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http://repository.osakafu-u.ac.jp/dspace/ Title Aspergillus aculeatus由来 β-glucosidase 1の生化学的解析及び活性 が向上した変異酵素の取得 Author(s) 馬場, 祐太朗 Editor(s) Citation Issue Date 2015 URL http://hdl.handle.net/10466/14451 Rights

Aspergillus aculeatus由来 β-glucosidase 1の生化学的解析 ...Holtzapple et al. 1990; Oh et al. 2000 )。これは BGL をセルラーゼ剤に添 加することで糖化効率が改善されることからも,生成物阻害が糖化効率を低下させる原因

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http://repository.osakafu-u.ac.jp/dspace/

   

TitleAspergillus aculeatus由来 β-glucosidase 1の生化学的解析及び活性

が向上した変異酵素の取得

Author(s) 馬場, 祐太朗

Editor(s)

Citation

Issue Date 2015

URL http://hdl.handle.net/10466/14451

Rights

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大阪府立大学博士 (応用生命科学) 学位論文

Aspergillus aculeatus 由来 -glucosidase 1 の生化学的解析

及び活性が向上した変異酵素の取得

馬場 祐太朗

2015 年

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目次

緒論 1

第一章 A. aculeatus 由来 -glucosidase 1 の生化学的解析 10

序 10

実験材料及び方法 11

結果 rAaBGL1 の生化学的な解析 19

考察 AaBGL1 と rAaBGL1 の酵素学的性質の比較 25

rAaBGL1 の基質特異性について 25

rAaBGL1 の糖転移産物の検出 27

第二章 AaBGL1 の C2 に対する活性の向上を目指した部位特異的飽和

変異導入とスクリーニング 29

序 29

実験材料及び方法 31

結果と考察 WT における 6 × Histidine tag 融合タンパク質の発現と

簡便な精製方法の確立 40

変異を導入するアミノ酸残基の選択とスクリーニング 42

第三章 変異酵素の機能解析 48

序 48

実験材料及び方法 49

結果 取得した変異酵素の pNP-Glc と C2 に対する速度論的解析 52

Q201E が C2 加水分解に与える影響の解析 57

E69S,S436V が糖転移反応に与える影響の解析 61

考察 Single mutant の解析によるスクリーニングの妥当性について 64

Double,triple mutant の解析 64

Q201E の役割について 65

E69S,S436V が糖転移反応に与える影響について 69

総括 71

参考文献 74

謝辞 86

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略語

AaBGL1 Aspergillus aculeatus β-glucosidase 1

BGL β-glucosidase

CAZy Carbohydrorate-Active Enzymes

CBH cellobiohydrolase

C2 cellobiose

C3 cellotirose

C4 cellotetraose

C5 cellopentaose

C6 cellohexaose

DP degree of polymerization

EDTA ethylenediaminetetraacetic acid

EG endo-glucanase

Endo H endoglycosidase H

EtOH ethanol

FnIII fibronectin type III like domain

GH glycoside hydrolase family

Glc glucose

G2 gentiobiose

h hour

HPAEC high performance anion exchange column cromatography

kb kilo base pair

kcat turnover number

kDa kilodalton

Km Michaelis constant

L2 laminaribiose

L3 laminaritriose

L4 laminaritetraose

L5 laminaripentaose

MES 2-Morpholinoethanesulfonic acid

min minute

MM minimal medium

MPD 2-methyl-2,4-pentanediol

PAD pulsed amperometric detector

PCR polymerase chain reaction

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PDB protein data bank

PEG polyethylene glycol

pNP p-nitrophenol

pNP-Araf p-nitrophenyl-β-D-arabinofuranoside

pNP-Fuc p-nitrophenyl-β-D-fucopyranoside

pNP-Gal p-nitrophenyl-β-Dgalactopyranoside

pNP-Glc p-nitrophenyl-β-D-glucopyranoside

pNP-GlcNAc p-nitrophenyl-N-acetyl-β-D-glucosaminide

pNP-Man p-nitrophenyl-β-D-mannopyranoside

pNP-Xyl p-nitrophenyl-β-D-xylopyranoside

rAaBGL1 recombinant AaBGL1

RE regeneration medium

rpm revolutions per minute

SD synthetic drop-out

SDS-PAGE sodium dodecyl sulfate-polyacrylamide gel electrophoresis

sec second

TCB thiocellobiose

Tris tris(hydroxymethyl)aminomethane

WT wild-type AaBGL1

X-Glc 5-bromo-4-chloro-3-indoryl-β-D-glucopyranoside

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1

緒論

セルロースとセルラーゼ

植物細胞壁は主にセルロース,ヘミセルロース,ペクチン,リグニンから成り,これらは

植物が光合成により大気中の二酸化炭素を固定化することで合成した化合物であるため,

再生可能な有機物である。セルロースとは,植物の一次細胞壁,二次細胞壁の主要構成成分

であり,グルコース(Glc)が β-1,4 結合で結合した多糖である。Glc が β-1,4 結合で結合

する際に 180° 反転することで,セロビオース(C2)単位で繰り返された構造となり,さら

に分子内・分子間で水素結合することで,一部の非結晶領域を残して結晶化し,セルロース

ミクロフィブリルが形成される(Cosgrove 2014)。同じく Glc のポリマーであるが螺旋や分

岐構造を取るデンプンとは違い、空間的にもかなり密であり物理的強度が高い強固な構造

である。

このような結晶性の高いセルロースは自然界において主にセルラーゼと呼ばれる糖質加

水分解酵素によって分解される。セルラーゼとは β-1,4 グルコシドを加水分解する酵素の

総称とされており,結晶セルロース鎖を末端から C2 単位で切断していく Exo-glucanase

(cellobiohydrolase,CBH)と,セルロース鎖の非結晶領域にランダムに作用する Endo-

glucanase(EG)の二種類に大別される。セルロースの糖化に関しては以下に示すような,セ

ルラーゼが協調的に作用することで行われるとされる説が一般的に広く受け入れられてい

る。まず主に EG が非結晶領域に作用し,CBH が作用できる末端を増加させる。末端の増

加に伴って CBH が作用していき,CBH と EG それぞれが作用できる領域が徐々に拡大す

る。このサイクルが繰り返されることでセルロース鎖は分解されていき,C2 を多く含むセ

ロオリゴ糖が生成される。そこでさらに β-glucosidase(BGL)と呼ばれる酵素がセロオリゴ

糖に作用し、非還元末端から Glc 単位で加水分解することでセルロースの糖化が行われる。

これまでに示したようにセルロースは構成糖が Glc であるため,完全に分解することで

バイオエタノールなどの各種有機化合物を発酵生産するための出発原料となる。このため

セルロースは近年話題にあがる,化石資源枯渇問題や地球温暖化問題に対して再生可能・カ

ーボンニュートラルという二つの側面から非常に有力視されており,これを効率的に分解

するためにセルラーゼに関する研究が盛んに行われてきた。

Trichoderma reesei のセルラーゼ

セルロース性バイオマスをセルラーゼで糖化することに注目が集まるようになると,セ

ルラーゼの生産やその酵素学的な性質に関して,糸状菌 Trichoderma reesei を中心にその研

究が発展してきた。T. reesei はタンパク質分泌能が高く,またその分泌タンパク質は CBH

と EG が大半を占めているため,難分解性である結晶性セルロースの糖化力に優れている

(Hasunuma et al. 2013)。このような特徴はセルロース性バイオマスを酵素糖化する上で最

優先されるべき特徴であり,非常に有用性が高いと考えられているため,酵素糖化法に関し

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ても T. reesei のセルラーゼを主体として研究開発が進められている。一方で T. reesei のセ

ルラーゼ剤には欠点も存在する。一つはヘミセルラーゼ活性が低いことである。このような

ことは T. reesei のゲノム配列にコードされているヘミセルラーゼの数からも示唆されてお

り,Aspergillus 属や Fusasarium 属が 30 種類以上のヘミセルラーゼ遺伝子を有しているの

に対し、T. reesei は 16 種類しか有していないことが明らかとなっている(Martinez et al.

2008)。もう一つは T. reesei のセルラーゼ剤中に BGLがほとんど含まれていないため(CBH,

60–80%; EG, 20–36%; BGL, 1%; Rana et al. 2014),糖化液中に蓄積するのは目的である Glc

ではなく二糖の C2 であり,セルラーゼの活性が阻害されることが多く報告されている

(Andrić et al. 2010; Holtzapple et al. 1990; Oh et al. 2000)。これは BGL をセルラーゼ剤に添

加することで糖化効率が改善されることからも,生成物阻害が糖化効率を低下させる原因

となっていることは明らかである(Berlin et al. 2006)。

T. reesei のセルラーゼ剤の中でも特に CBH I の重要性はそのプロモーターの転写量および

酵素剤中の存在比や(Rahman et al. 2009),さらには欠損株を用いた酵素剤によるバイオマ

スの糖化実験から明らかとなっており(Kawai et al. 2013),CBH I の活性を阻害する要因で

ある C2 を効率的に除去できる BGL が必要とされている。以上のように依然として T.

reesei のセルラーゼ剤には糖化効率や,酵素生産に要するコストの面で課題が残っている。

それらを解決するために現在でも酵素剤の On-site 生産に向けた共培養系に関する研究や

(Ahamed and Vermette 2008; Duff 1985; Fang et al. 2010; Kolasa et al. 2014; Rana et al. 2014),

種々の有用なヘミセルラーゼや BGL の添加効果を解析した研究(Berlin et al. 2006; Uchima

et al. 2012; Xin et al. 1993),さらにはそれらをコードする遺伝子を遺伝学的手法で T. reesei

に導入し、異種発現させたセルラーゼ剤を用いて糖化力の向上を図る研究も様々に行われ

ている(Dashtban and Qin 2012; Ma et al. 2011; Mäntylä et al. 2007; Miyauchi et al. 2013)。

β-glucosidase

T. reesei のセルラーゼ剤の欠点の中でも,目的の最終産物である Glc を得るための BGL

活性の低さは致命的であった。そのため,様々な生物種を対象として,セルラーゼと相乗作

用を示す BGL が探索されてきた。

BGL(E.C.3.2.1.21)とは主に β-グルコシド結合のオリゴ糖を非還元末端側から Glc 単位

で加水分解する酵素として定義されている。その由来は細菌類,真菌類,昆虫,植物,動物

など多岐に渡り,その機能も,微生物においてはバイオマスに由来するオリゴ糖や配糖体の

分解や合成,動物においては糖脂質や外来のグルコシドの分解,植物においては細胞壁の代

謝,防御,植物ホルモンや生理活性物質の分解や合成による機能調節などが知られており,

生物種によって BGL の触媒の対象となる基質が多岐に渡っている(Ketudat Cairns and Esen

2010)。その中でもセルロースの糖化に関する研究が行われてきたのは主にセルロース分解

性の真菌類が中心であり,BGL に関しても多くの研究でその性質の比較が行われてきた(村

尾ら 1987)。しかし酵素活性でしか BGL を分類できなかった 1980 年代後半まで,これら

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の多くの研究は培養上清や菌体内から抽出された混合物であるか,精製酵素の有する活性

に基づいて比較されてきたものが多く,タンパク質量当たりの加水分解活性でしか比較で

きない状況であった。

1990 年代ごろになると分子生物学が発展してきたことにより遺伝子の塩基配列解析が

進歩し,推定されるアミノ酸配列と酵素の活性を比較できるようになった。BGL に限らず,

糖質関連酵素に関する議論を統一的に行えるようにするために,Henrissat らは疎水性クラ

スター解析を基礎としてアミノ酸配列や立体構造を基にこれらを分類し,CAZy データベ

ースにまとめた(Gaboriaud et al. 1987; Henrissat 1991; Henrissat and Bairoch 1993,1996;

http://www.cazy.org/)。糖質関連酵素の中でも,セルラーゼ,ヘミセルラーゼ,BGL などの

加水分解に関与する酵素は糖質加水分解酵素ファミリー(GH)に分類されている。この分

類法によりアミノ酸配列が類似した GH 内,あるいは立体構造が類似した GH 間での触媒

機構や基質認識機構などの違いと触媒活性とを相関させて比較することが可能となり,糖

質関連酵素の研究の発展に大きく寄与してきた。BGL はその触媒活性とアミノ酸配列や立

体構造を考慮して GH1,3,5,9,30,116 に分類されている。その中でもセルラーゼ剤に

添加することを目的として詳細に研究が行われてきたのは GH1 と GH3 の BGL である。

Aspergillus aculeatus 由来 GH3 β-glucosidase 1

T. reesei のセルラーゼ剤のみを用いたセルロース性バイオマスの酵素糖化は,上述した欠

点を有するため,その糖化に要する時間の問題や,必要とされる量の酵素を生産するための

コストの問題から困難であるとされている。そこで T. reesei のセルラーゼ剤の糖化効率を

さらに上昇させるために,以前当研究室では T. reesei のセルラーゼ剤と相乗作用を示すセ

ルラーゼ,ヘミセルラーゼ生産菌を土壌中から探索し,A. aculeatus No. F-50 株を単離した

(Murao et al. 1979)。本菌はパルプ糖化活性が高いため生成する糖類はキシロースや Glc な

ど,単糖のみであることが利点であり,村尾らによって A. aculeatus の培養上清から 3 種

類の BGL と 6 種類のセルラーゼが精製されている(Murao et al. 1988)。A. aculeatus のセ

ルラーゼ,ヘミセルラーゼは単糖生成力が高いため、その中でも T. reesei のセルラーゼ剤

の欠点を補う BGL の性質に関心が持たれていた。阪本らによって 3 種類の BGL に関し

て種々の性質検討が行われた結果(Sakamoto et al. 1985a,b),β-glucosidase 1(AaBGL1)はセ

ロオリゴ糖に対する比活性が鎖長依存的に増加する点や,C2 加水分解時に糖転移産物が検

出されない点など,極めて糖化力に優れた BGL であることが明らかにされている

(Sakamoto et al. 1985b)。その後,AaBGL1 の内部 N 末端アミノ酸配列を元に cDNA がク

ローニングされ(Kawaguchi et al. 1996),続いて genome DNA のクローニングも行われたこ

とで(榎 1995),その配列から AaBGL1 は GH3 に分類されている。

AaBGL1 遺伝子に関しては実際に T. reesei において xyn3 プロモーター制御下での異種

発現が試みられており(X3AB1 株),その培養上清(JN11)の C2 分解活性は,T. reesei の

主要な BGL である Cel3A 遺伝子を同プロモーター制御化で発現させた株(X3TB1)の培

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養上清(JN10)よりも 63 倍高い値を示した(Nakazawa et al. 2011)。さらに Kawai らは,

市販の T. reesei 由来のセルラーゼ剤である Accellerase 1500(Genencor Inc.)と Cellic CTec

(Novozymes co.)を比較対象として,JN11 を用いて種々の前処理バイオマスに対する糖化

力を調べた。その結果,硫酸,水酸化ナトリウム,熱水による前処理を施したエリアンサス

とユーカリにおいては市販セルラーゼ剤よりも高い Glc 収量を達成したことを報告した

(Kawai et al. 2012)。希硫酸処理や水酸化ナトリウム処理を施した稲わらに対しても同様の

結果を得ており,AaBGL1 を含むセルラーゼ剤である JN11 は幅広い前処理・バイオマスに

対応できることが明らかとなっている(Kawai et al. 2012)。しかしこれ以上に糖化効率を改

善する必要に迫られており,AaBGL1 に関しても機能の向上が要求されている。それを達

成するための方法としては,AaBGL1 の C2 に対する比活性を向上させることで,

AaBGL1 を始め,セルラーゼの使用酵素量を低減させたり,AaBGL1 の Glc による生成物

阻害を回避することでバイオマス糖化後期においてもより高い活性を保持させたりするこ

となど,活性中心における構造変化に依存して獲得しうる形質を生み出す必要があると考

えている。

タンパク質の機能改変

天然に存在するタンパク質は新たな機能や環境に適応するためにその姿を少しずつ着実

に変化させ,現在我々が目にする表現型を獲得するに至っている。タンパク質の機能が調節

されるには翻訳後修飾や,アロステリックな機能調節などの調節方法も広く知られている

が,基本的には遺伝子に変異や組換えが起き,それらが長年に渡って蓄積することで機能や

立体構造の多様性が生まれてきた。我々はそれぞれのタンパク質に存在する構造的特徴と

その表現型を結び付けることで研究を発展させて知見を集積し,近年盛んに行われている

ような,目的とする形質を有するタンパク質の創生に応用している。

一般的に知られるタンパク質を改変する方法として,変異原処理や error-prone PCR(Chen

and Arnold 1993),DNA シャッフリング(Stemmer 1994)や site-saturation mutagenesis(Miyazaki

and Arnold 1999)など,遺伝子にランダムに変異を導入し,特定の機能を獲得した変異体を

選択・淘汰する方法(directed evolution)や,タンパク質やアミノ酸配列を元にして構造と機

能の関係から部位特異的に変異導入を行う rational design の手法が挙げられる(Cedrone et

al. 2000)。変異原処理や error-prone PCR は主にタンパク質の立体構造が明らかでない場合

や,種々の環境因子に対する安定性や抵抗性を向上させるような場合に用いられてきた手

法であり,そこで得られた知見は立体構造を元にした変異導入に役立っている。しかし変異

が起きるアミノ酸数を制御することや特定のアミノ酸に変異が入る確率が低いことなど,

様々な課題も挙げられている(Miyazaki and Arnold 1999)。Site-directed mutagenesis は遺伝子

工学的手法を用いて特定のアミノ酸に対して特定の変異を導入できることから,そのアミ

ノ酸が果たす役割を解析するために非常に有用な方法である。立体構造解析が盛んに行わ

れるようになった 1990 年代後半からは頻繁に用いられており,タンパク質の機能解析に

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関する研究の発展に大いに貢献した手法である。Site-saturation mutagenesis は立体構造を元

にすると非常に有力な変異導入方法であり,基質特異性や立体選択性を改変する際に大い

に用いられてきた手法である(Andrews and McLeish 2013)。この手法はランダム性と部位特

異的である点から,directed evolution と rational design を組合せた手法であるとされている

(Chica et al. 2005; Joshi and Satyanarayana 2015)。

セルラーゼに関しても以前より変異導入によりその安定性や活性を向上させることが試

みられており(Chen et al. 2012; Gonzalez-Blasco et al. 2000; McCarthy et al. 2004; Wang et al.

2005; Zhang et al. 2000),BGL に関しても GH を問わず変異導入による機能改変が試みられ

てきた。しかしそのような BGL の機能改変の報告例を包括的に見ると glycosynthase のよ

うな糖転移活性を向上させた変異酵素を取得,作製した報告例は多いが(Feng et al. 2005;

Mayer et al. 1998; Perugino et al. 2004; Shim et al. 2012),我々が目的とする GH3 BGL におけ

る,C2 に対する加水分解活性が向上した例はあまりない。A. niger 由来の GH3 BGL にお

いて酸塩基触媒を探索した際に,活性部位からは遠い D496A の変異酵素において C2 に

対する Km が低下していたことが報告されているが(Thongpoo et al. 2013),その原因に関

する議論はされていないなど,加水分解活性を向上させるという目的を設定することが多

くないことが見受けられる。

GH3 の BGL の機能と構造に関する研究

タンパク質の機能を改変する際には,扱っているタンパク質においてどのような変異酵

素を取得するのか,どのような手法を用いることができるかを把握することが,取得できる

変異酵素の質を左右するため非常に重要である。GH3 に属する AaBGL1 というタンパク

質を扱うにあたり,GH3 の構造や機能に関する報告を取りまとめた。

・触媒メカニズム

GH3 に属する加水分解酵素はアノマー保持型の酵素であり,2 種類の酸性アミノ酸残基

が求核残基,酸塩基触媒残基として機能する。その反応スキームを Fig. 0-1B に示した。ま

ず求核性アミノ酸残基がグルコシドのアノマー炭素を求核攻撃し,さらに酸触媒がグルコ

シド結合に用いられている酸素原子にプロトンを供与することで,オキソカーバニウムイ

オン様中間体を経てグルコシド結合を切断し,非還元末端側の単糖と求核性アミノ酸残基

がグリコシル-酵素中間体を形成する。次に塩基触媒が活性中心に入る水分子からプロトン

を引き抜き,活性化された水分子がグリコシル-酵素中間体のアノマー炭素を再度攻撃する

ことで糖が遊離する,double displacement と呼ばれる触媒機構が現在まで一般的に広く浸透

している(Zechel and Withers 2000; Vuong and Wilson 2010)。グリコシル-酵素中間体形成後

の活性中心には基質である糖質や,溶媒としての種々の化合物も入り込む場合がある。その

化合物がアルコール性ヒドロキシ基を有している場合には,塩基触媒がそこからプロトン

を引き抜き,活性化されたアルコール性ヒドロキシ基がアノマー炭素を攻撃し,糖転移反応

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が起きる。

一方で Fig. 0-1A に示されているのはアノマー反転型の加水分解酵素の反応スキームで

あり,酸触媒と塩基触媒が独立して作用する。まず塩基触媒が水分子のプロトンを引き抜い

て活性化する。それがグルコシド結合を形成しているアノマー中心を求核攻撃し,酸触媒が

グルコシド結合に用いられている酸素原子にプロトンを供与し,アノマーが反転する。こち

らの反応では水分子が介入する広い空間が必要となっているため,二つの酸性アミノ酸残

基の距離は,アノマー保持型酵素が平均約 5.5 Å なのに対して約 10.5 Å と離れている

(McCarter and Withers 1994; Zechel and Withers 2000)。

Fig. 0-1 Proposed general reaction mechanisms of inverting (A) and retaining (B) glycoside

hydrolases (Zecheland Withers 2000). In brackets, the complex is indicated transition state.

