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本邦外出身者に対する不当な差別的言動の 解消に向けた取組の推進に関する法律を受け 神戸市における施策の検討(ヘイトスピーチ) 報 告 書 平成29年3月 公明党神戸市会議員団

平成29年3月 公明党神戸市会議員団 - Kobe · 宣活動は、年間300件以上に上っている。特に南関東地方でのデモ参加者数は 時に数百人にも及ぶ大規模なものとなっていた。

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本邦外出身者に対する不当な差別的言動の

解消に向けた取組の推進に関する法律を受け

神戸市における施策の検討(ヘイトスピーチ)

報 告 書

平成29年3月

公明党神戸市会議員団

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目 次

第1章 ヘイトスピーチに関するこれまでの経緯の概要 .................. 1

1.へイトスピーチの増加 .......................................... 1

2.国会や地方公共団体での取組みの開始 ............................ 2

3.法案提出から成立までの経緯 .................................... 3

第2章 ヘイトスピーチの実態 ........................................ 5

1.ヘイトスピーチに関する実態調査結果の概要 ...................... 5

2.ヘイトスピーチ解消法成立後の状況 ............................. 11

第3章 各都市におけるヘイトスピーチの経緯 ......................... 14

1.川崎市における経緯 ........................................... 14

2.新宿区における経緯 ........................................... 18

3.大阪市における経緯 ........................................... 21

4.神戸市における経緯 ........................................... 27

第4章 ヘイトスピーチに関する法律・条例 ........................... 34

1.ヘイトスピーチ解消法の概要と課題 ............................. 34

2.大阪市ヘイトスピーチへの対処に関する条例の概要と課題 ......... 37

第5章 ヘイトスピーチ解消法成立後の国・地方自治体における取組み ... 41

1.国における最近の取組み状況 ................................... 41

2.地方自治体における最近の取組み状況 ........................... 43

3.地方自治体における取組みの今後の方向性 ....................... 48

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第1章 ヘイトスピーチに関するこれまでの経緯の概要 (参考資料)「Q&A ヘイトスピーチ解消法」(2016 年、現代人文社発行)、「人種等を理由とする差別の

撤廃に向けた速やかな施策を求める意見書」(2015 年 5 月 7日、日本弁護士連合会)

ヘイトスピーチの経緯については、「Q&A ヘイトスピーチ解消法」(2016 年、

現代人文社発行)が詳しく、これをもとに整理を行う。

1.へイトスピーチの増加

主に在日コリアンに対するヘイトスピーチは、戦前から戦後も日常的に行わ

れてきたとされているが、特に 2000 年代半ばごろから、インターネット上での

ヘイトスピーチが広がった。

平成 19(2007)年1月に「在日

特権を許さない市民の会」(在特会)※が結成されたことを皮切りに、ヘ

イトデモ・街宣活動が路上で恒常

的に行われるようになった。

平成 25(2013)年初頭には、東

京新大久保と大阪鶴橋という東西

の代表的なコリアタウンで、拡声

器を使い日章旗や旭日旗とともに

プラカードを掲げて練り歩くデ

モ・街宣活動が毎週末のように行われた。

「ヘイトスピーチに関する実態調査報告書」(2016 年、(公財)人権教育啓発

推進センター)によると、ヘイトスピーチを伴うデモ等を行っていると報道等

で指摘されている団体が平成 24(2012)~平成 27(2015)年に行ったデモ・街

宣活動は、年間 300 件以上に上っている。特に南関東地方でのデモ参加者数は

時に数百人にも及ぶ大規模なものとなっていた。

平成 25(2013)年 10 月には、京都朝鮮第一初級学校事件※について、在特会

らの言動は人種差別撤廃条約の定める人種差別にあたり、表現の自由の保障の

範囲外であるとし、損害賠償と校門から 200m以内での街宣を禁止する京都地裁

判決が出された。(平成 26(2014)年 12 月の最高裁判決により確定している。)

※京都朝鮮第一初級学校事件

「在日特権を許さない市民の会」(在特会)・「主権回復を目指す会」(主権会)・「チーム

関西」に所属する活動家らが、京都朝鮮第一初級学校による勧進橋児童公園の不正占用に

抗議するとして、平成 21(2009)年 12 月 4 日に同校校門前で抗議街宣活動を行い、抗議者

側が威力業務妨害罪、朝鮮学校側が都市公園法違反に問われた事件。

※「在日特権を許さない市民の会」

同会の公式サイトによると、日本国内に居住

する在日韓国・朝鮮人が特別永住資格や様々な

経済的便宜などの特権(在日特権)を不当に得

ているなどとし、その撤廃を目標に街宣・デモ・

集会等の活動を展開している。また在日韓国・

朝鮮人以外の外国人に関する政策を始め、歴史

認識問題、日本の核武装論の是非など多種多様

なテーマについて右派的スローガンを掲げ、各

地で「反日的」とみなした個人や団体への街宣・

デモ・集会などを盛んに開催していると活動内

容を説明している。

(出典:ウィキペディア)

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2014 年まで、刑事・民事のいずれについても確定判決が下りており、朝鮮学校側は、都

市公園法違反により罰金 10 万円の略式命令を受け、在特会等は、構成員等が刑事事件とし

て侮辱罪・威力業務妨害罪・器物損壊罪について執行猶予付の有罪判決を受けたほか、朝

鮮学校側提訴の民事訴訟においては、朝鮮学校による迷惑行為や近隣住民とのトラブルの

存在が事実認定されたものの、「公園の不法占拠を糾弾するだけでなく、在日朝鮮人を劣悪

な存在であるとして嫌悪・蔑視し」「公益を図る目的であったということはできない」とし

て街宣の禁止と計 1226 万円 3140 円の賠償命令を受けた。(出典:ウィキペディア)

2.国会や地方公共団体での取組みの開始

平成 26(2014)年4月には、自民党を除く超党派の「人種差別撤廃基本法を

求める議員連盟」が設立された。

同年7月には、京都朝鮮第一初級学校事件の一審判決を支持する大阪高裁判

決が出され、それを受けて大阪市長が市としてヘイトスピーチ対策を検討する

と表明している。

さらに同月末には、国連自由権規約委員会の日本政府報告書の審査があり、

ヘイトスピーチの法規制を求める勧告が出された。続く8月には国連人権差別

撤廃委員会の審査で、ヘイトスピーチ、ヘイトクライムの法規制のみならず、

人種差別禁止法制定など包括的な差別撤廃政策を強く求める勧告が出された。

これらの国内外の批判を受け、8月には自民党、9月には公明党にヘイトス

ピーチ問題対策プロジェクトチームが作られた。

また、9月以降、国連勧告を契機として、東京都国立市議会を皮切りに、「ヘ

イトスピーチを禁止する法律の制定を求める」意見書が次々に採択された(2016

年 4 月 11 日現在で 328 地方議会。在日本大韓民国民団中央本部生活局調べ。)。

11 月には、野党が共同で参議院に人種差別撤廃施策推進法案を出す予定とな

ったが、総選挙の関係でとりやめとなった。

※公明党ヘイトスピーチ問題対策プロジェクトチーム

特定の民族や人種への差別をあおるヘイトスピーチ(憎悪表現)について、公明党の

ヘイトスピーチ問題対策プロジェクトチーム(PT、遠山清彦座長=衆院議員)は 2014

年 9 月 30 日、衆院第 2議員会館で初会合を開き、防止策を検討した。

冒頭、遠山座長は「近年、日本ではヘイトスピーチが大きな社会問題になっており、

国際社会からも厳しい指摘がなされている」と強

調。その上で、「複雑な要素が入った難しい問題だ

が、人権を重視する公明党の立場から、さまざまな

観点で検討を進めたい」と述べた。

同 PT は、有識者や専門家と意見交換を重ねた上

で、年内に PT としての考え方をまとめ、政府へ提

言する予定とした。

(出典:公明新聞:2014 年 10 月 1 日付)

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3.法案提出から成立までの経緯

(1)「人種等を理由とする差別の撤廃のための施策の推進に関する法律案」の

提出

平成 27(2015)年 5月 22 日、民主党、社民党、無所属の議員は、参議院に

「人種等を理由とする差別の撤廃のための施策の推進に関する法律案」を提

出した。

法案の概要について、「法案は人種差別撤廃条約を受けた基本法という位置

付けであり、その中に人種差別等の行為の1つとしてヘイトスピーチを盛り

込み、これを禁止する内容となっている。刑事罰は入っておらず、あくまで

も禁止される行為として明記した」(民主党議員)内容となっている。また、

当初は与野党全会派共同提出を目指したが、趣旨には賛同しても共同提出に

は至らなかった党派もあった。

8月6日、同法案は参議院法務委員会で審議入りした。

自民党は、人種差別の対象が広すぎることと禁止条項は表現の自由の観点

から慎重する必要があると反対した。公明党は、外国等の出身者に対するヘ

イトスピーチに特化した理念法を提案したが、自民党の一部はそれにも消極

的でまとまらず、採決に至らなかったが継続審議となった。

一方、公明党ヘイトスピーチ問題対策プロジェクトチームは7月に、内閣

府と法務省に要望書を提出し、「人権教育の強化や啓発活動を通じた社会全体

の人権意識の向上」「社会生活全般における人種差別の実態調査の実施」「実

態調査の結果を踏まえた人種差別の解消に向けた基本法等の整備を含む実効

性ある人種差別撤廃政策の策定」を求めた。これを受けて法務省は 11 月から

ヘイトスピーチの実態調査に着手した。

平成 28(2016)年1月 15 日、大阪市で「大阪市ヘイトスピーチへの対処に

関する条例」が成立し、同年3月 22 日、参議院法務委員会で野党法案に関す

る参考人質間が行われた。

(2)「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関

する法律案」の提出

自民党・公明党は、平成 28(2016)年4月8日対案として、参議院に「本

邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法

律案」を提出した。

NGOからの共同の修正要請や日弁連などから声明も出され、与野党で集

中的な議論が行われた結果、5月 12 日一部修正のうえ、参議院法務委員会に

おいて全会派一致で附帯決議を付けたうえで可決された。以後 13 日に参議院

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本会議での可決、24 日に衆議院本会議で費成多数で可決成立した。

さらに5月 26 日参議院法務委員会では「ヘイトスピーチの解消に関する決

議」を全会派一数で採択し、「個人の尊厳を著しく害し地域社会の分断を図る

かかる言論は、決して許されるものではない」「ヘイトスピーチ解消及び被害

者の真の救済に向け、差別のない社会を目指して不断の努力を積み重ねてい

くこと」などが宣言された。

6月3日、解消法は施行された。

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第2章 ヘイトスピーチの実態

(参考資料)「ヘイトスピーチに関する実態調査報告書」(2016 年、(公財)人権教育啓発推進センター)

1.ヘイトスピーチに関する実態調査結果の概要

法務省では、平成 27(2015)年度に「ヘイトスピーチに関する実態調査」を

実施した。

本調査では、まず、我が国におけるこの種の問題の背景として、我が国にお

ける外国人の現況及び人権課題、外国人の人権に関する啓発活動等の状況のほ

か、最近の外交関係を概観し、これらを踏まえつつ、ヘイトスピーチを伴うと

されるデモ・街宣活動の発生状況、その際に行われている発言内容、メディア

における報道状況、地方公共団体が実施した調査の概要等、客観的現象面に関

する事項を調べた上で、ヘイトスピーチの現状や推移等に関する分析・評価を

行うことにより、その結果が今後の人権擁護施策検討の基礎資料として活用さ

れることを目的として調査を実施された。

なお、ヘイトスピーチについては、未だ確立した定義がないとされており、

本調査において、具体的にどのような言動をもってヘイトスピーチに該当する

のか断定することは困難であるが、法務省人権擁護局がヘイトスピーチに関す

る啓発活動で配布しているポスターやリーフレットには、「特定の民族や国籍の

人々を排斥する差別的言動」が、人々に不安感や嫌悪感を与えるだけでなく、

人としての尊厳を傷け、差別意識を生じさせることになりかねず、許されるも

のでないとしている。この点を勘案し、本調査では、ヘイトスピーチについて

は定義付けが困難であるものの、「特定の民族や国籍の人々を排斥する差別的言

動」が含まれることを念頭に置きつつ、調査が実施された。

以下に「平成 27 年度法務省委託調査研究事業 ヘイトスピーチに関する実態

調査報告書」((公財)人権教育啓発推進センター、平成 28(2016)年3月)より

概要を掲載する。

(1)デモ等の発生状況に関する調査

ア.デモ等の発生件数

インターネット上の公開情報等に基づいて、ヘイトスピーチを伴うデモ

等を行っていると指摘されている団体が平成 24(2012)年4月から平成 27

(2015)年9月までの間に行ったデモ等の発生件数及びその推移を調査し

た(ヘイトスピーチを伴うデモ等のすべてを網羅的に調査することは困難

であり、あらゆるヘイトスピーチのデモを調査したものではない。)。

法務省が公開情報等から発生件数を調査し、その調査資料を人権教育啓

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イ.デモ等で掲げられているテーマ

そもそもヘイトスピーチの概念それ自体が確立していないが、デモ等が

行われている理由や背景等を明らかにするため、インターネット上の公開

情報等に基づき、 ア.で把握したデモ等で掲げられているテーマのうち、

一般にヘイトスピーチであると指摘されることの多い内容、すなわち、

① 特定の民族等に属する集団を一律に排斥する内容(例えば、一律に「日

本から出て行け」など)

