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第1章 電流
電流
電流:電荷の移動
時間dtの間の移動電荷量がdQのとき
I =dQ
dt
を電流の強さという.
電流の方向 正電荷ならば移動の方向 負電荷ならば移動の逆方向
方向も入れて電流の強さをベクトルIで表す.
電流密度:電流に垂直な単位断面積あたりの電流の強さJ
定常電流:時間的に一定の状態で流れる電流
Ohmの法則
導線上の2点の電位差がV のとき,その間を流れる電流Iは次のようになる.
I =V
R
導線上の点Aから点Bに電流が流れるとき点Bの電位は点Aの電位より V = RIだけ低い:電圧降下
電気抵抗
電気抵抗:Ohmの法則に現れる定数R
均質な材料からなる導線の場合,長さ lと断面積Sを用いて以下のように書ける.
R =ρl
S
ここで,ρ:抵抗率
抵抗の接続
R:抵抗R1, R2, · · · , Rnの導線を接続したときの合成抵抗
直列接続:R = R1 + R2 + · · · + Rn
並列接続:1
R=
1
R1+
1
R2+ · · · +
1
Rn
Kirchhoffの法則
回路網:数個の抵抗と起電力を繋ぎ合わせた回路
接合点(節点):導線のつなぎ目
第一法則:回路網の任意の接合点で会するいくつかの電流のうち,流入する電流を正,流出する電流を負とするとそれらの代数和は0になる. ∑
k
Ik = 0
第二法則回路網の任意の閉回路に沿って一つの向きに一周するときその向きに流れる電流を正,その向きに電流を流そうとする起電力を正,その反対向きのものを負とすると,起電力の和と電圧降下の代数和とは等しい.∑
k
Ek =∑l
IlRl
第2章 電荷と電場
2.1 クーロンの法則
2.2 電場
2.3 ガウスの法則
2.4 ガウスの法則の応用
2.1 クーロンの法則
SI単位系における真空中のクーロンの法則
F =1
4πϵ0
qq′
r2,
1
4πϵ0= 9.00 × 109N · m2
C2
真空の誘電率
ϵ0 =107
4πc2C2
N · m2
真空中の光速
c = 299792458m/s
2.2 電場
原点に点電荷q, 位置ベクトルrで指定される位置に点電荷q′
F =1
4πϵ0
qq′
r2, F = q′
1
4πϵ0
q
r2r
r= q′E(r)
ベクトル場E(r): 電場
原点の点電荷qが存在することでそのまわりの空間の性質が変化
性質の変化した空間に別の点電荷をおくとクーロン力が働く
場の考え方
2.3 ガウスの法則
原点に点電荷q, 位置ベクトルrで指定される位置に面積素片dS
面積素片の位置の電場
E =q
4πϵ0
r
r3
面積素片の外向き単位法線ベクトルn
rとnのなす角θ, r · n = r cos θ
大きさdS, nと同じ向きのベクトル:dS = ndS
E · dS =q
4πϵ0
r · nr3
dS =q
4πϵ0
dS cos θ
r2=
q
4πϵ0dΩ
E · dS =q
4πϵ0
r · nr3
dS =q
4πϵ0
dS cos θ
r2=
q
4πϵ0dΩ
dΩ: qがdSを見込む立体角
面積素片dSの半径rの球面上への正射影の面積:dS′ = dS cos θ
半径rの球の表面積:∫
dS′ = 4πr2
全空間を見込む立体角:∫
dΩ = 4π
真空中のガウスの法則
ϵ0
∫S
E · dS = q
S: 電荷qを囲む任意の閉曲面
複数の点電荷
ϵ0
∫S
E · dS =(Sの中にある電荷の和)
連続的な電荷分布
ϵ0
∫S
E · dS =∫V
ρ dV
V : 閉曲面Sが囲む体積
ρ: 単位体積あたりの電荷密度
電気力線を用いたガウスの法則の直観的表現
電気力線:空間の各点の電場のベクトルを連ねた曲線
小さな正電荷を,クーロン力を受ける向きに沿って
少しずつ動かすときにできる1本の道筋の線
(クーロン力の向きに合わせた向きのある線)
電場の向き:電気力線上の各点の接線方向
電場の大きさ:
電気力線のその方向に垂直な面に関する面密度に比例
※電気力線の図
電気力線は正電荷から出発し,負電荷で終結
電気力線の密度は電場の大きさに比例
電場の大きさはその電場の原因となる電荷に比例
単位正電荷から発する電気力線の本数を決めておくと
閉じた面を貫いて外に出て行く電気力線の総本数は
面に包みこまれている電荷に比例する.
