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- 531 - (2) ARDS Network の試験方法に準拠した試験 ・本臨床試験実施に至った経緯 までの試験成績を基に, 1997 10 29 日に注射用エラスポール 100 の製造承認申請を行った. 調査会(1999 10 25 日開催)において提出された調査会見解に回答した.その結果,下記の経緯 から ARDS Network の試験方法に準拠した追加試験の実施に至った. 近年米国では急性呼吸促迫症候群(Acute Respiratory Distress Syndrome ARDS)に有効な治療薬や治療 法を見出すことを目的として,米国国立衛生研究所(National Institutes of Health NIH)を中心に ARDS Network が組織され,統一した人工呼吸管理や離脱方法を規定した臨床試験が実施されている.この ARDS Network の試験は予め設定した人工呼吸器の離脱基準に準じ人工呼吸器を離脱させる試験方法で, 28 日間の 評価期間のうち,人工呼吸器を装着しなかった日数,すなわち Ventilator Free Days VFD)を主評価項目と している.未だ研究段階にあるこの試験方法は,今後 ARDS および急性肺障害(Acute Lung InjuryALIに対する治療法確立のためのひとつの基準として,2000 年にその結果が初めて報告 1) 2) された. 最新の試験方法である ARDS Network の試験は,2 つの主評価項目が設定されている 3) 1 つは,臨床 的に最も意義のある生存率(180 日間の調査期間で退院時に人工呼吸器から離脱し,生存していた患者の 割合)が設定された.もう 1 つは,28 日間の調査期間で人工呼吸器から離脱した状態での生存日数とし VFD が設定された. ARDS および ALI は,様々な原因で発症することに加えて,肺障害患者の生死(生存率)には肺障害 の改善・非改善以外の様々な間接的要因が影響していることから,ARDS Network は肺障害を評価する 際に,人工呼吸器の装着期間と 28 日間の生存日数を合わせて評価する手法,すなわち「28 日間の調査期 間で人工呼吸器から離脱した状態での生存日数として VFD」をもう一つの主評価項目としている.この VFD は,肺障害から改善するまでの期間として単に人工呼吸器の装着期間が短くなることを評価するの ではなく,死亡により人工呼吸器の装着期間が短くなることを踏まえて,生きて人工呼吸器から離脱した 患者の人工呼吸器を装着していなかった期間を評価している. ARDS Network の試験では, VFD で差が得られた場合,人工呼吸器からの早期離脱は人工呼吸器を装 着している病的状態から生きて早く脱し,急性肺障害が早く改善されることを示唆しており,さらに患者 の精神的・身体的負担をいち早く軽減できる臨床的意義は大きく,かつ医療コストの削減に貢献すること の臨床的価値があるとされている 3) このような国際的動向を背景に,調査会見解を踏まえ,本邦と海外では確かに試験に対する医療環境や医 師の意識レベルが異なるが,人工呼吸器の離脱基準を予め設定し, VFDを主評価項目とした質の高い,ノイ ズの少ない試験結果を提示すべく,可能な限りARDS Networkの試験方法に準拠した追加試験の実施を検 討することとし,小規模でも確実に解釈できる1armの試験を今後の試験の標準となるべく立案した. 本試験は ARDS Network の試験方法の啓蒙も兼ね,本方法に準拠して実施することとした.なお,本 試験は今後本邦で同疾患を対象に実施されるであろう臨床試験の計画時に利用できる基礎情報を与えると ともに,今後検討される薬剤と本剤を比較する上で有益な情報を提供すると考えられる.

(2) ARDS Networkの試験方法に準拠した試験...VFD を主評価項目とした試験とし,小規模非盲検でも確実に解釈できる質の高い試験を行い,先に実施し

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(2) ARDS Network の試験方法に準拠した試験

・本臨床試験実施に至った経緯

  までの試験成績を基に,1997 年 10 月 29 日に注射用エラスポール 100 の製造承認申請を行った.

 調査会(1999 年 10 月 25 日開催)において提出された調査会見解に回答した.その結果,下記の経緯

から ARDS Network の試験方法に準拠した追加試験の実施に至った.

 近年米国では急性呼吸促迫症候群(Acute Respiratory Distress Syndrome;ARDS)に有効な治療薬や治療

法を見出すことを目的として,米国国立衛生研究所(National Institutes of Health;NIH)を中心に ARDS

Network が組織され,統一した人工呼吸管理や離脱方法を規定した臨床試験が実施されている.この ARDS

Network の試験は予め設定した人工呼吸器の離脱基準に準じ人工呼吸器を離脱させる試験方法で,28 日間の

評価期間のうち,人工呼吸器を装着しなかった日数,すなわちVentilator Free Days(VFD)を主評価項目と

している.未だ研究段階にあるこの試験方法は,今後 ARDS および急性肺障害(Acute Lung Injury;ALI)

に対する治療法確立のためのひとつの基準として,2000 年にその結果が初めて報告 1) 2)された.

 最新の試験方法である ARDS Network の試験は,2 つの主評価項目が設定されている 3).1 つは,臨床

的に最も意義のある生存率(180 日間の調査期間で退院時に人工呼吸器から離脱し,生存していた患者の

割合)が設定された.もう 1 つは,28 日間の調査期間で人工呼吸器から離脱した状態での生存日数とし

て VFD が設定された.

 ARDS および ALI は,様々な原因で発症することに加えて,肺障害患者の生死(生存率)には肺障害

の改善・非改善以外の様々な間接的要因が影響していることから,ARDS Network は肺障害を評価する

際に,人工呼吸器の装着期間と 28 日間の生存日数を合わせて評価する手法,すなわち「28 日間の調査期

間で人工呼吸器から離脱した状態での生存日数として VFD」をもう一つの主評価項目としている.この

VFD は,肺障害から改善するまでの期間として単に人工呼吸器の装着期間が短くなることを評価するの

ではなく,死亡により人工呼吸器の装着期間が短くなることを踏まえて,生きて人工呼吸器から離脱した

患者の人工呼吸器を装着していなかった期間を評価している.

 ARDS Network の試験では,VFD で差が得られた場合,人工呼吸器からの早期離脱は人工呼吸器を装

着している病的状態から生きて早く脱し,急性肺障害が早く改善されることを示唆しており,さらに患者

の精神的・身体的負担をいち早く軽減できる臨床的意義は大きく,かつ医療コストの削減に貢献すること

の臨床的価値があるとされている 3).

 このような国際的動向を背景に,調査会見解を踏まえ,本邦と海外では確かに試験に対する医療環境や医

師の意識レベルが異なるが,人工呼吸器の離脱基準を予め設定し,VFDを主評価項目とした質の高い,ノイ

ズの少ない試験結果を提示すべく,可能な限りARDS Networkの試験方法に準拠した追加試験の実施を検

討することとし,小規模でも確実に解釈できる1armの試験を今後の試験の標準となるべく立案した.

 本試験は ARDS Network の試験方法の啓蒙も兼ね,本方法に準拠して実施することとした.なお,本

試験は今後本邦で同疾患を対象に実施されるであろう臨床試験の計画時に利用できる基礎情報を与えると

ともに,今後検討される薬剤と本剤を比較する上で有益な情報を提供すると考えられる.

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要  約

 本試験は,ARDS Networkの最新の試験手法に準じてONO-5046・Naの全身性炎症反応症候群(Systemic

Inflammatory Response Syndrome;SIRS)に伴う肺障害に対する有効性評価を行った.すなわち,

ARDSNetwork の試験方法に準じ,対象患者の選択・除外基準,人工呼吸器の離脱基準を予め定め,かつ

VFD を主評価項目とした試験とし,小規模非盲検でも確実に解釈できる質の高い試験を行い,先に実施し

た第Ⅲ相二重盲検比較試験あるいは ARDS Network が実施した 2 試験と比較考察することとした.この

ARDS Network に準拠した試験において,本剤の有効性を示し得る結果が得られれば,申請時までの第

Ⅲ相二重盲検比較試験の実施方法や結果は妥当なものであり,申請時までに提出した試験成績もその妥当

性が判断できると考えた.よって,ARDS Network に準拠した試験の立案・実施は,申請時までの試験

成績の検証試験と位置づけて行うこととした.

 対象患者の選択基準のうち,肺障害の基準はARDS Networkの試験で用いているAmerican-European

Consensus Conference4)で規定した方法に準じ,(1) 機械的人工呼吸管理下で PaO2/FIO2≦300mmHg,

(2) 胸部X線所見で両側性に浸潤陰影が認められる,(3) 肺動脈楔入圧が測定された場合は,肺動脈楔入

圧≦18mmHg,測定されない場合は,左房圧上昇の臨床所見を認めないこととした.また,SIRS の基準

は第Ⅲ相二重盲検比較試験と同様の国際的基準 5)を用い,好中球関与の炎症性の肺障害を選択することと

した.さらに,ARDS Network の試験方法に準じて設定した除外基準に加え,第Ⅲ相二重盲検比較試験

を踏まえ,肺を含め 4 臓器障害以上の多臓器障害患者,および熱傷・外傷患者を除外した.

 主評価項目は ARDS Network の試験方法に準じ VFD とし,ARDS Network の人工呼吸器の離脱基準

をもとにして本邦で実施可能な人工呼吸器の離脱基準を予め設定して実施した.また,副次的評価項目は,

肺機能改善度,全般改善度,人工呼吸器の離脱,転帰,集中治療室からの退出,SIRS 期間,肺機能所見,

血液ガス所見,臨床症状および理学的検査,肺障害スコアー,肺障害の重症度分類および推移とした.な

お,ARDS Network の試験方法の本邦における啓蒙と,本邦で ARDS Network の試験方法に可能な限り

準拠して実施するため,ARDS Network メンバーも参加した上で,本試験参画施設の医師らと人工呼吸

器の離脱基準について協議し,人工呼吸器の離脱基準を決定した.本試験と先に実施した第Ⅲ相二重盲検

比較試験の比較は,本試験の選択・除外基準を満たす対象集団での成績を用いた.

 投与量は 1 時間当たり 0.20mg/kg(第Ⅲ相二重盲検比較試験で用いた至適用量)とし,14 日間静脈内持

続投与した.ただし,5 日間以上投与された症例で投与中に人工呼吸器を離脱することができた症例は改善

中止として,中止してもかまわないこととした.結果を以下に示す.その際,先に実施した第Ⅲ相二重盲検

比較試験のうち,本試験の選択・除外基準を満たす対象集団(低用量(L)群,至適用量(H)群)および

ARDS Network が最近実施した 2 つの臨床試験(試験 A1)および試験 B2)と表現した)の対照群(試験 A:

プラセボ群,試験 B:Traditional Tidal Volume 群)の成績と本試験の成績を比較考察した.比較考察を行

うに当たって,主評価項目の Ventilator Free Days(VFD)を主として検討し,あわせて副次的評価項目の

肺機能改善度,全般改善度,人工呼吸器の離脱,転帰,集中治療室からの退出について検討を行った.なお,

その際本試験と先に実施した第Ⅲ相二重盲検比較試験の同一対象との患者背景の一様性も検討した.

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成績

1) 総症例数は 20 例で,全例 Per Protocol Set(PPS)採用症例である.

2) 本試験は,予め設定した人工呼吸器の離脱基準に準じた人工呼吸器の離脱に基づき得られた VFD を

有効性の主評価項目とした.その結果,VFD は,14.3±8.6 日(平均値±標準偏差)であった.

当初設定したように,本試験の VFD の平均値(14.3 日)は,先に実施した第Ⅲ相二重盲検比較試験

の至適用量(H)群の 13.1±10.9 日の平均値(13.1 日)の 85%(11.1 日)以上を満たす成績であっ

た.よって,両試験の成績は同程度であると判断された.また,低用量(L)群の 10.7±10.8 日を上

回る成績であった.さらに,最近実施された ARDS Network の試験 1) 2)における対照群の成績を上回

る成績であると推察された.したがって,人工呼吸器の離脱基準を予め設定した本試験の成績は,第

Ⅲ相二重盲検比較試験成績や ARDS Network の臨床試験における対照群の成績と比較しても,肺障

害に対する有効性が示された.

3) 肺機能改善度は「著明改善」が 65.0%(13/20 例),「中等度改善」以上が 85.0%(17/20 例)であった.

肺機能改善度の改善率(「中等度改善」以上)は投与 5 日後 35.0%(7/20 例),10 日後 70.0%(14/20

例),14 日後 85.0%(17/20 例)と経日的に上昇した.本成績は第Ⅲ相二重盲検比較試験の H 群の「著

明改善」58.7%(27/46 例),「中等度改善」以上 71.7%(33/46 例)と同程度の成績であった.また,L

群の「著明改善」42.6%(26/61 例),「中等度改善」以上 59.0%(36/61 例)を上回る成績であった.

4) 全般改善度は「著明改善」が 65.0%(13/20 例),「中等度改善」以上が 85.0%(17/20 例)であっ

た.本成績は第Ⅲ相二重盲検比較試験の H 群の「著明改善」58.7%(27/46 例),「中等度改善」以

上 73.9%(34/46 例)と同程度の成績であった.また,L 群の「著明改善」37.7%(23/61 例),「中

等度改善」以上 54.1%(33/61 例)を上回る成績であった.

5) 人工呼吸器離脱率は 14 日後 60.0%(12/20 例),27 日後 80.0%(16/20 例)と推移し,8.0 日後に 50%

の症例が人工呼吸器から離脱した.本成績は第Ⅲ相二重盲検比較試験の H 群の人工呼吸器離脱率の推移

14 日後 58.7%(27/46 例),27 日後 63.0%(29/46 例)と同程度の成績であった.また,L 群の人工

呼吸器離脱率の推移 14 日後 45.9%(28/61 例),27 日後 54.1%(33/61 例)を上回る成績であった.

6) 生存率は 14 日後 95.0%(19/20 例),27 日後 90.0%(18/20 例)と推移し,死亡例が 2 例見られた.

死因はいずれの症例も多臓器障害と判定され,肺障害に起因したと考えられる急性呼吸不全のみによ

る死亡はなかった.本成績は第Ⅲ相二重盲検比較試験の H 群の生存率の推移 14 日後 84.8%(39/46

例),27 日後 78.3%(36/46 例)の 95%信頼区間に含まれていた.また,L 群の生存率の推移 14 日

後 83.6%(51/61 例),27 日後 78.7%(48/61 例)を下回ることはなかった.

7) 集中治療室からの退出率は 14 日後 45.0%(9/20 例),27 日後 70.0%(14/20 例)と推移し,16 日

後に 50%の症例が集中治療室から退出した.本成績は第Ⅲ相二重盲検比較試験の H 群の集中治療室

からの退出率の推移 14 日後 47.8%(22/46 例),27 日後 60.9%(28/46 例)と同程度の成績であっ

た.また,L 群の集中治療室からの退出率の推移 14 日後 44.3%(27/61 例),27 日後 50.8%(31/61

例)を上回る成績であった.

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8) SIRS 状態の寛解率は 14 日後 40.0%(8/20 例),27 日後 60.0%(12/20 例)と推移し,16.5 日後に

50%の症例が SIRS 状態から寛解した.

9) 肺障害スコアーは投与前に比較して投与終了時に有意に低下した(Wilcoxon 符号付順位和検定:3

項目スコアー p=0.0002,4 項目スコアー p=0.0001).PEEP,胸部 X 線所見スコアーは投与前に比

較して投与終了時に有意に低下し(それぞれ,対応のある t 検定:p=0.0071,Wilcoxon 符号付順位

和検定:p=0.0001),PaO2/FIO2,肺コンプライアンスは有意に上昇した(対応のある t 検定:それ

ぞれ p=0.0001,p=0.0186).また,FIO2,A-aDO2 は有意に低下した(対応のある t 検定:それぞ

れ p=0.0001,p=0.0001).肺障害スコアーが 0 点に改善し,正常域に回復した症例の割合は 14 日

後 5.0%(1/20 例)であった.

10)有害事象の発現率は 85.0%(17/20 例)であった.自覚症状・他覚所見が 11 件,臨床検査値の異常

変動が 62 件であった.自覚症状・他覚所見の内訳は,皮疹,発熱が各 2 件,その他発疹,陰部湿疹,

皮膚びらん,腸炎,心房細動,発作性頻脈,腎障害が各 1 件であった.臨床検査値の異常変動の内訳

は,γ-GTP 上昇が 12 件で最も多く,その他 ALP 上昇が 8 件,AST(GOT)上昇,ALT(GPT)上

昇が各 7 件,総ビリルビン上昇が 6 件の順であった.これら有害事象のうち関連性の否定出来ない有

害事象(副作用)発現率は 25.0%(5/20 例)であった.その内訳はいずれも臨床検査値の異常変動

であり,γ-GTP 上昇が 5 件,AST(GOT)上昇,ALT(GPT)上昇,ALP 上昇が各 3 件,総ビリル

ビン上昇が 2 件の計 16 件であった.副作用のうち,その程度が高度なものはなく,中等度が 12 件,

軽度が 4 件で,いずれも消失あるいは軽快した.また,いずれも因果関係は「関連ないともいえない」

と判定され,安全性上,特に危惧されるものはなかった.なお,本疾患の重篤性と病態の推移を十分

観察しながら有害事象への対応を考慮すべきと考えられた.

 以上,本試験は ARDS Network の最新の試験手法に準じ,対象患者の選択・除外基準のみならず,人

工呼吸器の離脱基準を予め設定し,かつ VFD を主評価項目として実施した.その結果,ONO-5046・Na

は SIRS に伴う肺障害を改善し,主評価項目である VFD は先に実施した第Ⅲ相二重盲検比較試験の至適

用量(H)群のそれと同程度,かつ低用量(L)群を上回る成績であった.また,最近実施されたARDS Network

の 2 試験(試験 A1)のプラセボ群,および試験 B2)の対照群)の VFD を上回る成績であった.また,主評

価項目の VFD と副次的評価項目(肺機能改善度,全般改善度,集中治療室からの退出),肺機能改善度

と肺障害スコアーとの関係はいずれも良好な関係にあり,肺障害の改善は人工呼吸器の早期離脱や集中治

療室からの早期退出をもたらした.これらの成績は主評価項目のVFDの成績を説明し得るものであった.

さらに,今回副次的な評価項目として設定した肺機能改善度,全般改善度および生存率においても第Ⅲ相

二重盲検比較試験の至適用量群と遜色のない成績であった.

