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472904Autodesk Solution での SDGs の取り組み(More Less Better の実現) ㈱フカガワ 前村秀明 執行役員 営業部長 [email protected] ㈱深川製作所 目黒裕一 製造部 主任 [email protected] 菱田哲也 技術営業本部 テクニカルスペシャリストマネージャ 説明 環境シミュレーション(Insgiht とシステム analysis)からダクト製造まで、設計と製造の過程にどのよう にAutodesk製品が使われているかを解説いたします。 スピーカーについて 前村 秀明| Hideaki Maemura 株式会社フカガワ 執行役員営業部長 大学では経営学を学び体育会ヨット部に所属。金融業で企業への融 資営業業務、不動産ディベロッパーでマンション営業・マンション管理業務などを経て現在のフカガワに17年在 籍。ダクト成型機製造に 3 年、ダクト資材の営業として埼玉県、東北などで主に活動した。現在フカガワ本社で東 日本地域の担当営業部長として札幌から名古屋までの地域の営業所を管轄。 目黒 裕一| Hirokazu Meguro 深川製作所 機械製造部主任 専門で機械工学を学び、フカガワグループへ。ダクト成型機製造を経験し、現 在は川越工場にて「レーザー切断機/プラズマ切断機」の製造を管轄。また、ダクト製造に必要な CAM ソフト FPC6」の開発・販売促進活動も担当。現在は日本向けの Revit ダクト製造用パーツを作成中。 菱田 哲也 | Tetsuya Hishida AEC テクニカルスペシャリスト マネージャ(LEED AP BD+C、一級建築士) 東京大学大学院にて修士(工学)を 取得後、大手組織設計事務所に入社し、都市計画や制度設計等の大きなスケールから建築物のディテール等ま で設備設計・コンサルティング・試算・シミュレーションを担当。オートデスクではテクニカルスペシャリストとして、 Revit 等の製品を担当。現在は建設分野全般(意匠・構造・設備、土木・インフラソリューション)を管轄。 学習の目的 地球環境の現状と課題の理解 環境シミュレーション(Insgiht とシステム analysis)からダクト製造までを理解 ダクト業界の現状を理解 今後のフカガワ社の取り組み

Autodesk Solution SDGs の取り組み(More Less Better の実 …

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[472904]

Autodesk Solution での SDGs の取り組み(More Less

Better の実現)

㈱フカガワ 前村秀明

執行役員 営業部長 [email protected]

㈱深川製作所 目黒裕一

製造部 主任 [email protected]