※閉曲線の図
第3章 電位と導体
3.1 電位
3.2 電位と仕事
3.3 導体
3.4 コンデンサー
3.5 鏡像法
3.1 電位
位置ベクトルrのスカラー関数V (r)があり,
電場Eと以下のような関係があるとき,
V を電位または静電ポテンシャルという.
E = −gradV = −∇V =
−∂V
∂x,−
∂V
∂y,−
∂V
∂z
grad: gradient, 勾配
∇: nabla, ナブラ
このとき次式が満たされる.
∂Ey
∂z=
∂Ez
∂y,
∂Ez
∂x=
∂Ex
∂z,
∂Ex
∂y=
∂Ey
∂x
逆に,この式が満たされれば電場Eを導く電位V が存在する.
ベクトル場(電場)E = (Ex, Ey, Ez)に対して,ベクトル場
rotE = ∇×E =
∂Ey
∂z−
∂Ez
∂y,
∂Ez
∂x−
∂Ex
∂z,
∂Ex
∂y−
∂Ey
∂x
をEの回転 (rotation) という.
上の条件はrotE = 0と書ける.
注意:ベクトルの外積 (r = x i + y j + z k)
A × B =
∣∣∣∣∣∣∣∣i j k
Ax Ay Az
Bx By Bz
∣∣∣∣∣∣∣∣
rotE = ∇× E =
∣∣∣∣∣∣∣∣∣∣∣∣
i j k
∂
∂x
∂
∂y
∂
∂z
Ex Ey Ez
∣∣∣∣∣∣∣∣∣∣∣∣
原点に電荷qがあるときの真空中の電場
(教科書32ページの式(2.14))
E =q
4πϵ0
r
r3
rotE =q
4πϵ0rot
r
r3= 0 (r = 0)
上式を計算で確かめよ.但し,r = |r| =√
x2 + y2 + z2
実は,rot (gradV ) = 0は恒等式で任意の微分可能な
スカラー関数V について成立(成分を計算して確かめよ)
従って,rotE = −rot (gradV ) = 0
原点に電荷qがあるときの真空中の電位
ベクトル場(電場)E = (Ex, Ey, Ez)に対して,スカラー場
divE = ∇ · E =∂Ex
∂x+
∂Ey
∂y+
∂Ez
∂z
をEの発散 (divergence) という.電位を用いて書き直すと
∇ · E = −∇ · ∇V = −∆V =
∂2
∂x2+
∂2
∂y2+
∂2
∂z2
V
となるが,∆をラプラシアンという.
−∆V = ∇ · E =q
4πϵ0∇ ·
r
r3= 0 (r = 0)
となることを計算により確かめよ.
∆V = 0
はラプラス方程式といい,電位が満たすべき方程式である.
∇(1
r
)= −
r
r3が成り立つことを計算により確かめよ.
これとE =q
4πϵ0
r
r3= −∇V を比較すると
V =q
4πϵ0
1
r
これがラプラス方程式を満たすことを確かめよ.
(恒等式∆(1
r
)= 0を計算により示せ.)
これまでの話は多数の点電荷が原点以外に散在するときも
電荷が連続的に分布しているときも成立する.
詳細は教科書を見よ.
3.2 電位と仕事
質点に力Fが働き,dsだけ移動したときにこの力がした仕事
dW = F · ds
点AからBまで移動したときの仕事 W =∫ B
AF · ds
電荷qに働く,電場Eによるクーロン力の場合 F = qE
W = q∫ B
AE · ds
積分の中は電位V の全微分を用いて表現できる.
E · ds = −∂V
∂xdx −
∂V
∂ydy −
∂V
∂zdz = −dV
従って,電荷qが点AからBまで移動したときの仕事は
W = q∫ B
AE · ds = −q
∫ B
AdV = qV (A) − qV (B)
となり,途中の経路によらず,
AとBにおける電位差に電荷の大きさをかけたものとなる.
電位の単位(ボルト) 1Cの電荷が移動してクーロン力が1J
の仕事をするときの電位差
電位が一定の曲面を等電位面といい,
電場や電気力線はこれに直交する.
等電位面に沿って電荷が移動しても,
クーロン力は仕事をしない.
3.3 導体
絶縁体:木や大理石のように電気を通しにくい物質
導体:金属のように電気を通しやすい物質
両者の中間的な性質を持つ物質を半導体というが,その性質を応
用したものにダイオード,ドランジスタ,太陽電池などがある.
静電場を扱う限り,導体内には電場は存在しない.
電場が存在すれば,電子が移動して電流が生じ,
静電場を扱うという前提に矛盾する.
導体の付近にどんなに大きな電荷があっても導体内部の電場は0
導体に正電荷を近づけると
導体表面の正電荷に近い側に負の電荷が
遠い側に正の電荷が集まる.
