10
Page 1 予見されていた「アジアの観光ビッグバン」 大阪航空局長 干山 善幸 7 月から大阪航空局に参りました干山です。前職は、 成田国際空港(株)の空港運用部門におりました。 この AE ニュースの巻頭言に登場させていただくのも、 平成 19 年の東京航空局飛行場部長就任時から数えて、 かれこれ 8 回目になります。その初回は「アジア震源 のビッグバン」と題して、元国立民族学博物館教授の 石森先生(現北海道博物館館長)の「観光革命」につ いて紹介させていただきました。もうかなり前のこと なので記憶されている方はいらっしゃらないと思いま すが、これが、最近の中国を震源とする国際航空輸送 の急増ぶりをピタリと予言しているのです。 石森先生は、1860 年代以降、50 年間隔で観光革命が 起こっていると指摘されています。1860 年代の第一次 観光革命では、アメリカの大陸横断鉄道とスエズ運河 の開通によりヨーロッパ富裕階級の外国旅行がブーム となり、1910 年代の第二次観光革命では、パナマ運河 が開通し大西洋を横断する大型客船の建造を背景にア メリカの中産階級の外国旅行がブームとなり(タイタ ニック号の沈没事故は 1912 年)、1960 年代の第三次観 光革命では、ジャンボジェット機の就航で空の大量輸 送が可能になり、料金も下がって先進国における海外 旅行の大衆化が進んだという分析をされました。そし て、その 50 年後の 2010 年代の第四次観光革命では、 経済成長による所得の増加や、各国での巨大ハブ空港 の建設などが進み、アジアの眠れる需要が一気に爆発 すると予言。それを石森先生は「アジアの観光ビッグ バン」と命名されました。20 年も前のことです。その 予言は見事に的中し、中国人の外国旅行者数は 2005 年 に 3000 万人であったものが 2015 年には 1 億人超えと いう猛烈な勢いで増加を遂げました。そして、その受 け手として、我が国のインバウンド需要も大幅に増加 し、例えば、関空利用の外国人は 2011 年に 280 万人で あったものが、2015 年には 4 倍の 1100 万人に達し、今 年の 2 月には外国人入国者数が成田空港を超えるとい う勢いです。ビッグバンのエネルギーは関西圏のほう により多く向かっているように思われます。 こちらに来てから、大阪の街が外国人で溢れている との話を、あちらこちらで聞くので、大阪ミナミの「黒 門市場」の様子を見に行ってみると・・・ 駅そばの通りに約 180 店舗がひしめき合い、通りを埋 め尽くすのは 9 割方がアジア系を中心とする外国人の 方々で、聞こえてくるのは中国語に韓国語。まるでこ ちらが外国旅行をしている気分になります。各店舗横 にしつらえたイートインコーナーも大賑わいで、昔な がらの大阪の「食い倒れ」文化は、訪日外国人の胃袋 をしっかりと掴んでいるようです。 E 空港技術者<土木・建築・機械>の総合情報 行:国土交通省航空局安全部 空港安全・保安対策課 編集委員長:総括課長補佐 Vol.187 A NEWS irport ngineersE 空港エンジニア・ニュース

A NEWS E · 2016. 8. 31. · 「平成28年度 空港土木施設管理コース研修」 について 国土技術政策総合研究所 空港施工システム室 専門官 田代

  • Upload
    others

  • View
    0

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

Page 1: A NEWS E · 2016. 8. 31. · 「平成28年度 空港土木施設管理コース研修」 について 国土技術政策総合研究所 空港施工システム室 専門官 田代