・GH3 BGL の多様性

一般的に触媒に関与するアミノ酸残基は GH 内,あるいは立体構造による分類である

Clan が同じであれば高度に保存されている。アノマー保持型酵素である BGL においても,

これまでに求核性アミノ酸残基は Glc アナログである 2-deoxy-2-fluoro β-glucosyl fluoride

や conduritol epoxide,及びそれらの誘導体などを求核性アミノ酸残基と共有結合させ,それ

が結合しているアミノ酸残基を peptide MS 解析や立体構造解析により同定するという方

法により決定されてきた(Chir et al. 2002; Dan et al. 2000; Li et al. 2001; Withers and Aebersold

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1995)。そのような解析を通じて,現在では[LIVM](2)-[KR]-x-[EQKRD]-x(4)-G-[LIVMFTC]-

[LIVT]-[LIVMF]-[ST]-D-x(2)-[SGADNIT] のコンセンサスモチーフ中の D が高度に保存さ

れ て い る こ と が 明 ら か と な っ て い る ( PROSITE Accession No. PDOC00621,

http://prosite.expasy.org/prosite.html)。一方で酸塩基触媒はアミノ酸の一次配列上では保存性

が低いため,アミノ酸の配列比較からは特定することが難しく,様々な GH3 において部位

特異的変異導入法や立体構造を元にした配列比較により酸塩基触媒残基が探索されてきた

(Chir et al. 2002; Harvey et al. 2000; Li et al. 2002; Thongpoo et al. 2013)。GH3 に属する BGL

では大麦由来の BGL(HvExoI)において初めて結晶化が試みられて,1999 年に Glc との

複合体の立体構造解析が行われた(Hrmova et al. 1998; Varghese et al. 1999)。これを期に

Harvey らは GH3 に属する 99 の酵素のアミノ酸配列を用いて系統樹解析を行い,少なく

とも 6 つのサブファミリーに分類できることを示した(Harvey et al. 2000)。この報告の中

で HvExoI における求核性アミノ酸残基である D285 は遠縁の種由来の BGL においても

比較的保存性が高いが,先に述べたように酸塩基触媒残基である E491 に相当するアミノ

酸残基は一次配列上離れているか,もしくは存在が確認できないとされていた。このような

観点からも活性中心のアミノ酸の配置及びその構造に多様性があり,それが多様な基質特

異性を生み出していることが推測された。

実際,GH3 には多様な酵素群が属しており,主要なものでも β-glucosidase(EC 3.2.1.21),

xylan 1,4-β-xylosidase ( EC 3.2.1.37 ), β-glucosylceramidase ( EC 3.2.1.45 ), β-N-

acetylhexosaminidase(EC 3.2.1.52),α-L-arabinofuranosidase(EC 3.2.1.55)のなど多種類の酵

素が属している(http://www.cazy.org/)。その中で BGL においても基質特異性が異なること

が明らかとなっており,その基質特異性の違いから cellobiase,aryl and alkyl-β-glucosidase,

broad-specificity β-glucosidase の 3 種類に分けられることもある(Ducret et al. 2002;

Korotkova et al. 2009; Takahashi et al. 2011; Hrmova et al. 2002)。近年になって立体構造解析

が進み,現在では 8 種類の BGL の立体構造が明らかとなっている(Karkehabadi et al. 2014;

McAndrew et al. 2013; Nakatani et al. 2011; Pozzo et al. 2010; Suzuki et al. 2013; Varghese et al.

1999; Yoshida et al. 2010; Zmudka et al. 2012)。それによりこのような基質特異性の違いを立

体構造の観点からも考察できるようになってきた。

大麦由来の BGL(HvExoI)は 2 ドメイン,Pseudoalteromonas sp. Strain BB1 由来 BGL

(ExoP),Thermotoga neapolitana 由来 TnBgl3B,スイッチグラスコンポストからメタゲノ

ムの手法により得られた GH3 BGL である JMB19063,A. aculeatus 由来 AaBGL1,Hypocrea

jecorina 由来 HjCel3A は 3 ドメイン,Kluyveromyces marxianus 由来 KmBglI,Streptomyces

venezuelae 由来 DesR は 4 ドメインであり,由来によってそのドメイン構造は多様である。

基本的にはドメイン 1 に (β/α)8 バレル構造,ドメイン 2 に (α/β)6 サンドイッチ構造を有

しており,そのドメインの境界に活性中心が位置している。3 ドメイン構造の BGL は C

末端に Fibronectin type III 様ドメイン(FnIII)を有しており,このドメインは GH に広く

存在していることが知られている(Little and Doolittle 1994)。その役割について解析された

Page 13: Aspergillus aculeatus由来 β-glucosidase 1の生化学的解析 ...Holtzapple et al. 1990; Oh et al. 2000 )。これは BGL をセルラーゼ剤に添 加することで糖化効率が改善されることからも,生成物阻害が糖化効率を低下させる原因

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例は少なく,Clostridium thermocellum 由来の CBH(CbhA)における FnIII の有無が基質の

分解に与える影響が解析され,基質の分解を容易にするとの報告もあるが(Kataeva et al.

2002),GH3 BGL におけるその役割は明らかになっていない。FnIII は活性部位の裏側に配

置しており,85°C で 18 h 以上安定である耐熱性 BGL の TnBgl3B においては(Zverlov et

al. 1997),立体構造解析が行われた際にドメイン 1,2 を安定化させることで熱安定性に寄

与している可能性が示唆されているが(Pozzo et al. 2010),AaBGL1 を始め,FnIII を有して

いるが耐熱性ではない酵素も多数存在しているため,一概には議論できない。4 ドメイン構

造の BGL は更に活性中心を覆うように PA14 ドメインが存在している。KmBglI において

は PA14 ドメインが活性中心に取り込む基質の鎖長を制御しているとされ,特に L2 や C2

などの二糖に対して高い反応性を有する構造となっている(Yoshida e al. 2010)。また DesR

においても PA14 ドメインが存在しているが,KmBglI との重ね合わせの結果から,それぞ

れの PA14 ドメインは異なる方向を向いており,基質特異性に関しても違いがあることが

示唆されている(Zmudka et al. 2012)。

糖質加水分解酵素の活性中心において,糖残基と相互作用するアミノ酸残基が形成する

空間をサブサイトと呼んでおり,非還元末端側を − として,触媒残基を挟んで + 側サブサ

イトへと続く(Davies et al. 1997)。GH3 BGL においては,−1,+1,+2 …というサブサイト

構造を有していることが一般的であり,活性部位はポケット状になっている。GH3 BGL の

構造の比較から −1 サブサイトの構造はほぼ類似していることが明らかとなっているが

(Karkehabadi et al. 2014; Hrmova et al. 2002; Nakatani et al. 2011; Pozzo et al. 2010; Suzuki et al.

2013;Yoshida et al. 2010),+ 側サブサイト,特に +1 サブサイトはそれぞれ特徴的である。

HvExoI や ExoP においては二つの Trp 残基(HvExoI; W286,W434, ExoP; W294,W436)

が +1 サブサイトで糖を挟むような構造を有しており,種々の β-結合に対しても柔軟に対

応できる構造を有している(Hrmova et al. 2002; Nakatani et al. 2010,2011)。KmBglI でも F445

と F508 により類似した構造を形成しているが,この二つのアミノ酸残基は HvExoI や

ExoP にはない PA14 ドメインに由来している。コンポスト由来の JMB19063 は二量体を

形成する BGL であるが,この BGL において立体構造的に HvExoI における W434 に対

応するアミノ酸は,もう一方のモノマー由来の F587 であり,二量体形成が活性を示すのに

必要であることが示されている(McAndrew et al. 2013)。また TnBgl3B や AaBGL1 におい

ては,一次配列上 HvExoI の W286 に対応するアミノ酸の側鎖は異なる方向を示しており,

−1 サブサイトを形成している(TnBgl3B,W243; AaBGL1,W281; Pozzo et al. 2010; Suzuki et

al. 2013)。TnBgl3B では W243 が −1 サブサイトを向いて露出した +1 サブサイトを補う

アミノ酸残基は存在しないが,AaBGL1 においては W68 と F305 の側鎖がこの空間を補

っており,+1 サブサイトに疎水性の高い領域を形成している。また HjCel3A の W237 は

HvExoI の W286 とは異なる方向を向いているが,Y441 と共に +1 サブサイトを形成して

いることが示されている(Karkehabadi et al. 2014)。ここで示してきた GH3 BGL のいずれ

においても +1 サブサイトでは芳香族アミノ酸による疎水性相互作用が主な親和力を形成

Page 14: Aspergillus aculeatus由来 β-glucosidase 1の生化学的解析 ...Holtzapple et al. 1990; Oh et al. 2000 )。これは BGL をセルラーゼ剤に添 加することで糖化効率が改善されることからも,生成物阻害が糖化効率を低下させる原因

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しており,これによって受け入れる β-結合に多様性を持たせる構造を有していた。このよ

うに PA14 ドメインの有無や活性中心の +1 サブサイトの構成の多様性がそれぞれに特有

の基質特異性を形成していることが考えられる。

研究目的

T. reesei のセルラーゼとの相乗作用が示されている AaBGL1 であるが、種々の課題が残

る T. reesei のセルラーゼ剤の糖化効率を更に上昇させるために,AaBGL1 においても C2

に対する活性を向上させることや,生成物である Glc による阻害を回避するような,酵素

反応機構に基づく高機能化が求められている。そのような基質の特異性を変化させたよう

な変異酵素を得る際には,立体構造の情報を元にした部位特異的変異の導入が非常に有力

であることは先に述べた。AaBGL1 は 2013 年に Suzuki らによって立体構造が決定されて

いる(Suzuki et al. 2013)。そのため部位特異的に変異を導入することが可能であるが,その

ターゲットを定めるのは先に述べた GH3 BGL の構造の多様性から困難であると考えられ

た。さらに AaBGL1 は酵素学的な解析が乏しいため,サブサイト構造も不明であり,どの

ような領域をターゲットとすればどのような変異酵素が得られるのか予測ができなかった。

そこで本研究ではセロオリゴ糖分解に優れるとされる AaBGL1 のサブサイト構造を明ら

かにして,その知見を元に C2 に対する活性が向上した変異酵素を取得し,得られたアミ

ノ酸が C2 加水分解過程で果たす役割に関する知見を得ることを目的とした。

以上に述べたことを達成するために,まず AaBGL1 の基質特異性を酵素反応速度論に

基づいた解析を通じて詳細に調べ,さらに糖転移産物の同定を試み,立体構造解析の結果

との整合性を調べた(第一章)。次にそこで得られた結果を元に + 側サブサイトを対象と

して site-saturation mutagenesis を行うことに決定し,S. cerevisiae を宿主としたスクリーニ

ング系を確立して変異酵素の取得を試みた(第二章)。最後に第二章で得られた変異酵素

の詳細な解析を通じて各変異が C2 加水分解に与える影響を考察した(第三章)。

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第一章 A. aculeatus 由来 β-glucosidase 1 の生化学的解析

酵素の基質特異性を変化させるための変異導入法としては,一般的にランダム変異導入

法よりも立体構造情報を利用した活性部位への部位特異的変異導入法がよく用いられる

(Andrews and McLeish 2013; Forest and Michael 2013; Miyazaki and Arnold 1999)。部位特異的

変異導入法を用いるに当たり,活性中心の構造と共に,基質特異性に関する酵素反応速度論

的な解析が必要となる。

これまでの研究によって AaBGL1 が属する GH3 は非常に多様な酵素活性ならびに一

次配列を有していることが明らかとなっている。細菌,植物,真菌由来の BGL に関しては

生化学的な解析も盛んに行われている。特に真菌由来の BGL で AaBGL1 とのアミノ酸相

同性が 40% 以上の BGL では β-1,3 結合に対する加水分解活性が高いものや,糖転移反応

を触媒することも多く報告されているが,セロオリゴ糖に対して特異的に作用する BGL は

報告されていない(Hrmova et al. 2002; Igarashi et al. 2003; Kawai et al. 2004; Langston et al. 2006;

Nakajima et al. 2012; Takahashi et al. 2011)。このような背景の中で AaBGL1 はセロオリゴ糖

に対する比活性が高いことや,アノマー保持型の GH に属する加水分解酵素でありながら

糖転移産物が検出されないなど,非常に加水分解活性が高い BGL であることが示されてき

た(Sakamoto et al. 1985b)が,基質特異性や酵素反応速度論的な解析という点では不十分で

あり,現時点では変異を導入するアミノ酸を選抜することはできないと判断した。そこで本

章ではまず A. oryzae を宿主として用いて生産させた recombinant AaBGL1(rAaBGL1)の

酵素学的な性質を調べる中で β-結合のオリゴ糖やそのアナログに対する基質特異性の検証,

特に β-結合のオリゴ糖に対しては酵素反応速度論的に詳細な検討を行った。さらに

rAaBGL1 において β-グルコ二糖の加水分解時にわずかに生成する糖転移産物の一つを検

出・同定することに成功した。

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実験材料及び方法

A. 使用菌株およびプラスミド

Escherichia coli DH5αF’ [supE 44,ΔlacU169(Φ80lacZΔM15),hsdR 17,recA 1,

endA1,gyrA 96,thi-1,relA 1,deoR,F’]

Aspergillus oryzae niaD300

pNAN8142(Minetoki et al. 2003)

B. 使用試薬

pNP-Glc(p-nitrophenyl-β-D-glucopyranoside)は Wako,C2 は Nachalai tesque,pNP-Xyl(p-

nitrophenyl-β-D-xylopyranoside),pNP-Araf(p-nitrophenyl-α-L-arabinofuranoside),pNP-Gal (p-

nitrophenyl-β-D-galactopyranoside),pNP-GlcNAc(p-nitrophenyl-N-acetyl-β-D-glucosaminide),

pNP-Fuc(p-nitrophenyl-β-D-fucopyranoside),pNP-Man(p-nitrophenyl-β-D-mannopyranoside),

gentiobiose(G2)は Sigma,laminaribiose(L2),laminaritriose(L3),laminaritetraose(L4),

laminaripentaose(L5),cellotriose(C3),cellotetraose(C4),cellopentaose(C5)は Megazyme

から購入した。その他の試薬に関しては,特に示さない限り和光純薬工業社製および

Nachalai tesque 社製の一級もしくは特級試薬を用いた。

C. 使用培地および使用試薬

TE buffer

Tris-HCl(pH 8.0) 10 mM

EDTA(pH 8.0) 1 mM

LB plate

Polypeptone 1.0%

Yeast Extract 0.5%

NaCl 0.5%

Agar 1.5% [pH 7.0]

2 × TY medium

Polypeptone 1.6%

Yeast Extract 1.0%

NaCl 0.5% [pH 7.0]

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Minimal medium(MM)

Salt solution 5.0%

Trace element mixture 0.1%

Glc 1.0% or 5.0%

NaNO3 or Ammonium tartrate 0.3% or 1.5% [pH 6.5]

なお,モノスポアアイソレーションを行うときは MM(NO3−)に 0.1% Triton X-100 を加え

たものを用いた。

Regeneration medium

Salt solution 5.0%

Trace element mixture 0.1%

Glc 1.0%

NaNO3 0.3%

NaCl 4.68% [pH 6.5]

平板培地として用いるときは寒天を 1.5% となるように加えた。

Salt solution

KCl 2.6%

MgSO4・7H2O 2.6%

KH2PO4 7.6%

Trace element mixture

Mo7O24・4H2O 0.11%

H3BO3 0.11%

CoCl・6H2O 0.16%

CuSO4・5H2O 0.16%

EDTA 5.0%

FeSO4・7H2O 0.50%

MnCl・4H2O 0.50%

ZnSO4・7H2O 2.2%

Tween/Saline solution

Tween80 0.1%(w/v)

NaCl 0.01%

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Releasing buffer

Sodium Azide 0.02%

Phenylmethylsulfonyl fluoride 1 mM

Cycloheximide 10 µg/ml

sodium acetate 20 mM [pH 5.0]

D. A. oryzae の形質転換

D-1. プロトプラストの調製及び A. oryzae の形質転換

Gomi らの方法に従って行った(Gomi et al. 1987)。MM(NH4+)平板培地に生育した A.

oryzae niaD300 株に 5 ml の Tween/Saline solution を加え,スプレッダーを用いて胞子を懸

濁した。この胞子懸濁液を MM(NH4+)液体培地 200 ml(/500ml 容バッフルつき三角フラ

スコ)に加え,30°C,160 rpm で一晩振盪培養した。適度に生育させて培養を終了し,ミラ

クロス上で集菌し,Protoplasting buffer(PB; 0.8 M NaCl,10 mM NaH2PO4)で洗浄した。回

収した菌体を 50 ml 容遠心管中の Yatalase(タカラバイオ社製)30 mg,Lysing enzyme 50

mg の入った PB 10 ml に懸濁し,30°C,90 min ゆっくりと振盪しながらインキュベートし

た。30 分毎にピペッティングにより穏やかに菌体をほぐした。その後,プロトプラストの

みを回収するためミラクロスでろ過し,ろ液を 4°C,2,000 rpm,5 min 遠心分離した。沈殿

を Transformation buffer I(TB I; 0.8 M NaCl,10 mM Tris-HCl(pH 7.5),50 mM CaCl2)10 ml

に懸濁し,4°C,2,000 rpm,5 min 遠心分離した。上清を除去し,沈殿を 200 µl の TB I に

懸濁したものをプロトプラスト溶液とした。プロトプラスト数を顕微鏡により確認し,およ

そ 107 個/ml のプロトプラストをその後の操作に用いた。約 10 µg の DNA を含む溶液に

等量の 2 × TB I を加え,それをプロトプラスト溶液に添加した。さらにその 0.2 倍量の

Transformation buffer II(TB II; 50% PEG 6000,50 mM Tris-HCl(pH 7.5),50 mM CaCl2)を

加え,穏やかに混合して 10 min 氷上に静置した。その後 1 ml の TB II を加え,室温で 15

min 静置した。次に 10 ml の TB I を加え,4°C,2,000 rpm,5 min 遠心分離した。上清を

除去し,沈殿を 200 µl の TB I に懸濁し,Regeneration medium(RE)に乗せ,トップアガ

ー(RE,0.7% 寒天)を重層した。

D-2. モノスポアアイソレーション

エッペンドルフチューブに 200 µl の Tween/Saline solution を加えたものを 2 つ用意し,

形質転換体が生育した RE 培地プレートから白金耳の先端に付着させた形質転換体の胞子

を片方の Tween/Saline solution に懸濁した。そこから 2 µl 取り,もう片方の Tween/Saline

solution と混合することで 100 倍希釈した。その溶液から 100 µl を MM(NO3−,0.1% Triton

X-100)平板培地にスプレッドし,30°C で 3–4 日間静置培養した。そこに生育してきたコ

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ロニーから 1 株選択し,MM(NO3−)平板培地に単離した。

