交換する。

手順 3:電源モジュールのジャンパ設定を変更する。

手順 4:ホール効果センサからのフォールト信号をバイパスする。

手順 5:選択抵抗を取り付けて、フィードバック電流センサ回路を有効にする。

上記の改造後は、電流センサとしてはホール タイプの電流センサは使用できません。また、改造後はホール センサの過電流フォールトも無効になります。ただし過電流フォールトのためのシャント過電流フォールトは有効です。

ボードの取り外し方

電源のカバーを開ける前に ( 図 25 参照 )、次の手順に必ず従ってください。

• システムへの電力を完全に遮断する。

• 内部放電回路により DC バス電圧が安全なレベルまで下がるまで、3 分以上待つ。上部換気口から見える赤の LED バス電圧インジケータが消灯するのを確認する。

• 次に進む前に、7 ピン出力コネクタの DC 端子の+ と − の間の電位を電圧計で測定し、完全に放電していることを確認する。このときの電圧は10V 未満となる。

• これで、システムは安全に作業できる状態になる。

• システムからすべてのケーブルを取り除く。

• 筐体およびヒートシンクの上部と下部にカバーを固定しているねじを外す。

• 電源ユニットのヒートシンクを持ちながら、カバーを前方にスライドさせる。

カバーを外してボードが外に出たら、図 26 ~図 30に詳述する手順に従ってください。

磁極数 : 4 (2 極対 )速度範囲 : 900 RPM ~ 7200

RPM

公称出力 (P): 750 W

巻線抵抗 (R): 0.70

巻線インダクタンス平均 (L): 7.35 mH

公称電流 (I): 6.0 ± 0.3 A

ライン間の逆起電力定数 : 0.0228 Vrms/RPM

トルク定数 : 0.39 N m/A

注 : 詳細は『dsPICDEM™ MC1H 3-Phase High Voltage Power Module User’s Guide』(DS70096) を参照してください。

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AN

1078

DS

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Step TwoReplace motor current sensingshunt resistors(see Figure 27)

Step FourBypass Fault signals from HallEffect sensors(see Figure 29)

Step ThreeConfigure Power Module jumpersettings(see Figure 28)

図 25: dsPICDEM™ MC1H 3 相高電圧電源モジュールのカバーを開けた状態

Step OneEstablish common power and digital groundby adding high-current jumper(See Figure 26)

Step FiveInstall feedback current sensingselection resistors(see Figure 30)

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AN1078

図 26: 電源とデジタル信号のグランドを共通にする

図 27: 電流センサ シャント抵抗を交換する

図 28: ジャンパ設定を変更する

J13

J5

Step One: Establish common power and digital signal ground

BEFORE AFTER

J13

J5BEFOREJ5

J13

Because shunt resistors are used tosense current from the motor,power and digital signals must usethe same ground.

Solder a high-current jumper wire(AWG 18 minimum) between J5and J13.

JUMPER

Step Two: Replace motor current-sensing shunt resistors

R3

R5

R4

UNDERSIDE OF BOARD

R3R5R4

BEFORE AFTER

To accommodate higher current, thecurrent-sensing shunt resistors mustbe changed from the default value of25 mΩ/3W to 10 mΩ/3W.

The recommended method is to cutshunt resistors R3, R4 and R5 fromthe top side of the board and solderreplacement shunt resistors on theunderside of the board.

Step Three: Configure Power Module jumper settings

123

LK4

LK5

LK6

LK7

LK8

LK9

LK10

LK11

LK12

The illustrated jumper settings ensure a gain of 16.67, whichprovides a feedback of 6A per 1V. Jumper LK4 provides anoffset of 2.5V to enable measurement of both positive andnegative currents.

The new formula for current measurement is:

V = 2.5 + I/6

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AN1078

図 29: ホール効果センサを無効にする

図 30: フィードバック電流選択抵抗を取り付ける

Step Four: Bypass Fault signals from Hall Effect sensors

BEFORE

J11

J15

AFTER

LK15

LK18

The dsPICDEM™ MC1H 3-Phase HighVoltage Power Module uses three HallEffect sensors. Two sensors are usedwith winding currents; the third is usedwith the IBUS current. These sensors,and their associated feedback circuitry,generate Fault signals that must bebypassed for the air conditioning com-pressor application. Follow these steps:

1. To bypass Sensor U3, unsolderthe wire at J11 and unloop it fromthe sensor.

2. Resolder wire to the right side ofjumper LK15.

2a. Cut the jumper on LK15.

2b. Cut the jumper on LK18.