② 特定の民族等に属する集団の生命等に危害を加える内容(例えば、「皆

殺しにせよ」など)

をテーマとして掲げているものを抽出して、その割合を調査した。

前記①及び②の割合については、平成 24(2012)年 14 件約 5.9 パーセン

ト、平成 25(2013)年 20 件約 5.8 パーセント、平成 26(2014)年 10 件約

2.6 パーセント、平成 27(2015)年2件約 1.1 パーセントであり、減少す

る傾向にある。

デモ等の大多数は、「拉致問題」などの外交問題に関する一定の政治的主

張を掲げるものであり、前記の①ないし②をテーマとしているものはごく

少数であった。 ただし、デモ等のテーマは、実際にデモ等の現場で発せら

れた言動とは必ずしも一致するものではないことに留意する必要がある。

(2)デモ等における発言内容その他

デモ等の様子を撮影した動画が多数投稿されている動画投稿サイトにおい

て、一定の検索ワードに基づいて、デモ等 72 件分の動画(動画再生時間合計

約 98 時間)を検索した上、それらの動画における発言の文字起こしを行い、

音声として確認可能な範囲で、デモ等においてどのような発言がなされてい

るのかを調査した。

前記のとおり、へイドスピーチの概念それ自体が確立していないが、一般

にヘイトスピーチであると指摘されることの多い内容、すなわち、前記①②

に加え、

③ 特定の民族等に属する集団を蔑称で呼ぶなどして誹謗中傷する内容

(例えば、 「チョン」「ゴキブリ」など)

の発言を抽出した上、その出現状況及びその推移を調査した。

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これら①②及び③に該当するものとして、総数 1,803 回であり、そのうち、

①に該当するもの 1,335 回(約 75.2 パーセント)

②に該当するもの 216 回(約 12.0 パーセント)

③に該当するもの 232 回(約 12.9 パーセント)

であった。

そもそも、前記の①ないし③に該当しない政治的主張に関する発言も多数

認められるが、文脈等によって前記の①ないし③に該当するのか否かの判別

が容易でないものも少なくないことに留意する必要がある 。

それぞれの年毎の動画再生時間との比較では、(出現頻度そのものとはいえ

ないが)

平成 24(2012)年 約 3.2 分に1回

平成 25(2013)年 約 2.6 分に1回

平成 26(2014)年 約 3.2 分に1回

平成 27(2015)年 約 6.3 分に1回

となっており、前記の①ないし③に該当する発言の割合は、平成 27(2015)

年になって減少している傾向にあると読み取れる。とはいえ、平成 27(2015)

年の動画にも、前記の①ないし③に該当する発言が相当数認められ、沈静化

したと言える状況にはない。

より直接的で過激な内容となることの多い前記の②に該当する発言の割合

も、平成 26(2014)年以降、減少している。

その他として、大人数のデモ等が減る傾向が見られる。

(3)デモ等の発生件数及び発言内容に関する考察

前記(1)及び(2)の減少傾向に影響を与えた要因の可能性のあるもの

として、京都朝鮮第一初級学校事件の民事判決の経過、ヘイトスピーチに対

する社会的関心の高まりがあると考えられる。

京都朝鮮第一初級学校事件の民事判決としては、平成 26(2014)年 7 月 8

日に大阪高等裁判所控訴審判決が出され、一審判決に続いて、デモ参加者側

が敗訴しているところ、前記のとおり、実際に、平成 26(2014)年第4四半

期からデモ等の発生件数は減少に転じている。

また、平成 26(2014)年半ばには、前記の民事判決等も相まって、大きく

社会的関心を集めることとなった結果、デモ等を行う団体が過激な言動をそ

れ以前よりも控えるようになった可能性もある。前記のとおり、実際に、動

画再生時間との比較における前記①ないし③に該当する発言の割合や、過激

な内容となることの多い前記②の割合が減少している。また、デモ等を行っ

ている団体も、平成 26(2014)年半ば頃から、参加者に事前に「死ね、殺せ

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等の文言は厳禁である。」旨の呼びかけを行うようになっている。

(4)その他(地方公共団体に関する調査)

過去に地方公共団体が実施した、外国人住民を対象とした調査の多くは多

文化共生施策の推進に関するものであるが、質問項目の一部に差別等の人権

問題を問うものは多く見られ、差別的な言動等を受けた経験があると回答し

た者の割合は決して低いとは言えない傾向がある。

へイトスピーチに関して独自の施策等の取組を行っている地方公共団体の

数はまだ少ないが、へイトスピーチが行われている地域の地方公共団体のう

ち半数程度では、地方議会が国に対してヘイトスピーチに対する法整備など、

実効性ある対策を求める意見書を提出している状況にある。

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2.ヘイトスピーチ解消法成立後の状況

(1)ホームページや YouTube 動画等による調査結果

ヘイトスピーチ解消法成立後のデモ・街宣活動等の状況について、ヘイト

スピーチを行っているとされる団体のホームページや YouTube 動画等により

調査を行った。

全てのデモ・街宣活動等の状況を把握することは困難であったが、実際に

行われたデモ・街宣活動等の一部を表にまとめた。

川崎市や大阪市では、主催者がヘイトスピーチ解消法や条例を意識した注

意事項をホームページに掲載しており、ヘイトスピーチに対する一定の抑止

効果が表れている。

東京都新宿区や名古屋市の事例では、特に注意事項等の掲載は見受けられ

なかった。

表 ヘイトスピーチ解消法成立後のデモ・街宣活動等の状況

デモ主催者の発表内容及びデモの状況・発言等 備 考

H28.6.5

川崎市

川崎発!日本浄化デモ第三弾!

『ヘイトスピーチ解消法』は反日勢力の罠!

【主催】

瑞穂尚武会

【注意事項(抜粋)】

・少しの妨害行為でも 110 番!携帯をお持ちでな

い方は大声で助けを求めてください。

・但し絶対に手を出さない事。我々サイドから逮

捕者等を出したら保守運動すべてが挫折する事

を自覚してください。

・公園に入ったら警察の指示に従う事

・絶対に違法行為はしない。皆さんは誇りある保

守です。勿論、ヘイトスピーチ解消法にも従って

ください。【悪法も法なり】です。

(資料:行動する保守運動 HP)

【デモの状況・発言等】

デモに反対する市民が取り囲んで路上に座り

込んだ。デモ隊は 10mほど進んだが、反対する市

民に阻止されてそれ以上進めないまま、警察の説

得に応じて中止を決めたとみられる。

(資料:朝日新聞 DIGITAL)

5 月 24 日、国会で「ヘ

イトスピーチ解消法」

が成立し、同月 31 日に

川崎市は、ヘイトデモ

を行う団体(瑞穂尚武

会・主催)に対して公

園使用申請を不許可と

し、さらに 6 月 2 日に

は横浜地裁川崎支部が

社会福祉法人青丘社を

起点に半径 500 メート

ル以内にヘイトデモの

接近を禁じる仮処分命

令を決定した。

これを受けて主催者

はデモの場所を変更

し、中原平和公園から

のデモ申請を中原警察

署に提出し、神奈川県

警はこれを許可した。

(資料:ヘイトスピー

チ許さないかわさき市

民ネットワーク HP)

H28.7~9

計 18 回

(予定)

大阪市

ヘイトスピーチ規制粉砕!大阪市役所前街宣

【主催者】

日本人への差別を許さない市民の会

2016 年 7 月 1 日、市

民団体が条例に基づき

12 件の申出を行い、受

理された。今後審議会

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【注意事項(抜粋)】

・チマチョゴリ、人民服、チャイナドレスなど、

誤解を招く服装や奇抜な服装はご遠慮ください。

・過激な内容のプラカードはご遠慮ください。

・大阪市ヘイトスピーチ規制条例により、ヘイト

スピーチに該当すると認定された場合は、大阪市

により氏名を公表されるおそれがありますので、

ご注意ください。ただし、どのような表現活動が

ヘイトスピーチに該当するかは、全く公表されて

いません。

(資料:行動する保守運動 HP)

に送られ、認定、大阪

市として公表する認識

内容、行為者の名前の

公表の是非、拡散防止

措置について審査され

る(現在も審議中)。

(資料:ヘイトスピー

チを許さない大阪ネッ

トワーク HP)

H28.11.17

東京都新

宿区

移民・難民受け入れ断固反対新宿街宣

【主催者】

反グローバリズム保守連合

(資料:朝日新聞 DIGITAL)

【デモの状況・発言等】

「このような非常に危険な犯罪者、反省平和を謳

いながら暴力殺人やり放題のこの鬼畜朝鮮人ど

も、こんなやつらをすべて、すべてね、韓国・北

朝鮮に強制送還するのは、当然の務めでありま

す。」

「我が国もこのような連中を、非常に危険な不法

侵入犯罪者を朝鮮人を銃殺し、そして強制送還す

る権利を持っているんですよ。」

「ナチス朝鮮は日本から出て行け。」

「このキチガイども。朝鮮人は日本から出て行

け。」

(資料:アンチ・レイシズム プロジェクト HP)

(YouTube 動画で確認済み))

H29.2.19

名古屋市

竹島奪還!全国一斉アクション in 名古屋

~ 不法入国・不法滞在する不逞鮮人を叩きだ

せ! ~

【主催】

在日特権を許さない市民の会 愛知支部

【注意事項(抜粋)】

・特攻服など現場にそぐわない恰好はご遠慮くだ

さい。

・撮影が入るため、顔を写されたくない方はサン

グラスなどご持参ください。

・現場責任者の指示に必ず従ってください。

(資料:行動する保守運動 HP)

【デモの状況・発言等】

「人種差別を受けている朝鮮人の皆様。なぜ日本

から出ていかないのですか」

「不逞鮮人は日本から出て行け」

(資料:YouTube)

ヘイトスピーチデモ

が19日に名古屋市内で

計画されている問題

で、日本共産党名古屋

市議団は 15 日、河村市

長に対し、集合場所の

下園公園の使用を認め

ないよう緊急の申し入

れを行った。

応対した市担当者は

「他の自治体の対応を

見て判断する」と述べ

るにとどまっている。

(資料:日本共産党名

古屋市会議員団 HP)

Page 15: 平成29年3月 公明党神戸市会議員団 - Kobe · 宣活動は、年間300件以上に上っている。特に南関東地方でのデモ参加者数は 時に数百人にも及ぶ大規模なものとなっていた。

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(2)警察庁における見解

警察庁では、「治安の回顧と展望」(平成 28 年版、警察庁警備局)において、

右派系市民グループをめぐる動向を発表している。

これによると、ヘイトスピーチ解消法が施行された以降、右派系市民グル

ープの一部の取組では、過激な言動を控えようとする動向がみられるとの見

解を示している。

右派系市民グループをめぐる動向

平成 28 年中、「在日特権を許さない市民の会」を始め、極端な民族主義・排外主義的

主張に基づき活動する右派系市民グループは、韓国や北朝鮮との問題等を捉えた徒歩デ

モや街頭宣伝活動等に各地で取り組み、全国における徒歩デモは約 40 件(10 月 31 日現

在)行われた。また、反対勢力が、参加者による過激な言動について、「ヘイトスピーチ」

であると批判するなどして、抗議行動に取り組んだ。

このような情勢の下、28 年6月、本邦外出身者に対する不当な差別的言動が許されな

いことを宣言し、その解消に向けた取組の基本理念を定めることなどを内容とする本邦

外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律(以下「ヘ

イトスピーチ解消法」という。)が施行されるなど、ヘイトスピーチに対する社会の関心

が一層高まっている。

警察では、ヘイトスピーチ解消法を踏まえ、警察職員に対する教養を推進するととも

に、法を所管する法務省から各種広報啓発活動等への協力依頼があった場合には、これ

に積極的に対応するほか、ヘイトスピーチといわれる言動やこれに伴う活動について違

法行為を認知した際には、厳正に対処するなどにより、不当な差別的言動の解消に向け

た取組に寄与している。

ヘイトスピーチ解消法が施行された以降、右派系市民グループの一部の取組では、過

激な言動を控えようとする動向がみられる。

右派系市民グループは 29 年中も引き続き、ヘイトスピーチ解消法の施行やヘイトスピ

ーチに対する批判的な論調を意識しつつ、内外の諸問題に敏感に反応し、徒歩デモや外

国公館等に対する抗議行動を通じて、自らの主張を訴えるものとみられ、その過程で、

反対勢力とのトラブルから生じる違法行為の発生が懸念される。

出典:「治安の回顧と展望」(平成 28 年版、警察庁警備局)

