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日本消化器病学会 消化性潰瘍診療ガイドライン 2015(改訂第 2 版) Evidence-based Clinical Practice Guidelines for Peptic Ulcer 2015(2nd Edition

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日本消化器病学会消化性潰瘍診療ガイドライン 2015(改訂第 2版)

Evidence-based Clinical Practice Guidelines for Peptic Ulcer 2015(2nd Edition)

消化性潰瘍診療ガイドライン2015(改訂第2版),南江堂,2015

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2015

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日本消化器病学会消化性潰瘍診療ガイドライン作成・評価委員

会は,消化性潰瘍診療ガイドラインの内容については責任を負う

が,実際の臨床行為の結果については各担当医が負うべきである.

消化性潰瘍診療ガイドラインの内容は,一般論として臨床現場の

意思決定を支援するものであり,医療訴訟等の資料となるものでは

ない.

日本消化器病学会 2015 年 4 月 1 日

消化性潰瘍診療ガイドライン2015(改訂第2版),南江堂,2015

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消化性潰瘍診療ガイドライン2015(改訂第2版),南江堂,2015

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日本消化器病学会は,2005 年に当時の理事長であった跡見 裕先生の発議によって,Evidence-

Based Medicine(EBM)の手法に則ったガイドラインの作成を行うことを決定し,3年余をかけ,2009〜2010 年に消化器 6疾患のガイドライン(第一次ガイドライン)を完成・上梓した.6疾患とは,胃食道逆流症(GERD),消化性潰瘍,肝硬変,クローン病,胆石症,慢性膵炎であり,それまでガイドラインが作成されていない疾患で,日常臨床で診療する機会の多いものを重視し,財団評議員に行ったアンケート調査で多数意見となったものが選ばれた.2006 年の第 92 回日本消化器病学会総会の際に第 1回ガイドライン委員会が開催され,文献検索範囲,文献採用基準,エビデンスレベル,推奨グレードなど EBM手法の統一性についての合意と,クリニカルクエスチョン(CQ)の設定など基本的な枠組みが合意され,作成作業が開始された.6疾患のガイドライン作成では,推奨の強さのグレード決定にMinds(Medical Information Network Dis-

tribution Service)システムを一部改変し,より臨床に則した日本消化器病学会独自の基準を用いた.また,ガイドライン作成における利益相反(Conflict of Interest:COI)が当時,社会的問題となっており,EBM専門家から提案された基準に基づいてガイドライン委員の COIを公開した.菅野健太郎前理事長のリーダーシップのもとに学会をあげての事業として行われたガイドライン作成は先進的な取り組みであり,わが国の消化器診療の方向性を学会主導で示したものとして大きな価値があったと評価できる.日本消化器病学会は,その後,6疾患について「患者さんと家族のためのガイドブック」も編集・出版し,治療を受ける側の目線で解説書を作成することによって,一般市民がこれら消化器の代表的疾患への理解を深めるうえで役立ったと考えている.第一次ガイドライン作成を通じて,日本消化器病学会は消化器関連の Common Diseaseに関

するガイドラインの必要性と重要性の認識を強め,さらに整備する必要度の高い疾患について評議員にアンケートを行い,2011 年から機能性ディスペプシア(FD),過敏性腸症候群(IBS),大腸ポリープ,NAFLD/NASHの 4疾患についても,診療ガイドライン(第二次ガイドライン)の作成を開始した.一方では,これら 4疾患の診療ガイドラインの刊行が予定された 2014 年には,第一次ガイドラインも作成後 5年が経過するため,いわゆる Sunset Rule(日没ルール:作成から長期経過したガイドラインは妥当性が担保できないため,退場させる取り決め)に従い,先行 6疾患のガイドラインの改訂作業も併せて行うこととなった.2011 年 11 月 9日に 6疾患の第1回改訂委員会が開催され,改訂の基本方針が確認された.改訂版では第二次ガイドライン作成と同様,国際的主流となっている GRADE(The Grading of Recommendations Assessment,

Development and Evaluation)システムの考え方を取り入れて推奨の強さを決定することとした.このシステムは,単にエビデンスに基づいて推奨の強さを決めるのではなく,患者さんへの有益性,費用まで考慮し,たとえ比較対照試験であってもその内容を精査・吟味してエビデンスレベルを決定するなど,アウトカムにとって有用かどうかを重視する立場に立っており,患者さんの立場により則したガイドライン作成に有用と考えられた.また,完成後に改訂版は Journal

of Gastroenterologyに掲載することが予定されており,世界的趨勢である GRADEシステムの考え方を取り入れることで国際的ガイドラインとしての位置づけを強化する狙いもあった.

日本消化器病学会ガイドラインの刊行にあたって

消化性潰瘍診療ガイドライン2015(改訂第2版),南江堂,2015

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改訂作業の進捗には疾患によって多少差がみられるが,2015 年 4 月から順次完成し,秋までに 6疾患すべての改訂作業が完了する予定である.最新のエビデンスを網羅した改訂版は,初版に比べて内容的により充実し,記載の精度も高まるものと期待している.最後に,ガイドライン委員会の前担当理事として多大なご尽力をいただいた木下芳一理事,

渡辺 守理事,ならびに多くの時間と労力を惜しまず改訂作業を遂行された作成委員会ならびに評価委員会の諸先生,刊行にあたり丁寧なご支援をいただいた南江堂出版部の皆様に心より御礼を申し上げたい.

2015 年 4月

日本消化器病学会理事長

下瀬川 徹

消化性潰瘍診療ガイドライン2015(改訂第2版),南江堂,2015

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委員長 木下 芳一 島根大学第二内科副委員長 渡辺  守 東京医科歯科大学消化器内科委員 荒川 哲男 大阪市立大学消化器内科学

上野 文昭 大船中央病院西原 利治 高知大学消化器内科坂本 長逸 日本医科大学消化器内科学下瀬川 徹 東北大学消化器病態学白鳥 敬子 東京女子医科大学消化器内科杉原 健一 光仁会第一病院田妻  進 広島大学総合診療科田中 信治 広島大学内視鏡診療科坪内 博仁 鹿児島市立病院中山 健夫 京都大学健康情報学二村 雄次 愛知県がんセンター野口 善令 名古屋第二赤十字病院総合内科福井  博 奈良県立医科大学第三内科福土  審 東北大学大学院行動医学分野・東北大学病院心療内科本郷 道夫 公立黒川病院松井 敏幸 福岡大学筑紫病院消化器科三輪 洋人 兵庫医科大学内科学消化管科森實 敏夫 日本医療機能評価機構山口直比古 日本医学図書館協会個人会員吉田 雅博 化学療法研究所附属病院人工透析・一般外科芳野 純治 松柏会テルミナセントラルクリニック渡辺 純夫 順天堂大学消化器内科

オブザーバー 菅野健太郎 自治医科大学

統括委員会一覧

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協力学会:日本消化管学会,日本消化器内視鏡学会

■ 作成委員会委員長 芳野 純治 松柏会テルミナセントラルクリニック副委員長 佐藤 貴一 国際医療福祉大学病院消化器内科委員 赤松 泰次 長野県立須坂病院内視鏡センター

伊藤 俊之 滋賀医科大学臨床教育講座加藤 元嗣 北海道大学光学医療診療部鎌田 智有 川崎医科大学消化管内科学髙木 敦司 東海大学医学部内科学系総合内科千葉 俊美 岩手医科大学消化器内科消化管分野野村 幸世 東京大学大学院医学系研究科消化管外科溝上 裕士 筑波大学附属病院光学医療診療部村上 和成 大分大学医学部消化器内科

■ 評価委員会委員長 坂本 長逸 日本医科大学消化器内科学副委員長 平石 秀幸 獨協医科大学消化器内科委員 一瀬 雅夫 和歌山県立医科大学第二内科

上村 直実 国立国際医療研究センター国府台病院後藤 秀実 名古屋大学消化器内科城  卓志 名古屋市立大学消化器・代謝内科学

作成協力者 小坂 俊仁 藤田保健衛生大学坂文種報徳會病院消化器内科櫻井 俊之 国立国際医療研究センター消化器内科

消化性潰瘍診療ガイドライン委員会

消化性潰瘍診療ガイドライン2015(改訂第2版),南江堂,2015

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1.改訂の背景日本消化器病学会は胃食道逆流症(GERD),消化性潰瘍,クローン病,肝硬変,胆石症,慢

性膵炎の 6疾患に関する診療ガイドラインを 2009 年から 2010 年に作成した.その後,機能性ディスペプシア(FD),過敏性腸症候群(IBS),大腸ポリープ,NAFLD/NASHの 4疾患についても診療ガイドラインの作成が 2011 年より開始され,2014 年に刊行されることになった.そのなかで,先に作成された 6疾患の診療ガイドラインは作成されてより 5年を経過することになるため,4疾患と並行して改訂を行うこととなった.初版の消化性潰瘍診療ガイドラインは厚生労働省の研究補助金(厚生科学研究費)「EBMに基

づく胃潰瘍診療ガイドライン」をもとにして,十二指腸潰瘍,外科的治療などを追加して作成され,2009 年 10 月に刊行された.また,刊行後に保険適用の拡大や新薬の発売など,ガイドラインの記載と実臨床において齟齬が生じた内容について,2013 年に学会ホームページに Annual

Review版として掲載した.本ガイドラインが作成されてから,新たなエビデンスが明らかになるとともに,新しい薬剤の登場や保険適用の追加もみられ,診療の現状に適した診療ガイドラインの作成が求められていた.

2.改訂の手順1)診療ガイドライン委員会の設立日本消化器病学会ガイドライン委員会の第 1回統括委員会が 2011 年 7 月に開催され,4疾患

の診療ガイドライン作成と並行して,先行の 6疾患の診療ガイドラインの改訂が行われることが決定された.改訂版ガイドラインの作成は,初版のガイドラインと同様に作成委員会と評価委員会が協力して行うこととなったが,ガイドラインの改訂は今後も継続して行われていくと考えられることから,委員の若返りを考慮に入れて両委員会の委員を一部変更し新たな委員会が組織された.第 1回作成委員会は 2012 年 9 月 13 日に開催され,改訂の基本方針が確認され,改訂の作業が開始された.

2)作成基準初版のガイドラインではMindsに準拠した「推奨グレード」,「文献のエビデンスレベル」で

行われたが,改訂版では GRADEシステムによる「推奨の強さ」,「文献のエビデンスレベル」により行った.

3)作成方法�はじめに作成委員会にて CQを作成し,評価委員会が問題点などを評価し作成委員会に報

告し,修正,追加などを行い,CQを完成させた.次に,それぞれの CQについて論文検索を行い,作成委員会にて検索された論文を GRADEシステムにより評価し,CQごとに「ステートメント」,「推奨の強さ」,「エビデンスレベル」,「解説」,「文献」を作成し,評価委員会に報告した.評価委員会にて評価したあと,作成委員会に報告し,最終的に作成・評価両委員会が合同にて完成させた.推奨の強さの合意率は作成委員会にて挙手により行った.また,文献の掲載は CQごとに行った.作成委員会におけるガイドライン(案)の作成は委

消化性潰瘍診療ガイドライン作成の手順

消化性潰瘍診療ガイドライン2015(改訂第2版),南江堂,2015

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消化性潰瘍診療ガイドライン作成の手順

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員の合議により行い,佐藤貴一作成副委員長はそのなかで重要な役割を果たした.�文献検察は,英文論文にはMEDLINE,Cochrane Libraryを用い,日本語論文には医学中

央雑誌を用いた.新たな CQについては 1983 年から 2012 年 6 月末までの期間,初版と同じ CQでは 2008 年以降〜2012 年 6 月末までの期間を検索した.

�網羅的に検索された論文を吟味し採用論文を決定し,採用論文ごとに構造化抄録を作成した.

�採用論文は研究デザインによって分類し,バイアスリスクなどの要因により総合評価を行い,最終的にエビデンスの質を「質の高いエビデンス(A)」から順に,「B」,「C」,「D」の4段階で判定した.

�「推奨の強さ」は文献のエビデンスレベルだけでなく,利益と不利益のバランス,患者の嗜好性,費用対効果の各要素を検討して判定した.また,「推奨の強さ」は「強い推奨」と「弱い推奨(提案)」の 2者のみで,ステートメントは「…を行うよう推奨(提案)する」,あるいは「…を行わないよう推奨(提案)する」とした.

�構成は初版ガイドラインを踏襲し,「出血性胃潰瘍・出血性十二指腸潰瘍」,「H. pylori 除菌治療」,「非除菌治療」,「薬物性潰瘍」,「外科的治療」,「穿孔・狭窄に対する内科的(保存的)治療」としたが,新たに「非 H. pylori・非NSAIDs潰瘍」が加わった.特に,「薬物性潰瘍」では疫学・病態が加わり,その内容を大きく変更した.

�CQ数は順に 13,16,14,33,6,5,3の計 90 項目で,主として治療,疫学,病態に関する CQから成り,診断に関する CQはない.

�統括委員会での取り決めに従い,2012 年 7 月以降の検索期間外の重要なエビデンスについては「解説」に記載するのみとした(2014 年末までの文献).また,保険適用のない治療については「解説」にその点を記載した.

�フローチャートは,三次除菌の CQが新たに加わったが,保険適用がないためフローチャートには追加を行わず,初版とほぼ同様となった.

�パブリックコメントは日本消化器病学会のホームページ上にて 2015 年 1 月 19 日から 2月2日の間に募集し,それを加味して消化性潰瘍診療ガイドラインを最終的に完成させた.

3.使用法本ガイドラインは消化性潰瘍の治療,疫学,病態などについての 2012 年までのエビデンスを

もとに作成され,一般的な診療の内容を提示することにより,臨床の場を支援するものである.しかし,患者の状態はそれぞれ異なることから,本ガイドラインを一律に盲目的に運用することは求めていない.それぞれの患者に適した治療を選択することが望ましい.また,医学は日々進歩しており,本ガイドラインはそれに対応することが今後必要となると思われる.

2015 年 4月

日本消化器病学会消化性潰瘍診療ガイドライン作成委員長

芳野 純治

消化性潰瘍診療ガイドライン2015(改訂第2版),南江堂,2015

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1.エビデンス収集初版で行われた系統的検索によって得られた論文に加え,今回新たに以下の作業を行ってエ

ビデンスを収集した.それぞれのクリニカルクエスチョン(CQ)からキーワードを抽出し,学術論文を収集した.

データベースは,英文論文はMEDLINE,Cochrane Libraryを用いて,日本語論文は医学中央雑誌を用いた.新規 CQについては 1983 年〜2012 年 6 月末,変更 CQについても同期間を文献検索の対象期間とし,初版と同じ CQについては 2008 年〜2012 年 6 月末を文献検索の対象期間とした.また,2012 年 7 月以降の重要かつ新しいエビデンスについては,検索期間外論文として文献に掲載した.各キーワードおよび検索式は日本消化器病学会ホームページに掲載する予定である.収集した論文のうち,ヒトまたは humanに対して行われた臨床研究を採用し,動物実験や遺

伝子研究に関する論文は除外した.患者データに基づかない専門家個人の意見は参考にしたが,エビデンスとしては用いなかった.

2.エビデンス総体の評価方法1)各論文の評価:構造化抄録の作成各論文に対して,研究デザイン 1)(表1)を含め,論文情報を要約した構造化抄録を作成した.

さらに RCTや観察研究に対して,Cochrane Handbook 2)やMinds診療ガイドライン作成の手引き 1)のチェックリストを参考にしてバイアスのリスクを判定した(表2).総体としてのエビデンス評価は,GRADE(The Grading of Recommendations Assessment, Development and

Evaluation)システム 3〜22)の考え方を参考にして評価し,CQ各項目に対する総体としてのエビデンスの質を決定し表記した(表3).

2)アウトカムごと,研究デザインごとの蓄積された複数論文の総合評価(1)初期評価:各研究デザイン群の評価

本ガイドライン作成方法

表 1 研究デザイン各文献へは下記9種類の「研究デザイン」を付記した. (1)メタ (システマティックレビュー /RCTのメタアナリシス) (2)ランダム (ランダム化比較試験) (3)非ランダム (非ランダム化比較試験) (4)コホート (分析疫学的研究(コホート研究)) (5)ケースコントロール (分析疫学的研究(症例対照研究)) (6)横断 (分析疫学的研究(横断研究)) (7)ケースシリーズ (記述研究(症例報告やケース・シリーズ)) (8)ガイドライン (診療ガイドライン) (9)(記載なし) (患者データに基づかない,専門委員会や専門家個人の意見は, 参考にしたが,エビデンスとしては用いないこととした)

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本ガイドライン作成方法

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�メタ群,ランダム群=「初期評価 A」�非ランダム群,コホート群,ケースコントロール群,横断群=「初期評価 C」�ケースシリーズ群=「初期評価 D」

(2)エビデンスレベルを下げる要因の有無の評価�研究の質にバイアスリスクがある�結果に非一貫性がある�エビデンスの非直接性がある�データが不精確である�出版バイアスの可能性が高い

(3)エビデンスレベルを上げる要因の有無の評価�大きな効果があり,交絡因子がない�用量–反応勾配がある�可能性のある交絡因子が,真の効果をより弱めている

(4)総合評価:最終的なエビデンスの質「A,B,C,D」を評価判定した.

表 2 バイアスリスク評価項目

選択バイアス

(1)ランダム系列生成詳細に記載されている

か(2)コンシールメント

組み入れる患者の隠蔽化がなされているか

実行バイアス (3)盲検化

検出バイアス (4)盲検化

症例減少バイアス

(5)ITT解析ITT 解析の原則を掲げて,追跡からの脱落者に対してその原則を遵守しているか

(6)アウトカム報告バイアス

 (解析における採用および除外データを含めて)(7)その他のバイアス

告・研究計画書に記載されているにもかかわらず,報告されていないアウトカムがないか

表3 エビデンスの質A:質の高いエビデンス(High)   真の効果がその効果推定値に近似していると確信できる.B:中程度の質のエビデンス(Moderate)   効果の推定値が中程度信頼できる.   真の効果は,効果の効果推定値におおよそ近いが,それが実質的に異なる可能性もある.C:質の低いエビデンス(Low)   効果推定値に対する信頼は限定的である.   真の効果は,効果の推定値と,実質的に異なるかもしれない.D:非常に質の低いエビデンス(Very Low)   効果推定値がほとんど信頼できない.   真の効果は,効果の推定値と実質的におおよそ異なりそうである.

消化性潰瘍診療ガイドライン2015(改訂第2版),南江堂,2015

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3)エビデンスの質の定義方法エビデンスレベルは海外と日本で別の記載とせずに 1つとした.またエビデンスは複数文献

を統合・作成した統合レベル(body of evidence)とし,表3の A〜Dで表記した.4)メタアナリシスシステマティックレビューを行い,必要に応じてメタアナリシスを引用し,本文中に記載し

た.

また,1つ 1つのエビデンスに「保険適用あり」の記載はせず,保険適用不可の場合に,解説の中で明記した.

3.推奨の強さの決定以上の作業によって得られた結果をもとに,治療の推奨文章の案を作成提示した.次に,推

奨の強さを決めるためにコンセンサス会議を開催した.推奨の強さは,①エビデンスの確かさ,②患者の希望,③益と害,④コスト評価,の 4項目

を評価項目とした.コンセンサス形成方法は,Delphi変法,nominal group technique(NGT)法に準じて投票を用い,70%以上の賛成をもって決定とした.1回目で,結論が集約できないときは,各結果を公表し,日本の医療状況を加味して協議の上,投票を繰り返した.作成委員会は,この集計結果を総合して評価し,表4に示す推奨の強さを決定し,本文中の囲み内に明瞭に表記した.推奨の強さは「1:強い推奨」,「2:弱い推奨」の 2通りであるが,「強く推奨する」や「弱く

推奨する」という文言は馴染まないため,下記のとおり表記した.また,投票結果を「合意率」として推奨の強さの下段に括弧書きで記載した.

4.本ガイドラインの対象1)利用対象:一般臨床医2)診療対象:成人の患者を対象とした.小児は対象外とした.

5.改訂について本ガイドラインは改訂第 2版であり,今後も日本消化器病学会ガイドライン委員会を中心と

して継続的な改訂を予定している.

6.作成費用について本ガイドラインの作成はすべて日本消化器病学会が費用を負担しており,他企業からの資金

提供はない.

表 4 推奨の強さ推奨度

1(強い推奨)“ 実施する ” ことを推奨する“実施しない ”ことを推奨する

2(弱い推奨)“ 実施する ” ことを提案する“実施しない ”ことを提案する

消化性潰瘍診療ガイドライン2015(改訂第2版),南江堂,2015

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本ガイドライン作成方法

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7.利益相反について1)日本消化器病学会ガイドライン委員会では,ガイドライン統括委員・各ガイドライン作

成・評価委員と企業との経済的な関係につき,各委員から利益相反状況の申告を得た(詳細は「利益相反に関して」に記す).

2)本ガイドラインでは,利益相反への対応として,協力学会の参加によって意見の偏りを防ぎ,さらに委員による投票によって公平性を担保するように努めた.また,出版前のパブリックコメントを学会員から受け付けることで幅広い意見を収集した.

8.ガイドライン普及と活用促進のための工夫1)フローチャートを提示して,利用者の利便性を高めた.2)書籍として出版するとともに,インターネット掲載を行う予定である.

・日本消化器病学会ホームページ・日本医療機能評価機構 EBM医療情報事業(Minds)ホームページ

■引用文献1) 福井次矢,山口直人(監修).Minds診療ガイドライン作成の手引き 2014,医学書院,東京,20142) Higgins JPT, Green S (eds). Cochrane Handbook for Systematic Reviews of Interventions version 5.1.0:

The Cochrane Collaboration http://handbook.cochrane.org/(updated March 2011)[最終アクセス 2015年 3 月 11 日]

3) 相原守夫,三原華子,村山隆之,相原智之,福田眞作.診療ガイドラインのための GRADEシステム,凸版メディア,弘前,2010

4) The GRADE* working group. Grading quality of evidence and strength of recommendations. BMJ 2004;328: 1490-1494 (printed, abridged version)

5) Guyatt GH, Oxman AD, Vist G, et al; GRADE Working Group. Rating quality of evidence and strength ofrecommendations GRADE: an emerging consensus on rating quality of evidence and strength of recom-mendations. BMJ 2008; 336: 924-926

6) Guyatt GH, Oxman AD, Kunz R, et al; GRADE Working Group. Rating quality of evidence and strengthof recommendations: What is "quality of evidence" and why is it important to clinicians? BMJ 2008; 336:995-998

7) Schünemann HJ, Oxman AD, Brozek J, et al; GRADE Working Group. Grading quality of evidence andstrength of recommendations for diagnostic tests and strategies. BMJ 2008; 336: 1106-1110

8) Guyatt GH, Oxman AD, Kunz R, et al; GRADE working group .Rating quality of evidence and strength ofrecommendations: incorporating considerations of resources use into grading recommendations. BMJ2008; 336: 1170-1173

9) Guyatt GH, Oxman AD, Kunz R, et al; GRADE Working Group. Rating quality of evidence and strengthof recommendations: going from evidence to recommendations. BMJ 2008; 336: 1049-1051

10) Jaeschke R, Guyatt GH, Dellinger P, et al; GRADE working group. Use of GRADE grid to reach decisionson clinical practice guidelines when consensus is elusive. BMJ 2008; 337: a744

11) Guyatt G, Oxman AD, Akl E, et al. GRADE guidelines 1. Introduction-GRADE evidence profiles and sum-mary of findings tables. J Clin Epidemiol 2011; 64: 383-394

12) Guyatt GH, Oxman AD, Kunz R, et al. GRADE guidelines 2. Framing the question and deciding on impor-tant outcomes.J Clin Epidemiol 2011; 64: 295-400

13) Balshem H, Helfand M, Schunemann HJ, et al. GRADE guidelines 3: rating the quality of evidence. J ClinEpidemiol 2011; 64: 401-406

14) Guyatt GH, Oxman AD, Vist G, et al. GRADE guidelines 4: rating the quality of evidence - study limita-tion (risk of bias). J Clin Epidemiol 2011; 64: 407-415

15) Guyatt GH, Oxman AD, Montori V, et al. GRADE guidelines 5: rating the quality of evidence - publicationbias. J Clin Epidemiol 2011; 64: 1277-1282

16) Guyatt G, Oxman AD, Kunz R, et al. GRADE guidelines 6. Rating the quality of evidence - imprecision. JClin Epidemiol 2011; 64: 1283-1293

17) Guyatt GH, Oxman AD, Kunz R, et al; The GRADE Working Group. GRADE guidelines: 7. Rating the

消化性潰瘍診療ガイドライン2015(改訂第2版),南江堂,2015

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— xiv —

quality of evidence - inconsistency. J Clin Epidemiol 2011; 64: 1294-130218) Guyatt GH, Oxman AD, Kunz R, et al; The GRADE Working Group. GRADE guidelines: 8. Rating the

quality of evidence - indirectness. J Clin Epidemiol 2011; 64: 1303-131019) Guyatt GH, Oxman AD, Sultan S, et al; The GRADE Working Group. GRADE guidelines: 9. Rating up the

quality of evidence. J Clin Epidemiol 2011; 64: 1311-131620) Brunetti M, Shemilt I, et al; The GRADE Working. GRADE guidelines: 10. Considering resource use and

rating the quality of economic evidence. J Clin Epidemiol 2013; 66: 140-15021) Guyatt G, Oxman AD, Sultan S, et al. GRADE guidelines: 11. Making an overall rating of confidence in

effect estimates for a single outcome and for all outcomes. J Clin Epidemiol 2013; 66: 151-15722) Guyatt GH, Oxman AD, Santesso N, et al. GRADE guidelines 12. Preparing Summary of Findings tables-

binary outcomes. J Clin Epidemiol 2013; 66: 158-172

消化性潰瘍診療ガイドライン2015(改訂第2版),南江堂,2015

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日本消化器病学会ガイドライン委員会では,ガイドライン統括委員と企業との経済的な関係につき,下記の基準で,各委員から利益相反状況の申告を得た.消化性潰瘍診療ガイドライン作成・評価委員には診療ガイドライン対象疾患に関連する企業との経済的な関係につき,

下記の基準で,各委員から利益相反状況の申告を得た.申告された企業名を下記に示す(対象期間は 2011 年 1 月 1日から 2014 年 12 月 31 日).企業名は 2015 年 3 月現在の

名称とした.非営利団体は含まれない.

1.委員または委員の配偶者,一親等内の親族,または収入・財産を共有する者が個人として何らかの報酬を得た企業・団体役員・顧問職(100 万円以上),株(100 万円以上または当該株式の 5%以上保有),特許権使用料(100 万円以上)

2.委員が個人として何らかの報酬を得た企業・団体講演料(100 万円以上),原稿料(100 万円以上),その他の報酬(5万円以上)

3.委員の所属部門と産学連携を行っている企業・団体研究費(200 万円以上),寄付金(200 万円以上),寄付講座

※統括委員会においては日本消化器病学会診療ガイドラインに関係した企業・団体,作成・評価委員においては診療ガイドライン対象疾患に関係した企業・団体の申告を求めた

統括委員および作成・評価委員はすべて,診療ガイドラインの内容と作成法について,医療・医学の専門家として科学的・医学的な公正さを保証し,患者のアウトカム,Quality of lifeの向上を第一として作業を行った.利益相反の扱いは,国内外で議論が進行中であり,今後,適宜,方針・様式を見直すものである.

表 1 統括委員と企業との経済的な関係(五十音順)

1.エーザイ株式会社,大塚製薬株式会社2.味の素製薬株式会社,アステラス製薬株式会社,アストラゼネカ株式会社,アッヴィ合同会社,アボットジャパン株式会社,株式会社医学書院,エーザイ株式会社,MSD株式会社,大塚製薬株式会社,オリンパスメディカルシステムズ株式会社,杏林製薬株式会社,ゼリア新薬工業株式会社,第一三共株式会社,大日本住友製薬株式会社,大鵬薬品工業株式会社,武田薬品工業株式会社,田辺三菱製薬株式会社,中外製薬株式会社,ファイザー株式会社

3.旭化成メディカル株式会社,味の素製薬株式会社,あすか製薬株式会社,アステラス製薬株式会社,アストラゼネカ株式会社,アッヴィ合同会社,アボットジャパン株式会社,エーザイ株式会社,MSD株式会社,大塚製薬株式会社,小野薬品工業株式会社,花王株式会社,株式会社カン研究所,杏林製薬株式会社,協和発酵キリン株式会社,グラクソ・スミスクライン株式会社,株式会社 JIMRO,株式会社ジーンケア研究所,ゼリア新薬工業株式会社,センチュリーメディカル株式会社,第一三共株式会社,大日本住友製薬株式会社,大鵬薬品工業株式会社,武田薬品工業株式会社,田辺三菱製薬株式会社,中外製薬株式会社,株式会社ツムラ,東レ株式会社,ファイザー株式会社,ブリストル・マイヤーズ株式会社,株式会社ミノファーゲン製薬,持田製薬株式会社,株式会社ヤクルト本社,ユーシービージャパン株式会社

表 2 作成・評価委員と企業との経済的な関係(五十音順)

1.なし2.アステラス製薬株式会社,アストラゼネカ株式会社,エーザイ株式会社,大塚製薬株式会社,第一三共株式会社,

武田薬品工業株式会社,ファイザー株式会社3.味の素製薬株式会社,アステラス製薬株式会社,アストラゼネカ株式会社,エーザイ株式会社,MSD株式会社,

大塚製薬株式会社,株式会社岡畑農園,株式会社紀州ほそ川,サノフィ株式会社,ゼリア新薬工業株式会社,第一三共株式会社,大鵬薬品工業株式会社,武田薬品工業株式会社,田辺三菱製薬株式会社,中外製薬株式会社,株式会社トノハタ,日本新薬株式会社,日本製薬株式会社,バイエル薬品株式会社,ファイザー株式会社,株式会社丸惣

利益相反に関して

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第 1 章 出血性胃潰瘍・出血性十二指腸潰瘍 (1)内視鏡的治療(2)非内視鏡的治療 

第 2 章 H. pylori 除菌治療(1)初期治療(2)レジメン(3)二次除菌(4)三次除菌(5)再発防止(6)除菌後潰瘍 

第 3 章 非除菌治療 (1)初期治療(2)維持療法

第 4 章 薬物性潰瘍(1)NSAIDs 潰瘍(低用量アスピリンを含む)(2)非選択的 NSAIDs 潰瘍(3)選択的 NSAIDs(COX-2 選択的阻害薬)潰瘍(4)低用量アスピリン(LDA)潰瘍(5)その他の薬物

第 5 章 非 H. pylori・非 NSAIDs 潰瘍

第 6 章 外科的治療(1)手術適応(2)手術術式(3)術後維持療法

第 7 章 穿孔・狭窄に対する内科的(保存的)治療(1)穿孔(2)狭窄

本ガイドラインの構成

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フローチャート

除菌成功 除菌不成功

内視鏡的止血治療

手術

消化性潰瘍

合併症あり 合併症なし

穿孔・狭窄あり 出血あり

除菌適応あり 除菌適応なし

除菌・潰瘍治療

二次除菌

非除菌潰瘍治療 1)PPI 2)H₂RA 3)選択的ムスカリン受容体   拮抗薬もしくは   一部の防御因子増強薬

NSAIDs あり

1)PPI *22)PG製剤

*1:禁忌である.中止不能のため,止むを得ず投与する場合.*2:LDA潰瘍はPPIを選択.

NSAIDs なし

H. pylori 陰性H. pylori 陽性

手術 保存的治療

通 常 の 潰 瘍 治 療

止血成功 止血不成功

IVR

止血成功 止血不成功

手術

H. pylori 陽性 H. pylori 陰性

NSAIDs の中止NSAIDs の投与継続 *1

治癒

除菌成功 除菌不成功

治癒

治癒 未治癒

維持療法

症併合

りあ窄狭・孔穿

        

りあ症

りあ血出

        

療治血止的鏡視内

瘍潰性化消

        

しな症併合

        

りあ窄狭・孔穿

術手 治的存保

        

りあ血出

療治 成血止

        

療治血止的鏡視内

術手

功成 功成不血止

RVI

功成血止

        

R

功成不血止

        

DIASN

        

りあsD

の常通

        

ASN

治瘍潰

        

しなsDI

術手

        

        

性陽irolyp.H

1*続継与投のsDIASN

        

菌除

菌除

性陰irolyp.H

止中のsDIASN

        

りあ応適菌 な応適菌除

療治瘍潰・菌 潰菌除非

性陽irolyp.H

        

療治瘍潰

性陰irolylp.H

        

剤製GP)22*IPP)1

        

功成菌除

癒治

        

功成不菌除

菌除次二

部一抗拮択選)3R₂H)2IPP)1

功成菌除 功成不菌除

        

薬強増子因御防の部はくしも薬抗

体容受ンリカスム的択AR

癒治 癒治未

        

択選をIPPは瘍潰ADL:2*の能不止中.るあで忌禁:1*

        

.択.合場るす与投ず得をむ止,めたの

        

癒治

        

法療持維

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除菌成功 除菌不成功

内視鏡的止血治療

手術

消化性潰瘍

合併症あり 合併症なし

穿孔・狭窄あり 出血あり

除菌適応あり 除菌適応なし

除菌・潰瘍治療

二次除菌

非除菌潰瘍治療 1)PPI 2)H₂RA 3)選択的ムスカリン受容体   拮抗薬もしくは   一部の防御因子増強薬

NSAIDs あり

1)PPI *22)PG製剤

NSAIDs なし

H. pylori 陰性H. pylori 陽性

手術 保存的治療

通 常 の 潰 瘍 治 療

止血成功 止血不成功

IVR

止血成功 止血不成功

手術

H. pylori 陽性 H. pylori 陰性

NSAIDs の中止

治癒

除菌成功 除菌不成功

治癒

CQ1-1~4

CQ1-12CQ6-2CQ6-4

CQ6-1CQ6-3CQ6-5CQ6-6

CQ7-1~5

CQ2-1~6

CQ2-7 CQ3-1~4

CQ3-5~14

CQ4-12~13CQ4-21

CQ2-8

CQ2-10~14

NSAIDs の投与継続 *1

治癒 未治癒

維持療法

CQ1-5~11CQ1-13

*1:禁忌である.中止不能のため,止むを得ず投与する場合.*2:LDA潰瘍はPPIを選択.

症併合

りあ窄狭・孔穿

        

りあ症

りあ血出

        

療治血止的鏡視内

瘍潰性化消

4~1-1QC

        

しな症併合

        

りあ窄狭・孔穿

術手 治的存保

C

6-6QC5-6QC3-6QC1-6QC

        

りあ血出

療治 成血止

5~1-7Q31-1QC11~5-1QC

        

療治血止的鏡視内

術手

功成 功成不血止

RVI

功成血止

        

R

功成不血止

4-6QC2-6QC21-1QC

        

DIASN

12-4QC31~21-4QC

        

りあsD

の常通

        

ASN

治瘍潰

        

しなsDI

術手

        

        

性陽irolyp.H

1*続継与投のsDIASN

        

菌除

菌除

性陰irolyp.H

止中のsDIASN

        

りあ応適菌 な応適菌除

療治瘍潰・菌 潰菌除非

性陽irolyp.H

7-2QC

6~1-2QC

        

療治瘍潰

性陰irolyylp.H

4~1-3QC

        

剤製GP)22*IPP)1

        

功成菌除

癒治

-2QC

        

功成不菌除8

菌除次二

部一抗拮択選)3R₂H)2IPP)1

功成菌除 功成不菌除

-2Q

        

薬強増子因御防の部はくしも薬抗

体容受ンリカスム的択AR

癒治 癒治未

        

択選をIPPは瘍潰ADL:2*の能不止中.るあで忌禁:1*

        

.択す与投ず得をむ止,めたの

        

癒治

        

41~5-3QC法療持維

【クリニカルクエスチョンとの関連】

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第 1 章 出血性胃潰瘍・出血性十二指腸潰瘍

❶内視鏡的治療CQ 1-1 出血性潰瘍に対する内視鏡的治療は有用か? ……………………………………………2CQ 1-2 出血性潰瘍に対する内視鏡的止血法はどのような潰瘍を対象とするか? ……………4CQ 1-3 出血性胃潰瘍に対する内視鏡的止血法の成績は? ………………………………………6CQ 1-4 止血確認のための内視鏡検査(セカンド・ルック)は必要か? …………………………9

❷非内視鏡的治療CQ 1-5 内視鏡的治療後に酸分泌抑制薬を用いる必要はあるのか?……………………………11CQ 1-6 内視鏡的治療後に防御因子増強薬を用いる必要はあるのか?…………………………14CQ 1-7 どのような場合に輸血が必要か?…………………………………………………………15CQ 1-8 出血性消化性潰瘍患者における食事の中断と再開はどのように行えばよいか?……17CQ 1-9 出血性消化性潰瘍患者は入院して治療を行うべきか?…………………………………18CQ 1-10 抗凝固薬・抗血小板薬服用中の出血性潰瘍に対してどのように対応すべきか?……19CQ 1-11 止血後の抗凝固薬・抗血小板薬の再開時期を決定する指標は?………………………21CQ 1-12 interventional radiology(IVR)はどのような場合に行うべきか? ……………………22CQ 1-13 再出血予防に H. pylori 除菌療法は必要か?………………………………………………24

第 2 章 H. pylori 除菌治療

❶初期治療【胃潰瘍】CQ 2-1 H. pylori 除菌は胃潰瘍の治癒を促進するか? ……………………………………………28CQ 2-2 H. pylori 除菌前の PPI投与は胃潰瘍の除菌率に影響を与えるか? ……………………30CQ 2-3 開放性(活動期)胃潰瘍に対して H. pylori 除菌治療後の潰瘍治療の追加は必要か?