Page 1

予見されていた「アジアの観光ビッグバン」

大阪航空局長 干山 善幸

7 月から大阪航空局に参りました干山です。前職は、

成田国際空港(株)の空港運用部門におりました。

この AEニュースの巻頭言に登場させていただくのも、

平成 19 年の東京航空局飛行場部長就任時から数えて、

かれこれ 8回目になります。その初回は「アジア震源

のビッグバン」と題して、元国立民族学博物館教授の

石森先生(現北海道博物館館長)の「観光革命」につ

いて紹介させていただきました。もうかなり前のこと

なので記憶されている方はいらっしゃらないと思いま

すが、これが、最近の中国を震源とする国際航空輸送

の急増ぶりをピタリと予言しているのです。

石森先生は、1860 年代以降、50 年間隔で観光革命が

起こっていると指摘されています。1860 年代の第一次

観光革命では、アメリカの大陸横断鉄道とスエズ運河

の開通によりヨーロッパ富裕階級の外国旅行がブーム

となり、1910 年代の第二次観光革命では、パナマ運河

が開通し大西洋を横断する大型客船の建造を背景にア

メリカの中産階級の外国旅行がブームとなり(タイタ

ニック号の沈没事故は 1912 年)、1960 年代の第三次観

光革命では、ジャンボジェット機の就航で空の大量輸

送が可能になり、料金も下がって先進国における海外

旅行の大衆化が進んだという分析をされました。そし

て、その 50 年後の 2010 年代の第四次観光革命では、

経済成長による所得の増加や、各国での巨大ハブ空港

の建設などが進み、アジアの眠れる需要が一気に爆発

すると予言。それを石森先生は「アジアの観光ビッグ

バン」と命名されました。20 年も前のことです。その

予言は見事に的中し、中国人の外国旅行者数は 2005 年

に 3000 万人であったものが 2015 年には 1億人超えと

いう猛烈な勢いで増加を遂げました。そして、その受

け手として、我が国のインバウンド需要も大幅に増加

し、例えば、関空利用の外国人は 2011 年に 280 万人で

あったものが、2015 年には 4倍の 1100 万人に達し、今

年の 2月には外国人入国者数が成田空港を超えるとい

う勢いです。ビッグバンのエネルギーは関西圏のほう

により多く向かっているように思われます。

こちらに来てから、大阪の街が外国人で溢れている

との話を、あちらこちらで聞くので、大阪ミナミの「黒

門市場」の様子を見に行ってみると・・・

駅そばの通りに約 180 店舗がひしめき合い、通りを埋

め尽くすのは 9 割方がアジア系を中心とする外国人の

方々で、聞こえてくるのは中国語に韓国語。まるでこ

ちらが外国旅行をしている気分になります。各店舗横

にしつらえたイートインコーナーも大賑わいで、昔な

がらの大阪の「食い倒れ」文化は、訪日外国人の胃袋

をしっかりと掴んでいるようです。

E 空港技術者<土木・建築・機械>の総合情報

発 行:国土交通省航空局安全部

空港安全・保安対策課

編集委員長:総括課長補佐

Vol.187 A NEWS irport

ngineers’

E 空港エンジニア・ニュース

Page 2: A NEWS E · 2016. 8. 31. · 「平成28年度 空港土木施設管理コース研修」 について 国土技術政策総合研究所 空港施工システム室 専門官 田代

Page 2

「平成 28 年度 空港土木施設管理コース研修」

について

国土技術政策総合研究所 空港施工システム室

専門官 田代 大介

平成 28 年 7 月 19~22 日、国土技術政策総合研究所

の横須賀第二庁舎(研修センタ-)で空港土木施設管

理コ-ス研修を開催しましたので、報告いたします。

本研修は、空港土木施設整備・管理を担当する職員

を対象に空港施設の維持管理に必要な実務的事項につ

いて習得を図ることを目的として毎年開催があり、今

回は北海道開発局、地方整備局、地方航空局の他、空

港会社や地方公共団体の方も参加し、計 18 名が受講し

ました。

本研修は、1、2 日目は本省空港安全・保安対策課と

国総研の講師による各講義、3日目は現場実習と羽田空

港での現地見学を行いました。その中で、現場実習は

今回から初めて野比実験場にある疑似層間剥離舗装を

用い、点検ハンマ-による打音調査の実習を行いまし

た。普段の勤務で特に舗装の点検をされていない方は、

打音した際の異音を感覚的に体験できたのではないか

と思います。ただ、研修期間中、この日だけ雨に見舞

われ、「何で」という無念な気持ちになりつつ、「現場

では雨中でも点検はある」、と気持ちを取り直して実施

しましたが、ちょっと実習がやりづらくなってしまい

ました(研修員の皆様、お付き合いありがとうござい

ました)。

この疑似層間剥離舗装(試験ヤ-ド)について、少

し紹介いたします。昨年度に非破壊計測技術を用いた

層間剥離検出の実証試験を行うため、舗装内部に発生

した層間剥離を再現して製作したものです。しかし、

単純に再現するといっても現場で発生する層間剥離は

人為的にできるものではなく、内部の状況も見えない

ため、よくわからない部分ではありますが、単純に層

間に異物を入れると本当のニセ物(叩いた時にすぐに

異物があるとはっきりわかる)になってしまうため、

層間に入れる材料も薄い不織布、プラベニア、石粉を

使用して複数製作し、入れる深さも 5、8、10、15cm と

色々なパターンで再現しています。また、舗装構造に

もこだわり、滑走路を想定して路盤から作り、仕上げ

に表面にグルービングも設置しました。もし、この場

所を用いて何か試験したい等のご要望がありましたら

お声かけ下さい。

話は戻りますが、研修最終日の 4 日目は各班に分か

れて課題討議を行いました。研修員の方々は所属や経

験年数も様々、従事している業務も整備や管理と違い

ますが、その中でテーマに対して各々の経験の範囲で

意見を出し合い、討議の過程で違う経験の情報も共有

できたことはとても貴重な時間だったのではないかと

思いました。

最後に本研修の開催にあたり、ご協力頂きました講

師の皆様、現地見学でお世話になりました東京空港事

務所、東京空港整備事務所の皆様にお礼申し上げます。

速 報

野比実験場での現場実習

集 合 写 真

疑似層間剥離舗装平面図(野比実験場)

