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第1章 地球温暖化問題について 1.1地球温暖化問題について 1 1.1.1 地球温暖化のしくみ 1 1.2 地球温暖化が及ぼす影響 2 1.2.1 地球全体の温暖化予測 2 1.2.2 地球温暖化の影響 2 1.3 地球温暖化防止に向けた取組の動向 2 1.3.1 国際的な動向と我が国の対応 2 1.3.2 船橋市の取組状況 2

第1章 地球温暖化問題について - Funabashi · 2021. 3. 16. · 第1章 地球温暖化問題について - 2 - IPCC*1によれば、世界的な大気中の二酸化炭素濃度は、1750年

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第1章 地球温暖化問題について

1.1地球温暖化問題について 1

1.1.1 地球温暖化のしくみ 1

1.2 地球温暖化が及ぼす影響 2

1.2.1 地球全体の温暖化予測 2

1.2.2 地球温暖化の影響 2

1.3 地球温暖化防止に向けた取組の動向 2

1.3.1 国際的な動向と我が国の対応 2

1.3.2 船橋市の取組状況 2

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第1章 地球温暖化問題について

- 1 -

1.1 地球温暖化問題について

1.1.1 地球温暖化のしくみ

(1) 温室効果ガスによる気温の上昇

大気中には、窒素と酸素が4:1の割合で含まれ、ほぼ100%がこれらの物質で占められていま

すが、そのほかに二酸化炭素,メタン,一酸化二窒素,フロン類などのガスがわずかに含まれて

います。二酸化炭素やメタンなどは、太陽から地球に入ってくるエネルギーは良く通しますが、

地球から宇宙空間へ放出するエネルギーは通しにくいという性質をもっています。このような働

きは、温室効果と呼ばれ、二酸化炭素、メタンなどの温室効果を有する物質は温室効果ガスと呼

ばれています。

これらの温室効果ガスが増加することによって、地球全体として気温が上昇し、さまざまな問

題を引き起こすことが懸念されているのです。

図 1.1 地球温暖化のしくみ

通常、地球では、太陽から届くエネルギーと釣り合ったエネルギーが宇宙

へ向けて放出されます。 表面温度約6000度の太陽から届くエネルギーは

主に可視光(目に見える光)で届き、これは地球の大気はほぼ透過します。

一方、表面温度約27度の地球からは目に見えない赤外線という波長でエネ

ルギーが放出されます。 二酸化炭素などの物質はこの赤外線を吸収し、一

部を地球側へ跳ね返す性質を持っています。

資料/全国地球温暖化防止活動推進センター

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第1章 地球温暖化問題について

- 2 -

IPCC*1によれば、世界的な大気中の二酸化炭素濃度は、1750年

以前の約280ppm から、2005 年には379ppmに増加しましたが、そ

の原因として、産業革命以降の化石燃料の使用増加をはじめとす

る様々な人為的な要因が大きく影響していることが、報告(IPCC

第4次評価報告書、2007年2月)されています。

2005 年における大

気中二酸化炭素濃度

は、氷床コアから決定された、過去約65 万年間の

自然変動の範囲(180~300ppm)をはるかに上回っ

ており、二酸化炭素濃度の増加率は、年ごとの変化

が大きいものの、 近10 年間の上昇率(1995~2005

年平均:年当たり1.9ppm)は、連続的な大気の直接

観測を開始して以来の値(1960~2005 年平均:年

当たり1.4ppm)と比べて大きい値となっています。

また、同報告では、人為起源の二酸化炭素の増加

が、地球温暖化の大きな要因となっている可能性が

示唆されており、二酸化炭素の排出抑制対策が重要

となります。

図 1.3 過去1000年の地球の地上気温の変動

*1 IPCC(Intergovernmental

Panel on Climate Change)

気候変動に関する政府間パネル。

国連環境計画(UNEP)と世界気

象機関(WMO)が共催し、各国

政府が参加する会合。温暖化のメ

カニズム、温暖化が環境や社会経

済に与える影響、および対策につ

いての知見の整理をテーマとし

ています。

資料/IPCC第3次評価報告書

図 1.2 二酸化炭素の大気中濃度

資料/IPCC第4次評価報告書

1万年前 5千年前 2005年現在

温度計(赤)、年輪、珊瑚、氷床コア(青) からのデータ

1961~

1990年

の平

均か

らの

気温の

偏差

(℃

)