このような電荷を誘導電荷という.
誘導電荷に起因する電場が外部の電荷に起因する電場を
打ち消すように生じるので導体内部の電場は0となる
この現象を静電誘導という.
導体表面付近の電場
静電場を扱う限り,導体表面に電流は流れず,
導体表面は等電位面となる.
電気力線は等電位面と直交することから
導体表面に電気力線は垂直に交わるが,
導体内部には電場がないので電気力線もない.
講義初回の小テストで出題したセンター試験問題を参照のこと
導体表面を中心軸が垂直に貫く微小円筒の表面に
ガウスの定理を適用
σ:誘導電荷の面密度
dS:円筒の底面積
E:導体表面付近の電場の大きさ
側面と導体内部の底面を貫く電場はないから
ϵ0E dS = σ dS
E =σ
ϵ0
導体表面に働く電気力
導体表面付近で導体外部の電場 E = E1 + E2
E1:dSの部分の電荷による
E2:dS以外の部分の電荷による
導体内部の電場 0 = E′1 + E′
2
E′1:dSの部分の電荷による
E′2:dS以外の部分の電荷による
dSの両側の電場は大きさが等しく逆向き → E1 = −E′1
dS以外の部分に起因する電場は導体表面で連続 → E2 = E′2
これより E′1 = −E′
1 = E2 = E′2 =
E
2
fe:単位面積あたりに働く電気力(静電圧力, 静電張力)
dS部分に働く電気力
fe dS = σ dS ×E
2→ fe = σ ×
E
2
ガウスの定理で求めた電場の大きさE =σ
ϵ0を代入
fe = σ ×1
2
σ
ϵ0=
σ2
2ϵ0=
1
2ϵ0E2
3.4 コンデンサー
接近した二つの導体に起電力V の電池に繋ぐと
電池の陽極から正電荷Qが一方の導体に
陰極から負電荷−Qが他方の導体に蓄えられる.
この装置をコンデンサー(蓄電器,キャパシター)という.
一般に,QはV に比例し,(Q = CV )
その比例係数を電気容量(静電容量)という.
Cの単位 1 F (ファラド) = 1 C / 1 V
平行板コンデンサー
極板:導体の板
極板A:電荷Q, 極板B:電荷−Q, V:極板間電位差
E:極板間の電場の大きさ, l:極板間距離, S:極板の面積
ガウスの定理より E =σ
ϵ0極板Aから極板Bに単位正電荷が移動するときに
クーロン力がする仕事=電池の起電力=極板間電位差
V = El =σ
ϵ0l =
Q/S
ϵ0l → Q =
ϵ0S
lV
平行板コンデンサーの電気容量:C =ϵ0S
l
コンデンサーの接続 (電気抵抗の場合と逆になることに注意)
並列接続(どのコンデンサーも極板間電圧は等しい)
Qi = CiV, Q =∑i
Qi =∑i
CiV, Q = CV
C =∑i
Ci
直列接続(どのコンデンサーも蓄える電荷は等しい)
1
Ci=
Vi
Q, V =
∑i
Vi = Q∑i
1
Ci, V = Q
1
C
1
C=
∑i
1
Ci
静電遮蔽
導体で囲まれた空間を考え,
その中には電荷は存在しないと仮定する.
導体中はどこでも等電位
仮に導体内部の1点が導体の電位と異なれば,
その点を通る等電位面を貫く電気力線が存在し,
ガウスの法則により
等電位面の内側に電荷が存在することになり矛盾
導体内側の任意の点の電位は導体の電位と等しく,電場が存在しない.
後で学習するように電波は変化する電場や磁場の伝播
アルミ箔で包んだ携帯電話は応答しない
3.4 鏡像法
静電場は境界条件に依存
同じ境界条件を満たすように
元の導体や誘電体を仮想的な電荷で置き換える.
この電荷を鏡像電荷または電気映像という.
このような置き換えで静電場を求める手法を
鏡像法または電気映像法という.
鏡像法の例
接地された無限導体表面と点電荷
接地された無限導体表面前方の点Pにある点電荷+qの鏡像電荷
→ 導体平面に対する点Pの対称点にある点電荷−q
接地された導体球殻と点電荷
接地された半径aの導体球殻の中心Oからdの距離にある
点電荷+qの球殻に対する鏡像電荷
→ 直線OP上のOからa2/dの距離にある点電荷−aq/d
付録1 ベクトル解析
付録1.1 ベクトルとスカラー積
二つのベクトルA = (Ax, Ay, Az)とB = (Bx, By, Bz)に
対してA · B = AxBx + AyBy + AzBz = AB cos θを
AとBのスカラー積または内積という.ここで,
A = |A|, B = |B|, θはAとBのなす角
質点に力Fが働き,直線上をxだけ変位したとき,
その力が質点になした仕事は F · xとなる.