D-3. rAaBGL1 の生産性の確認

D-2. で得た形質転換体が生育したプレートに 5 ml の Tween/Saline solution を加えて胞

子懸濁液を作製し,MM(NO3−; 1.0% Glc,0.3% NaNO3)液体培地 200 ml(/500ml バッフル

付き三角フラスコ)に全量植菌した。30°C,160 rpm で 3 日間培養を行った。3 日後の培養

上清を 1.5 ml,菌体ごと回収し,4°C,15,000 rpm,90 min 遠心分離することで培養上清を

回収した。培養上清中の BGL 活性を 1.5 mM pNP-Glc を基質とした活性測定法により定量

した。

E. BGL 活性測定

E-1. pNP 法を用いた活性測定法

活性測定は基質に 1.5 mM pNP-monosaccharide 溶液(in 100 mM sodium acetate buffer(pH

5.0))を用いた pNP(p-nitrophenol)法にて行った。酵素溶液は 100 mM sodium acetate buffer

により適切な濃度に希釈して用いた。酵素反応は 37°C,5 min プレインキュベートした 100

µl の酵素溶液に 3 mM 基質溶液を等量混合することで反応を開始し,37°C,10 min の反

応後,2 ml の 1 M Na2CO3 溶液を加えることで反応を停止させた。その後 405 nm の吸光

度を測定し,pNP の吸光係数(ε(405)=0.0185 ml/(nmol・cm))を用いて遊離した pNP 濃

度を算出し,活性を求めた。ブランクには酵素溶液に 1 M Na2CO3 2 ml,基質溶液 100 µl の

順に加え,酵素反応が起こらないものを用いた。また 1 unit は 1 min に 1 µmol の pNP を

遊離させる酵素量と定義し,以下の式により酵素活性を算出した。

酵素活性(unit/ml)= A405/18.5 × 2.2 ml/(10 min)×(1/0.1 ml)× 希釈率

a) 最適温度

酵素反応は 30,40,50,60,65,70℃の各温度で,5 min プレインキュベートした 100

µl の酵素液(1.53 nM)に同じく各温度で 5 min プレインキュベートした 3 mM pNP-Glc 溶

液を等量混合することで反応を開始し,10 min 反応させた後,2 ml の 1 M Na2CO3 溶液を

加えることで反応を停止させ,405 nm の吸光度を測定した。反応は 100 mM sodium acetate

buffer(pH 5.0)中で行った。

b) 熱安定性

6.13 nM に希釈した酵素液 200 μl をエッペンに分取し,30,40,50,60,65,70°C の

各温度で 30 min インキュベートし,その後氷中で急冷した。そこから 100 µl をワッセル

マン試験管に分取し,pNP 法を用いた活性測定法に準じて酵素反応を行った。

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c) 最適 pH

酵素液を 20 mM sodium acetate buffer(pH 5.0)を用いて 3.06 nM に希釈して 100 µl を

ワッセルマン試験管に分取し,100 mM の各 pH buffer に溶解した 3 mM pNP-Glc 溶液を

等量加えることで反応を開始し,pNP 法を用いた活性測定法に準じて酵素反応を行った。

使用した buffer は以下のとおりである: glycine-HCl, pH 1.9–2.8; sodium acetate, pH 3.4–5.9;

sodium citrate, pH 3.3–6.3; sodium phosphate, pH 6.4–7.3; Tris-HCl pH 6.8–8.9; glycine-NaOH pH

9.5–11.0。それらを 10 min 反応させ,2 ml の 1 M Na2CO3溶液を加えることで反応を停止

し,405 nm の吸光度を測定した。

d) pH 安定性

酵素液を 20 mM sodium acetate buffer(pH 5.0)を用いて 6.13 µM に希釈し,10 µl をエッ

ペンに分取した。それを 100 mM の各 pH buffer で酵素濃度が 61.3 nM になるように希釈

した (100 倍希釈)。その後室温で 1 h 放置し,100 µl を更に別のエッペンに分取した。そ

こに 200 mM sodium acetate buffer(pH 5.0)を 900 µl 加えて pH を戻し,pNP 法を用いた

活性測定法に準じて酵素反応を行った。

F. 酵素精製

rAaBGL1 の精製手順について以下に示した。各変異酵素高発現株を 5% Glc,1.5%

Na2NO3を単一炭素源,窒素源とした MM(NO3−)液体培地 1200 ml(200 ml × 6)で 3

日間培養した後,ブフナー漏斗を用いて集菌した。5 L のイオン交換水で洗浄後,菌体を

1200 ml の Releasing buffer 中に懸濁し,30°C,160 rpm で 2 日間振盪した。それを同様

にブフナー漏斗で回収し,粗酵素液とした。

平衡化を 20 mM sodium acetate buffer(pH 5.0)で行った DEAE TOYOPEARL 650M に粗

酵素を吸着させ,20 mM sodium acetate buffer 4 L で洗浄した。続いて 0–0.3 M NaCl 溶液

(20 mM sodium acetate buffer(pH 5.0))1 L のリニアグラジエントで溶出した後,A280の値

でメインのピークを示した画分を SDS-PAGE(sodium dodecyl sulfate-polyacrylamide gel

electrophoresis)に供し,AaBGL1 に相当する 130 kDa のバンドの存在を確認した。

次に回収した画分に ammonium sulfate を 30% 飽和となるように添加し,予め 30% 飽

和 ammonium sulfate(20 mM acetate buffer(pH5.0))で平衡化した Butyl TOYOPEARL

650M に吸着させ,30–0% 飽和 ammonium sulfate 溶液(20mM acetate buffer(pH5.0))1 L

のリバースリニアグラジエントで溶出し,同様に A280の値でメインのピークを示した画分

を SDS-PAGE に供し,rAaBGL1 に相当する 130 kDa のバンドの存在を確認した。

最後に以下に示すように硫安塩析により濃縮し,透析により脱塩を行ったものを精製標

品とした。ammonium sulfate を 80% 飽和となるように添加し,4°C で一晩放置した。翌日

250 ml 容の遠心管に溶液を移し,4°C,10,800 rpm,60 min 遠心分離を行った。沈殿を少量

の 20 mM sodium acetate buffer(pH 5.0)に溶解し,透析膜(三光純薬社製;サイズ,18/32)

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を用いて 20 mM sodium acetate buffer(pH 5.0)中で一晩透析し,精製標品とした。

G. SDS-PAGE

SDS-PAGE は Laemmli の方法に従った(Laemmli 1970)。分離ゲル 10% ,濃縮ゲル 5%

から成るポリアクリルアミドゲル(Acrylamide:N,N’-Methylenebisacrylamide=29.2:0.8)を作

製した。試料試薬溶液に 2 or 6 × Sample buffer((0.125 M Tris-HCl,20% Glycerol,2% 2-

Mercaptoethanol,0.001% Bromophenol blue)or(0.375 M Tris-HCl,60% Glycerol,6% 2-

Mercaptoethanol,0.003% Bromophenol blue),pH 6.8)を添加し,100°C で 10 分間処理して

試料とした。縦型スラブ電気泳動装置(ATTO 社製)を用い,泳動用緩衝液(0.1% SDS,25

mM Tris base,192 mM Glycine)中で 20 mA の定電流下で電気泳動を行った。電気泳動後,

CBB 溶液(0.2% CBB R-250,50% ethanol,10% acetic acid)中で染色を行い,脱色液(10%

methanol,0.75% acetic acid)で脱色した。タンパク質の分子量マーカーには Protein Molecular

Weight Marker(Broad)(タカラバイオ社製)を用いた。

H. カイネティクス解析

H-1. pNP-Glc に対するカイネティックパラメータの測定

酵素濃度が 0.61 nM(A280 ≒ 0.1 に希釈した酵素液を 100 mM sodium acetate buffer(pH

5.0)を用いて 1000 倍希釈した。酵素濃度の算出はモル吸光係数(ε = 163,200)を用いて

算出した)となるように希釈した酵素液 600 µl と,およそ 0.5–4 Km の範囲に収まるよう

に濃度を振った pNP-Glc 600 µl を各々 37°C で 5 min プレインキュベートした後に混合

した(最終的に酵素濃度が 0.31 nM,基質濃度が 0.25–2 Km となるように調製した)。基

質の分解率(調製した基質濃度に対する生成物濃度)が 10% を超えないような時間間隔

(約 2–12 min の間)の 5 点で 200 µl サンプリングし,予め 2 ml の 1 M Na2CO3 溶液

を加えたワッセルマン試験管に添加することで反応を停止させた。その後 405 nm の吸光

度を測定し,酵素反応により遊離した pNP 量を定量した。各反応時間で算出した生成

pNP 濃度について,横軸に反応時間,縦軸に生成 Glc 濃度をプロットすることで,1 min

当たりの生成 pNP 濃度を算出し,各基質濃度における加水分解の初速度とした。続いて

各基質濃度に対して初速度をプロットすることで酵素反応曲線を得た。また,Hanes-Woolf

plot([s]–[s]/v0 plot)用いて Km 値,Vmax 値及び kcat 値を算出した。

H-2. Glucooligosaccharides に対するカイネティックパラメータ

酵素濃度が 1.81–2.51 nM(A280 ≒ 0.1 に希釈した酵素液を 40 mM sodium acetate buffer

(pH 5.0)を用いて 300–500 倍希釈した。酵素濃度の算出はモル吸光係数(ε = 163,200)

を用いて算出した)となるように希釈した酵素液 300 µl と,およそ 0.5–4Km の範囲に収

まるように濃度を振った基質溶液 300 µl を各々 37°C で 5 min プレインキュベートした

後に混合した(最終的に酵素濃度が 0.91–1.27 nM,基質濃度が 0.25–2 Km となるように調

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製した)。基質の分解率(調製した基質濃度に対する生成物濃度)が 10% を超えないよう

な時間間隔(約 2–12 min の間)の 5 点で 100 µl サンプリングし,予め 50 µl の 1 N

HCl を加えたワッセルマン試験管に添加する(グルコースオキシダーゼ法に用いる場

合),もしくは 100°C,5 min 煮沸する(HPAEC-PAD に用いる場合)ことで反応を停止さ

せた。1 N HCl で反応停止後 5 min 静置させた,50 µl 中和液(0.8 M Tris,0.4N NaOH)

を添加して中和して総量を 200 µl とした。そこから 100 µl を 96 穴マイクロタイタープ

レートに分注して 100 µl のグルコース CII-テストワコー(GOD)を添加し,

MICROPLATE READER EZS-ABS(IWAKI 社製)で 37°C,10 min 振盪,インキュベート

した後,主波長 500 nm,副波長 600 nm の吸光度を測定した。その測定値を予め作成し

た Glc の検量線に挿入することで Glc 量を定量した。各反応時間で算出した生成グルコ

ース濃度について,横軸に反応時間,縦軸に生成 Glc 濃度をプロットすることで,1 min

当たりの生成 Glc 濃度を算出し,各基質濃度における加水分解の初速度とした。続いて各

基質濃度に対して初速度をプロットすることで酵素反応曲線を得た。また,Hanes-Woolf

plot([s]–[s]/v0 plot)を用いて Km 値,Vmax 値及び kcat 値を算出した。なお,全ての基質

との反応について,反応終了時のサンプルを HPAEC-PAD に供して反応産物を定量し,Gn

(n = 2–5)= Glc + Gn-1 となる反応初速度を測定していることを確認した。

I. HPAEC-PAD

全てのサンプルは Dionex ICS-3000 Ion Chromatography System,CarboPac PA10(guard

column, 4 × 50 mm; analytical column, 4 × 250 mm),Chromeleon Chromatography Dara System

を用いて分析した。サンプルループ(25 µl)に 30 µl のサンプルをインジェクトし,100

mM sodium hydrate,10 mM sodium acetate の溶離液を用いて流速 1 ml/min で分離を行っ

た。スタンダードには Glc,C2,G2,L2,C3 を用いた。

J. subsite affinity map の作製

Hiromi らの方法に従った(Hiromi et al. 1973; Kawai et al. 2004; Yazaki et al. 1997)。エキソ

型酵素において,χ のサブサイトが存在するとき,あるサブサイトの親和力を Ai(i =

−1,+1–+4)する。また各結合様式のオリゴ糖の鎖長を n(n = 2–5)としたとき,+2 から

+4 サブサイトの親和力(Ai: I = +2 to +4)は以下の式で表される。R は気体定数,T は絶

対温度を示す。

An = RT{ln(kcat/Km)n+1– ln(kcat/Km)n} ①

また、−1 サブサイト親和力と真の分子活性 kint を求めるために次の式を用いた。

exp(An+1/RT) = {kint/(1/kcat)n – 1}・exp(A−1/RT) ②

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最後に A+1 を求めるために以下の式を用いた。

(1/Km)n = 0.018exp(A+1/RT)[exp{(A−1+A+2+・・・+An)/RT} + exp{(A+2+A+3+・・・+An+1)/RT}]

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結果

rAaBGL1 の生化学的な解析

rAaBGL1 の生化学的な解析を行うにあたり,Suzuki らの方法に従って rAaBGL1 の精製

を行い,SDS-PAGE によって単一なバンドとなるまで精製したことを確認した(Fig. 1-1)。

アミノ酸の一次配列から算出される分子質量は 91.3 kDa であるが,精製した rAaBGL1 の

分子質量はおよそ 130 kDa であった。

次に合成基質である pNP-Glc を用いて rAaBGL1 の酵素学的な性質を検討した。

rAaBGL1 は 40–50°C,pH 3.0–10.0 の間で 80% 以上の活性を保持していた。酵素反応の至

適温度は 65°C であり,至適 pH は 5.5 であった(Fig. 1-2)。

続いて glycone 特異性を調べるために種々の pNP-monosaccharide を基質として酵素活

性を測定した(Table 1-1)。調べた基質の中では pNP-Glc に対して最も高い比活性を示し,

非還元末端の Glc を特異的に認識することが明らかとなった。また pNP-Fuc,pNP-Araf,

pNP-Xyl,pNP-Gal に対しても微弱な活性を示した。pNP-Man,pNP-GlcNAc に対しては全

く活性を検出できなかった。

次に天然の β-glucooligosaccharide に対する反応性を調べるために,カイネティックパラ

メータを測定した(Table 1-2)。二糖の加水分解においては C2 < G2 < L2 の順に触媒効率

(kcat/Km)が上昇した。セロオリゴ糖とラミナリオリゴ糖に対してはそれぞれ DP 4,3 まで

kcat/Km が上昇した。C5 に関しては C4 と同等の kcat を示したが,L4,L5 については順次

Km が上昇し,kcat が減少することで kcat/Km が低下した。Hiromi らの考案した方法により,

セロオリゴ糖,ラミナリオリゴ糖に対する subsite affinity map を作製した(Hiromi et al. 1973)。

その結果,セロオリゴ糖に対する +2 サブサイトが存在することが明らかとなった。ラミナ

リオリゴ糖に対する +2 サブサイトは 0.93 kJ・mol−1であり,それ以降のサブサイトは負の

値を取ることが明らかとなった(Fig. 1-3)。

以前の研究では検出できていない糖転移産物を検出するために 25 mM の C2,G2,L2 を

加水分解し,その反応産物の経時変化を HPAEC-PAD を用いて分析した(Fig. 1-4)。その結

果,C2 と L2 を加水分解した際に,G2 と同等の保持時間に糖転移産物と思われるピーク

を検出した(Fig. 1-4A,C)。G2 を加水分解させた際には Glc と G2 以外のピークは検出で

きなかった(Fig. 1-4B)。

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Table 1-1 Specific activity of rAaBGL1 for various p-nitrophenyl-β-D-glycosides.

Substrate Specific activity (U/mg)

pNP-Araf 0.057

pNP-Fuc 0.017

pNP-Xyl 0.428

pNP-Glc 128

pNP-Gal 0.006

pNP-Man ND

pNP-GlcNAc ND

ND:Not Detected

Table 1-2 Kinetic parameters of rAaBGL1 for various β-linked substrates.

Substrate Km (mM) kcat (s−1) kcat/Km

(s−1・mM−1)

pNP-Glc 0.35 ± 0.03 444 ± 22 1280 ± 40

C2 2.06 ± 0.07 354 ± 10 172 ± 3

C3 0.45 ± 0.02 477 ± 3 1060 ± 50

C4 0.32 ± 0.01 433 ± 4 1340 ± 40

C5 0.41 ± 0.02 433 ± 9 1070 ± 30

G2 0.52 ± 0.02 457 ± 4 873 ± 29

L2 0.41 ± 0.02 444 ± 17 1080 ± 18

L3 0.22 ± 0.01 337 ± 3 1550 ± 80

L4 0.72 ± 0.03 304 ± 4 423 ± 11

L5 1.13 ± 0.01 285 ± 5 251 ± 2

Each value is the mean of triplicate experiments.

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Fig. 1-1 Purification of rAaBGL1. Lane 1, molecular weight marker; lane 2, rAaBGL1. rAaBGL1

(0.84 µg) was subjected to SDS-PAGE.

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Fig. 1-2 Effects of pH (A) and temperature (B) on the activity (upper panels) and the stability

(lower panels) of purified rAaBGL1. To determine the effect of pH on the activity and the stability

(A), enzyme was incubated with 1.5 mM pNP-Glc for 10 min in 100 mM following buffers: glycine-

HCl, pH 1.9–2.8 (closed circle); sodium acetate, pH 3.4–5.9 (closed triangle); sodium citrate, pH 3.3–

6.3 (open circle); sodium phosphate, pH 6.4–7.3 (closed diamond); Tris-HCl pH 6.8–8.9(closed

square); glycine-NaOH pH 9.5–11.0 (closed inverted triangle). To determine the effect of temperature

on the activity and the stability (B), enzyme was incubated with 1.5 mM pNP-Glc at 30–70C̊ in 100

mM sodium acetate buffer (pH 5.0). Data are expressed at the mean ± the standard deviation of three

independent experiments.

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Fig. 1-3 Subsite affinity map of rAaBGL1 for cellooligosaccharides (black bar) and

laminarioligosaccharides (white bar). Subsite affinity (Ai) was calculated from the Km and the kcat

values. Arrow indicated the cleavage site.

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Fig. 1-4 Hydrolysis of disaccharides by rAaBGL1. The hydrolysis of 25 mM C2 (A), G2 (B),

and L2 (C) was performed by incubation with 10.0 nM rAaBGL1 at 37˚C for 8 h. The hydrolysis

products of indicating times were analyzed by HPAEC-PAD, and identified by comparison of

retention time of each peak with those of standards.