過去1000年

北半球

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第1章 地球温暖化問題について

- 3 -

図 1.5 世界の二酸化炭素排出量 図 1.5 人口一人当たりの二酸化炭素排出量

(2004年) (2004年)

資料/ エネルギー経済統計要覧(EDMC編)より作成

(2) 世界の温室効果ガス排出状況

世界の二酸化炭素排出状況を国別にみると、日本の排出量は全世界の4.8%を占め、アメリカ、

中国、ロシアに続いて、第4位の二酸化炭素排出国となっています。

また排出量の多い国について、人口一人当たりの排出量をみますと、先進工業国がその上位を

占め、途上国の数倍の二酸化炭素を排出していることが分かります。

(3) わが国の温室効果ガス排出状況

わが国の二酸化炭素排出量は2004年度で12億8,600万t-CO2となっており、1990年度と比較する

と12.4%の増加ですが、 近では、横ばいの傾向が続いています。

1,2861,277

1,144 1,1531,161

1,1531,226

1,239 1,2351,199

1,2341,255

1,2391,284

1,213

9.26 9.29 9.33 9.249.70 9.77 9.85 9.79

9.48 9.74 9.88 9.7410.02 10.06 10.07

0

200

400

600

800

1,000

1,200

1,400

1,600

1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004(年度)

0

2

4

6

8

10排

量(

 

 

ンCO2)

量(

 

人)

図 1.6 わが国の二酸化炭素排出量

総排出量265億t-CO2

メキシコ

1.5%

オーストラリ

1.3%

その他

29.3%

中国

18.1%

イタリア

1.7%

カナダ

2.0%韓国

1.8%イギリス

2.2%

インド

4.3%ドイツ

3.2%

フランス

1.5%

アメリカ

22.1%

ロシア

6.0%日本

4.8%

10.3

20.0

1.1

1.1

3.7

9.7

11.1

16.9

10.0

7.9

0 5 10 15 20 25

インド

アフリカ

中国

イタリア

日本

イギリス

ドイツ

ロシア

カナダ

アメリカ

(t-CO2)