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第3章 各都市におけるヘイトスピーチの経緯

1.川崎市における経緯 (参考資料)「川崎市におけるヘイトスピーチの抑制と多文化共生社会構築のとりくみ」(萩原周子

川崎市職員労働組合)

(1)川崎の在日コリアン集住地域の成立

1920 年代、植民地政策と川崎の工業化の発展が重なり、川崎の街には朝鮮

半島出身者が多数集まることとなった。日本の生活が長くなると、家族を呼

び寄せ、大雨が降れば水につかるため「あひる長屋」と呼ばれる住環境の中

で暮らした。

1930 年代になると日本鋼管が京浜製鉄所を建設するなど、大規模工場の労

務者として川崎市臨海部に朝鮮半島出身者がさらに多数集まることとなった。

戦後、工場労務者の多くは帰国したが、さまざまな事情で帰国せず、国内

での居住を継続する人もおり、そこを頼って地方に残っていた朝鮮半島出身

者が集まるという状況も生まれ、川崎の臨海部に在日コリアン集住地域が形

成されていくこととなった。

(2)ヘイトスピーチデモの状況

川崎市でのヘイトスピーチおよびデモは、平成 25(2013)年5月頃から行

われるようになり、当初は川崎駅周辺で実施されていた。

その後、平成 27(2015)年ころからはコリアンタウンへのデモ隊の侵入が

計画されるようになっていった。

川崎市におけるデモの状況

年月日 デモのテーマ等 備考

2013年

5月12日

「反日極左と不逞外国人から川崎

を護るデモ」

※川崎駅周辺での街宣・デモ行動

以降、川崎駅周辺でヘイトスピーチデ

モが繰り返し行われる。

2015年

2月2日

「反日糾弾 in 川崎皇紀2673年」

川崎駅でヘイトデモ参加者が模造刀に

よる傷害事件を起こす。

2015年

3月14日

「反日を許すな!川崎デモ」

※稲毛公園から川崎駅へのヘイト

デモ

2月20日に多摩川河川敷で中学1年生

の男児が遺体で発見され、その後殺害

されたものと判明した事件に脈絡なく

関連付け、「在日コリアン」に対する

誹謗中傷が行われる。

2015年

11月8日

川崎発!日本浄化デモ【反日を許

すな】

富士見公園ふれあい広場から川崎

大師駅へのデモが予定された。

※関東では新大久保以来のコリアタウ

ンそのものを標的にしたルート

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2016年

1月31日

川崎発日本浄化デモ『第二弾!』

【反日を許すな】

2016年

3月20日

維新新党・新風による川崎駅前街

宣活動

※デモ参加者が抗議をする人を殴った

として傷害の容疑で逮捕

2016年6月

5日

川崎発日本浄化デモ『第三弾!』

※当初予定の会場から中原区の公園に

変更。実際にはデモは出発できず、警

察の要請を受けて中止。 (資料)「川崎市におけるヘイトスピーチの抑制と多文化共生社会構築のとりくみ」(萩原周子 川崎

市職員労働組合)

※2015 年 11 月~2016 年 1 月のデモの状況

2015 年 11 月の「日本浄化デモ」では、それまでの行動と異なり在日コリアンの集住

地域を通過するデモコースが設定された。当日は雨天であったことも重なり、集会参加

者は少数、カウンター参加者がはるかに多数だったため、主催者によって事前申請とは

異なるルートでのデモ行進が警察と協議の上実行され、桜本地区にデモ隊が入り込むこ

とはなかった。

その後、同様のデモが 2016 年 1 月 31 日に計画、告知され、実行された。1 月 31 日

のデモは、参加者も 11 月の時の倍の 60~70 人、カウンター行動に参加する人はさらに

前回の数倍となる 1,000 人近くが集まった。デモ隊は当初予定されていたコースをた

どったが、桜本地域の入口にあたる交差点でカウンターのシットイン行動によってかろ

うじて地区への侵入を食い止め、デモコースを変更させた。

しかし、ヘイトスピーチを行いながら当事者の日常生活の場に踏み込もうとする差

別・暴力を、「許可された行動」という理由で警察が保護し、抗議行動の参加者を「道

路交通法に違反している」という理由で強制的に排除した光景は、「多文化共生のまち

かわさき」に厳然と差別が存在していること、そして「権力が差別に加担」したことを

示すものとなった。

(資料)「川崎市におけるヘイトスピーチの抑制と多文化共生社会構築のとりくみ」(萩原周子 川崎

市職員労働組合)

(3)川崎市長による公園使用申請不許可処分

これまで繰り返されたヘイトスピーチデモに対して、市には「公園などの

使用許可を出すのはおかしい」との声も寄せられていたが、同時に「規制す

るのはおかしい、表現の自由・集会の自由の侵害になる」との意見も寄せら

れていた。

平成 28(2016)年 5月 24 日に「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の

解消に向けた取組の推進に関する法律」が成立したことを受け、5 月 31 日市

長は、6月 5日の公園使用許可申請に対し不許可の処分決定を行った。新しく

成立した法を根拠として「当該申請者が、過去において、成立した法で定め

る言動等を行ってきた事実」「今回も同様の言動等が行われる蓋然性が極めて

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高い」ことから、「不当な差別的言動から市民の安全と尊厳を守る」ため不許

可処分とした。

この処分決定については、行政は「差別を許さない」と明確に立場を示す

ことが重要との視点から好意的に受け止められる反応が多かったが、「行き過

ぎ」「(表現や集会の自由という)人権の侵害」「ヘイトスピーチと判断した根

拠・定義は何か」との抗議や反対の声も数多く寄せられた。また、市長の記

者会見等では、このような申請が他の申請者から行われた場合の対応や、他

の施設の利用申請についての対応も問われたが、「川崎市としては、今回の不

許可処分が一律的なものではなく、申請のあった事案ごとに法の趣旨に照ら

して慎重に対応する。」との回答であった。

平成 28 年 5 月 31 日

報道発表資料

公園内行為許可申請の不許可処分に関する市長コメント

昨日、富士見公園ふれあい広場及び稲毛公園に対する6月5日の公

園内行為許可申請について「不許可処分」とし、申請者に通知を発し

ました。

本市は、違いを豊かさとして認め合いながら発展してきた多文化共

生のまちであり、これまで市内でヘイトスピーチデモが行われてきた

ことは誠に遺憾であり、大変残念なことでありました。

今般、「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取

組の推進に関する法律」の成立により、国の意思が明確に示されたこ

とを受け、本市としても、地域の実情に応じた施策を講じるべく様々

な御意見を伺いながら、慎重に検討を重ねた結果、当該申請者が、過

去において、成立した法で定める言動等を行ってきた事実に鑑み、今

回も同様の言動等が行われる蓋然性が極めて高いものと判断し、不当

な差別的言動から市民の安全と尊厳を守るという観点から、このよう

な判断に至りました。

川崎市長 福田 紀彦

(資料)川崎市HP

(4)桜本地区におけるデモ禁止の仮処分決定

桜本を拠点とする社会福祉法人青丘社を債権者として、法人事務所から半

径 500 メートル以内でのヘイトスピーチやヘイトデモを禁止する仮処分を平

成 28(2016)年 5月 27 日、横浜地裁川崎支部に申し立て、6月 2日にデモ行

為禁止の仮処分が決定した。

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仮処分決定書によると、「その人格権の侵害行為が、侵害者らによる集会や

集団による示成行動などとしてされる場合には、憲法 21 条が定める集会の自

由、表現の自由との調整を配慮する必要があることから、その侵害行為を事

前に差し止めるためには、その被侵害権利の種類・ 性質と侵害行為の態樣・

侵害の程度との相関関係において、違法性の程度を検討するのが相当である。

しかるところ、その被侵害権利である人格権は、憲法及び法律によって保

障されて保護される強固な権利であり、他方、その侵害行為である差別的言

動は、上記のとおり、故意又は重大な過失によって人格権を侵害するもので

あり、かつ、専ら本邦外出身者に対する差別的意識を助長し又は話発する目

的で、公然とその生命、身体、自由、名誉若しくは財産に危害を加える旨を

告知し、又は本邦外出身者の名誉を毀損し、若しくは著しく侮辱するもので

あることに加え、街宣車やピーカーの使用等の上記の行為の態様も併せて考

慮すれば、その違法性は顕著であるといえるものであり、もはや憲法の定め

る集会や表現の自由の保障の範囲外であることは明らかであって、私法上も

権利の濫用といえるものである。これらのことに加え、この人格権の侵害に

対する事後的な権利の回復は著しく困難であることを考慮すると、その事前

の差止めは許容されると解するのが相当であり、人格権に基づく妨害予防請

求権も肯定される。」とした。

※2016 年 6 月 5 日のデモの状況

2016 年 6 月 5 日のデモの状況は、11 月、1 月のデモの場合と最も異なったのは警察

の態度であった。

それまでは、抗議行動を行うカウンターの人々に対して、強制的に排除をし、3月 20

日の川崎駅前ではデモ参加者が傷害事件として逮捕者が出るような暴力行為に及んで

も、静止や仲裁を行うことはなかった。

しかし、この日は「不当な差別的言動は許されない」として新しく成立した法が禁止

の対象とする「差別意識を助長する目的で、公然と危害を加える旨を告知したり、著し

く侮蔑したりして地域社会から排除することを扇動する」行為や発言がないかを監視し

ている場面もあった。デモの出発予定時刻には多くのカウンターが集まり、プラカード

やのぼりの文言に対して、「その言葉がすでに禁止対象となっているのではないか」と

声を上げ、デモの出発を阻止しようと路上に座り込むなどし、一時は交通が混乱する状

況もあった。

以前は、「道路交通法違反」を理由に警察が座り込んだ人々を強制的に排除する場面

もあったが、今回は安全のため車道に出ないよう車上から呼びかけるにとどまった。そ

して、主催者に対しては、混乱が生じている中で参加者の安全確保が困難であり、中止

をするよう説得が試みられ、最終的には主催者が「中止」との判断をした。

(資料)「川崎市におけるヘイトスピーチの抑制と多文化共生社会構築のとりくみ」(萩原周子 川崎

市職員労働組合)

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2.新宿区における経緯

(1)新宿区(新大久保)の在日コリアン集住地域の成立

東京都新宿区の大久保や百人町を中心に、戦後のニューカマーにより形成

されたコリアタウンで、「大久保通り」から「職安通り」にかけては沢山の韓

国系商店が軒を連ねている。東京最大、日本でも有数のコリアタウンといわ

れている。

(資料:ウイキペディア)

(2)ヘイトスピーチデモの状況

平成 26(2014)年 9月 18 日東京新聞によると、新宿区新大久保周辺のヘイ

トスピーチの状況は次の通りである。

「地元店主らによると、デモや街宣活動は平成 24(2012)年夏ごろに始ま

り、13 年秋からはみられない。13 年 2 月以降に過激化し、参加者は韓国系の

店の看板を蹴飛ばして「朝鮮人をたたき出せ」「韓流おばさんは恥ずかしくな

いのか」などと在日韓国・朝鮮人への憎しみをあおる言葉を叫んだと。「カウ

ンター」と呼ばれる抗議活動も始まって 13 年6月には衝突が起き、双方から

逮捕者が出た。」

毎日新聞 6 月 16 日(日)配信によると、

「東京都新宿区の JR 新大久保駅周辺で 16 日に行われた在日コリアンの排

除を掲げるデモで、警視庁新宿署は同日、「在日特権を許さない市民の会(在

特会)」会長、高田(通称・桜井)誠容疑者(41)ら 4 人と、対立グループの自

称会社経営、清(せい)義明容疑者(46)ら 4 人の男女計 8 人を暴行容疑で現

行犯逮捕した。在特会などによる一連のデモでの主張は、差別的な表現で憎

悪をあおる「ヘイトスピーチ(憎悪発言)」と呼ばれ社会問題化しており、反

発するグループとの対立も深刻化している。

(略)

公安当局などによると、在特会は 2006 年ごろ設立され、ホームページで会

員数 1万 3000 人超とうたっている。16 日のデモは在特会と異なる団体が主催

していたが、同会のメンバーら約 200 人が参加。これに抗議する参加者約 350

人が取り囲む形となり、あちこちで小競り合いとなった。顔から血を流した

り、路上でうずくまったりする人の姿も見られた。近くで飲食店を営む韓国

籍の 50 代女性は「騒ぎはどんどん過激化しており、怖かった。逮捕者も出て、

今後は沈静化することを願っている」と話した。

在日コリアンの排除を掲げるデモは昨年から定期的に行われてきたが、今

年 2 月ごろからは、デモへの抗議活動も広がっていた。ヘイトスピーチを巡

っては安倍晋三首相も 5 月に参院予算委員会で「一部の国、民族を排除しよ

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うという言動があることは極めて残念だ」と発言していた。」

新大久保におけるデモの状況

年月日 デモのテーマ等

2013 年

1 月 12 日

【東京支部】 韓流にトドメを! 反日無罪の韓国を叩きつぶせ 国民大行

進 in 新大久保

・韓流にトドメを! 反日無罪の韓国を叩きつぶせ 国民大行進 in 新大

久保

・靖国放火犯の引き渡しを拒んだ無法国家韓国に無慈悲な制裁を!