菱田哲也

技術営業本部 テクニカルスペシャリストマネージャ

説明

環境シミュレーション(Insgihtとシステム analysis)からダクト製造まで、設計と製造の過程にどのよう

にAutodesk製品が使われているかを解説いたします。

スピーカーについて

前村 秀明| Hideaki Maemura

株式会社フカガワ 執行役員営業部長 大学では経営学を学び体育会ヨット部に所属。金融業で企業への融

資営業業務、不動産ディベロッパーでマンション営業・マンション管理業務などを経て現在のフカガワに17年在

籍。ダクト成型機製造に 3年、ダクト資材の営業として埼玉県、東北などで主に活動した。現在フカガワ本社で東

日本地域の担当営業部長として札幌から名古屋までの地域の営業所を管轄。

目黒 裕一| Hirokazu Meguro

深川製作所 機械製造部主任 専門で機械工学を学び、フカガワグループへ。ダクト成型機製造を経験し、現

在は川越工場にて「レーザー切断機/プラズマ切断機」の製造を管轄。また、ダクト製造に必要な CAMソフト

「FPC6」の開発・販売促進活動も担当。現在は日本向けの Revitダクト製造用パーツを作成中。

菱田 哲也 | Tetsuya Hishida

AECテクニカルスペシャリスト マネージャ(LEED AP BD+C、一級建築士) 東京大学大学院にて修士(工学)を

取得後、大手組織設計事務所に入社し、都市計画や制度設計等の大きなスケールから建築物のディテール等ま

で設備設計・コンサルティング・試算・シミュレーションを担当。オートデスクではテクニカルスペシャリストとして、

Revit等の製品を担当。現在は建設分野全般(意匠・構造・設備、土木・インフラソリューション)を管轄。

学習の目的

• 地球環境の現状と課題の理解

• 環境シミュレーション(Insgiht とシステム analysis)からダクト製造までを理解

• ダクト業界の現状を理解

• 今後のフカガワ社の取り組み

背景

SDGs 「2020 Global 100」という SDGsの目標達成に貢献している世界の企業をランキングした指標があるの

ですが、オートデスクはランキング 5位につけております。

2020 GLOBAL 100

AUTODESKユーザーへの SDGSに関する意識調査

そうした取り組みの一環として、オートデスクのお客様へどの SDGsのゴールに関心度が高いか、コ

ミットしているかという調査を行いました。なお、その調査では CEOの 99%がビジネスの成功にサステ

イナビリティが重要であると回答しています。

All Customer

UNSDGs UN Sustainable Development Goal Rank # %

13 Climate Action 1 428 69.10%

12 Responsible Consumption and Production 2 403 65.10%

9 Industry, Innovation and InfraStructure 3 394 63.70%

7 Affordable and Clean Energy 4 393 63.50%

11 Sustainable Cities and Communities 5 311 50.20%

8 Decent Work and Economic Growth 6 285 46%

6 Clean Water and Sanitation 7 279 45.10%

4 Quality Education 8 240 38.80%

3 Good Health and Well-being 9 237 38.30%

5 Gender Equality 10 219 35.40%

10 Reduced Inequalities 11 219 35.40%

15 Life On Land 12 218 35.20%

17 Partnerships for the Goals 13 203 32.80%

14 Life Below Water 14 182 29.40%

16 Peace and Justice, Strong Institutions 15 148 23.90%

1 No Poverty 16 130 21%

2 Zero Hunger 17 128 20.70%

温暖化

二酸化炭素排出量と気温上昇

その調査の中でも一位でありました、温暖化についてです。2030年までの二酸化炭素排出量削減目

標達成は非常に困難な課題です。国連の報告によれば、今のまま行くと 3.9度の気温上昇となり、目

安と言われている 1.5度を大きく上回ってしまっています。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)に