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第1章 地球温暖化問題について

- 4 -

1.2 地球温暖化が及ぼす影響

地球温暖化による気候変動の予測や、その結果として起こりうる自然や社会への影響について

は、IPCCによりレポートが公表されています。また日本における影響については、環境省より「地

球温暖化の日本への影響2001」や「地球温暖化の影響 資料集」として発表されています。

これらの報告を中心に、地球温暖化が及ぼす影響について紹介します。

1.2.1 地球全体の温暖化予測

世界の平均気温は、19世紀以降の約100年間で約0.74(0.56~0.92)℃上昇しており、 後の氷

河期が終わってからの1万年間に地球の気温が約1℃上昇したことに比べると、近年はその数十

倍のスピードで気温が上昇したことになります。

図 1.7 気温、海面水位及び北半球の雪氷面積の推移

資料/IPCC第4次評価報告書

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第1章 地球温暖化問題について

- 5 -

IPCCでは、今後の二酸化炭素の排出状況を様々に想定したシナリオを設定し、気温の上昇や、

海面水位の上昇等について予測を行っています。IPCCの4次評価報告ではそのうちの6種類のシナ

リオについて紹介されています。それによると、21世紀末における気温は1980~1999年のと比較

して、 も二酸化炭素の排出が少ないシナリオで1.1~2.9℃の上昇、 も排出が大きなシナリオ

では2.4~6.4℃も上昇すると予測されています。

図 1.8 シナリオ別の地球平均気温の予測結果

表 1.1 シナリオの概要

記号 概 要

A1FI 高度成長社会、化石エネルギー源重視

A1T 高度成長社会、非化石エネルギー源重視

A1B 高度成長社会、各エネルギー源バランス重視

A2 地域発展社会、多元的

B1 持続可能社会、地域間格差縮小

B2 持続可能社会、地域対策重視

資料/IPCC第4次評価報告書

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第1章 地球温暖化問題について

- 6 -

1.2.2 地球温暖化の影響

温暖化にともなう気候の変化は、地球規模で重大な問題を引き起こすほか、人々の暮らしも様々

な影響を受けると予想されています。

(1) 世界における影響

① 海面水位の上昇と沿岸域の浸食

温暖化による気温の上昇は、北半球の高緯度地方で特にはげ

しいと考えられており、氷河や氷床の融解(*1)や海水の膨張に

よる海面水位の上昇が予測されています。IPCCによれば、21世

紀末までに海水面が18cm~59cm程度上昇すると予測されていま

す。

2080年までに海面が40cm上昇すると仮定すると、被害を受け

る人数は、世界中で2億人にも上るものと予想されています。

海面の上昇は沿岸域の浸食を引き起こし、そこに生息する生物の死滅をまねくとともに、低地・

島嶼の水没や津波・高潮による被害の増加が予想されています。

② 豪雨や干ばつなどの異常気象の増加と水資源への影響

温暖化は、東南アジアなど多雨地域では豪雨や洪水の増加、北米地域など乾燥地域では、干ば

つなどが進み、世界全体に極端な気象変動をもたらします。

また、その結果として水需給のバランスが崩れ、地域ごとの水資源の格差が広がることが予測

されています。水資源の変動は人の生存はもとより、農業などへの影響も予想されます。

③ 気候帯の変化による生態系への影響

21世紀末の平均気温は約1.1~6.4℃の上昇が予測されていま

すが、仮に3~4℃平均気温が上昇すると、気候帯が年間4~

5kmで北に移動することになります。樹木は風や動物によって

分布を広げていきますが、移動可能速度が も早いものでも、

年間2km程度で、気候変化に対応できずに生育できなくなる可能

性があります。また、森林の崩壊は、そこに住む生物を含む生

態系全体の崩壊を意味し、自然に与える影響は甚大です。

④ 農業生産への影響

農業は「気候が変わらないこと」を前提に成立しています。そのため気候変動が農業生産に与

える影響は測りしれないものがあり、深刻な食糧供給不足が生じる可能性があります。

京都大学と国立環境研究所によるアジア太平洋温暖化対策統合評価モデル(AIM)の分析に

よると、米については若干増加する国があるものの、小麦やトウモロコシでは大幅な生産量の低

下が見込まれています。

表 1.2 樹木の移動可能速度 植物 移動速度(m/年)