………………………………………………………………………………………………32【十二指腸潰瘍】CQ 2-4 H. pylori 除菌は十二指腸潰瘍の治癒を促進するか? ……………………………………34CQ 2-5 H. pylori 除菌前の PPI投与は十二指腸潰瘍の除菌率に影響を与えるか? ……………36CQ 2-6 開放性(活動期)十二指腸潰瘍に対して H. pylori 除菌治療後の潰瘍治療の追加は

必要か?……………………………………………………………………………………37❷レジメンCQ 2-7 どのようなレジメンを選択すべきか?……………………………………………………39

クリニカルクエスチョン一覧

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❸二次除菌CQ 2-8 二次除菌治療はどのようなレジメンを選択すべきか?…………………………………44

❹三次除菌CQ 2-9 三次除菌治療はどのようなレジメンを選択すべきか?…………………………………46

❺再発防止CQ 2-10 H. pylori 除菌療法は潰瘍再発を抑制するか? ……………………………………………47CQ 2-11 除菌成功例に潰瘍再発予防治療は必要か?………………………………………………50CQ 2-12 除菌後の H. pylori の再陽性化は?…………………………………………………………52CQ 2-13 除菌後の GERD発症は? …………………………………………………………………54CQ 2-14 除菌後症例の上部消化管検査は必要か?…………………………………………………57

❻除菌後潰瘍CQ 2-15 除菌成功後における未治癒潰瘍の頻度と対策は?………………………………………59CQ 2-16 除菌成功後における再発潰瘍の頻度と対策は?…………………………………………61

第 3 章 非除菌治療

❶初期治療【胃潰瘍】CQ 3-1 胃潰瘍に対する非除菌治療(初期治療)にどのような薬剤を選択すべきか? ………64CQ 3-2 胃潰瘍に対する非除菌治療(初期治療)において,酸分泌抑制薬と防御因子増強薬の

併用療法は有効か?………………………………………………………………………72【十二指腸潰瘍】CQ 3-3 十二指腸潰瘍に対する非除菌治療(初期治療)にどのような薬剤を選択すべきか?

………………………………………………………………………………………………74CQ 3-4 十二指腸潰瘍に対する非除菌治療(初期治療)において,酸分泌抑制薬と防御因子増

強薬の併用療法は有効か?………………………………………………………………79❷維持療法【胃潰瘍】CQ 3-5 胃潰瘍の非除菌治療において維持療法は必要か?………………………………………81CQ 3-6 胃潰瘍に対する非除菌治療(維持療法)にどのような薬剤を選択すべきか? ………83CQ 3-7 胃潰瘍に対する非除菌治療(維持療法)において,酸分泌抑制薬と防御因子増強薬の

併用療法は有効か?………………………………………………………………………85CQ 3-8 胃潰瘍に対する非除菌治療(維持療法)の期間はどのくらい必要か? ………………86CQ 3-9 胃潰瘍に対する非除菌治療において,維持療法中に内視鏡検査は必要か?…………88

【十二指腸潰瘍】CQ 3-10 十二指腸潰瘍の非除菌治療において維持療法は必要か?………………………………89CQ 3-11 十二指腸潰瘍に対する非除菌治療(維持療法)にはどのような薬剤を選択すべきか?

………………………………………………………………………………………………91CQ 3-12 十二指腸潰瘍に対する非除菌治療(維持療法)において,酸分泌抑制薬と防御因子増

強薬の併用療法は有効か?………………………………………………………………93

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クリニカルクエスチョン一覧

CQ 3-13 十二指腸潰瘍に対する非除菌治療(維持療法)の期間はどのくらい必要か? ………94CQ 3-14 十二指腸潰瘍に対する非除菌治療において,維持療法中に内視鏡検査は必要か?…95

第 4 章 薬物性潰瘍

❶NSAIDs 潰瘍(低用量アスピリンを含む)【疫学・病態】CQ 4-1 NSAIDs服用者では,消化性潰瘍,上部消化管出血のリスクは高まるか? …………98CQ 4-2 NSAIDs潰瘍および消化管出血の発生頻度は? …………………………………………99CQ 4-3 NSAIDs潰瘍の発生時期は? ……………………………………………………………101CQ 4-4 NSAIDsによる上部消化管傷害における症状は? ……………………………………103CQ 4-5 NSAIDs潰瘍は H. pylori 関連の潰瘍と発生部位,個数,深さが異なるか? ………105CQ 4-6 NSAIDs潰瘍とびらんの違いは? ………………………………………………………107CQ 4-7 NSAIDs潰瘍のリスク因子は? …………………………………………………………108CQ 4-8 NSAIDsの種類により潰瘍(出血)発生率に差があるか? ……………………………110CQ 4-9 NSAIDsの投与量により潰瘍(出血)発生率に差があるか? …………………………112CQ 4-10 NSAIDsの経口投与と坐薬で潰瘍(出血)発生率に差があるか? ……………………113CQ 4-11 NSAIDsの単剤投与と多剤投与で潰瘍(出血)発生率に差があるか? ………………114

❷非選択的 NSAIDs 潰瘍【治 療】CQ 4-12 NSAIDs潰瘍の治療はどのように行うべきか? ………………………………………115CQ 4-13 H. pylori 除菌治療でNSAIDs潰瘍の治癒率は高まるか? ……………………………117

【予 防】CQ 4-14 NSAIDs投与患者で H. pylori 陽性の場合,潰瘍予防として除菌治療を行うべきか?

……………………………………………………………………………………………119CQ 4-15 潰瘍既往歴がない患者におけるNSAIDs潰瘍発生予防治療は必要か? ……………121CQ 4-16 高用量NSAIDs,抗血栓薬,糖質ステロイド,ビスホスホネートの併用者,高齢者お

よび重篤な合併症を有する患者におけるNSAIDs潰瘍予防はどうするか? ……123CQ 4-17 潰瘍既往歴,出血性潰瘍既往歴がある患者がNSAIDsを服用する場合,再発予防は

どうするか? ……………………………………………………………………………125❸選択的 NSAIDs(COX-2 選択的阻害薬)潰瘍【治 療】CQ 4-18 COX-2 選択的阻害薬服用時に潰瘍発生予防治療は必要か?

(潰瘍既往歴がある患者の場合/潰瘍既往歴がない患者の場合) …………………128【予 防】CQ 4-19 NSAIDs潰瘍発生は COX-2 選択的阻害薬により減少するか? ………………………129CQ 4-20 NSAIDsは心血管イベントを増加させるか? …………………………………………131

❹低用量アスピリン(LDA)潰瘍【治 療】CQ 4-21 低用量アスピリン(LDA)潰瘍の治療はどのように行うべきか? ……………………133

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【予 防】CQ 4-22 低用量アスピリン(LDA)服用者では,消化性潰瘍発生率,有病率が高いか? ……135CQ 4-23 低用量アスピリン(LDA)服用者ではどのような併用薬を用いれば,消化性潰瘍発生

率,有病率が低くなるか? ……………………………………………………………136CQ 4-24 低用量アスピリン(LDA)服用者では,上部消化管出血リスク,頻度は高いか? …139CQ 4-25 低用量アスピリン(LDA)服用者ではどのような併用薬を用いれば,上部消化管出血

発生率,有病率が低くなるか? ………………………………………………………141CQ 4-26 上部消化管出血既往歴がある患者が低用量アスピリン(LDA)を服用する場合,どの

ような併用薬を用いれば,再出血が少なくなるか? ………………………………143CQ 4-27 潰瘍既往歴がある患者が低用量アスピリン(LDA)を服用する場合,どのように潰瘍

再発を予防するのか? …………………………………………………………………145CQ 4-28 潰瘍既往歴など潰瘍発生リスクがない患者が低用量アスピリン(LDA)を服用する場

合,潰瘍発生予防策は必要か? ………………………………………………………147CQ 4-29 低用量アスピリン(LDA)服用者におけるNSAIDs投与は潰瘍発生のリスクを上げ

るか? ……………………………………………………………………………………149CQ 4-30 低用量アスピリン(LDA)服用者における COX-2 選択的阻害薬は通常のNSAIDs

より潰瘍リスクを下げるか? …………………………………………………………150CQ 4-31 低用量アスピリン(LDA)服用者におけるNSAIDs併用時の潰瘍予防法はあるか?

……………………………………………………………………………………………152❺その他の薬物CQ 4-32 NSAIDs以外に潰瘍発生リスクを高める薬物は? ……………………………………154CQ 4-33 糖質ステロイド投与は,消化性潰瘍発生(再発)のリスクファクターか? …………156

第 5 章 非 H. pylori・非 NSAIDs 潰瘍

CQ 5-1 非 H. pylori・非NSAIDs潰瘍の頻度は? ………………………………………………160CQ 5-2 非 H. pylori・非NSAIDs潰瘍の原因や病態は? ………………………………………163CQ 5-3 非 H. pylori・非NSAIDs潰瘍の治療はどのように行うべきか? ……………………164

第 6 章 外科的治療

❶手術適応CQ 6-1 消化性潰瘍穿孔の手術適応は? …………………………………………………………166CQ 6-2 消化性潰瘍出血の手術適応は? …………………………………………………………168

❷手術術式CQ 6-3 消化性潰瘍穿孔に対する最適な手術術式は? …………………………………………170CQ 6-4 消化性潰瘍出血に対する最適な手術術式は? …………………………………………173CQ 6-5 消化性潰瘍による狭窄に対する手術術式は? …………………………………………175

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クリニカルクエスチョン一覧

❸術後維持療法CQ 6-6 消化性潰瘍の術後に除菌療法は必要か? ………………………………………………177

第 7 章 穿孔・狭窄に対する内科的(保存的)治療

❶穿 孔CQ 7-1 穿孔に対する内科的治療の適応は? ……………………………………………………180CQ 7-2 穿孔に対する内科的治療はどのように行うべきか? …………………………………182CQ 7-3 穿孔に対する内科的治療から外科的治療に移行するタイミングは? ………………184

❷狭 窄CQ 7-4 狭窄に対する内科的治療の適応は? ……………………………………………………185CQ 7-5 狭窄に対してどのような治療を選択すべきか? ………………………………………186

索引 ………………………………………………………………………………………………………187

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略語一覧

APC argon plasma coagulation アルゴンプラズマ凝固COX cyclooxygenase シクロオキシゲナーゼEHS Enterohepatic Helicobacter spp.EM extensive metabolizerFD functional dyspepsia 機能性ディスペプシアGERD gastroesophageal refl ux disease 胃食道逆流症H2RA histamine H2-receptor antagonist ヒスタミンH2 受容体拮抗薬IVR interventional radiologyLDA low dose aspirin 低用量アスピリンNHPH non-H. pylori Helicobacter speciesNSAIDs non-steroidal anti-infl ammatory drugs 非ステロイド抗炎症薬PG prostaglandin プロスタグランジンPPI proton pump inhibitor プロトンポンプ阻害薬PUD peptic ulcer disease 消化性潰瘍SSRI selective serotonin reuptake inhibitors 選択的セロトニン再取り込み阻害薬

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1.出血性胃潰瘍・出血性十二指腸潰瘍

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— 2 —

解説

出血性消化性潰瘍に対する内視鏡的治療が有用であることは「消化性潰瘍診療ガイドライン」初版に収載された Sacksら 1)のメタアナリシスで明らかにされている.すなわち,25 文献によるメタアナリシスでは出血性消化性潰瘍に内視鏡的治療を行うことにより持続・再出血および緊急手術の移行を有意に減少するとしている.今回検索された文献のうち Barkunら 2)のメタアナリシスでは,出血性消化性潰瘍の内視鏡

的治療と薬物療法単独(18 文献)を比較し,内視鏡的治療は薬物治療単独に比して再出血率(オッズ比 0.35,95%信頼区間(CI)0.27〜0.46),手術移行率(オッズ比 0.57,95%CI 0.41〜0.81)および死亡率(オッズ比 0.57,95%CI 0.37〜0.89)を有意に減少させたとしている.Sacksらのメタアナリシスとの違いは,死亡率に関しても内視鏡的治療は有意に改善したという点で,今回のステートメントに反映している.Barkunらのメタアナリシスでは,薬剤を PPIとH2RAに分けてさらに詳細に検討している.

内視鏡的治療と PPIの静脈投与についての比較(7論文)では再出血率は有意に減少したが,手術移行率および死亡率には差はなかった.このメタアナリシスで高用量の PPIを用いたものは1論文 3)のみであった.また,内視鏡的治療とH2RAとの比較(11 論文)では内視鏡的治療は再出血率,手術移行率および死亡率のすべてが有意に減少した.また,それぞれの内視鏡的止血法と薬物治療との治療効果の対比に関しても解析しており,薬剤局注法は薬物治療に対して再出血率に関しては優れるが(オッズ比 0.43,95%CI 0.24〜0.78),手術移行率および死亡率については差がなかった(9論文).局注療法で 1剤局注は 2剤局注より再出血率,手術移行率および死亡率で悪化する傾向にあった(8論文).凝固療法は薬物治療と比較して,再出血率(オッズ比0.41,95%CI 0.26〜0.65)および手術移行率(オッズ比 0.51,95%CI 0.28〜0.94)は有意に減少したが,死亡率については差がなかった(6論文).凝固療法と局注療法の併用と薬物治療についても検討されているが,再出血率は有意に減少したが(オッズ比 0.18,95%CI 0.08〜0.41),手術移行率と死亡率では差はなかった(4論文).

Clinical Question 1-11.出血性胃潰瘍・出血性十二指腸潰瘍 ― ❶内視鏡的治療

出血性潰瘍に対する内視鏡的治療は有用か?

CQ 1-1 出血性潰瘍に対する内視鏡的治療は有用か?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● 出血性消化性潰瘍に対する内視鏡的治療は薬物治療単独に比べて初回止血・再出血の予防が良好で,緊急手術への移行・死亡率を減少させるため,行うように推奨する.

1(100%) A

消化性潰瘍診療ガイドライン2015(改訂第2版),南江堂,2015

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①内視鏡的治療

文献

1) Sacks HS, Chalmers TC, Blum AL, et al. Endoscopic hemostasis: an effective therapy for bleeding pepticulcers. JAMA 1990; 264: 491-499(メタ)

2) Barkun AN, Martel M, Toubouti Y, et al. Endoscopic hemostasis in peptic ulcer bleeding for patients withhigh-risk lesions: a series of meta-analysis. Gastointest Endosc 2009; 69: 786-799(メタ)

3) Sung JJ, Chan FK, Lau JY, et al. The effect of endoscopic therapy in patients receiving omeprazole forbleeding ulcers with nonbleeding visible vessels or adherent clots: a randomized comparison. Ann InternMed 2003; 139: 237-243(ランダム)

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— 4 —

解説

内視鏡的止血治療をどのような潰瘍に行うかについては,活動性出血および非出血性露出血管症例が再出血のリスクが高く,よい適応である.このステートメントは「消化性潰瘍診療ガイドライン」初版と不変である.初版で収載した Sacksら 1)のメタアナリシスでも,活動性出血および非出血性露出血管症例

を内視鏡的止血法の適応としている.初版においてどのような潰瘍を内視鏡的止血治療の対象とするかを潰瘍の出血状態を改変 Forrest分類(表1)2)に従って分類し,内視鏡的治療の再出血および持続出血のオッズ比を求めて比較したところ,活動性出血(Ⅰ)および非出血性露出血管症例(Ⅱa)において内視鏡的止血治療が非内視鏡的治療に比して再出血および持続出血を有意に予防するという結果が得られた.今回検索された文献では,米国消化器病学会が発表した出血性消化性潰瘍の管理についてのガイドライン 3)において活動性出血および非出血性露出血管症例に内視鏡的治療を行うべきとするステートメントが掲載されている.血餅付着例(ForrestⅡb)に対して内視鏡的止血を行うかどうかについては議論が分かれると

ころである.内視鏡的止血法が薬物治療に対して再出血率を有意に減少させたと 2つの非ランダム化比較試験 4, 5)で報告されている.一方,内視鏡的止血と PPI投与を併用した群と PPI単独で比較すると再出血率に差はみられないとの報告がある 6).この報告では高用量の PPIを投与し

Clinical Question 1-21.出血性胃潰瘍・出血性十二指腸潰瘍 ― ❶内視鏡的治療

出血性潰瘍に対する内視鏡的止血法はどのような潰瘍を対象とするか?

CQ 1-2 出血性潰瘍に対する内視鏡的止血法はどのような潰瘍を対象とするか?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● 出血性消化性潰瘍のうち活動性出血例と非出血性露出血管例が内視鏡的止血治療のよい適応であるので,行うように推奨する.

1(100%) A

表1 改変 Forrest 分類Ⅰ.活動性出血   a.噴出性出血   b.湧出性出血Ⅱ.出血の痕跡を認める潰瘍   a.非出血性露出血管   b.血餅付着   c.黒色潰瘍底Ⅲ.きれいな潰瘍(文献2より)

消化性潰瘍診療ガイドライン2015(改訂第2版),南江堂,2015

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①内視鏡的治療

ている.米国消化器病学会のガイドライン 3)では洗浄にても除去できない血餅付着は,特に再出血のリスクがあるような患者(高齢者,合併症を有する患者,入院患者)では内視鏡的止血を考慮するとしている.このため,再出血のリスクが高い場合を除いて,ForrestⅡbを内視鏡的止血の適応とはしなかった.また,米国消化器病学会のガイドライン 3)では黒色潰瘍底およびきれいな潰瘍(ForrestⅡcお

よびⅢ)は重症な再出血例はまれであり,内視鏡的治療は有意な効果をもたらさないとしている.

文献

1) Sacks HS, Chalmers TC, Blum AL, et al. Endoscopic hemostasis: an effective therapy for bleeding pepticulcers. JAMA 1990; 264: 491-499(メタ)

2) Kohler B, Riemann JF. Upper GI bleeding: value and consequences of emergency endoscopy and endo-scopic treatment. Hepatogastroenterology 1991; 38: 198-200

3) Laine L, Jensen DM. Management of patients with ulcer bleeding. Am J Gastroenterol 2011; 107: 345-360(ガイドライン)

4) Jensen D, Kovacs T, Jutabha R, et al. Randomized trial of medical or endoscopic therapy to prevent recur-rent ulcer hemorrhage in patients with adherent clots. Gastroenterology 2002; 123: 407-413(非ランダム)

5) Bleau B, Gostout C, Sherman K, et al. Recurrent bleeding from peptic ulcer associated with adherent clot: arandomized study comparing endoscopic treatment with medical therapy. Gastrointest Endosc 2002; 56: 1-6(非ランダム)

6) Sung JJ, Chan F, Lau J, et al. The effect of endoscopic therapy in patients receiving omeprazole for bleedingulcers with nonbleeding visible vessels or adherent clots: a randomized clots: a randomized comparison.Ann Intern Med 2003; 139: 237-243(ランダム)

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解説

「消化性潰瘍診療ガイドライン」初版では内視鏡的治療には各種の方法があるが,その効果に差はないとのステートメントを掲載した.また,血管収縮薬局注に関しては血管収縮薬局注単独に比べて,局注に他の内視鏡的治療を追加することで再出血の予防効果が向上するとした.今回検索された文献のうち,2010 年に Vergaraら 1)によりエピネフリン局注と他の内視鏡的

治療の追加による効果を検討したシステマティックレビューが報告されている.このレビューによればエピネフリン局注後に他の内視鏡的治療を追加することで,再出血リスクの高い消化性潰瘍の再出血(リスク比 0.55,95%CI 0.42〜0.73)および手術の移行(リスク比 0.69,95%CI

0.51〜0.95)を有意に減少させたとしている.今回のエピネフリン局注に他の内視鏡的治療を追加することで再出血および手術移行の成績が向上するというステートメントは,このシステマティックレビューの結果が反映されている.また,米国消化器病学会のガイドライン 2)によれば,エピネフリンは単独で用いるべきでなく,他の内視鏡的治療との併用を推奨している.

それぞれの内視鏡的治療法の出血性消化性潰瘍に対する効果について,Barkunら 3)のメタアナリシスで検討がなされている.凝固法[ヒータープローブ,高周波凝固,レーザー,マイクロ波凝固,アルゴンプラズマ凝固(APC)](12 論文)は局注法(エピネフリン単独,アルコール,エピネフリンとポリドカノールの併用,精製水)と再出血,手術移行率および死亡率に差はなかったとしている.局注法と凝固法の併用と局注法単独との比較(2論文)では,ともにエピネフリン局注が用いられ,凝固法の併用はエピネフリン局注単独に比して再出血を有意に減少させたが,手術移行および死亡率に差はなかったとの結果であった.凝固法と局注法の併用と凝固法単独との治療効果の比較については 4論文を用いて検討されているが,再出血,手術移行

Clinical Question 1-31.出血性胃潰瘍・出血性十二指腸潰瘍 ― ❶内視鏡的治療

出血性胃潰瘍に対する内視鏡的止血法の成績は?

CQ 1-3 出血性胃潰瘍に対する内視鏡的止血法の成績は?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● エピネフリン局注法に他の内視鏡的治療を追加すると初回止血・再出血の予防が良好で,手術への移行が減少する. なし A

● 局注法に凝固法あるいはクリップ法を併用すると,局注法単独より再出血の予防が良好である. なし B

● クリップ法は他の方法と比較されているが,その評価は一定ではない. なし C

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①内視鏡的治療

および死亡率については差がなかったとの結果であった.しかし,この 4論文のうち,あまり用いられない単極凝固を用いた論文とトロンビンとヒータープローブを併用した論文を除外すると,凝固法と局注法の併用は凝固法単独に比して再出血を有意に減少するという結果になった.日本では止血法(表1)は単独で行い,十分な止血が得られなかった場合にさらに追加治療として別の止血法が行われることが多い.欧米の報告にて併用法が推奨されるのは,手技による差によるものかもしれない.クリップ法については Barkunら 3)のメタアナリシスではクリップ法と局注法とで比較して,

クリップ法単独では局注法単独よりも再出血の予防効果に優れる(オッズ比 0.36,95%CI 0.17〜0.76)が,手術移行および死亡率に差はなかった(4論文).クリップ法と凝固療法との比較では,クリップ法単独では凝固療法単独より再出血を有意に減少させたが(オッズ比 0.24,95%CI 0.06〜0.95),手術移行および死亡率では差はなかった(2論文).局注法とクリップ法の併用と局注法単独では,局注法とクリップ法の併用が局注法単独より再出血および手術への移行を有意に減少させたが,死亡率には差はなかった(3論文).また,クリップ法とエピネフリン局注に対して消化性潰瘍の再出血予防効果を比較した RCTが報告されており 4),クリップ法は少量エピネフリン局注および大量エピネフリン局注に比して有意に再出血を減少させたとしている.クリップ法にアドレナリン局注を併用した場合と APCにアドレナリン局注を併用した場合を比較した RCTが報告されているが 5),両群間で初回止血,再出血,手術移行および死亡率で差はなかった.再出血率,手術の必要性,死亡率といったエンドポイントを組み合わせて 2群間を評価すると,クリップ法とアドレナリン局注の併用で良好な結果を得た.一方,Yuanら 6)が 2008年にクリップ法の消化性潰瘍出血に対する有用性を評価するために他の内視鏡的治療(ヒータープローブ 2論文,凝固療法と局注療法との併用 2論文,局注法単独 5論文)との比較を行ったメタアナリシスを報告している.この検討では,クリップ法は他の内視鏡的治療に比して初期止血,再出血,手術移行および死亡率のいずれも差はなかった.このようにクリップ法については他の内視鏡的治療に比べて有用との報告もあれば,他の内視鏡的治療と比較して差はなかったとの報告もある.また,米国消化器病学会のガイドライン 2)では,止血や手術移行に優れるが,他の治療法との比較は各種の成績が一定でなく,さらなる検討が必要としている.このため,今回のステートメントではクリップ法の評価は一定ではないとした.日本ではクリップ法は広く行われているが,「消化性潰瘍診療ガイドライン」初版でも指摘しているようにクリップ法は他の方法に比べ手技が煩雑であること,潰瘍の観察が接線方向となる場合や線維化が進行した潰瘍の止血には困難なことがこれらの成績に影響していると考えられる.

表1 内視鏡的止血法機械的止血法 クリップ法薬剤局注法 血管収縮剤局注法

 硬化剤局注法

エピネフリン高張Naエピネフリン(HSE)純エタノールポリドカノール

凝固法 高周波凝固(モノポーラー・バイポーラー)Nd-YAGレーザーヒータープローブアルゴンプラズマ(APC)マイクロ波凝固ソフロ凝固

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1.出血性胃潰瘍・出血性十二指腸潰瘍

凝固法については様々な方法が用いられているが,2009 年に Arimaら 7)が出血性胃潰瘍に対してソフト凝固とクリップ法でその治療効果を比較する RCTを行っている.結果としてソフト凝固とクリップ法は初期止血において同等の止血率を得た(ソフト凝固 85%,クリップ法 79%).また,ソフト凝固とクリップ法の組み合わせで 98%に止血を得た.止血時間はソフト凝固のほうがクリップ法に比して止血時間が有意に短かった.また,出血性胃潰瘍に対する APCの有用性を検討したシステマティックレビューが発表されている 8).このレビューは RCT 2 論文のみの検討ではあるが,APCはヒータープローブあるいは,エピネフリンとポリドカノールと両者の局注療法に比して初回出血率および再出血率に差はないという結果であった.Karamanら 9)は出血性消化性潰瘍に対してエピネフリン局注に APCを併用する場合とヒータープローブを併用する場合とでその止血効果を比較している.結果としてエピネフリンと APCの併用はヒータープローブの併用より初期止血に優れていたが,再出血には差はなかった.このように RCTでは凝固療法が優れるという報告もあるが,システマティックレビューのようなエビデンスの高い検討で凝固療法の有用性を証明した文献は検索されなかった.日本では内視鏡的止血には単独の方法で行うことが多く,止血が得られない場合に他の方法

を併用することがある.すなわち,併用法をはじめから計画的に行うことは少ないと考えるため,「消化性潰瘍診療ガイドライン」初版では出血性潰瘍に対する最適な止血法を提示したが,本改訂版ではステートメントに併用法の成績を示すのみとした.

文献

1) Vergara M, Calvet X, Gisbert JP. Epinephrine injection versus epinephrine injection and a second endo-scopic method in high risk bleeding ulcers. Cochrane Database Syst Rev 2007; (2): CD005584(メタ)

2) Laine L, Jensen DM. Management of patients with ulcer bleeding. Am J Gastroenterol 2011; 107: 345-360(ガイドライン)

3) Barkun AN, Martel M, Toubouti Y, et al. Endoscopic hemostasis in peptic ulcer bleeding for patients withhigh-risk lesions: a series of meta-analyses. Gastrointest Endosc 2009; 69: 786-799(メタ)

4) Ljubicic N, Budimir I, Biscanin A, et al. Endoclips vs large or small-volume epinephrine in peptic ulcerrecurrent bleeding. World J Gastroenterol 2012; 18: 2219-2224(ランダム)

5) Taghavi SA, Soleimani SM, Hosseini-Asi SMK, et al. Adrenaline injection plus argon plasma coagulationversus adrenaline injection plus hemoclips for treating high-risk bleeding peptic ulcers: a prospective, ran-domized trial. Can J Gastroenterol 2009; 23: 699-704(ランダム)

6) Yuan Y, Wang C, Hunt R, et al. Endoscopic clipping for acute nonvariceal upper-GI bleeding: a meta-analysis and critical appraisal of randomized controlled trials. Gastrointest Endosc 2008; 68: 339-351(メタ)

7) Arima S, Sakata Y, Ogata S, et al. Evaluation of hemostasis with soft coagulation using endoscopic hemo-static forceps in comparison with metallic hemoclips for bleeding gastric ulcers: a prospective, randomizedtrial. J Gastroenterol 2010; 45: 501-505(ランダム)

8) Havanond C, Havanond P. Argon plasma coagulation therapy for acute non-variceal upper gastrointesti-nal bleeding. Cochrane Database Syst Rev 2005; (2): CD003791(メタ)

9) Karaman A, Baskol M, Gursoy S, et al. Epinephrine plus argon plasma or heater probe coagulation in ulcerbleeding. World J Gastroenterol 2011; 17: 4109-4112(非ランダム)

消化性潰瘍診療ガイドライン2015(改訂第2版),南江堂,2015

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解説

セカンド・ルックは再出血の危険性の高い臨床所見を有する患者に行い,内視鏡的治療を行った患者に一律に行わないことを推奨する.米国消化器病学会が発表したガイドライン 1)でも内視鏡的治療により初期止血が得られた消化性潰瘍患者に 24 時間以内にルーティンにセカンド・ルックを行うことは推奨しないとしている.また,再度の内視鏡は再出血に対する臨床的エビデンスを認める患者に行い,止血治療は出血のリスクが高い潰瘍に行うことを推奨している.

セカンド・ルックの有用性については,Tsoiら 2)が熱凝固法および局注法を用いたあとのセカンド・ルックの有用性についてメタアナリシスを行っている(5文献 998 例).このメタアナリシスによると熱凝固法実施後のセカンド・ルックは再出血を有意に減少させたが(リスク比0.29,95%CI 0.11〜0.73),局注後のセカンド・ルックは内視鏡単回例に比して再出血,手術移行および死亡率のいずれも減少させなかった.このメタアナリシスは熱凝固法後のセカンド・ルックの有用性を証明する一方で,内視鏡止血後の消化性潰瘍全般にセカンド・ルックを一律に行うことは少なくとも局注法では有用でないことも証明している.また,日本では保険適用がないが高用量の PPIを用いればルーティンでのセカンド・ルックは必要ないことにも言及している.さらに,医療経済的にも,すべての患者にセカンド・ルックを行うことは勧められない.

セカンド・ルックの有用性および再出血の危険性のある患者の臨床所見について,「消化性潰瘍診療ガイドライン」初版ではMarmoら 3)のメタアナリシスを採用している.再出血の危険性のある臨床所見とは,止血前の状態で収縮期血圧が 100mmHg未満の低血圧,ヘモグロビン値が 10g/dL未満,胃内に新鮮血を認める場合,活動性出血,2 cm以上の大きな潰瘍のうち 1つ以上を満たすもので,こうした臨床所見を有する患者に 24 時間以内に内視鏡による経過観察を行うことで再出血率を減少させたとしている(オッズ比 0.64,95%CI 0.44〜0.95).今回検索された文献では,Elmunzerら 4)が出血性消化性潰瘍に内視鏡的止血治療後の再出血予測因子を検討したシステマティックレビューを報告している(10 文献).このレビューによると内視鏡前の再出血予測因子として血行動態の不安定と併存疾患をあげている.また,内視鏡時の予測因子としては,活動性出血,大きい潰瘍,球後部潰瘍,胃小彎潰瘍があげられている.こうした予

Clinical Question 1-41.出血性胃潰瘍・出血性十二指腸潰瘍 ― ❶内視鏡的治療

止血確認のための内視鏡検査(セカンド・ルック)は必要か?

CQ 1-4 止血確認のための内視鏡検査(セカンド・ルック)は必要か?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● セカンド・ルックは再出血の危険性の高い臨床所見を有する患者に行うことを推奨する.

1(100%) A

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1.出血性胃潰瘍・出血性十二指腸潰瘍

測因子を有する患者にセカンド・ルックを行うことが有用であり,セカンド・ルックを行う患者を選択すべきであるとしている.

文献

1) Laine L, Jensen DM. Management of patients with ulcer bleeding. Am J Gastroenterol 2011; 107: 345-360(ガイドライン)

2) Tsoi KK, Chan HC, Chiu PW, et al. Second-look endoscopy with thermal coagulation or injections for pep-tic ulcer bleeding: a meta-analysis. J Gastrol Hepatol 2010; 25: 8-13(メタ)

3) Marmo R, Rotondano G, Bianco MA, et al. Outcome of endoscopic treatment for peptic ulcer bleeding: is asecond look necessary? a meta-analysis. Gastrointest Endosc 2003; 57: 62-67(メタ)

4) Elmunzer BJ, Young SD, Inadomi JM, et al. Systematic review of the predictors of recurrent hemorrhageafter endoscopic hemostatic therapy for bleeding peptic ulcers. Am J Gastroenterol 2008; 10: 2625-2632(メタ)

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解説

内視鏡的治療(内視鏡的止血術)後の PPIの静脈内投与(一部経口投与を含む)が,プラセボと比べて有意に再出血率の減少,輸血量の減少,入院期間の短縮,外科手術移行率の減少を認めることは 2つのメタアナリシス 1, 2)と複数の RCT 3〜8)で証明されている.また,PPIは高用量のほうが標準用量に比べて,再出血率,外科手術移行率,死亡率には差はないものの 9, 10),輸血量が有意に少ないという報告 11, 12)がある.費用対効果の面においては,内視鏡的治療後に再出血予防の目的で 3日間高用量の PPIを投与したほうがプラセボに比較して優れているという報告があるが 13),その評価は国別によって異なるという報告もある 8).PPIの投与方法については,静脈内投与と経口投与の間で,入院期間,輸血量,手術移行率,死亡率に差はないとされている 14).

一方,内視鏡的治療後のH2RAの静脈内投与は,プラセボと比べて再出血率や死亡率には差はないものの外科手術移行率を減少させるという報告 2)があるが,再出血率,輸血量,外科手術移行率に差はないとする報告 15)もある.

内視鏡的治療後の PPIとH2RAの比較では,PPIのほうが再出血率は低い 16),輸血量が少ない 1),入院期間が短い 1),外科手術移行率が低い 17),より強力に酸分泌を抑制する 17),動脈性出血の有効性に優る 18),十二指腸潰瘍出血では差はないものの胃潰瘍出血での成績がよい 18),という報告があり,海外では PPIのほうが臨床的評価は高い.これに対して日本では,両者間で止血効果に差を認めなかったという報告 19, 20)や,両者間に差を認めたのは入院期間のみで,絶食期間,輸血量,再出血率,死亡率に差はなかったという報告 21)がある.海外と日本で PPIとH2RAの評価に違いがあるのは,①海外での検討の多くが高用量(日本の 2倍量)の PPIが使用されている,②内視鏡的治療の手技の差,の 2つの要因が考えられる.

一方,酸分泌抑制薬の投与開始時期について,内視鏡的治療前から高用量の PPIを静脈内投与したほうが,内視鏡的治療後から投与を開始する場合に比べて,再出血率,外科手術移行率,死亡率には有意差はないものの,内視鏡的治療時に活動性出血を認める頻度が有意に低いと報告されている 22).