Page 3: A NEWS E · 2016. 8. 31. · 「平成28年度 空港土木施設管理コース研修」 について 国土技術政策総合研究所 空港施工システム室 専門官 田代

Page 3

「第6回首都圏空港機能強化技術検討小委員会」

について

航空局 航空ネットワーク部

空港施設課 大都市圏空港調査室

調整第二係 中村 大樹

平成 28 年 7 月 22 日、第6回首都圏空港機能強化技

術検討小委員会が開催されました。その会議の中で、

首都圏空港の機能強化方策についてご議論頂きました

ので、その概要を報告いたします。

1.本委員会の経緯

75 万回化達成以降の首都圏空港の機能強化について

は、交通政策審議会航空分科会基本政策部会の下に学

者・専門家で構成する本小委員会を立ち上げ、これま

での5回の委員会を経て、首都圏空港の機能強化につ

いての議論を重ねて参りました。その中で、2020 年ま

でに実現可能な方策、さらにはその先を見据えた方策

について、羽田・成田両空港の空港処理能力拡大方策

を中心に、技術的な選択肢を「中間取りまとめ」に整

理して頂きました。

2.第6回委員会の開催

第5回の委員会までに取りまとめて頂いた技術的な

選択肢をもとに、航空局では、2020 年までの羽田・成

田両空港の機能強化方策の具体化について関係自治体

と協議を行うとともに、住民の皆様への説明を行って

きました。そして、その協議等の中で得られた関係自

治体の要望や住民の皆様の意見等も踏まえ、より環境

影響や安全等に配慮した機能強化方策にするため、特

に、羽田空港の新たな飛行経路の運用等について協議

を重ねてきました。

そして、これまでの取り組みの結果を委員の方々へ

ご報告するとともに、飛行経路の高度引き上げとこれ

に伴う経路変更、新たな滑走路運用及び北風時の出発

経路に係る早朝の運用時間帯の後ろ倒しについての技

術的な専門的見地からの意見を頂くために第6回委員

会を開催いたしました。

3.委員会での議論内容

委員会では、局長のご挨拶、事務局からの資料説明

の後、機能強化方策等について、委員の方々より活発

なご議論を頂きました。ここでは、事務局が示した主

な機能強化方策について、以下のとおり紹介いたしま

す。

(委員会の様子)

(1)南風時新飛行経路の高度引き上げ及びそれに伴

う経路の一部修正

陸域全体への騒音影響を小さくするとともに、周辺

の飛行場に着陸する航空機との安全間隔を確保する観

点から、到着経路の進入を開始する高度を引き上げる

とともに東側に移設する等、南風時の新飛行経路案の

一部修正案を提示しました。

南風時の新たな飛行経路の進入においては、悪天候

時以外に使用できるRNAV進入を導入することで、

直行降下区間における水平飛行が不要となり、最終降

下を開始する地点をより高くすることが可能となりま

す。

(2)新たな滑走路運用・飛行経路を踏まえた方面別

運用の考え方

騒音影響の特に大きい南風時B滑走路出発の便数を

削減するため、C滑走路からの離陸を加えた場合につ

いて検討を行いました。 検討の結果、1時間当たり数

機であれば、A滑走路出発機との安全間隔を確保しつ

つ、時間値を減らすことなく運用することが可能であ

ることが判明し、提示しました。これにより、A滑走

路を北方面、B滑走路を南方面、C滑走路を一部の

2,500m以上の離陸滑走路長が必要な北方面の長距離国

際線に割振り、西方面の出発機の使用滑走路で調整す

ることにより、需要に柔軟に対応することが可能にな

ります。

(3)北風時出発経路に係る朝の運用時間の後ろ倒し

新経路の運用時間帯を後ろ倒しについて検討した結

果、後ろ倒しした場合には従来の提案に比べ切替え回

数が増えることとなるものの、北方面出発経路のみの

切り替えであるため管制運用への影響は小さく、運用

時間の後ろ倒しは可能であることが判明し、提示しま

した。

速 報

Page 4: A NEWS E · 2016. 8. 31. · 「平成28年度 空港土木施設管理コース研修」 について 国土技術政策総合研究所 空港施工システム室 専門官 田代