モミ、シラビソ 40~ 300

ハンノキ、ヤシャブシ 500~2000

クリ 200~ 300

ブナ 200~ 300

クルミ 400

エゾマツ、トウヒ 80~ 500

マツ 1500

カシワ、コナラ 75~ 500

ニレ 100~1000

(参考)気候帯の移動:1500~5500m/年

資料/「地球温暖化の重大影響」環境省

*1 近年、南極の巨大棚氷(氷が海上

に張り出した部分)の急速な崩壊・流

出や、アルプスやアラスカ等、山岳地

帯における氷河の後退現象。シベリア

の永久凍土層の融解現象が観測され

ており、加速する温暖化の影響とされ

ています。

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第1章 地球温暖化問題について

- 7 -

⑤ マラリアなど熱帯性の感染症の増加

人の健康への影響としては、熱波や高温期間の持続に伴う心臓病や呼吸器系の病気および死亡

の増加があげられます。また、間接的には、伝染病を媒介する熱帯性生物の繁殖や気象災害の増

加などによるマラリアやコレラなどの伝染病が蔓延する可能性が高まります。

(2) 日本における影響

① 砂浜の浸食と低地の水没

温暖化による海面上昇の影響として、自然海岸の浸食

があげられます。砂浜は、日本の海岸の24%にすぎませ

んが、海面が30cm上昇すると、現存する砂浜の半分以上

が消失すると予測されています。

また海面が1m上昇すると、満潮時に海面下となる土

地は2,339km2、人口は410万人(現在の4倍)に該当し、

被害を避けるには堤防かさ上げなどその対策が必要に

なり、その費用は11兆円程度になるものと考えられてい

ます。

② 水不足や水害の深刻化

温暖化により降雪が雨になったり融雪時期が早まるようになると、河川の流量が冬場に増加し

春先に減少するようになり、農業利水などで水不足が発生すると予測されています。

また、温暖化は気候の極端化を招くとされていますが、近年は全国的に渇水の発生が増加して

います。

③ 食料不足の懸念

温暖化により世界の農作物の需給が逼迫すると、

食料の多くを輸入に依存する日本にとって大きな

影響が考えられます。

二酸化炭素の増加や気温の上昇が生じると、米の

生産にとって耕作適期が広がるなどプラスの効果

もありますが、国内では東北地方以外では減収や収

量の不安定化が予測されています。また、西南日本

では、米の品種をインディカ米に切り替える必要が

生じたり、米の食味が落ちることが予想されていま

す。ムギやトウモロコシについては、北海道で増収

になるものの、その他の地域では、減収する地域が

増えると予測されています。

0 20 40 60 80 100

沖縄県鹿児島宮崎県大分県態本県長埼県佐賀県福岡県高知県愛媛県香川県徳島県山口県広島県岡山県島根県鳥取県和歌山奈良県兵庫県大阪府京都府三重県愛知県静岡県福井県石川県富山県新潟県神奈川東京都千葉県茨城県福島県山形県秋田県宮城県岩手県青森県北海道

図 1.9 海面の上昇と

砂浜の浸食面積率との関係

資料:「ファクトシート」全国地球温暖化防止

活動推進センター

図 1.10 水稲栽培の脆弱性 資料:「STOP THE 温暖化」環境省

(%)

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第1章 地球温暖化問題について

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図 1.11 地球温暖化のもたらす健康への影響

資料:IPCC地球温暖化第3次評価報告書より作成

④ 健康への影響

国内の地表面気温は、今後100年で排出量が も少ないシナリオで1.1~2.9、 も多いシナリオ

で2.4~6.4℃上昇すると推定されていますが、日平均気温が27℃、日 高気温が32℃を越えると、

熱射病などの患者が急増するとともに、高齢者の死亡率が増加すると言われています。

また死亡率の高い熱帯性マラリアが、 悪の場合、2100年に西日本一帯について、流行危険地

域に入る可能性が指摘されています。

環境への影響

人の健康への影響

・暑熱、熱波の増加

・異常気象の頻度、強度の変化

・媒介動物等の生息域、活動の拡大

・異常気象の頻度、強度の変化

・海面上昇による人口移動や社会インフラ被害

・大気汚染との複合的な影響

・熱中症、死亡率の変化

 (循環器系、呼吸器系疾患)

・障害、志望の増加

・動物媒介性疾患(マラリア等)の増加

・下痢や他の感染症の増加

・ぜんそく、アレルギー疾患の増加

・障害や各種感染症の危険性の増加

直接影響

間接影響

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第1章 地球温暖化問題について

- 9 -

(3) 船橋市における影響

気象庁の発表によると、1898年から2005年までの気象庁の観測点における年平均地上気温平年

差を解析した結果、わが国の気温は100年につきおよそ1.06℃の割合で上昇しており(気候変動監

視レポート2005)、温室効果ガスの増大などの人為的な影響が地上気温の上昇傾向に現れている

可能性が高いとあります。

図 1.12日本と千葉の年平均気温の経年変化(1898~2005年;千葉は1967~)

千葉気象台における気温の観測結果を同様に解析すると(右図)、1967年以降の40年間で、お

よそ1.5℃以上の気温の上昇が認められます。

千葉気象台の現在の年平均気温(平年値)は15.4℃ですが、今後100年で6.4℃程度上昇した場

合の船橋市の平均気温は21~22℃程度になるものと予想できます。現在よりも熱帯に近い状況に

なり、マラリアやテング熱等の熱帯に特有の感染症が激増する恐れがあります。

また、船橋市は海に面した地域であり、ふなばし三番瀬海浜公園とその周辺が「関東の富士見

百景」に選ばれるほどの風光明媚な地域ですが、温室効果ガスの増加に伴う気候の熱帯化の影響

による台風の増加、海水面の上昇による浸水等も懸念されるところです。

-2.0

-1.5

-1.0

-0.5

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

差(

℃)

-2.0

-1.5

-1.0

-0.5

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

1970 1980 1990 2000

【千葉気象台】

年平均気温の平年差(平年値との差)を平均したものを示す。太線(青)は,平年差の5年移動平均を示し,直線(赤)

