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2 3 [休憩 Intermission] [主催]読売新聞社、日本テレビ放送網、読売テレビ、読売日本交響楽団 [助成] 文化庁文化芸術振興費補助金(舞台芸術創造活動活性化事業) [協力] 〈サントリーホール30周年記念参加公演〉 ベートーヴェン ピアノ協奏曲 第3 番 ハ短調 作品 37 [約 34分] BEETHOVEN / Piano Concerto No. 3 in C minor, op. 37 . Allegro con brio . Largo . Rondo : Allegro P. 8 第564回 定期演奏会 サントリーホール/19 時開演  Subscription Concert, No. 564 Thursday, 24th November, 19:00 / Suntory Hall 11.24 [木] ブラームス 交響曲 第 4 番 ホ短調 作品98 [約39 分] BRAHMS / Symphony No. 4 in E minor, op. 98 . Allegro non troppo Ⅱ. Andante moderato Ⅲ. Allegro giocoso Ⅳ. Allegro energico e passionato P. 9 第 12 回 読響アンサンブル・シリーズ よみうり大手町ホール/19 時 30 分開演(19 時から解説) Yomikyo Ensemble Series, No. 12 Wednesday, 9th November, 19:30(Pre-concert talks from 19:00) / Yomiuri Otemachi Hall 11.9 [水] [休憩 Intermission] シューベルト ピアノ五重奏曲〈ます〉 イ長調 D 667 [約40分] SCHUBERT / Piano Quintet in A major, D 667 “Die Forelle” . Allegro vivace Ⅱ. Andante Ⅲ. Scherzo : Presto Ⅳ. Tema con variazioni : Andantino Ⅴ. Allegro giusto ヴァイオリン/太田博子、ヴィオラ/三浦克之、チェロ/芝村 崇、コントラバス/小金丸章斗 ショスタコーヴィチ ピアノ五重奏曲 ト短調 作品57 [約29 分] SHOSTAKOVICH / Piano Quintet in G minor, op. 57 . Prelude : Lento Ⅱ. Fugue : Adagio Ⅲ. Scherzo : Allegretto Ⅳ. Intermezzo : Lento Ⅴ. Finale : Allegretto ヴァイオリン/赤池瑞枝、山田友子、ヴィオラ/長岡晶子、チェロ/松葉春樹 《上岡敏之と読響メンバーの室内楽》 ※出演者と曲目のみ掲載しています。曲目解説は当日別紙を配布予定です。 ピアノ/上岡敏之 ヴァイオリン/赤池瑞枝、太田博子、山田友子 (首席代行) ヴィオラ /長岡晶子、三浦克之 チェロ /芝村 崇、松葉春樹 コントラバス /小金丸章斗 ナビゲーター /鈴木美潮 (読売新聞東京本社 社長直属教育ネットワーク事務局専門委員) Navigator MISHIO SUZUKI Cello TAKASHI SHIBAMURA, HARUKI MATSUBA [主催]読売新聞社、日本テレビ放送網、読売テレビ、読売日本交響楽団 Violin MIZUE AKAIKE, HIROKO OTA, YUKO YAMADA ( Acting Principal ) Viola AKIKO NAGAOKA, KATSUYUKI MIURA Piano TOSHIYUKI KAMIOKA Double Bass AKITO KOGANEMARU 指揮/小林研一郎 (特別客演指揮者) ピアノ/イェルク・デームス コンサートマスター/日下紗矢子 Concertmaster SAYAKO KUSAKA Special Guest Conductor KEN-ICHIRO KOBAYASHI P. 5 Piano JÖRG DEMUS P. 6

11.9 11.24 第564回 定期演奏会 サントリーホー …BEETHOVEN / Piano Concerto No. 3 in C minor, op. 37 Ⅰ. Allegro con brio Ⅱ. Largo Ⅲ. Rondo : Allegro P.8 第564回

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Page 1: 11.9 11.24 第564回 定期演奏会 サントリーホー …BEETHOVEN / Piano Concerto No. 3 in C minor, op. 37 Ⅰ. Allegro con brio Ⅱ. Largo Ⅲ. Rondo : Allegro P.8 第564回