・新大久保を勝手にコリアンタウンにする在日を東京湾に叩き込め!

【主催】

在日特権を許さない市民の会 東京支部

2 月 9 日 不逞鮮人追放!韓流撲滅 デモ in 新大久保

・風紀を乱す5万人の韓国人売春婦を日本から叩きだせ!

・いまだに韓流にハマる日本の汚物=韓流バカも出て行け!

・ゴミ出しルールすら守らない韓国人の店なんていらない!

【主催】

新社会運動

2 月 17 日 【優さん】韓国を竹島から叩き出せ!in 新大久保

3 月 17 日 【東京支部】 春のザイトク祭り 不逞鮮人追放キャンペーン デモ行進

in 新大久保

3 月 31 日 特定アジア粉砕新大久保排害カーニバル!!

4 月 21 日 日本人差別をなくせデモ in 新大久保

5 月 19 日 通名制度の悪用をなくせ!デモ in 新大久保

6 月 16 日 新大久保 桜田祭り!

~ 正義は我にあり! 朝鮮征伐大行進 ~

・今年2月9日に大反響を呼んだ桜田修成主催による新大久保デモ。あ

の感動をもう一度!桜田修成再び新大久保に見参!!

・大阪で起きた日本人を狙った無差別テロを筆頭に、全国各地で頻発す

る在日韓国人による日本人殺傷事件。あまりに無防備な日本人に喝を

入れ、朝鮮征伐の声を高らかに新大久保で国民大行進を実施!

【主催】

新大久保桜田祭り実行委員会

6 月 20 日 ★支援街宣★ 新大久保桜田祭りでの不当逮捕に断固抗議!

6月21日~

27 日7回

★支援街宣★ 「新大久保 桜田祭り」で不当逮捕された同志に声援を!

6月 30 日 在日外国人犯罪者追放デモ in 新大久保

9 月 8 日 東京韓国学校無償化撤廃デモ in 新大久保

9 月 15 日 新大久保清掃活動&バーベキュー

(資料:行動する保守運動 HP)

(3)ヘイトスピーチ解消に向けた東京都の取組について

東京都におけるこれまでのヘイトスピーチへの対応及び考え方は、以下の

とおりである。

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【ヘイトスピーチへの対応】

○ 平成 26(2014)年 8 月 舛添都知事が安倍首相にヘイトスピーチの規

制検討を要請

○ 平成 27(2015)年 6 月 都議会「外国人の人権が十分尊重されること

を求める意見を国へ提出

○ 平成 28(2016)年 9 月 法務省人権擁護局に対して「ヘイトスピーチ

対策法に関する要望」を東京都、中央区、新宿区、神奈

川県、川崎市、福岡県、福岡市の7つの地方公共団体の

人権担当部局の連名で実施

○ 平成 28(2016)年 9月 法務省ヘイトスピーチ対策専門部会へ参加

【ヘイトスピーチに対する考え方】

○東京都人権施策推進指針(平成 27 年 8 月)

・「外国人」の人権の中で、「ヘイトスピーチは、一人一人の人権が尊重

され豊かで安心して生活できる成熟した社会を実現する観点からあっ

てはならないこと」と記載

・ヘイトスピーチに対する東京都や国の取組を紹介

○都議会における小池都知事答弁(平成 28 年 10 月)

・「世界の中で輝き続ける東京であるためには、外国人の人権、当然尊重

されるべきもの。特定の民族や国籍の人々を排斥する差別的言動、い

わゆるヘイトスピーチは許されるものではない。」

・「平成 28 年 6 月、いわゆるヘイトスピーチ対策法が施行。このことも

踏まえ、引き続き国としっかり連携しながら、啓発活動などの取組を推

進して、多様性が尊重され、温かく、優しさに溢れる都市、つまり『ダ

イバーシティ』を実現してまいりたい。」

(資料:平成 29 年 2 月 6日、東京都総務局人権部)

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3.大阪市における経緯 (参考資料)「憎悪表現(ヘイトスピーチ)」に対する大阪市としてとるべき方策検討部会資料」

(1)大阪市内の「憎悪表現(ヘイトスピーチ)」等の状況

大阪市において行われた街宣活動、デモ行進等は、平成 25(2013)年 2 月

~平成 26(2014)年 5 月の期間、鶴橋において4回計画され、うち3回が実

行された。また、鶴橋以外での開催は、93 件(平成 25(2013)年 2月 1日~

平成 26(2014)年 9月 23 日まで)であった。

大阪市内の「憎悪表現(ヘイトスピーチ)」等の状況について

街宣活動、デモ行進等に関する現状

1【鶴橋でのデモ及び街宣活動等の状況について】

回 実 施 日 場 所

備 考 デモコース 街宣場所

1 平成 25 年(2013)

2 月 24 日(日)

真田山 公園→ 鶴橋

周辺→小橋公園

JR鶴橋駅高架

デモ、街宣

2 平成 25 年(2013)

3 月 31 日(日)

愛染公園→御堂筋 JR鶴橋駅高架

街宣、デモ

3 平成 26 年(2014)

4 月 19 日(土)

JR 鶴橋駅高架下 街宣

※当日中止

4 平成 26 年(2014)

5 月 18 日(日)、

22 日(木)

JR 鶴橋駅高架下 街宣

2【鶴橋以外での開催】

93 件(平成 25 年 2 月 1日~平成 26 年 9 月 23 日まで)

・主な開催場所 デモ行進:御堂筋(心斎橋~難波)

街宣活動:難波(なんば高島屋前、千日前アムザ前、韓国領事館前)

梅田(梅田ビックカメラ前、阪急百貨店前)

※「憎悪表現」(ヘイトスピーチ)だけでなく、様々なテーマで実施されているものを

含む。

※インターネット上で得られた情報を基に作成しており、全てを把握したものではな

い。 (資料)「憎悪表現(ヘイトスピーチ)」に対する大阪市としてとるべき方策検討部会資料」

(2)大阪市人権施策推進審議会への諮問

大阪市人権施策推進審議会は、平成 26(2014)年 9 月 3 日、大阪市人権尊

重の社会づくり条例第 5条第 1項の規定に基づき、大阪市長から「『憎悪表現

(ヘイトスピーチ)』に対する大阪市としてとるべき方策について」の諮問を

受けた。

「ヘイトスピーチ」については、京都朝鮮学校に係る大阪高裁の判決や国

連の人種差別撤廃委員会の勧告などもあり、国内だけでなく、国際的にも注

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目されている重要な課題であること、また、在日韓国・朝鮮人の方が多く住

む大阪においてヘイトスピーチが行われており、大阪市人権施策推進審議会

として市民の人権を擁護する観点から検討が必要であった。

諮問を受け、「ヘイトスピーチ」に関しては、憲法で保障されている「表現

の自由」との整合性や、行政が行い得る措置等について、憲法また行政法等

の観点からの検討も必要であること、また具体的な方策を専門的に検討し、

集中した議論を行う必要もあることから、大阪市人権施策推進審議会規則第 4

条第 1 項に基づき審議会に方策検討部会を設置し、検討を進めることとなっ

た。

検討部会では、大阪市内の「憎悪表現(ヘイトスピーチ)」等の状況、京都

朝鮮学園に関する在特会の街宣活動にかかる裁判の京都地裁判決(平成 25

(2013)年 10 月7日)および大阪高裁判決(平成 26(2014)年7月8日)を

踏まえ、1.目的(保護法益)をどうするか、2.憎悪表現(ヘイトスピー

チ)の定義をどうするか、3.規制的な措置及び救済的な措置、4.措置の

手続の枠組みを論点とすることとなった。

また、憎悪表現(ヘイトスピーチ)によって被害にあったと主張している

団体(NPO 法人コリア NGO センター)および街宣行動等を行っている側の団体

(在特会)からのヒアリングも実施し検討が進められた。

「憎悪表現(ヘイトスピーチ)」に対する大阪市としてとるべき方策を

検討するにあたっての論点(試案)

1 目的(保護法益)をどうするか

市民の人権擁護:被害を受けた市民又は市民の属する集団の擁護

(論点と課題)

・本市が取り組むとするのであれば、国(法務局)が運営する人権侵害救済制度

(人権侵犯事件)を補完するものとして、本市が基礎自治体として市民の人権

を擁護する観点から取り組むものという整理が必要ではないか

・表現発信者(加害者)に対する措置よりも、人権侵害を受けた市民等を支援す

る仕組みづくりが中心と考えてよいか

2 「憎悪表現」の定義をどうするか

○対象者、意図・目的、表現の内容

上記のいずれもが次の要件に該当する場合と考えてよいか

(論点と課題)

①「対象者」の例 人種、民族、思想信条、性別、社会的身分、門地、障害、疾病又

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は性的指向等属性を有する個人又は集団

・「人種差別」だけに限定する場合の合理的理由をどう説明するか

②「意図・目的」の例 社会からの排除や権利・自由の制限を目的とする行為であり、

単なる批判や非難は対象外

・一定の集団に属する者の全体に向けられたものについても、個人の具体的な損

害の発生の有無を問わず対象とするかの検討が必要ではないか。訴訟を提起す

る場合、具体的な損害が発生していない場合訴えの利益がないとして門前払い

になる可能性が大きい

③「表現の内容」の例

相当程度の侮蔑、誹謗中傷及び威嚇、脅威を感じさせるもの

・いわゆる「ヘイト性」を何で、どう量るのか

・「侮蔑的」「誹謗中傷」「威嚇的」でないものは対象外と考えてよいか

○表現の場所、方法など

次のとおりに考えてよいか

公共の場所(道路、公園、施設等)での行為

デモ、街宣

ビラの配布

ポスター、幕等の掲出

不特定多数の者の閲覧等

新聞、雑誌

インターネット動画サイト

DVD 等記録媒体の配布

(論点と課題)

・不特定多数の者に向けられた行為を対象とし、限定されたメンバーだけの集会等

は対象外と考えよいか

・インターネットについては、一自治体として、プロバイダーに対する削除指示等

の規制の実効性を上げることは事実上困難である

3 措置の種類

○規制的な措置(効果が間接的なものも含む)

・説示・勧告〔表現発言者に対する改善勧告〕

・表現発信者に対する本市施設の利用制限

・要請〔実効的対応ができる者に対し、必要な措置を要請〕

・通告〔関係機関に情報提供し、措置の発動を要請〕

・認識等の公表〔市の認識、表現発信者、行為の骨子内容の公表〕

○救済的な措置

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・援助〔関係機関の紹介、法律上の助言、訴訟費用の支援 など〕

・調整〔当事者間の調整〕

・告発〔犯罪に該当すると考えられる場合には刑事訴訟法による告発〕

・啓発〔人権尊重に対する理解を深めるための働きかけ〕

(論点と課題)