 これらのことから,国際的な ARDS Network の基準に準拠して実施した本試験において ONO-5046・Na

は SIRS に伴う肺障害に有効であることが示された,新規の急性肺障害の治療薬になることが示唆された.

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 試験の方法を表ト-125に示した.

表ト-125  ARDS Network の試験方法に準拠した試験の方法

項  目 内   容

試験の目的SIRSに伴う肺障害患者に対するONO-5046・Naの有効性を検討する.その際,ARDS

Network が最近実施した臨床試験 1) 2)に準拠した試験方法で行うこととする.

試験の種類 オープン試験

対象疾患1)対象疾患

SIRS に伴う肺障害

2)選択基準

下記の条件を満たし,本試験の参加に同意が得られた患者

(1) 性別:不問

(2) 年齢:18 歳~75 歳

(3) 入院・外来の別:入院

(4) SIRS:

下記の①~④のうち 2 項目以上を満たす

  ①体温>38.0℃,または<36.0℃

  ②心拍数>90 回/分

  ③呼吸数>20 回/分の頻呼吸,または PaCO2<32mmHg の過換気

  ④白血球数>12000/mm3,<4000/mm3,または桿状球>10%

(5) 肺障害の基準:

下記の①~③の全てを満たした後,72 時間以内

  ①機械的人工呼吸管理下で PaO2/FIO2≦300mmHg

  ②胸部X線所見で両側性に浸潤陰影が認められる

  ③肺動脈楔入圧が測定された場合は,肺動脈楔入圧≦18mmHg,測定されない

場合は,左房圧上昇の臨床所見を認めない

3)除外基準

(1) 肺を含め 4 臓器以上の障害を有する多臓器障害の患者.なお,臓器障害の対象

は肺,心臓,肝臓,腎臓,消化管出血,中枢神経系,血液凝固系とし,肺以外の

各臓器障害の有無は下記の表に従う.

- 536 -

対象疾患臓器障害の診断基準

(2) 熱傷,外傷患者

(3) 高度な脊髄損傷,筋萎縮性側索硬化症,重症筋無力症などの自発呼吸能力が障

害された患者

(4) 高度な慢性呼吸器疾患を有する患者

なお,高度な慢性呼吸器疾患とは FEV1.0が体重 1kg 当たり 20ml 未満(たとえ

ば,体重 60kg の場合,FEV1.0が 1.2l 未満)と推察される慢性閉塞性肺疾患や肺

線維症の患者とする.

(5) 高度な中枢神経系障害を有する患者(GCS≦8,頭蓋内出血,脳挫傷,脳浮腫)

なお,GCS については下記の表に従う.

Glasgow Coma Scale(GCS)

(6) 悪性の疾患,他の不可逆的な疾患,または 6 カ月後の死亡率が 50%以上と予想

される疾患を有する患者

(7) 骨髄移植患者

(8) 肺移植患者

(9) 高度な慢性肝臓疾患を有する患者(総ビリルビン>3mg/dl かつアルブミン<

2.8g/dl)

(10)好中球数<1000/mm3の好中球減少症患者

(11)妊婦および妊娠している可能性のある患者

スコアー

項目

6 5 4 3 2 1

開眼

(Eye Open)自発的に

開眼する

呼びかけに

より開眼

する

痛み刺激に

より開眼

する

全く開眼

しない

言語

(Best Verbal Response)

見当識

良好

混乱した

会話

不適切な

言葉

理解不能な

応答反応なし

運動

(Best Motor Response)

命令に

従う

疼痛に適

切に反応屈曲逃避

異常屈曲

反応伸展反応(除脳姿勢)

反応なし

Total(開眼+言語+運動)

障害臓器 診断基準

心臓循環血液量が適正で通常量のinotropic agentsに反応しない

血圧低下(SBP<100mmHg)

肝臓 血清ビリルビン>5mg/dlまたはs-GPT>200IU/l

腎臓 BUN>50mg/dlまたは血清クレアチニン>3mg/dl

消化管出血 輸血を要する消化管出血

中枢神経系 3,3,9度方式による意識レベルで2桁以上

血液凝固系 厚生省DIC基準に基づくDIC

- 537 -

対象疾患(12)他の全ての試験薬剤投与終了後 4 カ月を経過していない患者

(13)その他,治験責任医師または治験分担医師が試験対象として不適当と判断した患者

目標症例数20~30 例

設定根拠:本試験は,SIRS に伴う肺障害患者に対する ONO-5046・Na の有効性を

検討することを目的とする.その際,ARDS Network が最近実施した臨床試験 1) 2)に

準拠した試験方法で行うこととする.症例数については実施可能性を考慮して 20

~30 例を設定した.

使用薬剤 1 バイアル中に ONO-5046・Na として 100mg 含有する凍結乾燥注射剤

用法・用量1)投与方法

ONO-5046・Na を 1 時間当たり 0.20mg/kg の投与速度で静脈内持続投与する.

2)投与期間

14 日間投与する.ただし,5 日間以上投与された症例で投与中に人工呼吸器を離

脱することができた症例は改善中止として,中止してもかまわない.

併用薬剤1)併用禁止薬剤

ウリナスタチンおよび本剤以外の試験薬剤の併用は禁止する.

2)併用可能薬剤

上記併用禁止薬剤以外は併用可能とする.

検査・観察項目1)患者背景

被験者識別コード,薬剤番号,文書同意取得日,性別,年齢(生年月日)*,体重,

SIRS の原因,発症日および基準,基礎疾患,現病歴,感染症状の有無および部位,

既往歴,直近の外科手術の有無および内容,肺障害発現日時**,肺以外の臓器障

害の有無,投与前の肺機能所見および肺障害スコアー,APACHEⅡスコアー***

を症例報告書に記載する.

 *  :年齢は同意取得の時点とする.

 ** :選択基準の肺障害の基準を満たした日時とする.

 ***:集中治療室入室 24 時間以内に下記の表にしたがい最も悪い状態のデータ

より判定する.

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検査・観察項目APACHEⅡスコアー

(A)Acute Physiology score

スコアー4 3 2 1 0 1 2 3 4

体温(℃) ≦29.9 30~31.9 32~33.9 34~35.9 36~38.4 38.5~38.9 39~40.9 ≧41

平均血圧(mmHg) ≦49 50~69 70~109 110~129 130~159 ≧160

心拍数(/min) ≦39 40~54 55~69 70~109 110~139 140~179 ≧180

呼吸数(/min) ≦5 6~9 10~11 12~24 25~34 35~49 ≧50

A-aDO2

(FIO2≧0.5 のとき)<200 200~349 350~499 ≧500

PaO2

(FIO2<0.5 のとき)<55 55~60 61~70 >70

動脈血 pH <7.15 7.15~7.24 7.25~7.32 7.33~7.49 7.50~7.59 7.60~7.69 ≧7.70

血清 HCO3(mMol/l)

(血液ガス分析非施行時)<15 15~17.9 18~21.9 22~31.9 32~40.9 41~51.9 ≧52

血清 Na(mMol/l) ≦110 111~119 120~129 130~149 150~154 155~159 160~179 ≧180

血清 K(mMol/l) <2.5 2.5~2.9 3.0~3.4 3.5~5.4 5.5~5.9 6.0~6.9 ≧7.0

血清クレアチニン(mg/dl)

(急性腎不全があれば 2 倍)<0.6 0.6~1.4 1.5~1.9 2.0~3.4 ≧3.5

ヘマトクリット(%) <20 20~29.9 30~45.9 46~49.9 50~59.9 ≧60

白血球数(×1000) <1 1~2.9 3~14.9 15~19.9 20~39.9 ≧40

Glasgow coma scale 15-GCS

(B) age points

年齢 スコアー

≦44 0

45~54 2

55~64 3

65~74 5

≧75 6

(C) chronic health points

慢性疾患

あり なし

非術後

あるいは

緊急手術後

5 0

定期手術後 2 0

 次の条件を満たす重症臓器不全の既往あるいは免疫抑制状態が,今回の入院に先立って存在する.

肝   :生検で肝硬変と診断,あるいは門脈圧亢進が存在する.

     門脈圧亢進による上部消化管出血の既往がある.

     肝不全・肝性昏睡の既往がある.

心血管系:NYHA Ⅳ度

呼吸器系:慢性の拘束性・閉塞性疾患・血管疾患による,重度の運動制限(階段が昇れない,

     家事ができないなど)がある.慢性の低酸素血症,高炭酸ガス血症,二次的な赤血

     球増加症,40mmHg 以上の重症肺高血圧症,レスピレータ依存が存在する.

腎   :慢性透析施行

免疫不全:感染防御機構を抑制する治療(免疫抑制剤・化学療法・照射療法・長期または大量

     ステロイド投与),あるいは免疫抑制を助長する疾患(白血病・リンパ腫・AIDS

     など)がある.

※ APACHEⅡスコアー = (A)+(B)+(C)

- 539 -

検査・観察項目2)薬剤の使用状況

試験薬剤の投与開始日および投与終了日(14 日後または途中中止時)を症例報告

書に記載する.試験薬剤投与開始から 27 日後までの併用および使用薬剤のうち,

ステロイド剤,抗菌剤,蛋白分解酵素阻害剤,利尿剤の薬剤名,使用量,使用時

期,使用期間を調査し,症例報告書に記載する.

3)下記の項目について,試験薬剤投与直前,投与 1 日後~5 日後までの連日,投与

10 日後,投与 14 日後(または途中中止時)に観察および検査を行い,その内容を

症例報告書に記載する.また,胸部 X 線所見,PaO2/FIO2,PEEP レベルおよび肺

コンプライアンスについては下表にしたがって肺障害スコアーも合わせて記載する.

(1) 臨床症状および理学的検査

体温(1 日の最高温),血圧(1 日の最低値),心拍数(1 日の最高値),呼吸

数(1 日の最高値),尿量(1 日量)

(2) 肺機能所見,血液ガス所見および肺障害スコアー

PEEP レベル,PaO2,FIO2,PaO2/FIO2,PaCO2,A-aDO2,肺コンプライアン

ス,胸部 X 線所見,pH,肺障害スコアー(肺コンプライアンスを除いた 3 項目

肺障害スコアーおよび 4 項目肺障害スコアー)

肺障害スコアー

4)有害事象

試験薬剤投与開始日から27日後までに発生した有害事象*については,その症状,

発現日,程度,試験薬剤の投与継続の有無,処置の有無,試験薬剤との因果関係,

経過(回復した場合はその回復日)を調査し,症例報告書に記載する.試験薬剤

との因果関係が否定できない有害事象(副作用)は,消失または軽快するまで追

跡調査**を行う.重篤な有害事象については 重篤な有害事象が発現した場合の

措置にしたがい医療機関の長(治験審査委員会)および治験依頼者へ報告する.

スコアー

観察項目0 1 2 3 4

PEEP(cmH2O)

0 1~5 6~8 9~11 ≧12

低酸素血症(PaO2/FIO2)

≧300 225~299 175~224 100~174 <100

胸部X線所見異常陰影を認めない

4分割中1分割に異常陰影を認める

4分割中2分割に異常陰影を認める

4分割中3分割に異常陰影を認める

4分割すべてに異常陰影を認める

肺コンプライアンス1)

(ml/cmH2O)≧80 60~79 40~59 20~39 ≦19

1) 肺コンプライアンスは次式にしたがって計算する.

肺コンプライアンス=1回換気量/(最高気道内圧-PEEP圧)

- 540 -

検査・観察項目

 * :有害事象とは医薬品が投与された際に起こる,あらゆる好ましくない,あるいは意図しない徴

候(臨床検査値の異常を含む),症状,または病気のことであり,当該医薬品との因果関係の

有無は問わない.

 **:試験薬剤投与開始から 27 日後までに発現した試験薬剤との因果関係が否定出来ない有害事象

(副作用)が消失または軽快しなかった場合には,投与終了時(14 日後または途中中止時)

の一般臨床検査実施日の 30 日後までの症状の経過を症例報告書に記載する.その後の経過に

ついては別途追跡調査用紙に記載する.なお,何らかの理由により追跡調査が不可能であっ

た場合はその理由を症例報告書または追跡調査用紙に記載する.

(1) 症状の程度

「医薬品等の副作用の重篤度分類基準(平成 4 年 6 月 29 日薬安第 80 号)」を参

考とし,以下の基準にしたがって軽度,中等度,高度の 3 段階で判定する.

程度 判定基準(参考)

軽度 軽微な有害事象と考えられるもの(グレード1)

中等度 重篤な有害事象ではないが,軽微な有害事象でもないもの(グレード2)

高度重篤な有害事象と考えられるもの.すなわち,被験者の体質や発現時の状態などによっては,死亡または日常生活に支障をきたす程度の永続的な機能不全に

陥るおそれのあるもの(グレード3)

(2) 関連性

試験薬剤との因果関係は被験者の状態,既往歴,併用薬剤および発症の時間的関

係を考慮し,以下の 5 段階で判定する.因果関係が否定できないもの,すなわち

1.,2.,3.および 5.と判定されたものを「副作用」として取り扱う.また,いず

れの場合も,判定した根拠を症例報告書のコメント欄に記載する.

因果関係 判定基準(参考)

1.明らかに関連あり試験薬剤投与と時間的に明白な関係があり,その試験薬剤に既知(基礎実験および今までの臨床試験)の反応を示す場合

2.多分関連あり試験薬剤投与と時間的に明白な関係があり,その試験薬剤の薬理作用から予想される反応を示し,かつ被験者の既往などの要因が否定され,当該試験薬剤との関連性が否定できない場合

3.関連ないともいえない試験薬剤投与と時間的に明白な関係があり,被験者の既往などの本剤以外の要因も推定されるが,当該試験薬剤による可能性も除外できない場合

4.関連なし試験薬剤投与と時間的に関係がないと判断される場合,または当該試験薬剤に関連ないとする情報がある場合

5.関連不明 1.~4.の基準に含まれない場合,または評価材料が不足の場合

- 541 -

検査・観察項目(3) 経過

有害事象(症状および臨床検査値異常変動)の経過は,以下の 5 段階で判定する.

経過 判定基準(参考)

1.消失 症状の消失,検査値の正常化あるいは投与前値への回復が認められたもの

2.軽快 程度が軽減したもの,あるいは症状に改善傾向が認められたもの

3.不変 症状や検査値に変化がないもの

4.悪化 症状や検査値の増悪があるもの

5.追跡不能 消失または軽快することなく追跡不能となった場合

5)臨床検査

試験薬剤投与開始前(試験薬剤投与開始日前 7 日間)投与 14 日後(試験薬剤投与

開始 9 日後~28 日後)または途中中止時(試験薬剤投与中止時-5 日~+14 日)

に,以下の項目について検査を実施し,各値毎に正常・異常の判定を行った上,

試験薬剤投与開始前と比較し,その推移より異常変動の有無を判定することとし

た.異常変動を「有」と判断した項目は因果関係の有無にかかわらず,必ず症例

報告書の有害事象の欄にその内容を詳細に記載し,試験薬剤との因果関係を 5 段

階で判定することとした.なお,試験薬剤との関連性の否定出来ない異常変動を

認めた項目は,投与前値または正常値に復するまで追跡調査を行うこととした.

なお,何らかの理由により追跡調査が不可能であった場合はその理由を症例報告

書または追跡調査用紙に記載する.

(1) 検査項目

  ①血液学的検査   :赤血球数,ヘモグロビン,ヘマトクリット値,血小板数,

白血球数,白血球分類(好塩基球,好酸球,好中球,リ

ンパ球,単球)

  ②血液生化学的検査:総蛋白,アルブミン,総ビリルビン,AST(GOT),

ALT(GPT),γ-GTP,ALP,LDH,クレアチニン,BUN,

総コレステロール,Na,K,Cl

  ③凝血学的検査  :フィブリノーゲン,PT,aPTT,FDP

  ④尿定性検査    :蛋白,糖,ウロビリノゲン,潜血

(2) 関連性

試験薬剤との因果関係は被験者の状態,既往歴,併用薬剤および発症の時間的関

係を考慮し,以下の 5 段階で判定する.因果関係が否定できないもの,すなわち

1.,2.,3.および 5.と判定されたものを「副作用」として取り扱う.また,いず

れの場合も,判定した根拠を症例報告書のコメント欄に記載する.

- 542 -

検査・観察項目因果関係 判定基準(参考)

1.明らかに関連あり試験薬剤投与と時間的に明白な関係があり,その試験薬剤に既知(基礎実験および今までの臨床試験)の反応を示す場合

2.多分関連あり

試験薬剤投与と時間的に明白な関係があり,その試験薬剤の薬理作用から予想される反応を示し,かつ被験者の既往などの要因が否定され,当該試験薬剤との関連性が否定できない場合

3.関連ないともいえない試験薬剤投与と時間的に明白な関係があり,被験者の既往などの本剤以外の要因も推定されるが,当該試験薬剤による可能性も除外できない場合

4.関連なし試験薬剤投与と時間的に関係がないと判断される場合,または当該試験薬剤に関連ないとする情報がある場合

5.関連不明1.~4.の基準に含まれない場合,または評価材料が不足の場合

6)その他

(1) 人工呼吸器の装着期間

試験薬剤投与開始から 27 日後までの人工呼吸器の離脱日を調査し,症例報告書

に記載する.また,試験薬剤投与開始から 27 日後までの抜管の有無および抜管

日を症例報告書に記載する.なお,人工呼吸器からの離脱は,ARDS Network

が最近実施した臨床試験 1) 2)に準拠し,試験実施施設間で統一した規定を予め設定

してした.すなわち,原則として下記の表に示した基準で行うこととする.ただ

し,患者の状態を十分に考慮して,この基準と異なる基準で人工呼吸器を離脱す

る必要があると判断した場合には,この限りではない.この基準と異なる基準で,

人工呼吸器を離脱させた場合には,その理由を詳細に症例報告書に記載する.

1. ウィーニング開始の評価

a) 人工呼吸器の設定条件を変更してから12時間以上経過.

b) FIO2 ≦ 0.40,PEEP ≦ 8cmH2O

c) PEEP,FIO2がいずれも前日の値と同じか,またはそれ未満.

d) 神経筋ブロック薬を投与されておらず,神経筋ブロックが認められない.

e) 自発呼吸(吸気努力:Inspiratory Efforts)が見られる.*1

f) 昇圧剤なしでSBP ≧ 90mmHg*2

*1: ベースとしている換気回数において,自発呼吸(吸気努力)がみられ

ない場合,最大5分間,呼吸数を50%下げて評価する.