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考察

AaBGL1 と rAaBGL1 の酵素学的性質の比較

本研究では,すでに T. reesei のセルラーゼとの相乗作用が示されている rAaBGL1 の生

化学的な性質検討を行った。AaBGL1 の成熟タンパク質は 841 アミノ酸から成り,A.

aculeatus において,あるいは A. oryzae を用いた異種発現系においてもシグナルペプチド

が切断された形態で培養上清中に分泌されることが確認された。アミノ酸配列から推定さ

れる分子質量 91.3 kDa と,今回精製した rAaBGL1 の分子質量 130 kDa は異なっていた

(Fig. 1-1)。この分子質量は A. aculeatus の培養上清中に分泌される native AaBGL1 と同等

であった(Sakamoto et al. 1985a)。近年 rAaBGL1 の立体構造が明らかとなり,未変性状態

で Endo H 処理した rAaBGL1 において 16 箇所存在する N 型糖鎖結合配列(Asn–X–

Ser/Thr; X,Pro 以外のアミノ酸)のうち,9 箇所には N 型糖鎖が結合していることが明ら

かとなった(Suzuki et al. 2013)。また立体構造中には O 型糖鎖は確認されていないことか

ら rAaBGL1 に対して約 40 kDa 分の SDS-PAGE での移動度に相当する N 型糖鎖修飾が

なされていると結論付けた。同じ Aspergillus 属由来の AaBGL1 ホモログに関する報告の

中でも,10 箇所以上存在する N 型糖鎖結合配列において N 型糖鎖修飾がなされることで

rAaBGL1 と同等の分子質量を示すという報告が複数なされている(Iwashita et al. 1998, 1999;

Langston et al. 2006; Seidle et al. 2004)。

次に rAaBGL1 の酵素学的な性質を明らかにした(Fig. 1-2)。rAaBGL1 の酵素学的な性

質は AaBGL1 と比較すると至適温度と温度安定性が高く,より広い pH の範囲で安定性が

高かった。AaBGL1 の糖鎖修飾の違いによるアイソフォームであると考えられている

BGL2 が A. aculeatus の培養上清から精製されているが,AaBGL1 とは安定性の面で異な

っている(Sakamoto et al. 1985a)。このような観点からも A. aculeatus と A. oryzae の糖鎖

修飾に違いがあり,酵素学的な性質に若干の相違が見られることが考えられる。

rAaBGL1 の基質特異性について

CAZy のデータベースにおいて GH3 に属する酵素は β-glucosidase(EC 3.2.1.21),glucan

1,3-β-glucosidase(EC 3.2.1.58),glucan 1,4-β-glucosidase(EC 3.2.1.74),exo-1,3-1,4-glucanase

(EC 3.2.1.-),xylan 1,4-β-xylosidase(EC 3.2.1.37),β-N-acetylhexosaminidase(EC 3.2.1.52),

α-L-arabinofuranosidase(EC 3.2.1.55)など,実に様々な酵素活性を示すことが報告されてい

る(Henissat 1991; Henrissat and Bairoch 1993,1996; URL:http://www.cazy.org/)。その中でも β-

glucoside 結合を分解する活性を優先的に示すものが BGL と呼ばれている。BGL の中でも

その基質特異性で cellobiase,aryl- and alkyl-β-glucosidase,enzymes with broad substrate

specificity(Takahashi et al. 2011)と分類されることがある。Suzuki らは AaBGL1 の立体構

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造の結果から,GH3 において +1 サブサイトが基質特異性の決定に重要な役割を果たして

いると論じている(Suzuki et al. 2013)。さらに Harvey らは GH3 に属する BGL を,その

アミノ酸配列に応じて 6 つのグループに分類した(Harvey et al. 2000)。上述したように

GH3 に属する酵素の基質特異性は多様であるが,AaBGL1 に関しては β-結合のオリゴ糖並

びにそれらのアナログに対する基質特異性しか調べられてこなかった。以上のような背景

を下に,改めて rAaBGL1 の基質特異性を調べた。まず pNP に種々の単糖が β-結合した二

糖アナログを用いたグリコン特異性の検討を試みた。現在までに報告される GH3 の BGL

において,pNP-Xyl に対しても活性を有するものに Prevotella bryantii 由来 Xyl3C が知ら

れている(Dodd et al. 2010)。Xyl3C に関して,正確な数値は示されていないが,pNP-Glc と

pNP-Xyl に対しておよそ 60 U/mg,40 U/mg の比活性を有している。一方で rAaBGL1 は

pNP-Glc に対する比活性が,次に比活性が高い pNP-Xyl よりも 300 倍ほど高かったこと

から,β-glucoside に対して特異的であることが示された(Table 1-1)。この結果を元に,β-

結合のオリゴ糖に対する基質特異性について,定常状態におけるカイネティックパラメー

タを測定した。β-結合の二糖の中では C2 < G2 < L2 の順に kcat/Km が上昇した。さらに DP

3 まではラミナリオリゴ糖を好み,DP 4 以上ではセロオリゴ糖を好むことが示された。以

上の結果を Hiromi らのサブサイトの考え方により考察した。グルコアミラーゼや α-アミ

ラーゼの詳細な研究を通じて Hiromi らはサブサイト理論を提唱した。その概要はある鎖長

を超えたときに基質に対する Km 値が減少し,kcat 値が増加して一定の値を取るのは,非生

産的な結合様式をとる確率が減少するためであるというものである(Hiromi et al. 1973)。

rAaBGL1 においてもサブサイトマップを作製したところ,セロオリゴ糖では −1,+1 サブ

サイトに加えて +2 サブサイトを有することが示された(Fig. 1-3)。そのため C2 に対する

kcat/Km が C3,C4,C5 よりも 1 桁小さいのはセロオリゴ糖に対する +2 サブサイトが存在

し,C2 はサブサイト中で触媒残基を跨がない非生産的な結合をするためであると結論付け

た。一方でラミナリオリゴ糖に対しては L3 を最大として鎖長依存的に kcat/Km が低下した

ため、L4 以上のラミナリオリゴ糖ではサブサイト構造に適合せず,立体障害が起きている

可能性が考えられた。それに対して C4 以上のセロオリゴ糖では C3 と同等の反応性を保

持していることから,還元末端側が酵素の外側に突出している可能性が示唆された。これら

の結果から AaBGL1 はセロオリゴ糖に対する特異性が高いサブサイト構造を有している

ことが示唆された。

Hiromi らのサブサイト理論は他の GH3 の BGL にも適用されている。オオムギ由来の

GH3 の BGL(HvExoI)ではセロオリゴ糖,ラミナリオリゴ糖に対するカイネティックパラ

メータを用いてサブサイト親和力が算出されているが,両オリゴ糖とも +1 サブサイトの

親和力が最も高く,+2 サブサイトが存在するという点で,両オリゴ糖で同様の結合様式を

有していた (Harmova et al. 2002)。HvExoI に関しては立体構造解析が行われており,C6,

L4 のアナログとの基質複合体の構造を得る際に −1,+1 サブサイトに糖が結合した立体構

造しか得られていない(Harmova et al. 2001, 2002)。これらが示すことは +1 サブサイトに

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おいて多様な結合様式を受容する自由度の高さと,非還元末端側から三糖までしかタンパ

ク質と相互作用しないことが,セロオリゴ糖とラミナリオリゴ糖に対して類似したサブサ

イト構造を有することに繋がっていると考えられる。一方で海洋性細菌である

Pseudoalteromonas sp. BB1 株由来の GH3 BGL(ExoP)は二糖に関しては β-1,4 結合よりも

β-1,3 結合に対する反応性が高いが,3–5 糖までは両オリゴ糖でほぼ同等の kcat/Km を示し

ている(Nakatani et al. 2010)。ExoP の立体構造を基に基質複合体のモデリング解析を行っ

た研究では,+1 サブサイトにおいて C2 ヒドロキシ基と R228 のグアニジル基が相互作用

することで β-1,3 結合に対する基質特異性を有することが示されている(Nakatani et al.

2011)。また近縁種では A. niger 由来の BGL でもセロオリゴ糖に対するサブサイト親和力

が測定されており,+1 サブサイトの親和力が大きく異なるが,AaBGL1 と同様に −1,+1,

+2 サブサイトを有することが示されている(Yazaki et al. 1996)。なお,A. niger の BGL に

関してはラミナリオリゴ糖に対する基質特異性は調べられていない。以上より,本研究では

初めてセロオリゴ糖に適合したサブサイト構造を有する BGL の存在を明らかにし,改めて

AaBGL1 がセロオリゴ糖に対する高い加水分解活性を有していることを確認した。また立

体構造の観点からも rAaBGL1 の活性中心に存在する芳香族アミノ酸に富んだクレフトが

本研究によってセロオリゴ糖と相互作用するためのものであることが示唆された。以上か

ら +1 サブサイトの多様な結合様式を受け入れる寛容さと +2 サブサイトの有無が

rAaBGL1 において基質特異性を決定していると結論付けた。

rAaBGL1 の糖転移産物の検出

GH3 はアノマー保持型の酵素が属しており,種々の研究により double displacement とい

う触媒機構で加水分解を行うことが示されている(Zechel and Withers 2000; Vuong and Wilson

2010)。double displacement 機構で加水分解が起こる際,求核アミノ酸とのグリコシル–酵素

複合体が形成された後に,塩基触媒により活性化された水分子かアルコール性ヒドロキシ

基に脱グリコシル化されることで加水分解か糖転移反応が起きる。そのため rAaBGL1 も

その機構に従って糖転移産物を生成することが考えられた。しかしこれまでの研究で

AaBGL1 は C2 や 不溶性セロオリゴ糖の加水分解を paper chromatography により経時的

に追跡したところ,糖転移産物が検出されず,速やかに Glc へと加水分解されることが示

されている(Sakamoto et al. 1985b)。これは AaBGL1 の糖転移活性の低さと合わせて検出

感度の低さも原因の一つであると考えたため,それぞれ 25 mM の C2,G2,L2 と rAaBGL1

との反応産物の経時変化を HPAEC-PAD を用いて分析することで糖転移産物の検出と同定

を試みた(Fig. 1-4)。その結果,G2 を加水分解すると,G2 と Glc 以外のピークは確認で

きなかったが(Fig. 1-4B),C2 と L2 を加水分解すると基質と Glc のピークの他に,保持

時間から推定される G2 のピークが認められた(Fig. 1-4A,C)。この結果から,rAaBGL1 は

糖転移産物として G2 を生成することが明らかとなった。この結果は,rAaBGL1 の Glc と

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の複合体の立体構造解析で,+1 サブサイトに結合した Glc の 6 位ヒドロキシ基が −1 サ

ブサイトの Glc に向いていたという解析結果と一致した(Suzuki et al. 2013; PDB,4IIG)。

他の GH3 の BGL においても A. niger と Phanerochaete crysosporium 由来の GH3 BGL

が,それぞれ C2,L2 を基質として加水分解した際に基質に対して Glc を β-1,6 結合で転

移させることが報告されている(Bohlin et al. 2013; Kawai et al. 2004; Seidle et al. 2004)。これ

らの報告から主に基質である二糖に対して β-1,6 結合を形成するように糖転移反応を触媒

する傾向にあることが予測できたが,本実験系ではそのような三糖の生成を確認できなか

った。基質濃度を高くすることで検出可能となるのか,rAaBGL1 において糖転移三糖とい

うものが元来生成しないのかは現時点では不明である。また G2 は Table 1-2 に示したカ

イネティックパラメータの結果より,C2 よりも kcat/Km が高い基質であるため,糖転移反

応により生成しても蓄積することなくすぐに加水分解されることが示唆された。

以上より本章では rAaBGL1 の基質特異性に関して酵素反応速度論的に解析したことで,

+1 サブサイトの寛容性と,+2 サブサイトと活性部位での芳香族アミノ酸が並ぶクレフト

の存在からセロオリゴ糖に対する反応性の高さを明らかにした。また初めて AaBGL1 の糖

転移産物を検出し,そこで同定した糖転移産物の一つである G2 は AaBGL1 の良好な基質

であったことから,以前より示されてきた rAaBGL1 の糖化力の高さを裏付ける結果を得

た。

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第二章 AaBGL1 の C2 に対する活性の向上を目指した部位特異的飽和変異導入とスク

リーニング

本研究では rAaBGL1 の立体構造情報を用いて C2 に対する活性を向上させることを計

画していたため,第一章において rAaBGL1 の基質特異性を始めとする生化学的な性質を

詳細に解析したことで,立体構造情報と合わせて部位特異的変異導入が可能になった。

GH3 に属する BGL のアミノ酸配列や構造と機能に関する研究では,まず Harvey らは

アミノ酸配列を元に 99 の GH3 の BGL を 6 つのサブファミリーに分類した(Harvey et

al. 2000)。これはサブファミリーが異なるとアミノ酸の相同性が低く,rAaBGL1 に対する

構造と活性の相関を得られないことを意味している。また GH3 の BGL の多くは (α/β)8

バレルドメインと (α/β)6 サンドウィッチドメインの間に活性中心が形成されているが,ド

メイン構造(2–4 ドメイン)やオリゴマー形成(1,2,4 量体)に関しても多様な報告がな

されており,活性中心のアミノ酸の配置や配向性,さらにはドメインの構成が異なることが

示されている(Varghese et al. 1999; Zmudka et al. 2012; Karkehabadi et al. 2014; McAndrew et al.

2013; Pozzo et al. 2010; Suzuki et al. 2013; Yoshida et al. 2010)。また GH3 の BGL において構

造活性相関を解明するような研究はほぼ進行しておらず,基質特異性を決定するために重

要なアミノ酸残基に関する情報は得られない。このような背景から rAaBGL1 において構

造比較による site-directed mutagenesis による変異導入は困難であると考え,site-saturation

mutagenesis によるスクリーニングを行うことを決定した。それを実行するに当たり,次に

示す 2 つの課題を解決するべきであると考えた。それは ① ライブラリを最小化するため

に選択するアミノ酸の数を減らすことと,② 目的にかなう変異酵素を選抜するための適当

な選択圧を考案することである。

第一章において rAaBGL1 はセロオリゴ糖に対する反応性は高いが(+2 サブサイトの存

在),C2 は β-結合の二糖の中では反応性が低いことが明らかとなった(+1 サブサイトの多

様性と選択性)。以上の結果より C2 に対する加水分解活性を向上させるためには +2 サブ

サイトを破壊し,C2 に対する Km を低下させる,もしくは +1 サブサイトでの基質特異性

を改変して C2 に対する反応性を上昇させることが考えられる。本章では rAaBGL1 とチ

オセロビオース(TCB)との酵素–基質複合体の立体構造を元に + 側サブサイトを形成する

と予測された 13 アミノ酸残基に対して site-saturation mutagenesis により変異を導入する

ことで C2 に対する反応性を向上させる変異酵素のスクリーニングを試みた。上述した ①

の課題を解決するために,rAaBGL1 の分子表面に露出している最小限のアミノ酸を選択し

た。さらに ② の課題を解決するため,変異体の評価は第一章のカイネティックパラメータ

を基に基質濃度を調整することで,目的に適う変異酵素が得られるスクリーニング系を確

立した。具体的には基質として C2 と pNP-Glc を用いた。特に目的とする C2 に対する

Page 35: Aspergillus aculeatus由来 β-glucosidase 1の生化学的解析 ...Holtzapple et al. 1990; Oh et al. 2000 )。これは BGL をセルラーゼ剤に添 加することで糖化効率が改善されることからも,生成物阻害が糖化効率を低下させる原因

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kcat/Km を上昇させるため,Km 値付近の濃度の C2 に対する活性が wild-type AaBGL1(WT)

よりも上昇した変異酵素は,Km が低下した,もしくは kcat が上昇した,あるいはその両方

の性質を有している可能性が高いと仮定した。また pNP-Glc は基質阻害による活性阻害の

影響を受けやすい基質であることから,+2 サブサイトに対する親和性が高い基質であると

判断したため,基質阻害を受ける基質濃度で活性が上昇した変異酵素は +2 サブサイトに

影響を与えている変異である可能性が高いと仮定した(Fig. 2-1)。

本章では以上に述べたような方法を用いて,C2 に対する活性が向上した変異酵素を取得

したことについて述べる。

Fig. 2-1 Hydrolytic rates of the reactions of rAaBGL1 for pNP-Glc and C2. rAaBGL1 (0.35

nmol for pNP-Glc and 1.06 nM for C2) was incubated with various concentrations of pNP-Glc

(circles) or C2 (triangles) in 20 mM sodium acetate buffer (pH 5.0) at 37°C for 10 min. For site-

saturation mutagenesis, substrate concentrations were decided as 1.5 mM pNP-Glc and 2.7 mM C2

based on these plots.

0

50

100

150

200

250

0 1 2 3 4 5 6

v 0/[E

] 0(s

–1)

[s] (mM)

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実験材料及び方法

A. 使用菌株およびプラスミド

Escherichia coli DH5αF’ [supE 44,ΔlacU169(Φ80lacZΔM15),hsdR 17,recA 1,

endA1,gyrA 96,thi-1,relA 1,deoR,F’]

Saccharomyces cerevisiae DC5 [MATα,leu2,his3,can]

pABG7

pMBGLc(Fig. 2-2; 小林 2007)

B. 使用試薬

制限酵素および修飾酵素は,ニッポンジーン社製,東洋紡社製,タカラバイオ社製,ある

いは NEW ENGLAND BIOLABS 社製のものを使用した。その他の試薬に関しては,特に示

さない限り和光純薬工業社製,および Nachalai tesque 社製の一級もしくは特級試薬を用い

た。

C. 培地組成及び使用試薬

TE buffer

LB plate

2 × TY 培地

第一章参照。

以下に示す酵母用培地及び試薬は Clontech 社の Yeast Protocols Handbook を参考にした。

YPD 培地

HIPOLYPEPTONE 2.0%

Yeast Extract 1.0%

D-(+)-Glc 2.0% [pH 6.0]

SD(−Leu)培地

Bacto-yeast nitrogen base w/o amino acids(Difco 社) 0.67%

D-(+)-Glc 2.0% [pH 6.0]

オートクレーブ後に以下に示す 10 × Drop-Out 溶液を 1/10 量添加した。

10 × Drop-Out

L-Arginine-HCl 0.02% L-Histidine 0.02% L-Isoleucine 0.03%

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L-Lysine 0.03% L-Methionine 0.02% L-Phenylalanine 0.05% L-Threonine 0.20% L-Tryptophan 0.02% L-Valine 0.15%

平板培地として用いるときは寒天を 1.5% となるように加えた。

D. 発現ベクターの構築

宿主として S. cerevisiae DC5 株を用いた際の発現プラスミドとして当研究室で以前構築

された pMBGLc(Takada et al. 1998; 小林 2007)を用いて,bgl1 の終止コドン直前に 6 つ

の Histidine(6 × His)をコードするように構築したオリゴ DNA 断片を挿入する方法を採

用した。Table 2-1 に示した s6His-BglII と as6His-BglII のオリゴ DNA(50 µM)をそれぞ

れ 25 µl ずつ混合し,TE buffer 50 µl を添加して総量を 100 µl とした。それを 100°C,5

min 煮沸して室温まで冷ますことでアニーリングさせ,pMBGLc の Bgl II 消化断片とライ

ゲーション(G. を参照)に用いた。6 × His をコードする塩基配列のセンス鎖の 3’ 末端側

と pMBGLc の Bgl II 消化断片の 5’ 末端側がライゲーションされると,ベクター側の Bgl

II サイトが消失し,bgl1 の終止コドン直後の Bgl II サイトが残り,His tag を残して断片の

切り出しができるように構築している。この発現プラスミドを pMBGLc-6His とした。なお

変異 bgl1 ライブラリを作製する際,pMBGLc から bgl1 断片を Xho I と Bgl II 処理で抜

き出したベクターに対して,bgl1 の終止コドンが抜けるように構築したプライマー(Table

2-1, Rcbgl1 BglII2)を用いて増幅した変異 bgl1 断片を挿入することで 6 × His をコードす

るコドンの直後に終止コドンが出現するように発現プラスミドの構築を行った。

E69,R98,R200,E204,Y248 の変異 bgl1 ライブラリは発現ベクターの bgl1 断片から

Xho I と Apa I で切り出した部位に挿入した。S436,D437,Y511 の変異 bgl1 ライブラリ

は発現ベクターの bgl1 断片から Apa I と Bgl II で切り出した部位に挿入した。W68,D99,

Q201,F305,W358 の変異 bgl1 ライブラリは発現ベクターから bgl1 断片全長を Xho I と

Bgl II で切り出した部位に挿入することで構築した。

E. PCR 法を用いた DNA 断片の増幅

E-1. プライマー

選択したアミノ酸に対して 20 種類全てのアミノ酸に置換されるように,選択したアミ

ノ酸をコードするコドンを NNS に置き換えたプライマーを作製した(Table 2-1)。

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Table 2-1 Primers used in site-saturation mutagenesis.

primer Sequence (5’ → 3’)

BGL1(XhoI)-F CGCGCGCCTCGAGGATGAACTGGCGTTCTCTC

BGL1SM_W68 GCACTTCTCCAGCTCSNNTCCAGTTCCGGTGGT

Fcbgl1 E69 GAACTGGATGGNNSCTGGAGAAGTG

Fcbgl1 R98 CCCTTGGGAATTNNSGATAGTGACTAC

Fcbgl1 D99 CTTGGGAATTCGTNNSAGTGACTACAATTC

BGL1SM_R200 GAGCAAGAGCATTTCSNNCAGGTCGCAGAGGCT

BGL1SM_Q201 CAAGAGCATTTCCGCSNNGTCGCAGAGGCTGCG

BGL1SM_E204 TTCCGCCAGGTCGCASNNGCTGCGGGCTACGGA

Fcbgl1 Y248 CATGTGTTCCNNSAACCAGATCAAC

BGL1SM_F305 CCTGGCGATATCACCSNNGATTCTGCCACTAGT

Fcbgl1 W358 CTTCAGCTCCNNSACTCGCGATG

Rcbgl1 S436 CAGCCACGGTCSNNGCAGCCATTG

Rcbgl1 D437 CACAGCCACGSNNAGAGCAGCC

Rcbgl1 Y511 CACGGAGATSNNGCCCTCTC

Rcbgl1BglII2 CAAAGATCTTTGCACCTTCGGGAGCG

Fcbgl1 1121ApaI CAGGAAGGGCCCTATGAGAA

BGL1(ApaI)-R TTCTCATAGGGCCCTTCCTG

s6His-BglII GATCTCACCACCACCACCACCACTGAC

as6His-BglII GATCGTCAGTGGTGGTGGTGGTGGTGA

E-2. メガプライマー法を用いた変異 bgl1 断片の増幅

PCR 反応の鋳型には pSL1190 に bgl1 の cDNA がサブクローニングされた pABG7 を

用いた。1st PCR でメガプライマーの作製を行い,2nd PCR で遺伝子全長の増幅を試みた。

PCR 法には Prime STAR HS DNA polymerase(タカラバイオ社製)および各添付 buffer を

用いた。反応装置は C1000™ Thermal cycler(BIO-RAD 社製)を用いた。反応溶液の調製及

び反応条件は以下に示した条件を基本とし,1st 及び 2nd PCR の鋳型には pSL1190 に

bgl1 の cDNA がクローニングされた pABG7 を用いた。その際に用いた primer 対の組合

せを Table 2-2 に示した。

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Table 2-2 Primer pair used to PCR reaction of site-saturation mutagenesis.