Clinical Question 1-51.出血性胃潰瘍・出血性十二指腸潰瘍 ― ❷非内視鏡的治療

内視鏡的治療後に酸分泌抑制薬を用いる必要はあるのか?

CQ 1-5 内視鏡的治療後に酸分泌抑制薬を用いる必要はあるのか?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● PPI または H2RA の投与は,内視鏡的治療後の治療成績を向上させるため,行うことを推奨する.

1(100%) A

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1.出血性胃潰瘍・出血性十二指腸潰瘍

文献

1) Leontiadis GI, Sharma VK, Howden CW. Systematic review and meta-analysis: proton-pump inhibitortreatment for ulcer bleeding reduces transfusion requirements and hospital stay-results from the Cocha-rane Collaboration. Aliment Pharmacol Ther 2005; 22: 169-174(メタ)

2) Selby NM, Kubba AK, Hawkey CJ. Acid suppression in peptoc ulcer haemorrhage: a ‘meta-analysis’. Ali-ment Pharmacol Ther 2000; 14: 1119-1126(メタ)

3) Zargar SA, Javid G, Khan BA, et al. Pantoprazole infusion as adjuvant therapy to endoscopic treatment inpatients with peptic ulcer bleeding: prospective randomized controlled trial. J Gastroenterol Hepatol 2006;21: 716-721(ランダム)

4) Schaffalitzky de Muckadell OB, Havelund T, Harling H, et al. Effect of omeprazole on the outcome ofendoscopically treated bleeding peptic ulcers. Scand J Gastroenterol 1997; 32: 320-327(ランダム)

5) Javid G, Masoodi I, Zargar SA, et al. Omeprazole as adjuvant therapy to endoscopic combination injectionsclerotherapy for treating bleeding peptic ulcer. Am J Med 2001; 111: 280-284(ランダム)

6) Kaviani MJ, Hashemi MR, Kazemifar AR, et al. Effect of oral omeprazole in reducing re-bleeding in bleed-ing peptic ulcers: a prospective, double-blind, randomized, clinical trial. Aliment Pharmacol Ther 2003; 17:211-216(ランダム)

7) Sung JJY, Barkun A, Kuipers EJ, et al. Intravenous esomeprazole for prevention of recurrent peptic ulcerbleeding. Ann Intern Med 2009; 150: 455-464(ランダム)

8) Barkun AN, Adam V, Sung JJY, et al. Cost effectiveness of high-dose intravenous esomeprazole for pepticulcer bleeding. Pharmacoeconomics 2010; 28: 217-230(ランダム)

9) Andriulli A, Loperfido S, Focareta R, et al. High- versus low-dose proton pump inhibitors after endoscopichemostasis in patients with peptic ulcer bleeding: a multicentre, randomized study. Am J Gastroenterol2008; 103: 3011-3018(ランダム)

10) Chen CC, Lee JY, Fang YJ, et al. Randomised clinical trial: high-dose vs. standard-dose proton pumpinhibitors for the prevention of recurrent haemorrhage after combined endoscopic haemostasis of bleedingpeptic ulcers. Aliment Pharmacol Ther 2012; 35: 894-903(ランダム)

11) Lin HJ, Lo WC, Cheng YC, et al. Role of intravenous omeprazole in patients with high-risk peptic ulcerbleeding after successful ebdoscopic epinephrine injection: a prospective randomized comparative trial.Am J Gastroenterol 2006; 101: 500-505(ランダム)

12) Lin HJ, Lo WC, Perng CL, et al. Can optimal acid suppression prevent rebleeding in peptic ulcer patientswith a non-bleeding visible vessel: a preliminary report of a randomized comparative study. Hepatogas-troenterology 1997; 44: 1495-1499(ランダム)

13) Barkun AN, Herba K, Adam V, et al. High-dose intravenous proton pump inhibition following endoscopictherapy in the acute management of patients with bleeding peptic ulcers in the USA and Canada: a cost-efectiveness analysis. Aliment Pharmacol Ther 2004; 19: 591-600(コホート)

14) Tsai JJ, Hsu YC, Perng CI, et al. Oral or intravenous proton pump inhibitor in patients with peptic ulcerbleeding after successful endoscopic epinephrine injection. Br J Clin Pharmacol 2009; 67: 326-332(ランダム)

15) Carr-Locke DL, Taverner D, Wicks AC. Cimetidine therapy dose not prevent rebleeding from peptic ulcer-ation. Postgrad Med J 1984; 60: 400-403(ランダム)

16) Khoshbaten M, Fattahi E, Naderi N, et al. A comparison of oral omeprazole and intravenous cimetidine inreducing complications of duodenal peptic ulcer. BMC Gastroenterol 2006; 6: 2(ランダム)

17) Lanas A, Artal A, Blás JM, et al. Effect of parenteral omeprazole and ranitidine on gastric pH and the out-come of bleeding peptic ulcer. J Clin Gastroenterol 1995; 21: 103-106(非ランダム)

18) Rensburg CV, Barkun AN, Racz I, et al. Clinical trial: intravenous pantoprazole vs. ranitidine for the pre-vention of peptic ulcer bleeding: a multicentre, multinational, randomized trial. Aliment Pharmacol Ther2009: 29: 497-507(ランダム)

19) 蘆田 潔,荒川哲男,大原秀一.経口投与不可能な上部消化管出血患者に対する Lansoprazole(AG-1749)注射剤の止血効果の検討―塩酸ロキサチジンアセタート注射剤との二重盲検比較試験.薬理と治療2007; 35:503-518(ランダム)

20) Sakurada T, Kawashima J, Ariyama S, et al. Comparison of adjuvant therapies by an H2-receptor antago-nist and a proton pump inhibitor after endoscopic treatment in hemostatic management of bleeding gas-troduodenal ulcers. Dig Endosc 2012; 24: 93-99(非ランダム)

消化性潰瘍診療ガイドライン2015(改訂第2版),南江堂,2015

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②非内視鏡的治療

21) Kamada T, Hata J, Kusunoki H, et al. Effect of famotidine on recurrent bleeding after successful endoscop-ic treatment of bleeding peptic ulcer. Aliment Pharmacol Ther 2005; 21 (Suppl 2): 73-78(非ランダム)

22) Andrews CN, Levy A, Fishman M, et al. Intravenous proton pump inhibitors before endoscopy in bleed-ing peptic ulcer with high-risk stigmata: a multiple comparative study. Can J Gastroenterol 2005; 11: 667-671(コホート)

消化性潰瘍診療ガイドライン2015(改訂第2版),南江堂,2015

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解説

日本では一部の防御因子増強薬が出血性消化性潰瘍治療の補助療法として一般臨床で使用されることがある.内視鏡で出血を確認した消化性潰瘍患者 8例に対して,アルギン酸ナトリウムを 1日 120mL(分 4)2週間にわたって経口投与したところ,いずれの症例も再出血を認めなかったという報告がある 1).また,出血性胃潰瘍 16 例に対して内視鏡下に潰瘍表面にスクラルファート 2gを直接散布(単回)したところ,再出血を認めたのは 16 例中 1例のみであったと報告されている 2).このように防御因子増強薬の一部はケースシリーズで有用との報告もあるが,種々の防御因子増強薬の有用性を示す明らかなエビデンスはない.

文献

1) 熱海 明,古沢晃宏,藤倉益雄.出血性胃潰瘍・十二指腸潰瘍などに対するアルギン酸ナトリウム(アルロイド G)の効果について.基礎と臨床 1982; 16: 192-194(ケースシリーズ)

2) 岩崎高明,神山正之,大政良二,ほか.経内視鏡的薬剤直接散布法による出血性消化性潰瘍の治療.診療と新薬 1988; 25: 2319-2323(ケースシリーズ)

Clinical Question 1-61.出血性胃潰瘍・出血性十二指腸潰瘍 ― ❷非内視鏡的治療

内視鏡的治療後に防御因子増強薬を用いる必要はあるのか?

CQ 1-6 内視鏡的治療後に防御因子増強薬を用いる必要はあるのか?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● 防御因子増強薬の投与は,内視鏡的治療後の再出血率を減少させる効果が不明のため,行わないよう提案する.

2(100%) D

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解説

急性出血に対する輸血の適応として厚生労働省の「血液製剤の使用指針」1)では,循環血液量の①15〜20%の出血量であれば輸液で対応する,②20〜50%の出血量であれば輸液に加えて赤血球濃厚液を投与する,③50〜100%の出血量であれば輸液と赤血球濃厚液に加えて等張アルブミン製剤を投与する,④24 時間以内に 100%以上の出血量を認める場合には③に加えて新鮮凍結血漿や血小板濃厚液を投与し,バイタルサインや尿量,心電図,血算,血液ガスなどを参考にして必要な血液成分を追加する,と述べられている.また,ヘモグロビン値が 7.0〜8.0g/dL程度あれば通常は十分な酸素の供給が可能であるが,冠動脈疾患,肺機能障害,脳循環障害のある患者ではヘモグロビン値を 10g/dL程度に維持することが推奨されており,このような合併症を有する患者ではショック症状がなくても早めに輸血を開始する必要がある.一方,心血管疾患などの合併症がなく,かつ重症度が比較的軽度または 55 歳未満の患者に対して輸血を行う場合は,血中ヘモグロビン値を 7.0〜9.0g/dLで維持したほうが 10.0〜12.0g/dLで維持するよりも 30 日以内の死亡率は低いという報告がある 2).その理由として,輸血量が多くなるほど凝固異常などの輸血に伴う副作用が問題になると指摘されている 2).National Guideline Clearinghouse 3)は急性出血に対する治療のガイドラインとして,①循環

血液量を維持するため,まず輸液を行う,②患者の全身状態をみて赤血球製剤の投与の必要性を評価するが,その際ヘモグロビン値は出血量を推定するひとつの参考にしかならない,③虚血性心疾患を有する患者では心筋梗塞のリスクが高まる,④止血が不可能でかつ緊急輸血が必要な場合には,直ちに止血が可能な施設へ転送すべきである,と述べている.

米国消化器病学会の出血性潰瘍患者に対するマネジメントのガイドラインでは,第一に患者の血液循環状態の把握が重要で,血液循環状態に問題がある場合には速やかにその回復に努めること,輸血を行う場合には血中ヘモグロビン値が 7.0g/dL以上を保つことが推奨されている 4).以上の点から,血中ヘモグロビン値が 7.0g/dL未満の場合に輸血を考慮する必要があるが,

Clinical Question 1-71.出血性胃潰瘍・出血性十二指腸潰瘍 ― ❷非内視鏡的治療

どのような場合に輸血が必要か?

CQ 1-7 どのような場合に輸血が必要か?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● 輸血は出血性ショックを認める場合に実施することを推奨する. 1(100%) A

● 輸血は血中ヘモグロビン値が 7.0g/dL 未満の場合に実施することを提案する.

2(100%) C

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1.出血性胃潰瘍・出血性十二指腸潰瘍

心血管疾患などの合併症の有無やバイタルサインの状態によって輸血を実施すべきタイミングは異なり,血中ヘモグロビン値はあくまで輸血を実施する指標のひとつに過ぎない.一方,出血性ショックを認める場合には,血中ヘモグロピン値にかかわらず,輸血を行う必要がある.

文献

1) 厚生労働省医薬食品局血液対策課.血液製剤の使用指針,改定版,厚生労働省 http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/iyaku/kenketsugo/5tekisei3b.html[最終アクセス 2015 年 2月 22 日](ガイドライン)

2) Hebert PC, Wells G, Blajchman MA, et al. A multicenter randomized, controlled clinical trial of transfusionrequirements in critical case. N Engl J Med 1999; 340: 409-417(ランダム)

3) Blood transfusion: indication and administration, National Guideline Clearinghouse(ガイドライン)4) Laine L, Jensen DM. Manegement of patients with ulcer bleeding. Am J Gastroenterol 2012; 107: 345-360

(ガイドライン)

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解説

絶食期間,食事開始時期,食事内容について科学的に検討した論文がなく,経験則に基づいたクリニカルパスの設定とその検証が行われたり 1, 2),専門家個人の意見に基づいた記述 3)があるに過ぎない.消化管運動の抑制による患部の安静や,再出血した場合に内視鏡的治療を容易に再施行できるなどの観点から,一般に内視鏡的止血処置後の急性期に絶食にすることは有益であると考えられている.一方,PPIとH2RAの投与時に,それぞれ絶食にした場合と食事を摂取した場合の酸分泌の

検討を行った論文では,いずれの酸分泌抑制薬投与時においても食事摂取の有無は酸分泌に影響を与えなかったことから,酸分泌の観点からは長期に絶食にする意義は低いと述べている 4).

内視鏡的止血処置後の絶食期間と再出血について明らかなエビデンスはないが,急性期には絶食が必要と思われる.なお,「急性期」の期間について明確な定義はないが,内視鏡的止血処置後 48 時間以内とするのが妥当と考えられる.一方,食事の再開は,必要に応じて上部消化管内視鏡を施行し,止血を確認してから行う.

文献

1) 水城 啓,立道昌幸,二階堂光洋,ほか.出血性消化性潰瘍に対するクリニカルパス導入の検討.日本消化器病学会雑誌 2006; 103: 283-289(非ランダム)

2) 山内宏哲,井口秀人,松本恒司,ほか.胃潰瘍入院クリニカルパスの有用性について.日本消化器病学会雑誌 2003; 100: 844-851(非ランダム)

3) 浅木 茂.消化性潰瘍の発症時には,絶食のほうが速く軽快するのか? 治療2006; 88: 1017-1019(非ランダム)

4) Ozawa T, Yoshikawa N, Tomita T, et al. The influence of feeding on gastric acid suppression in Helicobac-ter pylori -positive patients treated with a proton pump inhibitor or an H2-receptor antagonist after bleed-ing from a gastric ulcer. J Gastroenterol 2003; 38: 844-848(非ランダム)

Clinical Question 1-81.出血性胃潰瘍・出血性十二指腸潰瘍 ― ❷非内視鏡的治療

出血性消化性潰瘍患者における食事の中断と再開はどのように行えばよいか?

CQ 1-8 出血性消化性潰瘍患者における食事の中断と再開はどのように行えばよいか?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● 急性期には絶食とすることを推奨する. 1(100%) D

● 食事の再開は止血の確認後に行うことを推奨する. 1(100%) D

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解説

出血性消化性潰瘍患者に対して入院治療と外来治療の成績を比較検討した論文は少ないが,一定の条件下(ForrestⅡb以下,潰瘍の大きさ 15mm以下,出血性ショックなし,合併症なし,家族のサポート体制あり)では,入院加療と外来加療の間で再出血率,輸血を必要とした比率,死亡率に有意差はなく,外来での治療成績は入院した場合と遜色はなかったと述べ,医療費は外来で行うほうが安価であったという海外の報告がある 1, 2).

一方,日本では,入院治療と外来治療の成績を比較した論文はないものの,出血直後の急性期は入院することが一般的である.保存的治療の継続や再出血への対応などの面から,安全性を考慮して入院治療すべきであると考えられる.海外と日本での考え方の差は,保険制度の違いによるものと考えられる.

文献

1) Brullet E, Campo R, Calvet X, et al. A randomized study of the safety of outpatient care for patients withbleeding peptic ulcer treated by endoscopic injection. Gastrointest Endosc 2004; 60: 15-21(非ランダム)

2) Longstreth GF, Feitelberg SP. Successful outpatient management of acute upper gastrointestinal hemor-rhage: use of practice guidelines in a large patients series. Gastrointest Endosc 1998; 47: 219-222(非ランダム)

Clinical Question 1-9

出血性消化性潰瘍患者は入院して治療を行うべきか?

CQ 1-9 出血性消化性潰瘍患者は入院して治療を行うべきか?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● 急性期は入院して治療を行うよう推奨する. 1(100%) D

1.出血性胃潰瘍・出血性十二指腸潰瘍 ― ❷非内視鏡的治療

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解説

出血性消化性潰瘍に対しては,抗凝固薬・抗血小板薬服用の有無にかかわらず,内視鏡的治療を行うとともに酸分泌抑制薬を投与する.抗凝固薬・抗血小板薬の休薬の有無については,継続した場合の再出血のリスクの増加と休薬した場合の血栓症イベントのリスクの増加の両面について考慮しなければならない.抗凝固薬・抗血小板薬の休薬による血栓症イベントの発症高危険群を表1(Gastroenterol Endosc 2012; 54: 2075-2102 a)[検索期間外文献])に示す.

Clinical Question 1-10

抗凝固薬・抗血小板薬服用中の出血性潰瘍に対してどのように対応すべきか?

CQ 1-10 抗凝固薬・抗血小板薬服用中の出血性潰瘍に対してどのように対応すべきか?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● 抗血小板薬を中止することによって血栓症イベントの発生リスクが高い症例では,抗血小板薬を休薬しないことを推奨する.

1(100%) A

● 抗凝固薬を服用中の患者は服薬中止によって血栓症イベントの発生リスクが高くなるので,ヘパリン置換や止血確認後早期に抗凝固薬服薬を再開することを提案する.

2(100%) C

表1 抗凝固薬・抗血小板薬の休薬による血栓症イベント発症高リスク群抗血小板薬関連

後2ヵ月12ヵ月

(頸動脈内膜剝離術,ステント留置)後 2ヵ月50%以上の狭窄を伴う脳梗塞または一過性脳虚血発作

Fontaine 3 度(安静時疼痛)以上

抗凝固薬関連*

*:ワルファリンなど抗凝固療法中の休薬に伴う血栓・塞栓症のリスクは様々であるが,一度発症すると重篤であることが多いことから,抗凝固療法中の症例は全例,高リスク群として対応することが望ましい.(文献 aより転載)

1.出血性胃潰瘍・出血性十二指腸潰瘍 ― ❷非内視鏡的治療

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1.出血性胃潰瘍・出血性十二指腸潰瘍

抗血小板薬については,アスピリン服用中の心血管疾患患者や脳血管疾患患者における出血性消化性潰瘍において,アスピリン 80mg継続群とプラセボ投与群を比較すると,アスピリン継続群のほうが再出血率は高い傾向(有意差はなし)があるが,死亡率は有意に低いという RCT

の報告がある 1).したがって,抗血小板薬を服用している出血性潰瘍のうち,抗血小板薬を中止することによる血栓症イベントの発生リスクが高いと考えられる患者では,PPIを併用しながら抗血小板薬の使用を継続すべきである.一方,抗血小板薬の中止によって血栓症イベントの発生リスクが低いと考えられる患者では,抗血小板薬を休薬することが可能である.これに対して抗凝固薬については,エビデンスレベルの高い論文はないが,ワルファリンを

服用している出血性消化性潰瘍 23 例(ワルファリン服用群)と患者背景の類似したワルファリンを服用していない出血性消化性潰瘍 50 例(ワルファリン非服用群)の再出血率,手術移行率,輸血量,入院期間,30 日以内の死亡率を比較すると,ワルファリン服用群が輸血量と入院期間がやや多い傾向があるものの,いずれの項目も有意な差はなかったというケースコントロールスタディがある 2).また,消化管出血を認めたワルファリン服用患者を服用継続群と休薬群に分けて比較すると,90 日間の経過観察では,服用継続群のほうが休薬群に比べて血栓症イベント発生率や死亡率は低く,再出血率には有意な差はなかったという後ろ向きコホート研究がある

(Arch Intern Med 2012; 172: 1484-1491 b)[検索期間外文献]).さらに,ワルファリン服用中の心房細動を有する消化管出血患者において,30 日間の経過観察では服用継続群のほうが休薬群に比べて血栓症イベント発生率や死亡率は低く,再出血率には有意な差はなかったと述べ,ワルファリン休薬後 7日目の服薬再開が消化管再出血率の抑制,血栓症イベントの発生率の抑制が最も良好であったという後ろ向きコホート研究がある(Am J Cardiol 2014; 113: 662-668 c)[検索期間外文献]).したがって,抗凝固薬を服用している出血性消化性潰瘍患者のうち,抗凝固薬を中止することによって血栓症イベントの発生リスクが高いと考えられる患者では,止血確認後早期に抗凝固薬服薬を再開する.その際には,PT-INRをモニタリングしながら調整することが重要である 2).なお,近年登場したダビガトラン,リバーロキサバン,アピキサバンなどの新規経口抗凝固薬の出血性消化性潰瘍患者における休薬の可否については,現在のところ推奨できるだけの科学的根拠がない.

文献

1) Sung JJ, Lau JY, Ching JY, et al. Continuation of low-dose aspirin therapy in peptic ulcer bleeding: a ran-domized trial. Ann Intern Med 2010; 152: 1-9(ランダム)

2) Choudari CP, Rajgopal, C, Palmer KR. Acute gastrointestinal haemorrhage in anticoagulated patients:diagnoses and response to endoscopic treatment. Gut 1994; 35: 464-466(ケースコントロール)

【検索期間外文献】a) 藤本一眞,藤城光弘,加藤元嗣,ほか.抗血栓薬服用者に対する消化器内視鏡診療ガイドライン(日本消

化器内視鏡学会).Gastroenterol Endosc 2012; 54: 2075-2102(ガイドライン)b) Witt DM, Delate T, Garcia DA, et al. Risk of thromboenbolism, recurrent hemorrhage, and death after war-

farin therapy interruption for gastrointestinal tract bleeding. Arch Intern Med 2012; 172: 1484-1491(コホート)

c) Qureshi W, Mittal C, Patsias C, et al. Restarting Anticoagulation and outcomes after major gastrointestinalbleeding in atrial fibrillation. Am J Cardiol 2014; 113: 662-668(コホート)

消化性潰瘍診療ガイドライン2015(改訂第2版),南江堂,2015

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解説

休薬した場合,出血性消化性潰瘍の止血後の抗凝固薬や抗血小板薬の再開時期を決定する指標に関する科学的エビデンスは乏しい.しかし,抗凝固薬や抗血小板薬の服用の有無にかかわらず,出血性消化性潰瘍に対して内視鏡的止血術を行ったあと,翌日ないし翌々日に再度内視鏡検査を施行して止血の有無を確認することが一般に広く行われている(セカンド・ルック).抗凝固薬や抗血小板薬を再開する前に,上部消化管内視鏡を施行して止血を確認する必要がある.

文献

なし

Clinical Question 1-11

止血後の抗凝固薬・抗血小板薬の再開時期を決定する指標は?

CQ 1-11 止血後の抗凝固薬・抗血小板薬の再開時期を決定する指標は?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● 抗凝固薬・抗血小板薬を休薬した場合,その再開は内視鏡を行って止血していることを確認してから行うことを推奨する.

1(100%) D

1.出血性胃潰瘍・出血性十二指腸潰瘍 ― ❷非内視鏡的治療

消化性潰瘍診療ガイドライン2015(改訂第2版),南江堂,2015

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解説

内視鏡的止血術が奏効しない出血性消化性潰瘍に対する二次治療として IVRが有用であったという症例報告やケースシリーズは多数存在する 1〜7).外科手術成績と比較して IVRは,再出血率,追加手術移行率,死亡率には有意差はなく,低侵襲であるという点から IVRのほうが優れているという報告 8),内視鏡的止血回数や輸血量に差はなかったが平均在院日数が IVRのほうが有意に短いという報告 9),再出血率は高いが合併症発症率は低いという報告 10)がある.いずれもエビデンスレベルは低いが,IVRは外科手術に比べて,再出血率,追加手術移行率,死亡率において差はないと考えられる.ただし,IVRはその手技に熟達した専門医の存在が必須であり,施設によっては施行が困難な場合がある.

文献

1) Ljungdahl M, Eriksson LG, Nyman R, et al. Arterial embolization in management of massive bleedingfrom gastric and duodenal ulcers. Eur J Surg 2002; 168; 384-390(ケースシリーズ)

2) Akatsu T, Aiura K, Ueda M, et al. Life-threatening bleeding from postbulbullar duodenal ulcer saved byemergency transcatheter arterial embolization. J Gastroenterol 2006; 41: 604-605(ケースシリーズ)

3) Hizawa K, Miura N, Hasegawa H, et al. Late-onset life threatening hemorrhage of omeprazole-resistantduodenal ulcer managed by interventional radiology: report of a case. Intern Med 2006; 45: 861-863(ケースシリーズ)

4) Holme JB, Nielsen DT, Funch-Jensen P, et al. Transcatheter arterial embolization in patients with bleedingduodenal ulcer: an alternative to surgery. Acta Radiol 2006; 47: 244-247(ケースシリーズ)

5) Toyoda H, Nakano S, Takeda I, et al. Transcatheter arterial embolization for massive bleeding from duo-denal ulcers not controlled by endoscopic hemostasis. Endoscopy 1995; 27: 304-307(ケースシリーズ)

6) 小金丸史隆,岡崎正敏.出血性胃潰瘍に対する救急左胃動脈塞栓術の検討.臨床放射線 1990; 35: 607-613(ケースシリーズ)

7) De Wispelaere JF, De Ronde T, Trigaux JP, et al. Duodenal ulcer hemorrhage treated by embolization:results in 28 patients. Acta Gastroenterol Belg 2002; 65: 6-11(ケースシリーズ)

8) Ripoll C, Bañares R, Beceiro I, et al. Comparison if transcatheter arterial embolization and surgery for

Clinical Question 1-12

interventional radiology(IVR)はどのような場合に行うべきか?

CQ 1-12 interventional radiology(IVR)はどのような場合に行うべきか?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● 内視鏡的止血困難例に対する二次治療として行うことを推奨する. 2(100%) C

1.出血性胃潰瘍・出血性十二指腸潰瘍 ― ❷非内視鏡的治療

消化性潰瘍診療ガイドライン2015(改訂第2版),南江堂,2015

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②非内視鏡的治療

treatment of bleeding peptic ulcer after endoscopic treatment failure. J Vasc Interv Radiol 2004; 15: 447-450(ケースコントロール)

9) 伊藤重彦,轟木秀一,木戸川秀生.胃十二指腸潰瘍出血の治療戦略―特にインターベンションと手術療法を中心に.日本救命医療学会雑誌 2006; 20: 3-9(ケースシリーズ)

10) Wong TCL, Wong KT, Chiu PWY, et al. A comparison of angiographic embolization with surgery afterfailed endoscopic hemostasis to bleeding peptic ulcers. Gastrointest Endosc 2011; 73: 900-908(ケースコントロール)

消化性潰瘍診療ガイドライン2015(改訂第2版),南江堂,2015

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解説

保存的治療にて治癒した H. pylori 陽性の出血性消化性潰瘍に対しては,除菌療法を行ったほうが除菌療法を行わない場合に比べて,酸分泌抑制薬による維持療法の有無にかかわらず再出血率が低いことが 2つのメタアナリシス 1, 2)と複数の RCT 3〜6)にて証明されている.Gisbertら 1)

はメタアナリシスの結果,再出血率は非除菌かつ維持療法なしの場合を 1とすると除菌療法を行った場合のオッズ比は 0.18(95%CI 0.09〜0.37),非除菌かつ酸分泌抑制薬による維持療法を行った場合を 1とすると除菌療法を行った場合のオッズ比は 0.25(95%CI 0.08〜0.76)と述べている.また,コストの面でも,除菌療法を行って維持療法を行わないほうが,「除菌療法を行わずに酸分泌抑制薬による維持療法を行う」あるいは「除菌療法も維持療法も行わない」場合に比べて,1年間に必要な医療費を抑制できるというメタアナリシスによる分析もある 2, 7).したがって,出血性消化性潰瘍に対して保存的治療を行ったあとはまず H. pylori 感染診断を行い,H.

pylori 陽性者は再出血予防の目的で除菌治療を行うべきである.除菌が成功すれば,その後酸分泌抑制薬による維持療法の必要はない 1, 2, 8).ただし,除菌治療を行っても H. pylori が残存(除菌失敗)した場合は,H. pylori が完全に消失した場合に比べて再出血率が有意に高くなるため 8〜13),除菌治療の効果判定は正確に行う必要がある 7).一方,日本では Kikkawaら 13)が,出血性消化性潰瘍に対して除菌治療を行わなかった 1994

年から 1997 年までの症例とそれ以後の除菌治療を導入した以降の症例の再出血率を比較し,除菌治療の導入以降の症例のほうが再出血率は低かったことから,出血性消化性潰瘍に対する除菌治療の有用性を報告している.しかし,残念ながらこの検討は後ろ向き非ランダム化研究であり,エビデンスレベルは低い.

Clinical Question 1-13

再出血予防に H. pylori 除菌療法は必要か?

CQ 1-13 再出血予防に H. pylori 除菌療法は必要か?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● 保存的治療にて治癒した出血性消化性潰瘍患者のうち,H. pylori陽性例は除菌療法を行うことを推奨する.

1(100%) A

1.出血性胃潰瘍・出血性十二指腸潰瘍 ― ❷非内視鏡的治療

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②非内視鏡的治療

文献

1) Gisbert JP, Khorrami S, Carballo F, et al. Meta-analysis: Helicobacter pylori eradication therapy vs. antisecre-tory non-eradication therapy for the prevention of recurrent bleeding from peptic ulcer. Aliment Pharma-col Ther 2004; 19: 617-629(メタ)

2) Sharma VK, Sahai AV, Corder FA, et al. Helicobacter pylori eradication is superior to ulcer healing with orwithout maintenance therapy to prevent further ulcer haemorrhage. Aliment Pharmacol Ther 2001; 15:1939-1947(メタ)

3) Jaspersen D, Koerner T, Schorr W, et al. Helicobacter pylori eradication reduces the rate of rebleeding inulcer hemorrhage. Gastrointest Endosc 1995; 41: 5-7(ランダム)

4) Lai KC, Hui WM, Wong WM, et al. Treatment of Helicobacter pylori in patients with duodenal ulcer hemor-rhage: a long-term randomized, controlled study. Am J Gastroenterol 2000; 95: 2225-2232(ランダム)

5) Rokkas T, Karameris A, Mavrogeorgis A, et al. Eradication of Helicobacter pylori reduces the possibility ofrebleeding in peptic ulcer disease. Gastrointest Endosc 1995; 41: 1-4(ランダム)

6) Liu CC, Lee CL, Chan CC, et al. Maintenance treatment is not necessary after Helicobacter pylori eradicationand healing of bleeding peptic ulcer. Arch Intern Med 2004; 163: 2020-2024(ランダム)

7) Ofman J, Wallace J, Badamgarav E, et al. The cost-effectiveness of competing strategies for the preventionof recurrent peptic ulcer hemorrhage. Am J Gastroenterol 2002; 97: 1941-1950(メタ)

8) Gisbert JP, Calvet X, Feu F, et al. Eradication of Helicobacter pylori for the prevention of peptic ulcer bleed-ing. Helicobacter 2007; 12: 279-286(コホート)

9) Macri G, Milani S, Surrenti E, et al. Eradication of Helicobacter pylori reduces the rate of duodenal ulcerrebleeding: a long-term follow-up study. Am J Gastroenterol 1998; 93: 925-927(コホート)

10) Labenz J, Börsch G. Role of Helicobacter pylori eradication in the prevention of peptic ulcer bleedingrelapse. Digestion 1994; 55: 19-23(コホート)

11) Horvat D, Vcev A, Soldo I, et al. The results of Helicobacter pylori eradication on repeated bleeding inpatients with stomach ulcer. Coll Antropol 2005; 29: 139-142(コホート)

12) Vergara M, Casellas F, Saperas E, et al. Helicobacter pylori eradication prevents recurrence from peptic ulcerhaemorrhage. Eur J Gastroenterol Hepatol 2000; 12: 733-737(コホート)

13) Kikkawa A, Iwakiri R, Ootani H, et al. Prevention of the rehaemorrhage of bleeding peptic ulcers: effectsof Helicobacter pylori eradication and acid suppression. Aliment Pharmacol Ther 2005; 21 (Suppl 2): 79-84

(ケースコントロール)

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2.H. pylori 除菌治療

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解説

開放性(活動期)胃潰瘍では,H. pylori 除菌成功例は除菌失敗例に比較して,有意に潰瘍治癒が促進される(表1)1〜7).除菌後の酸分泌抑制薬による追加治療を行っても行わなくても,H. pylori

除菌の成功は胃潰瘍の治癒率を上げる.ただし,これは除菌後の酸分泌抑制薬による追加治療の必要性を否定するものではない.

文献

1) Treiber G, Lambert JR. The impact of Helicobacter pylori eradication on peptic ulcer healing. Am J Gastroen-terol 1998; 93: 1080-1084(メタ)

2) Tatsuta M, Ishikawa H, Iishi H, et al. Reduction of gastric ulcer recurrence after suppression of Helicobacterpylori by cefixime. Gut 1990; 31: 973-976(ランダム)

3) Furuta T, Futami H, Arai H, et al. Effects of lansoprazole with or without amoxicillin on ulcer healing:relation to eradication of Helicobacter pylori. J Clin Gastroenterol 1995; 20 (Suppl 2): S107-S111(ランダム)

4) Kato M, Asaka M, Kudo M, et al. Effects of lansoprazole plus amoxycillin on the cure of Helicobacter pyloriinfection in Japanese peptic ulcer patients. Aliment Pharmacol Ther 1996; 10: 821-827(ランダム)

Clinical Question 2-1

H. pylori 除菌は胃潰瘍の治癒を促進するか?

CQ 2-1 H. pylori 除菌は胃潰瘍の治癒を促進するか?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● H. pylori 除菌は胃潰瘍の治癒を促進するので,行うことを推奨する.

1(100%) A

表1 除菌の成否による消化性潰瘍治癒率診断 胃潰瘍 十二指腸潰瘍 消化性潰瘍

HP- 陰性 77/88(87.5%)

1,766/1,868(94.5%)

653/685(95.3%)

HP- 陽性 145/200(72.5%)

981/1,271(75.6%)

164/217(75.6%)

オッズ比(95% CI)

2.7(1.3~5.4)

5.1(4.0~6.5)

6.6(4.1~10.6)

< 0.01 < 0.0001 < 0.0001(文献 1より)

2.H. pylori 除菌治療 ― ❶初期治療【胃潰瘍】

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①初期治療【胃潰瘍】

5) Asaka M, Sugiyama T, Kato M, et al. A multicenter, double-blind study on triple therapy with lansopra-zole, amoxicillin, and clarithromycin for eradication of Helicobacter pylori in Japanese peptic ulcer patients.Helicobacter 2001; 6: 254-261(ランダム)

6) Ford AC, Delaney BC, Forman D, et al. Eradication therapy in Helicobacter pylori positive peptic ulcer dis-ease: systematic review and economic analysis. Am J Gastroenterol 2004; 99: 1833-1855(メタ)

7) Ford A, Delaney B, Forman D, et al. Eradication therapy for peptic ulcer disease in Helicobacter pylori posi-tive patients. Cochrane Database Syst Rev 2004; 18: CD003840(メタ)

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解説

胃潰瘍に対して標準的な 3剤併用の除菌治療を実施する場合に,PPIの前投与は除菌治療を低下させない(図1)1〜3).日本での報告においても同様な結果である 4).酸分泌抑制薬と抗菌薬による 2剤併用の除菌治療では PPIの前投与は除菌率を低下させる 2, 5).

Clinical Question 2-2

H. pylori 除菌前の PPI 投与は胃潰瘍の除菌率に影響を与えるか?

CQ 2-2 H. pylori 除菌前の PPI 投与は胃潰瘍の除菌率に影響を与えるか?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● H. pylori 除菌前の PPI 投与は 3 剤併用療法の除菌率を低下させないので,PPI 投与直後でも除菌治療を行うことを推奨する.