Page 4

(羽田空港の滑走路運用・飛行経路見直し案(南風時))

(羽田空港の滑走路運用・飛行経路見直し案(北風時))

4.おわりに

本委員会で示した新たな機能強化方策等について、

委員からは、「1つの案を出すとなかなか変えられない

ことが多いが、柔軟に対応し、当初計画の機能を保持

しつつ環境への配慮を行ったことは評価できる。」と、

一定のご理解を頂きました。一方で、今後の対応につ

いては、「今後も継続して丁寧に情報提供の努力をする

こと。また、引き続き安全管理の徹底を行うことが重

要であり、フォローアップもしっかり行ってほしい。」

「今後の技術開発を予想し、よりよい案に変えていく

ことも常に念頭において方策を進めてほしい。」とのご

意見も頂きました。

今後は、羽田空港の機能強化が、首都圏の国際競争

力の強化、急増する訪日外国人旅行者への対応等のた

め、極めて重要であり、これからの日本を左右するよ

うな大きな話であるということを地域の方々に引き続

き、お伝えしていくとともに、機能強化方策がよりよ

いものとなるよう施設整備等にも努めていきたいと思

います。

「広域施設運用管理研修」の実施について

航空局 安全部 空港安全・保安対策課

発電・無停電電源システム係長 横山 将志

平成 28 年 7 月 25 日から 29 日の 1 週間で実施した広

域施設運用管理研修をご報告します。

本研修は機械施設管理保全システム(MAPS)導

入を契機に始まった研修で、当初はハードウェア・ソ

フトウェア等運用上必要とされる専門知識の修得を目

指すものとして研修請負契約で実施していました。現

在は様変わりし、柏研修センターで行う場所貸し研修

で実施しています。場所貸し研修とは、各局等主催で

柏研修センターの施設を利用して行う研修で、基本的

に柏研修センターは運営に関与してもらえない研修で

す。そのため、講師のお迎えやお見送り、入校式・閉

校式、オリエンテーシ

ョンなど全て研修担

当での実施となりま

す。今回、初めて研修

担当として研修に参

加したのでドタバタ

としましたが、研修生

の諸先輩方のご協力

もあり無事に閉校式

まで行えました。

当初からは研修内

容も変化していて、前述の専門知識の習得以外に事故

防止のための安全対策や安全管理システムの講義も昨

年度より導入しています。

今年度は前年度研修アンケートの結果を考慮し実

技・演習に重点をおいた構成を考えました。しかしな

がら、一週間と短い研修であり、科目によっては演習

時間を十分に取ることができなかったため来年度の研

修に向けて検討したいと考えています。

本研修は機械施設業務を担当する主幹施設運用管理

官の10名の方に参加していただきました。また、安

全管理に関する研修は早稲田大学小松原教授を講師に

迎えての研修も取り込んでおり、折角の機会なので在

京の聴講生を募り、23名の研修参加となりました。

科 目

電気事故例と安全対策

N-MAPSの概要

機械業務の安全管理について

安全管理システム概論

PLC通信の基礎

通信ネットワークの基礎

機械業務の運用調整

システム統制概論

空港安全

・保安対策課 UPDATE

「PLC 通信の基礎」演習風景

Page 5: A NEWS E · 2016. 8. 31. · 「平成28年度 空港土木施設管理コース研修」 について 国土技術政策総合研究所 空港施工システム室 専門官 田代