よれば、2030年までに 45%排出を削減する必要があるようです。

各都市での気温上昇

また、その温暖化もヒートアイランドの影響等により、都市部での影響が非常に大きいです。

GLOBAL TRENDS

世界人口は 2050年までに今の 77億人から 100億人近くに増えると言われています。

しかも中産階級と言われる人々が 1990年には 1/4以下だったのに対して、2030年には 50億人、つ

まり半分の人々が該当するとことになり、こうした人々が資源やエネルギーを消費していきます。建築

物やモノを作る際に健康でレジリエンスの確保された社会を形成する必要があります。

業界ごとの二酸化炭素排出量削減目標

人が増える一方で、二酸化炭素排出量などは削減しないといけないようです。では、各業界・分野がど

のようにこの大きな課題に応えていけばいいのでしょうか?マッキンゼーが興味深いレポートを作成し

ているのでご紹介したいと思います。このレポートは、1.5℃の温度上昇に抑えるために、各業界がどの

ように CO2排出量を抑えていくべきか?というものです。紙面の都合で、ここではシナリオ Aのみ掲載

しますが、他にも、発電での削減量を少なくしたパターンなどが掲載されています。Buildingsの部分を

見ていただくと、削減量が 2016年比で、2030年までに 40%減となっているのがわかるかと思います。

ここで注意していただきたいのは、建材製造などは Industryに含まれている点です。この Industry、つ

まり製造の領域においても、35%程度の削減が求められているという点です。

ここで言えるのは、建築の運用でも製造の過程でも、大幅な人口増があるのにも関わらず、抜本的な

二酸化炭素排出削減が望まれるという点です。

MORE LESS BETTER 人口増は悪い点ばかりではなく、大きなビジネスチャンスでもあります。オートデスクがリサーチ会社と

調査したところ今日、グローバルでは一日あたり、11,098棟の建物を都市部で建てているようです。

2050年にはこれが、14,704棟も建てられるようになっている必要があります。これは現状よりさらに

3600棟生産能力をあげる必要があることを意味しています。

しかし一方で運用でも 40%CO2排出量を削減しないといけないですし、建材の製造による排出量も削

減する必要があることもわかりました。

オートデスクは”MORE LESS BETTER”というメッセージを掲げております。MORE:人口増などに対応す

るために、LESS:より少ないエネルギーや建材を用いて、BETTER:よりよいものを作ろうというもので

す。

AUTODESKの提唱する、MORE LESS BETTER

ZEB等高いエネルギー性能の建物や街づくり

ZEB

ZEB のマーケット

今後の経済発展は、中国、インド、アジア、アフリカや、南米で起きると言われています。未だに停電の

多く発生しているような国で、適切なインフラ整備及び、建物の消費エネルギーの削減と再生可能エネ

ルギーの活用は重要になっています。課題が、非常にグローバルレベルでも重要であるがゆえに、

NET-ZERO建築のような技術の市場価値が高いのです。NET-ZERO とは、再生可能エネルギーをつ

かって、建物で消費される以上のエネルギーを生産する方法で、NET とここで申し上げているのは、施

工時および運用時の合計を示しています。

2035年までに NET-ZERO建築の市場規模は 160兆円規模となるようです。現在の日本全体の建設

産業が 50兆円程度なので、その 3倍強です。

ゼロエミッション東京戦略

東京都としてもゼロエミッション東京戦略を策定し、さまざまな項目での脱炭素化をうたっていまして、

ゼロエミッションビルの拡大もその戦略の一つです。

BELS 評価書交付物件における ZEB および ZEH の割合

しかし、BELS評価書交付物件からわかるように、日本における ZEBはまだまだ普及が遅れていると

言わざるを得なません。

ビジネスとしての Sustainability

WHIZDOM101 全景

タイの不動産開発会社 MQDC は、バンコク都心部の WHIZDOM 101 複合施設によって、サステイナ

ブルなスマート シティというコンセプトを打ち立てました。持続可能性と居住性という野心的な目標を達

成するために BIMを使用し、地元タイの設計者、エンジニア、建築施工、会社、サプライヤーが最新の

手法を取り入れ、デジタル建築プロセスを導入する機会をもたらしました。

MQDC は、BIM モデルを使用し、建物の向き、設計、電力消費が WHIZDOM 101 キャンパスの微気

候に与える影響を分析しました。アメリカとアジアにおける 26 年以上の不動産プロジェクト経験を持つ

土木エンジニアである、MQDC の社長 Khun Suttha Ruengchaipaiboon 氏の発言を引用いたします

「エネルギー消費量を 30% 削減する必要があります。また、水使用量の 40% 削減を目標にしなけれ

ばなりません。これを、プロジェクト内で水を集めて再利用することで実現しており、さらに年間 15,000

トンの CO2 排出量を削減することを目標としています。これは約 30% となり、従来のプロジェクトと比

較して 10 分の 1 の量です」

「建設業界では、世界中の建設現場で約 15~30% の廃棄物が発生しています。開発に BIM プロセス

を使用することによって、廃棄物を最大 15% 削減できるため、多くの電力と資材を節約できます」

他にも BIM360 というクラウドサービスの活用など、詳細は弊社のカスタマー事例紹介サイト Redshift

に記載されていますが、MQDC は革新的なテクノロジーによって、すべてのプロジェクトを持続可能な

ものにすることを、コア バリューの 1 つとしています。このアプローチは、サステイナブルなイノベーショ

ンと言う意味の「Sustainovation (サスティノベーション)」と呼ばれています。

運用時の建物管理などライフサイクルの観点からの環境建築

イズミシステム設計本社オフィス

建物運用や、こうした取り組みをされているイズミシステム設計の想いなど、詳細は弊社のカスタマー

事例紹介サイト Redshiftに記載されいます。そのなかでも ARC という USGBCの提供している、運用

段階での建物評価指標を実際に活用されている件に関するコメントを一部抜粋いたします。

「ARC では、電気会社やガス会社、水道会社の伝票を 1カ月ごとに 1年間入力して、廃棄物も業者

に出した量とリサイクル量を入力するだけです」と、渡部氏。「交通と室内環境の建物利用者の満足度

は、システムから建物使用者にアンケートのリンクを送ることができ、そこに通勤の方法や時間を入れ

ると、CO2 排出量などが自動的に算出されます。建物や室内環境の満足度も、非常に簡単な軸で入

力したものから判断されて、他の類似した建物と比較して点数が決まります」

他にもイズミシステム設計では、AutodeskCFDを用いた温熱気流解析や、Lighting Analysis for

Revitによる光環境解析により、設計仕様の確認・検討、プレゼン資料の作成支援業務を提供されてい

ます。

イズミシステム設計提供可能コンサル業務のイメージ

フロントローディングと環境性能

BIM を用いたフロントローディングの価値(東京大学谷口先生)