1(100%) A

2.H. pylori 除菌治療 ― ❶初期治療【胃潰瘍】

図 1 PPI 前投与が H. pylori 除菌に与える影響(メタアナリシス)(文献 3より)

前投与悪化 前投与改善

Adachi(2003)

Kuwayama(2002)

Chishisma(1997)

Adamek(1999)

Calabrese(2000)

Annibale(1997)

Okada(1998)

Janssen(2004)

Perng(2000)

全体評価

-60 -40 -20 0%

20 40 60

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①初期治療【胃潰瘍】

文献

1) Axon AT, O’Moráin CA, Bardhan KD, et al. Randomised double blind controlled study of recurrence ofgastric ulcer after treatment for eradication of Helicobacter pylori infection. BMJ 1997; 314: 565-568(ランダム)

2) Ford AC, Delaney BC, Forman D, et al. Eradication therapy in Helicobacter pylori positive peptic ulcer dis-ease: systematic review and economic analysis. Am J Gastroenterol 2004; 99: 1833-1855(メタ)

3) Janssen MJ, Laheij RJ, de Boer WA, et al. Meta-analysis: the influence of pre-treatment with a proton pumpinhibitor on Helicobacter pylori eradication. Aliment Pharmacol Ther 2005; 21: 341-345(メタ)

4) Inoue M, Okada H, Hori S, et al. Does pretreatment with lansoprazole influence Helicobacter pylori eradica-tion rate and quality of life? Digestion 2010; 81: 218-222(ランダム)

5) Ford A, Delaney B, Forman D, et al. Eradication therapy for peptic ulcer disease in Helicobacter pylori posi-tive patients. Cochrane Database Syst Rev 2004: CD003840(メタ)

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解説

海外の報告では,酸分泌抑制薬を含まない H. pylori の除菌治療単独と PPI単独投与とでは,開放性(活動性)胃潰瘍の 8週治癒率は同等である 1〜9).しかし,日本の報告では,15mm以上の開放性(活動性)胃潰瘍の場合には,H. pylori の除菌治療単独は PPI単独投与より 8週治癒率が劣る(図1)10).また,開放性(活動性)胃潰瘍に対して,H. pylori の除菌治療後に酸分泌抑制薬以外の抗潰瘍薬の追加投与によって,潰瘍治癒率は向上する 11, 12).さらに,開放性(活動性)胃潰瘍に対して,酸分泌抑制薬以外の抗潰瘍薬と酸分泌抑制薬との比較試験では,同様な潰瘍治癒率

Clinical Question 2-3

開放性(活動期)胃潰瘍に対して H. pylori 除菌治療後の潰瘍治療の追加は必要か?

CQ 2-3 開放性(活動期)胃潰瘍に対して H. pylori 除菌治療後の潰瘍治療の追加は必要か?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● 開放性(活動期)胃潰瘍では H. pylori 除菌治療後に潰瘍治療を追加することで潰瘍治癒促進が期待できるので,行うよう推奨する.

1(100%) A

2.H. pylori 除菌治療 ― ❶初期治療【胃潰瘍】

図 1 H. pylori 除菌単独による胃潰瘍治癒率〜潰瘍サイズによる相違(文献 10より)

0.5~1.0cm

1.0~1.5cm

>1.5cm

0 20 40 60 80 100

除菌PPI

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①初期治療【胃潰瘍】

が得られる 13〜15).以上のことから,H. pylori 除菌治療後に酸分泌抑制薬やその他の抗潰瘍薬による潰瘍治療を追加することで潰瘍治癒促進が期待できる.

文献

1) Sung JJ, Chung SC, Ling TK, et al. Antibacterial treatment of gastric ulcers associated with Helicobacterpylori. N Engl J Med 1995; 332: 139-142(ランダム)

2) Axon AT, O’Moráin CA, Bardhan KD, et al. Randomised double blind controlled study of recurrence ofgastric ulcer after treatment for eradication of Helicobacter pylori infection. BMJ 1997; 314: 565-568(ランダム)

3) Seppälä K, Pikkarainen P, Sipponen P, et al. Cure of peptic gastric ulcer associated with eradication ofHelicobacter pylori: Finnish Gastric Ulcer Study Group. Gut 1995; 36: 834-837(ランダム)

4) Bayerdörffer E, Miehlke S, Lehn N, et al. Cure of gastric ulcer disease after cure of Helicobacter pylori infec-tion: German Gastric Ulcer Study. Eur J Gastroenterol Hepatol 1996; 8: 343-349(ランダム)

5) Lazzaroni M, Perego M, Bargiggia S, et al. Helicobacter pylori eradication in the healing and recurrence ofbenign gastric ulcer: a two-year, double-blind, placebo controlled study. Ital J Gastroenterol Hepatol 1997;29: 220-227(ランダム)

6) Meining A, Hochter W, Weingart J, et al. Double-blind trial of omeprazole and amoxicillin in the cure ofHelicobacter pylori infection in gastric ulcer patients: The Ulcer Study Group, Germany. Scand J Gastroen-terol 1998; 33: 49-54(ランダム)

7) Malfertheiner P, Bayerdörffer E, Diete U, et al. The GU-MACH study: the effect of 1-week omeprazoletriple therapy on Helicobacter pylori infection in patients with gastric ulcer. Aliment Pharmacol Ther 1999;13: 703-712(ランダム)

8) Malfertheiner P, Kirchner T, Kist M, et al; BYK Advanced Gastric Ulcer Study Group. Helicobacter pylorieradication and gastric ulcer healing: comparison of three pantoprazole-based triple therapies. AlimentPharmacol Ther 2003; 17: 1125-1135(ランダム)

9) Tulassay Z, Stolte M, Sjölund M, et al. Effect of esomeprazole triple therapy on eradication rates of Heli-cobacter pylori, gastric ulcer healing and prevention of relapse in gastric ulcer patients. Eur J GastroenterolHepatol 2008; 20: 526-536(ランダム)

10) Higuchi K, Fujiwara Y, Tominaga K, et al. Is eradication sufficient to heal gastric ulcers in patients infectedwith Helicobacter pylori? a randomized, controlled, prospective study. Aliment Pharmacol Ther 2003; 17:111-117(ランダム)

11) Terano A, Arakawa T, Sugiyama T, et al. Rebamipide, a gastro-protective and anti-inflammatory drug,promotes gastric ulcer healing following eradication therapy for Helicobacter pylori in a Japanese popula-tion: a randomized, double-blind, placebo-controlled trial. J Gastroenterol 2007; 42: 690-693(ランダム)

12) Hiraishi H, Haruma K, Miwa H, et al. Clinical trial: irsogladine maleate, a mucosal protective drug, accel-erates gastric ulcer healing after treatment for eradication of Helicobacter pylori infection: the results of amulticentre, double-blind, randomized clinical trial (IMPACT study). Aliment Pharmacol Ther 2010; 31:824-833(ランダム)

13) Higuchi K, Watanabe T, Tanigawa T, et al. Sofalcone, a gastroprotective drug, promotes gastric ulcer heal-ing following eradication therapy for Helicobacter pylori: a randomized controlled comparative trial withcimetidine, an H2-receptor antagonist. J Gastroenterol Hepatol 2010; 25 (Suppl 1): S155-S160(ランダム)

14) Song KH, Lee YC, Fan DM, et al. Healing effects of rebamipide and omeprazole in Helicobacter pylori -posi-tive gastric ulcer patients after eradication therapy: a randomized double-blind, multinational, multi-insti-tutional comparative study. Digestion 2011; 84: 221-229(ランダム)

15) Murakami K, Okimoto T, Kodama M, et al. Comparison of the efficacy of irsogladine maleate and famoti-dine for the healing of gastric ulcers after Helicobacter pylori eradication therapy: a randomized, controlled,prospective study. Scand J Gastroenterol 2011; 46: 287-292(ランダム)

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解説

開放性(活動期)十二指腸潰瘍では,H. pylori 除菌例は非除菌例や除菌失敗例に比較して,有意に潰瘍治癒が促進される(図1)1, 2).海外の報告では,酸分泌抑制薬を含まない H. pylori の除菌単独で,有意な潰瘍の治癒促進作用がある 3).また,H. pylori の除菌単独と PPI単独投与の十二指腸潰瘍の治癒率は同等である 4〜9).

Clinical Question 2-4

H. pylori 除菌は十二指腸潰瘍の治癒を促進するか?

CQ 2-4 H. pylori 除菌は十二指腸潰瘍の治癒を促進するか?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● H. pylori 除菌は十二指腸潰瘍の治癒を促進するので,行うよう推奨する.

1(100%) A

2.H. pylori 除菌治療 ― ❶初期治療【十二指腸潰瘍】

図 1 十二指腸潰瘍治癒における H. pylori 除菌と非除菌(メタアナリシス)(文献 1より)

StudyAvsar 1996Bardhan 1997Bayerdörffer 1995Carpintero 1997Chen 1995Figueroa 1996Graham 1992Hentschel 1993Kato 1996Kim 2002Lin 1994Logan 1995Mantzaris 1993Miehlke 1995O'Morain 1996Pinero 1995Porro 1996Pounder 1997Rauws 1990Schwartz 1998Shirotani 1996Spinzi 1994Sung 1994Tomita 2002Unge 1993van Zanten 1999Wang 1993

3/1710/13315/13231/7210/313/536/474/503/272/361/183/512/126/268/783/108/710/561/17

19/1242/183/222/6111/5548/15710/981/20

1501

6/1025/6351/11634/3927/2934/3934/3642/4012/185/1711/1847/626/8

19/2541/8213/2052/664/2216/2111/169/1415/2622/4520/2050/7625/4518/26

1008

3.14.85.46.25.43.24.43.73.22.11.53.22.64.54.73.24.80.81.65.42.53.22.45.46.34.01.5

100.0

0.20[0.09,0.92]0.10[0.10,0.37]0.26[0.15,0.43]0.40[0.37,0.66]0.35[0.21,0.58]0.06[0.02,0.20]0.14[0.06,0.29]0.09[0.04,0.24]0.17[0.05,0.51]0.19[0.04,0.38]0.09[0.01,0.03]0.08[0.03,0.23]0.22[0.06,0.84]0.30[0.15,0.63]0.21[0.10,0.41]0.24[0.08,0.72]0.14[0.07,0.28]0.04[0.00,0.80]0.08[0.01,0.52]0.22[0.13,0.38]0.17[0.04,0.68]0.24[0.08,0.71]0.07[0.02,0.27]0.20[0.12,0.34]0.46[0.35,0.62]0.18[0.10,0.35]0.07[0.01,0.50]

0.20[0.15,0.26]

Relative Risk(Random)95%CI

Weight(%)

Relative Risk(Random)95%CI

Treatmentn/N

Controln/N

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①初期治療【十二指腸潰瘍】

文献

1) Ford AC, Delaney BC, Forman D, et al. Eradication therapy in Helicobacter pylori positive peptic ulcer dis-ease: systematic review and economic analysis. Am J Gastroenterol 2004; 99: 1833-1855(メタ)

2) Treiber G, Lambert JR. The impact of Helicobacter pylori eradication on peptic ulcer healing. Am J Gastroen-terol 1998; 93: 1080-1084(メタ)

3) Lam SK, Ching CK, Lai KC, et al. Does treatment of Helicobacter pylori with antibiotics alone heal duodenalulcer? a randomised double blind placebo controlled study. Gut 1997; 41: 43-48(ランダム)

4) Gisbert JP, Pajares JM. Systematic review and meta-analysis: is 1-week proton pump inhibitor-based tripletherapy sufficient to heal peptic ulcer? Aliment Pharmacol Ther 2005; 21: 795-804(メタ)

5) Ge ZZ, Zhang DZ, Xiao SD, et al. Does eradication of Helicobacter pylori alone heal duodenal ulcers? Ali-ment Pharmacol Ther 2000; 14: 53-58(ランダム)

6) Wong BC, Lam SK, Lai KC, et al. Triple therapy for Helicobacter pylori eradication is more effective thanlong-term maintenance antisecretory treatment in the prevention of recurrence of duodenal ulcer: aprospective long-term follow-up study. Aliment Pharmacol Ther 1999; 13: 303-309(ランダム)

7) Colin R. Duodenal ulcer healing with 1-week eradication triple therapy followed, or not, by anti-secretorytreatment: a multicentre double-blind placebo-controlled trial. Aliment Pharmacol Ther 2002; 16: 1157-1162(ランダム)

8) Hsu CC, Lu SN, Changchien CS. One-week low-dose triple therapy without anti-acid treatment has suffi-cient efficacy on Helicobacter pylori eradication and ulcer healing. Hepatogastroenterology 2003; 50: 1731-1734(ランダム)

9) Tulassay Z, Kryszewski A, Dite P, et al. One week of treatment with esomeprazole-based triple therapyeradicates Helicobacter pylori and heals patients with duodenal ulcer disease. Eur J Gastroenterol Hepatol2001; 13: 1457-1465(ランダム)

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解説

十二指腸潰瘍に対して標準的な 3剤併用の除菌治療を実施する場合に,PPIの前投与は除菌治療を低下させない 1〜3).日本での報告においても同様な結果である 4).酸分泌抑制薬と抗菌薬による 2剤併用の除菌治療では PPIの前投与は除菌率を低下させる 2, 5).

文献

1) Axon AT, O’Moráin CA, Bardhan KD, et al. Randomised double blind controlled study of recurrence ofgastric ulcer after treatment for eradication of Helicobacter pylori infection. BMJ 1997; 314: 565-568(ランダム)

2) Ford AC, Delaney BC, Forman D, et al. Eradication therapy in Helicobacter pylori positive peptic ulcer dis-ease: systematic review and economic analysis. Am J Gastroenterol 2004; 99: 1833-1855(メタ)

3) Janssen MJ, Laheij RJ, de Boer WA, et al. Meta-analysis: the influence of pre-treatment with a proton pumpinhibitor on Helicobacter pylori eradication. Aliment Pharmacol Ther 2005; 21: 341-345(メタ)

4) Inoue M, Okada H, Hori S, et al. Does pretreatment with lansoprazole influence Helicobacter pylori eradica-tion rate and quality of life? Digestion 2010; 81: 218-222(ランダム)

5) Ford A, Delaney B, Forman D, et al. Eradication therapy for peptic ulcer disease in Helicobacter pylori posi-tive patients. Cochrane Database Syst Rev 2004: CD003840(メタ)

Clinical Question 2-5

H. pylori 除菌前の PPI 投与は十二指腸潰瘍の除菌率に影響を与えるか?

CQ 2-5 H. pylori 除菌前の PPI 投与は十二指腸潰瘍の除菌率に影響を与えるか?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● H. pylori 除菌前の PPI 投与は 3 剤併用療法の除菌率を低下させないので,PPI 投与直後に除菌治療を行うことを推奨する.

1(100%) A

2.H. pylori 除菌治療 ― ❶初期治療【十二指腸潰瘍】

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解説

開放性(活動期)十二指腸潰瘍では,H. pylori の除菌単独と PPI単独投与の十二指腸潰瘍の 6週治癒率は同等である(図1)1, 2).さらには,H. pylori の除菌治療後に PPIの追加投与をしても十二指腸潰瘍の治癒率は向上しない 3〜5).したがって,開放性(活動期)十二指腸潰瘍では,H. pylori

除菌治療後の潰瘍治療の追加は必ずしも必要ではない.しかし,H. pylori 除菌に失敗する場合もあるので,H. pylori 除菌治療後には保険診療で認められている追加の潰瘍治療を考慮する.

Clinical Question 2-6

開放性(活動期)十二指腸潰瘍に対して H. pylori 除菌治療後の潰瘍治療の追加は必要か?

CQ 2-6 開放性(活動期)十二指腸潰瘍に対して H. pylori 除菌治療後の潰瘍治療の追加は必要か?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● 開放性(活動期)十二指腸潰瘍では H. pylori 除菌治療後に潰瘍治療の追加をするように提案する.

2(100%) C

2.H. pylori 除菌治療 ― ❶初期治療【十二指腸潰瘍】

図 1 H. pylori 除菌単独と PPI 単独による十二指腸潰瘍治癒率(メタアナリシス)(文献 1より)

0.1 0.2 0.5 1 2 5 10Favours 7days PPI Favours > 7days PPI

Studyor sub-category

57/6433/3823/2341/5032/35202/219

429

58/6731/3529/2944/5331/35195/214

433

18.32 1.26 〔0.44,3.62〕10.32 0.85 〔0.21,3.46〕

Not estinable 19.64 0.93 〔0.34,2.58〕 8.18 1.38 〔0.28,6.66〕43.53 1.16 〔0.58,2.29〕

100.0 1.11 〔0.71,1.74〕

PPI > 7 daysn/N

PPI 7 daysn/N

OR(random)95%Cl

OR(random)95%Cl

Weight%

PPI > 7 daysn/N

Colin 2002Hsu 2003Labenz 1997Marzio 2002Tepes 2001Tulassay 2001

Total(95%Cl)Total events:388(PPI>7days),388(PPI 7days)Test for heterogeneity:Chi2 =0.39,df=4(p=0.98),I2=0%Test for overall effect Z=0.44(p=0.66)

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2.H. pylori 除菌治療

文献

1) Gisbert JP, Pajares JM. Systematic review and meta-analysis: is 1-week proton pump inhibitor-based tripletherapy sufficient to heal peptic ulcer? Aliment Pharmacol Ther 2005; 21: 795-804(メタ)

2) Ge ZZ, Zhang DZ, Xiao SD, et al. Does eradication of Helicobacter pylori alone heal duodenal ulcers? Ali-ment Pharmacol Ther 2000; 14: 53-58(ランダム)

3) Colin R. Duodenal ulcer healing with 1-week eradication triple therapy followed, or not, by anti-secretorytreatment: a multicentre double-blind placebo-controlled trial. Aliment Pharmacol Ther 2002; 16: 1157-1162(ランダム)

4) Hsu CC, Lu SN, Changchien CS. One-week low-dose triple therapy without anti-acid treatment has suffi-cient efficacy on Helicobacter pylori eradication and ulcer healing. Hepatogastroenterology 2003; 50: 1731-1734(ランダム)

5) Tulassay Z, Kryszewski A, Dite P, et al. One week of treatment with esomeprazole-based triple therapyeradicates Helicobacter pylori and heals patients with duodenal ulcer disease. Eur J Gastroenterol Hepatol2001; 13: 1457-1465(ランダム)

消化性潰瘍診療ガイドライン2015(改訂第2版),南江堂,2015

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解説

2009 年に発刊の「消化性潰瘍診療ガイドライン」初版に採用された論文(2007 年まで)以降の論文を対象に,検索式にて見い出されたMEDLINE 190 編,医中誌 95 編からの一次選択論文を吟味し,28 編を選んだ.さらに,検索式外のメタアナリシス論文 4 編を海外ガイドライン(Maastricht Ⅳ)中心に採用した.除外されたものは,一次除菌外,対象が FDのみあるいは,内視鏡がなされていないもの,RCTでない,1群が 30 例以下,潰瘍治癒率だけが対象などの論文であった.しかしながら,消化性潰瘍のみを対象にした論文は少なく,潰瘍だけが対象の論文のみでは,ガイドラインの引用に偏りが生じるおそれがあり,ある程度潰瘍症例が含まれるものを採用候補とした.バイアスリスク評価では二重盲検は少数であった.さらに和文論文に該当はなく,日本からの報告はメタアナリシスに一部が引用されているのにとどまった.日本においては,保険診療において一次除菌は,PPI,アモキシシリン(AMPC),クラリスロマイシン(CAM)を用いることになっている.しかしながら,CAM耐性による除菌率の低下が懸念されている.海外では,シーケンシャル治療に引き続き,4剤療法の有効性が多数報告されている.今回の改訂では,PPI,AMPC,CAMを用いた 3剤療法を引き続き推奨したが,今後,二次除菌レジメンを一次除菌にも用いるのか,あるいは,4剤療法などの新たなレジメンを検討すべき時期である.

Clinical Question 2-7

どのようなレジメンを選択すべきか?

CQ 2-7 どのようなレジメンを選択すべきか?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● 3 剤療法としては,PPI,アモキシシリンおよびクラリスロマイシンの組み合わせで実施することを提案する.

2(100%) A

● 7 日間 3 剤療法に関して高用量の PPI は除菌効果に優れるために実施するよう提案する.

2(100%) A

● 3 剤療法において,オメプラゾール,ランソプラゾール,ラベプラゾール,およびエソメプラゾールの間で除菌率に違いはみられないので,いずれかの PPI を用いるよう提案する.

2(100%) A

● シーケンシャル(連続)治療と 4 剤療法は 3 剤療法に比べ除菌効果に優れるので,実施するよう提案する.

2(100%) A

2.H. pylori 除菌治療 ― ❷レジメン

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2.H. pylori 除菌治療

1)3 剤療法の適切な組み合わせ胃潰瘍における 3剤療法の薬剤の組み合わせの比較では,オメプラゾール(OPZ),アモキシ

シリン(AMPC)およびクラリスロマイシン(CAM)と OPZ,メトロニダゾール(MNZ)およびCAMのレジメン間に除菌率の差がなかった 1).しかしながら,一次除菌に PPI,MNZ,CAM

を用いると除菌失敗によりMNZ,CAMの耐性が誘導されるため,これらを二次除菌に用いることはできない.一方,AMPCは耐性誘導が起こらないため,再度二次除菌に用いることができるので第一選択は PPI,AMPC,および CAMの組み合わせが適している.国内における PPI

の臨床試験はすべて PPI,AMPC,CAMの組み合わせであった 2〜4).十二指腸潰瘍においても PPI,AMPC,および CAMの組み合わせが基本である.OPZ+

AMPC+CAMと OPZ+MNZ+CAM,および OPZ+AMPC+MNZで除菌率は差がないが,MNZ耐性では OPZ+AMPC+MNZの除菌率は低いと報告されている 5〜7).エソメプラゾール

(EPZ)を用いた除菌療法は EPZ+AMPC+CAMと OPZ+AMPC+CAMの除菌率は 90%,88%と同等であった 8).しかしながら,近年の CAM耐性の増加に伴い,一次除菌率の低下が報告されている(J Clin Biochem Nutr 2010; 47: 53-58 a)[検索期間外文献]).欧米でも CAM耐性率の高い地域で CAM 3 剤療法を用いないよう提案がなされている(Gut 2012; 61: 646-664 b)[検索期間外文献]).そのため今回,3剤療法は,弱い推奨に下げられた.

2)3 剤療法における PPI の投与量および投与期間除菌療法に用いる PPIの投与量は,海外と国内で違いがある.PPIの高用量と通常量とを比

較したメタアナリシスでは,高用量と通常量の PPIで,ITT解析で,除菌率は,82%,74%(95%CI 1.01〜1.17)と高用量が有効であった 9).一方,ラベプラゾール(RPZ)20mg,AMPC

1,000mg,CAM 500mg bid 10 日間と RPZ 10mg,AMPC 500mg,CAM 250mg bid 10 日間との対比 10)では,海外通常用量群と半量群(日本の常用量)の除菌率は ITTで 77.6%(95%CI 66.9〜88.3),77.2%(95%CI 66.3〜88.1)であり差がなく副作用は海外通常用量群で有意に高かったと報告されている.そのため,高用量の PPIを用いることを,弱い推奨とした.投与期間に関するメタアナリシスでは AMPCを用いた3剤療法は,7日投与と 10 日間投与は

RR比 1.05(95%CI 1.01〜1.10)であり,7日間と 14 日間の対比では 1.07(95%CI 1.02〜1.12)であった.AMPC 3 剤療法において投与期間の延長による除菌率の向上は有意であるが,差は小さい.消化性潰瘍(PUD)と FDに分けると PUDでは差が認められない(Ann Intern Med 2007;147: 553-562 c)[検索期間外文献]).AMPCの 1日の投与回数は,薬物動態的には 4回投与が優れると考えられるが,2回投与と 4回投与の間で除菌率と副作用に差がなかった 11).

3)PPI の比較3 剤療法に用いる PPIは RPZと他の PPI(LPZ,OPZ)で差がない 12).OPZ,LPZ,RPZの除

菌率は同等と報告されている 13).最近の PPIを比較検討したメタアナリシスの結果では,EPZ

と,第一世代の PPI[OPZ,LPZ,pantoprazole(PPZ:国内未発売)]の除菌率は 82.3%,77.6%でありオッズ比は 1.32(1.01〜1.73)であった(Aliment Pharmacol Ther 2012; 36: 414-425 d)[検索期間外文献]).RPZと第一世代の除菌率は,80.5%,76.2%,オッズ比は 1.21(1.02〜1.42)であった.海外と国内の PPIの用量は異なるが,サブ解析において日本の用量では EPZ,RPZとの第一世代とは差がなかった.薬剤肝代謝酵素 CYP2C19 別の除菌率は,第二世代 PPIが第一世代 PPIの比べ,extensive metabolizer(EM)のオッズ比は 1.37(1.02〜1.84)であった.OPZと

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②レジメン

RPZとの間で EMでは除菌率に有意差があったが 14),EPZ,RPZ,および PPZの間では差がない 15, 16).

4)シーケンシャル治療(保険適用外)と 3 剤療法の比較シーケンシャル治療と 3剤療法の比較では,2編のメタアナリシスが報告されている.10 編

の RCTの結果,シーケンシャル治療と標準 3剤療法の除菌率は,93.4%(95%CI 91.3〜95.5),76.9%(95%CI 71.0〜82.8)であり,シーケンシャル治療が優れる.しかしながら,二重盲検は 1編だけであり,ほとんどの試験はイタリアからの報告である 17).さらにシーケンシャル治療と 3剤療法 7 日,10 日の比較では,シーケンシャル治療は 3 剤療法 7 日に対しては,RR 1.23(95%CI 1.19〜1.27),10 日間に対して RR 1.16(95%CI 1.10〜1.23)と優れていた(図1)18).イタリア以外の報告としては,韓国から,RPZ 20mg,AMPC 1,000mg,CAM 500mg bid 7 日間 3剤療法と RPZ 20mg,AMPC 1,000mg 5 日間に RPZ 20mg,CAM 500mg,MTZ 500mg bid 5日間のシーケンシャル治療との対比は,ITTで 62.2%(95%CI 54.8〜69.6),77.8%(95%CI 71.4〜84.2)であり,シーケンシャル治療が優れていた 19).PPZ 40mg,AMPC 1,000mg bid 5 日間に続く PPZ 40mg,CAM 500mg,MTZ 500mg bid 5 日間シーケンシャル治療と,PPZ 40mg,APMC 1,000mg,CAM 500mg bid 14 日間の対比では,ITTで 85.9%と 75%,とシーケンシャル治療が優れていた 20).一方,RPZ 20mg,AMPC 1,000mg,CAM 500mg bidの 7日,10 日,14 日と RPZ 20mg,AMPC 1,000mg bid 5 日間に次ぐ RPZ 20mg,CAM 500mg,チニダゾール500mg bid 5 日間のシーケンシャル治療の対比では,3剤療法 7,10,14 日とシーケンシャル治療の除菌率は,ITTで 70.4%,74.7%,80.%,75.6%であり,3剤療法とシーケンシャル治療

図 1 シーケンシャル治療と 3 剤療法(7 日間)の除菌率の比較(文献 18より)

7日間3剤療法が有用

シーケンシャル治療と7日間3剤療法の除菌率Study ID

RR(95%Cl)

Weigth(%)

0.5 1 2シーケンシャル治療が有用

Zullo(2003)

DeFrancesco(2004)

Francavilla(2005)

Zullo(2005)

Scaccianoce(2006)

Focareta(2002)

Lerro(2006)

Focareta(2002)

Kalach(2008)

Overall(l.squared=0.0%,p=0.755)

1.25(1.18,1.32) 44.27

1.33(1.18,1.50) 9.42

1.25(1.03,1.53) 3.24

1.18(1.05,1.32) 8.19

1.25(1.08,1.44) 6.15

1.19(1.07,1.32) 8.62

1.15(0.92,1.44) 2.29

1.18(1.09,1.27) 16.56

1.06(0.75,1.49) 1.27

1.23(1.19,1.27) 100.00

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2.H. pylori 除菌治療

との間で除菌率に差がないとも報告されている 21).

5)シーケンシャル治療と 4 剤療法(保険適用外)の比較シーケンシャル治療(LPZ 30mg,AMPC 1,000mg,bid 5 日間に LPZ 30mg,CAM 500mg,

MTZ 500mg bid,5 日間)と 4 剤療法(LPZ 30mg,AMPC 1,000mg,CAM 500mg,MTZ

500mg bid 10 日間)の比較の除菌率は,ITT解析で 80.0%,88.1%と 4剤療法が優れる 22).シーケンシャル治療と 4剤療法は,同等に優れると考えられるが,CAM耐性率の高い地域では,4剤療法がより有効と推察される.シーケンシャル治療と 4剤療法,および 3剤療法を比較したメタアナリシスでは非ビスマス 4剤療法の除菌率は,平均 90%(95%CI 86〜93%)であり,シーケンシャル治療と同等であるが,3剤療法よりは効果的である.その投与期間は 10 日間が適切である(Aliment Pharimacol Ther 2011; 34: 604-617 e)[検索期間外文献]).4剤療法と 3剤療法の除菌率を比較したメタアナリシスでは,5報の結果から,4剤療法は 3剤療法に比べ,ITTでオッズ比 2.89(95%CI 1.73〜4.73)と優れていた.除菌率は ITTで 89.7%であった(Helicobacter 2009;14: 109-118 f)[検索期間外文献]).この 2報のメタアナリシスは,いずれも検索式外であった.国内でも,シーケンシャル治療と 4剤療法の有効性のさらなる対比が必要である.最近,カリウムイオン競合型酸分泌抑制薬(potassium-competitive acid blocker:P-CAB)で

ある vonoprazanが上梓され,CAM耐性菌に対しても高い除菌率であると報告されている(Helicobacter 2014; 19 (Suppl 1): 79 g)[検索期間外文献]).

文献

1) Malfertheiner P, Bayerdörffer E, Diete U, et al. The GU-MACH study: the effect of 1-week omeprazoletriple therapy on Helicobacter pylori infection in patients with gastric ulcer. Aliment Pharmacol Ther 1999;13: 703-712(ランダム)

2) Asaka M, Sugiyama T, Kato M, et al. A multicenter, double-blind study on triple therapy with lansopra-zole, amoxicillin and clarithromycin for eradication of Helicobacter pylori in Japanese peptic ulcer patients.Helicobacter 2001; 6: 254-261(ランダム)

3) Kuwayama H, Asaka K, Sugiyama T, et al. Rabeprazole-based eradication therapy for Helicobacter pylori: alarge-scale study in Japan. Aliment Pharmacol Ther 2007; 25: 1105-1113(ランダム)

4) Higuchi K, Maekawa T, Nakagawa K, et al. Efficacy and safety of Helicobacter pylori eradication therapywith omeprazole, amoxicillin and high- and low-dose clarithromycin in Japanese patients a randomized,double-blind, multicentre study. Clin Drug Invest 2006; 26: 403-414(ランダム)

5) Katelaris PH, Adamthwaite D, Midolo P, et al. Randomized trial of omeprazole and metronidazole withamoxycillin or clarithromycin for Helicobacter pylori eradication, in a region of high primary metronidazoleresistance: the HERO study. Aliment Pharmacol Ther 2000; 14: 751-758(ランダム)

6) Fock KM, Chelvam P, Lim SG, et al. Triple therapy in the eradication of Helicobacter pylori in patients withduodenal ulcer disease: results of a multicentre study in South-East Asia. Aliment Pharmacol Ther 2000;14: 225-231(ランダム)

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8) Veldhuyzen Van Zanten S, Lauritsen K, et al. One-week triple therapy with esomeprazole provides effec-tive eradication of Helicobacter pylori in duodenal ulcer disease. Aliment Pharmacol Ther 2000; 14: 1605-1611(ランダム)

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②レジメン

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12) Gisbert JP, Khorrami S, Calvet X, et al. Systematic review: rabeprazole-based therapies in Helicobacter pylorieradication. Aliment Pharmacol Ther 2003; 17: 751-764(メタ)

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18) Tong JL, Ran ZH, Shen J, et al. Sequential therapy vs. standard triple therapies for Helicobacter pylori infec-tion: a meta-analysis. J Clinical Pharm Ther 2009; 34: 41-53(ランダム)

19) Park HG, Jung MK, Jung JT, et al. Randomised clinical trial: a comparative study of 10-day sequential ther-apy with 7-day standard triple therapy for Helicobacter pylori infection in naive patients. Aliment Pharma-col Ther 2012; 35: 56-65(ランダム)

20) Kim YS, Kim SJ, Yoon JH, et al. Randomised clinical trial: the efficacy of a 10-day sequential therapy vs. a14-day standard proton pump inhibitor-based triple therapy for Helicobacter pylori in Korea. Aliment Phar-macol Ther 2011; 34: 1098-1105(ランダム)

21) Choi HS, Chun HJ, Park SH, et al. Comparison of sequential and 7-, 10-, 14-d triple therapy for Helicobacterpylori infection. World J Gastroenterol 2012; 18: 2377-2382(ランダム)

22) Huang YK, Wu MC, Wang SS, et al. Lansoprazole-based sequential and concomitant therapy for the first-line Helicobacter pylori eradication. J Dig Dis 2012; 13: 232-238(ランダム)

【検索期間外文献】a) Sasaki M, Ogasawara N, Utsumi K, et al. Changes in 12-year first-line eradication rate of Helicobacter pylori

based on triple therapy with proton pump inhibitor, amoxicillin, clarithromycin. J Clin Biochem Nutr2010; 47: 53-58(横断)

b) Malfertheiner P, Megraud F, O’Morain CA, et al. Management of Helicobacter pylori infection: the Maas-tricht IV/Florence Consensus Report. Gut 2012; 61: 646-664(ガイドライン)

c) Fuccio L, Minaridi ME, Zagari RM, et al. Meta-analysis: duration of first-line proton-pump inhibitor-basedtriply therapy for Helibcobacter pylori eradication. Ann Intern Med 2007; 147: 553-562(メタ)

d) McNicoll AG, Linares PM, Nyssen OP, et al. Meta-analysis: esopeprazole or rabeprazole vs. first-genera-tion pump inhibitors in the treatment of Helicobacter pylori infection. Aliment Pharmacol Ther 2012; 36: 414-425(メタ)

e) Gisbert JP, Calvet X. Review article: non-bisumuth quadruple (Concomitant) therapy for eradication ofHelicobacter pylori. Aliment Pharmacol Ther 2011; 34: 604-617(メタ)

f) Essa AS, Kramaer JR, Graham DY, et al. Meta-analysis: Four-drug, three-antibiotic, non-bismuth contain-ing “concomitant therapy” versus triple therapy for Helicobacter pylori eradication. Helicobacter 2009; 14:109-118(メタ)

g) Murakami K, Sakurai Y, Shino M, et al. A newly developed pottasium-competitive acid blocker, vono-prazan vs. lansoprazole in first-line triple therapy with amoxicillin and clarithromycin for H. pylori eradi-cation: phase 3, double blind study. Helicobacter 2014; 19 (Suppl 1): 79

消化性潰瘍診療ガイドライン2015(改訂第2版),南江堂,2015

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解説

「消化性潰瘍診療ガイドライン」初版以降,メタアナリシスが 2編報告されている.1編 1)は,10 日間の levofloxacin-based triple therapyが,7日間の bismuth-based triple therapyより除菌率が高いことを示している(OR 4.79,95%CI 2.95〜7.79,p<0.00001).levofloxacin-based

triple therapyは,bismuth-based triple therapyより副作用が少なかった(OR 0.41,95%CI 0.27〜0.61,p<0.0001).もう 1編 2)は,モキシフロキサシン 3剤療法群が,4剤療法群より除菌率が高いことを示している(74.9% vs. 61.4%,OR 1.89,95%CI 1.38〜2.58,p<0.0001).副作用頻度と服薬中断率は,モキシフロキサシン群のほうが 4剤療法群より有意に低かった(副作用:10.1vs. 27.8%,OR 0.27,95%CI 0.18〜0.41,p<0.00001,中断率:1.4 vs. 8.2%,OR 0.18,95%CI

0.08〜0.40,p<0.0001).このように,ニューキノロンを用いた 3剤療法が有効であることが示されている.他に RCTでの検討が報告されている 3〜13).ただし,レボフロキサシンとモキシフロキサシンは,日本では H. pylori 除菌療法の薬事承認が

ない.また,日本でレボフロキサシンの一次耐性率は 15%と高く 14),レボフロキサシン耐性菌感染例に levofloxacin-based triple therapyの除菌率は低いこと(J Gastroenterol 2013; 48: 1128-1135 a)[検索期間外文献])より,本除菌法は日本では勧められない.「消化性潰瘍診療ガイドライン」初版で採用された,日本で行われている二次除菌法,PPI/AMPC/MNZ 15〜18)に関する論文は,その後は少ない.R(ラベプラゾール)AMが,RAMC

(CAM)と差がなかったという報告がある 7).PPI/AMの除菌率が明らかに低下しているという報告もないため,日本ではこの除菌法が勧められる.

