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Futures Insights 先物動向 第1号 ― 2014年3月

先物動向 Future Insights ブレントとオマーンのスプ …...Futures Brent Oman Spread Insights アジア向けフォーティーズ原油の 裁定取引 ブレント/オマーンのスプレッドは

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Futures

Insights 先物動向

第1号

2014年

3月

Futures Insights Brent Oman Spread

はじめに

現在原油の主要価格指標として3つのグ

レード、つまりWTI、ブレント、オマー

ンが登場している。この3つのグレード

どれもが、その地理的側面や品質面で優

位性を持つ。

本レポートでは、主にこれら3つのう

ち、世界の海上原油のほぼ全ての価格を

設定し、東西スプレッドやスイート/サ

ワー・スプレッドの主たる参照先となる

2つのグレード、つまりブレントとオマ

ーンに焦点を当てることにする。

オマーン原油の背景

オマーン・ブレンドは中質サワー原油グ

レードで、ここ10年はドバイ原油の中心

として、中東およびアジアで最も重要な

価格参照および取引グレードとなってい

る。

オマーン原油は、スエズ以東で唯一、

現物引き渡しがある上場原油取引であ

る。ドバイ・マーカンタイル取引所

(DME)のオマーン原油取引は、

2007年に開始された。この取引は、

ドバイのベンチマーク価格の根幹であ

り、実質的に日量5万バレル弱の生産

量グレードであるドバイ価格を決定し

ている。

さらに、サウジアラビアやイラクといっ

た中東の主要産油国は、ドバイ/オマー

ンを1対1で使用する価格公式により、ア

ジア顧客向けの正式売却価格を決定して

いる。一般的にドバイ価格はオマーン原

油が設定するので、アジアに販売される

中東源泉の原油は、オマーン市場に大き

く依存している。そのため、石油精製会

社、石油生産者そしてトレーダーにとっ

ては、スエズ以東で最も重要な価格指標

となっている。

オマーン原油の生産量は現在日量95万バ

レル前後で、これには輸出用の最高80万

バレルが含まれる。この輸出用原油は完

全に自由取引で、輸出先の制限はない。

一部の中東の産油国はある種の制限付き

で輸出することを好み、これが売り手に

とって自国の原油管理を強めることに

なる一方で、再販が選択肢にないことか

ら、参照価格としてのグレードの的確さ

が損なわれている。

ドバイ価格は、ドバイ、オマーンおよびア

ッパー・ザクムの現物引き渡しが保証され

ている。2014年3月中旬現在、2014年の

ドバイ価格決定構造での貨物引き渡しのう

ち、1つを除く全てがオマーンで、受渡の

95%超を占めた。

オマーン原油の取引

オマーン原油の大半はDMEを通じて売

却され、DMEの決済は2007年にオマー

ン政府により、公式売却価格として採用

された。WTIと同じく、オマーン原油は

現物受渡で、ロットは1,000バレルであ

るが、実際に現物受渡を行う参加者はか

なり少ない。

一般的に、オマーン原油の輸出プログラム

の2分の1から3分の2はDMEを通じて受け渡

しされているが、オマーン原油は並行貨物

市場での再販および取引が自由で、通常は

ドバイ・スワップとの差として価格付けさ

れる。

オマーン原油はほとんどがアジアの

石油精製業者が消費し、稀に起こる

裁定取引の機会が訪れると時たま地

中海行きとなるが、石油需要の伸び

が東に集中しているため過去の傾向

となりつつある。

ブレント原油の背景

スポット・ブレント(Dated Brent)は

軽質スイート原油で、1980年代半ばに

はプラッツ、アルガス、ICISロンドン・

オイル・レポートといった専門の価格情

報提供業者が値付けする北海原油の第一

位のベンチマーク・ブランドとなった。

またブレント市場は、欧州の石油価格の

主導的指標であったことを反映して、ロ

イター、ブルームバーグ、ダウジョーン

ズと行った幅広い金融ニュース提供業者

が評価および報道を行った。

スポット・ブレンドという言葉は北海で

の現物原油取引を表し、産油量の低下に

対応するために、数々の変化を経験して

きた。

当初は引き渡し日の通知が7日から15日

前であったことから、当初の名称は15日

ブレントであった。この期間は実際には

25日まで拡大し、北海での産油量の落ち

込みを補うために、近隣地域以外からの

原油を追加することを含め、さらなる変

更が計画されている。

ブレントは、指数の物理的な埋め合わ

せのために既に数多くの変更を経てきて

おり、現在では、ブレント、フォーティ

ーズ、オセバーグ、およびエコフィスク

つまりBFOEから構成されている。この

4つのグレードの中で最低のものが、ス

ポット・ブレントの価格を決定する。

ブレントとオマーンのスプレッド

ブレントのベンチマーク・ブレンドの生産量