こちら東京大学の谷口先生が弊社イベントで講演した際の資料を抜粋しておりますが、設計初期にシ

ミュレーションを活用して効果的な省エネ手法を見極めることの重要性をしめしています。たとえば

LEED(建物の環境性能評価指標)などで初期段階でのエネルギー計算を求めているのはこのように早

い段階での計算の方が有効であることが実証されています。

INSIGHT を用いた初期検討の有用性について

こちらも、東京大学谷口先生の資料ですが、オートデスクの Insight等を用いることで、設計初期に自

動的にパラメトリックなスタディを活用することで、効果的な省エネ手法の採用が期待できるとおっ

しゃっています。

また、Revit上で行える検討と、OpenStudio との連携により、実施できる検討について整理いただいて

いますが、こちらの資料の後半にて、こちらの OpenStudio の機能強化についてご紹介いたします。

REVITでの環境性能の検証と、OPENSTUDIOでの検証の使いわけについて(東京大学谷口先生)

イズミシステム提供の REVITと連携する日本仕様の自動設計ツール

また、国交省基準のシミュレーションと設計の自動化を連携する方法としまして、イズミシステム設計で

は空調設備設計用ソフト「SeACD」等を提供しています。

Autodesk と Sustainability

AUTODESKによる環境解析取り組みの歴史

オートデスクというと、AutoCAD など図面のイメージが強いかと思いますが、実は環境解析の試みも長

く地道に続けております。

各 LOD で利用可能な環境解析の条件

Revitをベースとした解析が実施できることにより、細かい窓の熱物性等を活用したシミュレーションも

できれば、本当に基本計画レベルのシミュレーションまでシームレスに同じプラットフォーム上で管理す

ることができます。

こうしたエネルギー解析向けのAPIがあることで、先ほどのイズミシステム設計様のツール等も実装可

能ととなっています。

SYSTEM ANALYSISの設定場面

部屋名等が決まる前にも建物の空調方式を検討するための SystemAnalysis という機能が昨年実装さ

れました。これにより、これまでエクセル等や、経験に基づいて行われていた、空調方式の検討が

Revit上で行えるようになります。

また、さらにこうした手法をクラウドにつなげていこうと考えております。以下が今後提供予定のクラウド

ベースの Insightです。

主眼としている

意匠設計者が作成したモデルから簡単に年間消費エネルギー等を算出することもできます。

なお、空調機等の設備エンジニアが行うような検討も実施することができますので、いよいよクラウド上

で、このような建物のエネルギー性能について議論することができ、ひいてはこれにより ZEBの設計

がより身近なものになるという風に信じております。

ワンクリックでベースモデルの環境性能がグラフとともに可視化可能

空気線図などのエンジニアが必要な表現も含めて方式が検討可能となる予定

Generative Designの事例と BIMの標準化

オランダの同族経営企業、Van Wijnen 社は、手頃な価格のゼロエネルギー住宅を始め、

多数の住宅を建設しています。前回の不況以降、目標としていた 2% の利益率では会社の存続が危う

いことが問題となっていました。

VAN WIJNENによるジェネレーティブデザインの活用例

オートデスクはあるプロジェクトで Van Wijnen社をサポートし、ジェネレーティブ デザイン テクノロジー

を活用して 15,000 点に上るデザインを生成し、そこから検討できるようにしました。

同社はそこから最も興味を引かれた 3 つの選択肢を軸に、完璧な都市区域を生み出しました。

同社はジェネレーティブ デザインのおかげで、一度にあらゆる角度からプランを検討することができま

した。たとえば、太陽光エネルギーを最大限利用して、ネットゼロ エネルギーの目標を達成可能です。