「規制的な措置」について

・現行法制度の下では表現の自由の規制につながるおそれ等があり、それぞれの措

置について慎重な検討が必要ではないか

・本市施設の利用制限については、地方自治法との抵触の整理を行い、そのうえで

各施設の条例改正(不許可理由の明文化)について検討することが必要ではない

「救済的な措置」について

・国等ですでに実施している措置との関係整理、及び実効性の確保について、個別

の措置ごとに課題整理することが必要ではないか。

・支援を行う場合、公益上の必要性についての検討が必要ではないか

・特に、民事訴訟費用の貸付など金銭を伴う措置の場合、その必要性や妥当性、制

度の枠組みなどを整理し、住民訴訟リスク低減のための検討を行うことが必要で

はないか

・民事訴訟を活用する場合、特定の個人への損害を特定しづらい場合の対応につい

て整理検討が必要ではないか

4 措置の手続の枠組み

○申請主義

すべての事例を捕捉することは困難なため申請主義を基本としてよいか

(論点と課題)

・委員会の職権による調査を実施することも可能とするのか

○第三者委員会による審査

「合議制の第三者委員会(仮称)(以下、「委員会」という)」を設置し、委員会が

個別の事案を調査・審議し、委員会の判断を受けて大阪市長が大阪市としての対応

を決定する枠組みでよいか

(論点と課題)

・当事者双方(特に表現発信者)に調査に応じる義務を課すことについては、表現の

自由の保障の観点から困難ではないか

・対象者からは委員会の調査への積極的な協力を期待できるが、表現発信者からは、

たとえ任意のものであっても、こうした調査に応じること自体が負担であり表現

の自由の制約であるといった主張がされるおそれがあるのではないか

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・委員会及び市長の判断は公権的判断として拘束力をもつものではないので、表現

発信者が協力に応じず、判断が下せない場合があるのではないか

(資料)「憎悪表現(ヘイトスピーチ)」に対する大阪市としてとるべき方策検討部会 第1回資料」

(3)大阪市人権施策推進審議会答申

審議会は、検討部会での議論を踏まえ、平成 27(2015)年2月 15 日に大阪

市長に対し「ヘイトスピーチに対する大阪市としてとるべき方策について」

答申を行った。

答申では、基本的な考え方として、「大阪市では、在日韓国・朝鮮人をはじ

め多くの外国人が居住している中、市内において現実にヘイトスピーチが行

われているといった状況にあり、大阪市は、市民の人権を擁護すべき基礎自

治体として、ヘイトスピーチに対して独自で可能な方策をとることで、ヘイ

トスピーチは許さないという姿勢を明確に示していくことが必要である。」と

した。

ヘイトスピーチの定義については、下記の①から③までの要件の全てに該

当する表現行為とすることが適当であるとした。

また、ヘイトスピーチに対してとるべき措置の内容、措置をとるにあたっ

ての手続についても示された。

ヘイトスピーチの定義

① 対象者

人種又は民族に係る特定の属性を有する個人又は集団

② 目的

目的が次のいずれかであること

ア 社会からの排除を目的とするものであること

イ 権利・自由の制限を目的とするものであること

ウ 明らかに憎悪若しくは差別の意識又は暴力を扇動することを目的とするもので

あること

③ 表現の内容及び場所・方法

表現内容が対象者を相当程度侮蔑し若しくは誹謗中傷するもの又は対象者に脅威

を感じさせるものであり、かつ、一般聴衆が受動的に内容を知りうるような場所や

方法によって表現されるものであること

(4)「大阪市ヘイトスピーチへの対処に関する条例」の制定

市は、審議会の答申を踏まえ、条例案を策定し、平成 27(2015)年5月 22

日、市議会に条例案を提出した。

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平成 27(2015)年6月 10 日に条例案は一旦継続審議となったが、平成 28

(2016)年1月 18 日、「審査会委員の委嘱に係る市会同意の追加」「訴訟等の

支援についての規定削除」「国の法制度が行われた場合の措置についての附則

への追加」について条例案を修正のうえ、ヘイトスピーチの申出や、大阪市

の行う拡散防止措置・認識等の公表に関する規定の施行期日については、後

日市長が定めることとして「大阪市ヘイトスピーチへの対処に関する条例」

が公布(一部施行)された。

その後、平成 28(2016)年7月1日、「大阪市ヘイトスピーチへの対処に関

する条例施行規則」が施行され、「大阪市ヘイトスピーチへの対処に関する条

例」が全面的に施行となった。

(5)「大阪市ヘイトスピーチ審査会」

大阪市ヘイトスピーチへの対処に関する条例に基づき設置された「大阪市

ヘイトスピーチ審査会」では、これまで6回開催され現在も審査が行われて

いる。

第1回(平成 28(2016)年 7月 25 日) 条例に基づくヘイトスピーチへの

対処に関する申し出件数 新規 13 件

第2回(平成 28(2016)年 8月 29 日) 新規 5件、継続審査 13 件

第6回(平成 28(2016)年 12 月 19 日) 新規 2 件、1 件取り下げ、継続

審査 17 件

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4.神戸市における経緯

(1)ヘイトスピーチデモの状況

神戸市でのヘイトスピーチに係るデモ・街宣活動は、主に元町駅前、東遊

園で実施されていた。

ヘイトスピーチに係るデモと想定されるものを下表にまとめたが、ヘイト

スピーチが実際に行われたかどうかの確認は行っていない。

神戸市におけるデモの状況

年月日 デモのテーマ等 備考

2013年

3月17日

在日特権にメスをいれろ!周知街宣 in 三ノ宮

【主催】

在日特権を許さない市民の会 兵庫支部

【説明】

在日特権や入管特例法を主なテーマとしますが喋る内容は在日特

権に関与する内容なら基本的に自由とします。我々がなぜ在日特

権を許さないのか?その根本にあるものは排外主義でも人種差別

でもなく、道理のあるきちんとした理由があり、入管特例法によ

って認められた特別永住資格なんてものは本来認めてはいけない

もので、けれども日本は今までそれを認めてしまったツケが本来

なら強制送還される筈の在日韓国朝鮮人が年間に5000人逮捕され

るという形で顕著に出ている。これ以上未来の日本に在日特権を

残さぬよう、入管特例法廃止に向けて大きく声を上げていきまし

ょう!

2014年

7月12日

犯罪を犯す不逞鮮人は即刻国外退去にせよ!これ以上の在日特権

を許すな!街宣 in 元町

【主催】

在日特権を許さない市民の会 兵庫支部

【説明】

今回は不逞鮮人という形で在日朝鮮人、韓国人に限定したテーマ

にしておりますが、この日本に暮らす外国人の中では特別永住者

も含めたら圧倒的に犯罪率の高い民族であり、来日外国人のみな

ら支那人のほうが多いのですが、それでも2番目に高い民族とな

っているわけです。

多くの日本国民は我が国に仇なす不逞な外国人をわざわざ我々の

税金まで投入して面倒を見たいなんて思っている人間は反日日本

人を除けばほぼ皆無の筈です。しかし、今の日本では入管特例法

を無くすことが出来ないままの現状が続いており、犯罪を犯す不

逞鮮人が後を絶たず、治安悪化の要因となっております。

こういった現状をいい加減打破するためにも、在特会の解散方法

を交えながら問題提起していきます。

2014年

8月23日

日韓断交!媚中、日朝友好粉砕!特アの関わりを断ち切れ!デモ

in 神戸

【主催】

在日特権を許さない市民の会 兵庫支部

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【説明】

国連が嫌韓デモを取り締まれとかなにやらほざいていますが、日

韓断交を掲げることのどこに危険性があるのか、付き合いたく無

い民族、国に断交を突きつけることの何がいけないのか。全世界

の人間が差別なく平等に暮らせる社会など絵空事でしかなく、支

那では未だにチベット、ウイグル人が弾圧されている最中、国連

の寝言に一々従い言論弾圧を受けなければいけないのか。日本だ

って日本人が韓国人に殺されているのに、それすらも棚に上げて

非難する国連を誰がまともに相手をするだろうか?今回は日韓断

交に加え、未だに支那に媚売る売国奴、日朝友好を叫ぶ連中を徹

底的に糾弾します。

2014年

11月16日

神戸市長久元喜造よ、大阪市長を見習い堂々と特別永住制度、在

日特権を無くす姿勢を示せ! 街宣 in 元町

【主催】

在日特権を許さない市民の会 兵庫支部

【説明】

ご存知の通り、先月の20日に大阪市長橋下徹と在特会桜井会長

との伝説の会談が行われ、桜井会長の著書『大嫌韓時代』がまた

Amazonで1位になる程の反響を呼ぶ事となりましたが、会談内容

の是非は別として橋下市長が後日、特別永住制度を無くしていく

と明言した事は大きな一歩だと考え、神戸市長である久元喜造に

もその姿勢を見習ってもらい、是非とも神戸に潜む在日問題に徹

底的に向き合って貰う事を望み、そして今一度この在特会の事、

そしてここ神戸が抱える在日問題を周知させる街宣を行います。

橋下市長の言う通り特別永住制度は終焉に向かわねばならず、神

戸市役所は今まで特定の外国人を優遇し続けたツケをそろそろ清

算するときではないでしょうか。

2015年

6月7日

ヘイトスピーチ抑止条例案検討街宣 in 元町

【主催】

在日特権を許さない市民の会 兵庫支部

【説明】

先月22日大阪市の方でヘイトスピーチ抑止を目的とした条例案

を大阪市議会の方に提案したというニュースがありましたが、兵

庫でもそういった議論がされるかどうかはさておき、この街宣を

通じて実際にこういった条例が適応される際どのような問題が起

こってしまうのか、適用することによって果たして日本の治安は

維持されるのかどうかをあらゆる角度から問題提起していこうと

思います。題名にもあります通り、あくまで「検討」街宣ですの

で道路使用許可の範疇に収まる限りではありますが、この街宣を

通じて様々な意見を言って頂いて構いません。

2016年

3月20日

韓国人、朝鮮人から日本人の人権を守れ!ヘイトスピーチ撲滅推

進街宣 in 元町

【主催】

在日特権を許さない市民の会 兵庫支部

【説明】

大阪市で、ヘイトスピーチ抑止条例が可決されました。この条例

が全国でも然るべき形で運用され日本国において殊更、韓国人、

朝鮮人による日本人に対する差別が無くなれば良いと思いますが

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そうならないのが現実です。そこで日本人へのヘイトスピーチや

ヘイトクライムは断固として許さないという姿勢の下、大阪市が

定めるヘイトスピーチの定義に基づいて、ここ神戸でもこの街宣

を通じて様々な角度から問題提起していこうと思います。

2016年

10月30日

「国土守護!」日中日露日韓国交断絶国民大行進 in 神戸

【主催】

在日特権を許さない市民の会 兵庫支部

【説明】

相次ぐ尖閣諸島への支那漁船及び、支那海警、人民解放軍の侵入

2島(色丹、歯舞)返還をちらつかせて日本から経済協力を得よう

としているロシア

そして、10月28日は昭和29年に国際法を無視して韓国の李承晩政

権が竹島を軍事占拠した日です。

日本の国土を侵略しようとしている支那中共、侵略しているロシ

ア、韓国とは友好関係はあり得ない。

犯罪者習近平、プーチン、朴槿恵を告発せよ!

日本政府には任せておけない、合言葉は国土守護!