付録1.2 ベクトル積
二つのベクトルA = (Ax, Ay, Az)とB = (Bx, By, Bz)に
対してA×B = (AyBz−AzBy, AzBx−AxBz, AxBy−AyBx)
をAとBのベクトル積または外積という.
A = (A,0,0), B = (B cos θ, B sin θ,0)となるように
座標を選ぶとA × B = (0,0, AB sin θ)となり,
AとBを含む平面と垂直な向きを持つ.
直交座標Oxyzにおいてx軸,y軸, z軸方向の単位ベクトルを
それぞれ i, j, kとするとき,
k = i × jならば右手系, k = −i × jならば左手系という.
位置ベクトルrで表される位置にある質点が運動量pを持つとき
r × pを角運動量という.
三つのベクトルA, B, Cを稜とする平行六面体の体積
|A · (B × C)| = |B · (C × A)| = |C · (A × B)|
一つの単位ベクトルをnとすると,任意のベクトルAは
A = (A · n)n + n × (A × n) と書けることに注意せよ.
より一般的な公式 L × (M × N) = M(L · N) − N(L · M)
を示し,L = A, M = n, N = Aとおけばよい.
付録1.3 発散と回転
空間の各点でベクトルが定まる → ベクトル場
電磁場はその一例で,
空間の各点で電場と磁場というベクトルが与えられる.
ベクトルの形で表した微分演算子 grad = ∇ = (∂
∂x,
∂
∂y,
∂
∂z)
をナブラという.これとベクトルAとの内積 ∇ ·A = divA,
外積∇× A = rotAをそれぞれAの発散, 回転という.
付録1.4 ガウスの定理
ガウスの法則は電場を閉曲面に沿って積分した量についての
大域的で非局所的な法則になっている.
これを空間の各点において,その点だけの量によって定まる
局所的な法則に書き換えることを試みよう.
点P (x, y, z)を一つの頂点にし,各座標軸に沿って
∆x, ∆y, ∆zの長さを持つ直方体を考える.
連続的な電荷分布がρ(x, y, z)であるとして
ガウスの法則を適用しよう.
x軸に垂直な二つの面について 面積∆y ∆z
点P (x, y, z)を含む面上で面に垂直な電場の成分 Ex(x, y, z)
点P (x, y, z)を含む面の外向き法線ベクトル (−1,0,0)
点(x + ∆x, y, z)を含む面上で面に垂直な電場の成分
Ex(x + ∆x, y, z)
点(x + ∆x, y, z)を含む面の外向き法線ベクトル (1,0,0)
この二つの面についての電場の表面積分
[E(x + ∆x, y, z) · (1,0,0) + E(x, y, z) · (−1,0,0)]∆y ∆z
= [Ex(x + ∆x, y, z) − Ex(x, y, z)]∆y ∆z
≃∂Ex
∂x(x, y, z)∆x∆y ∆z
y軸, z軸に垂直な面についても同様に
[Ey(x, y+∆y, z)−Ey(x, y, z)]∆z ∆x ≃∂Ey
∂y(x, y, z)∆x∆y ∆z
[Ez(x, y, z)−Ez(x, y, z+∆z)]∆x∆y ≃∂Ez
∂z(x, y, z)∆x∆y ∆z
すべての面について足し合わせると∂Ex
∂x+
∂Ey
∂y+
∂Ez
∂z
∆x∆y ∆z = div E(x, y, z) dV
直方体の表面をS,体積をV とし,ガウスの法則を適用すると
ϵ0
∫S
E · dS = ϵ0
∫V
div E(x, y, z) dV =∫V
ρ(x, y, z)dV
2番目の等式から ϵ0 div E(x, y, z) = ρ(x, y, z)
これはガウスの法則に対応する局所的な微分形の法則で
後に学ぶ微分形のマクスウェルの方程式の一つの特別な場合
ϵ0
∫S
E · dS = ϵ0
∫V
div E(x, y, z) dV =∫V
ρ(x, y, z)dV
1番目の等式から ∫S
E · dS =∫V
div E dV
実はこれは任意の表面S, 任意の微分可能なベクトルE
について成り立ち,(ベクトル解析の)ガウスの定理という.
Sで囲まれる領域V を小さい直方体に分けると
内部の隣合う直方体について隣合う面では
表面積分が打ち消しあい,表面S上の表面積分しか残らない.
ガウスの定理:体積積分 ⇔ 表面積分
付録1.5 ストークスの定理
xy平面と平行な面上の長方形ABCDの各頂点を以下のように
与える.