裏庭のサイズや眺望を最適化し、住宅が居住者の人としてのニーズを満たせるようになりました。

コストと利益率を最適化して、自分たちのビジネス ニーズも満たすことが可能です。

VAN WIJNENによる地道な BIM導入や建設の工業化の試み

同社がこうした Generative Designを活用できたその裏には地道な努力がありました。

まずは、BIM を全面導入し、廃棄物とコストを削減する方法を見つけました。

Van Wijnen 社は、自動車製造プロセスにも似た考え方で住宅向けモジュールの概念を発展させ、さま

ざまな構成に使用しようと考えました。

そこで、さまざまな構成要素の部品の生産に投資し、製造プロセスを活用して、こうした構成要素を効

率よく生産できるようにしました。

構成要素はそれぞれ、まず現場から離れた同社の工場で事前に製造されてから、実際の建設現場に

運び込まれます。

そのため、どの住宅も 3 日で組み立てられるようになりました。

Van Wijnen はモジュール工法により、廃棄物とリスクを抑えつつ質の高い住宅を建設できるようにな

り、そうしたデータが蓄積されたことにより、イノベーションが可能となっています。

無駄な廃棄のない建設現場

株式会社フカガワ 会社紹介

弊社フカガワは1960年に創業し、現在60周年を迎えた会社になります。

ダクト製作用成型機を国内で初めて作った会社であり、機械のブランドとしては、日本国内

のみならず、世界各国から高い評価を得ております。

ダクト製作用成型機の国内シェアは約70%となっており、特にハゼ折機と言われる機械シェアは90%

を超えています。

埼玉県川口市に本社を置きますが、販売拠点は国内に現在29ヶ所、海外(タイ)に1ヶ所置き活動して

います。

現在、取扱い商品は機械に限らず、「スパイラルダクト、角ダクト」を始めとし、空調ダクト工事に関連する資

材全般を製造し販売している会社になります。

ダクト工事の主な歴史について

① 日本に初めて「ダクト」として認識され、施工されたのは、明治36年から施工された

「赤坂離宮」であると言われております。

但し、非常に残念な事に、「誰が」施工したかの記録は残っておりません。

② 次に、国内に初めて「ピッツバーグハゼ」がアメリカから導入され、施工現場となったのが、

昭和4年から施工された「三井銀行本店」でありました。

これ以降、日本国内でピッツバーグハゼは別名「三井ハゼ」と呼ばれ、現在その名称が定着しています。

③ そして昭和27年に国内で初めてスパイラルダクトが導入され、保温フレキの導入など、日本に於け

るダクト工事の歴史は少しづつではありましたが、着実に進化を遂げて来た歴史がありました。

この歴史の流れに沿ってフカガワも商品開発、機器開発などを行ってきました。

こちらの写真は当時の三井銀行本店、そして、国内でダクト屋さん第1号と言われた 「吉場製作所」

さんの写真になります。

フカガワの創業者であります「深川富夫」が、この吉場製作所の経理部長であった事から、今のフカガ

ワが生れる事となりました。

ダクト工事業の労働人口

それでは次に、現在国内でダクトを施工する労働人口などについてお話しします。

「ダクト工事業者」としての企業数は法人、個人含め現在約4000社になります。

フカガワでは、工場を所有しているダクト業者と、工場を所有していないダクト業者の推移を調べたとこ

ろ、この過去20年で工場を所有していない業者数が2倍近く増加した事に対し、

工場を所有している会社が40%程度減少した事が分かり、今後の推移を大変興味深く捉えています。

現在のダクト工事業として施工者の人口です。

現場で施工できる職人さんの数は現在当社調べで約 22,000人の方が従事しています。

グラフ等はありませんが、この労働人口は20年前から約15%減少していると捉えています。

それではダクト工さん達は1日あたりどの位ダクトを施工出来るのか?