(資料:行動する保守運動 HP)

(2)神戸市の対応

平成 28(2016)年 10 月 25 日の定例会見の内容を以下に掲載する。

神戸市長は、特定の人種あるいは民族の属性ということに着目をして、感

情的な表現で攻撃をするという行為は、既に法律も制定をされており、法律

の趣旨にのっとって、厳しく批判されなければいけないとしつつ、同時に、

具体的にどう行動をとるのかということになると、言論の自由、表現の自由

と相克する非常に難しい問題であり、そういう観点から、非常に慎重で、い

ろいろな面での観点から検討を加えた対応が求められるとしている。

公園等の公の施設の使用の許可については、そこでどういう議論が行われ

るのかということを事前に把握すべきではないと考えられるため、使用の許

可を一般化するということは大変難しい問題である考えているとしている。

定例会見平成 28(2016)年 10 月 25 日

記者:

市長ご存じかどうかわかりませんけれども、今週の日曜日、30 日に東遊園地を出発

点にしてヘイトスピーチを標榜するような団体がデモ行進をするという計画がありま

す。

これまでも兵庫県内でこの 3 年半の間に四十数件あって、うち、どうも 6 割から 7

割は神戸市内で行われていると思うんですけれども、今年 6月にヘイトスピーチ対策法

ができて、神戸ではその対策法が施行されて以降初めてのデモ行進になると思います。

改めて市長のヘイトスピーチのデモだったり街宣とかに対するその基本的な姿勢と

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いうことと、例えば神奈川県の川崎市などでは、ヘイトスピーチのデモだったり街宣だ

ったりで公園を使うときに、出発の集合地点だったりすることが多いんですけれども、

そこに許可申請する場合には許可を出さないという判断をしたエピソードもあるんで

すが、そういう市の関係施設、公園なりの使用許可をどうするかということ、そのあた

りの検討を始められるという、そういうお考えはありますでしょうか。

久元市長:

言うまでもないことですけれども、いわゆるヘイトスピーチですよね。特定の人種あ

るいは民族の属性ということに着目をして、そこに非常に感情的な表現で攻撃をすると

いう行為は、これはやはり既に法律も制定をされていますから、そういう趣旨にのっと

って、これは厳しく批判されなければいけないと思います。

同時に、具体的にどう行動をとるのかということになると、これはやはり言論の自由、

表現の自由と相克する非常に難しい問題なので、やはりそういうような観点から、非常

に慎重で、いろいろな面での観点から検討を加えた対応が求められると思います。

具体的なお話として、30 日に日韓断交共闘委員会関西という団体が東遊園地を出発

してデモを行うということは承知をしております。東遊園地を出発するということです

けれども、これは単なる集合場所なので、公園の使用許可は要しないと考えています。

ですから、現時点では警察当局などと連携をして、必要な情報収集を行っていきたい

と考えています。

記者:

今回の東遊園地に関しては使用許可が、そもそも要らないということで出されていな

いというのは聞いているんですけれども、今後、例えば市の公民館ですとか、そういう

施設で、例えばその種の講演会だったりとか、公園を使っての集会であったりとか、そ

ういう申請が出た場合に、現状の市の規則なり、条例等に基づくと、すぐに使うなとす

るわけにはいかないとは思うんですけれども、そのあたりの対処をどうしていくかとい

うことについて、何か具体的に、担当課もありますから、検討をされる考えはあります

でしょうか。

市長:

公の施設につきましては、これは、不当な差別的取り扱いをしてはいけないという原

則に従って使用を許可していくということになります。ですから、ケース・バイ・ケー

スで判断をするということになりますが、使用許可をしないということについては、こ

れはやはりよほどの理由がいるだろうと思います。

記者:

当然、ケース・バイ・ケースなんですけれども、事前にある程度検討をしていないと

なかなか対処しにくいとは思うんです。当然、使用する側はなぜできないんだという話

になるでしょうから、そのあたりを検討させる、もしくはガイドラインをつくるとか、

何かそういう考えはありますでしょうか。

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市長:

一般化するということは大変難しいと思うんですよ。やはり公の施設の使用を許可し

て、そこでさまざま議論が行われます。私たちは、公の施設を許可するときに、そこで

どういう議論が行われるのかということを、事前に把握すべきなのだろうか、私はすべ

きではないと思います。

これはいろんな場でもそうですが、例えば、原発について議論をするという催しの許

可があったとき、原発に賛成するんですか、反対するんですか。憲法に関する集会の許

可申請があったときに、憲法に賛成するんですか、反対するんですか。あるいはいろん

なテーマであったときに、どんな議論をするんですかということについては、これは詮

索すべきではないと思うんですね。詮索をするということ自体が、やはり法令上適合す

るのかどうかということについて、私は疑問に思います。

ですから、それはもうケース・バイ・ケースで、その許可をすることによって、法令

上非常に重要な問題が生じる、あるいは非常に大きな影響が市民生活に及ぶとか、そう

いうような具体的かつ明白なやはり危険性というものが、一般的には要求されるのでは

ないかなという気がしますね。

非常にこれは難しい問題です。やはりヘイトスピーチというものに対して、基本的に

批判的な視点で臨むと、できるだけなくしていこうという思いはみんなが共有しなけれ

ばいけないし、自治体もそれを共有しなければいけないということは当然ですね。しか

し、具体的に法令に基づく権限を行使するときには、やはり表現の自由などほかの法的

価値というものとの整合性も考えて対応するということが、自治体には求められると思

います。

(出典)神戸市 HP

(3)ヘイトスピーチ対策条例制定への動き

ア.在日本大韓民国民団からの政策要望の提出

平成 26(2014)年 11 月 22 日、在日本大韓民国民団(民団)兵庫県地方本

部の車得龍団長らは、公明党兵庫県本部(代表:赤羽かずよし)に対し、ヘ

イト・スピーチ(憎悪表現)の禁止法の制定や地方議会での意見書採択等の

政策要望を行った。

※赤羽氏ら民団の政策要望受ける

公明党兵庫県本部の赤羽かずよし代表(衆院選予定

候補=兵庫 2区)は 22 日、神戸市内で在日本大韓民国

民団(民団)兵庫県地方本部の車得龍団長らから、政

策要望を受けた。濱村進同副代表(同=比例近畿ブロ

ック)らが出席。李成権・駐神戸韓国総領事館総領事

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らが同席した。

車団長は、ヘイト・スピーチ(憎悪表現)と呼ばれる人種差別を煽る街宣活動につい

て、禁止法の制定や地方議会での意見書採択を要請。また、新入管法に関して、外国人

登録の更新時期の案内が送られなくなったなどの問題点を指摘し、改善を求めた。

赤羽氏は「ヘイトスピーチは、国際社会との共生にそぐわない。健全な日本社会を育

てるのは、公明党の使命だ」と述べた。(出典:公明新聞 2014 年 11 月 24 日付)

イ.市民団体の市議会に対する条例化の働きかけ

毎日新聞デジタル版によると、神戸市内の市民団体では、独自の条例案

の検討を始めたところや、市議会に条例化の働きかけを行い、議員同士で

議論と対策法を実行するための条例策定を促す動きが出てきている。

ヘイトスピーチ対策条例 自治体の特性考慮、制定を/兵庫

特定の民族や人種、属性への差別を扇動するヘイトスピーチの蔓延(まんえん)を受

け、2016 年6月に日本で初めての反人種差別法である「ヘイトスピーチ対策法」が施

行された。同法は自治体にも差別解消に向けた取り組みを推進するよう求めており、デ

モや街頭宣伝の頻発した自治体では、2016 年1月に国に先駆けて独自の条例を定めた

大阪市に続いて、条例制定を求める動きが広がっている。【栗田亨】

2016 年 10 月 30 日の日曜日、神戸市の繁華街・三宮で「日韓断交共闘委員会関西」

を名乗る団体によるデモが行われた。「国交断絶」などを主張する約 30 人のデモ隊は東

遊園地を出発。JR三ノ宮駅に向かうフラワーロードを北上し、駅高架下を通って、大

勢の家族連れや観光客の行き交う繁華街を約1時間半歩いた。その間、デモに参加して

いた中年男性が「暴れるな!朝鮮人!!」と記された横断幕を二度にわたって掲げた。

「ヘイトスピーチではないか」とデモ隊に抗議する市民の指摘もあり、横断幕は途中で

取り下げられた。4年前からデモへの抗議活動に参加する神戸市灘区の男性会社員(42)

は「ノンポリだったが、デモを見て平手打ちを食らわされた気持ちになり、抗議するよ

うになった。こんなことは許されない」と憤る。

こういったデモや街宣は、法務省の調査によると、2012 年4月~15 年9月に兵庫県

内で 41 件実施され、神戸市内では主に三宮センター街周辺やJR元町駅前で行われて

いた。昨年成立したヘイトスピーチ対策法では、国にヘイトスピーチを解消する取り組

みをする責務があるとし、地方自治体にも積極的に取り組むよう求めている。その一環

として、条例化を目指す動きが関西でも起きている。

神戸市の市民団体「ヘイトクライムをなくそう!神戸連絡会」が実施した在日コリア

ンへの聞き取り調査によると、「三宮センター街で『朝鮮人は出て行け』と叫ぶ集団を

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見た」などデモや街宣が直接当事者の耳に届いている実態が確認されている。

ただ神戸市の対応は情報収集や啓発活動にとどまる。市人権推進課は「対策法に基づ

いて施策をしており、市が独自に新たな条例を作る必要は見いだせない」としており、

条例化の動きはない。そのため、同連絡会は昨年9月から独自の条例案の検討を始めた。

同連絡会では「対策法にはない被害者救済の条項を入れたい」と意気込んでいる。一方、

在日韓国民団県本部は市議会に条例化を働きかけるが、条例案は示さない方針。同本部

の金相英事務局長は「議員同士で議論を積み重ねて、対策法を実行するための条例を作

ってほしい」と期待する。

(出典:毎日新聞デジタル版 2017 年 2 月 15 日地方版)

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第4章 ヘイトスピーチに関する法律・条例

1.ヘイトスピーチ解消法の概要と課題 (参考資料)「Q&A ヘイトスピーチ解消法」(2016 年、現代人文社発行)、「ヘイトスピーチに関する実

態調査報告書」(2016 年、(公財)人権教育啓発推進センター)

(1)ヘイトスピーチ解消法の概要

ヘイトスピーチ解消法は、「前文」「第1章 総則」と「第2章 基本的施

策」で構成される。

前文では、ヘイトスピーチが被害者に「多大な苦痛を強いられるとともに、

当該地域社会に深刻な亀裂を生じさせている」とし、ヘイトスピーチを「あ

ってはならず、~許されないことを宣言する」としている。

第1条は目的で、ヘイトスピーチ「解消が喫緊の課題」であることから、

国などが解消に向けた取組みを推進することを目的とするとしている。

第2条は定義で、「本邦外出身者」とは、「専ら本邦の域外にある国若しく

は地域の出身である者又はその子孫であって適法に居住するもの」としてい

る。また、「不当な差別的言動」とは、①差別的意識を助長し又は誘発する目

的で、②外国の出身であることを理由として、③生命などに危害を加える旨

を告知しまたは著しく侮蔑するなど、地域社会から排除することを煽動する

ものとしている。

第3条は基本理念で、国民が「不当な差別的言動のない社会の実現に寄与

する」よう努めることとしている。

第4条は「責務」で、第1項で、国は「解消に向けた取組に関する施策を

実施」し、地方公共団体に「必要な助言その他の措置を講ずる」と定めてい

る。第2項で地方公共団体は「地域の実情に応じた施策を講ずるよう努める

ものとする」としている。

第5条から第7条が「第2章 基本的施策」となるが、それぞれ相談体制

の整備、教育の充実等、啓発活動等が抽象的に挙げられている。

(2)ヘイトスピーチ解消法の意義

ヘイトスピーチ解消法の意義については、この問題に詳しい師岡康子弁

護士(東京弁護士会外国人の権利に関する委員会幹事:大阪経済法科大学

アジア太平洋研究センター客員研究員)のことばを引用する。

ヘイトスピーチの法規制をめぐる情勢について ~解消法の意義~

師岡康子弁護士

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ヘイトスピーチ解消法は、「差別的言動」が被害者に「多大な苦痛」を与え、「地域社

会に深刻な亀裂を生じさせている」との被害を認め、前文では「差別的言動は許されな

いことを宣言」し、第1条で「解消が喫緊の課題である」として、国と地方公共団体が

解消に向けた取組みを推進することを目的として掲げており、日本で初めての反人種差

別法といえる。

国は、植民地支配の結果日本に住むことを余儀なくされた在日コリアンを、戦後も入

管体制により管理、差別の対象として扱い、人権保障の観点からの法律はないに等しい。

1995 年には人種差別撤廃条約に加盟し、差別を禁止し、終了させる義務を負いながら、

深刻な差別の存在自体を認めず、法整備の必要性も否定してきた。すでにヘイトスピー

チが社会問題化していた 2014 年8月に行われた人種差別撤廃委員会による日本審査の

場においても、政府代表は同様の発言をした。戦後 70 年、条約加盟後だけでも 20 年に

わたって、差別と闘う人々は、人権を保障される法を人間の尊厳をかけて求め続けてき

たが、今回ようやくその端緒を手にしたのである。

国が差別を黙認し、警察がヘイトデモ・街宣を表現の自由として守ってきたことが、

被害者をより苦しめ、社会全体への絶望感をもたらしてきた。今回、解消法により国が

建前として反差別の立場に立ち、反差別が国と社会の標準となったことの意義は大きい。

(出典)「ヘイトスピーチに関する実態調査報告書」(2016 年、(公財)人権教育啓発推進センター)