*2: ≦ 5µg/kg/minのドパミン,ドブタミン,あるいはこれに相当する

低用量の昇圧剤処置は,昇圧剤投与とはみなさない.

a)~f)の基準をすべて満たしているか?

(YES) (NO)

PSレベル0cmH2O

(CPAP = 5cmH2O,FIO2 ≦ 0.40で5分間保持する.)

呼吸数(RR)が35回/分以下か? (NO)

(YES)

毎日,ウィーニング可能かどうかを評価する

人工呼吸管理継続

(翌日再度評価)

- 543 -

検査・観察項目

(YES)

2. ウィーニング開始

ウィーニング中の換気様式は下記のいずれかの方法で行うこと.

a) PSV

b) SIMV

c) PSV + SIMV

なお,ウィーニング開始後,原則として48時間以内にCPAPを開始する.

3. 耐性基準評価(ウィーニングにおける人工呼吸器の補助の軽減には,

下記の基準をいずれも満たすことを考慮して行うこととする)

a) RR < 35/min(5分以内のRR上昇は可とする)

b) SPO2 ≧ 88%(15分未満のSPO2低下は可とする)

c) 呼吸促迫(以下に示す基準を2つ以上満たす)がない

i) 心拍数(HR)が朝8:00時点*1の120%以上(5分間以内であれば可とする)

ii) 呼吸補助筋(Accessory Muscle)の著明な使用

iii) 奇異呼吸(Abdominal Paradox )

iv) 発汗

v) 著明な呼吸困難(肉眼的)

(NO)

(YES) 人工呼吸器による換気補助を止める

4. CPAP

CPAP = 5cmH2O,FIO2 ≦ 0.50で以下の項目を観察する.

a) SPO2 ≧ 90% または PaO2 ≧ 60mmHg

b) 自発呼吸での換気量が ≧ 4ml/kg

c) RR ≦ 35/min

d) 動脈血pH ≧ 7.3

e) 呼吸促迫がない

a)~e)のすべての基準を2時間以上経過後に満たしているか?

(NO)

(YES)

5. 離脱( a)~d)のいずれかの場合)

a) 抜管によるフェイスマスク,鼻カニューレ,Room Air管理

b) Tチューブ呼吸

c) 気管切開下でのマスクによる呼吸

d) PSあるいはIMVなしでCPAP ≦ 5cmH2O

(翌日再度評価)

人工呼吸管理継続

(翌日再度評価)

人工呼吸管理継続

*1:朝8:00時点を原則とし,朝6:00~10:00の時間帯で施設毎に計測時間を

   固定して実施する.

- 544 -

検査・観察項目(2) 転帰

試験薬剤投与開始から 27 日後における生存/死亡(死因)を調査し,死亡例に

ついては,死亡日時,死亡に至る経緯を詳細に症例報告書に記載する.また,死

因について,下記の分類で評価し,試験薬剤との関連性の有無について症例報告

書に記載しコメントする.

  1.急性呼吸不全死 2.多臓器障害による死亡 3.ショックによる死亡

  4.その他

(3) 集中治療室からの退出および SIRS 状態の期間

試験薬剤投与開始から 27 日後において,生存例の集中治療室の退出時間および

SIRS 状態の期間を調査し,症例報告書に記載する.

評価方法および

評価基準

1)Ventilator Free Days(VFD)

VFD は,試験薬剤投与開始から 27 日後までに人工呼吸器を離脱し,48 時間以内

に再装着しなかった生存例の人工呼吸器の非装着期間として算定する.試験薬剤

投与開始から 27 日後までの死亡例や人工呼吸器を離脱しなかった症例は,人工呼

吸器の非離脱症例として取り扱う.すなわち,試験薬剤投与開始から 27 日後まで

の死亡例や人工呼吸器を離脱しなかった症例の VFD は,0 とする.ただし,試験

薬剤投与開始から 27 日後までに人工呼吸器を離脱し,その後試験薬剤投与開始か

ら 27 日後までに死亡した症例については,離脱から死亡までが 48 時間以上であ

れば,人工呼吸器の離脱日から死亡日までの期間を VFD に含める.また,人工

呼吸器の再装着例についても同様に,離脱から再装着までの時間が 48 時間以上で

あれば,その期間を VFD に含める.

試験薬剤投与期間試験薬剤

投与開始前 投与 1-4 日後* 投与 5 日後 投与 10 日後 投与 14 日後 途中中止時投与 27 日後

文書同意取得 ●

患者背景 ●

試験薬剤の投与状況

臨床症状,理学的検査および

肺機能所見,血液ガス所見● ● ● ● ● ●

臨床検査 ● ● ●

有害事象 ●

Ventilator Free Days ●

肺機能改善度 ● ● ● ●

全般改善度 ● ●

集中治療室退出,転帰 ●

評 

SIRS 期間 ●

 *:1~4 日後まで連日測定

- 545 -

評価方法および

評価基準

2)肺機能改善度

試験薬剤投与 5 日後,投与 10 日後および投与 14 日後(または途中中止時)に,

試験薬剤投与前の患者の状態を考慮し,肺障害スコアーの改善度判定基準を参考

に肺機能改善度を判定する.また,最終評価として,試験薬剤投与終了時(14 日

後または途中中止時)の肺機能改善度を判定する.

肺障害スコアーの改善度判定基準

改善度 著明改善 中等度改善 軽度改善 不変 悪化

4項目測定の場合6点以上の低下

4~5点の低下

2~3点の低下

不変または

±1点の変化2点以上の上昇

肺コンプライアンスを除いた3項目測定の場合

4点以上の低下

2~3点の低下

1点の低下不変または

1点の上昇2点以上の上昇

3)全般改善度

試験薬剤投与終了時(投与 14 日後または途中中止時)に,肺機能改善度を主とし

て SIRS 状態の推移などから,全般改善度を 5 段階で判定する.

  1.著明改善  2.中等度改善  3.軽度改善  4.不変  5.悪化

解析方法(プロトコールに記載した内容)

1)解析対象集団

有効性評価項目における主たる解析対象集団は,Per Protocol Set(PPS)とする.

また,参考として,Full Analysis Set(FAS)での解析も行う.安全性評価項目にお

ける解析対象集団はGCP不遵守例でなく,試験薬剤が投与された症例の集団とする.

2)人口統計学的変数,患者特性および観察期基準値

人口統計学的変数,患者特性および観察値の基準値について分布をまとめ要約統

計量を算出する.

・人口統計学的変数

性別,年齢,体重

・患者特性

基礎疾患,SIRS の原因,SIRS 発症から投与開始までの期間,感染症状の有無

および部位,現病歴,既往歴,肺障害発現から投与開始までの時間,肺以外の

臓器障害の有無,臓器障害の数,直近の外科手術の有無および内容

・観察値の基準値

肺機能所見,血液ガス所見,肺障害スコアー,APACHEⅡスコアーなど

3)有意水準

有効性および安全性の検定に関する有意水準は両側 0.05 とし,信頼区間は 95%と

する.

- 546 -

解析方法4)有効性評価項目

主たる解析としては,Ventilator Free Days(VFD)について行い,要約統計量

を算出する.副次的な解析として,肺機能改善度,全般改善度,人工呼吸器の離

脱,転帰,集中治療室からの退出,SIRS 期間,肺機能所見,血液ガス所見,臨床

症状および理学的検査,肺障害スコアー,肺障害の重症度分類および推移につい

て行う.

肺機能改善度,全般改善度では投与期間の各カテゴリーでの頻度,中等度改善以

上の割合と信頼区間を推定する.人工呼吸器の離脱,転帰,集中治療室からの退

出,SIRS 期間では,それぞれ試験薬剤投与 27 日後の人工呼吸器離脱率,生存率,

集中治療室からの退出率,SIRS 状態の寛解率を算出し,信頼区間を推定する.な

お,離脱率,生存率,退出率,寛解率は,Kaplan-Meier 法でも推定する.その際,

Greenwood の公式により信頼区間を推定する.また,50%(median)離脱日数,

生存日数,退出日数,寛解日数などを算出する.肺機能所見,血液ガス所見,臨

床症状,理学的検査および肺障害スコアーでは実測値と試験薬剤投与開始前から

の差の要約統計量を算出する.投与前後の比較を Wilcoxon 符号付順位和検定また

は対応のある t 検定で行う.また,肺障害スコアーについては投与終了時に正常

域(0 点)まで回復した症例の割合を算出する.肺障害の重症度分類および推移で

は,肺障害の重症度分類の試験薬剤投与前後での分布を比較する.

また,探索的に先に実施したの第Ⅲ相二重盲検比較試験や ARDS Network が最近実

施した臨床試験 1) 2)との比較考察を行う.

5)安全性評価

安全性評価は,有害事象,副作用,一般臨床検査について行ない,有害事象,副作

用は有害事象発現率,副作用発現率を算出する.また,有害事象の項目別,因果関

係別,程度別に集計を行う.さらに,一般臨床検査については各時点における要約

統計量を算出する.試験薬剤投与開始前と投与終了時(投与 14 日後または途中中

止時)の比較を Wilcoxon 符号付順位和検定または対応のある t 検定で行う.

(プロトコールに記載した内容からの変更)

肺コンプライアンス,肺コンプライアンススコアー,4 項目肺障害スコアーの投与

終了時は,最終観察データを採用するため LOCF(Last Observation Carry

Forward)を採用する.

- 547 -

医学専門家

試験実施施設数 10 施設

試験期間 年 月~ 年 月

用法用量の設定根拠:

 後期第Ⅱ相試験の結果から 1 時間当たり 0.20mg/kg を至適用量とし,第Ⅲ相二重盲検比較試験におい

て 1 時間当たり 0.004mg/kg に対する優越性が検証された.このことを踏まえ,本試験の投与量は 1 時間

当たり 0.20mg/kg を設定した.また,投与期間は第Ⅲ相二重盲検比較試験と同様に 14 日間とした.

① 症例の内訳

 総症例数は 20 例で,全例 Per Protocol Set(PPS)採用症例であった.

 不適格例(選択基準および除外基準違反例),GCP 不遵守例,併用禁止薬違反例および投与期間 5 日

間以内の症例はなく,全例 PPS 集団となり,PPS 集団と FAS 集団,安全性評価項目における解析対象集

団は同一集団となった.

② 患者背景

 解析対象例 20 例の患者背景を表ト-126に示した.

 年齢は平均 56.0±14.3 歳(平均値±標準偏差)であり,60 歳以上が全体の半数(50.0%)であった.

SIRS の原因は感染症が 70.0%と最も多かった.肺障害の重症度は中等症が約 70%で,肺障害の重症度分

類別では ARDS が 65.0%,ALI が 35.0%であり,ARDS の症例が多かった.臓器障害数別では肺のみが

55.0%,肺+1 臓器が 25.0%,肺+2 臓器が 20.0%であった.集中治療室入室時の全身の重症度の指標で

ある APACHEⅡスコアーは 11~20 点が 45.0%,21 点以上の予後不良となる可能性が高い症例が 55.0%

と半数を占めた.

- 548 -

表ト-126 患者背景

項目 症例数 割合(%)

男 16 (80.0)性別

女 4 (20.0)  40 未満 5 (25.0)40~60 未満 5 (25.0)  60 以上 10 (50.0)

 平均値±標準偏差 56.0±14.3

年齢

(歳)

(最小値 ~ 最大値) (31~75)感染症 14 (70.0)

手術侵襲 2 (10.0)膵炎 1 ( 5.0)

汎発性腹膜炎(十二指腸潰瘍穿孔) 1 ( 5.0)消化管穿孔に伴う腹腔内膿瘍 1 ( 5.0)

SIRS の原因

急性間質性肺炎 1 ( 5.0)無 4 (20.0)

感染症状有 16 (80.0)無 13 (65.0)

外科手術有 7 (35.0)

4~6 4 (20.0)7~9 13 (65.0)

10~12 3 (15.0) 平均値±標準偏差 7.9±1.8

3 項目肺障害スコアー

(点)

(最小値 ~ 最大値) (4~11)6~8 3 (15.0)

9~12 14 (70.0)13~16 3 (15.0)

 平均値±標準偏差     10.8±1.8

4 項目肺障害スコアー

(点)

(最小値 ~ 最大値)      (7~13)ALI 7 (35.0)

肺障害重症度分類ARDS 13 (65.0)0~6 7 (35.0)

7~24 6 (30.0)25~48 3 (15.0)49~72 4 (20.0)

 平均値±標準偏差     21.9±21.4

肺障害発現から

投与開始までの時間

(時間)

(最小値 ~ 最大値)      (1~68)肺のみ 11 (55.0)

肺+1 臓器 5 (25.0)障害臓器数

肺+2 臓器 4 (20.0)無 18 (90.0)

心臓有 2 (10.0)無 19 (95.0)

肝臓有 1 ( 5.0)無 17 (85.0)

腎臓有 3 (15.0)無 19 (95.0)

消化管出血有 1 ( 5.0)無 16 (80.0)

中枢神経系有 4 (20.0)無 18 (90.0)

「肺以外の障害臓器」の内訳

血液凝固系有 2 (10.0)

0~3 16 (80.0)4~7 3 (15.0)

8~14 1 ( 5.0) 平均値±標準偏差      2.7±3.2

SIRS 発症から

投与開始までの期間

(日)

(最小値 ~ 最大値)      (0~14)

- 549 -

表ト-126 患者背景(つづき)

項目 症例数 割合(%)

      0.4 以下 1 ( 5.0)0.41~0.6 3 (15.0)0.61~0.8 8 (40.0)0.81~1.0 8 (40.0)

  平均値±標準偏差     0.778±0.193

FIO2

(最小値 ~ 最大値)     (0.40~1.00)     7.4 未満 3 (15.0%)

   7.4~7.45 未満 9 (45.0%)

  7.45~7.5 未満 4 (20.0%)

     7.5 以上 4 (20.0%)

 平均値±標準偏差 7.43±0.07

pH

(最小値 ~ 最大値) (7.3~7.6)

60 未満 6 (30.0)60~80 未満 12 (60.0)

80~100 未満 1 ( 5.0) 100 以上 1 ( 5.0)

 平均値±標準偏差 67.32±16.57

平均血圧

(mmHg)

(最小値 ~ 最大値) (46.3~120.0) 1.0 未満 12 (60.0)1.0~3.0 未満 4 (20.0)3.0~5.0 未満 3 (15.0) 5.0 以上 1 ( 5.0)

 平均値±標準偏差 1.56±1.50

総ビリルビン

(mg/dl)

(最小値 ~ 最大値) (0.3~5.5) 30 未満 12 (60.0)30~50 未満 4 (20.0)

50~100 未満 3 (15.0)100~200 未満 1 ( 5.0)

 平均値±標準偏差 35.2±29.6

ALT(GPT)(IU/l)

(最小値 ~ 最大値) (9~132) 25 未満 11 (55.0)25~50 未満 7 (35.0)50~75 未満 1 ( 5.0) 75 以上 1 ( 5.0)

 平均値±標準偏差 27.44±23.31

BUN(mg/dl)

(最小値 ~ 最大値) (4.1~102.0) 1.5 未満 15 (75.0)1.5~3.0 未満 3 (15.0)3.0~4.5 未満 2 (10.0)

 平均値±標準偏差 1.318±1.100

クレアチニン

(mg/dl)

(最小値 ~ 最大値) (0.37~4.40) 10 未満 6 (30.0)10~20 未満 8 (40.0)20~30 未満 6 (30.0)

 平均値±標準偏差 14.47±7.13

血小板数

(×104/µl)

(最小値 ~ 最大値) (3.3~26.5)200~400 未満 4 (20.0)400~600 未満 10 (50.0) 600 以上 6 (30.0)

 平均値±標準偏差 547.3±214.6

フィブリノーゲン

(mg/dl)

(最小値 ~ 最大値) (287~1101)11~20 9 (45.0)

21 以上 11 (55.0)

 平均値±標準偏差 21.8±6.7APACHEⅡスコアー

(最小値 ~ 最大値) (12~35)

- 550 -

③ 総合評価

i)Ventilator Free Days(VFD)(主評価項目)

 主評価項目である VFD を表ト-127に示した.本試験は人工呼吸器の離脱に際し,予め設定した人工呼

吸器の離脱基準で人工呼吸器を離脱させ,そこから得られた VFD を有効性の主評価項目とした.その結

果,VFD は 14.3±8.6 日(平均値±標準偏差)であった.中央値は 19.0 日,25%点は 7.0 日,75%点は 20.5

日であった.また,最小値は 0 日で,死亡例 2 例および投与開始から 27 日後に人工呼吸器を最終離脱した

1 例の計 3 例であり,最大値は 24 日で,投与開始 3 日後に離脱した 2 例であった.

表ト-127 Ventilator Free Days(VFD)

症例数 平均値±標準偏差 中央値 25%点 75%点 最小値 最大値

20 14.3±8.6 19.0 7.0 20.5 0 24

 なお,本試験では人工呼吸器の離脱に際しては,原則として予め設定した人工呼吸器の離脱基準に準じ

て人工呼吸器を離脱させることとし,VFD を評価することとした.ただし,患者の状態を十分に考慮し

て,この基準と異なる基準で人工呼吸器を離脱する必要があると判断した場合には,この限りではなく,

この基準と異なる基準で人工呼吸器を離脱させた理由を詳細に症例報告書に記載することとした.

 人工呼吸器からの離脱例 18 例のうち 3 例(症例番号 番, 番, 番)は,患者の状態を十分に考

慮した上で,予め設定した人工呼吸器の離脱基準と一部異なる基準で離脱した.症例番号 , 番は,

人工呼吸器の離脱前に再度耐性基準を確認しながらウィーニングを実施する必要がなかった症例であり,

症例番号 番は,離脱手順の最終段階の CPAP トライアル中に人工呼吸器を 5 分間起動した症例である.

以下にそれぞれの経過および予め設定した基準と一部異なる基準で人工呼吸器から離脱させた理由を示し

た.