Page 5

例年、夏休み期間中ではありますが、精密保守や、

夜間作業などの比較的業務の集中しないこの時期に実

施しております。猛暑の中での研修でしたが、研修生

の皆様お疲れ様でした。

「空港機械施設〔基礎〕研修」の実施について

航空局 安全部 空港安全・保安対策課

機械施設係長 秦 誠彦

8 月 1 日~5日に空港機械施設〔基礎〕研修を国土交

通大学校柏研修センターにて実施しましたので概要を

報告いたします。

本研修は空港機械施設業務に従事する先任施設運用

管理官付又は係員を対象に、平成 22 年度より隔年で開

催しており、今回が 4 回目となります。

今回は東京航空局・大阪航空局管内及び福岡航空交

通管制部より 10 名の若手機械職員が参加されました。

文字通り機械職員のほとんどは高校や大学で機械

(工学)を専攻しておりますが、航空局の機械業務は

従来より発電設備や無停電電源設備など、電気に関す

る知識を必要とする業務が多く、平成 23 年度以降は航

空保安用電源設備の

維持管理区分見直し

により、航空路監視

レーダー施設などの

場外無線施設の受電

設備等が機械職員の

新たな維持管理対象

設備となり、より一

層電気に関する専門

知識が必要となった

ことから、その修得

を目的とした研修として実施しています。

そのため、研修科目は初日の当課 貴島課長補佐から

の講話を除き、全て電気に関する講義となっておりま

す。

講話を除く全ての講義をしていただいた(株)昭栄電

気産業の本迫(もとせこ)講師は、東京電力の企業内

学校(研修施設)で教鞭を執っていた経歴もあること

から、要点・説明が分かりやすいことはもちろん、研

修員の集中を切らせない参加型の講義進行(順番に指

名し質疑を行いながらの進行、時には指名された研修

員は教壇のホワイトボードで問題を解くことも求めら

れる)であり、研修員にとっては油断・居眠りのでき

ない、適度な緊張感が求められる講義で、自然と集中

して受講されていました。

最終日には講義内容の理解度を確認するために演習

(試験)を実施しました。

演習問題は、第一種電気工事士試験(国家試験)の

筆記試験問題から出題しましたが、国家試験の合格基

準が 60 点であるのに対し、平均 85 点、全員が 60 点を

優に超える結果で、講義内容の浸透と研修員各自の前

夜の自習の成果を確認することができました。

研修アンケートでは研修員全員が「この研修で得た

ことが職場で活用できそう」との意見であったことか

ら、各職場に戻られてもこの研修で学んだ内容につい

て職場の他の方々にも共有を図っていただき、今後の

業務に活かしていただければと思います。

最後に、業務多忙な中、研修員を送り出していただ

いた各官署の皆様に、この場をお借りして感謝申し上

げます。また、猛暑の中、研修に参加頂いた研修生の

皆様、お疲れ様でした。

教 科 目

電気に関する基礎理論

配電理論及び配線設計

電気応用

電気機器・高圧受電設備等

電気工事の施工方法、検査方法

発電・送電・変電設備

保安に関する法令

配線図

演習(試験及び解説)

空港安全

・保安対策課 UPDATE 柏研修セン

ターの受電

設備を見な

がら講師の

説明を聞く

研修員の皆

さん

Page 6: A NEWS E · 2016. 8. 31. · 「平成28年度 空港土木施設管理コース研修」 について 国土技術政策総合研究所 空港施工システム室 専門官 田代

Page 6

「空港技術者〔上級〕研修」の実施について

航空局 安全部 空港安全・保安対策課

教育係長 中橋 和博

国土交通大学校柏研修センターにて、空港技術者〔上

級〕研修(H28.8.1~8.5)を実施しましたので報告いた

します。

空港技術者〔上級〕研修は、航空局の施設系業務に

従事する土木・建築・機械職員の次期管理職候補者に

対し、空港技術者として業務上必要となる高度な専門

知識と次期管理職としての自覚や心得を修得させるこ

とを目的として、おおむね 40 代前半の職員が全国から

15 名参加しました。

カリキュラムは、最新の航空行政の動向や、危機管

理、メンタルヘルス、組織とリーダーシップなど、次

期管理職として必要となる幅広い科目全 12講義で実施

しました。

研修の最初のコマは、坂課長の講話の予定でしたが、

急遽来られなくなり、別の日の課題討議(班別討議)

の時間といれかえて講話を行うとのことで、最初のコ

マがいきなり課題討議(班別討議)となってしまいま

した。通常、課題討議は、研修の講義でいろいろな話

を聞いて討議を深めていくため、いきなり課題討議と

いうのは柏研修センターの方もびっくりされていまし

たが、上級研修生の方は文句も言わず受け入れていた

だけました。

課題討議は、次期管理職として、また空港技術者の

将来を考えていく立場として、今後の空港技術者全体

の課題、また若い人への指導に関して問題意識を持っ

てもらうとともに解決策を討議することを目的に、「今

後の航空行政を見据えた空港技術者のあり方」という

テーマで、班別の討議および、班で討議した内容を、

パワーポイントにまとめて発表していただきました。

上級研修では、毎回航空局以外の外部の方に講師を

お願いするコマが多いのですが、外部講師の方の講義

では、ただ教室型で説明するだけでなくロールプレイ

など研修生参加型の講義が多いのも特徴で、真剣に講

義を受けていました。

今回は、カリキュラムの急遽変更など、イレギュラ

ーなことがいろいろあったものの、研修生のご協力の

もと、無事研修が修了しました。研修生の方に感謝い

たします。

研修員の方からは、「これから部下をかかえる上で、

リーダーまたは管理職としての心構えになる研修にな

りました」、「参考度の高い講義が多かった」などの意見

の他、「班別討議の時間をもう少し設けてほしい」、「討

議の課題が何を求めているのか不鮮明で非常に悩んだ」、

「討議内容が抽象的で幅広いため討議の的を得られな

かった」等、特に課題討議に関して厳しい感想を頂きま

した。

研修に対して、ご意見やご提案などを色々頂きました

ので参考にさせていただき、今後カリキュラムが更に充

実したものになるよう検討していきます。

最後に研修講師を務めて頂きました皆様、長期にわ

たり研修員を派遣して下さいました各官署の皆様、頼

りない仕切り役についてきていただいた研修生のみな

さまに深く感謝いたします。

空港安全

・保安対策課 UPDATE

上級研修に参加されたみなさま

課題討議(発表の様子)