1st PCR

site F primer R primer

W68 BGL1(XhoI)-F BGL1SM_W68

E69 Fcbgl1 E69 BGL1(ApaI)-R

R98 Fcbgl1 R98 BGL1(ApaI)-R

D99 Fcbgl1 D99 Rcbgl1BglII2

R200 BGL1SM_R200 BGL1(ApaI)-R

Q201 BGL1SM_Q201 Rcbgl1BglII2

E204 BGL1SM_E204 BGL1(ApaI)-R

Y248 Fcbgl1 Y248 BGL1(ApaI)-R

F305 BGL1SM_F305 Rcbgl1BglII2

W358 Fcbgl1 W358 Rcbgl1BglII2

S436 Fcbgl1 1121ApaI Rcbgl1 S436

D437 Fcbgl1 1121ApaI Rcbgl1 D437

Y511 Fcbgl1 1121ApaI Rcbgl1 Y511

2nd PCR

site F primer R primer Insertion sites

W68 mega primer Rcbgl1BglII2 Xho I, Bgl II

E69 BGL1(XhoI)-F mega primer Xho I, Apa I

R98 BGL1(XhoI)-F mega primer Xho I, Apa I

D99 BGL1(XhoI)-F mega primer Xho I, Bgl II

R200 BGL1(XhoI)-F mega primer Xho I, Apa I

Q201 BGL1(XhoI)-F mega primer Xho I, Bgl II

E204 BGL1(XhoI)-F mega primer Xho I, Apa I

Y248 BGL1(XhoI)-F mega primer Xho I, Apa I

F305 BGL1(XhoI)-F mega primer Xho I, Bgl II

W358 BGL1(XhoI)-F mega primer Xho I, Bgl II

S436 mega primer Rcbgl1BglII2 Apa I, Bgl II

D437 mega primer Rcbgl1BglII2 Apa I, Bgl II

Y511 mega primer Rcbgl1BglII2 Apa I, Bgl II

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1st PCR reaction mixture

Template DNA(1 ng/µl) 1 µl

F primer(10 pmol/µl) 1 µl

R primer(10 pmol/µl) 1 µl

5 × Prime Star buffer 10 µl

PrimeSTARTM HS DNA Polymerase(2.5 U/µl) 0.5 µl

dNTPs(2.5 mM each) 4 µl

Distilled Water up to 50 µl

1st PCR condition

98ºC 10 sec

55ºC 5 sec 30 cycles

72ºC 1 min/kb

72ºC 10 min

精製したメガプライマーは 20 µl の TE buffer に溶解し,2nd PCR には 20 µl 全量を用い

た。

2nd PCR reaction mixture

Template DNA(1 ng/µl) 1 µl

F or R primer (10 pmol/µl) 1 µl

mega primer(10 pmol/µl) 20 µl

5 × Prime Star buffer 10 µl

PrimeSTARTM HS DNA Polymerase(2.5 U/µl) 0.5 µl

dNTPs(2.5 mM each) 4 µl

Distilled Water up to 50 µl

2nd PCR condition

98ºC 10 sec

55ºC 5 sec 30 cycles

72ºC 1 min/kb

72ºC 10 min

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F. アガロースゲルからの DNA 断片の回収及び精製

エッペンドルフチューブの底に熱した針で穴を開け,その穴を塞ぐようにチューブの底

に FILTER PAPER GA100(東洋濾紙社製)を詰めた。そこに TE buffer で膨潤させオートク

レーブした Sephadex G-10 を 400 µl 重層した。このチューブの下に別のチューブを重ね,

遠心分離して(4ºC,15,000 rpm,1 min)TE buffer を除去した。下に重ねたチューブを取り

替え,TAE アガロースゲル電気泳動により得られた目的の DNA 断片を含むアガロース切

片を重層し,遠心分離(4ºC,15,000 rpm,10 min)して DNA 抽出液を得た。これをフェノ

ール,フェノール/クロロホルム抽出および EtOH 沈殿により精製し,PCR 断片は 20 µl の

滅菌水に,発現プラスミドを制限酵素処理したものは 20 µl の TE buffer に溶解して DNA

断片溶液とした。

G. ライゲーション

インサートとベクター(pMBGLc-6His の Xho I/Bgl II,Xho I/Apa I,Apa I/Bgl II 消化断片)

をモル比で約 4:1 になるように混合し,5 × ligation buffer(50 mM MgCl2,5 mM ATP,100

mM dithiothreitol,250 mM Tris-HCl,pH 7.9)を反応系の 1/5 量加え,そこへ T4 DNA ligase

を 1 µl 加え,滅菌水で総量が 10 µl になるよう調整し,16ºC で 2 h インキュベートした。

pMBGLc-6His の Xho I/Bgl II,Xho I/Apa I,Apa I/Bgl II 消化断片がセルフライゲーション

しないことを確かめる際には,各制限酵素処理断片のみでライゲーションしたものを以下

の大腸菌の形質転換に用いた。

H. 大腸菌の形質転換

Cohen らの方法(Cohen et al. 1972)に従って行った。コンピテントセルを氷上で溶解し,

同じく氷上に静置した適量のライゲーション反応液を添加し,氷上で約 30 min 静置した。

その後,42C,45 sec のヒートショック後,氷上で約 2 min 静置した。1 ml の 2 × TY 培地

を加え,37C,45 min で振盪培養した後,100 µg/ml の Ampicillin を含む LB plate にスプ

レッドし,37C で一晩培養した。各変異部位において 300–600 の変異 bgl1 ライブラリを

作製するために LB plate にスプレッドする量及び用いる LB plate の枚数を適宜調整した。

I. 変異 bgl1 ライブラリの作製及びプラスミドの大量調製

H. により得られた大腸菌のコロニーを 1 ml の 2 × TY 培地に懸濁し,40 ml の 2 × TY 培

地に植菌した後,37C で一晩振盪培養を行った。

プラスミド DNA の調製は Alkaline Lysis 法(Sambrook et al. 2001)に従った。培養液を

遠心管に入れ,遠心分離(4ºC,6,000 rpm,10 min)により菌体を回収した。培養上清を取

り除いた後,Solution I を 1(or 3)ml 添加しボルテックスで菌体を懸濁した。そこに Solution

II を 2(or 6)ml 添加し穏やかに撹拌し,氷上に 5 min 静置後,Solution III を 1.5(or 4.5)

ml 添加し撹拌後,氷上で 10 min 静置した。上清を遠心分離(4ºC,12,000 rpm,10 min)で

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回収した後,別の遠心管に移した。そこに 2-プロパノールを 4 ml(or 12 ml)添加し氷上で

10 min 静置した。その後,遠心分離(4ºC,12,000 rpm,10 min)で上清を取り除き,沈殿を

600 µl の滅菌 milliQ に懸濁し,1/10 量(60 µl)の 1 M MgCl2 を添加して氷上に 10 min 静

置した。その後遠心分離(4°C,12,000 rpm,10 min)により上清をエッペンチューブに回収

し,等量のフェノール/クロロホルムを添加し,ボルテックスで撹拌した。その後,遠心分

離(4ºC,15,000 rpm,5 min)し,上清を別のエッペンチューブに移し,700 µl の 2-プロパ

ノールを添加し,氷上 5 min で静置した。上清を取り除き,70% EtOH でリンスし,200 µl

の TE buffer に懸濁した。そこへ 2 µl の RNase solution(10 mg/ml)を加え 37°C,30 min

処理を行った後,PEG Solution(13% PEG 6000,1.6 M NaCl)を 200 µl 加え,氷上で 20 min

静置し,PEG 沈殿を行った。その後,遠心分離(4ºC,15,000 rpm,10 min)し,上清を取り

除いた後,70% EtOH で洗浄し,適量の TE buffer に融解しこれを変異 bgl1 ライブラリと

した。

J. S. cerevisiae DC5 株の形質転換及び形質転換体の単離

S. cerevisiae DC5 株の形質転換にはエレクトロポレーション法を採用した。2 ml YPD 液

体培地に 2–3 コロニーを白金耳掻き取って植菌し,30°C で 12 h 振盪培養した。その培養

液 200 μl を 200 ml YPD 液体培地に加え,30°C で一晩振盪培養した。OD600 = 3.5–4.5 にな

るまで培養し,得られた培養液を遠心管に移し,4°C,1,500 × g,5 min で遠心分離して集菌

した。氷冷した滅菌 milliQ 200 ml で洗い,再び 4°C,1,500 × g,5 min で遠心分離して集

菌し,続けて 100 ml の氷冷した滅菌 milliQ で同様に洗浄した。洗浄後の菌体を 8 ml の

氷冷 1 M ソルビトール溶液で洗浄し,4°C,1,500 × g,5 min で遠心分離して集菌した。そ

して,菌体を 1 M ソルビトール溶液 400 μl に懸濁し,これをコンピテントセルとした。

プラスミド(1 μg/µl)10 μl とコンピテントセル 80 μl を氷冷した GenePulser® Cuvett,

0.2 cm(BIO-RAD 社製)中で混和し,Gene Pulser I(BIO-RAD 社製),キャパシタンス 25

μF,パルスコントローラー 200 Ω,電圧 2.0 V の条件下にてエレクトロポレーションを行

った。その後氷冷した 1 M ソルビトール溶液を 1 ml 加えて懸濁した後に 30°C で 1 h 静

置した。静置後エッペンチューブに移し,遠心分離(4°C,1,500 × g,5 min)により集菌し,

デカンテーションにより上清を速やかに破棄した後,菌体全量を 2 枚の SD plate にスプ

レッドし,コロニーが出現するまで 30°C で一週間程度静置培養した。

生育した形質転換体は X-Glc を塗布した SD plate 1 枚当たり 96 株,各変異部位あたり

300–600 コロニーを単離し,30°C で一週間程度静置培養した。

K. Nichel affinity column chromatography

AaBGL1(WT)を生産する S. cerevisiae を YPD 液体培地 200 ml(/500 ml 三角フラス

コ)で 30°C,160 rpm,で 3 日間振盪培養した。その後 4°C,10,800 rpm,10 min 遠心分

離して上清を回収し,等量の氷冷した 99.5% EtOH を添加して 4°C で一晩静置した。そこ

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で形成された沈殿を 4°C,10,800 rpm,50 min 遠心分離することで回収し,乾燥させた。乾

燥した沈殿を 20 mM Tris-HCl buffer(pH 7.0)3 ml に溶解し,HiTrap™ Chelating HP(5 ml;

Amersham Biosciences)を用いた Nichel affinity column chromatography に用いた。

HiTrap™ Chelating HP カラムは 15 ml(3 Volume)の初期 buffer(20 mM Tris-HCl,0.5 M

NaCl(pH 7.0)で平衡化し,酵素サンプル 3 ml をシリンジ(TERUMO,SS-10SZ)を用い

てアプライした。続いて 15 ml(3 ml/fraction)の初期 buffer で洗浄を行った。吸着サンプ

ルを 15 ml の溶出 buffer(20 mM Tris-HCl,50 mM Imidazole(pH 7.0))を用いて 1 ml/fraction

で分画した。溶出した各 fraction を活性測定,SDS-PAGE に供した。

L. 形質転換体の培養

L-1. 1st スクリーニング

アルミホイルに包んで滅菌した 96 穴の Deep Well Plate(IWAKI 社製,code. No. 2852-

022)の 1 ウェルあたり 840 µl の YPD 液体培地を入れ,そこに爪楊枝で 1 コロニーずつ

掻きとった形質転換体を植菌し,同じアルミホイルに包んで 30°C で 3 日間静置培養した。

培養終了後遠心分離し(4°C,3,200 rpm,5 min),培養上清を活性測定に供した。そこで得

られた候補株は新しい SD plate(X-Glc 塗布)に 1 枚当たり 6 株を放射状にストリークし

て単離した。

L-2. 2nd スクリーニング

L-1. で取得した候補株から 2–3 コロニーを,中試に作製した 1.8 ml YPD 液体培地に白

金耳で植菌して 30°C,160 rpm で 3 日間振盪培養を行った。培養終了後,培養液をエッペ

ンドルフチューブに回収し,滅菌水で 10 倍希釈した溶液の 600 nm の吸収を吸光度計で

測定することで形質転換体の生育量とした(OD600)。その後遠心分離(4°C,15,000 rpm,10

min)によって上清を回収し,その後の活性測定に供した。

M. 活性測定及び候補株の選抜

BGL1 の活性測定は基質に 2.7 mM cellobiose(in 100 mM sodium acetate buffer(pH 5.0))

を用い,酵素反応により生じた Glc をグルコース CII-テストワコー(GOD)(WAKO 社製)

を用いて定量することで測定した。1 unit は 1 min に 2 µmol の Glc を遊離させる酵素量

と定義した。

M-1. 1st スクリーニング

培養上清 10 µl を 96 穴マイクロタイタープレート(IWAKI 社製)に分注し,そこに 100

mM sodium acetate buffer(pH 5.0)を 40 µl 添加することで 5 倍希釈した。酵素液と基質を

37°C で 5 min プレインキュベートし,その後 50 µl の 5.4 mM C2 溶液(final 2.7 mM in 100

mM sodium acetate buffer(pH 5.0)を添加して 20 min 反応させた。反応停止は 1 N HCl を

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25 µl 添加することで行い,反応停止後 5 min 静置し,中和液(0.8 M Tris,0.4 N NaOH)を

25 µl 添加し,総量を 100 µl とした。そこに 100 µl の GOD を混合し,MICROPLATE

READER EZS-ABS(IWAKI 社製)で 37°C,10 min 振盪,インキュベートした後,主波長

500 nm,副波長 600 nm の吸光度を測定した。予め作成した Glc の検量線を用いることで

Glc 量を定量した。

M-2. 2nd スクリーニング

培養上清を 5 倍希釈したもの 100 µl をワッセルマン試験管に分注し,基質と共に 37°C

で 5 min プレインキュベートした。そこに基質 100 µl を添加し,20 min 反応させた。反

応停止は 1 N HCl を 50 µl 添加することで行い,反応停止後 5 min 静置し,中和液(0.8 M

Tris,0.4 N NaOH)を 50 µl 添加し,総量を 300 µl とした。そこから 100 µl をマイクロタ

イタープレートに分注し,100 µl の GOD を添加して反応させ,以後は M-1. と同様の操

作を行った。測定した C2 に対する単位培養液あたりの活性を OD600 で標準化することで

生育量当たりの活性を算出し,変異体の評価を行った。再現性を得るために候補株の培養か

ら活性測定までの流れを 3 度行った。

M-3. 候補株の選抜

1st 及び 2nd スクリーニングにおいてそれぞれ単位培養液当たりの活性,生育量当たり

の活性が WT よりも高いものを候補株として以後の実験操作に用いた。

N. 候補株からのプラスミドの抽出

酵母プラスミドの抽出操作は clontech 社の Yeast Protocols Handbook を参考にし,改変

して行った。SD(−Leu)培地 2 ml に候補株を 2–3 コロニー白金耳で掻きとって植菌し,

30°C,160 rpm,2 日間振盪培養した。エッペンドルフチューブに移し,遠心分離(4°C,15,000

rpm, 10 min)を行うことで集菌した。20 mM sodium phosphate buffer(pH 7.4)1 ml で洗浄

し,50 µl の同 buffer に再度懸濁した。20 mM sodium phosphate buffer(pH 7.4)で 1 U/µl と

なるように調製した Zymolyase 100-T(生化学工業)を 10 µl 添加し(10 U),37°C,200 rpm,

1 h 振盪させながらインキュベートして反応させた。滅菌水で 200 µl に調製し,フェノー

ル/クロロホルム抽出を 4–6 回ほど行った。2.5 倍量(500 µl)の氷冷したエタノールを加

え,–80°C で 1 h 静置した。遠心分離(4°C,15,000 rpm,10 min)により上清を破棄し,沈

殿を 1 ml の 70% エタノールで洗浄し,遠心分離(4°C,15,000 rpm,5 min)で沈殿を回収

した。沈殿を風乾させ,20 µl の滅菌水に溶解し,以後の実験に用いた。

O. 変異アミノ酸の同定

候補株のプラスミドを I. の方法に従って大量調製し,オペロンバイオテクノロジー社の

DNA シークエンスサービスを利用して候補遺伝子の選択されたコドンの同定を行った。

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結果と考察

WT における 6 × Histidine tag 融合タンパク質の発現と簡便な精製方法の確立

スクリーニングを始めるにあたり,候補株が大量に取得できた場合に以後の解析に用い

る変異酵素を絞り切れないことが予想された。その理由としては,S. cerevisiae を宿主と

した場合、培養ごとに培養上清中に分泌される目的タンパク質量にばらつきが見られるた

め,候補株を取得してもそれが分泌量の多さか比活性の高さのどちらに起因するのかが判

断できないためである。そのためスクリーニングを始める前に培養上清中の酵素活性を標

準化するための手法が必要となっていた。当研究室では ELIZA 法を用いて S. cerevisiae

において異種発現させた AaBGL1 の培養上清中のタンパク質量の定量も試みられてきた

が,抗原抗体反応がうまく起こらず,定量ができなかった(unpublished data)。A. oryzae

を宿主として発現させた rAaBGL1 をポジティブコントロールとして用いることが可能で

あったことから,S. cerevisiae を始めとする酵母のタンパク質分泌経路に特有の

hyperglycosylation が抗原抗体反応を妨げていることが推測された(Takada et al. 1998)。そ

のため簡便に目的タンパク質の純度を上げるための方法としてタグを付加させた融合タン

パク質の作製を行うことにした。AaBGL1 のホモログである Magnaporthe oryzae 由来の

GH3 の BGL においてタグによる精製例が報告されている Histidine tag を用いることに

決定した(Takahashi et al. 2011)。AaBGL1 は分泌タンパク質であり,前駆体タンパク質の

N 末端にシグナルペプチドを有している。今回は AaCBH I のシグナルペプチドに代替さ

れているが、N 末端側にタグを挿入することでシグナルペプチドが機能しなくなることを

危惧して本研究では C 末端側に付加した(Fig. 2-2A)。完成した発現ベクターはシークエ

ンス解析により,終止コドンを含まない bgl1 断片を 5’ 側は Xho I,3’ 側は Bgl II で挿

入できるようなコンストラクトで構築できていることを確認した。WT bgl1 が挿入された

pMBGLc-6His を用いて S. cervisiae DC 5 株を形質転換し,AaBGL1-6His の YPD 液体培

地と SD 液体培地における活性の有無と生産性を確認した(Fig. 2-2B)。その結果 YPD,

SD 両培地において培養上清中に同程度の活性があることを確認したため,スクリーニン

グの基準として用いることが可能であることが示された。また得られた培養上清を用いて

Nichel affinity column chromatography により精製を試みた。SDS-PAGE によりバンドパター

ンを crude の培養上清と比較した結果,1 step でメジャーな夾雑タンパク質を除くことに

成功した(Fig. 2-2C)。分子質量約 200 kDa に精製したバンドが濃縮されているが,これ

は S. cerevisiae で AaBGL1 を生産させた時の hyperglycosylation を受けた AaBGL1 の分

子質量と一致するため,目的の位置にバンドが出ていると判断した(Takada et al. 1998)。

また S. cerevisiae は菌体内外共に BGL 活性を示さず,本実験で用いた 1 step の Nichel

affinity column chromatography の精製純度でもスクリーニングで得られた変異酵素の比活性

を簡便に評価するには十分であると判断した。よって以後はこのコンストラクトを用いて

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スクリーニングを行うことを決定した。

Fig. 2-2 Expression of AaBGL1-6His gene in S.

cerevisiae DC5. (A) pMBGLc-6His expression plasmid for

S. cerevisiae, were constructed from pMBGLc (Takada et

al. 1998) inserted the sequence encoding 6 × histidine. (B)

A transformant produced rAaBGL1-6His was cultivated in

YPD (circle) and SD (triangle) media for 3 days, and BGL

activity in culture supernatant was measured by pNP

method. (C) Purification of rAaBGL1-6His produced by S.

cerevisiae using nichel affinity column chromatography.

Lane 1, molecular weight marker; Lane 2, the 3-day’s

culture supernatant; Lane 3, the first fraction of washing

step; Lane 4, the last fraction of washing step; Lane 5,

rAaBGL1-6His eluted by 50 mM imidazole.