 症例番号 番は,投与開始 21 日後にウィーニングの開始基準を満たすまで肺機能が改善し,予め設定

した手順にしたがって離脱行為を進め,同日人工呼吸器を離脱した.その翌日,呼吸努力が強くなり,呼

吸数 40 回/分以上,1 回換気量 200ml 以下となったため,人工呼吸器を再起動した.3 日後に再びウィー

ニングの開始基準を満たした.そのウィーニング開始の評価の手順として人工呼吸器による換気補助を停

止した際,すでにウィーニング終了の耐性基準も同時に満たしており,呼吸数 30 回/分,経皮的酸素飽和

度(SpO2)100%,PaO2101mmHg,呼吸促迫がなく,呼吸状態が極めて良好であった.このことから,

手順にしたがってウィーニングを開始し,再度人工呼吸器を起動した状態で耐性基準を満たすか否かを確

認する必要はないと考え,そのまま人工呼吸器を停止した状態で CPAP にて管理し,その後手順にした

がって離脱させた.

 症例番号 番は,投与開始 13 日後にウィーニングの開始基準を満たすまで肺機能が改善し,予め設定

した手順にしたがって離脱行為を進め,投与開始 15 日後に離脱手順の最終段階の CPAP トライアルを開

始したが,呼吸数40回/分となったため,手順にしたがって人工呼吸器を再起動した.その翌日,再びウィー

- 551 -

ニングの開始基準を満たした.そのウィーニング開始の評価の手順として人工呼吸器による換気補助を停

止した際,すでにウィーニング終了の耐性基準も同時に満たしており,呼吸数 32 回/分,SpO2 99%と,

呼吸状態が安定していた.このことから,手順にしたがってウィーニングを開始し,再度人工呼吸器を起

動した状態で耐性基準を満たすか否かを確認する必要はないと考え,そのまま人工呼吸器を停止した状態

で CPAP にて管理し,その後手順にしたがって離脱させた.

 上記の 2 例が予め設定した人工呼吸器の離脱基準に完全に準じて人工呼吸器を離脱させ得なかった理由

は,ウィーニング開始前に肺機能が良好な状態まで改善しており,患者の陽圧による肺障害などを考慮す

ると,再度手順にしたがって人工呼吸器を起動する必要はないと判断されたためである.

 症例番号 番は,離脱手順の最終段階の CPAP トライアル開始から 45 分後に,患者が人工呼吸器の離

脱に対する不安感に伴う息苦しさを訴えたため,患者の不安感除去に対する偽処置として,人工呼吸器を 5

分間起動させた.この偽処置により,人工呼吸器の離脱に対する不安感の消失とともに呼吸困難感が直ちに

消失したため,人工呼吸器を停止して CPAP を再開し,約 2 時間後に人工呼吸器を離脱させた.

ii)肺機能改善度

 肺機能改善度を表ト-128に示した.投与終了時の肺機能改善度は「著明改善」が 65.0%(13/20 例),

「中等度改善」以上が 85.0%(17/20 例)であった.また,肺機能改善度の推移は,改善率(「中等度改善」

以上)で投与 5 日後 35.0%(7/20 例),10 日後 70.0%(14/20 例),14 日後 85.0%(17/20 例)と経日

的に上昇した.

 表ト-128 肺機能改善度

測定時期著明改善

中等度改 善

軽度改善

不変 悪化 計「著明改善」

(%)「中等度改善」

以上(%)

投与 5 日後 3 4 6 5 2 20 15.0 35.0

投与 10 日後 11 3 3 2 1 20 55.0 70.0

投与 14 日後 13 4 0 1 2 20 65.0 85.0

投与終了時 13 4 0 1 2 20 65.0 85.0

iii)全般改善度

 全般改善度を表ト-129に示した.

 全般改善度は「著明改善」が 65.0%(13/20 例),「中等度改善」以上が 85.0%(17/20 例)であった.な

お,表ト-136に示した投与終了時の肺機能改善度と全般改善度の評価が異なる症例はなかった.

表ト-129 全般改善度

著明

改善

中等度

改 善軽度

改善不 変 悪 化 計

「著明改善」(%)

「中等度改善」

以上(%)

13 4 0 1 2 20 65.0 85.0

- 552 -

iv)人工呼吸器離脱率

 人工呼吸器離脱率の推移および人工呼吸器離脱率をそれぞれ図ト-45および表ト-130に示した.

 人工呼吸器離脱率は 14 日後 60.0%(12/20 例),27 日後 80.0%(16/20 例)と推移し,8.0 日後に 50%

の症例が人工呼吸器から離脱した.

0

2 0

4 0

6 0

8 0

1 0 0

0 5 1 0 1 5 2 0 2 5 3 0

人工

呼吸

器離

脱率

(%

人工呼吸器離脱率

95%信頼限界

95%信頼区間(上限)

2 7 (日)

追跡可能な患者数

20 17 9 8 6 6  5

図ト-45 人工呼吸器離脱率の推移

表ト-130 人工呼吸器離脱率

測定時期 症例数 離脱 離脱せず 離脱率(%) 95%信頼区間 50%離脱率

投与 14 日後 20 12 8 60.0 38.5~81.5

投与 27 日後 20 16 4 80.0 62.5~97.58.0 日後

 なお,人工呼吸器から離脱後 48 時間を超えて再度人工呼吸器による呼吸管理が必要となった 2 例(症

例番号 番, 番)の詳細を以下に示した.

 症例番号 番は,試験薬剤を 14 日間投与し,その 2 日後に人工呼吸器を離脱した.離脱時の呼吸状

態は人工呼吸器による換気補助を止めた状態(CPAP5cmH2O)で PaO2120.4mmHg,換気量 6.3ml/kg,

呼吸数 22 回/分,動脈血 pH7.467,呼吸促迫がなかった.離脱 7 日後に嘔吐し,誤嚥を起こし,その後呼

吸状態が悪化し人工呼吸管理(PEEP8cmH2O,FIO20.7 ,PaO277.8mmHg)が再び実施された.その後,

投与 27 日後まで人工呼吸器を離脱しなかった.なお,本症例は,離脱から再装着までに 48 時間を超えて

おり,VFD は再装着までの 6 日となった.本症例の離脱後の経過は FIO20.4,CPAP5cmH2O で安定した

PaO2が得られており,この間呼吸数は 34 回/分以下で,呼吸促迫の所見は認められておらず,人工呼吸

器の離脱時期は適切であった.

- 553 -

0

20

40

60

80

100

0 5 10 15 20 25 30(日)

生存

率(

%)

生存率

95%信頼限界

27

 症例番号 番は,試験薬剤を 14 日間投与し,人工呼吸器を離脱した.離脱時の呼吸状態は人工呼吸器

による換気補助を止めた状態(CPAP5cmH2O)で SpO294.9%,PaO273.3mmHg,換気量 9.3ml/kg,呼

吸数 20 回/分,動脈血 pH7.45,呼吸促迫がなかった.離脱 9 日後に,基礎疾患である急性間質性肺炎の

増悪により,呼吸状態が再び悪化し,呼吸仕事量が増大したため再び人工呼吸管理となった.その後,投

与27日後まで人工呼吸器を離脱しなかった.本症例は,離脱から再装着までに48時間を超えており, VFD

は再装着までの 8 日となった.

 いずれの症例も,新たな肺障害の発症により人工呼吸管理が必要になったものと判断された.

v)転帰

 生存率の推移および生存率をそれぞれ図ト-46および表ト-131に示した.生存率は14日後95.0%(19/20

例),27 日後 90.0%(18/20 例)と推移した.また,死亡例が 2 例見られたが,その死因はいずれも多

臓器障害と判定され,それぞれ投与 9 日後,投与 15 日後に死亡した.肺障害に起因したと考えられる急

性呼吸不全のみによる死亡はなかった.

追跡可能な患者数

20 20 19 19 18 18 18

図ト-46 生存率の推移

表ト-131 生存率

測定時期 症例数 生存 死亡 生存率 (%) 95%信頼区間

投与 14 日後 20 19 1 95.0 85.4~100.0

投与 27 日後 20 18 2 90.0 76.9~100.0

- 554 -

 試験薬剤投与開始 28~89 日後までの試験期間外に死亡した症例は現時点で(平成 年 月 日),

総症例 20 例中 4 例(20.0%)を認めた.急性間質性肺炎の悪化で死亡した 1 例を除き,その他の症例は

いずれも多臓器障害を死因とした.また,いずれの症例も因果関係はないと判断された.

 以下に,試験期間中の 2 例の死亡例およびその他の重篤な有害事象(腸炎の 1 例)の計 3 例の詳細,ま

た試験期間外の 4 例の死亡例の詳細を示した.

・試験期間中の死亡例およびその他の重篤な有害事象(3 例)

 試験期間中の死亡例は 20 例中 2 例(10.0%)であったが,いずれもその死因は多臓器障害であり,試

験薬剤との因果関係は関連なしと判定された.また,試験期間中のその他の重篤な有害事象として腸炎が

1 例 (5.0%)あったが,試験薬剤との因果関係は関連なしと判定された.

 以下にその詳細を示した.

 症例番号 番:6 歳の女性例であり,約 2 年程前に大腸癌切除に伴い,S 状結腸人工肛門造設し,1 カ

月前に横行結腸人工肛門造設,2 週間前に横行結腸人工肛門閉鎖術を施行した症例である.術後管理中に

敗血症(血液培養にてクレブシェラ,サレチア確認)となり,DIC,腎障害に加えて肺障害を呈し,本試

験を開始した.試験開始後も感染源を探したが,敗血症の原因が特定できず,原因不明のまま敗血症性ショッ

クの状態が継続した.試験開始前から併発していた DIC に起因し,血小板数が投与前 3.3 万/mm3から投

与 1 日後に 2.8 万/mm3に低下し,血清 FDP が投与前 4µg/ml から投与 6 日後に 10µg/ml に増加した.新

鮮凍結血漿の輸血や持続的血液濾過透析を施行したが,血小板は投与 9 日後に 0.9 万/mm3まで低下し,

血清 FDP は 9µg/ml となった.さらに,AST(GOT),ALT(GPT)がそれぞれ投与前 16,11IU/l から

投与 2 日後に 468,297IU/l,総ビリルビンが投与前 0.6mg/dl から投与 4 日後に 3.1mg/dl とそれぞれ異

常変動を示し,肝障害を呈し,投与 9 日後にそれぞれ 177IU/l,111IU/l,16.3mg/dl となり,同日多臓器

障害のため死亡した.試験薬剤は死亡直前まで継続投与した.死因は,敗血症に起因した多臓器障害であ

り,これらの臨床検査値異常変動および死亡との試験薬剤の因果関係は関連なしと判定された.なお,剖

検により,特筆すべき所見は見いだせなかった.

 症例番号 番:7 歳の男性例であり,Wergener 肉芽腫治療のため 8 カ月前からステロイドで加療中

であったが,右踵に蜂窩織炎が発現するに至り,入院となった症例である.入院後,呼吸不全,敗血症性

ショックを呈し,試験開始時には肺障害以外に中枢神経障害を有していた.試験開始後も呼吸機能低下に

加え,心機能も著しく低下した.さらに,BUNおよび血清クレアチニンが投与前それぞれ7mg/dl,0.38mg/dl

から投与 14 日後に 59mg/dl,1.58mg/dl まで上昇した.持続的血液濾過透析を施行したが,改善するこ

となく,投与 15 日後に多臓器障害のため死亡した.死因は,Wergener 肉芽腫治療のためステロイド長

期投与による免疫機能低下に伴う感染のコントロールが十分でなかったことによる多臓器障害に基づくも

のであり,これらの臨床検査値異常変動および死亡との試験薬剤の因果関係は関連なしと判定された.

 症例番号 番:6 歳の男性例であり,食道癌の術後に急性肺障害を発症し,本試験を開始した.投与

7 日後に人工呼吸器から離脱できるまでに肺機能が改善し,投与 10 日後に試験薬剤の投与が中止された.

投与 14 日後に白血球数が高値(12100/mm3)となり,縫合不全を疑ったが,吻合部造影により否定され

- 555 -

た.投与 24 日後に糞便中から腸粘膜の脱落と思われる偽膜を認め,25 日後に大腸ファイバーにて腸炎を

認めた.腸炎の発現は腸の虚血あるいは抗生剤による腸内細菌叢の異常に起因したものとの判断から,試

験薬剤との因果関係は関連なしと判定された.なお,本症例は,投与 48 日後に多臓器障害に陥り死亡し

た.なお,剖検により,特筆すべき所見は見いだせなかった.

 これら 3 例の症例について,効果安全性評価委員会により,治験責任医師の判断した試験薬剤との因果

関係の妥当性を検討した.その結果,症例番号 番は,臨床経過から判断して死因は敗血症に起因した多

臓器障害と考えられることから,治験責任医師の判断は妥当なものと判断された.また,症例番号 番

は,肺障害以外の臓器障害の合併に加えて感染をコントロールできなかったという臨床経過を踏まえて,

治験責任医師の判断は妥当なものと判断された.さらに,症例番号 番は,腸炎の発現は腸の虚血ある

いは抗生剤による腸内細菌叢の異常に起因するものと考えられ,試験薬剤の作用から虚血・抗菌作用を示

すとは考えられないことから,治験責任医師の判断は妥当なものと判断された.

 以上,これらの 2 例の死亡例と 1 例の重篤な有害事象は,いずれも本疾患の病態の増悪に伴うもので,

効果安全性評価委員会の見解を踏まえ,治験責任医師の判断は適切であると判断した.

・試験期間外の死亡例(4 例)

 また,試験期間外の死亡の有無を投与開始から 89 日後まで追跡した.試験薬剤投与開始 28 日~ 89 日

後までの死亡例は 4 例(症例番号 番, 番, 番, 番)であった.急性間質性肺炎の悪化で死亡

した 1 例を除き,いずれも多臓器障害を死因とした.また,いずれの症例もとの因果関係は関連なしと判

定された.なお,症例番号 番は本項に先述した.

 症例番号 番:6 歳の男性例であり,呼吸器感染症を原因に肺障害となり,本試験を開始した症例で

ある.試験薬剤投与後,肺機能は改善し 25 日後に人工呼吸器を離脱した.試験薬剤投与終了後から死亡

までの約 1 カ月間,白血球数が 10000~18800/mm3,CRP が 11.85~16.75mg/dl の高値で推移した.43

日後循環動態が悪化し,44 日後に多臓器障害により死亡した.

 症例番号 番:6 歳の男性例であり,出血性胃潰瘍にて緊急入院し,その後敗血症から肺障害となり,

本試験を開始した症例である.試験薬剤投与後,肺機能は改善し 15 日後に人工呼吸器を離脱して一般病

棟に移った.しかし,血球貪食症候群による血小板数低下,DIC,再度全身性感染症を起こし,42 日後

に多臓器障害により死亡した.

 症例番号 番:6 歳の男性例であり,急性間質性肺炎を原因として SIRS となり本試験を開始した症

例である.試験薬剤投与後,肺機能は改善し 13 日後に人工呼吸器を離脱し,翌日試験薬剤投与を終了し

た.21 日後頃から徐々に白血球,血小板数が減少したため,試験薬剤投与終了後から投与開始していた

免疫抑制剤(エンドキサン)を中止した.喀痰,気管切開部分泌物,血液から MRSA などが検出され,

各種抗菌剤を投与したが,感染症のコントロールが不良となり,全身状態が悪化し,肝機能低下も見られ,

多臓器障害の様相を呈してきた.41 日後に急性間質性肺炎の悪化を死因として死亡した.

 なお,死亡症例一覧表を概要の別冊 P.199 に示した.

- 556 -

vi)安全性

(i)有害事象

 有害事象および副作用の発現率を表ト-132に示した.また,程度および因果関係別の有害事象を表ト-133

に示した.有害事象の発現率は 85.0%(17/20 例)で,自覚症状・他覚所見が 11 件(8 例),臨床検査値の異

常変動が 62 件(14 例)あった.自覚症状・他覚所見の内訳は,皮疹,発熱が各 2 件,発疹,陰部湿疹,皮膚

びらん,腸炎,心房細動,発作性頻脈,腎障害が各 1 件であった.臨床検査値の異常変動の内訳は,γ-GTP 上

昇が 12 件で最も多く,次いでALP 上昇が 8 件,AST(GOT)上昇,ALT(GPT)上昇が各 7 件,総ビリル

ビン上昇が 6 件の順であった.

 このうち,試験薬剤との関連性の否定出来ない有害事象,すなわち副作用の発現率は 25.0%(5/20 例)

であり,いずれも臨床検査値の異常変動で,16 件(5 例)あった.その内訳と程度はγ-GTP 上昇が 5 件

(中等度 3 件,軽度 2 件),AST(GOT)上昇,ALT(GPT)上昇,ALP 上昇が各 3 件(ALP 上昇の軽

度 1 件以外はいずれも中等度),総ビリルビン上昇が 2 件(中等度,軽度各 1 件)であった.いずれも高

度なものはなく,投与終了後に軽快あるいは消失した.

 有害事象および副作用は肝機能に関係する項目が多かった.

表ト-132 有害事象および副作用の発現率

発現例数/安全性評価例数 発現率

有害事象 17 例/20 例 85.0%

副作用 5 例/20 例 25.0%

表ト-133 程度および因果関係別の有害事象軽度 中等度 高度

関連性の有無 関連性の有無 関連性の有無器官分類 内容

あり なし計

あり なし計

あり なし計

発疹 1 1陰部湿疹 1 1皮疹 2 2

皮膚・皮膚付属器障害

皮膚びらん 1 1消化管障害 腸炎 1 1

AST(GOT)上昇 3 3 3 1 4ALT(GPT)上昇 3 3 3 1 4

総ビリルビン上昇 1 1 2 1 2 3 1 1肝臓・胆管系障害

γ-GTP 上昇 2 4 6 3 3 6ALP 上昇 1 4 5 2 1 3

代謝・栄養障害LDH 上昇 2 2心房細動 1 1

心拍数・心リズム障害発作性頻脈 1 1赤血球減少 1 1

ヘマトクリット値減少 1 1ヘモグロビン減少 1 1

赤血球障害

ウロビリノゲン陽性 2 2白血球・網内系障害 白血球増多 1 1 2 2

- 557 -

表ト-133 程度および因果関係別の有害事象(つづき)軽度 中等度 高度

関連性の有無 関連性の有無 関連性の有無器官分類 内容

あり なし計

あり なし計

あり なし計

血小板減少 1 1血清 FDP 増加 1 1 1 1

プロトロンビン時間

延長(濃度減少) 1 1 1 1

血小板・出血凝血障害

aPTT 延長(濃度減少) 1 1血清クレアチニン上昇 2 2

腎障害 1 1泌尿器系障害

BUN 上昇 2 2 2 2一般的全身障害 発熱 2 2

計 4 32 36 12 18 30 0 7 7

(ii)臨床検査成績

 関連性の否定出来ない臨床検査値異常変動症例一覧を表ト-134に示した.関連性の否定できない 5 例は

いずれも試験薬剤との関連性を関連ないともいえないとされ,いずれも肝機能パラメータに関するものであっ

た.その程度が高度と判定された症例は 1 例もなく,中等度と判定された症例(症例番号 番, 番,

番)が 3 例,軽度と判定された症例(症例番号 番, 番)が 2 例であった.以下にこの 5 例の詳細な内

容を示した.