A(x, y, z), B(x + ∆x, y, z), C(x + ∆x, y + ∆y, z),
D(x, y + ∆y, z)
経路ABCDAに沿って任意のベクトルHの線積分を考える.
ABに沿って,∫ x+∆x
xHx(x
′, y, z)dx′
BCに沿って,∫ y+∆y
yHy(x + ∆x, y′, z)dy′
CDに沿って,∫ x
x+∆xHx(x
′, y + ∆y, z)dx′
ABに沿って,∫ y
y+∆yHy(x, y′, z)dy′
全て足し合わせると∫ x+∆x
x
[Hx(x
′, y, z) − Hx(x′, y + ∆y, z)
]dx′
+∫ y+∆y
y
[Hy(x + ∆x, y′, z) − Hy(x, y′, z)
]dy′
≃∫ x+∆x
x
−∂Hx(x′, y, z)
∂y∆y
dx′+∫ y+∆y
y
∂Hy(x, y′, z)
∂x∆x
dy′
≃ −∂Hx(x, y, z)
∂y∆y∆x +
∂Hy(x, y, z)
∂x∆x∆y
=
∂Hy(x, y, z)
∂x−
∂Hx(x, y, z)
∂y
∆x∆y
= (rot H)z(x, y, z)∆x∆y
一方,rot H(x, y, z)の長方形ABCDでの表面積分を考えよう.
一般に曲面の表裏を決める際,
曲面の淵に沿って一周する向きのある閉曲線が
反時計回りとなる側が表,
時計回りとなる側を裏とする.
この曲面の裏から表への方向を外向きとする.
長方形ABCDの外向き法線ベクトルは
z軸方向の単位ベクトル(0,0,1)となる.
よって求める表面積分は(rot H)z(x, y, z)∆x∆yとなり,
はじめに求めた線積分の結果と一致する.
一般の閉曲線Cに沿った線積分と
その閉曲線で囲まれた面についての表面積分との間には
以下のストークスの定理が成り立つ.(線積分 ⇔ 表面積分)
∮C
H · ds =∫S(rot H) · dS
任意の閉曲面を教科書113ページの図5.17のように網目に分け
ると,内側の隣合う二つの網目で共通部分の線積分は互いに打
ち消すので最終的には考えている曲面の周に沿った積分だけが
残る.個々の網目については長方形の場合の結果が利用できる.
これらを用いてストークスの定理が導出できる.
Fがrot F = 0を満たせば,
(スカラー)ポテンシャルUが存在して,F = −∇Uとなる.
ストークスの定理より
∮C
F · ds =∫S(rot F) · dS = 0
となる.Fを質点に働く保存力,Uをポテンシャル,
dsを質点の微小変位とみなすと,保存力が閉曲線に沿って
質点にする仕事は0となる.
第4章 誘電体
4.1 誘電分極
4.2 電気双極子
4.3 分極電荷と電気分極
4.4 誘電分極と電束密度
4.5 電場のエネルギー
4.1 誘電分極
導体:その中で多数の電子やイオンが自由に移動できる
絶縁体:
電子が自分の属する原子核に束縛され,
或いは原子核間にはさまれて
多少の身動きや互いに入れ替わることは許されるとしても
物質中を動き回ることができない.
従って,電流を通さない.
電流が流れなくとも,絶縁体の中では電場が存在する.
電気的な性質のみを問題にするときに
絶縁体を誘電体と呼ぶ.この章では誘電体中の電場を考える.
電気双極子:僅かに lだけ離れた正負二つの点電荷±qの組
電気双極子モーメント:大きさがqlで,向きは負電荷から正電荷
分子は電気的に見て以下の二種類に分類できる
無極性分子:
対称性のある分子で分子内の正電荷の平均的中心と
負電荷の平均的中心が一致する.
個々の分子は電気双極子ではない.
例 H2, O2, N2, CO2, CCl4
極性分子:
正負電荷の平均的中心が一致しない.
個々の分子が電気双極子になっている.例 H2O, NH3
無極性分子に電場をかけると
僅かに正負電荷の平均的中心がずれて電気双極子となる.
無極性分子からなる誘電体に
左から右に向いた電場をかけると
正電荷が右寄りに負電荷が左寄りに偏り,
誘電体の右表面に正電荷が,左表面に負電荷が現れる.
このように電荷が偏る現象を誘電分極,
分極によって生じる電荷を分極電荷という.
電気双極子である極性分子に電場をかけると
電気双極子モーメントが電場と同じ方向を向くように回転し,
方向を変える.