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変異を導入するアミノ酸残基の選択とスクリーニング

PyMOL を用いて rAaBGL1-TCB 複合体(PDB:4IIH)の分子表面のモデリングを行い,β-

グルコオリゴ糖基質を認識するのに関与する,あるいは変異を導入することで認識する可

能性があると考えられたアミノ酸残基を探索したところ,AaBGL1 の分子表面に露出した

13 アミノ酸残基が候補に挙げられた(Fig. 2-3)。この際,その 13 アミノ酸に近接するが表

面に露出していないアミノ酸は,変異を導入することで間接的に C2 に対する活性が向上

する可能性が考えられたが,ライブラリの数を最小化するという点と,仮に取得できた際に

原因を考察できない可能性が高いという理由で除外した。全 20 種類のアミノ酸に置換さ

れるよう,ターゲットとなるコドンを NNS に置換したプライマー(Table 2-1)を用いて

PCR 法により変異 bgl1 全長を増幅し,pMBGLc-6His にサブクローニングした。得られた

変異 bgl1 ライブラリを用いて大腸菌を形質転換したところ,スプレッドする量を調整する

ことで各変異ライブラリにおいて目的とする 300–600 コロニー程度を 2–3 プレートほど

に分けて生育させることができた。ライブラリのサイズに関しては,NNN コドンを用いた

site-saturation mutagenesis を行った際,88 の形質転換体を解析すれば全てのアミノ酸置換を

最低限網羅できることが実験的にも示されている(Yep et al. 2008)。そのため本実験では 20

アミノ酸を網羅するための良好な変異 bgl1 ライブラリが作製できたと考えられる。酵母の

形質転換においても同様に各変異ライブラリにおいておよそ 300–600 株の形質転換体を単

離し,L–M. の方法に従って合計約 7000 株をスクリーニングした結果,1st スクリーニン

グを経て 325 の候補変異酵素を得た(Table 2-3)。このスクリーニングでは 96 穴プレート

で培養したため,S. cerevisiae の生育度やそれに応じた酵素の分泌量を標準化できず正確性

に欠けていた。続く 2nd スクリーニングでは酵素生産のための培養を試験管に変更し,培

養 3 日目の培養上清中の BGL 活性を,OD600 の吸光度で測定した S. cerevisiae の生育度

で標準化することで,より精度が高い解析を行った。そこでは候補変異酵素は 3 箇所のア

ミノ酸置換に収束し,18 の変異酵素が得られた (Table 2-3)。本実験で行ったスクリーニン

グに関しては取得した候補酵素が少数であったため,Nichel affinity column chromatography

により粗精製した変異酵素でさらに選抜を行うよりも,置換されたアミノ酸を同定するこ

とを優先した。候補プラスミドを有する S. cerevisiae からプラスミドを抽出し、シークエン

ス解析により置換後のアミノ酸を同定した。その結果,3 種類の変異 bgl1 ライブラリから

計 9 種類の変異酵素を取得した(E69G,E69M,E69R,E69S,E69V,Q201E,S436R,S436T,

S436V)。E69,S436 における変異は複数種類得られたが,Q201 に関しては 4 つの候補酵

素全てがグルタミン酸に置換されていた(Table 2-3)。グルタミン酸と性質が類似したアス

パラギン酸や,WT のグルタミンに側鎖構造が類似したアスパラギンなどへの変異酵素は

取得できず,今回のスクリーニングの評価系では淘汰される変異であったことが示唆され

た。それら 3 種類のアミノ酸の保存性を調べるために AaBGL1 とのアミノ酸配列相同性

が 40% を超え,なおかつ生化学的な解析が行われている GH3 の BGL を中心に選択して

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マルチプルアライメントを作製した(Fig. 2-4)。その結果,今回取得できた 3 種類全てのア

ミノ酸において Aspergillus 属では比較的保存されているが,他属由来の BGL では保存性

が低い傾向にあった。Q201 に相当するアミノ酸がグルタミン酸であるものには T. reesei

Cel3A があるが,他の AaBGL1 ホモログでその位置がグルタミン酸に相当するものは確認

できず,それぞれの生化学的な解析を元に置換後の影響を予測することはできなかった。な

お T. reesei Cel3A はセロオリゴ糖(DP = 2–4)に対する親和性が AaBGL1 よりも 1 order

も低いことが報告されているが,構造と活性の相関関係については論じられていないため,

Q201E の変異がセロオリゴ糖に対する親和性の増加に寄与するかどうか検証する余地があ

ると考えられた(Karkehabadi et al. 2014)。

Table 2-3 Summary of the site-saturation mutagenesis.

The number of obtained

candidate mutants

Position Total number of

screened mutants 1st screening 2nd screening Substituted amino acids

W68 576 2 0 -

E69 450 23 9 G (1/9), V (1/9),

S (2/9), M (1/9), R (4/9)

R98 576 3 0 -

D99 576 49 0 -

R200 576 17 0 -

Q201 576 18 4 E (4/4)

E204 300 3 0 -

Y248 768 8 0 -

F305 576 6 0 -

W358 576 141 0 -

S436 384 52 5 V (1/5), T (3/5), R (1/5)

D437 528 2 0 -

Y511 576 1 0 -

Fractional expressions in parentheses are frequency of appearance of its amino acid substitution in obtained

mutants.

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Fig. 2-3 The active site structure of AaBGL1-TCB complex. Image was made with PyMOL using

coordinate form Protein Data Bank (PDB) 4IIH. For site-saturation mutagenesis, 13 amino acids that

were supposed to compose the plus side of subsite were selected. Selected amino acids were shown as

a stick model. Position of MPD (pink stick) binding is putative +4 subsite.

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Fig. 2-4 Multiple amino acid sequence alignment of GH3 β-glucosidases. Aacu: A. aculeatus

AaBGL1, Anig: A. niger β-glucosidase (CAB75696.1; 82% identity), Akaw: A. kawachii IFO4308 β-

glucosidase (P87076.2; 82% identity (Iwashita et al. 1999)), Aory: A. oryzae RIB40

(XP_001816831.1; 80% identity), Afum: A. fumigatus Af293 (XP_750327; 78% identity), Mor2:

Magnaporthe oryzae 70-15 (XP_360965; MoCel3B; 42% identity (Takahashi et al. 2011)), Mor1:

Magnaporthe oryzae 70-15 (XP_364573; MoCel3A; 44% identity (Takahashi et al. 2011)), Tree:

Trichoderma reesei QM6a (XP_006964076; 43% identity), Pcry: Phanerochaete crysosporium K-3

(BAB85988; 48% identity (Igarashi et al. 2003)), Uesc: Ustilago esculenta NBRC 9887 (BAK61808;

UeBgl3A; 45% identity (Nakajima et al. 2012)). The amino acid sequences were aligned by ClustalW

program. Arrowheads indicate the selected amino acids for the site-saturation mutagenesis. Amino

acid substitutions indicated by open arrowheads are the candidates that enhance cellobiose hydrolytic

activity. Open and closed circles indicate the amino acid constituting −1 and +1 subsites, respectively

as refered in Suzuki et al. 2013.

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第三章 変異酵素の機能解析

第二章において C2 に対する活性が向上した変異酵素のスクリーニングを試みた結果,

全部で 9 種類の候補となる変異酵素を得た(E69G,E69M,E69R,E69S,E69V,Q201E,

S436R,S436T,S436V)。本章ではそれらを A. oryzae を宿主として発現させ、その精製酵

素を用いて機能解析を行ったことについて述べる。スクリーニングを実行するにあたり,第

一章で測定したカイネティックパラメータの結果を元に,+1 サブサイトにおける各種 β-グ

ルコ二糖に対する基質特異性と,セロオリゴ糖に対する +2 サブサイトを主な解析対象と

したため,第三章における候補酵素の解析は定常状態における β-結合のグルコオリゴ糖に

対するカイネティックパラメータの変化と,糖転移反応が関与した反応速度の変化が現れ

る高い基質濃度での反応速度に焦点を当てて解析を行った。またいくつかの変異に関して

二重,三重に変異を導入した時の影響を解析し,C2 に対する活性の向上に対して相加効果

が確認できた 3 種類の変異酵素(E69S,Q201E,S436V)について詳細な解析を行った。

GH3 の BGL における一次配列において本研究で解析した 3 種類のアミノ酸残基に相当

するアミノ酸残基を対象とした解析例は報告されておらず,GH3 の BGL における触媒反

応に関与するアミノ酸残基について新たな知見を得ることに成功した。

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実験材料及び方法

A. 使用菌株およびプラスミド

第一章参照。

B. 使用試薬

第一章参照。

C. 使用培地および使用試薬

第一章参照。

D. 発現プラスミドの構築

メガプライマー法を用いて変異を導入した bgl1 断片を精製し,Not I と Sph I によって

制限酵素処理した後,同じ制限酵素で処理した Aspergillus 用高発現ベクター pNAN8142

(Minetoki et al. 2003)にサブクローニングすることで発現プラスミドの構築を行った。詳

細を以下に示した。

D-1. PCR 法を用いた DNA 断片の増幅

Table 3-1 に示した各種プライマーを用いて,メガプライマー法により site-directed

mutagenesis を行った。E69 と Q201E の変異導入は,1st PCR で BGL-F プライマーと各種

変異導入用プライマーを用いた PCR を行ってメガプライマーを作製し,2nd PCR で変異

bgl1 全長を取得した。S436 の変異導入は 1st PCR で BGL-R-2 プライマーと各種変異導入

用プライマーを用いた PCR を行ってメガプライマーを作製し,2nd PCR で変異 bgl1 全長

を取得した。PCR 反応の鋳型には pUC118 に bgl1 の genome DNA がサブクローニング

された pUC118-bgl1 を用いた。PCR 反応には PrimeSTAR HS DNA polymerase(タカラバイ

オ社製)および各添付 buffer を用いた。反応装置は C1000™ Thermal cycler(BIO-RAD 社

製)を用いた。反応溶液の調製及び反応条件は以下に示した条件を基本とした。

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Table 3-1 Primers used in this study.

primers Sequence (5' → 3')

BGL-F AACTGCAGGCGGCCGCATCATGAAGCTCAGTTGGCTTG

Rbgl1 E69G CACTTCTCCAGACCCCATCTAG

Rbgl1 E69M CACTTCTCCAGCATCCATCTAG

Rbgl1 E69R CACTTCTCCAGACGCCATCTAG

Rbgl1 E69S CACTTCTCCAGCGACCATCTAG

Rbgl1 E69V CACTTCTCCAGAACCCATCTAG

Rbgl1 Q201E CTCTGCGACTTCTCTGAAATGCTC

Fbgl1 S436R AATGGCTGCCGAGACCGTGG

Fbgl1 S436T AATGGCTGCACAGACCGTGG

Fbgl1 S436V AATGGCTGCGTTGACCGTGG

BGL-R-2 AAGCATGCTCATTGCACCTTCGGGAGC

1st PCR reaction mixture

Template DNA(1 ng/µl) 1 µl

F primer(10 pmol/µl) 1 µl

R primer(10 pmol/µl) 1 µl

5 × Prime Star buffer 10 µl

PrimeSTARTM HS DNA Polymerase(2.5 U/µl) 0.5 µl

dNTPs(2.5 mM each) 4 µl

Distilled Water up to 50 µl

1st PCR condition

98ºC 10 sec

55ºC 5 sec 30 cycles

72ºC 1 min/kb

72ºC 10 min.

精製したメガプライマーは 20 µl の TE buffer に溶解し,2nd PCR には 20 µl 全量を用い

た。

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2nd PCR reaction mixture

Template DNA(1 ng/µl) 1 µl

F or R primer(10 pmol/µl) 1 µl

mega primer(10 pmol/µl) 20 µl

5 × Prime Star buffer 10 µl

PrimeSTARTM HS DNA Polymerase(2.5 U/µl) 0.5 µl

dNTPs(2.5 mM each) 4 µl

Distilled Water up to 50 µl

2nd PCR condition

98ºC 10 sec

55ºC 5 sec 30 cycles

72ºC 1 min/kb

72ºC 10 min

D-2. アガロースゲルからの DNA 断片の回収及び精製

D-3. ライゲーション

D-4. 大腸菌の形質転換

D-5. プラスミドの大量調製

第二章参照。

E. A. oryzae の形質転換

第一章参照。

F. 酵素精製

第一章参照。

G. pNP-Glc を用いた活性測定法

第一章参照。

H. カイネティクス解析

第一章参照。

I. HPAEC-PAD

第一章参照。

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結果

取得した変異酵素の pNP-Glc と C2 に対する速度論的解析

まず始めに第二章で取得した 9 種類の変異酵素を A.oryzae を宿主とした発現系を用い

て生産させ、精製を行った(第一章参照)。SDS-PAGE により単一なバンドとなるまで精製

できたことを確認したため(data not shown),次にスクリーニングの評価に用いた pNP-Glc

と C2 に対する速度論的な解析を行い,スクリーニング方法の妥当性と活性が向上したか

どうかの確認を行った(Table 3-2)。定常状態におけるカイネティックパラメータを測定し

た結果,C2 に対して E69M,E69R,E69V,Q201E の 4 種類の変異酵素は Km が低下して

いた。Q201E に関しては Km の低下に加えて kcat が上昇していたが,E69R では kcat が低

下していた。一方で S436 の変異においては WT と比較して C2,pNP-Glc に対するカイ

ネティックパラメータにポジティブな影響は見られなかった。このようにカイネティック

パラメータにポジティブな影響が見られなかった変異酵素では、高い基質濃度における反

応性に影響を与えている可能性が考えられたので、続いて 100 mM まで C2 の濃度を変化

させた時の Glc 生成速度を測定した(Fig. 3-1)。その結果,9 種類の変異酵素のうち E69S,

S436T,S436V の 3 種類の変異酵素は WT よりも Glc 生成速度が速いことが示された。

この現象は pNP-Glc を基質としたときも同様であった(Fig. 3-2)。以上の結果から E69M,

E69S,E69V,Q201E,S436T,S436V の 6 種類の変異酵素において C2 に対する反応性が

上昇したと結論付けた。ここで E69M と E69V,S436T と S436V がそれぞれ類似した性

質を有していたため,以後の解析対象を E69M,E69S,Q201E,S436V の 4 種類とした(Table

3-2, Fig. 3-1)。

次に E69M 系統と E69S 系統に分類して二重,三重変異酵素を作製し,C2 に対する反

応性を調べた。その結果,E69M と Q201E を含む変異酵素においてそのカイネティックパ

ラメータには Q201E の変異の影響のみが反映されていたが,E69S 系統の変異酵素ではそ

れぞれの影響が独立して現れているという結果を得た(Table 3-3, Fig, 3-3)。そのため E69S,

Q201E,S436V の変異酵素はそれぞれ独立した作用機序で C2 に対する反応性を向上させ

たと判断し、詳細に解析を行うことに決定した。

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Table 3-2 Kinetic parameters of WT and mutants of AaBGL1 toward C2 and pNP-Glc.

C2a pNP-Glcb

Km (mM) kcat (s−1) kcat/Km

(s−1・mM−1) Km (mM) kcat (s−1)

kcat/Km

(s−1・mM−1)

WT 2.06 ± 0.06 354 ± 10 172 ± 3 0.28 ± 0.01 362 ± 18 1270 ± 30

E69G 2.72 ± 0.02 260 ± 3 96 ± 1 0.31 ± 0.01 390 ± 11 1240 ± 40

E69V 1.67 ± 0.08 349 ± 20 209 ± 2 0.22 ± 0.01 320 ± 12 1440 ± 50

E69R 1.51 ± 0.04 262 ± 1 174 ± 5 0.27 ± 0.00 331 ± 4 1250 ± 20

E69S 2.45 ± 0.15 350 ± 12 143 ± 4 0.33 ± 0.02 456 ± 19 1350 ± 100

E69M 1.49 ± 0.07 353 ± 8 237 ± 15 0.23 ± 0.00 326 ± 14 1430 ± 40

Q201E 1.10 ± 0.08 519 ± 36 470 ± 4 0.22 ± 0.01 413 ± 8 1890 ± 70

S436R 2.05 ± 0.07 228 ± 8 111 ± 3 0.27 ± 0.02 330 ± 15 1220 ± 20

S436T 2.20 ± 0.11 385 ± 7 175 ± 5 0.28 ± 0.01 371 ± 12 1330 ± 50

S436V 2.07 ± 0.09 357 ± 17 173 ± 3 0.24 ± 0.01 362 ± 12 1490 ± 20 a Released Glc was quantified by glucose oxidase method. b Released pNP was quantified by measuring absorbance at 405 nm.

Each value is the mean of triplicate experiments.

Table 3-3 Kinetic parameters of double and triple mutants of AaBGL1 toward C2.

Km (mM) kcat (s−1) kcat/Km

(s−1・mM−1)

WT 2.06 ± 0.06 354 ± 10 172 ± 3

E69M/Q201E 0.93 ± 0.03 469 ± 16 505 ± 6

E69M/S436V 1.71 ± 0.10 374 ± 10 219 ± 8

E69M/Q201E/S436V 1.01 ± 0.03 524 ± 11 501 ± 4

Q201E/S436V 1.17 ± 0.02 485 ± 9 413 ± 11

E69S/Q201E 1.47 ± 0.04 481 ±5 328 ± 5

E69S/S436V 2.32 ± 0.09 310 ± 8 134 ± 2

E69S/Q201E/S436V 1.62 ± 0.10 543 ± 10 335 ± 14

Each value is the mean of triplicate experiments.

Page 59: Aspergillus aculeatus由来 β-glucosidase 1の生化学的解析 ...Holtzapple et al. 1990; Oh et al. 2000 )。これは BGL をセルラーゼ剤に添 加することで糖化効率が改善されることからも,生成物阻害が糖化効率を低下させる原因

54

Fig. 3-1 Effect of C2 concentration on the β-glucosidase activity. The velocity of the Glc

production of WT (blue), E69S (red), S436T (green), and S436V (purple) mutant AaBGL1s, was

measured for the amount of released Glc by glucose oxidase method. Data are expressed at the mean

± the standard deviation of three independent experiments.

0

100

200

300

400

500

0 20 40 60 80 100 120

Glc

pro

duct

ion

(s−1

)

C2 (mM)

WTE69SS436TS436V

Page 60: Aspergillus aculeatus由来 β-glucosidase 1の生化学的解析 ...Holtzapple et al. 1990; Oh et al. 2000 )。これは BGL をセルラーゼ剤に添 加することで糖化効率が改善されることからも,生成物阻害が糖化効率を低下させる原因

55

Fig. 3-2 Effect of pNP-Glc concentration on the β-glucosidase activity. The velocity of the pNP

release of WT (blue), E69S (red), S436T (green), and S436V (purple) mutant AaBGL1s, was

quantified by measuring absorbance at 405 nm. Data are expressed by single experiment.

0

50

100

150

200

250

300

0 1 2 3 4 5 6

pNP

rele

ase

(s–1

)

pNP-Glc (mM)

WT

E69SS436TS436V

Page 61: Aspergillus aculeatus由来 β-glucosidase 1の生化学的解析 ...Holtzapple et al. 1990; Oh et al. 2000 )。これは BGL をセルラーゼ剤に添 加することで糖化効率が改善されることからも,生成物阻害が糖化効率を低下させる原因

56

Fig. 3-3 Effect of C2 concentration on the β-glucosidase activity. The velocity of the Glc

production of WT (blue), E69M lineage (triangles), E69S lineage (squares), Q201E (purple),

S436V (black), and Q201E/S436V (orange) mutant AaBGL1s, was measured for the amount of

released Glc by glucose oxidase method. Data are expressed by single experiment.

Page 62: Aspergillus aculeatus由来 β-glucosidase 1の生化学的解析 ...Holtzapple et al. 1990; Oh et al. 2000 )。これは BGL をセルラーゼ剤に添 加することで糖化効率が改善されることからも,生成物阻害が糖化効率を低下させる原因

57

Q201E が C2 加水分解に与える影響の解析

Q201E の変異がセロオリゴ糖に対するサブサイト構造や,β-結合二糖の加水分解に与え

る影響を解析するために,C2,C3,C4,G2,L2 に対するカイネティックパラメータを測

定した(Table 3-4)。その結果,WT と比較して Q201E の Km は C2 に対してのみ低下し

ていた。また,Q201E の kcat は G2,L2 に対して減少し,C3,C4 に対して増加していた。

この結果から,Q201E は +1 サブサイトにおいて C2 に対する Km を低下させ,セロオリ

ゴ糖(DP = 2–4)に対する kcat を増加させる変異であると考えられた。この変異によって,

よりセロオリゴ糖に適したサブサイト構造になったことが示唆された。次に Q201E におけ

る E201 の側鎖構造が C2 加水分解に与える影響を調べるために,側鎖構造が類似したア

ミノ酸であるアスパラギンとアスパラギン酸に置換した Q201N,Q201D を作製して C2

に対するカイネティックパラメータを測定した(Table 3-5)。その結果,Q201N,Q201D は

どちらも C2 に対する Km を増加させて kcat を低下させたことから,E201 側鎖の鎖長と

その解離基が重要であることが示唆された。そこで E201 の酸性アミノ酸としての性質が

C2 加水分解の触媒メカニズムに与える影響を調べるために,C2 加水分解における pH プ

ロファイルを解析して WT と比較した(Fig. 3-4)。その結果,kcat に関しては Q201E の変

異酵素は WT よりも pH < 5.0 において一定して高い値を示し,pH 5.0–6.5 にかけて急激

に減少して WT とほぼ同等の値を示し,pH > 6.5 では WT と同様の傾向を示して減少し

た。このようなプロットから Q201E の E201 側鎖の解離していないカルボキシ基が酸塩基

触媒に対して作用していることが示唆された。Km に関しては pH < 6.0 においては Q201E

の Km が WT よりも一定して低かったが,pH 6.0–7.0 の間で WT の Km がわずかに低下

し,Q201E 変異酵素の Km がわずかに増加してほぼ同じ Km を示した。

Q201E の E201 側鎖が酸塩基触媒に対して協調的に作用するか独立して作用するかを調

べるために,酸塩基触媒である E509 をアラニンに置換した E509A と,それに対応する

Q201E/E509A を作製し,pNP-Glc と C2 に対するカイネティックパラメータを測定した

(Table 3-6)。その結果,両酵素の各基質に対する Km と kcat はほぼ同値を示した。

Page 63: Aspergillus aculeatus由来 β-glucosidase 1の生化学的解析 ...Holtzapple et al. 1990; Oh et al. 2000 )。これは BGL をセルラーゼ剤に添 加することで糖化効率が改善されることからも,生成物阻害が糖化効率を低下させる原因

58

Table 3-4 Substrates specificity of Q201E, E69S, S436V mutants toward β-

glucooligosaccharides.