は平年差の長期的傾向を直線として表示したもの;出典:気候変動監視レポート2005(気象庁)及び気象庁データ

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第1章 地球温暖化問題について

- 10 -

1.3 地球温暖化防止に向けた取組の動向

1.3.1 国際的な動向と我が国の対応

(1) IPCCの設置

1980年代より科学者によって地球温暖化問題についての知見が整理されてきたことにより、

世界の人々にその危険性が認識されはじめました。各国政府においても今後の対応について共同

の取組みを進める機運が高まり、1988年には、国連環境計画(UNEP)と世界気象機関(WM

O)の共催による、地球温暖化をテーマにした科学的研究を進めるための「気候変動に関する政

府間パネル(IPCC)」が設置されました。IPCCでは、地球温暖化の科学的知見や環境へ

の影響等を検討した報告書を公表しています。

(2) 気候変動枠組み条約の締結

IPCCによる科学的調査と併せて開催された1989年の「大気汚染と気候変動に関する環境

大臣会議」では、温室効果ガスの排出量を安定化させる必要性が初めて認識されました。

その後1992年に、気候に影響を及ぼさない水準での温室効果ガス濃度の安定化を目標とした

「気候変動に関する国際連合枠組条約(気候変動枠組条約)」が採択され、同年の地球サミット

(リオデジャネイロ-ブラジル)において日本を含めた155か国が署名を行いました。この条約で

は、先進工業国に対して二酸化炭素排出量を1990年の水準に戻すことを目指した政策措置をとり、

その効果の予測等を締約国会議に通報し、審査を受けることが求められています。

我が国では1992年に同条約を批准し、1994年に条約が発効しました。

(3) 締約国会議の開催

気候変動枠組条約の採択を受けて、1995年に第1回締約国会議(COP1)がドイツのベル

リンで開催されました。翌1996年に行われた第2回締約国会議(COP2)では、「温室効果ガ

スの排出及び吸収に関し2005年,2010年,2020年という特定された期限の中で、排出抑制及び相

当の削減のための数量化された法的拘束力のある目的」を定めることが盛り込まれました。

(4) 京都議定書の採択

1997年12月には京都で第3回締約国会議(COP3)が開催され京都議定書が採択されまし

た。この中で、先進工業国については6種類の温室効果ガスを対象に2008年から2012年までの期

間において、1990年の排出量に対して少なくとも5%の排出量削減が目標とされており、日本に

対しても6%の削減が割り当てられました。

また、森林を二酸化炭素の吸収源としてカウントできることや、共同実施や排出権取引など

の国際的な柔軟性措置が認められ、以後の締約国会議で協議していくことが決められました。

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第1章 地球温暖化問題について

- 11 -

対象ガス 二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素、HFC、PFC、SF6

基準年 1990年(HFC、PFC、SF6については、1995年でも可)

最初の目標期間 2008年から2012年(5年間の合計排出量を1990年の5倍量と比較)

削減目標

①先進工業国全体の対象ガスの総排出量を、最初の目標期間中に基準年に比べて、

少なくとも5%削減

②国別の削減量は、日本6%、米国7%、EU8%等

吸収源の扱い 1990年以降の新規の植林、再植林及び森林減少により増減した温室効果ガス

吸収量は排出量から差し引く。

京都メカニズム

(柔軟性措置)