表ト-134 関連性の否定出来ない臨床検査値変動症例一覧検査値の推移 1)

性別・年齢

(歳)

項目 程度 基礎疾患SIRS の

原因

投与

期間

(日) 投与前 投与中投与

終了後

追跡

調査

併用薬剤

2)

3γ-GTP 軽度 薬物中毒 感染症 9 81↑ - 428↑ 149↑

ソル・メドロール・注,ケイテン・注,ダラシン S・注,パンスポリン・注,

カルベニン点滴用・注

AST(GOT) 16 151↑ 71↑ 17 ③

ALT(GPT) 20 183↑ 229↑ 21 ③

γ-GTP 43↑ - 608↑ 94↑ ③

5

ALP

中等度 消化管穿孔

汎発性腹膜炎

(十二指腸

潰瘍穿孔)

12

132 - 807↑ 227

セファメジン・注,ラシックス・注

総ビリルビン 1.1 2.5↑ 2.6↑ 1.0 ③

γ-GTP 23↑ 36↑ 137↑ 22 ③

3ALP

軽度

脾臓摘出後

感染症

(敗血症)

感染症 9

134 460↑ 523↑ 271

ソル・メドロール・注,サクシゾン・注,チエナム・注,ペニシリン G・注,スルペラゾン・注,エフオーワイ・注,

ラシックス・注 ③

AST(GOT) 38 116↑ 152↑ 19 ③

ALT(GPT) 24 96↑ 164↑ 23 ③

γ-GTP 27 - 161↑3) 45 ③

6

ALP

中等度 消化管穿孔 感染症 7

128 - 632↑ 230

ブロアクト・注,ダラシン S・注,フルマリン・注,ラシックス・注

総ビリルビン 0.9 4.9↑ 4.1↑ 0.9 ③

AST(GOT) 136↑ 117↑ 146↑ 19 ③

ALT(GPT) 72↑ 81↑ 128↑ 25 ③

6

γ-GTP

中等度 肺炎 感染症 9

167↑ 452↑ 603↑4) 126↑

サクシゾン・注,モダシン・注,ダラシン S・注,ジフルカン・注,タゴシッド・注,ミノマイシン・注,

フサン・注,ラシックス・注,ソルダクトン・注,ダイアート

                  1) 単位:総ビリルビン(mg/dl),総ビリルビン以外の項目(IU/l) 異常値(↑:高値,↓:低値)

                  2) 試験薬剤との関連性:①明らかに関連あり, ②多分関連あり, ③関連ないともいえない, ⑤関連不明

                  3) 投与終了 5 日後,4) 投与終了 1 日後

- 558 -

 初めに,程度が中等度の 3 例について示した.

 症例番号 番:投与前の AST(GOT),ALT(GPT),ALP は正常,γ-GTP は軽微な異常値(43IU/l)

であった症例である.投与 7 日後に AST(GOT)151IU/l,ALT(GPT)183IU/l,および投与 10 日後

に γ-GTP608IU/l,ALP807IU/l とそれぞれ異常変動を示し,いずれもその程度は中等度と判定された.

投与 6 日後には SIRS 状態から寛解し,人工呼吸器から離脱しており,全身状態は回復傾向にあり,病態

の推移に起因するとは考えにくい.また,試験薬剤投与前から投与 6 日後まで投与している抗菌剤(セファ

メジン),本剤投与開始日のみ投与した利尿剤(ラシックス)により誘発されたとも考えにくい.しかし,

試験薬剤投与開始と異常変動発現日に 7 日間以上のずれがあることから,試験薬剤との因果関係は関連あ

りと判定せず,関連ないともいえないと判定された.試験薬剤投与終了 5 日後には AST(GOT)が正常

化(37IU/l),投与終了 21 日後には ALT(GPT)および ALP が正常化(それぞれ,21IU/l,227IU/l)

した.なお,投与終了 21 日後ではγ-GTP が異常値(94IU/l)であったが,推移からみて軽快したと判断

でき,安全性上問題ないとして追跡を終了した.

 症例番号 番:投与前の各肝機能パラメータはいずれも正常であった症例である.投与 5 日後に AST

(GOT)116IU/l,ALT(GPT)96IU/l,投与 6 日後に ALP 632IU/l,および投与 11 日後(投与終了 5 日

後)にγ-GTP 161IU/l とそれぞれ異常変動を示し,いずれもその程度は中等度と判定された.投与 6 日後に

併用していた抗菌剤(ブロアクト)を中止することにより,AST(GOT),ALT(GPT)は発現から 13 日

後に正常化(それぞれ 11,19IU/l),遅れてγ-GTP は 16 日後に正常化(45IU/l)および ALP は 21 日後に

正常化(230IU/l)した.試験薬剤の投与開始時期に比べ,異常値の発現時期が遅れており,時間的に異な

り,併用した抗菌剤(ブロアクト,ダラシン S,フルマリン),利尿剤(ラシックス)に起因するものと考

えられる.しかし,試験薬剤の関与も完全に否定し得ないことから,いずれも関連ないともいえないと判定

された.併用薬剤の中止や病態の改善とともにいずれの肝機能パラメータも処置なく消失,正常化した.

 症例番号 番:各肝機能パラメータのうち,総ビリルビンを除いて,AST(GOT),ALT(GPT)お

よびγ-GTP は投与前から異常値であった症例である.投与 3 日後に総ビリルビン 2.1mg/dl,投与 7 日後

に AST(GOT)117IU/l,ALT(GPT)81IU/l,γ-GTP452IU/l とそれぞれ異常変動を示し,いずれもそ

の程度は中等度と判定された.投与 7 日後,9 日後にそれまで併用していた抗菌剤のタゴシッドおよびジ

フルカンをそれぞれ中止することにより,AST(GOT),ALT(GPT)は発現から 14 日後に正常化(そ

れぞれ 25,37IU/l),また,総ビリルビンは発現から 25 日後に正常化(0.9mg/dl)した.これらの上昇

は,抗菌剤(タゴシッド,ジフルカン)を含めたいくつかの併用薬剤の影響であると考えられる.しかし,

異常値の発現から消失までの期間が試験薬剤および他の併用薬剤の投与期間と重複していることから,試

験薬剤の関与も完全に否定し得ない.よって,いずれの因果関係も関連ないともいえないと判定された.

 次に,程度が軽度の 2 例について示した.

 症例番号 番:大量の眠剤を服用した薬物中毒により反応がないため救急で搬送され,誤嚥性肺炎を合

併,SIRS に伴う肺障害に至った症例である.本試験以前より軽度の肝障害を合併し,投与前よりγ-GTP

は異常値であったが,症状改善に伴う試験薬剤投与中止時(投与 8 日後)にγ-GTP が異常(428IU/l)で

- 559 -

あり,その程度を軽度と判定された.その後,投与終了 5 日後,8 日後に 219IU/l,149IU/l と軽快した

ことから,試験薬剤との因果関係は関連ないともいえないと判定された.

 症例番号 番:投与前の各肝機能パラメータのうち,総ビリルビン,ALP は正常,γ-GTP は軽微な異

常値(23IU/l)であった症例である.投与 2 日後,4 日後および 5 日後にそれぞれγ-GTP36IU/l,総ビリ

ルビン 2.5mg/dl および ALP460IU/l とそれぞれ異常変動を示し,いずれもその程度は軽度と判定された.

本症例は,腸炎の症状を初発とした敗血症患者で,腸管運動が不良で胆汁排泄が悪く,総ビリルビンが上

昇し,γ-GTP,ALP も胆汁うっ滞によって上昇した可能性がある.試験薬剤投与 7 日後から胃管より利胆

剤(ウルソ顆粒 150mg/日)を 5 日間投与した.試験薬剤は肺障害の改善が認められたことから 8 日後に

改善中止され,中止後から総ビリルビンが下がり始め,発現から 9 日後に正常化(1mg/dl),遅れて 15

日後に ALP が正常化(271IU/l),および 27 日後にγ-GTP が正常化(22IU/l)した.敗血症(腸炎)の

改善に伴い,各肝機能パラメータも改善したと考えるのが自然である.しかし,試験薬剤によるものでは

ないとその関連性を十分に否定できないことから,因果関係は関連ないともいえないと判定された.

 上記の表ト-133程度および因果関係別の有害事象の対応と,表ト-134関連性の否定できない臨床検査

異常変動症例一覧の対応,およびその項目に該当する症例を表ト-135に示した.

表ト-135 関連性が否定できない臨床検査異常変動と有害事象

      (関連性が否定できない)の対応,および症例の対応表

有害事象名

(関連性が否定できない)

関連する臨検値

異常変動項目症例数 症例番号

ALP上昇 ALP 3

ALT(GPT)上昇 GPT 3

AST(GOT)上昇 GOT 3

γ-GTP上昇 γ-GTP 5

総ビリルビン上昇 総ビリルビン 2

- 560 -

0

20

40

60

80

100

0 5 10 15 20 25 30 (日)

集中治療室からの退出率(%)

集中治療室からの退出率

95%信頼限界

95%信頼区間(上限)

27

vii) 集中治療室からの退出率

 集中治療室からの退出率の推移および集中治療室からの退出率をそれぞれ図ト-47 および表ト-136 に

示した.集中治療室からの退出率は 14 日後 45.0%(9/20 例),27 日後 70.0%(14/20 例)と推移し,

16.0 日後に 50%の症例が集中治療室から退出した.

追跡可能な患者数

20 20 14 11 7 7 7

図ト-47 集中治療室からの退出率の推移

表ト-136 集中治療室からの退出率

測定時期 症例数 退出退出

せず

退出率

(%)95%信頼区間 50%退出率

投与 14 日後 20 9 11 45.0 23.2~66.8

投与 27 日後 20 14 6 70.0 49.9~90.116.0 日後

- 561 -

0

20

40

60

80

100

0 5 10 15 20 25 30 (日)

SIR

S寛解率(%)

SIRS寛解率95%信頼限界

27

viii)SIRS 期間

 SIRS 寛解率の推移および SIRS 寛解率を図ト-48および表ト-137に示した.

 SIRS 状態の寛解率は 14 日後 40.0%(8/20 例),27 日後 60.0%(12/20 例)と推移し,16.5 日後に

50%の症例が SIRS 状態から寛解した.

追跡可能な患者数

20 20 17 12 9 8 8

図ト-48 SIRS 寛解率の推移

表ト-137 SIRS 寛解率

測定時期 症例数 寛解 寛解せず寛解率

(%)95%信頼区間 50%寛解率

投与 14 日後 20 8 12 40.0 18.5 ~ 61.5

投与 27 日後 20 12 8 60.0 38.5 ~ 81.516.5 日後

ix)肺障害スコアーおよび肺機能所見などの推移

 肺障害スコアーの推移および肺機能所見などの推移をそれぞれ図ト-49および図ト-50に示した.

 3項目および4項目の肺障害スコアーはともに投与前に比較して投与終了時に有意に低下した(Wilcoxon

符号付順位和検定:それぞれ p=0.0002,p=0.0001).

 肺障害スコアーを 0 点に改善し,正常域に回復した症例の割合は 5 日後 0.0%(0/20 例),10 日後 0.0%

(0/20 例),14 日後 5.0%(1/20 例)と推移した.また,投与終了時に肺障害スコアーを 0 点に改善し,

正常域に回復した症例の割合は 5.0%(1/20 例)であった.

 PEEP,胸部 X 線所見スコアーは投与前に比較して投与終了時に有意に低下し(それぞれ,対応のある

t 検定:p=0.0071,Wilcoxon 符号付順位和検定:p=0.0001),PaO2/FIO2,肺コンプライアンスは有意

に上昇した(対応のある t 検定:それぞれ p=0.0001,p=0.0186).また,FIO2,A-aDO2 は有意に低下

した(対応のある t 検定:それぞれ p=0.0001,p=0.0001).

- 562 -

図ト-49 肺障害スコアーの推移

図ト-50 肺機能所見などの推移

項目 日 症例数 平均値 ± 標準偏差Wilcoxon符号付

順位和検定項目 日 症例数 平均値 ± 標準偏差

Wilcoxon符号付

順位和検定

投与開始前 20 7.9 ± 1.8 投与開始前 20 10.8 ± 1.8 1 20 8.0 ± 1.6 p=1.0000 N.S. 1 20 10.7 ± 2.1 p=0.6204 N.S. 2 20 7.5 ± 1.9 p=0.3698 N.S. 2 20 10.2 ± 2.1 p=0.1888 N.S. 3 20 6.9 ± 2.1 p=0.0321 * 3 20 9.6 ± 2.3 p=0.0206 *

4 20 6.4 ± 2.2 p=0.0131 * 4 18 9.5 ± 2.1 p=0.0284 *

5 20 5.9 ± 2.2 p=0.0012 ** 5 17 8.8 ± 2.3 p=0.0016 **

10 15 4.8 ± 2.9 p=0.0020 ** 10 9 7.6 ± 3.4 p=0.0117 *

14 8 4.0 ± 3.7 p=0.0703 N.S. 14 5 7.0 ± 4.1 p=0.1875 N.S.投与終了時 20 3.6 ± 3.1 p=0.0002 *** 投与終了時 20 5.6 ± 3.5 p=0.0001 ***

3項目肺障害スコアー 4項目肺障害スコアー

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����������������������������������������������������������������������������������������������������������������������������������������������������������������������������������������������������������������������������������������������������������������������������������������

3項目肺障害スコアー

0.0

2.0

4.0

6.0

8.0

10.0

0 5 10 15 20

3項目肺障害スコアー

4項目肺障害スコアー

0.0

3.0

6.0

9.0

12.0

15.0

0 5 10 15 20

4項目肺障害スコアー

終了時

(日) 終了時

(日)

項目 日 症例数 平均値 ± 標準偏差 対応のあるt検定 項目 日 症例数 平均値 ± 標準偏差 対応のあるt検定

投与開始前 20 6.3 ± 2.4 投与開始前 20 161.58 ± 65.34 1 20 7.2 ± 2.9 p=0.1165 N.S. 1 20 156.85 ± 55.67 p=0.7433 N.S. 2 20 7.9 ± 3.7 p=0.0302 * 2 20 191.68 ± 63.21 p=0.1416 N.S. 3 20 7.2 ± 2.9 p=0.1284 N.S. 3 20 197.41 ± 61.25 p=0.0691 N.S. 4 20 6.4 ± 3.6 p=0.8453 N.S. 4 20 199.64 ± 54.70 p=0.0623 N.S. 5 20 6.0 ± 3.9 p=0.7168 N.S. 5 20 220.62 ± 76.45 p=0.0172 *

10 15 4.6 ± 3.8 p=0.1102 N.S. 10 15 244.85 ± 90.19 p=0.0111 *

14 8 4.8 ± 3.8 p=0.3389 N.S. 14 8 310.61 ± 114.79 p=0.0104 *

投与終了時 20 3.2 ± 4.1 p=0.0071 ** 投与終了時 20 293.64 ± 99.79 p=0.0001 ***

PEEP PaO2/FⅠO2

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��������������������������������������������������������������������������������������������������������������������������������������������������������������������������������������������������������������������������������

PEEP

-5.0

0.0

5.0

10.0

15.0

0 5 10 15 20

PaO 2/FⅠO 2

0.00

100.00

200.00

300.00

400.00

500.00

0 5 10 15 20

PaO

2/FⅠ

O2(m

mH

g)

PE

EP

(cm

H2O

)

終了時

(日) 終了時

(日)

- 563 -

図ト-50 肺機能所見などの推移(つづき)

項目 日 症例数 平均値 ± 標準偏差Wilcoxon符号付

順位和検定項目 日 症例数 平均値 ± 標準偏差 対応のあるt検定

投与開始前 20 3.6 ± 0.7 投与開始前 20 31.44 ± 10.98 1 20 3.4 ± 0.7 p=0.1250 N.S. 1 20 33.60 ± 14.45 p=0.1804 N.S. 2 20 3.2 ± 0.8 p=0.0156 * 2 20 33.44 ± 17.41 p=0.4417 N.S. 3 20 2.9 ± 1.1 p=0.0068 ** 3 20 34.09 ± 19.80 p=0.4145 N.S. 4 20 2.7 ± 1.1 p=0.0029 ** 4 18 33.90 ± 16.89 p=0.3826 N.S. 5 20 2.5 ± 1.1 p=0.0002 *** 5 17 44.22 ± 29.77 p=0.0723 N.S.10 15 2.1 ± 1.3 p=0.0010 *** 10 9 76.83 ± 57.64 p=0.0387 *

14 8 2.0 ± 1.6 p=0.0625 N.S. 14 5 55.84 ± 35.81 p=0.2192 N.S.