Clinical Question 2-8

二次除菌治療はどのようなレジメンを選択すべきか?

CQ 2-8 二次除菌治療はどのようなレジメンを選択すべきか?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● モキシフロキサシンを含む 3 剤療法を行うよう提案する. 2(100%) A

● 日本では,PPI,アモキシシリン,メトロニダゾールを用いた 3 剤療法を行うよう推奨する.

1(100%) A

2.H. pylori 除菌治療 ― ❸二次除菌

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③二次除菌

文献

1) Li Y, Huang X, Yao L, et al. Advantages of Moxifloxacin and Levofloxacin-based triple therapy for second-line treatments of persistent Helicobacter pylori infection: a meta analysis. Wien Klin Wochenschr 2010; 122;413-422(メタ)

2) Wu C, Chen X, Liu J, et al. Moxifloxacin-containing triple therapy versus bismuth-containing quadrupletherapy for second-line treatment of Helicobacter pylori infection: a meta-analysis. Helicobacter 2011; 16:131-138(メタ)

3) Bago J, Pevec B, Tomic M, et al. Second-line treatment for Helicobacter pylori infection based on moxi-floxacin triple therapy: a randomized controlled trial. Wien Klin Wochenschr 2009; 121: 47-52(ランダム)

4) Yoon H, Kim N, Kim JY, et al. Effects of multistrain probiotic-containing yogurt on second-line triple ther-apy for Helicobacter pylori infection. J Gastroenterol Hepatol 2011; 26: 44-48(ランダム)

5) Kuo CH, Hu HM, Kuo FC, et al. Efficacy of levofloxacin-based rescue therapy for Helicobacter pylori infec-tion after standard triple therapy: a randomized controlled trial. J Antimicrob Chemother 2009; 63: 1017-1024(ランダム)

6) Kuo CH, Wang SS, Hsu WH, et al. Rabeprazole can overcome the impact of CYP2C19 polymorphism onquadruple therapy. Helicobacter 2010; 15: 265-272(ランダム)

7) Ueki N, Miyake K, Kusunoki M, et al. Impact of quadruple regimen of clarithromycin added to metron-idazole-containing triple therapy against Helicobacter pylori infection following clarithromycin-containingtriple-therapy failure. Helicobacter 2009; 14: 9-19(ランダム)

8) Wu DC, Hsu PI, Tseng HH, et al. Helicobacter pylori infection: a randomized, controlled study comparing 2rescue therapies after failure of standard triple therapies. 2011; 90: 180-185(ランダム)

9) Chuah SK, Hsu PI, Chang KC, et al. Randomized comparison of two non-bismuth-containing second-linerescue therapies for Helicobacter pylori. Helicobacter 2012; 17: 216-223(ランダム)

10) Gu LY, Lin WW, Lu H, et al. Quadruple therapy with medications containing either rufloxacin or furazoli-done as a rescue regimen in the treatment of Helicobacter pylori-infected dyspepsia patients: a randomizedpilot study. Helicobacter 2011; 16: 284-288(ランダム)

11) Lee BH, Kim N, Hwang TJ, et al. Bismuth-containing quadruple therapy as second-line treatment for Heli-cobacter pylori infection: effect of treatment duration and antibiotic resistance on the eradication rate inKorea. Helicobacter 2010; 15: 38-45(ランダム)

12) Sanches B, Coelho L, Moretzsohn L, et al. Failure of Helicobacter pylori treatment after regimes containingclarithromycin: new practical therapeutic options. Helicobacter 2008; 13: 572-576(ランダム)

13) Hu TH, Chuah SK, Hsu PI, et al. Randomized comparison of two nonbismuth-containing rescue therapiesfor Helicobacter pylori. Am J Med Sci 2011; 342: 177-181(ランダム)

14) Miyachi H, Miki I, Aoyama N, et al. Primary levofloxacin resistance and gyrA/B mutations among Heli-cobacter pylori in Japan. Helicobacter 2006; 11: 243-249(横断)

15) Miwa H, Nagahara A, Kurosawa A, et al. Is antimicrobial susceptibility testing necessary before second-line treatment for Helicobacter pylori infection? Aliment Pharmacol Ther 2003; 17: 1545-1551(ランダム)

16) Matsuhisa T, Kawai T, Masaoka T, et al. Efficacy of metronidazole as second-line drug for the treatment ofHelicobacter pylori Infection in the Japanese population: a multicenter study in the Tokyo MetropolitanArea. Helicobacter 2006; 11: 152-158(ランダム)

17) Matsumoto Y, Miki I, Aoyama N, et al. Levofloxacin- versus metronidazole-based rescue therapy for H.pylori infection in Japan. Dig Liver Dis 2005; 37: 821-825(ランダム)

18) Shirai N, Sugimoto M, Kodaira C, et al. Dual therapy with high doses of rabeprazole and amoxicillin ver-sus triple therapy with rabeprazole, amoxicillin, and metronidazole as a rescue regimen for Helicobacterpylori infection after the standard triple therapy. Eur J Clin Pharmacol 2007; 63: 743-749(ランダム)

【検索期間外文献】a) Murakami K, Furuta T, Ando T, et al; Japan GAST Study Group. Multi-center randomized controlled

study to establish the standard third-line regimen for Helicobacter pylori eradication in Japan. J Gastroen-terol 2013; 48: 1128-1135(ランダム)

消化性潰瘍診療ガイドライン2015(改訂第2版),南江堂,2015

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解説

2012 年までの文献検索で,三次除菌の RCTの論文はなかった.1 armの除菌効果の報告にとどまっていた.このため,推奨できるレジメンはない.ただ 1編 1),日本の三次除菌に近い状況での RCTがあった.メトロニダゾールとクラリスロマイシンの両方に耐性菌感染例で,1回以上の除菌不成功例

を対象としている.うち,三次除菌治療は,ERA群(エソメプラゾール 20mg,リファブチン150mgおよびアモキシシリン 1g,each given b.d. for 7 days)で 35 例(52.2%),OA群(オメプラゾール 40mg およびアモキシシリン 1,000mg,each given t.d.s. for 14 days)で 31 例(45.6%).対象は,ERA群 73 例,OA群 72 例.ITT除菌率は,ERA群で 74%(95%CI 62.4〜83.6),high-dose OA群で 70%(95%CI 57.5〜79.7)(p=0.58)であった.全例が三次除菌ではないが,対象の 50%がそうであり,メトロニダゾールとクラリスロマイシンの両方の耐性菌感染例で,日本の三次除菌に近い状況であると考えられ,参考にはなる.しかし,除菌率は不十分である.なお,2013 年に日本の RCTが報告されている(J Gastroenterol 2013; 48: 1128-1135 a)[検索期

間外文献]).シタフロキサシンを用いたレジメンの ITT除菌率が 70.0%であった.その後,日本で第 2の RCTが行われている(2014 年 10 月エントリー終了).

文献

1) Miehlke S, Hansky K, Schneider-Brachert W, et al. Randomized trial of rifabutin-based triple therapy andhigh-dose dual therapy for rescue treatment of Helicobacter pylori resistant to both metronidazole and clar-ithromycin. Aliment Pharmacol Ther 2006; 24: 395-403(ランダム)

【検索期間外文献】a) Murakami K, Furuta T, Ando T, et al; Japan GAST Study Group. Multi-center randomized controlled

study to establish the standard third-line regimen for Helicobacter pylori eradication in Japan. J Gastroen-terol 2013; 48: 1128-1135(ランダム)

Clinical Question 2-9

三次除菌治療はどのようなレジメンを選択すべきか?

2.H. pylori 除菌治療 ― ❹三次除菌

CQ 2-9 三次除菌治療はどのようなレジメンを選択すべきか?

ステートメント

● 推奨できるものはない.

消化性潰瘍診療ガイドライン2015(改訂第2版),南江堂,2015

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解説

1994 年のNIHコンセンサス会議では,すべての H. pylori 陽性の消化性潰瘍は,初発・再発を問わず,除菌すべきであると結論された 1).しかし,欧米では消化性潰瘍のなかでも十二指腸潰瘍の占める比率が高く,十二指腸潰瘍の除菌による再発抑制効果は多くのエビデンスが蓄積されている 2〜7).しかし,除菌による胃潰瘍再発抑制効果は疑問視された時期もあった 8).その後,海外や日本での多くの報告では H. pylori の除菌に成功すると胃潰瘍の再発は明らかに

抑制されるとの報告が相次ぎ,これらの結果は従来の酸分泌抑制薬を用いる維持療法よりも優れた成績である.胃潰瘍症例でも十二指腸潰瘍と同様に H. pylori 除菌は潰瘍再発を予防することが明らかである 9〜16).Hulstらは 45 例の胃潰瘍症例に対して除菌治療を行い,平均 2.5 年,最長 9.8 年の長期に及ぶ

経過観察の結果から,十二指腸潰瘍と同様に除菌成功群からの胃潰瘍再発が皆無であったことを報告した 16).最近報告された世界における 52 件の臨床試験のメタアナリシスによると,胃潰瘍も十二指腸潰瘍と同様に除菌は再発抑制に効果的であるとされている 17).日本でも,除菌治療による消化性潰瘍の再発抑制効果が確認されている 18).LPZ/AMPC/CAM

3 剤併用治療 1年後の胃潰瘍,十二指腸潰瘍の累積再発率は,除菌成功群ではそれぞれ 11%,6%であるのに対して,除菌治療不成功群では 65%,85%と有意に高い再発率を示した.また,最近報告された日本での 4,000 例を超える多施設共同研究では 19),除菌後の胃潰瘍・十二指腸潰瘍の再発率は 1〜2%と非常に低率であることが示されている(図1).したがって,活動性出血がなく,かつ非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)使用との関連のない

胃・十二指腸潰瘍症例では,H. pylori の感染診断を行い,H. pylori 陽性症例に対しては除菌治療を行うべきである.

Clinical Question 2-10

H. pylori 除菌療法は潰瘍再発を抑制するか?

CQ 2-10 H. pylori 除菌療法は潰瘍再発を抑制するか?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● 消化性潰瘍の再発予防には,H. pylori 除菌が有効であるため,行うことを推奨する.

1(100%) A

2.H. pylori 除菌治療 ― ❺再発防止

消化性潰瘍診療ガイドライン2015(改訂第2版),南江堂,2015

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2.H. pylori 除菌治療

文献

1) NIH consensus Development Panel Helicobacter pylori in Peptic Ulcer Disease. Helicobacter pylori in pepticulcer disease. JAMA 1994; 272: 65-69(メタ)

2) Fiocca R, Solcia E, Santoro B. Duodenal ulcer relapse after eradication of Helicobacter pylori. Lancet 1991;337: 1614(ランダム)

3) Sobhani I, Chastang C, De Korwin JD, et al. Antibiotic versus maintenance therapy in the prevention ofduodenal ulcer recurrence: results of a multicentric double-blind randomized trial. Gastroenterol Clin Biol1995; 19: 252-258(ランダム)

4) Lam SK, Ching CK, Lai KC, et al. Does treatment of Helicobacter pylori with antibiotics alone heal duodenalulcer? a randomised double blind placebo controlled study. Gut 1997; 41: 43-48(ランダム)

5) Zanten SJ, Bradette M, Farley A, et al; The DU-MACH study. eradication of Helicobacter pylori and ulcerhealing in patients with acute duodenal ulcer using omeprazole based triple therapy. Aliment PharmacolTher 1999; 13: 289-295(ランダム)

6) Wong BC, Lam SK, Lai KC, et al. Triple therapy for Helicobacter pylori eradication is more effective thanlong-term maintenance antisecretory treatment in the prevention of recurrence of duodenal ulcer: aprospective long-term follow-up study. Aliment Pharmacol Ther 1999; 13: 303-309(ランダム)

7) Ng EK, Lam YH, Sung JJ, et al. Eradication of Helicobacter pylori prevents recurrence of ulcer after simpleclosure of duodenal ulcer perforation: randomized controlled trial. Ann Surg 2000; 231: 153-158(ランダム)

8) Bayerdörffer E, Miehlke S, Lehn N, et al. Cure of gastric ulcer disease after cure of Helicobacter pylori infec-tion: German Gastric Ulcer Study. Eur J Gastroenterol Hepatol 1996; 8: 343-349(ランダム)

9) Fukuda Y, Yamamoto I, Okui M, et al. Combination therapy with a proton pump inhibitor for Helicobacterpylori-infected gastric ulcer patients. J Clin Gastroenterol 1995; 20 (Suppl 2): S132-S135(非ランダム)

図 1 H. pylori 除菌後陰性潰瘍の累積非再発率GU:胃潰瘍,DU:十二指腸潰瘍,G-DU:胃・十二指腸潰瘍

(文献 19より)

0 6 12 18 24 30 36 42 48(月)

除菌後経過

(%)

95

90

0

潰瘍累積非再発率

潰瘍年率再発率 1.9%

GU 2.6%>DU 1.6%十二指腸潰瘍(n=2,208)

胃・十二指腸潰瘍(n=477)

胃潰瘍(n=2,255)

93.8%93.7%

90.7%

GU vs DU

logrank test p=0.0024 p=0.0007*** p=0.9183 p=0.0365*G.wilcoxon test p=0.0045 p=0.0014** p=0.9630 p=0.0384*

GU vs G-DU DU vs G-DU

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⑤再発防止

10) Lazzaroni M, Perego M, Bargiggia S, et al. Helicobacter pylori eradication in the healing and recurrence ofbenign gastric ulcer: a two-year, double-blind, placebo controlled study. Ital J Gastroenterol Hepatol 1997;29: 220-227(ランダム)

11) Axon AT, O’Moráin CA, Bardhan KD, et al. Randomised double blind controlled study of recurrence ofgastric ulcer after treatment for eradication of Helicobacter pylori infection. BMJ 1997; 314: 565-568(ランダム)

12) Malfertheiner P, Bayerdörffer E, Diete U, et al. The GU-MACH study: the effect of 1-week omeprazoletriple therapy on Helicobacter pylori infection in patients with gastric ulcer. Aliment Pharmacol Ther 1999;13: 703-712(ランダム)

13) Seppälä K, Pikkarainen P, Sipponen P, et al. Cure of peptic gastric ulcer associated with eradication ofHelicobacter pylori: Finnish Gastric Ulcer Study Group. Gut 1995; 36: 834-837(ランダム)

14) Graham DY, Lew GM, Klein PD, et al. Effect of treatment of Helicobacter pylori infection on the long-termrecurrence of gastric or duodenal ulcer: a randomized, controlled study. Ann Intern Med 1992; 116: 705-708(ランダム)

15) Kim N, Oh JH, Lee CG, et al. Effect of eradication of Helicobacter pylori on the benign gastric ulcer recur-rence: a 24month follow-up study. Korean J Intern Med 1999; 14 (2): 9-14(ランダム)

16) Van der Hulst RW, Rauws EA, Koycu B, et al. Prevention of ulcer recurrence after eradication of Helicobac-ter pylori: a prospective long-term follow-up study. Gastroenterology 1997; 113: 1082-1086(非ランダム)

17) Ford AC, Delaney BC, Forman D, et al. Eradication therapy in Helicobacter pylori positive peptic ulcer dis-ease: systematic review and economic analysis. Am J Gastroenterol 2004; 99: 1833-1855(メタ)

18) Asaka M, Kato M, Sugiyama T, et al. Follow-up survey of a large-scale multicenter, double -blind study oftriple therapy with lansoprazole, amoxicillin, and clarithromycin for eradication of Helicobacter pylori inJapanese peptic ulcer patients. J Gastroenterol 2003; 38: 339-347(ランダム)

19) Miwa H, Sakaki N, Sugano K, et al. Recurrent peptic ulcers in patients following successful Helicobacterpylori eradication: a multicenter study of 4940 patients. Helicobacter 2004; 9: 9-16(非ランダム)

消化性潰瘍診療ガイドライン2015(改訂第2版),南江堂,2015

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解説

海外では,除菌後の潰瘍再発予防を目的とした抗潰瘍薬投与は必要ないというのがほぼコンセンサスとなっている 1, 2).前述のように,日本においては 4,000 例を超える多施設共同研究によると,除菌成功後の消化性潰瘍の再発率は 1〜2%と極めて低いことが報告 3)されている.一方では,除菌群では非除菌群と比べて有意に潰瘍の再発を抑制するものの,除菌群においても 1年間で 10%前後の再発が生じることも報告 4)されている.

除菌後には,壁細胞の回復による酸分泌能の上昇が起こることが明らかとなっており,特に萎縮の強い日本人では相対的に除菌後の胃酸分泌増加が報告 5)されており,これが潰瘍再発の原因と考えられる.除菌治療後にH2RAの抗潰瘍療法を 4週間行ったところ,有意に再発が抑制され,除菌治療後早期の潰瘍再発の予防にはH2RAの投与が有用であるとの報告もある 6).さらに,潰瘍再発には胃粘膜における炎症も関与しているといわれている.除菌後に好中球の浸潤は速やかに消失するものの,感染に伴う生体側の反応は持続し,組織学的に炎症細胞浸潤が消失するには 6ヵ月から 1年を要するとされている 7).最近,日本人の除菌療法後の胃・十二指腸潰瘍に対する抗潰瘍療法の検討が報告された 8).胃潰瘍に関しては除菌治療後に続いて 7週間の PPIまたは防御因子増強薬の比較がなされ,PPI群が有意に高い潰瘍治癒率を示した.また,十二指腸潰瘍に関しては,除菌治療のみの群とそれに続いて 5週間の PPI投与との比較が行われたが,潰瘍治癒率に有意差は認められなかった.

このように,除菌成功後の潰瘍再発は,除菌後の組織学的胃炎が終息する前に酸分泌が増加・回復し,そこに薬物,喫煙,ストレスなどの外的要因が加わり,発生してくるものと思われる.しかしその頻度は,前述のように極めて低い.除菌治療直後には除菌の成功,不成功は不明であり,除菌失敗例に関しては,除菌判定までの間に潰瘍が再発してくる可能性があるため抗潰瘍療法が望ましい.しかし,除菌成功例においては,日本では明確なエビデンスはないが,医療経済的な考慮を含めて,長期間の抗潰瘍療法(いわゆる維持療法)は必要ないと考えられる.

Clinical Question 2-11

除菌成功例に潰瘍再発予防治療は必要か?

CQ 2-11 除菌成功例に潰瘍再発予防治療は必要か?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● 除菌後の潰瘍再発予防に抗潰瘍薬投与の必要はないので,行わないことを推奨する.

1(100%) B

2.H. pylori 除菌治療 ― ❺再発防止

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⑤再発防止

文献

1) Van der Hulst RW, Rauws EA, Koycu B, et al. Prevention of ulcer recurrence after eradication of Helicobac-ter pylori: a prospective long-term follow-up study. Gastroenterology 1997; 113: 1082-1086(ランダム)

2) Malfertheiner P, Megraud F, O’Morain C, et al. Current concepts in the management of Helicobacter pyloriinfection: the Maastricht 2000 Consensus report. Aliment Pharmacol Ther 2002; 16: 167-180(ランダム)

3) Miwa H, Sakaki N, Sugano K, et al. Recurrent peptic ulcers in patients following successful Helicobacterpylori eradication: a multicenter study of 4940 patients. Helicobacter 2004; 9: 9-16(非ランダム)

4) Asaka M, Kato M, Sugiyama T, et al. Follow-up survey of a large-scale Multicenter, double -blind study oftriple therapy with lansoprazole, amoxicillin, and clarithromycin for eradication of Helicobacter pylori inJapanese peptic ulcer patients. J Gastroenterol 2003; 38: 339-347(ランダム)

5) Iijima K, Ohara S, Sekine H, et al. Changes in gastric acid secretion assayed by endoscopic gastrin testbefore and after Helicobacter pylori eradication. Gut 2000; 46: 20-26(ランダム)

6) Murakami K, Sato R, Okimoto T, et al. Maintenance therapy with H2-receptor antagonist until assessmentof Helicobacter pylori eradication can reduce recurrence of peptic ulcer after successful eradication of theorganism: prospective randomized controlled trial. J Gastroenterol Hepatol 2006; 21: 1048-1053(ランダム)

7) Genta RM, Lew GM, Graham DY. Changes in the gastric mucosa following eradication of Helicobacterpylori. Mod Pathol 1993; 6: 281-289(非ランダム)

8) Takeuchi T, Umegaki E, Takeuchi N, et al; OMC G&H research group. Strategies for peptic ulcer healingafter 1 week proton pump inhibitor-based triple Helicobacter pylori eradication therapy in Japanesepatients: differences of gastric ulcers and duodenal ulcers. J Clin Biochem Nutr 2012; 51: 189-195(ランダム)

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解説

除菌後の再陽性化率に関して様々な国からの報告があり,2005 年のレビュー 1)で,先進国では再陽性率は年率 3%程度と報告されていた.最近のメタアナリシスでは 1年間フォローでの除菌後再感染率は先進国で 1.45%,発展途上国では 12.00%と報告されている 2).また,除菌成功後の国際的な再感染率は 2.82%という報告もある(Aliment Pharmacol Ther 2013; 37: 963-968 a)

[検索期間外文献]).欧米の報告では年間 0.5〜2.0%3〜5)であり,アジアにおいては韓国で 12.8%6),9.1%7),中国で

1.08%8),そして日本での再陽性化率に関して 2.0%9),1.2%10),0.22%11)との報告があり,除菌後の経過が長くなるとともに再感染率の低下がうかがわれる.

除菌成功後に再度 H. pylori が再陽性となる原因として再燃(除菌判定時の偽陰性)もある.再感染が,除菌治療により H. pylori が胃粘膜よりいなくなり,その後体外より新たな菌が感染し再陽性となることを意味するのに対し,再燃は除菌判定時に H. pylori が胃粘膜に残っているにもかかわらず陰性と判定され,時間が経ってから菌数が増え再陽性となることを意味する.以前は両者を区別せず高い再感染率が報告されていたが,最近は除菌判定の精度が上がったため再出現例は少なくなったと考えられる.PCR-RFLP法による再陽性化前後の菌の異同を調べた報告 9)

では,除菌後 1年以降に再出現した 10 例のすべてにおいて除菌前と異なる菌を認めており,異なる菌株の再感染の可能性が強いと考えられている.再感染しやすい患者の背景に関しては今のところ不明である.以上より,現行の除菌法と除菌判定法において,除菌後に再陽性化した症例はそのほとんど

が再感染であり,再陽性化率は年 0〜2%程度と思われる.

Clinical Question 2-12

除菌後の H. pylori の再陽性化は?

2.H. pylori 除菌治療 ― ❺再発防止

CQ 2-12 除菌後の H. pylori の再陽性化は?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● 除菌判定が正確であれば,除菌後の再陽性化率(再感染率)は 1%以下である. なし A

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⑤再発防止

文献

1) Gisbert JP. The recurrence of Helicobacter pylori infection: incidence and variables influencing it: a criticalreview. Am J Gastroenterol 2005; 100: 2083-2099(メタ)

2) Niv Y, Hazazi R. Helicobacter pylori recurrence in developed and developing countries: meta-analysis of13C-urea breath test follow-up after eradication. Helicobacter 2008; 13: 56-61(メタ)

3) Bell GD, Powell KU. Helicobacter pylori reinfection after apparent eradication-the Ipswich experience.Scand J Gastroenterol 1996; 31 (Suppl 215): 96-104(コホート)

4) Van der Hulst RW, Rauws EA, Koycu B, et al. Helicobacter pylori reinfection is virtually absent after suc-cessful eradication. J Infect Dis 1997; 176: 196-200(コホート)

5) Rowland M, Kumar D, Daly L, et al. Low rate of Helicobacter pylori reinfection in children. Gastroenterolo-gy 1999; 117: 336-341(コホート)

6) Kim N, Lim SH, Lee KH, et al. Helicobacter pylori reinfection rate and duodenal ulcer recurrence in Korea. JClin Gastroenterol 1998; 27: 321-326(コホート)

7) Ryu KH, Yi SY, Na YJ, et al. Reinfection rate and endoscopic changes after successful eradication of Heli-cobacter pylori. World J Gastroenterol 2010; 16: 251-255(コホート)

8) Mitchell HM, Hu P, Chi Y, et al. A low rate of reinfection following effective therapy against Helicobacterpylori in a developing nation (China). Gastroenterology 1998; 114: 256-261(コホート)

9) Okimoto T, Murakami K, Sato R, et al. Is the recurrence of Helicobacter pylori infection after eradicationtherapy resultant from recrudescence or reinfection in Japan. Helicobacter 2003; 8: 186-191(コホート)

10) Adachi M, Mizuno M, Yokota K, et al. Reinfection rate following effective therapy against Helicobacterpylori infection in Japan. J Gastroenterol Hepatol 2002; 17: 27-31(コホート)

11) Take S, Mizuno M, Ishiki K, et al. Reinfection rate of Helicobacter pylori after eradication treatment: a long-term prospective study in Japan. J Gastroenterol 2012; 47: 641-646(コホート)

【検索期間外文献】a) Yan TL, Hu QD, Zhang Q, et al. National rates of Helicobacter pylori recurrence are significantly and

inversely correlated with human development index. Aliment Pharmacol Ther 2013; 37: 963-968(メタ)

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解説

H. pylori 除菌治療後の問題点のひとつとして逆流性食道炎あるいは胃食道逆流症(GERD)の新たな発症やその増悪が懸念されてきた 1〜3).除菌治療後に GERDが発生する重要な要因のひとつは,除菌による胃底腺領域の炎症の改善による胃酸分泌の回復であり,除菌後に PPIを投与することで GERD発症を予防できるという報告もある 4).除菌治療後に逆流性食道炎あるいは GERD症状が新たに出現するかどうかは報告により異な

り,海外では既存の症状を増悪させない 5, 6)とするものや,除菌治療は逆流性食道炎,GERDの原因とはいえないという報告も多い 7〜12).除菌後に GERD症状の改善あるいは消失が除菌成功群に多いとの報告も多くみられ 13〜19),逆流性食道炎や GERD症状は変化がないあるいは改善するというコンセンサスが得られつつある.このように,除菌後の GERDについてはいまだ一定の見解が得られていない.

日本では欧米と比較して体部胃炎が強いので,除菌後に相対的な過酸状態になる症例が多いと考えられる.除菌後の胃酸分泌能を含めた胃の生理学的機能の変化を客観的に把握する必要がある.最近日本から,胃潰瘍除菌後では胃内は過酸となるが食道では pH変化がないという報告がある 20).また,除菌後の逆流性食道炎発生の要因に食道裂孔ヘルニアの存在をあげる報告もある 21).最近の除菌と GERDとの関連では,除菌後短期,長期の GERD症状の悪化はない 22),GERD

患者に対する除菌後 GERD症状発生率は 13.8%,非除菌群では 24.9%であった(p=0.01)23),など,むしろ除菌により GERDの改善を認めたという報告が増加している.また,メタアナリシスの結果からも除菌後 GERD発生は H. pylori 陽性 GERDと有意差はなかったとされている 24).以上より,逆流性食道炎や GERDの発生・増悪を危惧して,消化性潰瘍患者の除菌治療をた

めらう必要はないというコンセンサスが得られていると考えてよい.

Clinical Question 2-13

除菌後の GERD 発症は?

2.H. pylori 除菌治療 ― ❺再発防止

CQ 2-13 除菌後の GERD 発症は?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● 除菌治療後に一時的に逆流性食道炎または GERD 症状が出現または増悪することがある. なし A

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⑤再発防止

文献

1) Labenz J, Blum AL, Bayerdorffer E, et al. Curing Helicobacter pylori infection in patients with duodenalulcer may provoke reflux esophagitis. Gastroenterology 1997; 112: 1442-1447(非ランダム)

2) Hamada H, Haruma K, Mihara M, et al. High incidence of reflux oesophagitis after eradication therapy forHelicobacter pylori: impacts of hiatal hernia and corpus gastritis. Aliment Pharmacol Ther 2000; 14: 729-735(非ランダム)

3) Fallone CA, Barkun AN, Friedman G, et al. Is Helicobacter pylori eradication associated with gastroe-sophageal reflux disease? Am J Gastroenterol 2000; 95: 914-920(非ランダム)

4) Rokkas T, Ladas SD, Liatsos C, et al. Effectiveness of acid suppression in preventing gastroesophagealreflux disease (GERD) after successful treatment of Helicobacter pylori infection. Digest Dis Sci 2001; 46:1567-1572(ランダム)

5) Moayyedi P, Bardhan C, Young L, et al. Helicobacter pylori eradication does not exacerbate reflux symp-toms in gastroesophageal reflux disease. Gastroenterology 2001; 121: 1120-1126(ランダム)

6) Schwizer W, Thumshirn M, Dent J, et al. Helicobacter pylori and symptomatic relapse of gastro-oesophagealreflux disease: a randomised controlled trial. Lancet 2001; 357 (9270): 1738-1742(ランダム)

7) Ott EA, Mazzoleni LE, Edelweiss MI, et al. Helicobacter pylori eradication does not cause reflux oesophagi-tis in functional dyspeptic patients: a randomized, investigator-blinded, placebo-controlled trial. AlimentPharmacol Ther 2005; 21: 1231-1239(ランダム)

8) Kuipers EJ, Nelis GF, Klinkenberg-Knol EC, et al. Cure of Helicobacter pylori infection in patients withreflux oesophagitis treated with long term omeprazole reverses gastritis without exacerbation of refluxdisease: results of a randomized controlled trial. Gut 2004; 53: 12-20(ランダム)

9) Mantzaris GJ, Petraki K, Archavlis E, et al. Omeprazole triple therapy versus omeprazole quadruple thera-py for healing duodenal ulcer and eradication of Helicobacter pylori infection. Eur J Gastroenterol Hepatol2002; 14: 1237-1243(ランダム)

10) Vakil N, Hahn B, McSorley D. Recurrent symptoms and gastro-oesophageal reflux disease in patients withduodenal ulcer treated for Helicobacter pylori infection. Aliment Pharmacol Ther 2000; 14: 45-51(ランダム)

11) Bytzer P, Aalykke C, Rune S, et al. Eradication of Helicobacter pylori compared with long-term acid sup-pression in duodenal ulcer disease: a randomized trial with 2-year follow-up: The Danish Ulcer StudyGroup. Scand J Gastroenterol 2000; 35: 1023-1032(ランダム)

12) Pilotto A, Franceschi M, Leandro G, et al. Clinical features of reflux esophagitis in older people: a study of840 consecutive patients. J Am Geriatr Soc 2006; 54: 1537-1542(ランダム)

13) McColl KE, Dickson A, El-Nujumi A, et al. Symptomatic benefit 1〜3 years after H. pylori eradication inulcer patients: impact of gastroesophageal reflux disease. Am J Gastroenterol 2000; 95: 101-105(ランダム)

14) Tefera S, Hatlebakk JG, Berstad A. The effect of Helicobacter pylori eradication on gastro- oesophagealreflux. Aliment Pharmacol Ther 1999; 13: 915-920(コホート)

15) Ishiki K, Mizuno M, Take S, et al. Helicobacter pylori eradication improves pre-existing reflux esophagitis inpatients with duodenal ulcer disease. Clin Gastroenterol Hepatol 2004; 2: 474-479(コホート)

16) Kupcinskas L, Jonaitis L, Kiudelis G. A 1 year follow-up study of the consequences of Helicobacter pylorieradication in duodenal ulcer patients: unchanged frequency of erosive oesophagitis and decreased preva-lence of non-erosive gastro-oesophageal reflux disease. Eur J Gastroenterol Hepatol 2004; 16: 369-374(コホート)

17) Sasaki A, Haruma K, Manabe N, et al. Long-term observation of reflux oesophagitis developing after Heli-cobacter pylori eradication therapy. Aliment Pharmacol Ther 2003; 17: 1529-1534(コホート)

18) Befrits R, Sjostedt S, Odman B, et al. Curing Helicobacter pylori infection in patients with duodenal ulcerdoes not provoke gastroesophageal reflux disease. Helicobacter 2000; 5: 202-205(ランダム)

19) Malfertheiner P, Dent J, Zeijlon L, et al. Impact of Helicobacter pylori eradication on heartburn in patientswith gastric or duodenal ulcer disease-results from a randomized trial programme. Aliment PharmacolTher 2002; 16: 1431-1442(ランダム)

20) Fukuchi T, Ashida K, Yamashita H, et al. Influence of cure of Helicobacter pylori infection on gastric acidityand gastroesophageal reflux: study by 24-h pH monitoring in patients with gastric or duodenal ulcer. JGastroenterol 2005; 40: 350-360(コホート)

21) Tsukada K, Katoh H, Miyazaki T, et al. Factors associated with the development of reflux esophagitis afterHelicobacter pylori eradication. Dig Dis Sci 2006; 51: 539-542(非ランダム)

消化性潰瘍診療ガイドライン2015(改訂第2版),南江堂,2015

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2.H. pylori 除菌治療

22) Qian B, Ma S, Shang L, et al. Effects of Helicobacter pylori eradication on gastroesophageal reflux disease.Helicobacter 2011; 16: 255-265(非ランダム)

23) Saad AM, Choudhary A, Bechtold ML. Effect of Helicobacter pylori treatment on gastroesophageal refluxdisease (GERD): meta-analysis of randomized controlled trials. Scand J Gastroenterol 2012; 47: 129-135(メタ)

24) Yaghoobi M, Farrokhyar F, Yuan Y, et al. Is there an increased risk of GERD after Helicobacter pylori eradi-cation?: a meta-analysis. Am J Gastroenterol 2010; 105: 1007-1013(メタ)

消化性潰瘍診療ガイドライン2015(改訂第2版),南江堂,2015

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解説

消化性潰瘍の除菌後に潰瘍再発は激減することにより,消化器症状の改善や服薬からの開放が考えられ,医療機関や検診における上部消化管検査の頻度が低下する可能性がある.しかし,除菌後に胃癌の発症が低下するという報告 1〜5)が多いが,十二指腸潰瘍に比べ萎縮性胃炎のある胃潰瘍に除菌後も胃癌が多く発生するとされている 2).萎縮性胃炎も除菌後の長期経過で改善することが報告されている 3, 6)が,除菌後も一定の割合で胃癌のリスクがある 7),(J Gastroenterol

2013; 48: 1249-1256 a)[検索期間外文献]).胃癌多発国の日本においては,消化性潰瘍に対する除菌後も胃癌が発生する可能性を考え,

内視鏡,X線による従来どおりの定期的な検査が必要である.文献は非ランダム化比較試験とコホート研究であるが,検査を行うことにより大きな効果が

あり交絡因子もないため,エビデンスレベルを「B」にすることとした.

文献

1) Kamada T, Hata J, Sugiu K, et al. Clinical features of gastric cancer discovered after successful eradicationof Helicobacter pylori: results from a 9-year prospective follow-up study in Japan. Aliment Pharmacol Ther2005; 21: 1121-1126(非ランダム)

2) Take S, Mizuno M, Ishiki K, et al. The effect of eradicating helicobacter pylori on the development of gastriccancer in patients with peptic ulcer disease. Am J Gastroenterol 2005; 100: 1037-1042(非ランダム)

3) Kato M, Asaka M, Ono S, et al. Eradication of Helicobacter pylori for primary gastric cancer and secondarygastric cancer after endoscopic mucosal resection. J Gastroenterol 2007; 42 (Suppl 17): 16-20(非ランダム)

4) Takenaka R, Okada H, Kato J, et al. Helicobacter pylori eradication reduced the incidence of gastric cancer,especially of the intestinal type. Aliment Pharmacol Ther 2007; 25: 805-812(非ランダム)

5) Ogura K, Hirata Y, Yanai A, et al. The effect of Helicobacter pylori eradication on reducing the incidence ofgastric cancer. J Clin Gastroenterol 2008; 42: 279-283(非ランダム)

6) Kodama M, Murakami K, Okimoto T, et al. Ten-year prospective follow-up of histological changes at fivepoints on the gastric mucosa as recommended by the updated Sydney system after Helicobacter pylori erad-

Clinical Question 2-14

除菌後症例の上部消化管検査は必要か?