(3)ヘイトスピーチ解消法の課題

ヘイトスピーチ解消法の課題については、それぞれの立場から様々な意見

が述べられているため、ここではその各位の意見を紹介する。

■師岡康子氏(弁護士、大阪経済法科大学アジア太平洋研究センター客員研究員)

いずれの条文も政府がこれまで多少とも人権施策として行ってきた事項であり、これ

までと違うどのような施策をとるのか文言上は明らかではない。

そもそもヘイトスピーチ解消法は、人種差別撤廃基本法ではなく、その枠組みが外国

出身者に対するヘイトスピーチに関する理念法であり、人種差別撤廃条約が人種差別全

体に対する撤廃を求めていることからすれば狭すぎる。

また、外国出身者のなかでも「適法に居住するもの」との文言は非正規滞在者へのヘ

イトスピーチは容認するかのように受けとられ、差別的であり、条約に違反する。その

他、野党法案と比較すれば、国による基本方針策定と国会への報告義務、差別禁止条項、

インターネット対策、実態調査の義務、被害者の意見を聴く責務、提言機能をもった学

識経験者による審議会の設置、予算措置がないなど、人種差別撤廃にむけては不十分な

内容であることは否めない。

(出典)「ヘイトスピーチに関する実態調査報告書」(2016 年、(公財)人権教育啓発推進センター)

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■郭辰雄氏(特定非営利活動法人コリアNGOセンター 代表理事)

本法律には今後改善されるべき重大な問題がいくつかある。

それは第一に、保護対象者を本邦外出身者のなかでも「適法に居住するもの」に限定

したことである。そもそもヘイトスピーチとは人種等に基づく属性を理由に行なわれる

差別扇動であり、その被害当事者が居住国に「適法」に滞在しているかどうかはまった

く別の問題である。しかしこうした定義が存在することで、「朝鮮人を叩き出せ」と主張

する明らかなヘイトスピーチが、「不法滞在の朝鮮人を叩き出せ」とすることで、ヘイト

スピーチとは見なされないという歪んだ解釈を与えかねない。したがってこの「適法に

居住する」という定義は人種差別撤廃条約の理念に違反しており、必ず削除されなけれ

ばならない。

第二に、そもそも本法律は「本邦外出身者」だけを対象とした法律であり、被差別部

落や沖縄、アイヌなど人種的・民族的マイノリティに対するヘイトスピーチが除外され

てしまっている。これまで繰り広げられてきたヘイトスピーチはこうした人たちも明確

にターゲットとされて繰り広げられてきた。こうした現状をふまえて、あらゆる人種的・

民族的マイノリティがその保護対象とされるように法改正、あるいは別途法律の制定が

求められる。

第三に、今回の法律は、「差別的言動は許されない」と宣言しつつも、ヘイトスピーチ

が「違法」であると明確にはしておらず、「禁止規定」も設けられていないため、その実

効性が十分に担保されているとはいいがたい。

※ただし、これらの問題点については本法律の審議過程の批判を受けて、最終的に本法

律の附則に「法律の施行後も実態を勘案して必要に応じ検討を加える」という点が明

記された。

※また法的拘束力がないとはいえ、附帯決議では、国や地方自治体に「憲法や人種差別

撤廃条約の精神にかんがみ、適切に対処すること」を求め、また保護対象者について

も、「(定義)以外のものであれば、差別的言動が許されるとの理解は誤りであり、許

されないものがあることを踏まえる」と明記されている。

(出典)法学館憲法研究所 HP

(4)今後求められる地方自治体の取組み

ヘイトスピーチ解消法は、禁止条項がなく、具体的な施策も明記されてい

ないため、喫緊の課題であるヘイトスピーチ解消に向けた実効性あるものに

するためには、法律に則った国および地方公共団体の具体的な施策が不可欠

である。

国は第4条第1項で差別的な言動の解消に向けた取り組みに関する施策な

どを講ずる責務を有するとし、地方公共団体は同条第2項で「当該地域の実

情に応じた施策を講ずるよう努めるものとする」とされている。

また、参議院・衆議院附帯決議の第2項で「本邦外出身者に対する不当な

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差別的言動が地域社会に深刻な亀裂を生じさせている地方公共団体」には「国

とともに、その施策を着実に実施すること」が求められている。

今後求められる地方自治体の取組みについては、第5章において詳細を整

理することとする。

2.大阪市ヘイトスピーチへの対処に関する条例の概要と課題 (参考資料)「大阪市ヘイトスピーチへの対処に関する条例Q&A」(大阪市)

大阪市ヘイトスピーチへの対処に関する条例の概要については、大阪市が Q&A

としてわかりやすくまとめているので、それを紹介する。

(1)条例の目的は

人としての尊厳を傷つけ、社会に差別意識を生じさせるような言動「ヘイ

トスピーチ」について、市として「許さない」という姿勢を明確にし、市民

等の人権を擁護し、ヘイトスピーチの抑止を図ることを目的としている。

(2)条例の内容

条例の内容は、ヘイトスピーチの定義を示すとともに、憲法で保障された

表現の自由等にも十分に配慮し、市民等の人権擁護、ヘイトスピーチの抑止

に向け、現行の法制度のもとでとり得る措置等を定めている。

具体的には、市民からの申出等に基づき、対象となった表現活動がヘイト

スピーチに該当するかどうかについて専門家で構成する「大阪市ヘイトスピ

ーチ審査会」で審査し、そのうえで市として該当すると判断した場合には、

拡散防止措置として、事案の内容に応じ、掲示物などの撤去やインターネッ

ト上の映像の削除の要請を行うことや、認識等の公表として、表現内容の概

要、表現活動を行ったものの氏名又は名称などの公表を行うこととしている。

(3)ヘイトスピーチの定義

ヘイトスピーチ」の定義については、条例において、表現活動の「目的」、

「態様」及び「発信対象が不特定多数であるかどうか」の3つの観点からの

要件を設け(第2条第1項)、対象となった表現活動がヘイトスピーチに該当

するかどうか等については、専門家で構成する「大阪市ヘイトスピーチ審査

会」で条例の定義に基づき審査し、その審議結果をもとに市として慎重に判

断していくことにしている。

この条例において「ヘイトスピーチ」とは、次に掲げる要件のいずれにも

該当する表現活動をいう。

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① 次のいずれかを目的として行われるものであること(ウについては、当

該目的が明らかに認められるものであること)

ア 人種若しくは民族に係る特定の属性を有する個人又は当該個人により

構成される集団(以下「特定人等」という。)を社会から排除すること

イ 特定人等の権利又は自由を制限すること

ウ 特定人等に対する憎悪若しく は差別の意識又は暴力をあおること

② 表現の内容又は表現活動の態様が次のいずれかに該当すること

ア 特定人等を相当程度侮蔑し又は誹謗中傷するものであること

イ 特定人等(当該特定人等が集団であるときは、当該集団に属する個人

の相当数) に脅威を感じさせるものであること

③ 不特定多数の者が表現の内容を知り得る状態に置くような場所又は方法

で行われるものであること

(4)大阪市ヘイトスピーチ審査会

審査会では、申出人又は表現活動を行ったものに対し、書面により意見を

述べるとともに、有利な証拠を提出する機会を設けることとしている。また、

必要に応じて、申出を行った市民等に意見書又は資料の提出を求めることや、

適当と認める者に知っている事実を述べさせることなどの調査を行う。

審査会の委員については、市長が、学識経験者その他適当と認める者のう

ちから市会の同意を得て、5人以内で組織することとしている。審査会の委員

は、中立性・公平性の一層の担保の観点から、在任中、政党その他政治団体

の役員となることや、積極的な政治運動を行うことを禁止するとともに、違

反した場合には、市長は、委員を解嘱できることとしている。

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大阪市ヘイトスピーチへの対処に関する条例の概要

(出典)大阪市 HP

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(5)大阪市ヘイトスピーチへの対処に関する条例の運用上の課題 (参考資料)「ヘイトスピーチ解消に向けた積極的施策の早期実施を求める意見書」(2017 年 1 月 18

日、大阪弁護士会)

ア.審査会での審議の長期化

大阪市条例は、市長が、特定の表現活動がヘイトスピーチに該当すると

認めるときは、当該表現活動の拡散防止措置を取ることや、当該表現活動

がヘイトスピーチに該当する旨、表現内容の概要及びその拡散防止措置並

びに当該表現活動を行った者の氏名又は名称を公表することを定めている

(同条例 5条)。

ところが、同条例の全面施行以後、平成 28(2016)年 11 月 21 日時点での

申出件数は延べ 19 件であり、そのうち 13 件が同年 7 月中に申出がなされ

ているにもかかわらず、未だ 1 件も審議が終了しておらず、審査会による

審議の長期化が危惧されている。

イ.職権発動の判断

同条例には、申出による場合のみならず、「職権」により拡散防止措置及

び認識等の公表がとられる場合が規定されている(同条例 5条 2項)。

同条例の全面施行後においても、大阪市内で、ヘイトスピーチが行われ

る蓋然性が高い街宣活動又はデモ行進を行うことが事前予告されてきた。

また、同条例全面施行後も、大阪市庁舎の面前で、10 数回にわたりヘイト

スピーチを内容とする街頭宣伝がなされている。

市は、市民等の申出を待つまでもなく、より積極的に職権を発動するな

どして、ヘイトスピーチの解消に向けた取組が必要との意見もある。

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第5章 ヘイトスピーチ解消法成立後の国・地方自治体における取組み

1.国における最近の取組み状況 (参考資料)「法務省 HP」

国会において、「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組

の推進に関する法律」が成立し、平成 28(2016)年6月3日に施行された。

こうした中、法務省の人権擁護機関では、これまでの「外国人の人権」をテ

ーマにした啓発(「外国人の人権を尊重しましょう」)に加え、下記の手法によ

り、わかりやすい形で表した、より効果的な各種啓発・広報活動等に取り組ん

でいる。

(1)これまでに実施した取組について

① 法務省人権擁護局内にヘイトスピーチの解消に向けた施策を担う「ヘイ

トスピーチ対策プロジェクトチーム」を新たに設置

② ヘイトスピーチ解消法施行に関する周知広報活動の実施

③ ヘイトスピーチ解消法の外国語訳の情報発信

④ ヘイトスピーチが予想されるデモ、街宣活動の現場周辺での啓発活動

⑤ 「人権教育・啓発中央省庁連絡協議会ヘイトスピーチ対策専門部会本専

門部会」の開催

(2)今後実施する取組について

(※いずれも予定であって、検討中のものも含む。)

① 関係機関の意見交換及び連携協力に向けた協議の継続

② ヘイトスピーチの実態の継続的な把握

③ 人権相談を担当する職員等に対する研修等の充実、強化

④ 法務省人権擁護局内に、ヘイトスピーチによる被害に関する相談に的確

に対処するための「ヘイトスピーチ被害相談対応チーム」(仮称)を新たに

設置

⑤ 民間団体と連携した広報等、様々な媒体を活用した啓発活動による発信

力の強化

⑥ 「ヘイトスピーチ,許さない。」のキャッチコピーを用いたポスター、リ

ーフレットの増刷、配布

⑦ ヘイトスピーチの解消に向けて、国民の理解を深めることを目的とした

一般向けパンフレットの製作、配布

⑧ 地方公共団体等を対象とした参考情報の作成、提供

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⑨ インターネット上のヘイトスピーチへの対処

ポスター「ヘイトスピーチ、許さない。」

啓発活動の例

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2.地方自治体における最近の取組み状況 (参考資料)「人権教育・啓発中央省庁連絡協議会ヘイトスピーチ対策専門部会本専門部会資料」(平

成 28 年 9月 30 日)

ヘイトスピーチ施行後にデモ等に関する対応を行った地方公共団体として、

川崎市、大阪市、福岡県における取組内容を紹介するとともに、今後大阪府に

おいて予定されている取組の概要についてまとめる。

(1)川崎市での取組み

川崎市人権施策推進協議会(会長:阿部浩己神奈川大学法科大学院教授)