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[休憩 Intermission]

[主催]読売新聞社、日本テレビ放送網、読売テレビ、読売日本交響楽団[助成] 文化庁文化芸術振興費補助金(舞台芸術創造活動活性化事業)[協力]〈サントリーホール30周年記念参加公演〉

ベートーヴェン ピアノ協奏曲 第3番 ハ短調 作品37 [約34分]BEETHOVEN / Piano Concerto No. 3 in C minor, op. 37

Ⅰ. Allegro con brioⅡ. LargoⅢ. Rondo : Allegro

P. 8

第564回 定期演奏会サントリーホール/19時開演 Subscription Concert, No. 564Thursday, 24th November, 19:00 / Suntory Hall

1 1. 24[木]

ブラームス 交響曲 第4番 ホ短調 作品98 [約39分]BRAHMS / Symphony No. 4 in E minor, op. 98

Ⅰ. Allegro non troppoⅡ. Andante moderatoⅢ. Allegro giocosoⅣ. Allegro energico e passionato

P. 9

第12回 読響アンサンブル・シリーズよみうり大手町ホール/19時30分開演(19時から解説)Yomikyo Ensemble Series, No. 12Wednesday, 9th November, 19:30(Pre-concert talks from 19:00)/ Yomiuri Otemachi Hall

1 1. 9[水]

[休憩 Intermission]

シューベルト ピアノ五重奏曲〈ます〉 イ長調 D 667 [約40分]SCHUBERT / Piano Quintet in A major, D 667 “Die Forelle”

Ⅰ. Allegro vivaceⅡ. AndanteⅢ. Scherzo : PrestoⅣ. Tema con variazioni : AndantinoⅤ. Allegro giusto

ヴァイオリン/太田博子、ヴィオラ/三浦克之、チェロ/芝村 崇、コントラバス/小金丸章斗

ショスタコーヴィチ ピアノ五重奏曲 ト短調 作品57 [約29分]SHOSTAKOVICH / Piano Quintet in G minor, op. 57

Ⅰ. Prelude : LentoⅡ. Fugue : AdagioⅢ. Scherzo : AllegrettoⅣ. Intermezzo : LentoⅤ. Finale : Allegretto

ヴァイオリン/赤池瑞枝、山田友子、ヴィオラ/長岡晶子、チェロ/松葉春樹

《上岡敏之と読響メンバーの室内楽》

※出演者と曲目のみ掲載しています。曲目解説は当日別紙を配布予定です。

ピアノ/上岡敏之ヴァイオリン/赤池瑞枝、太田博子、山田友子(首席代行)

ヴィオラ/長岡晶子、三浦克之チェロ/芝村 崇、松葉春樹コントラバス/小金丸章斗ナビゲーター/鈴木美潮 (読売新聞東京本社 社長直属教育ネットワーク事務局専門委員)

Navigator MISHIO SUZUKI

Cello TAKASHI SHIBAMURA, HARUKI MATSUBA

[主催]読売新聞社、日本テレビ放送網、読売テレビ、読売日本交響楽団

Violin MIZUE AKAIKE, HIROKO OTA, YUKO YAMADA (Acting Principal)

Viola AKIKO NAGAOKA, KATSUYUKI MIURA

Piano TOSHIYUKI KAMIOKA

Double Bass AKITO KOGANEMARU

指揮/小林研一郎(特別客演指揮者) 

ピアノ/イェルク・デームスコンサートマスター/日下紗矢子 Concertmaster SAYAKO KUSAKA

Special Guest Conductor KEN-ICHIRO KOBAYASHI P. 5

Piano JÖRG DEMUS P. 6

プログラム

特 集

今後の公演案内

読響ニュース

Page 2: 11.9 11.24 第564回 定期演奏会 サントリーホー …BEETHOVEN / Piano Concerto No. 3 in C minor, op. 37 Ⅰ. Allegro con brio Ⅱ. Largo Ⅲ. Rondo : Allegro P.8 第564回

4 5

第598回 名曲シリーズサントリーホール/19時開演 Popular Series, No. 598Friday, 2nd December, 19:00 / Suntory Hall