CQ 2-14 除菌後症例の上部消化管検査は必要か?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● 消化性潰瘍の除菌後も胃癌などの発症リスクが続くため上部消化管検査は必要であり,行うことを推奨する.

1(100%) B

2.H. pylori 除菌治療 ― ❺再発防止

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2.H. pylori 除菌治療

ication. J Gastroenterol 2012; 47: 394-403(コホート)7) Take S, Mizuno M, Ishiki K, et al. The long-term risk of gastric cancer after the successful eradication of

Helicobacter pylori. J Gastroenterol 2011; 46: 318-324(コホート)

【検索期間外文献】a) Kodama M, Murakami K, Okimoto T, et al. Histological characteristics of gastric mucosa prior to Helicobac-

ter pylori eradication may predict gastric cancer. Scand J Gastroenterol 2013; 48: 1249-1256(非ランダム)

消化性潰瘍診療ガイドライン2015(改訂第2版),南江堂,2015

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解説

日本の論文で除菌成功群の除菌治療のみの 8週後胃潰瘍治癒率は 72.1%という報告 1)がある.また,H. pylori 陰性で,NSAIDs服用のない消化性潰瘍の頻度は 1〜39%とされており,非 H.

pylori,非NSAIDs潰瘍症例は,高齢で,重篤で,出血が多いとの報告 2〜11)があり,注意が必要である.また,米国の 6論文,2,300 例を超えるシステマティックレビューでは十二指腸潰瘍症例の 27%は H. pylori 陰性という報告 3)もあり,H. pylori と関連のない潰瘍も少なくないという結果である.除菌後の消化性潰瘍の潰瘍治癒に対して,H2RAや PPIや防御因子製剤の有効性を検討した

報告 1, 12〜14)があり,特に日本人の胃潰瘍の潰瘍治癒促進のためには除菌後の抗潰瘍薬投与が必要である.また,非 H. pylori・非NSAIDs潰瘍症例は,潰瘍出血再発と死亡のリスクが高いという報告があり,長期間の潰瘍再発予防治療の必要性が考えられる.以上より,除菌成功後も未治癒潰瘍が存在するため,H. pylori 以外の消化性潰瘍の原因になる

因子に注意が必要である.

文献

1) Terano A, Arakawa T, Sugiyama T, et al. Rebamipide, a gastro-protective and anti-inflammatory drug,promotes gastric ulcer healing following eradication therapy for Helicobacter pylori in a Japanese popula-tion: a randomized, double-blind, placebo-controlled trial. J Gastroenterol 2007; 42: 690-693(ランダム)

2) Jyotheeswaran S, Shah AN, Jin HO, et al. Prevalence of Helicobacter pylori in peptic ulcer patients in greaterRochester, NY: is empirical triple therapy justified? Am J Gastroenterol 1998, 93: 574-578(ケースコントロール)

3) Ciociola AA, McSorley DJ, Turner K, et al. Helicobacter pylori infection rates in duodenal ulcer patients inthe United States may be lower than previously estimated. Am J Gastroenterol 1999; 94: 1834-1840(メタ)

4) Gisbert JP, Blanco M, Mateos JM, et al. H. pylori-negative duodenal ulcer prevalence and causes in 774patients. Dig Dis Sci 1999; 44: 2295-2302(ケースコントロール)

Clinical Question 2-15

除菌成功後における未治癒潰瘍の頻度と対策は?

CQ 2-15 除菌成功後における未治癒潰瘍の頻度と対策は?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● 除菌成功後の未治癒潰瘍は 0〜30%とされており,対策として抗潰瘍薬の投与,および NSAIDs 投与の中止を推奨する.

1(100%) A

2.H. pylori 除菌治療 ― ❻除菌後潰瘍

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2.H. pylori 除菌治療

5) Higuchi K, Arakawa T, Fujiwara Y, et al. Is Helicobacter pylori-negative duodenal ulcer masked by the highprevalence of H. pylori infection in the general population? Am J Gastroenterol 1999; 94: 3083-3084(ケースコントロール)

6) Tsuji H, Kohli Y, Fukumitsu S, et al. Helicobacter pylori-negative gastric and duodenal ulcers. J Gastroen-terol 1999; 34: 455-460(横断)

7) Nishikawa K, Sugiyama T, Kato M, et al. Non Helicobacter pylori and non NSAID peptic ulcer disease in theJapanese population. Eur J Gastroenterol Hepatol 2000; 12: 635-640(横断)

8) Arakawa T, Higuchi K, Fujiwara Y, et al. Helicobacter pylori: criminal or innocent bystander? J Gastroen-terol 2000; 35 (Suppl 12): 42-46(横断)

9) Aoyama N, Shinoda Y, Matsushima Y, et al. Helicobacter pylori-negative peptic ulcer in Japan: which con-tributes most to peptic ulcer development, Helicobacter pylori, NSAIDS or stress? J Gastroenterol 2000; 35(Suppl 12): 33-37(横断)

10) Chan HL,Wu JC, Chan FK, et al. Is non-Helicobacter pylori, non-NSAID peptic ulcer a common cause ofupper GI bleeding? a prospective study of 977 patients. Gastrointest Endosc 2001; 53: 438-442(コホート)

11) Hung LC, Ching JY, Sung JJ, et al. Long-term outcome of Helicobacter pylori - negative idiopathic bleedingulcers: a prospective cohort study. Gastroenterology 2005; 128: 1845-1850(コホート)

12) Song KH, Lee YC, Fan DM, et al. Healing effects of rebamipide and omeprazole in Helicobacter pylori-posi-tive gastric ulcer patients after eradication therapy: a randomized double-blind, multinational, multi-insti-tutional comparative study. Digestion 2011; 84: 221-229(ランダム)

13) Hiraishi H, Haruma K, Miwa H, et al. Clinical trial: irsogladine maleate, a mucosal protective drug, accel-erates gastric ulcer healing after treatment for eradication of Helicobacter pylori infection: the results of amulticentre, double-blind, randomized clinical trial (IMPACT study). Aliment Pharmacol Ther 2010; 31:824-833(ランダム)

14) Murakami K, Okimoto T, Kodama M, et al. Comparison of the efficacy of irsogladine maleate and famoti-dine for the healing of gastric ulcers after Helicobacter pylori eradication therapy: a randomized, controlled,prospective study. Scand J Gastroenterol 2011; 46: 287-292(ランダム)

消化性潰瘍診療ガイドライン2015(改訂第2版),南江堂,2015

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解説

日本では,除菌治療 1年後の胃潰瘍,十二指腸潰瘍の累積再発率は,除菌成功群ではそれぞれ 11%,6%と報告 1)されているが,この再発例のなかには,びらん性病変との鑑別が困難な症例が含まれている.その後に報告 2)された日本での 4年間の 4,000 例を超える多施設共同研究では,除菌後の胃潰瘍・十二指腸潰瘍の再発率は年率 1〜2%と非常に低率であることが示されている.NSAIDs服用歴は有意に胃潰瘍再発例で多く,喫煙,飲酒者も同様に胃潰瘍再発例に多かった.胃潰瘍症例中 93.1%は胃潰瘍で再発し,すべての十二指腸潰瘍例は十二指腸潰瘍で再発した.胃潰瘍の再発には,喫煙,飲酒,NSAIDs服用が背景因子としてみられたことより,H. pylori 感染以外の再発因子が胃潰瘍症例では十二指腸潰瘍よりも大きな役割を果たしていると考えられる.除菌後の潰瘍再発はまれであるが,H. pylori 再陽性化,喫煙,NSAIDs投与などは潰瘍再発の

リスクがあると思われる.

文献

1) Asaka M, Kato M, Sugiyama T, et al. Follow-up survey of a large-scale multicenter, double-blind study oftriple therapy with lansoprazole, amoxicillin, and clarithromycin for eradication of Helicobacter pylori inJapanese peptic ulcer patients. J Gastroenterol 2003; 38: 339-347(ランダム)

2) Miwa H, Sakaki N, Sugano K, et al. Recurrent peptic ulcers in patients following successful Helicobacterpylori eradication: a multicenter study of 4940 patients. Helicobacter 2004; 9: 9-16(非ランダム)

Clinical Question 2-16

除菌成功後における再発潰瘍の頻度と対策は?

CQ 2-16 除菌成功後における再発潰瘍の頻度と対策は?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● 除菌後の潰瘍再発は 0〜2%とまれである.H. pylori 再陽性化,喫煙,NSAIDs 投与などが原因となりうるので,これらを排除することを提案する.

2(100%) B

2.H. pylori 除菌治療 ― ❻除菌後潰瘍

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3.非除菌治療

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解説

H. pylori 除菌治療によらない胃潰瘍の初期治療に関して,「EBMに基づく胃潰瘍診療ガイドライン(第 2版)」(じほう)における検索式および本ガイドライン策定にあたって設定された検索式での検索などによって収集された文献のうち,定められた基準(表1)を満たす文献を採択し検討した.検討にあたっては,薬剤を PPI,H2RA,選択的ムスカリン受容体拮抗薬,防御因子増強薬な

どに群分けし,各薬剤群とプラセボとの比較のみならず,各薬剤群間での比較や同一薬剤群内での比較も行った(図1).

Clinical Question 3-1

胃潰瘍に対する非除菌治療(初期治療)にどのような薬剤を選択すべきか?

CQ 3-1 胃潰瘍に対する非除菌治療(初期治療)にどのような薬剤を選択すべきか?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

1)第一選択薬① PPI(オメプラゾール,ランソプラゾール,ラベプラゾールナトリ

ウム,エソメプラゾール)のいずれかを第一選択薬とすることを推奨する.

1(100%) A

2)第一選択薬として PPI を選択できない場合(a)② H2RA(シメチジン,塩酸ラニチジン,ファモチジン,塩酸ロキサ

チジンアセタート,ニザチジン,ラフチジン)のいずれかを投与することを推奨する.

1(100%) B

2)第一選択薬として PPI を選択できない場合(a)③ 選択的ムスカリン受容体拮抗薬(塩酸ピレンゼピン)もしくは一部

の防御因子増強薬(スクラルファート,ミソプロストール)のいずれかを投与することを提案する.

2(100%) B

2)第一選択薬として PPI を選択できない場合(b)④ 上記いずれの薬剤も投与できない場合,一部の防御因子増強薬(ス

クラルファート,ミソプロストール)を除くその他の防御因子増強薬のいずれかを投与することを提案する.

2(100%) B

3.非除菌治療 ― ❶初期治療【胃潰瘍】

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①初期治療【胃潰瘍】

1)H. pylori 除菌治療によらない胃潰瘍の初期治療に関するエビデンスa.PPI(オメプラゾール,ランソプラゾール,ラベプラゾールナトリウム,エソメプラゾー

ル)(1)潰瘍治癒率比較①プラセボとの比較:PPIが有意に潰瘍治癒率が高い 1〜3).②H2RAとの比較:投与初期にはH2RAよりも PPIのほうが潰瘍治療率が高い傾向にあり,これは PPIによって速やかに潰瘍治癒が得られるという特性を表している 4〜7).最終評価の時点(6〜8週)で,PPIがH2RAより潰瘍治癒率が高いという報告 8〜13)と,差がみられないという報告 14〜19)とがあるが,メタアナリシスではH2RAより PPIのほうが有意に潰瘍治癒率が高いと報告されている 20〜23).

表1 文献採択基準①研究デザインは同時対照(concurrent controls)をおいたランダム化対照試験(randomized controlled trial:RCT)以上を原則とする.②消化性潰瘍の診断は内視鏡によって行われており,悪性は除外されている.③65歳以上,術後残胃など対象とした研究,NSAIDs 除菌治療例などを含んだ研究は省く.④治療開始後4~12週間での内視鏡的な治癒(S1 または S2)をアウトカムとしている.⑤脱落例は有効症例数の 20%以下,または治療企図試験(intention-to-treat analysis:ITT 解析)で脱落例は無効例として扱っている.⑥論文言語は英語と日本語とする(独語,仏語文献は英文抄録があるものに限る).⑦研究エントリー症例数は各群30例以上を目安とする.

図 1 H. pylori 除菌治療によらない消化性潰瘍の初期治療における各薬剤群間の治療効果比較

プロトンポンプ阻害薬

H2受容体拮抗薬

プロトンポンプ阻害薬

H2受容体拮抗薬

プラセボ

選択的ムスカリン受容体拮抗薬

その他の防御因子増強薬

一部の防御因子増強薬

・スクラルファート・ミソプロストール

防御因子増強薬

併用療法:潰瘍治癒率の上乗せ効果あり(一部のみ)

併用療法:潰瘍治癒率の上乗せ効果なし

A>B:AはBより優れる A≒B:AとBは同等である 

薬害阻プンポントロプ

 

薬抗拮体容受2H

ボセラプ

 

ルートスロプソミ・トーァフルラクス・

薬強増子因御防の部一

増子因御防

  

薬抗拮体容受2H

薬害阻プンポントロプ

用併

 

薬抗拮体容受ンリカスム的択選

りあ果効せ乗上の率癒治瘍潰:法療用

 

薬強増子因御防の他のそ

)みの部一(り

 

用併

 るれ優りよBはA:B>A

しな果効せ乗上の率癒治瘍潰:法療用

  るあで等同はBとA:B≒A

 

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3.非除菌治療

③PPI間での比較:オメプラゾールとラベプラゾールナトリウムとの間には潰瘍治癒率に差はみられない 24).ランソプラゾールに関しては他剤と差があるという報告はない.

④エソメプラゾールは,胃潰瘍・十二指腸潰瘍の保険適用の承認取得にあたり,国内での臨床試験は実施されていないが,エソメプラゾールがオメプラゾールのラセミ体構造の S体のみを抽出して結合した光学異性体であること,エソメプラゾールが胃酸関連疾患の代表的疾患である逆流性食道炎に対する臨床効果が確認されたことなどから,既承認のオメプラゾールが有する効能・効果のうち,逆流性食道炎以外の疾患である胃潰瘍・十二指腸潰瘍などについては,新たな臨床試験を実施せず,効能・効果として申請され,承認されている.

○参考URL:PMDA審議結果報告書(http://www.info.pmda.go.jp/shinyaku/P201100115/670227000_22300AMX00598000_A100_1.pdf

(2)投与量と投与期間などに関する補足各薬剤とも常用量(保険適用量),8週間投与で高い潰瘍治癒率が得られる.

b.H2RA(シメチジン,塩酸ラニチジン,ファモチジン,塩酸ロキサチジンアセタート,ニザチジン,ラフチジン)

(1)潰瘍治癒率比較[1 日複数回(2〜4 回)投与]①プラセボとの比較:H2RAが有意に潰瘍治癒率が高い 25〜29).②防御因子増強薬との比較:・一部の防御因子増強薬(スクラルファート,ミソプロストール)との比較i)シメチジンや塩酸ラニチジンとスクラルファート(3.6〜4g/日)との間には潰瘍治癒率

に差はみられない 30〜37).ii)シメチジンや塩酸ラニチジンとミソプロストールとの間には潰瘍治癒率に差はみられない 38, 39).

・その他の防御因子増強薬との比較:シメチジン,ファモチジン,塩酸ラニチジンはゲファルナートよりも潰瘍治癒率が高い 40〜42).

③選択的ムスカリン受容体拮抗薬(塩酸ピレンゼピン)との比較:常用量(100mg/日)では,シメチジンとの間には潰瘍治癒率に差はみられない 43).

④H2RA間での比較:H2RA間では潰瘍治癒率に差はみられない 44〜51).[1 日 1 回就寝前投与]①プラセボとの比較:H2RAが有意に潰瘍治癒率が高い 25, 52〜60).②H2RA間での比較:H2RA間では潰瘍治癒率に差はみられない 61〜64).

(2)投与量と投与期間に関する補足各薬剤とも常用量(保険適用量),8週間投与で高い潰瘍治癒率が得られる.

c.選択的ムスカリン受容体拮抗薬(塩酸ピレンゼピン)(1)潰瘍治癒率比較①プラセボとの比較:低用量(50mg/日)では,塩酸ピレンゼピンとプラセボとの間には潰瘍

治癒率に差はみられない 65).②H2RAとの比較:常用量(100mg/日)では,塩酸ピレンゼピンとシメチジンとの間には潰瘍

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①初期治療【胃潰瘍】

治癒率に差はみられない 43).(2)投与量と投与期間に関する補足投与量は常用量(保険適用量).8週間投与と比較して 12 週間投与でより高い潰瘍治癒率を期

待できる.

d.防御因子増強薬酸分泌抑制薬との比較では,一部の防御因子増強薬(スクラルファート,ミソプロストール)

が単剤でH2RAもしくは選択的ムスカリン受容体拮抗薬と同等の潰瘍治癒率を有するというエビデンスが示されているのみで,その他の防御因子増強薬に関しては,胃潰瘍治癒効果に関するエビデンス自体は存在するものの酸分泌抑制薬と同等の潰瘍治癒率を有するというエビデンスは示されていない.

d-1.一部の防御因子増強薬(スクラルファート,ミソプロストール)d-1-i.スクラルファート

(1)潰瘍治癒率比較①プラセボとの比較:スクラルファート(3.6g/日)が有意に潰瘍治癒率が高い 66).②H2RAとの比較:スクラルファート(3.6〜4g/日)はシメチジンや塩酸ラニチジンとの間に

は潰瘍治癒率に差はみられない 30〜37).(2)投与量と投与期間に関する補足保険適用量は 3〜3.6g/日である.8週間投与と比較して 12 週間投与でより高い潰瘍治癒率を

期待できる.d-1-ii.ミソプロストール

(1)潰瘍治癒率比較①プラセボとの比較:ミソプロストールの低用量(400µg/日)の長期投与によって潰瘍治癒率に差が現れてくるという報告 67)もあるが,差がまったくないという報告 68)もあり一定しない.

②H2RAとの比較:ミソプロストールとシメチジンや塩酸ラニチジンとの間には潰瘍治癒率に差はみられない 38, 39).

(2)投与量と投与期間に関する補足投与量は常用量(保険適用量).8週間投与と比較して 12 週間投与でより高い潰瘍治癒率を期

待できる.d-2.その他の防御因子増強薬

(1)潰瘍治癒率比較①プラセボとの比較:胃潰瘍治癒効果に関するエビデンスに乏しい.②抗ガストリン薬との比較:テプレノンとプログルミドとの間には潰瘍治癒率に差はみられない 69).

③選択的ムスカリン受容体拮抗薬(塩酸ピレンゼピン)との比較:ゲファルナートは塩酸ピレンゼピンよりも潰瘍治癒率が低い 70).

④H2RAとの比較:ゲファルナートはシメチジン,ファモチジン,塩酸ラニチジンよりも潰瘍治癒率が低い 40〜42).

⑤防御因子増強薬間での比較・ゲファルナートはソファルコンやマレイン酸イルソグラジンよりも潰瘍治癒率が低い 71, 72).

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3.非除菌治療

・塩酸セトラキサートはレバミピド,ポラプレジンク,ミソプロストールよりも潰瘍治癒率は低いが 73〜75),塩酸ベネキサートベータデクス,トロキシピド,プラウノトール,エカベトナトリウム,エグアレンナトリウム,オルノプロスチルとの間には潰瘍治癒率に差はみられない 76〜81).

2)問題点と課題他項とも共通しているが,今回の検討における問題点は従来とほぼ同様で,まず,薬剤に対

する評価指標が内視鏡的な潰瘍治癒率のみで自覚症状や費用対効果などを取りあげていないこと,国内のエビデンスが少ないことなどがあげられる.潰瘍治癒率はほとんどすべての報告に記載があり,各報告における最大公約数的な評価指標

であるために,各報告間での薬剤の有用性に関する比較検討が容易となっている.一方で,自覚症状については,その評価方法が国内と海外で,あるいは時代によっても異なっており,各報告間での比較検討が困難で,評価指標として適切ではないと考えられることから今回も取りあげていない.また,費用対効果に関しては,質の高い報告がほとんどなく,あったとしてもごく一部の薬剤に関する報告に限られているため,今回も評価指標としては取りあげていない.国内のエビデンスが少ないことについては今後を期待するより他に方法はないであろう.また,日本で頻用されているにもかかわらず,防御因子増強薬に関するエビデンスが少ない

が,防御因子増強薬に関しては,コンピュータによる文献検索が困難な古い年代の報告が存在すること,文献採択基準を満たす質の高い報告が少ないこと,今後新たに多数のエビデンスが示される可能性は低いことなどの理由から,現在採用しているガイドラインの作成手法では防御因子増強薬に対する更なる評価は困難と思われる.

文献

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①初期治療【胃潰瘍】

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3.非除菌治療

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多施設二重盲検試験.診療と新薬 1985; 22: 2897-2918(ランダム)50) 三好秋馬,谷内 昭,矢花 剛.胃潰瘍を対象とした Famotidineの臨床評価―二重盲検法による cimeti-

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59) Paoluzi P, Torsoli A, Bianchi Porro G, et al. Famotidine (MK-208) in the treatment of gastric ulcer: resultsof a multicenter double-blind controlled study. Digestion 1985; 32 (Suppl 1): 38-44(ランダム)

60) Simon B, Muller P, Dammann HG. Famotidine once-a-day in the therapy of acute, benign gastric ulcer: aworldwide experience. J Clin Gastroenterol 1987; 9 (Suppl 2): 19-22(ランダム)

61) Brandstatter G, Marks IN, Lanza F, et al. A multicenter, randomized, double-blind comparison of roxati-dine with ranitidine in the treatment of patients with uncomplicated benign gastric ulcer disease: The Mul-ticenter Roxatidine Cooperative Study Group. Clin Ther 1995; 17: 467-478(ランダム)

62) Brazer SR, Tyor MP, Pancotto FS, et al. Randomized, double-blind comparison of famotidine with raniti-dine in treatment of acute, benign gastric ulcer disease: community-based study coupled with a patientregistry. Dig Dis Sci 1989; 34: 1047-1052(ランダム)

63) Cochran KM, Cockel R, Crowe J, et al. Comparison of 40 mg famotidine nightly and 150 mg ranitidine

消化性潰瘍診療ガイドライン2015(改訂第2版),南江堂,2015

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— 71 —

①初期治療【胃潰瘍】

b.d.: ulcer healing and symptom relief in benign gastric ulcer. Aliment Pharmacol Ther 1989; 3: 461-470(ランダム)

64) Di Mario F, Battaglia G, Naccarato R, et al. Comparison of 150 mg nizatidine BID or 300 mg at bedtime,and 150mg ranitidine BID in the treatment of gastric ulcer: an 8-week randomized, double-blind multicen-tre study. Hepatogastroenterology 1990; 37 (Suppl 2): 62-65(ランダム)

65) Cerlek S, Papa B, Katicic M, et al. Pirenzepin in gastric and duodenal ulcer: a double-blind trial. J Int MedRes 1981; 9: 148-151(ランダム)

66) Lam SK, Lau WY, Lai CL, et al. Efficacy of sucralfate in corpus, prepyloric, and duodenal ulcer-associatedgastric ulcers: a double-blind, placebo-controlled study. Am J Med 1985; 79: 24-31(ランダム)

67) Agrawal NM, Saffouri B, Kruss DM, et al. Healing of benign gastric ulcer: a placebo-controlled compari-son of two dosage regimens of misoprostol, a synthetic analog of prostaglandin E1. Dig Dis Sci 1985; 30:164S-170S(ランダム)

68) Rachmilewitz D, Chapman JW, Nicholson PA. A multicenter international controlled comparison of twodosage regimens of misoprostol with cimetidine in treatment of gastric ulcer in outpatients. Dig Dis Sci1986; 31: 75S-80S(ランダム)

69) 芦沢真六,白川和夫,崎田隆夫.セルベックス-カプセル(E-0671)の胃潰瘍に対する治療効果―プログルミドとの多施設二重盲検比較試験.Progress in Medicine 1983; 3: 1169-1191(ランダム)

70) Ishimori A, Yamagata S. Therapeutic effect of pirenzepine dihydrochloride on gastric ulcer evaluated by adouble-blind controlled clinical study: phase Ⅲ study. Arzneimittelforschung 1982; 32: 556-565(ランダム)

71) 滝野辰郎,児玉 正,岡野 均.胃潰瘍に対するMN-1695〔2,4-diamino-6-c(2,5-dichlorophenyl)-s-tri-azine maleate〕の臨床評価―ゲファルナートを対照薬とした多施設二重盲検群間比較試験.臨床医薬 1987;3: 199-228(ランダム)

72) 名尾良憲,平沢 尭,本田利男.消化性潰瘍治療剤 SU-88 の胃潰瘍に対する二重盲検法による臨床的評価.臨床成人病 1982; 12: 1893-1903(ランダム)

73) OPC-12759 研究会.胃潰瘍に対する Proamipide(OPC-12759)の薬効評価―多施設二重盲検比較試験による塩酸セトラキサートとの比較.臨床成人病 1989; 19: 1265-1291(ランダム)

74) 崎田隆夫,中村孝司,石川 誠.胃潰瘍に対するミソプロストール(SC-29333)の臨床評価―塩酸セトラキサートを対照薬とした多施設二重盲検比較試験.臨床評価 1986; 14: 757-791(ランダム)

75) 三好秋馬,松尾 裕,三輪 剛.胃潰瘍に対する Z-103 の臨床的有用性の検討―塩酸セトラキサートを対照薬とした多施設二重盲検試験.薬理と治療 1992; 20: 199-223(ランダム)

76) KU-54 研究会.胃潰瘍に対する KU-54 と Cetraxateとの二重盲検比較試験―多施設における検討.医学と薬学 1984; 12: 487-539(ランダム)

77) 三好秋馬,岡部治弥,三輪 剛,ほか.胃潰瘍に対するエグアレンナトリウムの臨床評価(改訂版)―塩酸セトラキサートを対照薬とした多施設二重盲検群間比較試験.薬理と治療 1999; 27: 837-852(ランダム)

78) 三好秋馬,常岡健二,竹内 正.胃潰瘍に対する OU-1308 の臨床評価―塩酸セトラキサートを対照薬とした多施設二重盲検比較試験.臨床医薬 1986; 2: 185-209(ランダム)

79) 三好秋馬,谷内 昭,吉田 豊.胃潰瘍に対する CS-684 の臨床評価―塩酸サトラキサートを対照薬とした多施設二重盲検群間比較試験.Progress in Medicine 1985; 5: 981-1002(ランダム)

80) 三好秋馬,谷内 昭,佐藤勝巳.胃潰瘍に対する TA903 の薬効評価―多施設二重盲検試験による塩酸セトラキサートとの比較.Progress in Medicine 1986; 6: 2273-2295(ランダム)

81) 三好秋馬,谷内 昭,松尾 裕.胃潰瘍に対する TA-2711 の臨床評価―塩酸セトラキサートを対照薬とした多施設二重盲検試験による検討.Progress in Medicine 1991; 11: 1326-1346(ランダム)

消化性潰瘍診療ガイドライン2015(改訂第2版),南江堂,2015

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解説

H. pylori 除菌治療によらない胃潰瘍の初期治療における酸分泌抑制薬と防御因子増強薬の併用療法に関して,「EBMに基づく胃潰瘍診療ガイドライン(第 2版)」(じほう)における検索式および本ガイドライン策定にあたって設定された検索式での検索などによって収集された文献のうち,一定の基準(「CQ 3-1」の表 1 参照)を満たす文献を採択し,酸分泌抑制薬(PPIおよびH2RA)と防御因子増強薬との併用療法に関する検討を行った(「CQ 3-1」の図 1参照).

1)酸分泌抑制薬と防御因子増強薬の併用療法(H. pylori 除菌治療によらない胃潰瘍の初期治療)におけるエビデンスa.PPI と防御因子増強薬の併用療法ランソプラゾールと防御因子増強薬との併用では潰瘍治癒の上乗せ効果はない 1).b.H2RA と防御因子増強薬の併用療法(表1)

(1)潰瘍治癒率比較①シメチジンとエグアレンナトリウムとの併用 2),シメチジンとエカベトナトリウムとの併用 3)

Clinical Question 3-2

胃潰瘍に対する非除菌治療(初期治療)において,酸分泌抑制薬と防御因子増強薬の併用療法は有効か?

CQ 3-2 胃潰瘍に対する非除菌治療(初期治療)において,酸分泌抑制薬と防御因子増強薬の併用療法は有効か?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● PPI と防御因子増強薬の併用によって潰瘍治癒の上乗せ効果は得られないため,PPI の単独投与を行うよう提案する.

2(100%) C

● H2RA と防御因子増強薬の併用によって潰瘍治癒の上乗せ効果が得られるため,行うよう提案する.

◯シメチジンとエグアレンナトリウム

2(100%) B

● H2RA と防御因子増強薬の併用によって潰瘍治癒の上乗せ効果が得られるため,行うよう提案する.

◯塩酸ラニチジンとテプレノン

2(100%) C

● H2RA と防御因子増強薬の併用によって潰瘍治癒の上乗せ効果が得られるため,行うよう提案する.

◯シメチジンとエカベトナトリウム

2(100%) C

3.非除菌治療 ― ❶初期治療【胃潰瘍】

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①初期治療【胃潰瘍】

では防御因子増強薬による潰瘍治癒の上乗せ効果がある.②塩酸ラニチジンとテプレノンとの併用 4)およびH2RAとテプレノンとの併用 5)では潰瘍治癒の上乗せ効果があるが,シメチジンとテプレノンの併用 6)では上乗せ効果はない.

③シメチジンとソファルコンの併用 7),塩酸ラニチジンとスクラルファートの併用 8),H2RA とレバミピドの併用 9)では潰瘍治癒の上乗せ効果はない.

(2)保険適用に関する補足保険適用上の制限は特にない.

文献

1) 宮原 透,勝 健一,山中桓夫.消化性潰瘍に対する Lansoprazole単独投与と粘膜防御因子増強薬併用投与の比較検討.薬理と治療 1997; 25: 2557-2568(非ランダム)

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6) 西元寺克礼,岡部治弥,野村喜重郎.胃潰瘍の治癒,再発に対するセルベックス併用療法の有用性―シメチジン単独療法とセルベックス併用療法の比較検討.臨牀と研究 1988; 65: 1687-1692(非ランダム)

7) 三輪 剛,椎名泰文,柴田晴道.ソロン(SU-88)とタガメットとの併用による胃潰瘍の治療および再発に対する臨床評価―タガメット単独療法との比較試験.診療と新薬 1986; 23: 310-328(非ランダム)

8) Houston LJ, Mills JG, Wood JR. Does co-prescription of sucralfate with ranitidine therapy enhance thehealing of gastric ulcers? Am J Gastroenterol 1993; 88: 675-679(ランダム)

9) 越智浩二,原田英雄,水島孝明.レバミピド(ムコスタ錠)とH2 受容体拮抗薬併用による胃潰瘍初期治療の有用性の検討.新薬と臨床 1995; 44: 829-840(ランダム)

表1 H2RAと防御因子増強薬の併用療法 除菌治療によらない胃潰瘍の初期治療)に関する報告

薬剤の組み合わせ 報告者 エビデンスレベル

防御因子増強薬の上乗せ効果

あり

塩酸ラニチジンとテプレノン 木村健,1988 4) CH2RAとテプレノン* Shirakabe H,1995 5) Cシメチジンとエグアレンナトリウム 三好秋馬,1995 2) Bシメチジンとエカベトナトリウム Murata H,2003 3) C

なし

シメチジンとソファルコン 三輪剛,1986 7) Cシメチジンとテプレノン 西元寺克礼,1988 6) C塩酸ラニチジンとスクラルファート Houston LJ,1993 8) BH2RAとレバミピド 越智浩二,1995 9) B

*:複数のH2RA(シメチジン,塩酸ラニチジン,ファモチジン,塩酸ロキサチジンアセタート)に関するデータがひとつにまとめられたうえで解析が行われているため,ステートメントからは割愛した.

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解説

H. pylori 除菌治療によらない十二指腸潰瘍の初期治療に関して,本ガイドライン策定にあたって設定された検索式での検索などによって収集された文献のうち,一定の基準(「CQ 3-1」の表 1参照)を満たす文献を採択し検討した.検討にあたっては,薬剤を PPI,H2RA,選択的ムスカリン受容体拮抗薬,防御因子増強薬な

どに群分けし,各薬剤群とブラセボとの比較のみならず,各薬剤群間での比較や同一薬剤群内での比較も行った(「CQ 3-1」の図 1参照).

1)H. pylori 除菌治療によらない十二指腸潰瘍の初期治療に関するエビデンスa.PPI(オメプラゾール,ランソプラゾール,ラベプラゾールナトリウム,エソメプラゾール)

(1)潰瘍治癒率比較①プラセボとの比較:ランソプラゾールとラベプラゾールナトリウムが有意に潰瘍治癒率が

高い 1, 2).②H2RAとの比較:投与初期にはH2RAよりも PPIのほうが潰瘍治療率が高い傾向にあり,

Clinical Question 3-3

十二指腸潰瘍に対する非除菌治療(初期治療)にどのような薬剤を選択すべきか?

CQ 3-3 十二指腸潰瘍に対する非除菌治療(初期治療)にどのような薬剤を選択すべきか?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

1)第一選択薬①PPI(オメプラゾール,ランソプラゾール,ラベプラゾールナトリウ

ム,エソメプラゾール)のいずれかを第一選択薬とすることを推奨する.

1(100%) A

2)第一選択薬として PPI を選択できない場合②H2RA(シメチジン,塩酸ラニチジン,ファモチジン,塩酸ロキサチ

ジンアセタート,ニザチジン,ラフチジン)のいずれかを投与することを推奨する.

1(100%) B

2)第一選択薬として PPI を選択できない場合③選択的ムスカリン受容体拮抗薬(塩酸ピレンゼピン)もしくは一部の

防御因子増強薬(スクラルファート,ミソプロストール)のいずれかを投与することを提案する.

2(100%) B

3.非除菌治療 ― ❶初期治療【十二指腸潰瘍】

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①初期治療【十二指腸潰瘍】

これは PPIによって速やかに潰瘍治癒が得られるという特性を表している 3〜9).最終評価の時点(6週)で,PPIがH2RAより潰瘍治癒率が高いという報告 2〜4, 7, 9〜11)と,差がみられないという報告 5, 8)とがある.メタアナリシスではH2RAより PPIのほうが有意に潰瘍治癒率が高いと報告されている 12).

③PPI間での比較:オメプラゾールとランソプラゾール,オメプラゾールとラベプラゾールナトリウムとの間には潰瘍治癒率に差はみられない 13, 14).

④エソメプラゾールは,胃潰瘍・十二指腸潰瘍の保険適用の承認取得にあたり,国内での臨床試験は実施されていないが,エソメプラゾールがオメプラゾールのラセミ体構造の S体のみを抽出して結合した光学異性体であること,エソメプラゾールが胃酸関連疾患の代表的疾患である逆流性食道炎に対する臨床効果が確認されたことなどから,既承認のオメプラゾールが有する効能・効果のうち,逆流性食道炎以外の疾患である胃潰瘍・十二指腸潰瘍などについては,新たな臨床試験を実施せず,効能・効果として申請され,承認されている.

○参考 URL:PMDA審議結果報告書(http://www.info.pmda.go.jp/shinyaku/P201100115/670227000_22300AMX00598000_A100_1.pdf

(2)投与量と投与期間などに関する補足各薬剤とも常用量(保険適用量),4〜6週間投与で高い潰瘍治癒率が得られる.

b.H2RA(シメチジン,塩酸ラニチジン,ファモチジン,塩酸ロキサチジンアセタート,ニザチジン,ラフチジン)

(1)潰瘍治癒率比較[1 日複数回(2〜4 回)投与]①防御因子増強薬との比較・一部の防御因子増強薬(スクラルファート,ミソプロストール)との比較i)シメチジンや塩酸ラニチジンとスクラルファート(4g/日)との間には潰瘍治癒率に差はみられない 15〜20).

ii)シメチジンとミソプロストールとの間には潰瘍治癒率に差はみられない 21).・その他の防御因子増強薬との比較:シメチジン,ファモチジン,塩酸ラニチジン,塩酸ロキサチジンアセタートはゲファルナートよりも潰瘍治癒率が高い 22〜25).