投与終了時 20 1.9 ± 1.4 p=0.0001 *** 投与終了時 20 57.62 ± 44.78 p=0.0186 *

胸部X線所見スコアー 肺コンプライアンス

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肺コンプライアンス

0.00

50.00

100.00

150.00

0 5 10 15 20

肺コンプライアンス

(mL

/cm

H2O

)

胸部X線所見スコアー

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

5.0

0 5 10 15 20

胸部X線所見スコアー

終了時

(日) 終了時

(日)

項目 日 症例数 平均値 ± 標準偏差 対応のあるt検定 項目 日 症例数 平均値 ± 標準偏差 対応のあるt検定

投与開始前 20 0.778 ± 0.193 投与開始前 20 384.90 ± 135.22 1 20 0.715 ± 0.166 p=0.0882 N.S. 1 20 353.85 ± 126.12 p=0.1870 N.S. 2 20 0.580 ± 0.156 p=0.0001 *** 2 20 259.17 ± 116.61 p=0.0004 ***

3 20 0.550 ± 0.171 p=0.0001 *** 3 20 238.80 ± 119.92 p=0.0002 ***

4 20 0.545 ± 0.127 p=0.0001 *** 4 20 232.33 ± 79.14 p=0.0001 ***

5 20 0.530 ± 0.129 p=0.0001 *** 5 20 215.87 ± 94.45 p=0.0001 ***

10 15 0.437 ± 0.109 p=0.0001 *** 10 15 163.55 ± 79.35 p=0.0001 ***

14 8 0.440 ± 0.248 p=0.0117 * 14 8 149.60 ± 143.14 p=0.0096 **

投与終了時 20 0.433 ± 0.173 p=0.0001 *** 投与終了時 20 142.09 ± 100.86 p=0.0001 ***

FⅠO2 A-aDO2

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FⅠO2

0.000

0.200

0.400

0.600

0.800

1.000

0 5 10 15 20

FⅠ

O2

A-aDO2

0.00

100.00

200.00

300.00

400.00

500.00

600.00

0 5 10 15 20

A-a

DO

2(m

mH

g)

終了時

(日) 終了時

(日)

- 564 -

図ト-50 肺機能所見などの推移(つづき)

x)肺障害の重症度分類および推移

 肺障害の重症度分類および推移を表ト-138に示した.

 投与前の肺障害の重症度が ARDS の 13 例は,投与後 12 例が ALI に改善し,1 例が死亡した.同様に,

投与前 ALI の 7 例は,投与後 1 例が正常化し,5 例が ALI,1 例が ARDS となった.

表ト-138 肺障害の重症度分類および推移

投与前

投与後

1.ARDS

正常

2.ALI

正常

3.ARDS

ALI

4.ALI

ALI

5.ARDS

ARDS

6.ALI

ARDS

7.ARDS

死亡

8.ALI

死亡

0 1 12 5 0 1 1 0 20

xi)各評価間の関係

 主評価項目の VFD と副次的評価項目(肺機能改善度,全般改善度,集中治療室からの退出)との関係,

および肺機能改善度と全般改善度,肺障害スコアーとの関係について検討した.なお,集中治療室からの

退出は,ICU Free Days(治験薬投与開始から 27 日後までに集中治療室を退出した生存例の集中治療室

の非滞在期間として算定した)を用いた.

 また,各症例の肺機能改善度と全般改善度との関係は,いずれも著明改善から悪化までの 5 段階評価に

おいて,同一のカテゴリーで評価されており,各症例の肺機能改善度と全般改善度は同一の判定であった

項目 日 症例数 平均値 ± 標準偏差 対応のあるt検定

投与開始前 20 7.43 ± 0.07 1 20 7.44 ± 0.05 p=0.4599 N.S. 2 20 7.43 ± 0.05 p=0.7249 N.S. 3 20 7.43 ± 0.07 p=0.8667 N.S. 4 20 7.43 ± 0.06 p=0.7465 N.S. 5 20 7.44 ± 0.07 p=0.2680 N.S.10 15 7.44 ± 0.05 p=0.5978 N.S.14 8 7.44 ± 0.06 p=0.6047 N.S.

投与終了時 20 7.44 ± 0.06 p=0.6167 N.S.

pH

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pH

7.30

7.40

7.50

7.60

0 5 10 15 20

pH

終了時

(日)

- 565 -

ことから,以下の関係については肺機能改善度のみを示した.

・VFD と肺機能改善度との関係

 各症例の VFD と肺機能改善度との関係を図ト-51 に示した.肺機能改善度が著明改善の症例(13 例)

の VFD は 17.6±6.1 日(平均値±標準偏差)と最も長く,次いで中等度改善の症例(4 例)の VFD は 14.3

±8.5 日であり,同様に,不変の症例(1 例),悪化の症例(2 例)はいずれも 0 日であった.不変の 1 例

は投与 7 日後に人工呼吸器から離脱したが,翌日再装着し,投与 27 日後に人工呼吸器から離脱した.悪化

の 2 例はいずれも死亡し,VFD は 0 日であった.肺機能の改善度が良好な程,VFD は長かった.

・肺機能改善度と肺障害スコアーとの関係

 各症例の肺機能改善度と肺障害スコアーとの関係を表ト-139に示した.本試験では,P.545 に示した

肺障害スコアーの改善度判定基準に準じて,肺障害スコアーの投与前後の差をもとに肺機能改善度を評価

した.その結果,いずれの症例も肺障害スコアーの改善度判定基準と実際の肺機能改善度判定が一致して

いた.

・VFD と集中治療室からの退出との関係

 各症例の VFD と ICU Free Days との関係を図ト-51に示した.VFD と ICU Free Days は高い相関

性が見られ(Spearman 順位相関係数:r=0.928,p=0.0001),VFD が長い程,ICU Free Days も長く,

人工呼吸器からの早期離脱は集中治療室からの早期退出を可能とした.

 よって,肺障害スコアーの投与前後の差により判定された肺機能改善度は,肺障害スコアーの改善度判

定基準をもとに適切に判定された.肺機能改善度が中等度改善以上に判定され,改善した症例の VFD は

改善しなかった症例(不変,悪化)に比較し,長かった.さらに,VFD が長い人工呼吸器からの早期離

脱例は,ICU Free Days も長く,集中治療室からの早期退出を可能とした.

表ト-139 肺機能改善度と肺障害スコアーとの関係肺機能改善度

肺障害スコアーの改善度判定著明改善 中等度改善 軽度改善 不変 悪化

4 項目測定

(6 点以上の低下)3

著明改善3 項目測定

(4 点以上の低下)10

4 項目測定

(4~5 点の低下)1

中等度改善3 項目測定

(2~3 点の低下)3

4 項目測定

(2~3 点の低下)軽度改善

3 項目測定

(1 点の低下)

4 項目測定

(不変または±1 点の変

化)

1不変

3 項目測定

(不変または 1 点の上昇)

4 項目測定

(2 点以上の上昇)2

肺障害スコアーの投与前後の差

悪化3 項目測定

(2 点以上の上昇)

- 566 -

図ト-51  VFD と肺機能改善度および VFD と ICU Free Days との関係

xii)年齢別(60 歳以上と 60 歳未満)および肺障害の重症度別(ARDS と ALI)の肺機能改善度

 年齢別(60 歳以上と 60 歳未満)および肺障害の重症度別(ARDS と ALI)の肺機能改善度を表ト-140

に示した.

表ト-140 年齢別(60歳以上と60歳未満)および肺障害の重症度別(ARDS と ALI)の肺機能改善度著明

改善

中等度

改善

軽度

改善不変 悪化 合計

「著明改善」

(%)

「中等度改善」

以上(%)

60 歳未満 7 3 0 0 0 10 70.0% 100.0%

60 歳以上 6 1 0 1 2 10 60.0% 70.0%

ARDS 10 2 0 0 1 13 76.9% 92.3%

ALI 3 2 0 1 1 7 42.9% 71.4%

 年齢別の肺機能改善度は,60 歳未満が「著明改善」70.0%(7/10 例),「中等度改善」以上 100.0%

(10/10 例),60 歳以上が「著明改善」60.0%(6/10 例),「中等度改善」以上 70.0%(7/10 例)であ

り,60 歳未満および 60 歳以上のいずれの症例においても,「中等度改善」以上で 70%以上の改善率で

あった.

 肺障害の重症度別の肺機能改善度は,ARDS が「著明改善」76.9%(10/13 例),「中等度改善」以上

92.3%(12/13 例),ALI が「著明改善」42.9%(3/7 例),「中等度改善」以上 71.4%(5/7 例)であり,

ARDS および ALI のいずれの肺障害においても,「中等度改善」以上で 70%以上の改善率であった.

0

5

10

15

20

25

肺機能改善度

VF

D(

日)

著明

改善

中等度

改善

軽度

改善

不変 悪化

0

5

10

15

20

25

0 5 10 15 20 25

V F D (日)

ICU

Fre

e D

ays

(日

r=0.928

p=0.0001

( 1 ) ( 2 )

( 13 )

( 4 )

( ): 例数

- 567 -

xiii)併用薬の併用状況

 試験薬剤投与期間中併用薬剤の状況について,併用薬剤別の症例分布を表ト-141に示した.

 併用薬剤のうち,抗菌剤は全例(20/20 例),利尿剤は 80.0%(16/20 例),蛋白分解酵素阻害剤は 70.0%

(14/20 例),ステロイド剤は 55.0%(11/20 例)の症例に併用され,全く併用がなされなかった症例は

なかった.

 抗菌剤の併用期間は中央値 9.5 日,最小値 6 日~最大値 16 日,利尿剤の併用期間は中央値 3.0 日,最

小値 0 日~最大値 15 日,蛋白分解酵素阻害剤の併用期間は中央値 6.0 日,最小値 0 日~最大値 15 日,ス

テロイド剤の併用期間は中央値 1.0 日,最小値 0 日~最大値 16 日であった.

表ト-141 併用薬剤別の症例分布

項目 症例数

無 0( 0.0%)併用薬剤

有 20(100.0%)

無 0( 0.0%)

有 20(100.0%)

中央値 9.5

25%点~75%点 7.5 ~ 15.0

抗菌剤併用期間

(日)最小値~最大値 6.0 ~ 16.0

無 4( 20.0%)

有 16( 80.0%)

中央値 3.0

25%点~75%点 1.0 ~ 8.0

利尿剤併用期間

(日)最小値~最大値 0.0 ~ 15.0

無 6( 30.0%)

有 14( 70.0%)

中央値 6.0

25%点~75%点 0.0 ~ 11.0

蛋白分解酵素阻害剤併用期間

(日)最小値~最大値 0.0 ~ 15.0

無 9( 45.0%)

有 11( 55.0%)

中央値 1.0

25%点~75%点 0.0 ~ 5.5

併用薬剤

ステロイド剤併用期間

(日)最小値~最大値 0.0 ~ 16.0

 なお,試験期間中の使用薬剤の使用期間分布とステロイド剤の総使用量を表ト-142に示した.使用さ

れた種々のステロイドはプレドニゾロン換算したステロイド量として示した.

 ステロイド剤は試験期間中に 60.0%(12/20 例)の症例に使用され,1~7 日間の使用が 58.3%(7/12

例),15~21 日間の使用が 25.0%(3/12 例),22~28 日間の使用が 16.7%(2/12 例)で,7 日間以内

の使用が最も多かった.また,2 週間を越えた使用も約 40%見られた.ステロイド剤の総使用量は 1000mg

以下の使用が 50.0%で,2000mg を越えた使用が 50.0%見られた.抗菌剤は試験期間中に全症例(20/20

例)に使用され,1~7 日間の使用が 5.0%(1/20 例),8~14 日間の使用が 30.0%(6/20 例),15~21

日間の使用が 20.0%(4/20 例),22~28 日間の使用が 45.0%(9/20 例)で,1 週間を越えた使用がほ

- 568 -

とんどであった.蛋白分解酵素阻害剤は試験期間中に 75.0%(15/20 例)の症例に使用され, 1~7 日間

の使用が 26.7%(4/15 例),8~14 日間の使用が 26.7%(4/15 例),15~21 日間の使用が 20.0%(3/15

例),22~28 日間の使用が 26.7%(4/15 例)であった.利尿剤は試験期間中に 80.0%(16/20 例)の症

例に使用され,1~7 日間の使用が 50.0%(8/16 例),8~14 日間の使用が 25.0%(4/16 例),15~21

日間の使用が 25.0%(4/16 例)で,7 日間以内の使用が 50.0%であった.

表ト-142 使用薬剤の使用期間分布とステロイド剤の総使用量

使用期間分布(日) 総使用量(mg)1)

使用薬剤

1~7 8~14 15~21 22~28 0<~500500<~1000

1000<~2000

2000<~

ステロイド剤

(%)7

(58.3)0

( 0.0)3

(25.0)2

(16.7)4

(33.3)2

(16.7)0

( 0.0)6

(50.0)12

(100.0)

抗菌剤

(%)1

( 5.0)6

(30.0)4

(20.0)9

(45.0)20

(100.0)

蛋白分解酵素阻害剤

(%)4

(26.7)4

(26.7)3

(20.0)4

(26.7)15

(100.0)

利尿剤

(%)8

(50.0)4

(25.0)4

(25.0)0

( 0.0)16

(100.0)

1)ステロイドをプレドニゾロン換算し,試験期間中の総量として示す.

 ステロイドの併用状況について,ステロイドの併用の有無別の症例数と併用総量,1 日平均併用量およ

び併用期間の分布を表ト-143 に示した. なお,併用された種々のステロイドはプレドニゾロン換算し

たステロイド量として示した.

 ステロイド剤の併用率は 55.0%(11/20 例)であった.併用総量は中央値 16.0mg,最小値 0mg~最大

値 6352.8mg,1 日平均併用量は中央値 11.0mg/日,最小値 0mg/日~最大値 754.7mg/日,併用期間は中

央値 1.0 日,最小値 0 日~最大値 16 日であった.

表ト-143 ステロイドの併用の有無別の症例数と併用総量,

1 日平均併用量および併用期間の分布

項目 結果

無 9(45.0%)

有 11(55.0%)

中央値 16.0

25%点~75%点 0.0 ~ 2092.7併用総量 1)

(mg)最小値~最大値 0.0 ~ 6352.8

中央値 11.0

25%点~75%点 0.0 ~ 342.21 日平均併用量 2)

(mg/日)最小値~最大値 0.0 ~ 754.7

中央値 1.0

25%点~75%点 0.0 ~ 5.5

ステロイドの併用

併用期間

(日)最小値~最大値 0.0 ~ 16.0

   1)ステロイドをプレドニゾロン換算し,併用期間中の総量として示す.

   2)ステロイドをプレドニゾロン換算し,試験薬剤投与期間中の 1 日平均併用量として示す.

- 569 -

 また,ステロイドが併用された症例での併用総量,1 日平均併用量および併用期間の分布を表ト-144

に示した.

 ステロイドが併用された症例での併用総量は中央値 1913.2mg,最小値 16.0mg~最大値 6352.8mg,1

日平均併用量は中央値 283.0mg/日,最小値 6.0mg/日~最大値 754.7mg/日,併用期間は中央値 4.0 日,最

小値 1 日~最大値 16 日であった.

表ト-144 ステロイドが併用された症例での併用総量,

  1 日平均併用量および併用期間の分布

項目 結果

中央値 1913.2

25%点~75%点 96.0 ~ 3350.9併用総量 1)

(mg)

最小値~最大値 16.0 ~ 6352.8

中央値 283.0

25%点~75%点 16.0 ~ 705.91 日平均併用量 2)

(mg/日)

最小値~最大値 6.0 ~ 754.7

中央値 4.0

25%点~75%点 2.0 ~ 9.0

ステロイドの併用

併用期間

(日)

最小値~最大値 1.0 ~ 16.0

1)ステロイドをプレドニゾロン換算し,併用期間中の総量として示す.

2)ステロイドをプレドニゾロン換算し,試験薬剤投与期間中の 1 日平均併用量として示す.

 次に,ステロイドの併用の有無別の VFD,肺機能改善度をそれぞれ表ト-145および表ト-146に示した.

 ステロイドの併用の有無別の VFD は,非併用で平均値 19.8 日,中央値 21.0 日,25%点 19.0 日,75%

点 23.0 日,併用で平均値 9.8 日,中央値 8.0 日,25%点 0 日,75%点 20.0 日であり,ステロイド剤の併

用に比べ,非併用で VFD が長かった.また,ステロイドの併用の有無別の肺機能改善度は,非併用が「著

明改善」88.9%(8/9 例),「中等度改善」以上 100.0%(9/9 例),併用が「著明改善」45.5%(5/11 例),

「中等度改善」以上 72.7%(8/11 例)であり,ステロイド剤の併用に比べ,非併用の「著明改善」,「中

等度改善」以上の分布が多かった.

- 570 -

表ト-145 ステロイドの併用の有無別の VFD

ステロイド剤 症例数 平均値±標準偏差 中央値 25%点 75%点 最小値 最大値

非併用 9 19.8±4.2 21.0 19.0 23.0 11 24

併用 11 9.8±8.9 8.0 0.0 20.0 0 20

表ト-146 ステロイドの併用の有無別の肺機能改善度

ステロイド剤著明

改善

中等度

改善

軽度

改善不変 悪化 計

8 1 0 0 0非併用

(88.9) (11.1) (0.0) (0.0) ( 0.0) 9

5 3 0 1 2併用

(45.5) (27.3) (0.0) (9.1) (18.2)11

  ( ) : %

- 571 -

●本試験と第Ⅲ相二重盲検比較試験および ARDS Network の臨床試験の対照群との比較あるいは考察

i)患者背景

 本試験と第Ⅲ相二重盲検比較試験の至適用量(H)群(46 例)と低用量(L)群(61 例)との比較可能

性を確認するため,背景項目の比較を行った.結果を表ト-147に示した.同様に,ARDS Network の臨

床試験の対照群(試験 A:プラセボ群,試験 B:Traditional Tidal Volume 群)との比較を表ト-148に示

した.

・本試験と第Ⅲ相二重盲検比較試験との比較

 本試験と第Ⅲ相二重盲検比較試験の H 群との背景の比較では,肺障害発現から投与開始までの時間,

FIO2,平均血圧,ALT(GPT)に偏りが認められた(有意水準 両側 0.15).また,本試験と第Ⅲ相二

重盲検比較試験の L 群との背景比較では,感染症状の有無,外科手術の有無,FIO2,平均血圧,総ビリ

ルビンに偏りが認められた(有意水準 両側 0.15).