Futures Insights Brent Oman Spread

ブレント原油の取引

近年、スポット・ブレントの価格と

現物BFOEといった関連する投資商品の

価格は、主にフォーティーズが決定し

てきた。フォーティーズは最も競争力

がある値付け、つまりBFOEグレードの

4つの中で最も安くなっている。

2013年のオセバーグおよびエコフィス

クのいわゆる高品質プレミアムの追加

により、この2つのグレードがBFOEの

中では競争力が増したが、フォーティ

ーズは依然としてブレント/BFOEグレ

ードの主要グレードである。

生産量でみると、フォーティーズと

エコフィスクがずば抜けている。

ロンドンを本拠地とする国際石油取引所

(IPE)は1988年にブレント取引を開

始したが、ブレント先物を上場しようと

いう試みは、当初2回失敗した。

IPEはその後米国を本拠地とするインタ

ーコンチネンタル取引所に買収された

が、最大の原油価格としてブレントを維

持した。CME も2012年にNYMEXでブ

レント取引を再開したが、これはその後

ブレント/オマーン取引となった(反対

側の箱枠内を参照のこと)。

ブレント先物は、報告されたBFOE現物

取引の満期日の価格で決済されるが、

この満期日は暦月満期日の15日前であ

る。

ブレント/オマーンのスプレッド

ブレントとオマーンとの間には強力な

相関が存在しており、両グレードの動

きは、グローバルでの需給ファンダメ

ンタルズや地勢的要因におおむね連動

している。ただしブレントは、フィー

ルド・メンテナンス、とりわけ予定に

ないメンテナンスの期間中は、急激な

上昇を見せる傾向がある。

ブレントはまた、中国や韓国に引き渡さ

れるフォーティーズ・グレードで裁定取

引の機会が訪れると、上昇する。

確かに、フォーティーズの裁定とリビ

ア原油の輸出が、ブレント/オマーン

のスプレッドを決定する上で主たる要

素となりつつある。

ブレント/オマーンのスプレッドは、

2013年は平均で1バレルあたり2.80

ドルと2012年1.95ドルから拡大し、

またこの期間は、(月次平均価格を基

にすると)1バレルあたり1.00ドルか

ら4.50ドルの幅で動いた。

2014年第1四半期のブレント/オマーン

のスプレッドは、1バレルあたり3.20ド

ルから3.60ドルと拡大したが、これは北

海からアジアへのフォーティーズ原油の

通常の流れと、中東での原油生産量が若

干増加したこと、およびアジアの石油精

製業者の利ざやが振るわなかったためで

ある。

確立されたグローバルなベンチマークで

あり、それ故に多くの流動性を引きつけ

るブレントは、動きの速い地政学的な変

動が起こると、通常は「最初に動く」。

例えば、昨年夏のシリアを取り巻く混乱

の際には、ブレントとオマーンのどちら

も急激に上昇したが、ブレントの上昇ス

ピードの方が早く、スプレッドは1バレ

ルあたり3ドル超となった。

しかし、シリアでの政治的な混乱は、リビ

アでの新たな大変動と同時期に起こり、そ

の結果輸出量が削減された。リビア原油は

軽質スイートで、北海原油に品質が近いこ

とから、ブレントの価格はかなり大きく影

響を受ける。

CME Globexではブレント・オマーンの取引

が可能

取引費用の節約 - CMEブレントの電子取

引では取引所手数料が不要。

証拠金の節約 - CME/DME商品同士で

の相殺が実質的に行われる

取引の利便性 - Globexでのブレント

/オマーンのスプレッド取引を行えば、

どちらの市場も同じ価格寄せ方式を採用

しているので、「レギング(一部銘柄の

未執行)」リスクがなくなる。

ブレントとオマーンのスプレッド

ブレント原油およびオマーン原油の月次平均価格

Futures Insights Brent Oman Spread

アジア向けフォーティーズ原油の

裁定取引

ブレント/オマーンのスプレッドは

2013年第1四半期と2014年第1四半期

に大きく拡大し、そのためオマーンに

対するブレントのプレミアムは増加し

た。

どちらの期間も同じようなパターンを

見せており、好ましい出荷手数料を含

めた適切な条件を提示する水準である

1バレルあたり2ドルから2.5ドルとい

う比較的狭いスプレッドから、裁定取

引の機会が始まった。

フォーティーズが北海外に出荷される

と、北海原油の価格設定グレードの需給

が引き締まるので、ブレントの価格はオ

マーンとの関係では一般的に高くなる。

沖合の天候状態がより良好な夏の数ヶ

月間に通常限られる北海のメンテナン

スと行った季節要因も、一般的にはブ

レント価格の押し上げ要因となり、ブ

レント/オマーンのスプレッドは通常

夏の数ヶ月間は拡大する。

夏期のアジアへのフォーティーズの流

れが中休みした後、欧州の石油精製利

幅が低下したことで2013年第4四半期

には回復が見られたが、欧州石油精製

市場の全体的な不振により、ブレント

の価格は相対的に低く抑えられた。

2012年から2013年のアジア向けフォ

ーティーズの主な買い主は韓国で、EU

との国家間貿易協定により欧州発の原