ここでは、様々な施工条件ある中で、平均的なお話しになりますが、1日当たり、1人 6~8㎡の施工

が可能であると言われています。

ダクトは大きく言って、角ダクトと丸ダクトに分けられますが、現在その比率は角ダクトで4割、丸ダクトで6

割とも言われています。

これも元々は角ダクトの比率が大きかった時9:1から年々丸ダクトの比率が高まってきています。

スパイラルダクトや、保温フレキシブルダクトなどの施工しやすいと言われる丸ダクトがこの比率を高め

て来た理由になります。

話しを少し戻しますと、現在のダクト工事では1日当たり一人あたり6㎡程度が平均的と言われていま

すので、これを年間で換算しますと、角・丸併せて2800万㎡のダクト工事が可能だと言い換えられま

す。

この2800万㎡に対して、昨年は非常に建築現場が旺盛であった事で、ダクト工事は約 2500万㎡の

実績があったようです。

全体の人数割で見ると上限以下になりますが、施工依頼の偏りもあり、常にダクト職人の 不足が発生

している状態でした。

ダクト工事業の労働生産性

一体1日にどのくらいの角ダクトが生産出来るのかを見て行きたいと思います。

角ダクトを製作するには、主に亜鉛鉄板と言われるコイル材から製作することになります。

フカガワが製造している、プラズマ切断機やレーザー切断機を使って鉄板を切断し、ハゼかけと言われ

る工程を経てハンマー使って組み立てます。

こうして出荷できる状態にするまで、平均的には1日に1人あたり25㎡の角ダクトを作る事が出来ま

す。

全国にあるダクト工場が毎日フル稼働した場合、施工に充分間に合うだけのダクトを製造する事が出

来ますが、全てのダクトが受注生産という特徴から、工場をフル稼働できない問題や、工場の敷地の

限界で作り置き出来ないなどの問題も残ります。

ダクト工事業のワークフローと課題

ここまで、ダクト工事業者の労働人口や生産性を説明しましたが、次にダクト工事業者の主なワークフ

ローでございます。

他の工事業者と同様に着手検討から始まり、支払い業務に至るまでが流れとなります。

設計図を受領し、場合により現場調査から始めます。

設計図を元にどれだけのダクト工事が見込まれるか、見積書を作成します。

注文書受領や契約後、施工準備に入ります。

自社で賄えない㎡数を予定している場合、「応援」と呼ぶ仲間内から人工を段取りします。

施工図を元請けから受領し、自社施工範囲のダクト製作に移ります。

そして、自社で製作出来ない資材等については我々フカガワなどのメーカー商社へ資材を

発注します。

この様なワークフローの中でわれわれフカガワはダクト業者の生産性向上に貢献できるよう、「積算の

代行」や「施工図の割り付け」「見積ソフトの開発提案」「CADソフトの販売」

などを手掛けています。

最近では支払業務の付加価値向上として AMEX様と業務提携し、ビジネスカード決済などの仕組みも

導入しスタートさせました。

つぎにフカガワが捉える「ダクト業界の課題」についてお話しします。

1番目に現在の労働人口について先ほども申し上げましたが、他の建設業界と同様に労働人口の減

少、若手入職者が減少しています。

2番目にダクト製作、施工においてはまだまだ自動化や省人化の余地が残っています。

3番目にダクトの廃棄に関してです。

現在の建設現場では図面整合性の問題から、ダクトの作り直しなどが多く発生しています。

動画でご覧頂いたように、ダクトは1本1本が受注生産です。

現場での設計変更やルート変更などで多くのダクトが廃棄されるという問題が残ります。

4番目にダクト業界では2次元 CADの普及率さえ今だ6~7割程度となっている点です。

5番目にダクトの製作属性を含まない CADを使用している事で、適切な CAD/CAMが出来ず生産性

が低い問題です。

また、ダクト製作の工程で切断した切り板の残りかすが大量に発生している事も問題です。毎日、数

100kgの残材が発生する場合もあります。

現在の製造工程では他に手段が無い状況でもある為、こういった残材のリサイクルなども

考えて行かなければなりません。

ダクト業界の課題として原設計からダクト製作までに至る、ワークフローで共通データ環境では無い為

に発生している非生産的フローというものに問題意識を持っています。

現在下流工程のダクト製作では、原設計からダクト製作図に至るまで様々な中間ファイルを経由してい

ます。

ダクト単品図においては手書きで起こす場合が多く、ここでもヒューマンエラーが多く発生します。

ダクト単品図を数時間かけて CAMに入力する作業などは BIMの概念からもかけ離れてい

いるのではないでしょうか。

課題1.ダクトが非規格製品という事での課題

空調ダクト業界には JISの様な規格があるようであまりありません。細かく決まっていない、と言った方

が正しいかもしれません。これにより生まれる課題とアプローチについてです。