表ト-147 本試験と第Ⅲ相二重盲検比較試験との患者背景の比較第Ⅲ相二重盲検比較試験

H 群 L 群項目

本試験

症例数(%)症例数(%)

本試験との

群間比較症例数(%)

本試験との

群間比較

男 16(80.0) 34(73.9) N.S. 47(77.0) N.S.性別

女 4(20.0) 12(26.1) p=0.75821) 14(23.0) p=1.00001)

40 未満 5(25.0) 4( 8.7) 11(18.0)40~60 未満 5(25.0) 18(39.1) 16(26.2) 60 以上 10(50.0) 24(52.2)

N.S.p=0.37502)

34(55.7)

N.S.p=0.45262)

 平均値±標準偏差 56.0±14.3 58.5±12.5 57.4±15.1

年齢

(歳)

(最小値 ~ 最大値) (31~75) (21~74) (20~75)感染症 14(70.0) 37(80.4) 50(82.0)

手術侵襲 2(10.0) 2( 4.3) 7(11.5)膵炎 1( 5.0) 0( 0.0) 0( 0.0)

SIRS の原因

その他 3(15.0) 7(15.2)

N.S.p=0.37281)

4( 6.6)

N.S.p=0.22051)

無 4(20.0) 4( 8.7) N.S. 4( 6.6)感染症状

有 16(80.0) 42(91.3) p=0.23171) 57(93.4)*

p=0.09831)

無 13(65.0) 22(47.8) N.S. 20(32.8) *外科手術

有 7(35.0) 24(52.2) p=0.28401) 41(67.2) p=0.01741)

4~6 4(20.0) 11(23.9) 13(21.3)7~9 13(65.0) 27(58.7) 41(67.2)

10~12 3(15.0) 8(17.4)

N.S.p=0.69092)

7(11.5)

N.S.p=0.49992)

 平均値±標準偏差 7.9±1.8 7.7±1.8 7.7±1.6

3 項目肺障害

スコアー

(点)

(最小値 ~ 最大値) ( 4~11) ( 4~11) ( 5~11) 6~8 3(15.0) 4(12.1) 5(12.2)

9~12 14(70.0) 24(72.7) 32(78.0)13~16 3(15.0) 5(15.2)

N.S.p=0.52062)

4( 9.8)

N.S.p=0.41672)

不明 0 13 20 平均値±標準偏差 10.8±1.8 10.5±2.0 10.5±1.7

4 項目肺障害

スコアー

(点)

(最小値 ~ 最大値) ( 7~13) ( 6~14) ( 6~14)0~6 7(35.0) 9(19.6) 15(24.6)

7~24 6(30.0) 15(32.6) 24(39.3)25~48 3(15.0) 12(26.1) 15(24.6)

49 以上 4(20.0) 10(21.7)

p=0.09232)

7(11.5)

N.S.p=0.38042)

 平均値±標準偏差 21.9±21.4 30.1±22.6 23.9±19.6

肺障害発現から

投与開始までの時間

(時間)

(最小値 ~ 最大値) ( 1~68) ( 2~72) ( 3~72)

1)Fisher の直接確率検定,2)Wilcoxon 順位和検定 *:p<0.15,N.S.:Not Significant

- 572 -

表ト-147 本試験と第Ⅲ相二重盲検比較試験との患者背景の比較(つづき)第Ⅲ相二重盲検比較試験

H 群 L 群項目

本試験

症例数(%)症例数(%)

本試験との

群間比較症例数(%)

本試験との

群間比較

肺のみ 11(55.0) 21(45.7) 21(34.4)肺+1 臓器 5(25.0) 15(32.6) 28(45.9)障害臓器数

肺+2 臓器 4(20.0) 10(21.7)

N.S.p=0.83141)

12(19.7)

N.S.p=0.20481)

無 18(90.0) 43(93.5) N.S. 50(82.0) N.S.心臓障害

有 2(10.0) 3(6.5) p=0.63481) 11(18.0) p=0.50231)

無 19(95.0) 37(80.4) N.S. 55(90.2) N.S.肝臓障害

有 1( 5.0) 9(19.6) p=0.26071) 6( 9.8) p=0.67491)

無 17(85.0) 38(82.6) N.S. 54(88.5) N.S.腎臓障害

有 3(15.0) 8(17.4) p=1.00001) 7(11.5) p=0.70211)

無 19(95.0) 45(97.8) N.S. 59(96.7) N.S.消化管出血

有 1( 5.0) 1( 2.2) p=0.51751) 2( 3.3) p=1.00001)

無 16(80.0) 41(89.1) N.S. 49(80.3) N.S.中枢神経系障害

有 4(20.0) 5(10.9) p=0.43681) 12(19.7) p=1.00001)

無 18(90.0) 37(80.4) N.S. 47(77.0) N.S.

肺以外の障害臓器の内訳

血液凝固系障害有 2(10.0) 9(19.6) p=0.48161) 14(23.0) p=0.33301)

0~3 16(80.0) 33(71.7) 45(73.8)4~7 3(15.0) 8(17.4) 10(16.4)

8~14 1( 5.0) 3( 6.5) 5( 8.2) 15 以上 0( 0.0) 2( 4.3)

N.S.p=0.90982)

1( 1.6)

N.S.p=0.60022)

 平均値±標準偏差 2.7±3.2 4.4±9.3 2.8±3.7

SIRS 発症から

投与開始までの期間

(日)

(最小値 ~ 最大値) ( 0~14) ( 0~56) ( 0~18) 0.4 以下 1( 5.0) 7(15.2) 10(16.4)

0.41~0.6 3(15.0) 20(43.5) 24(39.3)0.61~0.8 8(40.0) 10(21.7) 8(13.1)0.81~1.0 8(40.0) 9(19.6)

p=0.01812)

19(31.1)

p=0.08872)

 平均値±標準偏差 0.778±0.193 0.647±0.212 0.684±0.239

FIO2

(最小値 ~ 最大値) (0.40~1.00) (0.28~1.00) (0.30~1.00) 60 未満 6(30.0) 5(10.9) 10(16.4)60~80 未満 12(60.0) 18(39.1) 25(41.0)

80~100 未満 1( 5.0) 12(26.1) 20(32.8) 100 以上 1( 5.0) 11(23.9)

p=0.00432)

6( 9.8)

p=0.02342)

 平均値±標準偏差 67.32±16.57 81.98±20.40 75.72±17.04

平均血圧

(mmHg)

(最小値 ~ 最大値) (46.3~120.0) (46.7~127.3) (40.0~116.0) 1.0 未満 12(60.0) 19(41.3) 19(31.1)1.0~3.0 未満 4(20.0) 14(30.4) 30(49.2)3.0~5.0 未満 3(15.0) 6(13.0) 7(11.5) 5.0 以上 1( 5.0) 7(15.2)

N.S.p=0.29512)

5( 8.2)

p=0.13622)

 平均値±標準偏差 1.56±1.50 2.63±3.49 2.02±1.87

総ビリルビン

(mg/dl)

(最小値 ~ 最大値) (0.3~5.5) (0.2~15.9) ( 0.2~10.1) 30 未満 12(60.0) 19(41.3) 28(45.9)30~50 未満 4(20.0) 13(28.3) 14(23.0)

50~100 未満 3(15.0) 8(17.4) 11(18.0)100~200 未満 1( 5.0) 4( 8.7) 6( 9.8) 200 以上 0( 0.0) 2( 4.3)

p=0.13532)

2( 3.3)

N.S.p=0.19802)

 平均値±標準偏差 35.2±29.6 58.3±73.9 66.1±167.7

ALT(GPT)(IU/l)

(最小値 ~ 最大値) ( 9~132) ( 6~401) ( 4~1317) 25 未満 11(55.0) 25(54.3) 34(55.7)25~50 未満 7(35.0) 14(30.4) 20(32.8)50~75 未満 1( 5.0) 3( 6.5) 3( 4.9) 75 以上 1( 5.0) 4( 8.7)

N.S.p=0.46782)

4( 6.6)

N.S.p=0.73002)

 平均値±標準偏差 27.4±23.3 31.3±23.9 29.1±23.8

BUN(mg/dl)

(最小値 ~ 最大値) ( 4~102) ( 7~102) ( 3~125)

1)Fisher の直接確率検定,2)Wilcoxon 順位和検定 *:p<0.15,N.S.:Not Significant

- 573 -

表ト-147 本試験と第Ⅲ相二重盲検比較試験との患者背景の比較(つづき)第Ⅲ相二重盲検比較試験

H 群 L 群項目

本試験

症例数(%)症例数(%)

本試験との

群間比較症例数(%)

本試験との

群間比較

1.5 未満 15(75.0) 37(80.4) 50(82.0)1.5~3.0 未満 3(15.0) 4( 8.7) 7(11.5)3.0~4.5 未満 2(10.0) 3( 6.5) 2( 3.3) 4.5 以上 0( 0.0) 2( 4.3)

N.S.p=0.57172)

2( 3.3)

N.S.p=0.45592)

 平均値±標準偏差 1.318±1.100 1.333±1.410 1.215±1.266

クレアチニン

(mg/dl)

(最小値 ~ 最大値) (0.37~4.40) (0.20~7.31) (0.30~8.10) 10 未満 6(30.0) 13(28.3) 19(31.1)10~20 未満 8(40.0) 17(37.0) 27(44.3)20~30 未満 6(30.0) 11(23.9) 9(14.8) 30 以上 0( 0.0) 5(10.9)

N.S.p=0.52552)

6( 9.8)

N.S.p=0.71782)

 平均値±標準偏差 14.47±7.13 17.58±12.19 15.05±10.18

血小板数

(×104/μl)

(最小値 ~ 最大値) ( 3.3~26.5) ( 1.5~59.7) ( 1.5~48.8) 200 未満 0( 0.0) 3( 7.0) 4( 7.0)200~400 未満 4(20.0) 13(30.2) 16(28.1)400~600 未満 10(50.0) 14(32.6) 21(36.8) 600 以上 6(30.0) 13(30.2)

N.S.p=0.25862)

16(28.1)

N.S.p=0.38362)

不明 0 3 4 平均値±標準偏差 547.3±214.6 473.2±194.8 492.0±230.1

フィブリノーゲン

(mg/dl)

(最小値 ~ 最大値) (287~1101) (124~927) ( 50~1028)

2)Wilcoxon 順位和検定 *:p<0.15,N.S.:Not Significant

・本試験とARDS Networkが最近実施した2つの臨床試験の対照群(試験A:プラセボ群,試験B:Traditional

Tidal Volume 群)との比較

 本試験と ARDS Network の臨床試験の対照群(試験 A:プラセボ群,試験 B:Traditional Tidal Volume

群)との比較を表ト-148に示した.本試験と ARDS Network の臨床試験との比較可能性については,

ARDS Network の臨床試験での詳細な情報が入手できないため検定を用いた検討は実施しなかった.以

下に本試験と試験 A:プラセボ群,試験 B:Traditional Tidal Volume 群の患者背景の分布および平均値

±標準偏差で比較可能性の検討を行った.

 年齢の平均値は,試験 A 52±18 歳,試験 B 52±18 歳で,本試験 56.0±14.3 歳と本試験がやや高かっ

た.PEEP の平均値は,試験 A 8.3±0.3cmH2O で,本試験 6.3±2.4cmH2O と本試験がやや低かった.肺

障害の重症度分類別では,PaO2/FIO2≦200mmHg の肺障害が試験 A79%,試験 B85%で,本試験 65%と

本試験でPaO2/FIO2≦200mmHgの肺障害がやや少なかった.PaO2/FIO2の平均値は,試験A 150±7mmHg,

試験 B 134±58mmHg で,本試験 161.58±65.34mmHg と本試験がやや高かった.胸部 X 線所見は,試

験 A で 4 分割全てで陰影ありが 76%,4 分割中 3 分割で陰影ありが 15%で,本試験で 4 分割全てで陰影

ありが 70%,4 分割中 3 分割で陰影ありが 20%と同程度であった.肺以外の臓器障害数では,試験 B1.8

±1.0 で,本試験 0.7±0.8 と本試験がやや少なかった.

- 574 -

表ト-148 本試験と ARDS Network の臨床試験の対照群

(試験 A:プラセボ群,試験 B:Traditional Tidal Volume 群)との患者背景の比較

ARDS Network

試験 A 試験 B 試験

項目

本試験

(n=20)Placebo

(n=117)Ketoconazole(n=117)

TraditionalTidal

Volume(n=429)

LowTidal

Volume(n=432)

男 80% 62% 58% 59% 60%性別

女 20% 38% 42% 41% 40%年齢(歳) 平均値±標準偏差 56.0±14.3 52±18 55±19 52±18 51±17

PEEP(cmH2O) 平均値±標準偏差 6.3±2.4 8.3±0.3 8.4±0.4

  ~200 以下 65% 79% 77% 85% 82%

200.1~300 35% 13% 14%

300.1~ 0% 3% 2%

不明 0% 4% 8%

PaO2/FIO2

(mmHg)

平均値±標準偏差 161.58±65.34 150±7 139±6 134±58 138±64

PaCO2(mmHg) 平均値±標準偏差 41.39±6.61 36±1 36±11 0% 1% 0%2 10% 8% 5%3 20% 15% 14%

胸部 X 線所見スコアー

4 70% 76% 81%pH 平均値±標準偏差 7.43±0.07 7.40±0.01 7.40±0.01

肺以外の臓器障害数 平均値±標準偏差 0.7±0.8 1.8±1.0 1.8±1.1

 以上,本試験の患者背景を第Ⅲ相二重盲検比較試験および ARDS Network の臨床試験の対照群と比較あ

るいは考察した結果,第Ⅲ相二重盲検比較試験の H 群に比較して本試験は肺障害発現から投与開始までの

時間が短く,FIO2 が高く,平均血圧が低く,ALT(GPT)が低かったが,その他の項目は有意な違いは

なかった.また,本試験の患者背景を ARDS Network の臨床試験の対照群と比較した結果,ARDS Network

の臨床試験より本試験でPEEPが低く,PaO2/FIO2≦200mmHgの肺障害や肺以外の臓器障害数が少なかっ

たが,その他の項目は同程度と推察した.

ii)Ventilator Free Days(VFD)(主評価項目)

 本試験と第Ⅲ相二重盲検比較試験および ARDS Network の臨床試験の対照群とのVFD の比較を表ト-

149に示した.

 当初設定したように,本試験の VFD の平均値(14.3 日)は,第Ⅲ相二重盲検比較試験の H 群の 13.1±10.9

日(平均値±標準偏差)の平均値の 85%(11.1 日)以上を満たす成績であった.よって,本試験の成績は第Ⅲ

相二重盲検比較試験の H 群と同程度であると判断された.また,L 群の 10.7±10.8 日(平均値±標準偏差)

を上回る成績であった.さらに,本成績は,ARDS Network の臨床試験における対照群の成績,すなわち,

試験 A の中央値 9 日,試験 B の平均値 10 日を上回る成績であると推察された.したがって,人工呼吸器の離

脱基準を予め設定した本試験の成績は,第Ⅲ相二重盲検比較試験成績や ARDS Network の臨床試験における

対照群の成績と比較しても,肺障害に対する有効性が示された.

- 575 -

表ト-149 本試験と第Ⅲ相二重盲検比較試験およびARDS Network の臨床試験の対照群とのVFDの比較

試験名 症例数 平均値±標準偏差 中央値 25%点 75%点 最小値 最大値

本試験 20 14.3±8.6 19.0 7.0 20.5 0 24

H 群 46 13.1±10.9 18.5 0.0 23.0 0 26第Ⅲ相二重盲検

比較試験L 群 61 10.7±10.8 8.0 0.0 22.0 0 26

試験 A:Placebo 群 117 9.0

ARDS Network 試験 B:Traditional

Tidal Volume 群429 10±11

iii)肺機能改善度

 本試験と第Ⅲ相二重盲検比較試験との肺機能改善度の比較を表ト-150に示した.

 本試験の投与終了時の肺機能改善度は「著明改善」が 65.0%(13/20 例),「中等度改善」以上が 85.0%

(17/20 例)であり,第Ⅲ相二重盲検比較試験の H 群は「著明改善」が 58.7%(27/46 例),「中等度改善」

以上が 71.7%(33/46 例),L 群は「著明改善」が 42.6%(26/61 例),「中等度改善」以上が 59.0%(36/61

例)であった.なお,本成績は第Ⅲ相二重盲検比較試験のH 群と同程度の成績であり,また,L 群を上回る成

績であった.

 表ト-150 本試験と第Ⅲ相二重盲検比較試験との肺機能改善度の比較

試験名著明改善

中等度改 善

軽度改善

不変 悪化 計「著明改善」

(%)「中等度改善」

以上(%)

本試験 13 4 0 1 2 20 65.0 85.0

H 群 27 6 1 5 7 46 58.7 71.7第Ⅲ相二重盲検

比較試験L 群 26 10 6 10 9 61 42.6 59.0

iv)全般改善度

 本試験と第Ⅲ相二重盲検比較試験との全般改善度の比較を表ト-151に示した.

 本試験の全般改善度は「著明改善」が 65.0%(13/20 例),「中等度改善」以上が 85.0%(17/20 例)であ

り,第Ⅲ相二重盲検比較試験の H 群は「著明改善」が 58.7%(27/46 例),「中等度改善」以上が 73.9%(34/46

例),L 群は「著明改善」が 37.7%(23/61 例),「中等度改善」以上が 54.1%(33/61 例)であった.なお,

本成績は第Ⅲ相二重盲検比較試験の H 群と同程度の成績であり,また,L 群を上回る成績であった.

表ト-151 本試験と第Ⅲ相二重盲検比較試験との全般改善度の比較

試験名著明

改善

中等度

改 善軽度

改善不 変 悪 化 計

「著明改善」(%)

「中等度改善」

以上(%)

本試験 13 4 0 1 2 20 65.0 85.0

H 群 27 7 1 6 5 46 58.7 73.9第Ⅲ相二重盲検

比較試験L 群 23 10 10 9 9 61 37.7 54.1

- 576 -

v)人工呼吸器離脱率

 本試験と第Ⅲ相二重盲検比較試験との人工呼吸器離脱率の比較を表ト-152に示した.

 本試験の人工呼吸器離脱率の推移は 14 日後 60.0%(12/20 例),27 日後 80.0%(16/20 例)であり,

第Ⅲ相二重盲検比較試験の H 群の推移は,14 日後 58.7%(27/46 例),27 日後 63.0%(29/46 例),L

群の推移は,14 日後 45.9%(28/61 例),27 日後 54.1%(33/61 例)であった.本試験の 27 日後の離脱

率は,第Ⅲ相二重盲検比較試験の H 群の離脱率の 95%信頼区間の上側点より,わずかに高い値を示して

いた.50%離脱率は,本試験で 8.0 日後,第Ⅲ相二重盲検比較試験の H 群で 9.5 日後,L 群で 20.0 日後

であった.なお,本成績は第Ⅲ相二重盲検比較試験の H 群と同程度の成績であり,L 群を上回る成績で

あった.