講義の様子

Page 7: A NEWS E · 2016. 8. 31. · 「平成28年度 空港土木施設管理コース研修」 について 国土技術政策総合研究所 空港施工システム室 専門官 田代

Page 7

「山口宇部空港」

大阪航空局 山口宇部空港出張所

所長 片山 隆志

山口宇部空港は、山口県宇部市の南東、東西に長い

山口県の西端から約 25km東側の瀬戸内海に面する位置

にあります。空港周辺は、高峻な山岳もなく、西に北

九州、南に周防灘を望む風光明媚な環境にあります。

天気のいい日には、空港の対岸に九州の国東半島、

姫島を、管制塔から

は北九州空港も見る

ことができます。

定期路線は東京便

が 10 往復(JAL(4)、

ANA(3)、SFJ(3)ANA

と共同運航)で平成

27年度の空港利用客

数は、90.5 万人とな

り、4年連続で増加。

平成 18 年度以来、9

年ぶりに 90 万人を

突破しました。また、

国際チャーター便

(韓国、台湾)の運

航や県警航空隊と県

消防防災航空センタ

ーのへリコプターの常駐基地ともなっております。

運用時間は 07:30-21:30(14 時間)

当空港は、昭和 41 年 7月に宇部空港として供用開始

され今年 7 月 1 日に 50 周年を迎えております。7 月 1

日には国内線ターミナルビルで記念セレモニー、記念

イベントが行われました。

【山口の観光】

山口県といえば萩や、秋吉台の秋芳洞そして錦帯橋

などが有名ですが、今回はこちらを紹介致します。

【瑠璃光寺五重塔 山口市】

この地の領主大内義弘が応永の乱で戦死し菩提を弔

うため弟の盛見が建てたものだそうです。日本三名塔

(法隆寺五重塔、醍醐寺五重塔、瑠璃光寺五重塔)の

ひとつに数えられており、山口の観光のシンボルとな

っております。

写真は、初夏で

すが、ツツジ、

紅葉など四季

を通じて見応

えが有ります。

夜のライトア

ップもいいで

す。国宝なのに

入場料、駐車料

は無料です。

【角島大橋 下関市豊北町神田~角島】

平成 12 年(2000 年)に開通した長さ 1780m の橋で下

関市豊北町神田から豊北町角島までを結んでいます。

左右を見渡すと、まるで海の上を走っているかのよう

でドライブコースとして非常に人気です。これまで、

テレビ CMの撮影なども行われているようでご存じの方

も多いかと思います(私は知りませんでしたが)。海の

色、緑、砂浜と景色、景観がいいです。少し南国をイ

メージさせます。

晴天時に訪問して下さい。本州とは思えないような

海を見られるかもしれません。

他にも山口県には、幕末維新の歴史文化的な観光地、

自然景勝地が豊富です。また、温泉地もいいので山口

にお出かけの際は立ち寄ってみて下さい。

~おいでませ山口へ~

中央が管制塔 右側がターミナルビル

50 周年記念セレモニー(H28.7.1)

Page 8: A NEWS E · 2016. 8. 31. · 「平成28年度 空港土木施設管理コース研修」 について 国土技術政策総合研究所 空港施工システム室 専門官 田代

Page 8

出張報告(日ミャンマー交通次官級会合ほか)