国際的な協力・強調によって削減目標を定める手段として以下のような仕組みを設ける。

①排出権取引

関係国において各国の数値目標の一部を「排出権」として取り引きができる仕組み。自国

のみで目標達成が困難な場合、目標に余裕のある国から排出権を購入できる。

②共同実施

関係国において相互のプロジェクトで得られた排出削減量を配分できる仕組み。

③クリーン開発メカニズム

関係国とそれ以外の国(開発途上国)との間のプロジェクトによる削減量を一定の認証手

続きを経て配分する仕組み。

(5) 締約国会議の開催と京都議定書の発効

1998年11月には第4回締約国会議(COP4)が開催され、

「ブエノスアイレス行動計画」が採択されました。これは京都

議定書の発効準備等(*1)具体的作業計画を定め、2000年に開催

予定の第6回締約国会議(COP6)までにこれらの作業を完

了することが目標とされました。

1999年10月に行われた第5回締約国会議(COP5)では、

「京都議定書の早期発効をめざす」とした「ブエノスアイレス

行動計画の実施」が採択されました。

第6回締約国会議(COP6)は、2000年11月にオランダのハーグで開催されましたが、森林

吸収量の取扱い等で合意に至らず、翌年に再開会合を開くことになりました。

2001年3月には、米国ブッシュ大統領が京都議定書の非支持を表明し、議定書の発効が危ぶまれ

る状態になりました。同年7月開催されたCOP6の再開会合では、各国の対立点について閣僚に

よる合意(ボン合意)がなされ、11月に開催された第7回締約国会議(COP7)で、京都メカ

ニズム、吸収源等の運用ルール等が採択されました。

2002年には持続可能な開発に関する世界首脳会議(ヨハネスブルクサミット)や第8回締約国

会議(COP8)が開催されました。2004年11月、ロシアが京都議定書を批准しました。これに

より、①55カ国以上が締結すること、②締結した条約付属書Ⅰ国の1990年の二酸化炭素排出量を

合計した量が、全付属書Ⅰ国の二酸化炭素の総排出量の55%以上を占めることという2つの条件を

満たしたため、2005年2月16日に京都議定書は発効することとなりました。

表 1.3 京都議定書の概要

*1 ブエノスアイレス行動計画の項目

①資金メカニズム

②技術開発および移転

③気候変動による悪影響及び対応策に

よる影響への対処

④共同実施活動(AIJ)

⑤京都メカニズム

⑥京都議定書の締約国会合への準備

(議定書の遵守問題を含む)

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第1章 地球温暖化問題について

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(6) 我が国の地球温暖化対策推進

京都会議で我が国に割り当てられた6%の削減目標を達成するため、政府の地球温暖化対策推

進本部は1998年6月に「地球温暖化対策推進大綱」(以下、大綱)を策定。緊急に取り組むべき

対策として、あらゆる革新的技術の駆使等による省エネや新エネの導入推進、国民のライフスタ

イルの見直し・支援、政府による率先実行などを掲げました。

また、同年10月には、国内における今後の温暖化対策の法的枠組みとなる「地球温暖化対策の

推進に関する法律(地球温暖化対策推進法)」が制定されました。この法律は、「温室効果ガス

の排出の抑制等には、全ての主体が参加した幅広い取組みが不可欠である」との考えのもと、今

日の段階からの取組として国、地方公共団体、事業者及び国民それぞれの責務を明らかにすると

ともに、各主体の取組みを促進する法的枠組みを与えるものです。具体的には、国、地方公共団

体に温室効果ガスの排出抑制のための実行計画の策定を義務づけているほか、事業者には自主的

な取組みと公表を求めています。また、国民についても、日常生活での排出抑制の努力と、国や

地方公共団体の施策の実施に協力することが明記されています。

2002年3月に、大綱の改定を行うとともに、地球温暖化対策推進法の改定を行い、京都議定書発

効に向けた国内体制の整備を行いました。それを受け、同年6月に、我が国は、京都議定書の締結

を行いました。

2004年には、大綱の更なる見直しに向け、検討を進めている 中に、ロシアの京都議定書批准

により議定書が発効したことから、京都議定書目標達成計画策定に向けての検討を開始し、翌2005

年になって計画の策定に至り、気候変動枠組み条約事務局に提出するはこびとなりました。

2006年には、地球温暖化対策推進法の改定を行い、一定規模以上の事業者は温室効果ガス排出

量を国へ報告する制度が施行されました。

京都議定書目標達成計画の概要

目指す方向

○京都議定書の6%削減約束の確実な達成 ○地球規模での温室効果ガスの長期的・継続的な排出削減

基本的考え方

○環境と経済の両立 ○技術革新の促進 ○すべての主体の参加・連携の促進(国民運動、情報共有)

○多様な政策手段の活用 ○評価・見直しプロセスの重視 ○国際的連携の確保

目標達成のための対策と施策

1.温室効果ガスごとの対策・施策(温室効果ガス削減対策、森林吸収源、京都メカニズム)

2.横断的施策(国民運動、公的機関の率先、排出量の算定・報告・公開、ポリシーミックスの活用)

3.基盤的施策(排出量・吸収量の算定体制、技術開発・調査研究、国際的連携確保、国際協力推進)

推進体制等

○毎年の施策の進捗状況等の点検、2007年度の計画の定量的な評価・見直し

○地球温暖化対策推進本部を中心とした計画の着実な推進

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第1章 地球温暖化問題について

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国内外における取組みの経緯を整理すると以下のようになります。