12. 2[金]

第4回 パルテノン名曲シリーズパルテノン多摩大ホール/15時開演 Parthenon Popular Series, No. 4Saturday, 3rd December, 15:00 / Parthenon Tama in Tama-center

12. 3[土]

[休憩 Intermission]

チャイコフスキー ピアノ協奏曲 第1番 変ロ短調 作品23 [約32分]TCHAIKOVSKY / Piano Concerto No. 1 in B fl at minor, Op. 23

Ⅰ. Allegro non troppo e molto maestoso ‒ Allegro con spiritoⅡ. Andantino sempliceⅢ. Allegro con fuoco

P.11

チャイコフスキー 交響曲 第4番 ヘ短調 作品36 [約44分]TCHAIKOVSKY / Symphony No. 4 in F minor, Op. 36

Ⅰ. Andante sostenuto ‒ Moderato con animaⅡ. Andantino in modo di canzonaⅢ. Scherzo : Pizzicato ostinato. AllegroⅣ. Finale : Allegro con fuoco

P.12

指揮/小林研一郎(特別客演指揮者) 

ピアノ/松田華音コンサートマスター/長原幸太

Special Guest Conductor KEN-ICHIRO KOBAYASHI P. 5

Piano KANON MATSUDA P. 7

Concertmaster KOTA NAGAHARA

今月のマエストロ

aestro of the monthM

 読響サウンドを知り尽くした特別客演指揮者が、熟練のタクトでブラームス晩年の傑作とチャイコフスキー中期の代表作を聴かせる。巨匠と若手、二人のピアニストを迎えた協奏曲にも注目だ。 1940年福島県いわき市出身。東京芸術大学作曲科および指揮科を卒業。1974年第1回ブダペスト国際指揮者コンクール第1位、特別賞を受賞。ハンガリー国立響の音楽総監督をはじめ、チェコ・フィル常任客演指揮者、日本フィル音楽監督など国内外の数々のオーケストラのポジションを歴任。2002年5月の「プラハの春音楽祭」オープニングコンサートの指揮者に、東洋人として初めて起用されたほか、ハンガリー政府から民間人最高位の“星付中十字勲章”を授与された。11年文化庁長官表彰受賞。13年旭日中綬章を受章。

 現在、ハンガリー国立フィル、日本フィルおよび名古屋フィルの桂冠指揮者、九州響の名誉客演指揮者、東京芸術大学、東京音楽大学およびリスト音楽院(ハンガリー)名誉教授。東京文化会館音楽監督、長野県芸術監督団の音楽監督を務めている。 録音では現在、読響とブラームスの交響曲全集に取り組んでおり、「交響曲第1番/ハンガリー舞曲集」「交響曲第3番/シューベルト〈未完成〉」が発売され、絶賛を博している。

◇11月24日 定期演奏会◇12月2日 名曲シリーズ

◇12月3日 パルテノン名曲シリーズ

©読響

[主催]読売新聞社、日本テレビ放送網、読売テレビ、読売日本交響楽団(12/2) 多摩市文化振興財団、読売日本交響楽団、読売新聞社(12/3)

[協賛]NTTコミュニケーションズ株式会社(12/2)[助成] 文化庁文化芸術振興費補助金(舞台芸術創造活動活性化事業)(12/2)

平成28年度文化庁劇場・音楽堂等活性化事業(12/3)〈サントリーホール30周年記念参加公演〉(12/2)

小林研一郎(特別客演指揮者)

熟練のタクトが奏でる憂愁と情熱 二つのプロ

Ken-ichiro Kobayashi

プログラム

特 集

今後の公演案内

読響ニュース

Page 3: 11.9 11.24 第564回 定期演奏会 サントリーホー …BEETHOVEN / Piano Concerto No. 3 in C minor, op. 37 Ⅰ. Allegro con brio Ⅱ. Largo Ⅲ. Rondo : Allegro P.8 第564回