Km (mM) kcat (s−1) kcat/Km

(s−1・mM−1)

WT C2 2.06 ± 0.06 354 ± 10 172 ± 3

C3 0.45 ± 0.02 477 ± 3 1060 ± 50

C4 0.32 ± 0.01 433 ± 4 1340 ± 40

G2 0.52 ± 0.02 457 ± 4 873 ± 29

L2 0.41 ± 0.02 444 ± 17 1080 ± 20

Q201E C2 1.10 ± 0.08 519 ± 36 470 ± 4

C3 0.40 ± 0.02 570 ± 9 1430 ± 100

C4 0.37 ± 0.01 530 ± 12 1440 ± 20

G2 0.60 ± 0.03 340 ± 23 566 ± 18

L2 0.47 ± 0.03 352 ± 18 757 ± 22

E69S C2 2.45 ± 0.15 350 ± 12 143 ± 4

C3 0.37 ± 0.02 481 ± 9 1300 ± 50

C4 0.33 ± 0.02 441 ± 16 1360 ± 30

G2 0.63 ± 0.03 441 ± 4 702 ± 27

S436V C2 2.07 ± 0.09 357 ± 17 173 ± 3

C3 0.41 ± 0.01 460 ± 4 1120 ± 30

C4 0.39 ± 0.03 475 ± 22 1230 ± 60

G2 0.68 ± 0.07 453 ± 19 675 ± 40

Each value is the mean of triplicate experiments.

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59

Table 3-5 Comparison of kinetic parameters toward C2 with WT, Q201E, Q201N and Q201D.

Km (mM) kcat (s−1) kcat/Km

(s−1・mM−1)

WT 2.06 ± 0.06 354 ± 10 172 ± 3

Q201E 1.10 ± 0.08 519 ± 36 470 ± 4

Q201N 3.10 ± 0.06 293 ± 3 94 ± 3

Q201D 4.05 ± 0.14 319 ± 7 78 ± 1

Each value is the mean of triplicate experiments.

Table 3-5 Kinetic parameters of E509A and Q201E/E509A toward pNP-Glc and C2.

pNP-Glc C2

Km (mM) kcat (s-1) kcat/Km

(s-1・mM-1) Km (mM) kcat (s-1)

kcat/Km

(s-1・mM-1)

E509A 0.44 ± 0.01 0.67 ± 0.01 1.52 ± 0.04 1.51 ± 0.05 0.72 ± 0.01 0.48 ± 0.01

Q201E/E509A 0.40 ± 0.02 0.57 ± 0.02 1.44 ± 0.03 1.54 ± 0.00 0.67 ± 0.00 0.43 ± 0.00

Each value is the mean of triplicate experimentts.

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60

Fig. 3-4 Effects of pH on the Km (A), kcat (B) and kcat/Km (C) in C2 hydrolysis of WT (circle)

and Q201E mutant (triangle). The buffers used in this study were 20 mM sodium acetate (pH 3.4–

6.0), 20 mM MES (pH 5.8–7.0) and 20 mM Tris-HCl (pH 7.2, 7.9).

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61

E69S,S436V が糖転移反応に与える影響の解析

Fig. 3-1 で示したように,E69S と S436V は高濃度 C2 加水分解時に基質阻害の影響が

緩和される変異であったため,+2 サブサイトに影響を与える変異であることが示唆され

たが,C2 に対する反応性にはポジティブな影響が見られなかった(Table 3-2)。そこでま

ず始めにこれらの変異酵素におけるセロオリゴ糖に対するカイネティックパラメータを測

定した(Table 3-4)。その結果,C3,C4 に対するパラメータは WT とほぼ変化がなかっ

たため,E69S,S436V 変異酵素のセロオリゴ糖に対する +2 サブサイトは WT と同様に

存在し,スクリーニングで仮定したようにこれらの変異酵素は +2 サブサイトにおける相

互作用が低下したという可能性を棄却した。そこでこれらの変異酵素の Glc 生成速度が

WT と比較して増加する原因として,糖転移反応に影響を与えている可能性を検証するこ

とにした。そこでまず始めに HPAEC-PAD を用いて E69S と S436V の 100 mM C2 加水

分解の経時変化を追跡することで糖転移産物の種類と生成量の変化を定性的に調べた

(Fig. 3-5)。その結果,E69S と S436V は WT と同様に C2 加水分解の過程で糖転移産

物として G2 を生成することが確認できた。また WT,E69S,S436V の反応初期において

それぞれ C3 と同様の保持時間において,ごく微量の三糖と推測される糖転移産物

(TG)が生成していることを確認した。また他の β-結合二糖を始めとする糖転移産物は

検出できなかったことから,E69S と S436V は主に G2 もしくは TG の分解・合成速度に

影響を与える変異であることが示唆された。一方で Table 3-4 に示したカイネティックパ

ラメータの結果から,C3 に対する加水分解のパラメータは WT とほぼ同値であったが,

G2 に対する Km は E69S と S436V 変異酵素で増加傾向にあったことから,TG や G2

の分解・合成に影響を与える変異であることが示唆された。そこで次に WT,E69S,S436V

において,TG の最大生成時における生成量を定量した(Fig. 3-6)。その結果,E69S と

S436V において明らかに TG の最大生成量が減少していた。

Page 67: Aspergillus aculeatus由来 β-glucosidase 1の生化学的解析 ...Holtzapple et al. 1990; Oh et al. 2000 )。これは BGL をセルラーゼ剤に添 加することで糖化効率が改善されることからも,生成物阻害が糖化効率を低下させる原因

62

Fig. 3-5 Time course of 100 mM cellobiose hydrolysis. The hydrolysis of 100 mM C2 was

performed by incubation with 0.32–0.35 µM WT (A), E69S (B) and S436V (C) in 20 mM sodium

acetate buffer (pH 5.0) at 37˚C for 2 h. The hydrolysis products of indicating times were analyzed by

HPAEC-PAD, and identified by comparison of retention time of each peak with those of standards.

Page 68: Aspergillus aculeatus由来 β-glucosidase 1の生化学的解析 ...Holtzapple et al. 1990; Oh et al. 2000 )。これは BGL をセルラーゼ剤に添 加することで糖化効率が改善されることからも,生成物阻害が糖化効率を低下させる原因

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Fig. 3-6 Quantification of the trisaccharide synthesized by transglycosylation. The reaction was

performed by incubation with 0.32–0.35 µM enzymes and 100 mM C2 in 20 mM sodium acetate

buffer (pH5.0) at 37˚C for 4–20 min, followed by boiling for 5 min to stop the reaction. The hydrolysis

products were analyzed by HPAEC-PAD. To quantify the amount of one of the putative

transglycosylation products, a trisaccharide, C3 was used as a standard because of showing the same

retention time. WT, E69S, and S436V produced maximum amount of the trisaccharide for 12 min, 4

min, 16 min in this reaction, respectively. Data are expressed by single experiment.

0

0.5

1

1.5

2

2.5

WT E59S S436V

Max

imu

m a

mo

un

t o

f tr

ansg

lyco

syla

tio

n t

risa

cch

arid

e (m

M)

Page 69: Aspergillus aculeatus由来 β-glucosidase 1の生化学的解析 ...Holtzapple et al. 1990; Oh et al. 2000 )。これは BGL をセルラーゼ剤に添 加することで糖化効率が改善されることからも,生成物阻害が糖化効率を低下させる原因

64

考察

Single mutant の解析によるスクリーニングの妥当性について

第一章における WT の種々の β-グルコオリゴ糖に対するカイネティクス解析の結果を

元に第二章では +1 サブサイトにおける基質特異性の改変と,+2 サブサイトの消失を対象

として,C2 に対する活性が向上した変異酵素を取得するためのスクリーニングを行った。

そこで第三章ではまず始めに,第二章において取得した候補変異酵素について A. oryzae を

用いて発現させ,その精製酵素を用いて実際にスクリーニングに用いた基質に対してどの

ように影響を与えているのかを解析するために pNP-Glc と C2 に対するカイネティクス

解析を行った(Table 3-2,Fig. 3-1)。その結果,両基質において Km が低下した E69M,E69V

と,Km の低下に加えて kcat が増加した Q201E,高 C2 濃度での Glc 生成速度が増加した

E69S,S436T,S436V の 6 種類が C2 に対する活性が向上したと判断した。

一方で E69G,E69R,S436R は本実験で測定したパラメータにおいては WT よりも C2

に対する活性が向上していなかった。E69R は Table 2-3 の結果より,9 種類の候補酵素の

うち 4 つが E69R であり,非常に出現頻度の高い変異酵素であったにも関わらず,本実験

で測定した kcat/Km や高 C2 濃度における反応性は WT よりも低い値を示した。しかし C2

に対する Km が低下していたことに関して,スクリーニングに用いた 2.7 mM C2 存在下で

の反応速度を定常状態近似である以下の ④ 式に対して,Table 3-2 とその測定に用いた酵

素濃度(WT,[E]0 = 2.12 nM; E69R,[E]0 = 2.44 nM)を用いて算出したところ(Briggs and

Haldane 1925),WT が 425 nM・s−1であるのに対し,E69R は 438 nM・s−1であった。これは

1st,2nd スクリーニングにおける酵素反応時間(それぞれ 10,20 min)において E69R が

WT よりも 7.8 µM,15.6 µM 多く C2 を分解できる計算となる。したがって E69R の

kcat/Km は WT よりも減少していたが,スクリーニングで取得できたことは妥当であると考

えられた。一方で E69G と S436R は,本研究におけるスクリーニングでは得られないと考

えられた変異であるが,E69G は E69 において取得した 8 つの候補酵素のうち 1 つ,

S436R は S436 の 5 つの候補酵素のうち 1 つであり,出現頻度が低かったため誤差的に

候補酵素として取得したことが考えられた (Table 2–3)。以上のことから第二章で行った変

異酵素のスクリーニングは理想的ではなかったものの,非常に妥当性の高いスクリーニン

グが行えたと結論付けた。

v0 = k2[ES] = (k2[E]0[S])/Km + [S] ④

Double,triple mutant の解析

上述した通り E69M,E69V,Q201E は Km の低下や kcat の増加に対して影響を与え,

Page 70: Aspergillus aculeatus由来 β-glucosidase 1の生化学的解析 ...Holtzapple et al. 1990; Oh et al. 2000 )。これは BGL をセルラーゼ剤に添 加することで糖化効率が改善されることからも,生成物阻害が糖化効率を低下させる原因

65

E69S,S436T,S436V は高 C2 濃度における Glc 生成速度の増加に影響を与えていた。こ

れらの変異が C2 の加水分解においてどのような過程に影響を与えているのかを解析する

ために,各変異が C2 加水分解に与える影響の違いに基づいて分類した。E69M と E69V は

それぞれ Km を低下させる変異であり,高 C2 濃度における Glc 生成速度が WT とほぼ

同等,あるいは低下している変異であった。また E69S は C2 に対する Km が増加してい

たが,それに伴って高 C2 濃度での反応性も高かったという点で,明らかに E69M や E69V

とは異なっていた。また S436T と S436V は C2 と pNP-Glc に対するカイネティックパ

ラメータは WT と大きく変わらず,高 C2 濃度では WT よりも反応性が高かった。以上

より E69M と E69V,S436T と S436V を類似した変異であると捉え,E69M,E69S,Q201E,

S436V の 4 種類を解析対象とした。またこれらの変異の独立性を調べるために E69M 系

統と E69S 系統の double,triple mutant を作製したところ,E69S 系統でのみ変異による影

響が独立して現れていることが示された(Table 3-3, Fig. 3-3)。そのためまずは E69S,Q201E,

S436V が C2 に対する活性の向上に寄与する要因に関して,AaBGL1 ホモログから情報を

得ることを試みた(Fig. 2-4)。しかし AaBGL1 ホモログにあたる BGL において,一次配列

上 E69S,Q201E,S436V に対応するアミノ酸を有する BGL は存在しないか,もしくは今

回我々が解析対象とした C2 に対する反応性に関して解析されておらず,構造と機能の相

関を得る,あるいはその予測をすることができなかったため,AaBGL1 において独自に解

析する必要が生じた。

Q201E の役割について

まず始めに Q201E の変異がサブサイト構造にどのような影響を与えているのかを解析

するために,Table 3-4 に示したように β-グルコオリゴ糖に対する反応性を調べた。Q201E

の変異によって G2,L2,C3,C4 に対する Km がほぼ変化しなかったことから,WT と比

較してサブサイト構造が大きく変化していないことが示唆された。そこで rAaBGL1 の

Q201E 変異酵素をモデリングにより解析し,考察することにした。Q201E の変異によりグ

ルタミン酸の側鎖が +1 サブサイト側に向いた場合でも側鎖が直接的に周辺のアミノ酸残

基と相互作用する可能性は低いと考えられた(Fig. 3-7)。また 2-methyl-2,4-pentanediol(MPD)

が結合している推定 +4 サブサイトは Q201E とは反対側にあるため,セロオリゴ糖基質も

Q201E と直接相互作用しないことが示唆された。このモデリングによる活性中心の予測と

β-グルコオリゴ糖に対する反応性の結果から,本研究では Q201E がサブサイト構造に大き

な変化を与えていないと仮定し,以後の実験を行った。

変異酵素は Table 2-3 で示した 2nd スクリーニングの結果,4 つの候補酵素全てが

Q201E の変異を有していた。そのためまずは側鎖構造が類似したアスパラギン,アスパラ

ギン酸に置換した変異酵素を作製して解析し,それらの C2 に対するカイネティックパラ

メータを WT,Q201E と比較した(Table 3-5)。その結果,Q201N,Q201D 変異酵素は WT

Page 71: Aspergillus aculeatus由来 β-glucosidase 1の生化学的解析 ...Holtzapple et al. 1990; Oh et al. 2000 )。これは BGL をセルラーゼ剤に添 加することで糖化効率が改善されることからも,生成物阻害が糖化効率を低下させる原因

66

や Q201E よりも C2 に対する Km が増加して kcat が低下していたため,スクリーニング

で淘汰される変異であることを明らかにした。また Fig. 2-4 における他種の GH3 BGL と

のアミノ酸配列比較により Q201N と同等の一次配列を有する MoCel3A, UsBgl3A と,

Q201D と同等の一次配列を有する P. crysosporium 由来 BGL では C2 に対する Km 及び

kcat はそれぞれ MoCel3A: Km, 4.21 mM; kcat, 8.17 s−1,UeBgl3A: Km, 7.2 mM; kcat, 78 s−1,P.

crysosporium 由来 BGL: Km, 3.35 mM; kcat, 18.3 s−1であり,Km が AaBGL1 よりも高いこと

は Q201N,Q201D の変異による影響と近い傾向を示した(Igarashi et al. 2003; Nakajima et al.

2012; Takahashi et al. 2011)。しかし kcat は本来 AaBGL1 よりも低いため,変異による影響

を比較する対象にはできなかった。

以上の結果から,Q201E のグルタミン酸の側鎖構造が C2 に対する kcat/Km の増加に寄

与していると考えられるため,酸性アミノ酸としてのグルタミン酸の役割を調べるために

C2 加水分解の pH プロファイルを測定したところ,pH < 5.5 において一定して高い kcat/Km

を有していた(Fig. 3-4C)。特に kcat に関しては pH < 5.0 で一定して WT よりも高いこと

と,pH 5.0–6.5 の間で急激に低下するという結果を合わせて,Q201E における E201 側鎖

のカルボキシ基は酸塩基触媒である E509 に対して,脱プロトン化していない状態で補助

的に作用していることが示唆された。至適 pH 5.0 よりも酸性側で Q201E の kcat が一定し

て高いことに関して,Q201E の E201 側鎖が求核性アミノ酸である D280 に対して作用し

ているのであれば,D280 が脱プロトン化して活性化する pH < 5.0 の範囲で pH 依存的に

kcat が上昇し,Fig. 3-4B のように一定の差を保ったプロットにはならないと考えられる。ま

た pH 5–6.5 で Q201E の kcat が劇的に減少することは,Q201E の E201 側鎖のカルボキ

シ基が脱プロトン化することで低下することが強く示唆された。以上から Q201E の変異が

C2 に対する kcat を増加させるためにはグルタミン酸の解離していないカルボキシ基が酸

塩基触媒に対して作用することが重要であると結論付けた。一方で Km に関しては pH 7.0

に近づくにつれて周辺アミノ酸の電荷の変化が影響しているためか WT と Q201E 変異酵

素の Km が近づく傾向を示し,本実験の結果から Q201E における E201 側鎖の解離状態

が C2 に対する親和性に与える影響を議論することができなかった。

Fig. 3–4B に示した WT と Q201E の kcat に対する pH プロファイルの結果から,

Q201E の E201 側鎖は E509 に対して補助的に作用することが示唆された。それが協調的

に作用するのか独立して作用しているのかを調べるために,酸塩基触媒である E509 のア

ラニン置換酵素である E509A と Q201E/E509A の pNP-Glc と C2 に対する反応性を調べ

たところ,両酵素の両基質に対する反応性は同等であった(Table 3-6)。このことから Q201E

の変異が C2 に対する反応性を増加させるためには酸塩基触媒である E509 の機能が必須

であることが示され,Q201E の E201 は E509 と協調的に作用することが示された。しか

し Fig. 3-7 に示したモデリングの結果から,Q201E の E201 側鎖と 2 つの触媒残基(D280,

E509)や基質の非還元末端側のアノマー炭素との距離は,一般的に水素結合を形成すると考

えられている 3 Å 前後よりも遠く離れており, Q201E は間接的に E509 を補助する役割

Page 72: Aspergillus aculeatus由来 β-glucosidase 1の生化学的解析 ...Holtzapple et al. 1990; Oh et al. 2000 )。これは BGL をセルラーゼ剤に添 加することで糖化効率が改善されることからも,生成物阻害が糖化効率を低下させる原因

67

を有することが強く示唆された。

以上で論じてきたような E201 側鎖と基質間の距離と kcat/Km の増加の関係について考

えられることの一つとして,E201 側鎖が水分子を介して基質と水素結合を形成し,さらに

その水分子を E509 に供与している可能性が挙げられる(Vuong and Wilson 2010)。実際に

活性中心で触媒反応に関わる水分子の活性化に関わるアミノ酸残基を他のアミノ酸に置換

すると,構造変化を引き起こすよりも,基質に対する Kmの増加,kcat の低下,あるはその

両方の性質を示すという現象はいくつか報告されている(Álvaro-Benito et al. 2012; Kitamura

et al. 2008; Nagae et al. 2007; Vuong and Wilson 2009)。このような報告はアノマー反転型の加

水分解酵素に多い傾向にあるが,アノマー保持型酵素の塩基触媒が水分子を活性化する過

程はそれに類似したものであり,E201 も塩基触媒に対して同様の作用を示していることが

暗に示唆される。その際,E201 の解離していないカルボキシ基が水素結合供与体となって

水分子の酸素原子と水素結合を形成し,E509 のカルボキシ基が水素受容体となって,同じ

水分子の水素原子と水素結合ネットワークを形成する可能性が考えられる。E201 のカルボ

キシ基が解離してしまった場合,水素結合受容体として水分子の水素原子と水素結合を形

成し,もう一方の水素原子が E509 と水素結合をする可能性も考えられるが,距離的にうま

くネットワークが形成できないのかもしれない。

以上のことを参考にすると C3, C4 に対する Km が WT と変化しない理由に関して矛盾

が生じる。これを Paenibacillus polymyxa 由来 GH1 BglB の立体構造解析の結果,AaBGL1

の種々のアナログとの構造解析の結果,トウモロコシ由来 GH1 Glu1(ZmGlu1)と dhurrin

との立体構造解析の結果の 3 点から考察した。P. polymyxa 由来 BglB と TCB との複合体

において +1 サブサイトの Glc 残基に対して Y169,E225,R243,Q316 による水分子を介

した水素結合が確認されたが,C4 との複合体ではそれらがなくなり,W412 の側鎖のイン

ドール環 N 原子が C3 ヒドロキシル基と,N223 の側鎖 N 原子が C6 ヒドロキシル基と

直接相互作用するのみであると報告されている(Isorna et al. 2007)。このことは基質の鎖長

が異なると基質との相互作用に関わるアミノ酸に違いが生じることを示している。AaBGL1

と TCB との複合体の解析結果から,TCB の非還元末端側の Glc 残基(−1 サブサイト)

は,Glc や他の Glc アナログとは異なり,R169,K190,H190 による水素結合を失い,+1

サブサイト側に引き寄せられるように相互作用していることが明らかとなっている(Suzuki

et al. 2013)。このような現象は ZmGlu1 における dhurrin との相互作用において確認され

ている。ZmGlu1 の +1 サブサイトは W358 によるスタッキング相互作用と F198,F205,

F466 による疎水性相互作用によりアグリコンと相互作用しており,AaBGL1 の Y511 と

W68 と F305 による関係と類似している。ZmGlu1 は dhurrin を加水分解できないが,そ

れは +1 サブサイトにおける相互作用が優先し,+1 サブサイトに基質が引き寄せられ,触

媒残基が作用できる位置に基質が存在しないためであることが示されている(Czjzek et al.