極性分子からなる誘電体に左から右に向いた電場をかけると
誘電体全体として左から右に向く電気双極子モーメントを持つ.
電場をなくせば,ここの極性分子の電気双極子モーメントは
それぞれまったく勝手な方向を向き,誘電体全体として
電気双極子モーメントを持たない.
4.2 電気双極子
分極を電気双極子モーメントで表現する前に,
電気双極子モーメントの周囲の電位や電場を求めよう.
電気双極子が原点にあるとき
その電気双極子モーメントpが任意の方向を向くとして
位置ベクトルrにおける電位を求めよう.
但し,p = qlでr ≫ lとする.
教科書の図4.3に示すように,
点A, Bからベクトルrに垂線を下ろし,
その足をそれぞれC, Dとする.l = ABとおく.
r ≫ lのとき,PC ≃ r+,PD ≃ r−と考えてよいから,
r+ = r −l
2cos θ, r− = r +
l
2cos θとなる.
θはpとrのなす角である.これより,電位V は
V (r) =q
4πϵ0
1
r − l2 cos θ
−1
r + l2 cos θ
となる.
r ≫ lより,
1
r ∓ l2 cos θ
=1
r
1
1 ∓ l2r cos θ
∼1
r
(1 ±
l
2rcos θ
)
1
r − l2 cos θ
−1
r + l2 cos θ
∼l
r2cos θ
V (r) =q
4πϵ0
1
r − l2 cos θ
−1
r + l2 cos θ
=q
4πϵ0×
l
r2cos θ
p · r = pr cos θ = qlr cos θより
V (r) =p · r
4πϵ0r3
次は,電位V (r)から電場E(r)を求めよう.
V (r) =p · r
4πϵ0r3=
pxx + pyy + pzz
4πϵ0r3
Ex = −∂V
∂x= −
∂
∂x
pxx + pyy + pzz
4πϵ0r3
= −1
4πϵ0r3∂(pxx + pyy + pzz)
∂x−(pxx+pyy+pzz)
∂
∂x
1
4πϵ0r3
= −px
4πϵ0r3− (pxx + pyy + pzz)
−3
4πϵ0r4∂r
∂x
∂r
∂x=
∂√
x2 + y2 + z2
∂x=
2x
2√
x2 + y2 + z2=
x
r
Ex = −px
4πϵ0r3− (pxx + pyy + pzz)
−3
4πϵ0r4x
r
= −px
4πϵ0r3+
3x(p · r)4πϵ0r5
同様に,
Ey = −py
4πϵ0r3+
3y(p · r)4πϵ0r5
, Ez = −pz
4πϵ0r3+
3z(p · r)4πϵ0r5
E(r) = −p
4πϵ0r3+
3r(p · r)4πϵ0r5
=1
4πϵ0r3
3r(p · r)r2
− p
4.3 分極電荷と電気分極
分極した誘電体中の個々の分子は電気双極子モーメントという
ベクトルで表現できる.
観測できるのは個々の分子の電気双極子モーメントではなく
巨視的に粗視化された平均量である.
そこで,誘電体内の任意の点のまわりに
巨視的に見れば,点とみなせるような小さい体積δV を考える.
微視的に見れば,この体積は十分大きく,
その中にアボガドロ数程度の分子が入るものとする.
分極した分子の電気双極子モーメントをpiとする.
δV 全体で平均した量Pを電気分極,
または,分極ベクトルという.
P =
∑i
pi
δV
Pもベクトルで,
その大きさの次元はC · m−2となり,
電荷の面密度と同じ次元となる.
前節の4.2で電気双極子が原点にあるとき
その電気双極子モーメントpが任意の方向を向くとして
位置ベクトルrにおける電位を次のように求めた.
V (r) =p · r
4πϵ0r3
誘電体内のi番目の電気双極子の位置ベクトル:ri
そのモーメント:pi,誘電体外部のRという位置での電位
pi · (R − ri)
4πϵ0|R − ri|3
ri近傍の小体積dV 中の双極子モーメントによる電位
∑i
pi · (R − ri)
4πϵ0|R − ri|3∼
(∑i
pi) · (R − r)
4πϵ0|R − r|3
ここで,dV 中でのriの変化は小さいのでrという値で代表させ,
和は電気双極子モーメントについてのみとった.
rはdV の位置ベクトルを表す.
dV での電気分極(分極ベクトル)をP(r) =
∑i
pi
dVとすると
P(r) · (R − r)
4πϵ0|R − r|3dV
誘電体の領域V で体積積分することで,
誘電体全体が外部に作る電位V(R)がわかる.