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今月のアーティスト

rtist of the monthA

と初共演し、ロシアを代表する指揮者・ピアニストのプレトニョフから絶賛されたほか、これまでにマリインスキー歌劇場管、ロシア・ナショナル管、ロシア国立響、札幌響などと共演を重ねている。 2014年秋、ドイツ・グラモフォンよりデビュー。ベートーヴェンの〈ワルトシュタイン・ソナタ〉、ショパンの〈英雄ポロネーズ〉やバラード、幻想曲のほか、ラフマニノフ、スクリャービンの小品を収めたCDは、力強く情感豊かな演奏で、大きな話題を呼んだ。

 メディアで話題を集める20歳の新星が読響に初登場。得意とするチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番でフレッシュな情熱を披露する。 1996年香川県高松市生まれ。4歳からピアノを始め、わずか6歳でモスクワへ渡り、キーシンも学んだグネーシン音楽学校に入学。2006年に地元テレビ局主催のコンクールで優勝するなど、異郷の地で早くから頭角を現した。2013年にグネーシン音楽学校で外国人として初めて最優秀生徒賞を受賞。翌年、首席で卒業後、名門モスクワ音楽院にロシア政府特別奨学生として入学した。 14年間のロシア留学を通じて、めざましい技巧とみずみずしい叙情、自由でのびのびした感性をはぐくみ、小柄な体からは想像できないスケールの大きな音楽を聴かせる。8歳でオーケストラ

◇12月2日 名曲シリーズ◇12月3日 パルテノン名曲シリーズ

©Ayako Yamamoto

20歳、期待の新星読響に初登場

Piano Kanon Matsuda

ピアノ

松田華音

にも長年にわたって出演。20世紀後半を代表する名ピアニストとしての地位を確立した。とりわけモーツァルト、ベートーヴェン、シューマンなどの正統的な解釈で評価が高く、フィッシャー=ディースカウ、エリー・アメリンクら名歌手の伴奏や室内楽の分野でも優れた業績を残している。フォルテピアノなどの古楽器演奏のパイオニアとしても知られる。 バッハからドイツ・フランスのロマン派、印象派に至る幅広いレパートリーを誇り、これまでの録音は数百タイトルに及ぶ。

 オーストリアを代表する、今年88歳を迎える名ピアニストが来日し、読響と久しぶりの共演を果たす。曲目はベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番。端正なピアノで、いにしえのウィーンの香りを伝えてくれるだろう。 1928年生まれ。11歳でウィーン音楽アカデミーに入学し、ピアノ、指揮、オルガン、作曲を学ぶ。第2次大戦後にパリで名ピアニスト、イヴ・ナットに師事し、ギーゼキング、ケンプ、ベネデッティ=ミケランジェリらの教えも受ける。21歳でデビューし、ヨーロッパ各地や南米でコンサートを開き、1956年にブゾーニ国際ピアノコンクールで優勝して大きな脚光を浴びた。 1960年代からカラヤン、サヴァリッシュ、小澤征爾らの指揮で欧米や日本の一流オーケストラと共演を重ね、ザルツブルクやルツェルンなどの有名音楽祭 ◇11月24日 定期演奏会

円熟の巨匠が奏でるいにしえのウィーンの香り

Piano Jörg Demus

ピアノ

イェルク・デームス

プログラム

特 集

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Page 4: 11.9 11.24 第564回 定期演奏会 サントリーホー …BEETHOVEN / Piano Concerto No. 3 in C minor, op. 37 Ⅰ. Allegro con brio Ⅱ. Largo Ⅲ. Rondo : Allegro P.8 第564回

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楽曲紹介

rogram notesP1 1. 24[木]

 ドイツのボンの宮廷楽師だったルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770~1827)は、ハイドンのもとで作曲を学ぶため、1792年にウィーンにやってきた。経済的な苦労はあったが、貴族から援助を受け、交遊関係を広げ、名演奏家がひしめくウィーンでもピアニストとしての実力が高く評価された。与えられた主題を自由に展開させる即興演奏や滑らかに音をつなげるレガート奏法に定評があり、自作のピアノ協奏曲では独奏者としてその腕前を披露した。ピアノ協奏曲第3番も、作曲者自身のピアノ独奏で、アン・デア・ウィーン劇場において初演された。 初演時、独奏パートが楽譜として完成していなかったことは有名だが、ベートーヴェンはこの協奏曲で、ピアノ