②H2RA間での比較:H2RA間では潰瘍治癒率に差はみられない 26〜28).[1 日 1 回就寝前投与]①プラセボとの比較:シメチジンと塩酸ラニチジンが有意に潰瘍治癒率が高い 2, 29).②H2RA間での比較:H2RA間では潰瘍治癒率に差はみられない 30〜40).

[1 日複数回(2〜4 回)投与と 1 日 1 回就寝前投与との比較]1 日複数回(2〜4回)投与と 1日 1回就寝前投与では,投与方法の違いによる潰瘍治癒率の差

はみられない 41〜45).(2)投与量と投与期間に関する補足各薬剤とも常用量(保険適用量),6週間投与で高い潰瘍治癒率が得られる.

c.選択的ムスカリン受容体拮抗薬(塩酸ピレンゼピン)(1)潰瘍治癒率比較①H2RAとの比較:塩酸ピレンゼピンはシメチジンとの間には潰瘍治癒率に差はみられない 46).

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3.非除菌治療

②防御因子増強薬との比較:塩酸ピレンゼピンはゲファルナートより有意に潰瘍治癒率が高い 47).

(2)投与量と投与期間に関する補足投与量は常用量(保険適用量).6週間投与と比較して 8〜12 週間投与でより高い潰瘍治癒率

を期待できる.

d.防御因子増強薬酸分泌抑制薬との比較では,一部の防御因子増強薬(スクラルファート,ミソプロストール)

が単剤でH2RAと同等の潰瘍治癒率を有するというエビデンスが示されているのみで,その他の防御因子増強薬に関しては,十二指腸潰瘍治癒効果に関するエビデンス自体は存在するものの酸分泌抑制薬と同等の潰瘍治癒率を有するというエビデンスは示されていない.

d-1.一部の防御因子増強薬(スクラルファート,ミソプロストール)d-1-i.スクラルファート

(1)潰瘍治癒率比較①プラセボとの比較:スクラルファート(3.6〜4g/日)が有意に潰瘍治癒率が高い 48〜50).②H2RAとの比較:スクラルファート(4g/日)はシメチジンや塩酸ラニチジンとの間には潰

瘍治癒率に差はみられない 15〜20).(2)投与量と投与期間に関する補足保険適用量は 3〜3.6g/日である.6週間投与と比較して 8週間投与でより高い潰瘍治癒率を

期待できる.d-1-ii.ミソプロストール

(1)潰瘍治癒率比較①プラセボとの比較:ミソプロストールが有意に潰瘍治癒率が高い 51).②H2RAとの比較:ミソプロストールはシメチジンとの間には潰瘍治癒率に差はみられない 21).

(2)投与量に関する補足投与量は常用量(保険適用量).d-2)その他の防御因子増強薬

(1)潰瘍治癒率比較①プラセボとの比較:十二指腸潰瘍治癒効果に関するエビデンスに乏しい.②選択的ムスカリン受容体拮抗薬(塩酸ピレンゼピン)との比較:ゲファルナートは塩酸ピレ

ンゼピンよりも潰瘍治癒率が低い 47).③H2RAとの比較・ゲファルナートはシメチジン,ファモチジン,塩酸ラニチジン,塩酸ロキサチジンアセ

タートよりも潰瘍治癒率が低い 22〜25).

文献

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①初期治療【十二指腸潰瘍】

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(ランダム)11) Barbara L, Blasi A, Cheli R, et al. Omeprazole vs. ranitidine in the short-term treatment of duodenal ulcer:

an Italian multicenter study. Hepatogastroenterology 1987; 34: 229-232(ランダム)12) Poynard T, Lemaire M, Agostini H. Meta-analysis of randomized clinical trials comparing lansoprazole

with ranitidine or famotidine in the treatment of acute duodenal ulcer. Eur J Gastroenterol Hepatol 1995;7: 661-665(メタ)

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17) Archimandritis A, Charitopoulos N, Diamantis T, et al. Comparison of sucralfate and ranitidine twicedaily in duodenal ulcer treatment: a multicenter randomized double-blind study. J Clin Gastroenterol1991; 13: 380-383(ランダム)

18) Garcia-Paredes J, Diaz Rubio M, Llenas F, et al. Comparison of sucralfate and ranitidine in the treatment ofduodenal ulcers. Am J Med 1991; 91: 64S-67S(ランダム)

19) Glise H, Carling L, Hallerback B, et al. Treatment of acute duodenal ulcer: a Swedish multicenter study.Scand J Gastroenterol Suppl 1987; 127: 61-66(ランダム)

20) Pop P, Nikkels RE, Thys O, et al. Comparison of sucralfate and cimetidine in the treatment of duodenaland gastric ulcers: a multicenter study. Scand J Gastroenterol Suppl 1983; 83: 43-47(ランダム)

21) 崎田隆夫,中村孝司,石川 誠.十二指腸潰瘍に対するミソプロストール(SC-29333)の臨床評価―シメチジンを対照薬とした多施設二重盲検比較試験.臨床評価 1986; 14: 793-826(ランダム)

22) Ranitidine臨床研究班.二重盲検法による Ranitidineの臨床的有用性の検討(第 2報)―十二指腸潰瘍を対象として.臨床成人病 1983; 13: 333-351(ランダム)

23) 国崎忠彦,三浦邦彦,八尾恒良.十二指腸潰瘍に対する FPF1002(シメチジン)の臨床評価―多施設二重盲検試験.臨牀と研究 1983; 60: 1365-1380(ランダム)

24) 三好秋馬,宮崎 保,谷内 昭.十二指腸潰瘍に対する TZU-0460 の有用性の検討―Gefarnateを対照薬とした多施設二重盲検試験.診療と新薬 1985; 22: 1091-1110(ランダム)

25) 三好秋馬,三輪 剛,武藤 弘.十二指腸潰瘍に対する Famotidineの臨床評価―ゲファルナートを対照とした二重盲検法による検討.診療と新薬 1983; 20: 2089-2108(ランダム)

26) 三好秋馬,松尾 裕,岩崎有良.十二指腸潰瘍に対する ZL-101(Nizatidine)の臨床的有用性の検討―シメチジンを対照薬とした多施設二重盲検試験.薬理と治療 1989; 17: 393-415(ランダム)

27) 三好秋馬,谷内 昭,吉田 豊.TZU-0460 の十二指腸潰瘍に対する有用性の検討―cimetidineを対照薬

消化性潰瘍診療ガイドライン2015(改訂第2版),南江堂,2015

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3.非除菌治療

とした多施設二重盲検試験.診療と新薬 1985; 22: 2919-2939(ランダム)28) 松尾 裕,三好秋馬,三輪 剛,ほか.十二指腸潰瘍に対する FRG-8813(Lafutidine)の臨床的有用性の

検討―ファモチジンを対照薬とした多施設二重盲検比較試験.臨床医薬 1998; 14: 2103-2119(ランダム)29) Braverman AJ. Dose validation and study design criteria in current cimetidine studies. Clin Ther 1986; 8

(Suppl A): 49-56(ランダム)30) Alcalá-Santaella R, Guardia J, Pajares J, et al. A multicenter, randomized, double-blind study comparing a

daily bedtime administration of famotidine and ranitidine in short-term treatment of active duodenalulcer. Digestion 1989; 42: 79-85(ランダム)

31) Arcidiacono R, Benvestito V, Bonomo GM, et al. Comparison between ranitidine 150 mg b.d. and raniti-dine 300 mg nocte in the treatment of duodenal ulcer. Int J Clin Pharmacol Ther Toxicol 1986; 24: 381-384

(ランダム)32) Bovero E, Poletti M, Boero A, et al. Nizatidine in the short-term treatment of duodenal ulcer: an Italian

Multicenter Study. Hepatogastroenterology 1987; 34: 269-271(ランダム)33) Castelli G, Squassante L, Uleri S, et al. Different dosage regimens of ranitidine in the short-term therapy of

duodenal ulcer: a multicentre trial. Int J Clin Pharmacol Res 1991; 11: 41-49(ランダム)34) Celle G, Savarino V, Picciotto A, et al. A single-blind pilot study comparing standard and half bedtime

doses of ranitidine in the short-term healing of duodenal ulcer. J Clin Gastroenterol 1990; 12: 255-259(ランダム)

35) Dobrilla G, De Pretis G, Piazzi L, et al. Comparison of once-daily bedtime administration of famotidineand ranitidine in the short-term treatment of duodenal ulcer: a multicenter, double-blind, controlledstudy. Scand J Gastroenterol Suppl 1987; 134: 21-28(ランダム)

36) Farley A, Levesque D, Pare P, et al. A comparative trial of ranitidine 300 mg at night with ranitidine 150mg twice daily in the treatment of duodenal and gastric ulcer. Am J Gastroenterol 1985; 80: 665-668(ランダム)

37) Lee FI, Booth SN, Cochran KM, et al. Single night-time doses of 40 mg famotidine or 800 mg cimetidine inthe treatment of duodenal ulcer. Aliment Pharmacol Ther 1989; 3: 505-512(ランダム)

38) Pace F, Colombo E, Ferrara A, et al. Nizatidine and ranitidine in the short-term treatment of duodenalulcer: a cooperative double-blind study of once-daily bedtime administration. Am J Gastroenterol 1988; 83:643-645(ランダム)

39) Simon B, Dammann HG, Jakob G, et al. Famotidine versus ranitidine for the short-term treatment of duo-denal ulcer. Digestion 1985; 32 (Suppl 1): 32-37(ランダム)

40) 森賀本幸,三好秋馬,谷内 昭.FRG-8813(Lafutidine)の 1日 1回投与による十二指腸潰瘍に対する 2用量比較試験.臨床医薬 1995; 11: 23-34(ランダム)

41) Kildebo S, Aronsen O, Bernersen B, et al. Cimetidine, 800mg at night, in the treatment of duodenal ulcers.Scand J Gastroenterol 1985; 20: 1147-1150(ランダム)

42) Ranitidine臨床研究班.二重盲検法による Ranitidineの 1日 1回 300mg就寝前投与法の臨床的有用性の検討(第 2報)―十二指腸潰瘍を対象として.臨床成人病 1986; 16: 1087-1101(ランダム)

43) 三好秋馬,松尾 裕,森 治樹.十二指腸潰瘍に対する ZL-101(Nizatidine)1日 1回就寝前投与法の検討―二重盲検法による 1日 2回投与法との比較.薬理と治療 1989; 17: 437-455(ランダム)

44) 三好秋馬,谷内 昭,矢花 剛.十二指腸潰瘍を対象とした Famotidine就寝前 1回投与法の検討―二重盲検法による 1日 2回投与法との比較.内科宝函 1987; 34: 405-417(ランダム)

45) 三好秋馬,田中恒男,谷内 昭.十二指腸潰瘍に対する Cimetidine 1 日 1 回就寝前投与法の検討―二重盲検法による 1日 4回投与法との比較.薬理と治療 1987; 15: 4091-4107(ランダム)

46) Jaup BH, Cronstedt J, Dotevall G, et al. Pirenzepine versus cimetidine in duodenal ulcer treatment: a clini-cal and microbiological study. Scand J Gastroenterol 1985; 20: 183-188(ランダム)

47) 山形敞一,石森 章,佐藤勝己.Pirenzepine dihydrochlorideの十二指腸潰瘍に対する多施設二重盲検比較試験.臨床成人病 1984; 14: 435-454(ランダム)

48) Lam SK, Lau WY, Lai CL, et al. Efficacy of sucralfate in corpus, prepyloric, and duodenal ulcer-associatedgastric ulcers: a double-blind, placebo-controlled study. Am J Med 1985; 79: 24-31(ランダム)

49) Martin F, Farley A, Gagnon M, et al. Short-term treatment with sucralfate or cimetidine in gastric ulcer: pre-liminary results of a controlled randomized trial. Scand J Gastroenterol Suppl 1983; 83: 37-41(ランダム)

50) Martin F. Sucralfate suspension 1 g four times per day in the short-term treatment of active duodenalulcer. Am J Med 1989; 86: 104-107(ランダム)

51) Bright-Asare P, Sontag SJ, Gould RJ, et al. Efficacy of misoprostol (twice daily dosage) in acute healing ofduodenal ulcer: a multicenter double-blind controlled trial. Dig Dis Sci 1986; 31: 63S-67S(ランダム)

消化性潰瘍診療ガイドライン2015(改訂第2版),南江堂,2015

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解説

H. pylori 除菌治療によらない十二指腸潰瘍の初期治療における酸分泌抑制薬と防御因子増強薬などとの併用療法に関して,本ガイドライン策定にあたって設定された検索式での検索などによって収集された文献のうち,一定の基準(「CQ 3-1」の表 1参照)を満たす文献を採択し,酸分泌抑制薬(PPIおよびH2RA)と防御因子増強薬などとの併用療法に関する検討を行った(「CQ 3-1」の図 1参照).

1)酸分泌抑制薬と防御因子増強薬の併用療法(H. pylori 除菌治療によらない十二指腸潰瘍の初期治療)におけるエビデンスa.PPI と防御因子増強薬の併用療法ランソプラゾールと防御因子増強薬との併用では潰瘍治癒の上乗せ効果はない 1).b.H2RA と防御因子増強薬などとの併用療法

(1)潰瘍治癒率比較①防御因子増強薬との併用療法:シメチジンとアルジオキサとの併用では潰瘍治癒の上乗せ効果がある 2).

②抗コリン薬との併用療法:シメチジンと臭化チキジウムとの併用 3),塩酸ラニチジンと臭化プロパンテリンとの併用 4)では潰瘍治癒の上乗せ効果はない.

(2)保険適用に関する補足保険適用を有する防御因子増強薬の代表例として,スクラルファート,ミソプロストール,

スルピリド,酸中和薬,アルジオキサ,ゲファルナート,アルギン酸ナトリウム,L-グルタミンなどがある.

Clinical Question 3-4

十二指腸潰瘍に対する非除菌治療(初期治療)において,酸分泌抑制薬と防御因子増強薬の併用療法は有効か?

CQ 3-4 十二指腸潰瘍に対する非除菌治療(初期治療)において,酸分泌抑制薬と防御因子増強薬の併用療法は有効か?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● PPI と防御因子増強薬の併用によって潰瘍治癒の上乗せ効果は得られないため,PPI の単独投与を行うよう提案する.

2(100%) C

● H2RA と防御因子増強薬の併用によって潰瘍治癒の上乗せ効果が得られるため,行うよう提案する:シメチジンとアルジオキサ

2(100%) C

3.非除菌治療 ― ❶初期治療【十二指腸潰瘍】

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3.非除菌治療

文献

1) 宮原 透,勝 健一,山中桓夫.消化性潰瘍に対する Lansoprazole単独投与と粘膜防御因子増強薬併用投与の比較検討.薬理と治療 1997; 25: 2557-2568(非ランダム)

2) アランタ再発予防研究会.消化性潰瘍に対するアルジオキサとシメチジン併用療法に関する臨床的検討(第2報)―十二指腸潰瘍に対する治癒効果および再発予防効果.診療と新薬 1987; 24: 1001-1015(非ランダム)

3) 小林節雄,西岡利夫,関口利和.消化器系運動機能亢進治療剤チアトンとシメチジンとの併用による十二指腸潰瘍の治療に対する臨床効果―シメチジン単独療法との比較検討.医学と薬学1986; 16: 1349-1365(非ランダム)

4) Agrawal BK, Suman A, Kumar A, et al. Combination of anticholinergic agent and H2 receptor antagonistin duodenal ulcer treatment: a randomized, double blind multicenter study. Indian J Gastroenterol 1993;12: 89-91(ランダム)

消化性潰瘍診療ガイドライン2015(改訂第2版),南江堂,2015

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解説

現在,消化性潰瘍に対する初期治療は H. pylori 除菌治療が第一選択であり,さらに除菌治療により有意に潰瘍再発が抑制されることが明らかであるため,除菌治療によらない潰瘍の維持療法の対象は限定される.「消化性潰瘍診療ガイドライン」初版以降に新たな文献は検索ヒットされなかった.除菌治療によらない胃潰瘍の再発予防効果に対してプラセボを対照とした RCTが多数検討されており 1〜14),エビデンスの質が高く評価できる(エビデンスレベル A).胃潰瘍の維持療法はこれまでよく行われており,その安全性は高く,利益が確実であり,介入のコストは比較的低いため,推奨の強さを「1」(強い推奨)とした.Hentschelらは,治癒した胃潰瘍 112例のうち,108 例をシメチジン 400mgとプラセボとの二重盲検比較試験へ登録し,1年後に評価が可能であった 84 例を検討した.その結果,シメチジン治療群の 86%が 1年後の潰瘍再発抑制効果を示し,プラセボ群の 45%より有意に高い非再発率であった(図1)1).これを含め,プラセボを対照とした多くの RCTにて胃潰瘍の再発抑制に効果が認められた.除菌治療を行わない場合には,胃潰瘍の初期治療で潰瘍が治癒したのちは,再発を抑制するために維持療法を行うことを推奨する.

文献

1) Hentschel E, Schütze K, Weiss W, et al. Effect of cimetidine treatment in the prevention of gastric ulcerrelapse: a one year double blind multicentre study. Gut 1983; 24: 853-856(ランダム)

2) Barr GD, Kang JY, Canalese J, et al. A two-year prospective controlled study of maintenance cimetidineand gastric ulcer. Gastroenterology 1983; 85: 100-104(ランダム)

3) Classen M, Bethge H, Brunner G, et al. Effect of sucralfate on peptic ulcer recurrence: a controlled double-blind multicenter study. Scand J Gastroenterol 1983; 18 (Suppl 83): 61-68(ランダム)

4) 増田久之,佐藤 誠,井上修一,ほか.胃潰瘍の再発防止に対する二重盲検比較試験による臨床的薬効評価―胃潰瘍再発に対するスクラルフェートの作用.臨床と研究 1983; 60: 2265-2272(ランダム)

5) Kinloch JD, Pearson AJ, Woolf IL, et al. The effect of cimetidine on the maintenance of healing of gastric

Clinical Question 3-5

胃潰瘍の非除菌治療において維持療法は必要か?

CQ 3-5 胃潰瘍の非除菌治療において維持療法は必要か?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● 除菌治療によらない胃潰瘍治療において,維持療法は治癒後の再発抑制に有効な治療法であり,行うことを推奨する.

1(100%) A

3.非除菌治療 ― ❷維持療法【胃潰瘍】

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3.非除菌治療

ulceration. Postgrad Med J 1984; 60: 665-667(ランダム)6) Marks IN, Wright JP, Girdwood AH, et al. Maintenance therapy with sucralfate reduces rate of gastric

ulcer recurrence. Am J Med 1985; 79: 32-35(ランダム)7) Piper DW, Pym BM, Toy S, et al. The effect of maintenance cimetidine therapy on the medical, social and

economic aspects of patients with chronic gastric ulcers: a placebo-controlled prospective study. Med JAust 1986; 145: 400-403(ランダム)

8) Jorde R, Burhol PG, Hansen T. Ranitidine 150 mg at night in the prevention of gastric ulcer relapse. Gut1987; 28: 460-463(ランダム)

9) Marks IN, Girdwood AH, Wright JP, et al. Nocturnal dosage regimen of sucralfate in maintenance treat-ment of gastric ulcer. Am J Med 1987; 83: 95-98(ランダム)

10) Blum AL, Bethge H, Bode JC, et al. Sucralfate in the treatment and prevention of gastric ulcer: multicentredouble blind placebo controlled study. Gut 1990; 31: 825-830(ランダム)

11) The European Cooperative Roxatidine Study Group. Roxatidine acetate as maintenance treatment for pep-tic ulcer disease. Clin Ther 1991; 13: 47-57(ランダム)

12) Berlin RG, Root JK, Cook TJ. Nocturnal therapy with famotidine for 1 year is effective in preventingrelapse of gastric ulcer. Aliment Pharmacol Ther 1991; 5: 161-171(ランダム)

13) Battaglia G. Risk Factors of relapse in gastric ulcer: a one-year, double-blind, comparative study of nizati-dine versus placebo. Ital J Gastroenterol 1994; 26 (Suppl 1): 19-22(ランダム)

14) Sue SO, Dawson DM, Brown JA, et al. Effectiveness of ranitidine 150mg at bedtime as maintenance thera-py for healed gastric ulcers. Clin Ther 1996; 18: 1175-1183(ランダム)

図 1 胃潰瘍の再発予防におけるシメチジンの効果(文献 1より引用)

シメチジン 54/050/1

48/147/5

46/545/5

42/6

54/049/2

45/543/17

42/1942/19

42/23プラセボ

治療経過

シメチジンプラセボ

0 2 4 6 8 10 12 (月)

100

80

60

40

20

0

寛解率

(%)

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解説

「消化性潰瘍診療ガイドライン」初版以降に新たな文献は検索ヒットされなかった.除菌治療によらない胃潰瘍の再発予防効果に対してプラセボを対照とした RCTが多数検討されており,エビデンスの質が高く評価できる(エビデンスレベル A).胃潰瘍の維持療法はこれまでよく行われており,その安全性は高く,利益が確実であり,介入のコストは比較的低いため,推奨の強さを「1」(強い推奨)とした.Hentschelらは,治癒した胃潰瘍 112 例のうち,108 例をシメチジン 400mgとプラセボとの二重盲検比較試験へ登録し,1年後に評価が可能であった 84 例を検討した.その結果,シメチジン治療群の 86%が 1年後の潰瘍再発抑制効果を示し,プラセボ群の 45%より有意に高い非再発率であった 1).これを含め,プラセボを対照とした RCTにて胃潰瘍の再発抑制に効果が認められた薬剤は,シメチジン 400mg 1〜3),同 800mg 4),塩酸ラニチジン150mg 5, 6),ファモチジン20mg 7),塩酸ロキサチジンアセタート 75mg 8),ニザチジン150mg 9),スクラルファート 2g 10〜13),同 3g 11),同 4g 14)である.胃潰瘍の維持療法において,その有効性がプラセボを対照とした RCTによって証明された薬剤はH2RAやスクラルファートであり,維持療法にはこれらを選択することを推奨する(表1).

Clinical Question 3-6

胃潰瘍に対する非除菌治療(維持療法)にどのような薬剤を選択すべきか?

CQ 3-6 胃潰瘍に対する非除菌治療(維持療法)にどのような薬剤を選択すべきか?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● 胃潰瘍に対する非除菌治療の維持療法には H2RA やスクラルファートを選択することを推奨する.

1(100%) A

3.非除菌治療 ― ❷維持療法【胃潰瘍】

表1 プラセボ対照の比較試験で胃潰瘍の再発抑制に効果の認められた薬剤とその用量

シメチジン 400mg 1~3),800mg 4)

塩酸ラニチジン 150mg 5, 6)

ファモチジン 20mg 7)

塩酸ロキサチジンアセタート 75mg 8)

ニザチジン 150mg 9)

スクラルファート 2g 10~13),3g 11),4g 14)

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3.非除菌治療

文献

1) Hentschel E, Schütze K, Weiss W, et al. Effect of cimetidine treatment in the prevention of gastric ulcerrelapse: a one year double blind multicentre study. Gut 1983; 24: 853-856(ランダム)

2) Kinloch JD, Pearson AJ, Woolf IL, et al. The effect of cimetidine on the maintenance of healing of gastriculceration. Postgrad Med J 1984; 60: 665-667(ランダム)

3) Piper DW, Pym BM, Toy S, et al. The effect of maintenance cimetidine therapy on the medical, social andeconomic aspects of patients with chronic gastric ulcers: a placebo-controlled prospective study. Med JAust 1986; 145: 400-403(ランダム)

4) Barr GD, Kang JY, Canalese J, et al. A two-year prospective controlled study of maintenance cimetidineand gastric ulcer. Gastroenterology 1983; 85: 100-104(ランダム)

5) Jorde R, Burhol PG, Hansen T. Ranitidine 150 mg at night in the prevention of gastric ulcer relapse. Gut1987; 28: 460-463(ランダム)

6) Sue SO, Dawson DM, Brown JA, et al. Effectiveness of ranitidine 150mg at bedtime as maintenance thera-py for healed gastric ulcers. Clin Ther 1996; 18: 1175-1183(ランダム)

7) Berlin RG, Root JK, Cook TJ. Nocturnal therapy with famotidine for 1 year is effective in preventingrelapse of gastric ulcer. Aliment Pharmacol Ther 1991; 5: 161-171(ランダム)

8) The European Cooperative Roxatidine Study Group. Roxatidine acetate as maintenance treatment for pep-tic ulcer disease. Clin Ther 1991; 13: 47-57(ランダム)

9) Battaglia G. Risk Factors of relapse in gastric ulcer: a one-year, double-blind, comparative study of nizati-dine versus placebo. Ital J Gastroenterol 1994; 26 (Suppl 1): 19-22(ランダム)

10) Classen M, Bethge H, Brunner G, et al. Effect of sucralfate on peptic ulcer recurrence: a controlled double-blind multicenter study. Scand J Gastroenterol 1983; 18 (Suppl 83): 61-68(ランダム)

11) Marks IN, Wright JP, Girdwood AH, et al. Maintenance therapy with sucralfate reduces rate of gastriculcer recurrence. Am J Med 1985; 79: 32-35(ランダム)

12) Marks IN, Girdwood AH, Wright JP, et al. Nocturnal dosage regimen of sucralfate in maintenance treat-ment of gastric ulcer. Am J Med 1987; 83: 95-98(ランダム)

13) Blum AL, Bethge H, Bode JC, et al. Sucralfate in the treatment and prevention of gastric ulcer: multicentredouble blind placebo controlled study. Gut 1990; 31: 825-830(ランダム)

14) 増田久之,佐藤 誠,井上修一,ほか.胃潰瘍の再発防止に対する二重盲検比較試験による臨床的薬効評価―胃潰瘍再発に対するスクラルフェートの作用.臨床と研究 1983; 60: 2265-2272(ランダム)

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解説

PPIやH2RAに加え防御因子増強薬の併用することについて,「消化性潰瘍診療ガイドライン」初版以降に新たな文献報告はなかった.初版時の文献もエビデンスレベルは高くなく,その有用性についても明らかな差は出ていない(エビデンスレベル C).塚本ら 1)は,活動性胃潰瘍に対してオメプラゾール 20mg/日の単独療法(n=65 例)とこれに加えてレバミピド 300mg/日との併用療法(n=86 例)の 2群に無作為に割り付け,これらの潰瘍治癒率を検討した.治療 4週後の累積内視鏡治癒率は,単独群 33%,併用群 38%と併用群でやや高率であったが,8週後では単独群 97%,併用群 95%とともに高率であり,差を認めなかった.さらに,塚本らは内視鏡的治癒確認後に単独群 36 例,併用群 44 例の維持療法による 1年間の再発率を検討した.6ヵ月後の再発率は両群間には差はなく,さらに 1年後の累積再発率も単独群 47%,併用群 36%であり,両群間に有意な差は認めていない.

文献

1) 塚本純久,後藤秀実,長谷 智,ほか.プロトンポンプ阻害剤による胃潰瘍の内科的治療における防御因子増強剤レバミピド併用の意義―超音波内視鏡による治癒過程の観察と再発率の検討.臨床成人病1994; 24:1497-1503(ランダム)

Clinical Question 3-7

胃潰瘍に対する非除菌治療(維持療法)において,酸分泌抑制薬と防御因子増強薬の併用療法は有効か?

CQ 3-7 胃潰瘍に対する非除菌治療(維持療法)において,酸分泌抑制薬と防御因子増強薬の併用療法は有効か?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● H2RA と防御因子増強薬の併用によって潰瘍治癒の上乗せ効果が得られるため,行うよう提案する.

2(100%) C

3.非除菌治療 ― ❷維持療法【胃潰瘍】

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— 86 —

解説

除菌治療によらない胃潰瘍の再発予防効果に対してプラセボを対照とした RCTが多数検討されており,エビデンスの質が高く評価できる(エビデンスレベル A).胃潰瘍の維持療法はこれまで広く行われており,その安全性は高く,利益が確実であり,介入のコストは比較的低いため,推奨の強さを「1」(強い推奨)とした.胃潰瘍に対する維持療法の期間に関しては,ほとんどの文献が 6ヵ月 1〜3)から 1年 4〜14)までの報告であり,1年間の比較では多くの RCTにて有意な差が認められている(図1).しかし,1年を超える長期有効性の報告は少なく,長期観察が

Clinical Question 3-8

胃潰瘍に対する非除菌治療(維持療法)の期間はどのくらい必要か?

CQ 3-8 胃潰瘍に対する非除菌治療(維持療法)の期間はどのくらい必要か?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● 維持療法は 1 年まで有効であり,行うことを推奨する. 1(100%) A

3.非除菌治療 ― ❷維持療法【胃潰瘍】

図 1 塩酸ラニチジンとプラセボにおける胃潰瘍の累積再発率の比較塩酸ラニチジン群における胃潰瘍再発率はプラセボ群と比較して有意に低く(p<0.01),1年間の累積再発率はそれ

ぞれ 36%,76%であった.(文献 9より引用)

100

80

60

40

20

0

(%)

4~6 7~9 10~12 (月)経過

塩酸ラニチジン (n=25)

プラセボ  (n=25)

0~3

5

11

15 15

19

5

79

胃潰瘍の累積再発率

消化性潰瘍診療ガイドライン2015(改訂第2版),南江堂,2015

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②維持療法【胃潰瘍】

行われていても次第に脱落例が多くなり,有意差が得られにくくなっていると考えられる.よって,維持療法は 1年まで有効であるとし,維持療法を行うことを推奨する.

文献

1) Classen M, Bethge H, Brunner G, et al. Effect of sucralfate on peptic ulcer recurrence: a controlled double-blind multicenter study. Scand J Gastroenterol 1983; 18 (Suppl 83): 61-68(ランダム)

2) Marks IN, Wright JP, Girdwood AH, et al. Maintenance therapy with sucralfate reduces rate of gastriculcer recurrence. Am J Med 1985; 79: 32-35(ランダム)

3) Marks IN, Girdwood AH, Wright JP, et al. Nocturnal dosage regimen of sucralfate in maintenance treat-ment of gastric ulcer. Am J Med 1987; 83: 95-98(ランダム)

4) Hentschel E, Schütze K, Weiss W, et al. Effect of cimetidine treatment in the prevention of gastric ulcerrelapse: a one year double blind multicentre study. Gut 1983; 24: 853-856(ランダム)

5) Barr GD, Kang JY, Canalese J, et al. A two-year prospective controlled study of maintenance cimetidineand gastric ulcer. Gastroenterology 1983; 85: 100-104(ランダム)

6) 増田久之,佐藤 誠,井上修一,ほか.胃潰瘍の再発防止に対する二重盲検比較試験による臨床的薬効評価―胃潰瘍再発に対するスクラルフェートの作用.臨床と研究 1983; 60: 2265-2272(ランダム)

7) Kinloch JD, Pearson AJ, Woolf IL, et al. The effect of cimetidine on the maintenance of healing of gastriculceration. Postgrad Med J 1984; 60: 665-667(ランダム)

8) Piper DW, Pym BM, Toy S, et al. The effect of maintenance cimetidine therapy on the medical, social andeconomic aspects of patients with chronic gastric ulcers: a placebo-controlled prospective study. Med JAust 1986; 145: 400-403(ランダム)

9) Jorde R, Burhol PG, Hansen T. Ranitidine 150 mg at night in the prevention of gastric ulcer relapse. Gut1987; 28: 460-463(ランダム)

10) Blum AL, Bethge H, Bode JC, et al. Sucralfate in the treatment and prevention of gastric ulcer: multicentredouble blind placebo controlled study. Gut 1990; 31: 825-830(ランダム)

11) The European Cooperative Roxatidine Study Group. Roxatidine acetate as maintenance treatment for pep-tic ulcer disease. Clin Ther 1991; 13: 47-57(ランダム)

12) Berlin RG, Root JK, Cook TJ. Nocturnal therapy with famotidine for 1 year is effective in preventingrelapse of gastric ulcer. Aliment Pharmacol Ther 1991; 5: 161-171(ランダム)

13) Battaglia G. Risk Factors of relapse in gastric ulcer: a one-year, double-blind, comparative study of nizati-dine versus placebo. Ital J Gastroenterol 1994; 26 (Suppl 1): 19-22(ランダム)

14) Sue SO, Dawson DM, Brown JA, et al. Effectiveness of ranitidine 150mg at bedtime as maintenance thera-py for healed gastric ulcers. Clin Ther 1996; 18: 1175-1183(ランダム)

消化性潰瘍診療ガイドライン2015(改訂第2版),南江堂,2015

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解説

除菌治療によらない胃潰瘍の治療にあたっては,H. pylori の持続感染が認められるため,胃潰瘍の治癒後も胃癌発生のリスクがある.そのため,治療終了後も症状の有無に関係なく,定期的な内視鏡検査を行い,胃癌の早期発見に努めることは重要である.また,熊ら 1)はシメチジンを使用して治癒した胃潰瘍 65 例,十二指腸潰瘍 33 例の経過について検討した.維持療法後の胃潰瘍再発は多発群,S1 stage,維持療法が 6ヵ月以下であり,多くは 2年以内に認められるため,消化性潰瘍の治療にあたっては,少なくとも 6ヵ月以上の維持療法を行って S2 stageの治癒を確認し,治療終了後も症状の有無に関係なく,2年間程度は 6ヵ月〜1年に 1回程度,定期的に内視鏡検査を行い,再発の早期発見に努めることが重要であると報告している.胃潰瘍の維持療法中は胃潰瘍再発や胃癌の早期発見のため,内視鏡による定期観察を行うことを提案する.

文献

1) 熊 英治郎,中川 均,海沼滋典,ほか.消化性潰瘍の内視鏡的治癒判定とその予後―消化性潰瘍治療終了後の経過.Progress of Digestive Endoscopy(消化器内視鏡の進歩)1989; 34: 19-24(横断)

Clinical Question 3-9

胃潰瘍に対する非除菌治療において,維持療法中に内視鏡検査は必要か?

CQ 3-9 胃潰瘍に対する非除菌治療において,維持療法中に内視鏡検査は必要か?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● 胃潰瘍の非除菌治療における維持療法中は胃潰瘍再発や胃癌の早期発見のため,内視鏡による定期観察を行うことを推奨する.

1(100%) B

3.非除菌治療 ― ❷維持療法【胃潰瘍】

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解説

現在,消化性潰瘍に対する初期治療は H. pylori 除菌治療が第一選択であり,さらに除菌治療により有意に潰瘍再発が抑制されることが明らかであるため,除菌治療によらない潰瘍の維持療法の対象は限定される.「消化性潰瘍診療ガイドライン」初版以降に新たな文献は検索ヒットされなかった.除菌治療によらない十二指腸潰瘍の再発予防効果に対してプラセボを対照としたRCTが多数実施されており,エビデンスの質が高く評価できる(エビデンスレベル A).十二指腸潰瘍の維持療法はこれまで広く行われており,その安全性は高く,利益が確実であり,介入のコストは比較的低いため,推奨の強さを「1」(強い推奨)とした.Sontagらは,十二指腸潰瘍370 例をシメチジン 400mg(1日 2回分割投与群 83 例,1日 1回投与群 67 例),同 600mg(1日2回分割投与群 150 例)とプラセボ(70 例)との二重盲検比較試験へ登録し,1年後の再発率を検討した.その結果,シメチジン治療群のいずれもがプラセボ群より有意に 1年後の潰瘍再発抑制効果を示した 1).これを含め,プラセボを対照とした RCTにて十二指腸潰瘍の再発抑制に効果が認められた薬剤は,シメチジン 400mg 1, 2),同 600mg 1),塩酸ラニチジン 150mg 2〜5),ファモチジン 20mg 2, 6),同 40mg 2, 6),塩酸ロキサチジンアセタート 75mg 7),ニザチジン 150mg 2, 8),スクラルファート 2g 9),オメプラゾール 20mg 10),ランソプラゾール 15mg 11)である.H. pylori

除菌治療を行わない場合には,十二指腸潰瘍の初期治療で潰瘍が治癒したあとは,再発を抑制するために維持療法を行うことを推奨する(図1).