V(R) =∫V
P(r) · (R − r)
4πϵ0|R − r|3dV
分極電荷が誘電体表面に面密度σ′で,
誘電体内部に体密度ρで分布するものとすると
V(R) =1
4πϵ0
∫S
σ′(r)
|R − r|dS +
1
4πϵ0
∫V
ρ(r)
|R − r|dV
となる.両式を比較してσ′(r)とρ(r)を求めよう.
表面積分と体積積分が混ざっているのでガウスの定理
∫S
AndS =∫V
divA dV
と,恒等式
divP(r)
|R − r|=
P(r) · (R − r)
|R − r|3+
divP(r)
|R − r|
を利用し,A = divP(r)
|R − r|を代入すると,
σ′(r) = Pn(r)(Pの誘電体表面での外向き法線成分)と
ρ(r) = −div P(r) を得る.(計算の詳細は教科書p.76-77参照)
導体の誘導電荷は導体表面にだけ現れたが,
誘電体の分極電荷は誘電体表面のみならず,
内部にも現れることに注意せよ.
また,分極電荷は分子内での電荷の移動,あるいは
極性分子の回転の結果として現れたもので,
導体上に現れた誘導電荷のように,
これを取り出すことができない.
分極電荷に対して,導体上の誘導電荷を真電荷という.
4.4 誘電率と電束密度
誘電体が存在するときに電場を与えるガウスの法則が
どのように一般化されるかを考えよう.
簡単のため,平行平板コンデンサーの金属極板の間に
誘電体を隙間なく挿入した状況を考える.
面密度σ (> 0)で正に帯電した極板に接する誘電体の表面に
面密度σ′ (< 0)の分極電荷が現れているものとする.
この極板を挟む高さの十分小さい円筒を考え,
ガウスの法則を適用する.底面は極板と平行であるとする.
誘電体内部に分布する分極電荷は正負同量あるので
円筒内で相殺される.ガウスの法則で考慮する電荷は
極板上の真電荷と誘電体表面の分極電荷のみでよい.故に,
ϵ0En dS = (σ − σ′) dS
となる.Enは電場Eの極板に垂直な成分であるが,
平行平板コンデンサー内部の電場は極板に垂直なので,
En = E = |E|.一方,前節で電気分極Pの誘電体表面での
外向き法線成分がσ′ = Pnを満たすことを示した.よって,
ϵ0En + Pn = σ
ここで,誘電体中の電場に分極の効果を繰り込んだ新たな
ベクトル場D = ϵ0E + Pを導入し,これを電束密度とよぶ.
この極板に垂直な成分をDnとすると,
平行平板コンデンサーの場合,
ガウスの法則は以下のように一般化される.
Dn dS = σ dS
これを任意の誘電体の場合に更に一般化すると,∫S
Dn dS =∫V
ρ dV
となる.両式とも右辺には真電荷しか現れないことに注意せよ.
ここで,領域V は誘電体を含んでもよく,
Sは領域V の表面を表す.
真空中の電気力線に対応するのは電束線である.
Sを貫いて外に出て行く電束線の総本数は
Sに包みこまれている真電荷に比例する.
ベクトル解析のガウスの定理を用いると,
この積分型のガウスの法則を微分型で表現できる.
divD = ρ
積分型の,或いは,微分型のガウスの法則はいずれも4つある
電磁場の基礎方程式(マクスウェル方程式)の中の一つである.
電気分極Pと電場Eの関係
後述する例外を除くと PとEは同じ向きとなるので,
P = χeϵ0E とおいて,電気感受率 χe (> 0)を導入する.
真空では,χe = 0.
D = ϵ0E + P = ϵ0E + χeϵ0E = ϵ0(1 + χe)E
= keϵ0E
= ϵE
ここで,ke = 1 + χe (> 1)を比誘電率,
ϵ = keϵ0 (> ϵ0)を誘電率という.
いくつかの例外(特殊な誘電体)
強誘電体: 電場に入れると強く分極し,電場から取り出しても
分極が残る(残留分極).ロッシェル塩やチタン酸バリウムなど.
PとEは比例せず,Eがある程度増大すると分極は飽和する.こ
れを分極飽和という.飽和に達した強誘電体にかけていた電場
を小さくすると,電場を大きくするときとは違う道筋で電気分
極が変化する.これを電気的ヒステリシス現象という.
異方性誘電体: PとEが平行とならない.ロッシェル塩など.
誘電率や電気感受率はテンソルとなる.
特殊な分極現象(電場をかけること以外の操作で分極が起こる)
圧電気:水晶,電気石,ロッシェル塩などの結晶を結晶軸に対し
て特定の方向に切った板に機械的な圧力や張力を加えると表面
に分極電荷が現れる現象.歪によって結晶中の正負電荷の分布
が変化し,それぞれの中心位置がずれることが原因と考えられ
る.逆に,このような物質に電圧を加えると結晶はわずかに伸
縮する.この振動を利用したのが水晶(クオーツ)時計である.