とオーケストラを有機的に結び付け、しっかりとした全体構成のもとで、ピアノの華麗な演奏技巧を際立たせるなど、モーツァルトまでの時代とは異なる独創的な方向を打ち出した。第 1 楽章 アレグロ・コン・ブリオ、ハ短調 管弦楽による力強い第1主題とヴァイオリンとクラリネットの情感あふれる第2主題が示された後、独奏ピアノが二つの主題を軽やかに奏する。第2楽章 ラルゴ、ホ長調 独奏ピアノの優美な主題から始まり、管弦楽と穏やかな対話を続ける。ベートーヴェンが書いた最も美しい音楽のひとつ。第3楽章 ロンド、アレグロ、ハ短調独奏ピアノの溌

はつ

剌らつ

としたロンド主題が、複数のエピソードをはさみ反復され、最後はハ長調で力強く締めくくる。

ベートーヴェンピアノ協奏曲 第3番 ハ短調 作品37

作曲:1796~1803年/初演:1803年4月5日、ウィーン/演奏時間:約34分

柴辻純子(しばつじ じゅんこ)・音楽評論家

楽器編成/フルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン2、トランペット2、ティンパニ、弦五部、独奏ピアノ

スも無言だったため、気まずい沈黙が流れたという。 ブラームスが危惧した難解さは、音楽が複雑で緻密に組み立てられていることだけでなく、これまでの三つの交響曲でベートーヴェンへの意識を克服したことでさらに歴史をさかのぼり、古い時代に眼

まな

差ざ

しを向けたことにあった。例えば、第2楽章にルネサンス時代まで教会音楽で用いられた音階であるフリギア旋法を採り入れ、終楽章はバッハを模範に、バロック時代に多用されたパッサカリアという変奏曲の形式で書かれた。そのためこの終楽章は、古典派の軽快なロンド・フィナーレとも、ベートーヴェンの第5番や第9番の交響曲のように「苦悩から歓喜へ」と短調から最後は長調へと転じるフィナーレとも異なり、ホ短調の重たい楽想はそのまま深められた。果たして聴衆に受け入れられるのか、ブラームスの心配をよそに、1885年10月に作曲者の指揮で行われたマイニンゲン宮廷管弦楽団による初演は大成功を収め、ほどなくしてこの作品はヨーロッパ各地で演奏されるようになった。 さらにブラームスは、次の交響曲の構想も温めていたようだが、以後は、

ブラームス交響曲 第4番 ホ短調 作品98

作曲:1884~85年/初演:1885年10月25日、マイニンゲン/演奏時間:約39分

 ヨハネス・ブラームス(1833~97)は、1870年代半ばから世を去るまで、夏の休暇はオーストリアのバート・イシュルやスイスのホーフシュテッテンなど、避暑地に滞在して、創作に専念することにしていた。この交響曲も、ウィーンから南西約100キロに位置するミュルツツーシュラークという保養地で、前半の二つの楽章は1884年に、後半は翌年に作曲された。第2番と第3番の交響曲はどちらもひと夏で完成させたが、新しい交響曲には第1番ほどとは言わないまでも、なかなか自信をもつことができなかった。 ブラームスは、ほぼ全体が完成した1885年秋に彼の良き理解者であったヘルツォーゲンベルク夫人に第1楽章と第2楽章の冒頭部分を送った。そこに添えた手紙からは交響曲が理解を得られないのではないかと懸念する様子がうかがえ、指揮者のビューローにも同様の懸念を伝える手紙を送っている。ブラームスはこれまでも、交響曲が書き上がると、親しい友人たちを集めてピアノで演奏し、助言を求めてきた。今回の試演では、演奏が始まるとその難解さに多くの人は戸惑い、第1楽章を弾き終えたところで、ブラーム

プログラム

特 集

今後の公演案内

読響ニュース

Page 5: 11.9 11.24 第564回 定期演奏会 サントリーホー …BEETHOVEN / Piano Concerto No. 3 in C minor, op. 37 Ⅰ. Allegro con brio Ⅱ. Largo Ⅲ. Rondo : Allegro P.8 第564回