表ト-152 本試験と第Ⅲ相二重盲検比較試験との人工呼吸器離脱率の比較

試験名 測定時期 症例数 離脱 離脱せず 離脱率(%) 95%信頼区間 50%離脱率

投与 14 日後 20 12 8 60.0 38.5 ~ 81.5本試験

投与 27 日後 20 16 4 80.0 62.5 ~ 97.5 8.0 日後

投与 14 日後 46 27 19 58.7 44.5 ~ 72.9H 群

投与 27 日後 46 29 17 63.0 49.1 ~ 77.0 9.5 日後

投与 14 日後 61 28 33 45.9 33.4 ~ 58.4

第Ⅲ相二重盲検

比較試験

L 群

投与 27 日後 61 33 28 54.1 41.6 ~ 66.620.0 日後

vi) 集中治療室からの退出率

 本試験と第Ⅲ相二重盲検比較試験との集中治療室からの退出率の比較を表ト-153に示した.

表ト-153 本試験と第Ⅲ相二重盲検比較試験との集中治療室からの退出率の比較

試験名 測定時期 症例数 退出退出

せず

退出率

(%)95%信頼区間 50%退出率

投与 14 日後 20 9 11 45.0 23.2~66.8本試験

投与 27 日後 20 14 6 70.0 49.9~90.116.0 日後

投与 14 日後 46 22 24 47.8 33.4~62.3H 群

投与 27 日後 46 28 18 60.9 46.8~75.016.0 日後

投与 14 日後 61 27 34 44.3 31.8~56.7

第Ⅲ相二重盲検

比較試験

L 群

投与 27 日後 61 31 30 50.8 38.3~63.421.0 日後

 本試験の集中治療室からの退出率の推移は 14 日後 45.0%(9/20 例),27 日後 70.0%(14/20 例)であ

り,第Ⅲ相二重盲検比較試験の H 群の推移は,14 日後 47.8%(22/46 例),27 日後 60.9%(28/46 例),

L 群の推移は,14 日後 44.3%(27/61 例),27 日後 50.8%(31/61 例)であった.本試験の退出率は,

- 577 -

第Ⅲ相二重盲検比較試験の H 群の退出率の 95%信頼区間に含まれていた.50%退出率は,本試験で 16.0

日後,第Ⅲ相二重盲検比較試験の H 群で 16.0 日後,L 群で 21.0 日後であった.なお,本成績は第Ⅲ相二

重盲検比較試験の H 群と同程度の成績であり,L 群を上回る成績であった.

 なお,ARDS Network が実施した試験 A1)および試験 B2)では,集中治療室からの退出率が示されておらず,

本試験成績と比較できなかった.

vii)転帰

 本試験と第Ⅲ相二重盲検比較試験との生存率の比較を表ト-154に示した.

表ト-154 本試験と第Ⅲ相二重盲検比較試験との生存率の比較

試験名 測定時期 症例数 生存 死亡 生存率 (%) 95%信頼区間

投与 14 日後 20 19 1 95.0 85.4~100.0本試験

投与 27 日後 20 18 2 90.0 76.9~100.0

投与 14 日後 46 39 7 84.8 74.4~ 95.2H 群

投与 27 日後 46 36 10 78.3 66.3~ 90.2

投与 14 日後 61 51 10 83.6 74.3~ 92.9

第Ⅲ相二重盲検

比較試験

L 群

投与 27 日後 61 48 13 78.7 68.4~ 89.0

 本試験の生存率の推移は 14 日後 95.0%(19/20 例),27 日後 90.0%(18/20 例)であり,第Ⅲ相二重

盲検比較試験の H 群の推移は,14 日後 84.8%(39/46 例),27 日後 78.3%(36/46 例),L 群の推移は,

14 日後 83.6%(51/61 例),27 日後 78.7%(48/61 例)であった.本試験の生存率は,第Ⅲ相二重盲検

比較試験の H 群の生存率の 95%信頼区間に含まれていた. 50%生存日数は,いずれの場合も生存率が

50%以上であるので,計算できなかった.

 また,ARDS Network が実施した試験 A1)および試験 B2)の対照群の生存率は,180 日間の評価期間でそ

れぞれ 65.9%,60.2%であった.本試験と同じ 28 日間の生存率は論文中に具体的な数値の記載がなく,

直接比較できないが,図中からそれぞれ約 70%,約 65%前後と読み取れる.現状での本試験の生存率は,

これら ARDS Network が実施した 2 つの臨床試験の対照群と比較して,下回るものではないと推察した.

viii)安全性

 本試験で散見される有害事象として,肝機能パラメータの異常があげられる.肝機能パラメータについ

て,その発現頻度を第Ⅲ相二重盲検比較試験と比較,検討した.各肝機能パラメータの有害事象発現率を

表ト-155に示した.

 本試験において,肝機能パラメータのうち,AST(GOT)上昇,γ-GTP 上昇および総ビリルビン上昇の 3

- 578 -

項目は第Ⅲ相二重盲検比較試験のプラセボに相当する対照(L)群および至適用量(H)群の有害事象発現率を約5%

ほど上回り,一方,ALT(GPT)上昇は同程度の発現率,LDH 上昇,ALP 上昇は 10~15%ほど低い発現率

であり,いずれも大きな違いはなかった.

表ト-155 各肝機能パラメータの有害事象発現率

第Ⅲ相二重盲検比較試験項目 本試験

L 群 H 群

AST(GOT)上昇35.0%

(7/20 例)

29.4%(30/102 例)

26.9%(29/108 例)

ALT(GPT)上昇35.0%

(7/20 例)

38.2%(39/102 例)

33.9%(37/109 例)

γ-GTP 上昇60.0%

(12/20 例)

53.2%(42/79 例)

55.2%(48/87 例)

LDH 上昇10.0%

(2/20 例)

20.2%(19/94 例)

25.7%(27/105 例)

ALP 上昇40.0%

(8/20 例)

57.0%(49/86 例)

50.0%(47/94 例)

総ビリルビン上昇30.0%

(6/20 例)

27.7%(28/101 例)

22.9%(24/105 例)

 次に,肝機能パラメータに有害事象が見られた症例での肝機能パラメータの異常の程度を,「医薬品等

の副作用の重篤度分類基準について」(薬安第 80 号,平成 4 年)の肝障害のグレード分類基準(表ト-

90)に基づいて分類し,異常の程度の分布を表ト-156に示した.投与開始後の肝機能パラメータの異常

の程度の分布は,グレード 2 の AST(GOT)上昇,ALT(GPT)上昇,ALP 上昇が第Ⅲ相二重盲検比較

試験の L 群および H 群に比べやや高かったが,その他の項目の分布は第Ⅲ相二重盲検比較試験の L 群お

よび H 群と同程度の頻度であった.本試験の肝機能パラメ-タの最高値は,第Ⅲ相二重盲検比較試験の

最高値を超えるものではなかった.

表ト-156 肝機能パラメータの異常の程度の分布

第Ⅲ相二重盲検比較試験本試験

L 群 H 群

投与開始後の

臨床検査値異常のグレード

投与開始後の

臨床検査値異常のグレード

投与開始後の

臨床検査値異常のグレード

項目異常

症例0 1 2 3

最高値異常

症例0 1 2 3

最高値異常

症例0 1 2 3

最高値

1 0 5 1 2 8 16 4 3 6 16 4AST(GOT)

7(14.3) (0.0) (71.4) (14.3)

468 30(6.7) (26.7) (53.3) (13.3)

12425 29(10.3) (20.7) (55.2) (13.8)

2460

0 1 6 0 3 9 24 3 0 11 22 4ALT(GPT)

7(0.0) (14.3) (85.7) (0.0)

297 39(7.7) (23.1) (61.5) (7.7)

3280 37(0.0) (29.7) (59.5) (10.8)

1741

1 11 3 39 4 44γ-GTP 12

(8.3) (91.7)761 42

(7.1) (92.9)1085 48

(8.3) (91.7)1009

0 2 4 15 4 23LDH 2

(0.0) (100.0)933 19

(21.1) (78.9)38000 27

(14.8) (85.2)9220

0 4 4 0 2 31 14 2 3 26 13 5ALP 8

(0.0) (50.0) (50.0) (0.0)1053 49

(4.1) (63.3) (28.6) (4.1)1546 47

(6.4) (55.3) (27.7) (10.6)4649

1 1 2 2 0 7 10 11 1 6 9 8総ビリル

ビン6

(16.7) (16.7) (33.3) (33.3)20.8 28

(0.0) (25.0) (35.7) (39.3)29 24

(4.2) (25.0) (37.5) (33.3)47.8

( ) : %

- 579 -

 以上,本試験で散見される有害事象として,肝機能パラメータの異常変動があげられるが,SIRS の病

態そのものが重篤な疾患であり,第Ⅲ相二重盲検比較試験の対照(L)群とほぼ同程度の変動であること

からも,SIRS の病態に起因した変動と判断した.

●結果および考察

 ONO-5046・Na は好中球エラスターゼの選択的阻害剤 6)であり,先に実施した第Ⅲ相二重盲検比較試験 7)

は好中球関与の炎症性の肺障害を選択すべく,選択基準に国際的な SIRS の基準 5)を設け,SIRS に伴う急

性肺障害患者を対象に,プラセボ群に相当する対照(L)群との比較を行った.その成績は主評価項目の肺

機能改善度,全般改善度において,対照(L)群に比べ,至適用量(H)群は両改善度とも有意に分布が優れて

おり,L 群に対する H 群の優越性が検証された.また,副次的評価項目である人工呼吸器の離脱率や集中治

療室からの退出率のそれぞれの推移および肺障害スコアーなどの推移も主評価項目を支持するものであった.

これらの成績から SIRS に伴う急性肺障害に好中球エラスターゼの関与が示され,ONO-5046・Na は本疾患

の治療薬となることが示唆された.

 一方,近年米国では急性呼吸促迫症候群(Acute Respiratory Distress Syndrome;ARDS)に有効な

治療薬や治療法を見出すことを目的に,ARDS Network が組織され,2000 年に初めてその結果が報告 1) 2)

された.この ARDS Network の臨床試験は予め設定した人工呼吸器の離脱基準に準じ人工呼吸器を離脱

させる試験方法で,28日間の評価期間のうち,人工呼吸器を装着しなかった日数,すなわちVentilator Free

Days(VFD)を主評価項目としており,ONO-5046・Na の第Ⅲ相二重盲検比較試験の主評価項目と異なっ

ていた.このような国際的動向を背景に,本邦と海外では確かに治験に対する医療環境や医師の意識レベ

ルが異なるが,ARDS Network の最新の試験手法に準じた ONO-5046・Na の評価を行った.すなわち,

ARDS Network の試験方法に準じ,対象患者の選択・除外基準,人工呼吸器の離脱基準を予め定め,か

つ VFD を主評価項目とした試験とし,小規模非盲検でも確実に解釈できる質の高い試験を行い,先に実

施した第Ⅲ相二重盲検比較試験あるいは ARDS Network が実施した 2 試験と比較考察することとした.

 対象患者の選択基準のうち,肺障害の基準はARDS Networkの試験で用いているAmerican-European

Consensus Conference4)で規定した方法に準じ,(1) 機械的人工呼吸管理下で PaO2/FIO2≦300mmHg,

(2) 胸部X線所見で両側性に浸潤陰影が認められる,(3) 肺動脈楔入圧が測定された場合は,肺動脈楔入

圧≦18mmHg,測定されない場合は,左房圧上昇の臨床所見を認めないこととした.また,SIRS の基準

は第Ⅲ相二重盲検比較試験と同様の国際的基準を用い,好中球関与の炎症性の肺障害を選択することとし

た.さらに,ARDS Network の試験方法に準じて設定した除外基準に加え,第Ⅲ相二重盲検比較試験を

踏まえ,肺を含め 4 臓器障害以上の多臓器障害患者,および熱傷・外傷患者を除外した.

 主評価項目は ARDS Network の試験方法に準じ VFD とし,ARDS Network の人工呼吸器の離脱基準

をもとにして本邦で実施可能な人工呼吸器の離脱基準を予め設定して実施した.なお,ARDS Network

の試験方法の本邦における啓蒙と,本邦で ARDS Network の試験方法に可能な限り準拠して実施するた

め,ARDS Network メンバーも参加した上で,本試験参画施設の医師らと人工呼吸器の離脱基準につい

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て協議し,人工呼吸器の離脱基準を決定した.本試験と先に実施した第Ⅲ相二重盲検比較試験の比較は,

本試験の選択・除外基準を満たす対象集団での成績を用いた.

 本試験の実施症例数は 20 例であり,いずれも GCP および治験実施計画書を遵守した PPS 患者集団で

あり,適切な試験を実施し得た.また,人工呼吸器の離脱基準に際しては,予め設定した人工呼吸器の離

脱基準に準じ人工呼吸器を離脱させ得た.その結果,主評価項目の VFD は平均値±標準偏差で 14.3±8.6

日,中央値で 19.0 日であった.この成績は,先に実施した第Ⅲ相二重盲検比較試験の至適用量(H)群

の 13.1±10.9 日,中央値 18.5 日と同程度の成績であり,低用量(L)群の 10.7±10.8 日,中央値 8.0 日

を上回る成績であった. また,本試験の VFD は,最近実施された ARDS Network の試験 A1)における

プラセボ群の VFD の中央値 9 日,および試験 B2)における対照群(Traditional Tidal Volume 群)の VFD

の平均値±標準偏差 10±11 日を上回る成績であった.また,主評価項目の VFD と副次的評価項目(肺

機能改善度,全般改善度,集中治療室からの退出),肺機能改善度と肺障害スコアーおよび集中治療室か

らの退出の関係は良好な関係にあり,肺障害の改善は人工呼吸器の早期離脱や集中治療室からの早期退出

をもたらした.これらの成績は主評価項目の VFD の成績を説明し得るものであった.さらに,今回副次

的な評価項目として設定した肺機能改善度,全般改善度および生存率においても第Ⅲ相二重盲検比較試験

の至適用量群と遜色のない成績であった.

 これらのことから,国際的な ARDS Network の基準に準拠して実施した本試験において ONO-5046・Na

は SIRS に伴う肺障害に有効であることが示された.

 また,本邦において初めて ARDS Network に準拠して予め人工呼吸器の離脱基準を設定して実施した

が,その実施にあたっては原則として本基準で人工呼吸器を離脱させることとし,患者の状態を十分に考

慮して,この基準と異なる基準で人工呼吸器を離脱する必要があると治験責任医師が判断した場合には,

この限りではないこととした.集積した 20 例中 16 例が 28 日間の評価期間中に人工呼吸器を離脱したが,

このうち 2 例はウィーニング開始の評価の手順として人工呼吸器による換気補助を停止した際,すでに

ウィーニング終了の耐性基準も同時に満たしており,そのまま人工呼吸器を停止した状態で CPAP トラ

イアルに移行し,その後この手順に従って離脱させた.患者の陽圧障害による肺障害などを考慮すると,

再度手順に従って人工呼吸器を起動する必要はないと判断されたためである.もう 1 例は離脱の最終段階

の CPAP トライアル中に,患者の人工呼吸器離脱に対する不安感除去のための偽処置として,人工呼吸

器を 5 分間起動した症例であった.いずれの症例も患者の状態を十分に考慮した適切な臨床的判断に基づ

くものであった.安全性においては肝機能パラメータの異常変動が散見されたが,このうち試験薬剤との

因果関係が関連ないともいえないとされ,副作用としてあげられた 5 例は,投与前の肝機能パラメータが

正常・異常に関わらず,投与中あるいは投与終了後に上昇,その後の追跡調査でいずれも軽快ないしは消

失しており,肝臓の基質的変化をもたらすものではなかった.本疾患は重篤な疾患で,その病態の推移に

よっては臓器障害が進展して多臓器障害への移行が懸念される疾患であり,これらの肝機能パラメータの

変動は第Ⅲ相二重盲検比較試験の対照(L)群とほぼ同程度の変動であることからも,本疾患の病態の推移

に起因した変動と考えた.よって,本試験において,ONO-5046・Na は安全性上,特に危惧される重篤な

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ものはなかったが,本疾患の重篤性とその病態の推移を十分観察しながら有害事象への対応を考慮すべき

と考えられた.

 本邦と欧米の治験に対する医療環境や医師の意識レベルは異なるが,本試験のように,ARDS Network

の選択・除外基準や主評価項目を本邦での治験に利用し,国際的レベルの最新の治験内容とし,かつこれ

を実施し得た意義は大きいと考えられる.

参考文献

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Respiratory Distress Syndrome: a randomized controlled trial. JAMA, 283(15): 1995-2002, 2000.

2) The Acute Respiratory Distress Syndrome Network: Ventilation with lower tidal volimes as

compared with traditional tidal volumes for Acute Lung Injury and the Acute Respiratory

Distress Syndrome. N Engl J Med, 342(18): 1301-1308, 2000.

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4) Bernard G.B., Artigas A.,Brigham K.L., Carlet J., et al.:The American-European Consensus

Conference on ARDS. Definitions, mechanisms, relevant outcomes, and clinical trial coordination.

Am. J. Respir. Crit. Care Med., 149:818-824, 1994.

5) Members of the American College of Chest Physicians/Society of Critical Care Medicine

Consensus Conference Committee:American College of Chest Physicians/Society of CriticalCare

Medicine Consensus Conference:Definitions for sepsis and organ failure and guidelines for the

use of innovative therapies in sepsis. Crit. Care Med., 20:864-874, 1992.

6) Kawabata, K., Suzuki, M., Sugitani, M., et al.:ONO-5046, a novel inhibitor of human neu-trophil

elastase. Biochem. Biophys. Res. Comm., 177:814-820, 1991.

7) 玉熊正悦,柴忠明,平澤博之,他:好中球エラスターゼ阻害剤;ONO-5046・Na の全身性炎症反応症候群

に伴う肺障害に対する有効性と安全性の検討-第Ⅲ相二重盲検比較試験-.臨床医薬,14:289-318,1998.