意外と知られていないお話しとして、スパイラルダクトの継手品が、各製作メーカーによって寸法が違う

のは御存知でしょうか。

「A」の部分がメーカーによって長さが違うので、現場で取り付け時に困る事があるのです。これはダク

ト施工者にとっては周知されている事ですが、一般的にはあまり知られていません。

また、「A」の寸法が違うからといって、取付け後には影響は無いのでは?という考えもあるかと思いま

すが、そもそも取付け後の寸法も各メーカーで全く違います。これは図面では納まっても、現場で他

メーカー品を取付けていればもう合わせる事は出来ません。

つまり、発注者は各メーカーの寸法を理解し、図面上と相違の無い物を発注しなければ、現場と図面

には乖離が発生してしまうという事になります。

これらが「空調ダクトのプレハブ化は難しい」、とされてしまう点です。

・この課題に対してフカガワの考えるアプローチ

我々フカガワは色々な製品を販売していますが、その中には「スパイラルダクト関連」も製作販売させ

ていただいています。つまり、我々もスパイラルダクトのメーカーです。なので、「Revit」にフカガワ製の

スパイラルダクト商品・空調関連製品を利用して頂ける様に、製造用パーツとして製作中です。

これにより、フカガワ製品での作図が簡単に可能、且つその製品は全てメーカーが監修しているので、

正しい物で描いている事になります。

実製品をメーカーが作成しているので、現場に同製品を持ち込む事で図面との乖離を防ぎます。更に

は Revitでこれらの製品を使用した際、製品メーカーの記載がある為、誤発注の減少も見込め、そこで

発生していた廃棄品も同時に減少出来ると考えています。

・なぜ「Revit」なのか?

この図面、一見問題無く出来ている様に見えますが、90°のエルボと 45°のエルボが繋がっていま

す。…これは実は通常できません。

スパイラルダクトには口径サイズにオス・メスの考えがあります。今回 90°のエルボと 45°のエルボ

はお互いがオスサイズです。繋ごうとするにはどちらかがメスサイズでないといけません。

更には、45°のエルボが二つあり、その間に短いスパイラルがあります。

これも一見成立しそうですが、この短いスパイラルはこのままでは取り付けられません。

さきほどオス・メスがあると言いましたが、45°エルボはオスサイズです。短いスパイラルはメスサイズ

ですが、短すぎて両サイドの 45°エルボは取り付ける事が出来ません。

このままでは図面通りに仕上げる為には打合せが必要になり、特注品の準備が必要になります。

今度は「Revit」の製造パーツで同じ様にしてみると、こちらでは警告表示が出現されます。これは口径

サイズのオス・メスの判断を行っているからです。また、短いスパイラル直管も配置されません。こう

いった事が出来るからこそ Revitへ取組みを始めたのです。

この様に図面上で正確な検討をされる事により、無駄のない製作・施工が出来る様になると考えてい

ます。

課題 2.CAD利用率が低く、デジタル化の遅れが顕著

建築業界で当たり前の様に利用されている CADが、未だにダクト業界は浸透していません。主な理由

としては施工図面だけでは製作出来る状態にはなっておらず、CADでは製作に必要な属性情報も足

りていない為、直接製作に繋ぐ事が難しいです。

つまり、CADの操作技術を習得してまで得られるメリットが薄いと感じている人が多いからです。皆さ

んが描いた施工図を、『製作図』という物に再度描き直しているのです。

では、製作に必要な属性情報、というのはどういった物でしょうか?

ダクト製作に必要な属性情報とは、「ハゼ種」「接続工法種」「材質」といった、いわゆる特記仕様書に記

載されている内容が主な物となります。 この中でも「接続工法種」はダクトの仕上がり寸法に密接に関

わるのですが、この情報がダクトに付与出来る CADはほとんどありません。情報が無い物が仕上がり

寸法に密接に関わる、という事は、施工図で正確に検討出来ている状態とするのは中々難しいと思い

ます。

そこで、我々は「Revit」に日本用の角ダクト形状を製造用パーツとして作成し、リリースしようと考えて

います。その際、「Revit」に付与出来る属性情報に正しい物が付与されるようにして、そのパーツを使

用して頂く事で正確な施工図を作成出来る様にしたいと思っています。

また、その先の製作にまでつなげる事を目標に、弊社のレーザー切断機/プラズマ切断機に利用して

いるフカガワ製 CAMソフト「FPC6」へ直接データリンク出来るシステムも開発予定です。

このデータリンクシステムが出来上がれば、「Revit」の製造用パーツで描いた角ダクトを、弊社 CAMソ

フトにリンクさせる事で、製作ミスの削減を実現させ、無駄のない製作・施工を目指したいと考えていま

す。

今後の想定ステップ

現在は STEP1です。今後、新たな動きがあれば皆さんにご紹介させて頂きたいです。