航空局 航空ネットワーク部 空港施設課

空港国際業務推進官 薮中 克一

1.はじめに

日ミャンマー交通次官級会合は、運輸分野における

両国の協力について議論する場として、平成 25 年 3月

に設置され、概ね年 1 回開催されています。

去る 6月 30 日、第 3回会合がネーピードー(ミャン

マー)にて開催され、日本側からは森重国土交通審議

官(当時)をはじめ総勢 12 名及び現地に赴任中のアタ

ッシェ、JICA 専門家らが出席しました。その概要と民

間航空局(DCA)訪問の様子を報告します。

2.運輸・通信大臣への表敬訪問

会合に先立ち、タン・ズィン・マウン大臣を表敬訪問

しました。

会談の中で仰っていましたが、大臣はミャンマー国

鉄の出身で、1986 年に JICA 研修生として 2ヶ月間、東

京で都市交通計画の研修を受けていたそうです。

3.次官級会合

会合は、朝 9 時半から途中ランチを挟み、丸一日行

われました。ミャンマー側の出席者は、「タ」大臣をは

じめ、チョー・ミョー副大臣(民間航空局 OB)、次官、

各局局長、公社等の代表という顔ぶれです。

航空関連では、日本側から空港分野・航空管制分野

の協力プロジェクトについて、特にハンタワディー空

港のデマケと周辺インフラ整備の重要性について説明

し、ミャンマー側から、これらについてのコメントや、

今後の両国の協力の必要性について話がありました。

次官級会合集合写真

3.民間航空局(DCA)訪問

会合の翌日(7/1)、DCA のミン・ルイン局長を表敬訪

問しました。

昨日の会合のやりとりをひととおり確認した後、チ

ョー・ソー空港・安全部長の案内でヤンゴン空港を見

せてもらいました。

ヤンゴン空港は、2013 年に空港拡張事業の開発・運

営権を獲得した中国系ミャンマー企業「アジア・ワー

ルド」の関連会社が運営しています。

前政権下の今年 3 月に暫定供用した新国際線ターミ

ナルには、ミャンマー国営航空(MNA)など 3 社が既に

移転していました。新国内線ターミナルも今年 12 月に

完成予定とのこと。

「チョ」部長によると、同社は DCA に提出した開発

計画とは異なり、1,000 万人規模の施設整備を行ってい

るとのことで、「彼らは嘘をつく。けしからん。」と何

度も繰り返し言い、不満な様子でした。

DCA の庁舎からエアサイドへ向かう時に、彼らの怒り

をさらに爆発させるものを見てしまいました。

車はターミナル地区のセキュリティゲートから入ら

ず、一旦空港外に出て、場周フェンスを右手に見なが

らぐるりと市街地を回り、15 分ほど走ったところで消

防用のゲートから空港内に入りました。

場内を走行し、民航エプロン地区に差し掛かると車

を停め、「ここから先は彼らのエリアなので入れない」

と言い、元のルートを引き返しました。

どうやら、運営権だけでなく、エアサイドの大部分

の管轄権が同社に渡ってしまった模様で、DCA の活動の

フィールドは、滑走路北側の消防施設、無線施設周辺

に狭められてしまったようです。

民間が資金を出すという言葉に乗せられて、悪い会

社に不利な条件を突きつけられてしまったのでしょう

か。もし契約相手が日本企業であれば、そんなことに

はならなかったと信じたいです。

4.その他

今回の出張で予想外だったことが2つありました。

ひとつは、「タ」大臣が会合の冒頭挨拶後、退席する

はずだったのですが、そのまま席に残り、結局、議論

に最後まで参加していました。大臣のものすごい熱意

を感じました。

もうひとつは、会議前日に先方と調整すべき事項が

あり、ネーピードー到着後、我が方の担当者が運輸・

通信省に出向くことになったのですが、夜 9 時に来て

くれと言うので行ってみたら、ミャンマーの役人が残

って仕事していたとのこと。しかも着いた時には別件

の打合せ中だったらしく、少し待たされたとのこと。

大変驚きました。

Page 9: A NEWS E · 2016. 8. 31. · 「平成28年度 空港土木施設管理コース研修」 について 国土技術政策総合研究所 空港施工システム室 専門官 田代