2000)。Table 1-2 から AaBGL1 は検討した基質の中で C3 に対して最大の kcat を示すこと

から,C3 は活性中心に適当な様式で結合していると考えられる。これらのことから

Page 73: Aspergillus aculeatus由来 β-glucosidase 1の生化学的解析 ...Holtzapple et al. 1990; Oh et al. 2000 )。これは BGL をセルラーゼ剤に添 加することで糖化効率が改善されることからも,生成物阻害が糖化効率を低下させる原因

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AaBGL1 においても P. polymyxa 由来 BglB と同様に鎖長依存的な相互作用様式の変化が

あるため C2 と C3 では活性中心での相互作用の様式が異なっていることが予想され,

Q201E 変異酵素において C2 に対する Km が低下したが C3 に対する Km が WT と同

等であるという結果が得られたと考えている。これらを実験的に証明する,あるいは更なる

考察を加えるためには立体構造解析が必須である。

以上から Q201E の変異は C2 に対する Km を低下させ,セロオリゴ糖に対する kcat を

増加させる変異であり,それは酸塩基触媒である E509 に対して補助的な役割を果たして

いることを明らかにした。

Fig. 3-7 The active site structure of AaBGL1 Q201E mutant-TCB complex. Image was made

with PyMOL using coordinate form Protein Data Bank (PDB) 4IIH. Dot lines indicate the distance

from O atoms of carboxyl group of Q201E to O atom of carboxyl group of D280 and E509, and C1

carbon of Glc residue at −1 subsite, respectively. Those distance are 5.7 Å, 5.4 Å, and 6.4 Å,

respectively. Position of MPD (pink stick) binding is putative +4 subsite.

Page 74: Aspergillus aculeatus由来 β-glucosidase 1の生化学的解析 ...Holtzapple et al. 1990; Oh et al. 2000 )。これは BGL をセルラーゼ剤に添 加することで糖化効率が改善されることからも,生成物阻害が糖化効率を低下させる原因

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E69S,S436V が糖転移反応に与える影響について

WT において 100 mM まで C2 の濃度を上昇させると,それに伴って Glc 生成速度が

低下するという,基質阻害の影響が強く表れた。スクリーニングを行うにあたり,+ 2 サブ

サイトが消失すれば C2 の非生産的な結合が減少し,C2 に対する活性が向上すると仮定し

たため,E69S,S436V 変異酵素のセロオリゴ糖に対するカイネティックパラメータを測定

したところ,C3,C4 に対するパラメータが WT とほぼ同じであったことから,セロオリ

ゴ糖に対する +2 サブサイトは WT と同様に存在していることが明らかとなった(Table 3-

4)。+2 サブサイトが消失すれば C2 に対する Km も低下すると考えられるため,この結果

は E69S と S436V の C2 に対する Km が低下していないことからも予測できた(Table 3-

2)。

基質濃度が上昇すると反応速度が低下するという現象は BGL においていくつか報告さ

れている(Christakopoulos et al. 1994; Kawai et al. 2004; Seidle and Huber 2004)。Bohlin らの

研究の中では AaBGL1 のホモログである A. niger 由来の BGL を研究対象の一つとして

選択し,それに関しては糖転移反応産物の同定およびその生成速度の解析を通じて,基質阻

害を引き起こすことの主な要因の一つに,糖転移反応により 6-O-β-D-glucosylcellobiose が

生成するためであると述べられている(Bohlin et al. 2013)。そのような背景において E69S

と S436V 変異酵素では,高 C2 濃度における Glc 生成速度が増加したことから(Fig. 3-1),

本研究においても C2 をアクセプターとした TG の生成に焦点を当てて解析を行うこと

にした。

まずは 100 mM C2 の加水分解における反応産物の解析を通して,E69S と S436V の糖

転移産物が WT と異なるかどうかを調べた(Fig. 3-5)。その結果,E69S と S436V 変異酵

素の糖転移産物は WT と同様であり,反応初期から後期にかけて G2 が生成していること

と,C3 と同様の保持時間に TG の生成を確認した。この結果と Table 3-4 においてセロオ

リゴ糖に対するカイネティックパラメータが WT と大きく変わらないことから,E69S と

S436V の変異はサブサイト構造に大きな影響を与えていないことが示唆された。続いて

WT,E69S,S436V が生産する TG を HPAEC-PAD を用いて定量したところ,E69S と

S436V 変異酵素の TG 生成量が明らかに減少していた(Fig. 3-6)。また予備実験的にこの

TG を精製し,WT,E69S,S436V においてカイネティックパラメータを測定すると,E69S

と S436V はこの TG に対する Km,kcat が共に増加する傾向にあった(WT,Km: 0.47 mM,

kcat: 329 s−1; E69S,Km: 0.68 mM,kcat: 429 s−1; S436V,Km: 0.77 mM,kcat: 412 s−1)。このような

結果は TG の合成を遅らせ,その濃度が上昇してくると急速に分解できることを示唆して

いる。なお HPAEC-PAD を用いた解析で C3 と同等の保持時間を示すこの糖転移産物は,

TLC,HPLC を用いた解析から C3 とは異なることが分かっており,A. niger の BGL が合

成するような 6-O-β-D-glucosylcellobiose であると予測している(Bohlin et al. 2013)。なお

E69S,S436V 変異酵素は G2 に対する Km も増加傾向にあったことから,G2 の合成速度

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も低下している可能性が考えられる(Table 3-4)。今後はこれらの糖転移産物の構造を同定

し,その分解・合成速度に関して調べる必要があると考えている。また Fig. 3-8 において

WT と E69S/S436V 二重変異酵素の活性中心を比較した。モデリングによる結果から,E69S

では側鎖の鎖長が短くなり,S436V では側鎖周辺の疎水性が上昇したことで,本来糖転移

産物を合成する際に相互作用に関与していた側鎖を失い,それぞれの変異酵素において TG

に対する Km が増加したことが予想される。kcat に関しても同様に,本来 TG を基質とし

た時に形成されていた相互作用が失われることで,求核攻撃を受けたあとの生成物の遊離

が速くなることで全反応の速度が増加したことが予想される。

以上の結果から E69S と S436V の変異はセロオリゴ糖に対する反応性を大きく変化さ

せずに TG の合成量を低下させる,あるいは分解速度を増加させる,またはその両者に対

して関与する変異であることが強く示唆された。

Fig. 3-8 Comparison of the active site structure of WT and E69S/S436V mutant AaBGL1

with TCB. WT is shown in left panel, and E69S/S436V mutant is shown in right panel. Image was

made with PyMOL using coordinate form Protein Data Bank (PDB) 4IIH. Oxygen atoms, nitrogen

atoms, carbon atoms, and sulfur atom are indicated the color of red, blue, green, and yellow,

respectively. Gray sticks indicated the selected amino acids for the site-saturation mutagenesis

showing in Fig. 2-3.

Page 76: Aspergillus aculeatus由来 β-glucosidase 1の生化学的解析 ...Holtzapple et al. 1990; Oh et al. 2000 )。これは BGL をセルラーゼ剤に添 加することで糖化効率が改善されることからも,生成物阻害が糖化効率を低下させる原因

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総括

本論文では Trichoderma reesei のセルラーゼと相乗作用を示すことが明らかとなってい

る Aspergillus aculeatus 由来 β-glucosidase 1(AaBGL1)について生化学的に詳細な解析を行

い,更なる高機能化として T. reesei セルラーゼの生成物阻害の原因となる C2 に対する活

性を向上させるために変異ライブラリの作製とスクリーニングを行い,取得したアミノ酸

部位に関して解析・考察したことについて論じている。

第一章 A. aculeatus 由来 β-glucosidase 1 の生化学的解析

AaBGL1 は T. reesei のセルラーゼと相乗作用を示すことが明らかとなっていた。しかし

より効率よくセルロース性バイオマスを糖化するためには AaBGL1 にも相乗効果を上昇

させるための高機能化が求められていた。AaBGL1 は立体構造解析が行われており,構造

に関する情報は利用可能であったが,基質特異性を始めとした諸性質について酵素反応速

度論的な解析が行われてらず,構造と機能の相関関係が得られていなかったため,変異を導

入するアミノ酸を選抜することが困難であった。そこで第一章では A. oryzae で生産させた

recombinant AaBGL1(rAaBGL1)の酵素学的な性質が authentic AaBGL1(AaBGL1)に対し

て大きく変わらないことを確認した上で基質特異性について酵素反応速度論的に解析した。

その結果 rAaBGL1 のセロオリゴ糖とラミナリオリゴ糖に対する反応性を比較することで,

初めてセロオリゴ糖に適合したサブサイト構造を有する BGL の存在を明らかにした。一方

で,各種 β-グルコ二糖の中でも C2 に対する反応性が低いことが明らかとなった。さらに

糖転移産物について HPAEC-PAD を用いて解析した結果,rAaBGL1 は糖転移産物として

G2 を生成し,G2 は C2 よりも反応性が高い基質であったため,糖転移産物は生成後速や

かに加水分解されることが示唆された。本章で得た結果から立体構造と機能の相関関係が

把握しやすくなり,部位特異的変異導入が可能となった。本研究では C2 に対する活性が

向上した変異酵素を取得することを目的として,+1 サブサイトを標的とした β-結合の基質

特異性の改変と,+2 サブサイトを消失させることで C2 の生産的な結合を増加させること

を狙い,+ 側サブサイトを対象として変異を導入することに決定した。

第二章 AaBGL1 の C2 に対する活性の向上を目指した部位特異的飽和変異導入による

スクリーニング

第一章において C2 に対する活性を向上させるために + 側サブサイトを変異導入のた

めのターゲットとしたが,立体構造解析の結果からはセロオリゴ糖に対する +3,+4 サブサ

イトに位置するアミノ酸残基と Glc の 6 員環との相互作用については論じられておらず,

立体構造が明らかとなっている GH3 BGL の立体構造の比較からも + 側サブサイトの構

Page 77: Aspergillus aculeatus由来 β-glucosidase 1の生化学的解析 ...Holtzapple et al. 1990; Oh et al. 2000 )。これは BGL をセルラーゼ剤に添 加することで糖化効率が改善されることからも,生成物阻害が糖化効率を低下させる原因

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造の多様性から,変異導入のターゲットを選定するための有益な情報は得られなかった。そ

こで本研究では変異導入方法として site-saturation mutagenesis によるスクリーニングを行

うことに決定した。本研究においては変異酵素をスクリーニングするにあたり,① ライブ

ラリ数とそのサイズを最小化すること,② 容易にライブラリを作製できる宿主と発現系の

構築,③ サブサイト構造やカイネティックパラメータを元にして目的の変異酵素を得るた

めの評価方法を構築することを重要視した。そのためターゲットとして ① + 側サブサイト

を構成すると考えられる,分子表面に露出したアミノ酸残基を選択し,② 真核生物におい

て大量の形質転換体が得られる S. cerevisiase を宿主として用いた。変異酵素の評価には ③

+ 側サブサイトの構造変化の影響を鋭敏に反映できる 2.7 mM C2(Km 付近の濃度)と,基

質阻害の影響が強く現れる 1.5 mM pNP-Glc の 2 種類の基質を用いることに決定した。ス

クリーニングの結果,候補酵素が得られたのは E69,Q201,S436 の 3 種類のライブラリ

由来であった。これら 3 種類のアミノ酸は Aspergillus 属の AaBGL1 ホモログにおける保

存性は高いが,他属由来の AaBGL1 ホモログにおいては比較的保存性が低いアミノ酸であ

り,これらのアミノ酸残基に相当するアミノ酸残基を対象とした解析は行われていないた

め,本研究で初めて解析対象とするアミノ酸残基であった。

第三章 変異酵素の機能解析

本章では第二章で取得した 9 種類の変異酵素(E69G,E69M,E69R,E69S,E69V,Q201E,

S436R,S436T,S436V)について解析を行った。A. oryzae を用いて rAaBGL1 変異酵素を

精製し,C2 に対する反応性を重視した解析を通じて Km や kcat にポジティブな影響を与

えた変異酵素を 3 種類(E69M,E69V,Q201E),高 C2 濃度での Glc 生成速度が増加した

変異酵素を 3 種類(E69S,S436T,S436V)取得した。E69 の変異酵素は E69S と E69M,

E69V の間で異なる傾向を示したことは興味深い結果であった。性質の異なる E69M と

E69S に,Q201E と S436V の変異を重ねた double,triple mutant を解析した結果から,E69M

と Q201E の変異は変異の効果が拮抗し,E69S を含むマルチ変異酵素では変異の効果が相

加的に高められるという結果を得たため,E69S,Q201E,S436V の 3 種類の変異酵素につ

いて詳細な解析を行った。

Q201E がサブサイト構造や基質特異性に与える影響を調べたところ,基質の親和性はほ

ぼ変化させずに C3 や C4 に対する kcat が増加し,G2,L2 に対する kcat が減少していた

ことから,Q201E はサブサイト構造を大きく変化させることなく基質特異性を変化させる

変異であることが明らかとなった。加えて Q201 がグルタミン酸に置換されたことの重要

性を調べるために Q201N,Q201D 変異酵素を作製して C2 に対する反応性を調べた結果,

それらの変異酵素は WT よりも C2 に対する反応性が低下しており,Q201E における

E201 の側鎖構造が C2 に対する反応性の上昇に重要であることが明らかとなった。そのた

め次に pH が C2 加水分解反応に与える影響を調べた。その結果,kcat に関して至適 pH は

Page 78: Aspergillus aculeatus由来 β-glucosidase 1の生化学的解析 ...Holtzapple et al. 1990; Oh et al. 2000 )。これは BGL をセルラーゼ剤に添 加することで糖化効率が改善されることからも,生成物阻害が糖化効率を低下させる原因

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WT と同様に 5.0 であったが,pH 5.0–6.5 の間で劇的に減少した点は WT と異なっていた。

Km に関しては pH 7.0 に近づくにつれて両酵素の Km が近づく傾向を示したため,本実験

の結果から Q201E における E201 側鎖の解離状態が C2 に対する親和性に与える影響を

議論することができなかった。しかし Km の低下と kcat の増加という現象は協調的に現れ

ている表現型であることが示唆され,酸塩基触媒残基に供給される水分子を介した相互作

用に関する研究例と類似した傾向を示した。

E69S と S436V が高 C2 濃度において Glc 生成速度が WT よりも増加した原因とし

て,+2 サブサイトにおける相互作用の減少ではなく,糖転移反応に影響していることが示

唆された。そこで 100 mM C2 加水分解の経時変化を HPAEC-PAD を用いて解析した結果,

E69S と S436V は WT と同様に C2 加水分解の過程で糖転移産物として G2 を生成する

ことを確認し,また反応初期においてはそれぞれ C3 と同様の保持時間において,ごく微

量の糖転移産物の一つと考えられる三糖(TG)が生成していることを確認した。これらの

結果から E69S と S436V は主に G2 もしくは TG の分解・合成速度に影響を与える変異

であることが示唆された。一方で E69S と S436V は C3 に対する反応性は WT とほぼ同

等だったが,G2 に対する Km は増加傾向にあったことから,C3 ではない TG や G2 の分

解・合成に影響を与える変異であることが示唆された。AaBGL1 の立体構造における E69

と S436 の位置と,反応系における糖転移反応のアクセプター(C2,Glc)の存在比から本

研究では TG に焦点を当て,WT,E69S,S436V において TG の最大生成時における生成

量を比較した。その結果,E69S と S436V において明らかに TG の生成量が減少しており,

これらの変異は TG の合成・分解に影響を与える変異であることが示唆された。

本研究の成果は GH3 BGL において初めて C2 の加水分解過程に関わるアミノ酸に焦点

を当てた解析を行って得られたものであり,その成果は構造と活性の相関関係に関する情

報が乏しい GH3 の BGL に関する新たな知見を提供するものである。今後,BGL に残る

他の課題(Glc による生成物阻害の緩和など)に対して,目的に応じた機能改変を行うため

の方法論やその解析対象としての指針の一つになることが期待される。

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謝辞

本研究を遂行するに当たり,研究を遂行する場を提供して下さいました,大阪府立大学

大学院 生命環境科学研究科 教授 川口剛司先生に深く感謝致します。私は川口先生に

御指導を賜りましたことで一意専心することの重要性に気付き,本研究を学位論文として

取りまとめることができました。それは挑戦と失敗を寛容に認めて頂いたことや,自分で

研究を展開する力を養うために多くのご助言を頂いたことはもちろんのこと,多くの学会

に参加して勉強する機会を与えて下さったことなど,川口先生が研究の場を提供して下さ

ったことに他なりません。

本研究を遂行するに当たり,研究課題の立案から学位論文をまとめるに至るまで献身的

な御指導を賜りました,大阪府立大学大学院 生命環境科学研究科 准教授 炭谷順一先

生に深く感謝致します。研究に関しては特に研究目的に対して多様な視点からアプローチ

する方法や実験結果の解釈方法など,研究を遂行するための方法論や取り組み方を学ばせ

て頂き,中でも英文での論理展開の方法に関しては特に献身的に御指導頂きました。研究

生活に関しては私の体調に関しても気にかけて下さり,自分のペースで研究を進められる

ようにサポートして頂きました。このように本研究を学位論文として取りまとめるに当た

り,自分の至らないことを痛感できたことが大きな成果となりました。

研究に関する多大なアドバイスを頂いたことを始め研究者としての心構えを御指導頂い

た,大阪府立大学大学院 生命環境科学研究科 講師 谷修治先生に深く感謝致します。

研究の論理展開の矛盾を的確に指摘して頂いたことや,研究者としてのあり方を行動や言

動で明確に示して頂けたことは自分の研究の進め方の指標となり,自分がどうあるべきか

を熟考することができました。

学位論文の副査を務めて頂いた大阪府立大学大学院 生命環境科学研究科 教授 阪本

龍司先生 及び 教授 片岡道彦先生に深く御礼申し上げます。私にはなかった視点から

の示唆を頂き,学位論文について深く考察できたことで質を高めることができました。

大阪府立大学大学院 生命環境科学研究科 博士後期課程 3 年 掃部正浩さんに深く

感謝致します。同じ研究室の同期として切磋琢磨できたことは自分の強みや弱みを理解す

ることや研究の質を高めることに繋がり,学位論文をまとめるための励みになりました。

大阪府立大学大学院 生命環境科学研究科 博士前期課程 1 年 田中清貴さんに深く

感謝致します。私と関連する研究課題を遂行し,得られた知見や知識を互いに共有できた

ことで,自分だけでは見えなかった視点から学位論文に考察を加えることができました。

日々の生活の場である研究室を活気づけて頂いた,大阪府立大学大学院 生命環境科学

研究科 微生物機能開発学研究室の学生の皆様に心より感謝申し上げます。

最後に 6 年間の研究生活を見守って下さった家族に感謝を表して謝辞とさせて頂きま

す。