油の関税が3%低下したことが後押しと

なった。

しかし最近数ヶ月間では、中国がフォ

ーティーズ原油の主な買い主として浮

上してきており、中国は供給源の分散

化を図ろうとする一方で、それと同時

に、世界最大の海上輸送原油の輸入国

としての地位を確実にしようとして、

ベンチマークとしてのスポット・ブレ

ントに対する影響力を強めようとして

いる、という見方が強まっている。

米国はパイプラインと海上輸送原油を

合計すれば引き続き最大の原油輸入国

だが、米国でのシェール・オイル革命

が新たな貿易パターンを開きつつあ

り、行き場を失った原油は新たな行き

先を求めている。

米国の輸入に対する依存度が下がるに

つれ、西アフリカといった地域からの

原油は新たな売却先を求めており、そ

の際にはアジアの石油精製業者は最も

望ましい相手の1つである。

例えば、米国のナイジェリア原油の

平均輸入日量は、5年前は1日あたり

100万バレルを優に超えていたが、

2014年には1日あたり20万バレルまで

低下した。

この行き先を失った原油は、徐々にア

ジアに行き先を変えており、東西の価

格の連動をさらに強めている。

西アフリカでは、アンゴラが強力な産

油国として新たに台頭してきており、

米国での石油生産増と欧州からの需要

減に直面し、アジアに新たな消費者

を求めている。

中国は一般にアンゴラの1日あたり150万

バレルの輸出量の半分以上を購入してお

り、これに続くのが、台湾、インドそして

日本で、 欧州に向かうタンカーはわずかで

ある。

結論

米国での原油生産量が増加するにつれ、東

西貿易パターンのつながりは強くなり、ま

たブレントとオマーンの価格連動性が、主

たる原油スプレッドとして、どの貿易ポー

トフォリオでも徐々にその重要性が高まる

だろう。同様に、米国がアジアとの原油取

引を増加させるにつれ、WTIとオマーンの

スプレッドが、将来的には注目を浴びるよ

うになるだろう。

ブレントとオマーンのスプレッド ブレントとオマーンのスプレッド ブレントとオマーンのスプレッド ブレントとオマーンのスプレッド

ブレント対オマーンの月次平均スプレッド

Futures Insights Brent Oman Spread

DMEについて

DMEは、中東における第一級の国際エネ

ルギー先物および商品取引所である。

DMEは、スエズ以東の市場で活動する

石油生産者、トレーダー、そして消費者

に、透明性の高い原油の値付けを提供す

ることを目指している。

2007年に設立したDMEは急速に発達し、

グローバルで重要な取引所となった。

DMEの主要商品であるオマーン原油先物

の取引(DMEオマーン)は、現在では、

急速な成長を続けるスエズ以東市場に

関連した最も信頼できる原油ベンチマー

クとして、確固たる地位を築き上げてい

る。他の取引では類を見ないアジア地域

の経済的側面を反映し、また世界最大の

現物受渡原油先物であるするDMEオマー

ンは、世界第3位の原油ベンチマークであ

り、オマーンおよびドバイから輸出され

る原油の唯一のベンチマークでもある。

DMEは完全に電子化された取引所で、

規制上の許可により、アジア、欧州およ

び米国の主要金融センターを含む20の

司法管轄区からアクセス可能である。

DMEは、UAE国内での金融サービス促進

のために設計された金融自特区である

ドバイ・インターナショナル・フィナン

シャル・センター(DIFC)内に位置す

る。DMEはドバイ金融庁の監督下にあ

り、DMEで執行された全ての取引は。

CME Clearingを通じて清算・保証が

行われている。

Among others

全ての記録を更新中

建玉最高記録:24,750枚(2013年11月27日)

出来高最高記録:14,282枚 (2014年2月26日)

DMEの1日平均取引高最高記録:10,764枚(2014年2月)

先渡し取引最高記録: 6,511枚(2014年2月26日)

現物受渡し最高記録:16,770枚(2013年6月の8月物)

DMEは、ドバイ・ホールディング、オマ

ーン・インベストメント・ファンド、

およびCMEグループによる合弁会社であ

る。ゴールドマン・サックス、JPモルガ

ン、モルガン・スタンレー、シェル、

ヴィトル、そしてコンコード・エネジー

と言ったグローバルな金融機関やエネル

ギー取引会社もDMEの株式を保有してい

る。

連絡先

ドバイ・マーカンタイル取引所

P.O. Box 66500

Building 2

Dubai International Financial Centre

(DIFC)

Dubai, United Arab Emirates

電話: +971 4 365 5500

ファックス: +971 4 365 5599

www.dubaimerc.com

最新の情報については、下記の

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ブレントとオマーンのスプレッド

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