Page 9

「空の安全」

航空局 安全部 空港安全・保安対策課

空港保安防災教育訓練センター

主任技術専門官 河野 剛

航空局では唯一人?の主任技術専門官として勤務し

ております。過去にも諸先輩方が執筆されているとこ

ろですが、改めて紹介します。

【概要】

空港保安防災教育訓練センター(Education And

Training Center,略称 EATC)は平成 6 年に名古屋空港

で発生した中華航空機事故を契機に、長崎空港のある

大村市の箕島に設置されたものです。

当初は国職員(保安防災職)と国管理空港の請負者

(航空保安協会)を受講対象に訓練を行っていました

が、平成 23 年度より受講対象を拡大、会社管理空港及

び地方公共団体管理空港の空港消防職員の受け入れを

行っています。

【職員】

所長以下総勢 17 名で業務を行っています。課長補佐

(事務職)及び主任技術専門官(機械職)を除き保安

防災職です。

【主任技術専門官の職務】

高圧ガス製造設備、訓練施設、機械設備、電気施設、

訓練車両に関するものが主となっています。

【高圧ガス製造設備】

職務のうち、高圧ガス製造設備に関するものがメイ

ンとなります。

空港保安防災教育訓練センターではLPガスを燃焼

させ本番さながらの訓練を実施しています。

このLPガスに係る設備が第一種高圧ガス製造設備

となっており、1年に 1回、定期自主検査を行い、その

後長崎県の保安検査を受検し、合格しなければなりま

せん。

県の保安検査に係る

手数料ですが設備の規

模により決まっており、

空港保安防災教育訓練

センターでは 25 万円

となっています。

なお高圧ガス製造設

備の運用には高圧ガスに関する有資格者を配置する必

要がありますが、職員では対応が難しいため、高圧ガ

ス製造設備運用請負として有資格者が常駐しています。

【訓練設備】

訓練を行うためのモックアップと呼ぶ「ボーイング

767-200 実寸大の機体(燃料流出火災訓練用及びエン

ジン・車輪火災訓練用の 2基)」を設置しています。エ

ンジン・車輪火災訓練用モックアップは内部に入るこ

とが出来、搭乗者救出訓練も行っています。

【訓練車両】

訓練に使用する車両は実際に空港に配備されていた

車両を退役後に管理換えを行い使用しています。現在

の主力は懐かしの東急車輌製造の 12,500 立級化学消防

車です。

【空の安全】

当センターには完成時の二階運輸大臣直筆のモニュ

メントがあります。

「空の安全」この言葉を忘れずに日々業務を行って

おります。

Page 10: A NEWS E · 2016. 8. 31. · 「平成28年度 空港土木施設管理コース研修」 について 国土技術政策総合研究所 空港施工システム室 専門官 田代

Page 10

↑( 非常勤の皆さんと撮影 )↑

今年 4月より、東京航空局 空港部 土木建築課・

建築室にてお世話になっております、非常勤職員の

岡正美(写真左下のメガネ)と申します。

こちらに配属されてから、早や5ヶ月が過ぎました。

課室の方々をはじめ、非常勤さんたちも皆明るくて

優しい方ばかりです。とても恵まれた環境にて、ぬく

ぬくと仕事をさせていただいております。

ようやく仕事に慣れてきましたが、分からないこと

もまだまだあるので、気を抜かずに頑張りたいと思い

ます!!

さて、季節が秋へと変わりつつある今日この頃。

千鳥ヶ淵も紅葉に染ま……るにはまだ早いですが、

秋といえば皆様は何が思い出されますか??

運動…芸術…紅葉……食欲。 食 欲!!

実は私、最近「ふわふわパンケーキ」にはまってお

ります。お店にもちょいちょい行きますが、やはりお

金も時間も涙目になるので、たまーに実験気分で作り

ます。

…ご存じかもしれませんが、パンケーキをふわふわ

にするコツって、実はメレンゲなのです。

メレンゲが上手く泡立てば、ホットケーキミックス粉

で作っても“ふわっふわぁ”です。

(ちなみに私はまだ成功したことがありません。)

そしてメレンゲを泡立てる裏技?ですが、卵白を

冷凍庫でシャーベット状に凍らせてから泡立てると、

かなり早く泡立ちます!!5 分とかからず!!

アナログ人間な私は、この方法を知ったとき感動

しました。そして「簡単なら」と思い、作るように

なり今に至ります。

↑( 作ってみたパンケーキです。

ふわふわへの道のりは…遠い… )↑

というわけで、この度は個人的な甘い話におつきあ

いいただき、ありがとうございました。

皆様も是非、食欲の秋を満喫してみて下さい~

✈ 今月号も寄稿を頂いた方々を始め、皆様の AE ニュ

ースへのご理解、ご協力、ご愛読に感謝いたします。

✈ さて、今年始めての「山の

日」はいかがでしたか?せっか

くの機会、「山に親しもう」と同

僚と富士登山をしてきました。

15 年ぶりに登った富士山は世界

遺産への登録と時代の変化を受

けて様変わりをしていました。

変化点は

・マイカー規制により登山口へはバスでのアクセスへ

・トイレはチップ式有料制に。しかしバイオトイレの

導入により山肌への垂れ流しが無くなり美観向上。

・山ガールの増加

といくつかありますが、一番の変化は「外国人の観光・

登山者の増加」です。5合目付近のバス駐車上には大型

バスで乗り付けたツアー参加者(中国、韓国、台湾と

推察)が大挙しており、「富士山」でも「観光ビッグバ

ン」の影響を感じました。どちらかというと、観光客

はアジア人中心、

登山客は欧米人中

心で、山小屋では

英語を話せる大学

生アルバイトが大

活躍でした。

今月は「空の日」

が楽しみです。

(いさむ)

CAB 富士登山隊と御来光

富士山頂上より朝日を望む