は、市長からの要請を受けてヘイトスピーチ対策について、優先的に審議し

てきた。

その内容が平成 28(2016)年 12 月 27 日に、優先審議事項報告書「ヘイト

スピーチ対策に関する提言」としてまとめられた。同報告書は、今後取り組

むべき事項として以下のとおりとしている。

また市長は、公的施設の使用を事前に規制するガイドラインを今秋に制定

する方針を示している。

ア.川崎市「ヘイトスピーチ対策に関する提言」の概要

① 公的施設の利用に関するガイドラインの策定

ヘイトスピーチによる市民の被害を防止するため、市が所管する公的

施設(公園、市民館等)において、ヘイトスピーチが行われないよう対

処する必要がある。

そのためには条例の制定又は改正をすべきであるが、当面は、各施設

の既存の条例の解釈を明確化すべく、早急に、公的施設の利用に関する

ガイドラインを策定する必要がある。

【(別表)ガイドラインに盛り込むべき要素】

項目 主な内容

1 目的 規制対象となる行為、利用制限は必要不可欠な場合であ

るべきこと等

2 定義 どのような言動がヘイトスピーチに該当するか市民等

にわかりやすく示す

3 具体的な解釈 関係する既存の各条例における一般的な制限条項の具

体的な解釈

4 具体的な手続き

利用申請から許可・不許可等の決定までの具体的な手続

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5 利用制限の種類 「許可」が原則で、「不許可」「警告」「条件付き許可」

など

6 利用許可の取消 利用許可後にヘイトスピーチが行われることが明らか

になった場合の取消手続き

7 第三者機関的な

しくみづくり

利用制限の恣意的判断を排除するために、 市等が意見

を聞くしくみ

【特に留意すべき点】

①「定義」について

・公的施設の利用は表現の自由によって手厚く保障されるべきものであるから、

「利用制限は必要不可欠な場合に限る」 とのより厳格な表現を用いるべきであ

る。

・規制対象となる行為については、特に明確に定義することが必要であり、「ヘイ

トスピーチ解消法」のみならず人種差別撤廃条約上の要請も組み入れるべきで

ある。

・適法居住要件については、「人権かわさきイニシアチブ」 および人種差別撤廃

条約の要請を適切に踏まえた考慮が求められる。

②「第三者機関的なしくみづくり」について

・恣意的な判断を避けるため、第三者が関与するしくみが必要不可欠である。

・現行制度の中で何らかの第三者機関 (例えば本協議会の部会等)を設けること

を検討し、それが難しいようであれば、恣意的な判断をしていないと示すこと

ができる、第三者が関与するしくみが必要である。

③ガイドラインの策定・運用について

・策定・運用にあたっては、憲法との適合性を損なうことがないよう、慎重に対

応することが求められる。

② インターネット上の対策

インターネット上のヘイトスピーチによる被害は深刻であり、その解

消に向けた対策を、積極的に講じていく必要がある。

具体的には、SNSを活用した発信や、積極的な削除要請などを行う

必要がある。

【特に留意すべき点】

①「SNSでの発信」 について

・既存の取組施策の発信に加え、客観的な事実に基づき、誤っている情報を市が

正していくような発信が必要である。

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②「削除要請」について

・市が国(法務局) と協力して、あるいは、市自らも削除を要請するべきである。

・また、そうした対応が可能であることについて市民に知らせるとともに、情報

を寄せてもらう取組も行うべきである。

③対応範囲について

・川崎市として対応できる範囲を明確にする必要があり、さらなる検討が求めら

れる。(川崎市内で発生あるいは川崎市民に関すること等)

③ 制定すべき条例の検討

項目①及び②の対応が早急に求められるが、ヘイトスピーチ対策はそ

れで終わるものではない。人権全般を見据えた条例の制定に必要な作業

に入るべきである。

【特に留意すべき点】

・協議会及び部会において、幅広い条例が必要との認識では一致したところであ

り、具体的な内容については、ヘイトスピーチ対策を含めた多文化共生、人種

差別撤廃などの人権全般にかかるものが求められる。

イ.公的施設の使用を事前に規制するガイドラインの制定について

特定の人種や民族などへの憎悪をあおるヘイトスピーチを巡り、川崎市

は平成 29(2017)年 1月 19 日、公的施設の使用を事前に規制するガイドラ

インを今秋に制定する方針を明らかにした。インターネット上の差別的書

き込みに対するプロバイダーらへの削除要請や、ソーシャル・ネットワー

キング・サービス(SNS)を活用した啓発活動については、ガイドライ

ン制定前に着手するとした。

【公的施設の使用を事前に規制するガイドラインの制定について】

市議会文教委員会で、露木明美市議(民進みらい)の質問に答弁した。

ヘイトスピーチへの事前規制の導入は、憲法が保障する「表現の自由」を侵害し

ないことが前提になる。唐仁原晃市民文化局長は「丁寧に議論を進め、パブリック

コメントも実施したい」と答えた。

唐仁原局長は答弁で、ガイドライン制定後の対応については、都市公園条例や市

民館条例の改正で施設の利用基準を明確化する可能性も示唆。川崎市長の諮問機関

である市人権施策推進協議会が昨年 12 月に提言した「人権全般を見据えた条例の制

定」にこだわらない姿勢を示した。

ネット対応では「SNSを使った情報発信はすぐにできる。差別表現の削除要請

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は基準を作る必要があり、一定の時間がかかる」とした。

(出典:デジタル毎日新聞 2017 年 1 月 20 日版)

(2)大阪市での取組み

ア.ヘイトスピーチ審査会における審査

ヘイトスピーチ審査会における審査状況については、「第4章2.大阪市

ヘイトスピーチへの対処に関する条例の概要と課題」で示したとおり、同

条例の全面施行以後、申出件数は延べ 19 件であり、未だ審査中である。ま

た、審査会は非公開で行われているため、審査内容の詳細については不明

である。

イ.大阪市へイドスピーチへの対処に関する条例案の一部修正

大阪市長は、財政総務委員会での審議状況を踏まえ、大阪市へイドスピ

ーチ審査会の委員の委嘱について市会の同意を要件とし、訴訟等の支援に

係る規定を削除するとともに、国において法制度の整備が行われた場合の

措置について定めるため、28 年1月 15 日、大阪市会議長に「議案第183

号大阪市へイドスピーチへの対処に関する条例案の一部修正の承諾を求め

ることについて」が提出されている。

(3)福岡県での取組み

ア.法の周知

①福岡県のホームページ(HP)を活用した周知

②法務省作成のポスターを活用した周知

イ.公の施設の利用に係る対応

○県営都市公園(9か所)において、法務省啓発ポスター、県作成の利

用者向け啓発チラシを掲示

○県営都市公園利用者に対して啓発チラシを直接手交し、特にヘイトス

ピーチが懸念される場合には、利用者に法の遵守を呼びかける取組み

を開始

ウ.相談体制の強化

○県・市町村で人権相談業務に従事する職員や人権擁護委員等を対象と

して実施している「人権相談従事職員研修」(※)において、ヘイトス

ピーチの実態や法の趣旨、県の取組みについて解説

※参加状況:福岡地区、北九州地区会場で延べ約100名参加

エ.ヘイトスピーチ対策に係る連絡会議の設置

○ヘイトスピーチデモへの具体的な対応、ヘイトスピーチに関する情報

交換や効果的な啓発を検討することを目的として、福岡法務局、県、

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政令市(福岡市、北九州市)、福岡県人権擁護委員連合会を構成メンバ

ーとする連絡会議を設置

(第1回準備会平成 28 年8月 17 日(水)開催)

(4)大阪府での取組み(予定)

大阪府では、人権啓発活動地方委託事業二次配分予算を活用し、人権週間

中にJR大阪駅のデジタルサイネージ(電子看板)を用いてヘイトスピーチ

に関する啓発を実施予定である。

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3.地方自治体における取組みの今後の方向性 (参考資料)「人権教育・啓発中央省庁連絡協議会ヘイトスピーチ対策専門部会資料」、「ヘイトスピ

ーチ解消に向けた積極的施策の早期実施を求める意見書」(2017 年(平成 29 年)1 月 18 日、大

阪弁護士会)

(1)地方公共団体から国への意見・要望

人権教育・啓発中央省庁連絡協議会ヘイトスピーチ対策専門部会では、各

地方公共団体(東京都、京都府、京都市、神戸市、福岡県から意見・要望が

出されている。主な内容は次の通りである。

関連条文 意見・要望

第二条

(定義)

・「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」について、どのような

差別的言動が該当するのか、例示等により具体的に示してほしい。

・「公然と」「差別的言動に該当する表現活動の態様」の解釈。例え

ば、スピーチではなく、プラカード、貼り紙等の文字で示す場合

や、インターネット上に掲載された情報(文字、動画)、屋内で行

われる集会など表現活動の態様ごとに、どのようなものが差別的

言動に該当するのかなど、差別的言動に何が含まれるのか、基準

や具体例を明らかにしてほしい。

・「不当」との判断は、いつ誰がどのようにするのか、明らかにして

ほしい。

第四条

(国及び地方公

共団体の責務)

・ヘイトスピーチは全国一律で対応すべき課題であり、国の責務に

おいて、まず、ベイトスピーチ対策の全体フレームを示し、一義

的に国が実効性のある施策を実施していただきたい。また、その

内容やスケジュールを具体的に示してほしい。

・国と地方公共団体との役割分担については、地方公共団体の意見

を十分に踏まえた上で、具体的に示してほしい。

・ヘイトスピーチに対して地方自治体ができる取組を明らかにして

ほしい。国・地方自治体及び地方自治体同士がバラバラでなく一

体となって取り組める内容を盛り込んでほしい。

第四条関連

(公共施設の使

用許可)

・公共施設に係る使用許可の判断について、ヘイトスピーチデモや

集会等に係る公園、集会施設などの使用許可等に関する法解釈や

運用の基準を具体的に示してほしい。

第四条関連

(ガイドライン

等の策定)

・各地方公共団体で判断にバラツキを生じることのないよう、 同法

を指針とした関係法令の解釈や運用基準について、基本的な考え

方を確認したい。

・ヘイトスピーチのデモ行進に対して、地方自治体(基礎自治体・

広域自治体)がどのような対応ができるのか、明らかにしてほし

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い。

第四条関連

(インターネッ

ト上の情報)

・インターネットを通じて行われる本邦外出身者等に対する不当な

差別的言動を助長し、又は誘発する行為(へイトスピーチデモ動

画のアップなど)の解消に向けた取組に関する施策を実施してほ

しい。

・全国どこでも誰でもアップロード、視聴できるインターネット上

の不当な差別的表現に対して、各個人や各地方自治体がプロバイ

ダを探し出し、個々の削除要請を行うことは困難であるため、国

において不当な差別的表現をピックアップし削除要請していただ

く仕組みの構築をお願いしたい。

第五条

(相談体制の整

備)

・国における体制整備。人権擁護機関としてどのような体制を整備

されるのか。また、関係省庁(中央・地方)との連携をどのよう

に図るのか。

・相談体制における国と地方公共団体の連携確保。法務省人権擁護

機関における相談内容やその対応を含め、ヘイトスピーチに関す

る情報を継続的に地方へ提供してほしい。

第六条

(教育の充実等)

・国が実施する教育活動とは、どのようなものか明らかにしてほし

い。

第七条

(啓発活動等)

・国が主体となって実施する啓発活動について、どのようなものか

明らかにしてほしい。(全国規模のテレビや新聞を利用しての効果

的な啓発など)

・国が実施する啓発活動について事前に情報提供してほしい。

(2)求められる具体的施策

大阪弁護士会では、ヘイトスピーチの解消に向け「本邦外出身者に対する

不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」の趣旨及び両院

付帯決議 2項の趣旨に基づき、大阪府及び同府内の各市町村(大阪市を含む)

は、以下の具体的施策を講ずる必要があるという意見書を大阪府、大阪市、

府内市町村に提出している。

【求められる具体的施策】

ア.相談体制の整備

ヘイトスピーチにより被害を受けたとする市民等が容易にアクセスでき

る相談窓口を設置し、差別問題に精通した専門家を配置し、警察、法務局、

弁護士会等の関係機関と連携を図ること。

イ.教育活動、広報その他の啓発活動

Page 52: 平成29年3月 公明党神戸市会議員団 - Kobe · 宣活動は、年間300件以上に上っている。特に南関東地方でのデモ参加者数は 時に数百人にも及ぶ大規模なものとなっていた。

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ヘイトスピーチの問題が歴史に基づく国家・社会レベルでの制度的差別

を背景とした問題であることや人種差別撤廃条約・自由権規約などの国際

的な人権基準の観点を踏まえた教育・啓発活動を実施すること、また、そ

の実効性を高めるため、セミナーの開催やフィールドワーク等の実践的な

手法による活動を実施すること。

ウ.各地域における継続的な実態調査

上記の相談、教育・啓発活動の各取組を行う前提として、各地域におけ

る被害実態の調査を継続的に実施すること。

エ.条例の制定

以上の各取組を確実に実施するため、その根拠となる条例の制定を検討

すること。

資料:大阪府弁護士会