10 11

的な要素を含む再現部は、第1主題がヴィオラから始まる。第3楽章 アレグロ・ジョコーソ、ハ長調 スケルツォ風で活気のある楽章。力強い第1主題はティンパニやトライアングルが野趣に満ち、第2主題はヴァイオリンが優美に奏でる。第4楽章 アレグロ・エネルジコ・エ・パッショナート、ホ短調 パッサカリア形式で、3拍子系のゆったりした主題を低音で繰り返しながら、上声の和声や旋律を変化させていく。ここでは、バッハのカンタータ〈主よ、われは汝を求む〉(BWV150)の終曲に基づいている。全体は、主題と30の変奏、そしてコーダから成り、形式上の統一感や楽曲全体の統一をもたせるための工夫もみられる。 主題から第3変奏までの32小節(8小節×4)は、ソナタ形式の提示部にあたり、後半で再現される(第23~第26変奏)。ヴァイオリンのなめらかな第4変奏から自在に展開され、第12変奏で拍子が変わり、印象的なフルート独奏が響く。長調に転調するが、再び短調に戻り、冒頭の再現を経て、最後に第1楽章の第1主題を想起させる3度音程の動機がヴァイオリンに現れる。コーダ(ピウ・アレグロ)は熱く高まり、そのまま決然と結ばれる。

ヴァイオリンとチェロのための協奏曲(1887)を例外に大規模な管弦楽曲から離れ、静寂や諦念が滲

にじ

む後期の作風へと移り、独奏曲や室内楽曲に目を向ける。そして死の1か月前、ブラームスが聴衆の前に最後に姿を現したのは、ウィーンでの交響曲第4番の演奏会だった。そのやつれた姿に聴衆も楽員も永遠の別れを予感し、作曲家への感謝と愛情を心からの拍手で示した。第1楽章 アレグロ・ノン・トロッポ、ホ短調 序奏は持たず、ため息をつくような、ヴァイオリンの第1主題で始まる。この哀愁を帯びた主題は、3度音程の小さな基本動機を組み立てたもので、楽章を通じて徹底して用いられ、緊密な構成を生み出している。管楽器のリズミックな動機を合図に、のびやかな第2主題がチェロで歌われる。二つの主題とリズミックな動機が展開されるが、主題はどちらも短調なので音楽全体にもの哀しさが広がる。第2楽章 アンダンテ・モデラート、ホ長調 冒頭4小節のホルンと木管楽器による序奏は、フリギア旋法(ミファソラシドレミ)に基づく。ささやくように始まる第1主題は、序奏主題に和声を付けたもの。ヴァイオリンのたっぷりとした旋律をはさみ、チェロが深く豊かな第2主題を歌い出す。展開

楽器編成/フルート2(ピッコロ持替)、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、コントラファゴット、ホルン4、トランペット2、トロンボーン3、ティンパニ、打楽器(トライアングル)、弦五部

 ロシアを代表する作曲家ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー(1840~93)の最初の協奏曲。1875年という比較的初期の作ながら、彼の3曲のピアノ協奏曲はもとより、古今の協奏曲の中でも最上位の人気を得ている。 本作は世に出る経緯でも有名だ。チャイコフスキーは、未知の分野だった協奏曲への関心からこれを作曲した。だが、献呈相手に想定していた恩人で大ピアニストのニコライ・ルビンシテインから、

「無価値で演奏不能」と酷評されてしまう。怒ったチャイコフスキーは、問題点の指摘に対して、「一音たりとも変更するつもりはない!」と応酬し、ドイツの名指揮者でピアニストのハンス・フォン・ビューローに楽譜を送付。初演はビューローの演奏旅行先、アメリカのボストンで行われた。ただルビンシテインも、モスクワ初演を指揮し、後にはソロも演奏するなど曲の価値を認め、一方のチャ