3. Repeat for U4, moving from J15 toLK18.

4. To bypass the IBUS sensor (U2),cut the jumper on LK2.

5. Solder a high-current (AWG 18)wire from the right side of jumperLK2 to pin 1 of the input diodebridge

WINDING CURRENT LOOPSTHROUGH LEM SENSORS SENSORS

BYPASSED

BEFORE AFTER

LEM OUTPUTON LK2 JUMPER

U3

U4

U3

U4

U2

INPUT DIODE BRIDGEPIN 1

LK2

AFTERStep Five: Install feedback current sensing selection resistors

To obtain feedback current, the circuitlinks must be completed.

To activate the current feedback forthis application, populate links LK20and LK21 with 5.6 kΩ resistors.

AFTERBEFORE

LK20 & LK21 LINKS 5.6 kΩ SHUNT RESISTORS

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AN1078

参考文献 DSC を使用したモーター制御に関するアプリケーション ノートとして、マイクロチップ テクノロジー社が公開しているのは次のとおりです。

ACIM 制御関連 :• AN984『An Introduction to AC Induction Motor

Control Using the dsPIC30F MCU』(DS00984)• AN908『Using the dsPIC30F for Vector Control of an

ACIM』(DS00908)• GS004『Driving an ACIM with the dsPIC® DSC

MCPWM Module』(DS93004)BLDC モーター制御関連 : • AN901『Using the dsPIC30F for Sensorless BLDC

Control』(DS00901)• AN957『Sensored BLDC Motor Control Using

dsPIC30F2010』(DS00957)• AN992『Sensorless BLDC Motor Control Using

dsPIC30F2010』(DS00992)• AN1083『逆起電力フィルタリングによるセンサレス BLDC 制御』(DS01083)

PMSM 制御関連 :• AN1017『dsPIC30F DSC を使用した PMSM モーターの正弦波制御』(DS01017)

dsPICDEM MC1 モータ コントロール開発ボードに関する詳細

•『dsPICDEM™ MC1 Motor Control Development Board User’s Guide』(DS70098)

•『dsPICDEM™ MC1H 3-Phase High Voltage Power Module User’s Guide』(DS70096)

•『dsPICDEM™ MC1L 3-Phase Low Voltage Power Module User’s Guide』(DS70097)

これらのドキュメントは、マイクロチップ社のウェブ サイト (www.microchip.com) で入手できます。

© 2008 Microchip Technology Inc. DS01078A_JP - ページ 27

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ノート :

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マイクロチップ社デバイスのコード保護機能に関する以下の点にご留意ください。

• マイクロチップ社製品は、その該当するマイクロチップ社データシートに記載の仕様を満たしています。

• マイクロチップ社では、通常の条件ならびに仕様どおりの方法で使用した場合、マイクロチップ社製品は現在市場に流通している同種製品としては もセキュリティの高い部類に入る製品であると考えております。

• コード保護機能を解除するための不正かつ違法な方法が存在します。マイクロチップ社の確認している範囲では、このような方法のいずれにおいても、マイクロチップ社製品をマイクロチップ社データシートの動作仕様外の方法で使用する必要があります。このような行為は、知的所有権の侵害に該当する可能性が非常に高いと言えます。

• マイクロチップ社は、コードの保全について懸念を抱いているお客様と連携し、対応策に取り組んでいきます。

• マイクロチップ社を含むすべての半導体メーカーの中で、自社のコードのセキュリティを完全に保証できる企業はありません。コード保護機能とは、マイクロチップ社が製品を「解読不能」として保証しているものではありません。

コード保護機能は常に進歩しています。マイクロチップ社では、製品のコード保護機能の改善に継続的に取り組んでいます。マイクロチップ社のコード保護機能を解除しようとする行為は、デジタルミレニアム著作権法に抵触する可能性があります。そのような行為によってソフトウェアまたはその他の著作物に不正なアクセスを受けた場合は、デジタルミレニアム著作権法の定めるところにより損害賠償訴訟を起こす権利があります。

本書に記載されているデバイス アプリケーションなどに関する情報は、ユーザーの便宜のためにのみ提供されているものであり、更新によって無効とされることがあります。アプリケーションと仕様の整合性を保証することは、お客様の責任において行ってください。マイクロチップ社は、明示的、暗黙的、書面、口頭、法定のいずれであるかを問わず、本書に記載されている情報に関して、状態、品質、性能、商品性、特定目的への適合性をはじめとする、いかなる類の表明も保証も行いません。マイクロチップ社は、本書の情報およびその使用に起因する一切の責任を否認します。マイクロチップ社デバイスを生命維持および /または保安のアプリケーションに使用することはデバイス購入者の全責任において行うものとし、デバイス購入者は、デバイスの使用に起因するすべての損害、請求、訴訟、および出費に関してマイクロチップ社を弁護、免責し、同社に不利益が及ばないようにすることに同意するものとします。暗黙的あるいは明示的を問わず、マイクロチップ社が知的財産権を保有しているライセンスは一切譲渡されません。

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再生紙を使用しています。

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