世界の動き 日本の動き 1985 ・フィラハ/ベラジオの会議

科学者が知見を整理し、温暖化の危険と対策の

必要性を訴えた。

1988 ・トロント会議:2005年までに1990年比でCO2を 20%削減することを宣言

・気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の設置

1989 ・ハーグ環境首脳会議 国際条約の必要性を指摘(ノルトヴェイク宣言)

・環境庁長官の地球環境問題担当大臣としての 任命開始

1990 ・IPCCが第1次レポートを公表 温暖化対策の必要性を明記

・政府が地球温暖化防止行動計画を決定 2000年に、CO2などの排出量を1990年レベルに 戻すとの目標を設定。

1992 ・気候変動枠組条約の採択 ・地球サミットにて同条約の署名開始

1993 ・気候変動枠組み条約への加入 ・環境基本法の制定 地球環境保全に法政的基礎を与える。

1994 ・気候変動枠組み条約の発効 ・環境基本法に基づき、環境基本計画を閣議決定 地球温暖化対策についての長期、中期及び当面の

方針を定める。 1995 ・気候変動枠組条約第1回締約国会議(COP1)の

開催 ・IPCCが第2次レポートを公表

既に地球の温暖化が始まっていることを警告し、

対策の強化を訴えた。

1996 ・気候変動枠組条約第2回締約国会議(COP2)の

開催

1997 ・気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)の開催、京都議定書が採択 2008~2012年までの排出量について、法的拘束力のある目標を設定

1998 ・気候変動枠組条約第4回締約国会議(COP4)の

開催 ブエノスアイレス行動計画の採択

・地球温暖化対策推進大綱決定 ・「地球温暖化対策の推進に関する法律」が国会で

成立 1999 ・気候変動枠組条約第5回締約国会議(COP5)の

開催

2000 ・気候変動枠組条約第6回締約国会議(COP6)の

開催 ・「循環型社会形成推進基本法」及び循環関連法が 成立

2001 ・気候変動枠組条約第6回締約国会議(COP6)の

再開会合の開催 ・気候変動枠組条約第7回締約国会議(COP7)の

開催

2002 ・持続可能な開発に関する世界首脳会議(ヨハネス

ブルクサミット)の開催 ・気候変動枠組条約第8回締約国会議(COP8)の

開催

・地球温暖化対策推進大綱の改定 ・「地球温暖化対策の推進に関する法律」の改正 ・京都議定書の批准

2003 ・気候変動枠組条約第9回締約国会議(COP9)の

開催

2004 ・気候変動枠組条約第10回締約国会議(COP10)

の開催 ・ロシアが京都議定書批准

2005 ・京都議定書の発効 ・「地球温暖化対策の推進に関する法律」の改正 ・京都議定書目標達成計画の策定

2006 ・温室効果ガス排出量算定報告公表制度施行 ・「日本国の割当量に関する報告書」を提出

2007 ・IPCCが第4次レポートを公表 ・京都議定書目標達成計画の見直し(予定)

表 1.4 国内外における取組みの経緯

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1.3.2 船橋市の取組状況

(1) 船橋市環境基本条例

船橋市では、地球環境問題をはじめとする今日的な環境課題や市民のニーズに応えるため、1997

年3月に「船橋市環境基本条例」を制定しました。この条例に基づき環境施策を総合的・計画的に

推進するためのマスタープランとして「船橋市環境基本計画」を策定しました。

(2) ふなばしエコオフィスプラン

市は、行政機関として様々な事業を展開するなど、一事業者、一消費者として各種製品やサー

ビスを消費しており、市が率先して環境保全に配慮した活動を実践することは、環境への負荷を

減らすとともに、市民、事業者の取組みを促すことにもつながるものと考えています。

また、国が定めた地球温暖化対策推進法第21条によれば、「都道府県及び市町村は、京都議定

書目標達成計画に即して、当該都道府県及び市町村の事務及び事業に関し、温室効果ガスの排出

量の削減並びに吸収作用の保全及び強化のための措置に関する計画(以下この条において「地方

公共団体実行計画」という。)を策定するものとする。」となっており、自治体の事務事業につ

いて実行計画を策定することが義務付けられています。

このため、船橋市では、平成15年4月に「ふなばしエコオフィスプラン」(船橋市環境保全率先

行動計画)を策定し、市自らのエネルギーや用紙類の使用節減のほか、環境への負荷の少ない製

品を購入するグリーン購入、公共建築物のグリーン化などに取り組んでいます。