イコフスキーも2度改訂を施している。 曲は、古典的な協奏曲形式の中に、民俗的色彩と叙情性、比類ない迫力とスケールの大きさが盛り込まれた力作。ピアノの技巧性も高く、奏者の腕を存分に満喫できる。第1楽章 アレグロ・ノン・トロッポ・エ・モルト・マエストーソ~アレグロ・コン・スピーリト。ホルンが出す序奏主題は印象的だが、主部にはまったく登場しない。主部は、リズミカルな第1主題と哀調を帯びた第2主題を中心に、多彩かつ壮大な展開を遂げる。第2楽章 アンダンティーノ・センプリーチェ。フルートで出される主題を軸にした牧歌風の緩やかな部分に、スケルツォ風の急速部分が挟まれる。第3楽章 アレグロ・コン・フオーコ。ウクライナ民謡に基づく活発な第1主題と、流麗な第2主題が対比されながら烈

はげ

しく進む。

柴田克彦(しばた かつひこ)・音楽ライター

12. 2[金] 12. 3[土]

チャイコフスキーピアノ協奏曲 第1番 変ロ短調 作品23

作曲:1874~75年/初演:1875年10月25日、ボストン/演奏時間:約32分

楽器編成/フルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン4、トランペット2、トロンボーン3、ティンパニ、弦五部、独奏ピアノ

プログラム

特 集

今後の公演案内

読響ニュース

Page 6: 11.9 11.24 第564回 定期演奏会 サントリーホー …BEETHOVEN / Piano Concerto No. 3 in C minor, op. 37 Ⅰ. Allegro con brio Ⅱ. Largo Ⅲ. Rondo : Allegro P.8 第564回

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半2楽章が短調、後半2楽章が長調を基調とする“暗から明へ”の構成がなされ、冒頭で強奏されるファンファーレ風の「運命主題」が全曲の核となる。第1楽章 アンダンテ・ソステヌート~モデラート・コン・アニマ。序奏では「運命主題」が鳴り響き、主部に入ると、弦楽器による悩ましげな第1主題、クラリネットが奏する甘い第2主題を中心に、激しい展開を遂げる。第2楽章 アンダンティーノ・イン・モード・ディ・カンツォーナ。オーボエに始まる哀しげな主題が様々な楽器で奏され、中間部は舞曲調となる。第3楽章 スケルツォ、ピッツィカート・オスティナート、アレグロ。「弦のピッツィカート」「木管合奏」「金管主体の行進曲」の3部分が交替し、最後は合体する。第4楽章 フィナーレ、アレグロ・コン・フオーコ。激

げき

烈れつ

な第1主題、ロシア民謡〈野に立つ樺の木〉に基づく第2主題、活発な第3主題が交互に登場しながら進む、迫力満点のフィナーレ。途中で「運命主題」が活気をさえぎるが、圧倒的な興奮が戻って終結する。

チャイコフスキー交響曲 第4番 ヘ短調 作品36

作曲:1877~78年/初演:1878年2月22日、モスクワ/演奏時間:約44分

 チャイコフスキー三大交響曲の第1作。第5番の10年前に書かれた、激動期の作品である。 チャイコフスキーは、1877年4月にモスクワ音楽院の教え子ミリューコヴァから求愛され、7月に結婚した。しかしすぐに破綻。モスクワ川で入水自殺を企て、未遂に終わる。そして10月にロシアを脱出し、翌1878年4月まで、スイスやフランス、イタリアで静養した。また同時期には、鉄道王の未亡人フォン・メック夫人から年金が約束され、自由な作曲家への道が開けた。 作曲は、この真っただ中の1877年春頃に開始され、1878年1月に静養先のイタリア、サンレモで完成。同年2月にモスクワで初演され、成功を収めた。なお、楽譜の扉には「わが良き友に」と記されており、「友」はメック夫人を指すとみられている。 曲は、チャイコフスキーのオーケストラ作品の中でもとりわけ情熱的でダイナミックな音楽。内容は、メック夫人への手紙の記述等から「自身の人生の苦悩を反映し、“運命との闘いと勝利”が描かれた作品」と解釈されている。前

楽器編成/フルート2、ピッコロ、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン4、トランペット2、トロンボーン3、チューバ、ティンパニ、打楽器(トライアングル、大太鼓、シンバル)、弦五部