パイロ電気: 電気石など加熱すると表面に分極電荷が生じる現
象.冷却すると逆の電荷が現れる.温度によって分極が変化する
のが原因と考えられる.
地震と圧電気
地震による地殻変動では岩石に強い圧力が加わる.
この作用で圧電気が生じ,電磁波として伝播するのであれば,
地震の予知に繋がるであろう.
地震に関連する電磁気現象は数多く知られ,その一部は,
迷信と思われてきた地震にまつわる言い伝え,動物の異常行動,
異常な気象現象などを科学的根拠となってきた.
地震となまずの関係を電磁気学の観点から再考してみるとよい.
誘電体を隙間なく挟んだ平行平板コンデンサーの電気容量
正に帯電した極板の近くでガウスの法則を適用すると
D dS = ϵE dS = σ dS → E =σ
ϵ→ V =
lσ
ϵ=
Ql
Sϵ=
Q
C
∴ C = ϵS
l ここで,Sは極板の面積,lは極板間距離.
誘電体を挟まない場合の C = ϵ0S
lで,ϵ0 → ϵとしたもの.
このように誘電体を挟むと電気容量が増える.
同様に,一様な誘電率ϵを持つ誘電体でのクーロンの法則は
F =1
4πϵ
qq′
r2 (教科書p.82の例題4参照)
電場に対する境界条件 <法線成分> 図4.16
2種類の一様な誘電体の境界面を挟む(中心軸は境界面に直交)
高さh, 底面積dSの微小円筒にガウスの法則を適用
円筒内の境界面が平面とみなせるよう,また,
円筒内の電荷密度が一定とみなせるようにdSを小さくとる.
境界面の単位法線ベクトル:ν
上面の外向き単位法線ベクトル:ν
下面の外向き単位法線ベクトル:−ν
誘電率ϵ1の物質中の電束密度D1, 電場E1
誘電率ϵ2の物質中の電束密度D2, 電場E2
h → 0の極限をとり,側面を貫く磁束密度を無視
σ:境界面の真電荷の面密度
[D1 · ν + D2 · (−ν)]dS = σdS
D1n = D1 · ν, D2n = D2 · νとおく.
D1n − D2n = σ
σ = 0ならば,D1n = D2n, ϵ1E1n = ϵ2E2n
ここで,E1n = E1 · ν, E2n = E2 · ν
電場に対する境界条件 <接線成分> 図4.17
境界面に直交する面内に小長方形ABCDをとる.
境界面の単位接線ベクトル:t (l t =−→AB = −
−−→CD)
閉曲線ABCDAに沿った電場の線積分は0
(ストークスの定理によれば,
この線積分が電場の回転の面積分となるが,
電場は電位の勾配で与えられるから,電場の回転は0.
rot (gradV ) = 0が恒等式.
rotE = 0 ならば,
E = −gradV を満たすV が存在することを思い出そう)
辺BC, DAの長さを0にする極限を考え,
ここからの線積分の寄与を無視.
E1 ·−→AB + E2 ·
−−→CD = (E1 − E2) · t l = 0
E1t = E2t,D1t
ϵ1=
D2t
ϵ2
ここで,E1t = E1 · t, E2t = E2 · t
境界面の単位法線ベクトル νとE1, E2がなす角を
それぞれ,θ1, θ2とすると,
ϵ1E1n = ϵ2E2n → ϵ1E1 cos θ1 = ϵ2E2 cos θ2
E1t = E2t → E1 sin θ1 = E2 sin θ2tan θ2tan θ1
=ϵ2ϵ1
但し,境界面に真電荷は存在しない.
4.5 電場のエネルギー
平行平板コンデンサの中には一定の電場が生じる.
この電場が蓄えているエネルギーを求める.
両極板に±qの電荷,電場E′, 極板間距離x, 極板面積S
極板間に誘電率ϵの誘電体をつめる.
負極板から電荷dq > 0を正極板に運ぶための仕事:
dW = dq E′ x
正極板を挟む円筒にガウスの定理を適用:
ϵ E′ S = q → dq = ϵ S dE′
dW = Sx ϵE′ dE′
W = Sx ϵ∫ E
0E′ dE′ = V
ϵE2
2
V = Sxは極板間体積.
この仕事Wが極板間に蓄えられた電場のエネルギーに等しい.
単位体積あたりの電場のエネルギー,すなわち,
電場のエネルギー密度をueとすると
ue =ϵE2
2=
E · D2
この結果は平行平板コンデンサのみならず,一般に成り立つ.