文献

1) Sontag S, Graham DY, Belsito A, et al. Cimetidine, cigarette smoking, and recurrence of duodenal ulcer. NEngl J Med 1984; 311: 689-693(ランダム)

2) Palmer RH, Frank WO, Karlstadt R. Maintenance therapy of duodenal ulcer with H2-receptor antagonists:a meta-analysis. Aliment Pharmacol Ther 1990; 4: 283-294(メタ)

3) Van Deventer GM, Elashoff JD, Reedy TJ et al. A randomized study of maintenance therapy with raniti-

Clinical Question 3-10

十二指腸潰瘍の非除菌治療において維持療法は必要か?

CQ 3-10 十二指腸潰瘍の非除菌治療において維持療法は必要か?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● 除菌治療によらない十二指腸潰瘍治療において,維持療法は治癒後の再発抑制に有効な治療法であり,行うことを推奨する.

1(100%) A

3.非除菌治療 ― ❷維持療法【十二指腸潰瘍】

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3.非除菌治療

dine to prevent the recurrence of duodenal ulcer. N Engl J Med 1989; 320: 1113-1119(ランダム)4) Ruszniewski P, Slama A, Pappo M, et al. Two year maintenance treatment of duodenal ulcer disease with

ranitidine 150mg: a prospective multicentre randomised study. Gut 1993; 34: 1662-1665(ランダム)5) Jensen DM, Cheng S, Kovacs TO, et al. A controlled study of ranitidine for the prevention of recurrent

hemorrhage from duodenal ulcer. N Engl J Med 1994; 330: 382-386(ランダム)6) Texter EC Jr, Navab F, Mantell G, et al. Maintenance therapy of duodenal ulcer with famotidine. A multi-

center United States study. Am J Med 1986; 81: 25-32(ランダム)7) The European Cooperative Roxatidine Study Group. Roxatidine acetate as maintenance treatment for pep-

tic ulcer disease. Clin Ther 1991; 13: 47-57(ランダム)8) Cerulli MA, Cloud ML, Offen WW, et al. Nizatidine as maintenance therapy of duodenal ulcer disease in

remission. Scand J Gastroenterol 1987; 22 (Suppl 136): 79-83(ランダム)9) Classen M, Bethge H, Brunner G, et al. effect of sucralfate on peptic ulcer recurrence: a controlled double-

blind multicenter study. Scand J Gastroenterol 1983; 18 (Suppl 83): 61-68(ランダム)10) Goh KL, Boonyapisit S, Lai KH, et al. Prevention of duodenal ulcer relapse with omeprazole 20mg daily: a

randomized double-blind, placebo-controlled study. J Gastroenterol Hepatol 1995; 10: 92-97(ランダム)11) Lanza F, Goff J, Silvers D, et al. Prevention of duodenal ulcer recurrence with 15 mg lansoprazole: a dou-

ble-blind placebo-controlled study: The Lansoprazole Study Group. Dig Dis Sci 1997; 42: 2529-2536(ランダム)

図 1 塩酸ラニチジンとプラセボにおける十二指腸潰瘍累積非再発率の比較塩酸ラニチジンとプラセボにおける 2年間の比較では,塩酸ラニチジンは十二指腸潰瘍の再発を有意に抑制した(p<

0.001).(文献 4より引用)

6 12 18 24 (月)

経過

(%)100

80

60

40

20

0

十二指腸潰瘍累積再発率

塩酸ラニチジン

プラセボ

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解説

「消化性潰瘍診療ガイドライン」初版以降に新たな文献は検索ヒットされなかった.除菌治療によらない十二指腸潰瘍の再発予防効果に対してプラセボを対照とした RCTが多数実施されており,エビデンスの質が高く評価できる(エビデンスレベル A).十二指腸潰瘍の維持療法はこれまで広く行われており,その安全性は高く,利益が確実であり,介入のコストは比較的低いため,推奨の強さを「1」(強い推奨)とした.Sontagらは,十二指腸潰瘍 370 例をシメチジン400mg(1日 2回分割投与群 83 例,1日 1回投与群 67 例),同 600mg(1日 2回分割投与群 150例)とプラセボ(70 例)との二重盲検比較試験へ登録し,1年後の再発率を検討した.その結果,シメチジン治療群のいずれもがプラセボ群より有意に 1年後の潰瘍再発抑制効果を示した 1).これを含め,プラセボを対照とした RCTにて十二指腸潰瘍の再発抑制に効果が認められた薬剤は,シメチジン 400mg 1, 2),同 600mg 1),塩酸ラニチジン 150mg 2〜5),ファモチジン 20mg 2, 6),同40mg 2, 6),塩酸ロキサチジンアセタート 75mg 7),ニザチジン 150mg 2, 8),スクラルファート 2g 9),オメプラゾール 20mg 10),ランソプラゾール 15mg 11)である.よって,十二指腸潰瘍の維持療法には PPI,H2RA,スクラルファートを選択することを推奨する(表1).なお,維持療法として

Clinical Question 3-11

十二指腸潰瘍に対する非除菌治療(維持療法)にはどのような薬剤を選択すべきか?

CQ 3-11 十二指腸潰瘍に対する非除菌治療(維持療法)にはどのような薬剤を選択すべきか?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● 十二指腸潰瘍の非除菌治療において維持療法には PPI,H2RA,スクラルファートを選択することを推奨する.

1(100%) A

3.非除菌治療 ― ❷維持療法【十二指腸潰瘍】

表1 プラセボ対照の比較試験で十二指腸潰瘍の再発抑制に効果の認められた薬剤とその用量

シメチジン 400mg 1, 2),600mg 1)

塩酸ラニチジン 150mg 2~5)

ファモチジン 20mg 2, 6),40mg 2, 6)

塩酸ロキサチジンアセタート 75mg 7)

ニザチジン 150mg 2, 8)

スクラルファート 2g 9)

オメプラゾール 20mg 10)ランソプラーゾール 15mg 11)

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3.非除菌治療

の PPIの使用は保険適用外である.

文献

1) Sontag S, Graham DY, Belsito A, et al. Cimetidine, cigarette smoking, and recurrence of duodenal ulcer. NEngl J Med 1984; 311: 689-693(ランダム)

2) Palmer RH, Frank WO, Karlstadt R. Maintenance therapy of duodenal ulcer with H2-receptor antagonists:a meta-analysis. Aliment Pharmacol Ther 1990; 4: 283-294(メタ)

3) Van Deventer GM, Elashoff JD, Reedy TJ et al. A randomized study of maintenance therapy with raniti-dine to prevent the recurrence of duodenal ulcer. N Engl J Med 1989; 320: 1113-1119(ランダム)

4) Ruszniewski P, Slama A, Pappo M, et al. Two year maintenance treatment of duodenal ulcer disease withranitidine 150mg: a prospective multicentre randomised study. Gut 1993; 34: 1662-1665(ランダム)

5) Jensen DM, Cheng S, Kovacs TO, et al. A controlled study of ranitidine for the prevention of recurrenthemorrhage from duodenal ulcer. N Engl J Med 1994; 330: 382-386(ランダム)

6) Texter EC Jr, Navab F, Mantell G, et al. Maintenance therapy of duodenal ulcer with famotidine. A multi-center United States study. Am J Med 1986; 81: 25-32(ランダム)

7) The European Cooperative Roxatidine Study Group. Roxatidine acetate as maintenance treatment for pep-tic ulcer disease. Clin Ther 1991; 13: 47-57(ランダム)

8) Cerulli MA, Cloud ML, Offen WW, et al. Nizatidine as maintenance therapy of duodenal ulcer disease inremission. Scand J Gastroenterol 1987; 22 (Suppl 136): 79-83(ランダム)

9) Classen M, Bethge H, Brunner G, et al. effect of sucralfate on peptic ulcer recurrence: a controlled double-blind multicenter study. Scand J Gastroenterol 1983; 18 (Suppl 83): 61-68(ランダム)

10) Goh KL, Boonyapisit S, Lai KH, et al. Prevention of duodenal ulcer relapse with omeprazole 20mg daily: arandomized double-blind, placebo-controlled study. J Gastroenterol Hepatol 1995; 10: 92-97(ランダム)

11) Lanza F, Goff J, Silvers D, et al. Prevention of duodenal ulcer recurrence with 15 mg lansoprazole: a dou-ble-blind placebo-controlled study: The Lansoprazole Study Group. Dig Dis Sci 1997; 42: 2529-2536(ランダム)

消化性潰瘍診療ガイドライン2015(改訂第2版),南江堂,2015

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— 93 —

解説

酸分泌抑制薬に加え防御因子増強薬の併用することについて,「消化性潰瘍診療ガイドライン」初版以降に新たな文献報告はなかった.よって,初版と同様に十二指腸潰瘍の維持療法において,PPIあるいはH2RAの単剤(単独)治療を行うよう推奨する.

文献

該当する文献なし

Clinical Question 3-12

十二指腸潰瘍に対する非除菌治療(維持療法)において,酸分泌抑制薬と防御因子増強薬の併用療法は有効か?

CQ 3-12 十二指腸潰瘍に対する非除菌治療(維持療法)において,酸分泌抑制薬と防御因子増強薬の併用療法は有効か?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● PPI あるいは H2RA の単剤(単独)治療を行うよう推奨する. 1(90%) なし

3.非除菌治療 ― ❷維持療法【十二指腸潰瘍】

消化性潰瘍診療ガイドライン2015(改訂第2版),南江堂,2015

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— 94 —

解説

除菌治療によらない十二指腸潰瘍の再発予防効果に対してプラセボを対照とした RCTが多数検討されており,エビデンスの質が高く評価できる(エビデンスレベル A).十二指腸潰瘍の維持療法はこれまで広く行われており,その安全性は高く,利益が確実であり,介入のコストは比較的低いため,推奨の強さを「1」(強い推奨)とした.十二指腸潰瘍に対する維持療法の期間に関しては,多くは 6ヵ月 1),1年 2〜4),2 年 5〜7)までの RCTがあり,これらの比較では有意な差が認められている(「CQ 3-10」の図 1参照).しかし,2年を超える長期の有効性に関する報告はなく,これ以上の長期観察が行われていても次第に脱落例が多くなり,有意差が得られにくくなっていると考えられる.よって,十二指腸潰瘍に対する維持療法の期間は 2年まで有効であるとし,維持療法を行うことを推奨する.

文献

1) Classen M, Bethge H, Brunner G, et al. effect of sucralfate on peptic ulcer recurrence: a controlled double-blind multicenter study. Scand J Gastroenterol 1983; 18 (Suppl 83): 61-68(ランダム)

2) Sontag S, Graham DY, Belsito A, et al. Cimetidine, cigarette smoking, and recurrence of duodenal ulcer. NEngl J Med 1984; 311: 689-693(ランダム)

3) Texter EC Jr, Navab F, Mantell G, et al. Maintenance therapy of duodenal ulcer with famotidine: a multi-center United States study. Am J Med 1986; 81: 25-32(ランダム)

4) The European Cooperative Roxatidine Study Group. Roxatidine acetate as maintenance treatment for pep-tic ulcer disease. Clin Ther 1991; 13: 47-57(ランダム)

5) Cerulli MA, Cloud ML, Offen WW, et al. Nizatidine as maintenance therapy of duodenal ulcer disease inremission. Scand J Gastroenterol 1987; 22 (Suppl 1369): 79-83(ランダム)

6) Van Deventer GM, Elashoff JD, Reedy TJ et al. A randomized study of maintenance therapy with raniti-dine to prevent the recurrence of duodenal ulcer. N Engl J Med 1989; 320: 1113-1119(ランダム)

7) Ruszniewski P, Slama A, Pappo M, et al. Two year maintenance treatment of duodenal ulcer disease withranitidine 150mg: a prospective multicentre randomised study. Gut 1993; 34: 1662-1665(ランダム)

Clinical Question 3-13

十二指腸潰瘍に対する非除菌治療(維持療法)の期間はどのくらい必要か?

CQ 3-13 十二指腸潰瘍に対する非除菌治療(維持療法)の期間はどのくらい必要か?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● 十二指腸潰瘍に対する非除菌治療における維持療法は 2 年まで有効であるため,維持療法を行うことを推奨する.

1(100%) A

3.非除菌治療 ― ❷維持療法【十二指腸潰瘍】

消化性潰瘍診療ガイドライン2015(改訂第2版),南江堂,2015

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解説

熊ら 1)はシメチジンを使用して治癒した胃潰瘍 65 例,十二指腸潰瘍 33 例の経過について検討した.維持療法後の胃潰瘍再発は多発群,S1 stage,維持療法が 6ヵ月以下であり,多くは 2年以内に認められるため,消化性潰瘍の治療にあたっては,少なくとも 6ヵ月以上の維持療法を行って S2 stageの治癒を確認し,治療終了後も症状の有無に関係なく,2年間程度は 6ヵ月〜1年に 1回程度,定期的に内視鏡検査を行い,再発の早期発見に努めることが重要であると報告している.十二指腸潰瘍の維持療法中は潰瘍再発の早期発見のため,内視鏡による定期観察を行うことを提案する.除菌治療によらない十二指腸潰瘍の治療にあたっては,H. pylori の持続感染が認められるため,十二指腸潰瘍の治癒後も胃癌発生のリスクがある.そのため,治療終了後も症状の有無に関係なく,定期的な内視鏡検査を行い,胃癌の早期発見に努めることは重要である.

文献

1) 熊 英治郎,中川 均,海沼滋典,ほか.消化性潰瘍の内視鏡的治癒判定とその予後―消化性潰瘍治療終了後の経過.Progress of Digestive Endoscopy(消化器内視鏡の進歩)1989; 34: 19-24(横断)

Clinical Question 3-14

十二指腸潰瘍に対する非除菌治療において,維持療法中に内視鏡検査は必要か?

CQ 3-14 十二指腸潰瘍に対する非除菌治療において,維持療法中に内視鏡検査は必要か?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● 十二指腸潰瘍の維持療法中は,十二指腸潰瘍再発や胃癌の早期発見のため,内視鏡による定期観察を行うことを提案する.

2(100%) B

3.非除菌治療 ― ❷維持療法【十二指腸潰瘍】

消化性潰瘍診療ガイドライン2015(改訂第2版),南江堂,2015

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4.薬物性潰瘍

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— 98 —

解説

海外のメタアナリシスでの潰瘍のリスクはNSAIDs(−)/H. pylori(−)のリスクを 1とすると,オッズ比は H. pylori(+)では 18.1,NSAIDs(+)では 19.4,NSAIDs(+)/ H. pylori(+)では61.1 と著明に増大する.上部消化管出血のリスクは同様に両者(−)を 1とすると,H. pylori(+)では 1.79,NSAIDs(+)では 4.85,NSAIDs(+)/ H. pylori(+)では 6.13 であった 1).日本のケースコントロール研究でも,上部消化管出血のリスクは,H. pylori(+)では 5.4,NSAIDs(+)では 4.1,NSAIDs(+)/ H. pylori(+)では 10.4 であった 2).以上のように海外,日本の報告ともにNSAIDsと H. pylori は相加的に上部消化管出血のリスクを高める.さらに 2010 年に発表されたシステマティックレビューにおいても,一般的なNSAIDsの上部消化管出血,穿孔に対するリスクは非内服者に比して 4.5 倍と示された 3).

文献

1) Huang JQ, Sridhar S, Hunt RH. Role of Helicobacter pylori infection and non-steroidal anti-inflammatorydrugs in peptic ulcer disease: a meta-analysis. Lancet 2002; 359: 14-22(メタ)

2) Sakamoto C, Sugano K, Ota S, et al. Case-control study on the association of upper gastrointestinal bleed-ing and nonsteroidal anti-inflammatory drugs in Japan, Eur J Clin Pharmacol 2006; 62: 765-772(ケースコントロール)

3) Massó González EL, Patrignani P, Tacconelli S, et al. Variability among nonsteroidal antiinflammatorydrugs in risk of upper gastrointestinal bleeding. Arthritis Rheum 2010; 62: 1592-1601(メタ)

Clinical Question 4-1

NSAIDs 服用者では,消化性潰瘍,上部消化管出血のリスクは高まるか?

CQ 4-1 NSAIDs 服用者では,消化性潰瘍,上部消化管出血のリスクは高まるか?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● NSAIDs 服用により,消化性潰瘍,上部消化管出血のリスクは明らかに高まる. なし A

4.薬物性潰瘍 ― ❶NSAIDs 潰瘍(低用量アスピリンを含む)【疫学・病態】

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— 99 —

解説

NSAIDs起因性胃・十二指腸潰瘍に対する予防試験のメタアナリシスでは,NSAIDs投与が 1週間から 6ヵ月間において内視鏡検査によって認められたプラセボ群での胃潰瘍の発生率は14.2%(3.4〜48.6%),十二指腸潰瘍の発生率は 5.4%(0〜26.7%)である(表1)1).低用量アスピリン服用者に対する内視鏡検査を用いた観察研究では,アスピリン投与後 3ヵ月目で胃・十二指腸が 10.7%に認められた 2).日本で 3ヵ月以上のNSAIDs服用者に対する内視鏡検査では,胃潰瘍を 10〜15%,十二指腸潰瘍を 2%に認めた 3, 4).3 ヵ月以上のアスピリンを服用している虚血性心疾患患者に対する内視鏡検査では,胃・十二指腸潰瘍が 12.4〜18.8%に認められた 5, 6).COX-2 選択的阻害薬と従来型NSAIDsの 6ヵ月〜1年間投与による比較試験では,消化管出

血の頻度は従来型NSAIDsで 0.42〜1.7%,COX-2 選択的阻害薬では 0.26〜0.76%である 7).海外での低用量アスピリン約 4年間服用での消化管出血の頻度は 1.1%である 8, 9).日本での多施設共同の症例対照研究では,上部消化管出血リスクのオッズ比はNSAIDs服用者で 7.6,アスピリン服用者で 7.7 である 10).日本の急性心筋梗塞,2型糖尿病を対象とした大規模なランダム化研究において,1〜4年のアスピリン服用による消化管出血の発生頻度は 0.4〜0.95%であった 11, 12).

Clinical Question 4-2

NSAIDs 潰瘍および消化管出血の発生頻度は?

4.薬物性潰瘍 ― ❶NSAIDs 潰瘍(低用量アスピリンを含む)【疫学・病態】

CQ 4-2 NSAIDs 潰瘍および消化管出血の発生頻度は?

ステートメント

● 予防治療がされていないと胃潰瘍の発生頻度は 10〜15%,十二指腸潰瘍の発生頻度は 3%,消化管出血の発生頻度は約 1%である.

表1 内視鏡によるNSAIDs 潰瘍の発生頻度報告年 胃潰瘍 十二指腸潰瘍

海外RCT20論文   平均   範囲

1982~2002 14.2%3.4~48.6%

5.4%0~26.7%

日本  塩川ら  矢島ら

19962006

15%10%

2%0%

(文献1,3,4より)

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4.薬物性潰瘍

文献

1) Rostom A, Dube C, Wells G, et al. Prevention of NSAID-induced gastroduodenal ulcers. Cochrane Data-base Syst Rev 2002; (4): CD002296(メタ)

2) Yeomans ND, Lanas AI, Talley NJ, et al. Prevalence and incidence of gastroduodenal ulcers during treat-ment with vascular protective doses of aspirin. Aliment Pharmacol Ther 2005; 22: 795-801(横断)

3) 塩川優一.非ステロイド性抗炎症剤による上部消化管傷害に関する疫学調査.リウマチ 1991; 31: 96-111(横断)

4) 矢島弘嗣,山尾純一,宮内義純.NSAIDs長期服用患者における胃粘膜傷害の発症状況に関する疫学調査.Ther Res 2006; 27: 1211-1217(横断)

5) Nema H, Kato M, Katsurada T, et al. Endoscopic survey of low-dose-aspirin-induced gastroduodenalmucosal injuries in patients with ischemic heart disease. J Gastroenterol Hepatol 2008; 23: S234-S236(横断)

6) Shiotani A, Sakakibara T, Yamanaka Y, et al. Upper gastrointestinal ulcer in Japanese patients taking low-dose aspirin. J Gastroenterol 2009; 44: 126-131(横断)

7) Chen YF, Jobanputra P, Barton P, et al. Cyclooxygenase-2 selective non-steroidal anti-inflammatory drugs(etodolac, meloxicam, celecoxib, rofecoxib, etoricoxib, valdecoxib and lumiracoxib) for osteoarthritis andrheumatoid arthritis: a systematic review and economic evaluation. Health Technol Assess 2008; 12: 1-278,

(メタ)8) Juul-Möller S, Edvardsson N, Jahnmatz B, et al. Double-blind trial of aspirin in primary prevention of

myocardial infarction in patients with stable chronic angina pectoris: The Swedish Angina PectorisAspirin Trial (SAPAT) Group. Lancet 1992; 340 (8833): 1421-1425(ランダム)

9) Hansson L, Zanchetti A, Carruthers SG, et al. Effects of intensive blood-pressure lowering and low-doseaspirin in patients with hypertension: principal results of the Hypertension Optimal Treatment (HOT) ran-domised trial. HOT Study Group. Lancet 1998; 351: 1755-1762(ランダム)

10) Sakamoto C, Sugano K, Ota S, et al. Case-control study on the association of upper gastrointestinal bleed-ing and nonsteroidal anti-inflammatory drugs in Japan. Eur J Clin Pharmacol 2006; 62: 765-772(ケースコントロール)

11) Yasue H, Ogawa H, Tanaka H, et al. Effects of aspirin and trapidil on cardiovascular events after acutemyocardial infarction: Japanese Antiplatelets Myocardial Infarction Study (JAMIS) Investigators. Am JCardiol 1999; 83: 1308-1313(ランダム)

12) Ogawa H, Nakayama M, Morimoto T, et al; Japanese Primary Prevention of Atherosclerosis With Aspirinfor Diabetes (JPAD) Trial Investigators. Low-dose aspirin for primary prevention of atherosclerotic eventsin patients with type 2 diabetes: a randomized controlled trial. JAMA 2008; 300: 2134-2141(ランダム)

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解説

NSAIDs潰瘍の発症時期をNSAIDs起因性消化管出血の時期からみてみると,NSAIDs起因性消化管出血のリスクは,NSAIDs内服開始から 1ヵ月以内で 7.6(6.0〜9.5),1ヵ月から 3ヵ月以内で 7.3(4.0〜13.2),3 ヵ月から 1 年以内で 2.6(1.6〜4.1),1 年以降で 2.5(1.8〜3.4)である

(図1)1, 2).

Clinical Question 4-3

NSAIDs 潰瘍の発生時期は?

4.薬物性潰瘍 ― ❶NSAIDs 潰瘍(低用量アスピリンを含む)【疫学・病態】

CQ 4-3 NSAIDs 潰瘍の発生時期は?

ステートメント

● NSAIDs の服用中は潰瘍発生のリスクは継続するが,特に非アスピリン NSAIDs では投与3 ヵ月以内の発生リスクが高い.

図 1 NSAIDs 起因性消化管出血のリスク(文献 1より)

NSAIDs の使用

 現在(0~7日)

 過去(>8日)

0 0.5 1 5 10

服用期間

 1~30日

 31~90日

 91~365日

 >365日

0.9(0.7~1.2)5.3(4.5~6.2)

7.6(6.0~9.5)

7.3(4.0~13.2)2.6(1.6~4.1)

2.5(1.8~3.4)

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4.薬物性潰瘍

文献

1) Lanas A, García-Rodríguez LA, Arroyo MT, et al; Asociación Española de Gastroenterología. Risk ofupper gastrointestinal ulcer bleeding associated with selective cyclo-oxygenase-2 inhibitors, traditionalnon-aspirin non-steroidal anti-inflammatory drugs, aspirin and combinations. Gut 2006; 55: 1731-1738

(ケースコントロール)2) Hernández-Díaz S, Rodríguez LA. Association between nonsteroidal anti-inflammatory drugs and upper

gastrointestinal tract bleeding/perforation: an overview of epidemiologic studies published in the 1990s.Arch Intern Med 2000; 160: 2093-2099(メタ)

消化性潰瘍診療ガイドライン2015(改訂第2版),南江堂,2015

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— 103 —

解説

NSAIDs潰瘍の特徴は,発生部位が幽門前庭部に多いこと,多発傾向があること,比較的浅い潰瘍が多いこと,出血・狭窄などの合併症を有する頻度が比較的高いことである 1).また,NSAIDs潰瘍の半分近くが,胃痛などの自覚症状を欠いている(図1)2).また,NSAIDs使用者では内視鏡的な粘膜傷害を認めなくても,30%近くにディスぺプシア症状を有する 3〜5).NSAIDs

使用者に対しては,定期的な内視鏡観察や貧血のモニタリングなどで,早期にNSAIDs潰瘍の発症に注意する必要がある.

Clinical Question 4-4

NSAIDs による上部消化管傷害における症状は?

4.薬物性潰瘍 ― ❶NSAIDs 潰瘍(低用量アスピリンを含む)【疫学・病態】

CQ 4-4 NSAIDs による上部消化管傷害における症状は?

ステートメント

● NSAIDs 服用中には出血などの合併症を有することが多く,消化管出血を起こす場合でも無症状の割合が高い.

図 1 NSAIDs 潰瘍の有無と自覚症状(文献 2より)

潰瘍なし(n=167)

潰瘍あり(n=20)

潰瘍なし(n=105)

初回内視鏡

2回目内視鏡(初回に潰瘍なしの患者)潰瘍あり

(n=8)

0 20

患者の割合

p=0.26

p=0.18

80%

50%

40 60 80 100(%)

なし 中等度 重度

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— 104 —

4.薬物性潰瘍

文献

1) Mizokami Y, Narushima k. Shiroishi T, et al. Non-Helicobacter pylori ulcer disease in rheumatoid arthritispatients receiving long-term NSAID therapy. J Gastroenterol 2000; 35: S38-S41(ケースコントロール)

2) Yeomans ND, Lanas AI, Talley NJ, et al. Prevalence and incidence of gastroduodenal ulcers during treat-ment with vascular protective doses of aspirin. Aliment Pharmacol Ther 2005; 22: 795-801(横断)

3) Ofman JJ, Maclean CH, Straus WL, et al. Meta-analysis of dyspepsia and nonsteroidal antiinflammatorydrugs. Arthritis Rheum 2003; 49: 508-518(メタ)

4) Wolfe F, Kong SX, Watson DJ. Gastrointestinal symptoms and health related quality of life in patients witharthritis. J Rheumatol 2000; 27: 1373-1378(コホート)

5) Thiéfin G, Schaeverbeke T, Barthélémy P, et al. Upper gastrointestinal symptoms in patients treated withnonsteroidal anti-inflammatory drugs: prevalence and impact: the COMPLAINS study. Eur J Gastroen-terol Hepatol 2010; 22: 81-87(横断)

消化性潰瘍診療ガイドライン2015(改訂第2版),南江堂,2015

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— 105 —

解説

H. pylori とNSAIDsは,胃・十二指腸潰瘍の互いに独立した二大成因である.NSAIDs服用者で H. pylori 感染のない症例は純粋なNSAIDs潰瘍である.しかし,日本では H. pylori の罹患率が高いため,NSAIDs使用者の多くが H. pylori 感染者でもある 1).一般臨床ではNSAIDs内服中に胃・十二指腸潰瘍を認めた場合には,NSAIDs潰瘍として対応している 2).H. pylori 潰瘍および純粋なNSAIDs潰瘍の発生部位には特徴がある(図1)3).H. pylori に関連した胃潰瘍では胃角部から胃体部に発生し,NSAIDsや低用量アスピリンに関連する胃潰瘍は幽門部に発生する傾

Clinical Question 4-5

NSAIDs 潰瘍は H. pylori 関連の潰瘍と発生部位,個数,深さが異なるか?

4.薬物性潰瘍 ― ❶NSAIDs 潰瘍(低用量アスピリンを含む)【疫学・病態】

CQ 4-5 NSAIDs 潰瘍は H. pylori 関連の潰瘍と発生部位,個数,深さが異なるか?

ステートメント

● 発生部位は NSAIDs 潰瘍では胃幽門部,H. pylori 関連潰瘍では胃角から胃体部に多い.NSAIDs では浅い胃潰瘍が多発する傾向がある.

図 1 H. pylori 潰瘍と NSAIDs 潰瘍の発生部位

H.pylori 陽性前庭部胃炎

H.pylori 陽性全体胃炎

H.pylori 陽性体部胃炎

H.pylori 陰性NSAIDs 潰瘍

:炎症の強い部分

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4.薬物性潰瘍

向がある.また,NSAIDs服用者では不整で浅い潰瘍が幽門部を中心に多発する傾向がある 4).H. pylori 陽性のNSAIDs使用者に発生する胃潰瘍は,幽門部と胃体部のどちらにも発生して,H.

pylori 潰瘍とNSAIDs潰瘍の両者の特徴を併せ持つ 5).

文献

1) Nishikawa K, Sugiyama T, Kato M. Non-Helicobacter pylori and non-NSAID peptic ulcer disease in theJapanese population. Eur J Gastroenterol Hepatol 2000; 12: 1-6(ケースコントロール)

2) Graham DY. Nonsteroidal anti-inflammatory drugs, Helicobacter pylori, and ulcers: where we stand. Am JGastroenterol 1996; 91: 2080-2086

3) Mizokami Y, Narushima K, Shiraishi T, et al. Non-Helicobacter pylori ulcer disease in rheumatoid arthritispatients receiving long-term NSAID therapy. J Gastroenterol 2000; 35 (Suppl 12): 38-41(ケースコントロール)

4) 溝上裕士,谷田慶俊,西村正二,ほか.慢性関節リウマチ患者における上部消化管病変の内視鏡学的検討について.Gastroenterological Endoscopy 1986; 28: 2297-2303(横断)

5) Kim Y, Yokoyama S, Watari J, et al. Endoscopic and clinical features of gastric ulcers in Japanese patientswith or without Helicobacter pylori infection who were using NSAIDs or low-dose aspirin. J Gastroenterol2012; 47: 904-911(ケースコントロール)

消化性潰瘍診療ガイドライン2015(改訂第2版),南江堂,2015

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— 107 —

解説

病理組織学的には粘膜筋板までの粘膜欠損をびらん,粘膜筋板を超える粘膜欠損を潰瘍と定義している.NSAIDs潰瘍の予防試験を対象としたシステマティックレビューでは,内視鏡的に 3mm以上の大きさの粘膜欠損を潰瘍と定義された論文が最も多く,次は 5mm以上の大きさの粘膜欠損を潰瘍と定義している 1).したがって,内視鏡的に粘膜欠損の大きさが 3〜5mm以下をびらん,それ以上を潰瘍とするのが一般的である.

文献

1) Yeomans ND, Naesdal J. Systematic review: ulcer definition in NSAID ulcer prevention trials. AlimentPharmacol Ther 2008; 27: 465-472(メタ)

Clinical Question 4-6

NSAIDs 潰瘍とびらんの違いは?

4.薬物性潰瘍 ― ❶NSAIDs 潰瘍(低用量アスピリンを含む)【疫学・病態】

CQ 4-6 NSAIDs 潰瘍とびらんの違いは?

ステートメント

● 内視鏡的に粘膜欠損の大きさが 3〜5mm 以下をびらん,それ以上を潰瘍とすることが多い.

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— 108 —

解説

NSAIDs潰瘍の高リスク因子としては,消化管出血を伴った潰瘍既往歴があげられる.中等度のリスク因子としては高齢者,潰瘍の既往,糖質ステロイドの併用,高用量NSAIDsや 2種類以上のNSAIDs使用者,抗凝固・抗血小板作用のある薬剤の併用,H. pylori 陽性者,重篤な全身疾患を有する者,ビスホスホネートの併用があげられる(図1)1〜6).これらの因子が増えるほど,消化管出血のリスクが高くなる 7).NSAIDs潰瘍の既往者に,NSAIDsを再投与する場合には,NSAIDs潰瘍の再発に細心の注意を払う必要がある.

Clinical Question 4-7

NSAIDs 潰瘍のリスク因子は?

4.薬物性潰瘍 ― ❶NSAIDs 潰瘍(低用量アスピリンを含む)【疫学・病態】

CQ 4-7 NSAIDs 潰瘍のリスク因子は?

ステートメント

● 出血性潰瘍既往歴,消化性潰瘍既往歴,高用量 NSAIDs や NSAIDs の併用者,抗凝固薬・抗血小板薬や糖質ステロイド,ビスホスホネートの併用者,高齢者,重篤な合併症を有する者が主なリスク因子である.

図 1 NSAIDs 潰瘍のリスク因子(文献 1〜4より)

消化管出血を伴った潰瘍既往歴

2種類以上のNSAIDs(アスピリン)

高用量

抗凝固葉

潰瘍既往歴

70歳以上

H. pylori

ステロイド

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— 109 —

①NSAIDs 潰瘍(低用量アスピリンを含む)【疫学・病態】

文献

1) Gabriel SE, Jaakkimainen L, Bombardier C. Risk for serious gastrointestinal complications related to use ofnonsteroidal anti-inflammatory drugs: a meta-analysis. Ann Intern Med 1991; 115: 787-796(メタ)

2) García Rodríguez LA, Jick H. Risk of upper gastrointestinal bleeding and perforation associated with indi-vidual non-steroidal anti-inflammatory drugs. Lancet 1994; 343 (8900): 769-772(ケースコントロール)

3) Silverstein FE, Graham DY, Senior JR, et al. Misoprostol reduces serious gastrointestinal complications inpatients with rheumatoid arthritis receiving nonsteroidal anti-inflammatory drugs: a randomized, double-blind, placebo-controlled trial. Ann Intern Med 1995; 123: 241-249(ランダム)

4) Huang JQ, Sridhar S, Hunt RH. Role of Helicobacter pylori infection and non-steroidal anti-inflammatorydrugs in peptic-ulcer disease: a meta-analysis. Lancet 2002; 359 (9300): 14-22(メタ)

5) Boers M, Tangelder MJ, van Ingen H, et al. The rate of NSAID-induced endoscopic ulcers increases linear-ly but not exponentially with age: a pooled analysis of 12 randomised trials. Ann Rheum Dis 2007; 66: 417-418(メタ)

6) Etminan M, Lévesque L, Fitzgerald JM, et al. Risk of upper gastrointestinal bleeding with oral bisphospho-nates and non steroidal anti-inflammatory drugs: a case-control study. Aliment Pharmacol Ther 2009; 29:1188-1192(ケースコントロール)

7) Koch M, Dezi A, Tarquini M, et al. Prevention of non-steroidal anti-inflammatory drug-induced gastroin-testinal mucosal injury: risk factors for serious complications. Dig Liver Dis 2000; 32: 138-151(横断)

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解説

12 件の研究で 14 種類のNSAIDsにおける出血性,穿孔性潰瘍の各薬物間でのリスクがメタアナリシスから示されている.この結果,イブプロフェンを 1とすると 3倍から 5倍,最高では 11 倍に及んでいた 1).COX-2 選択的阻害薬と非選択的NSAIDsと比較したシステマティックレビューによると,COX-2 選択的阻害薬は明らかに非選択的NSAIDsに比べ,潰瘍発生率およ

Clinical Question 4-8

NSAIDs の種類により潰瘍(出血)発生率に差があるか?

4.薬物性潰瘍 ― ❶NSAIDs 潰瘍(低用量アスピリンを含む)【疫学・病態】

図 1 NSAIDs による上部消化管出血のリスク(文献 3より引用)

ピロキシカム

ケトプロフェン

インドメタシン

ナプロキセン

メロキシカム

ジクロフェナク

イブプロフェン

セレコキシブ

(p=

0.019)n=

4

(p=

0.230)n=

5

(p=

0.000)n=

14

(p=

0.000)n=

17

(p=

0.289)n=

4

(p=

0.000)n=

18

(p=

0.016)n=

15

(p=

0.063)n=

11

(p=

0.000)n=

17

(p=

0.208)n=

2

(p=

0.000)n=

26

NSAIDs

ketorolac*

rofecoxib*

RR(95%Cl)

1.422.12 2.23

3.614.15 4.60 5.12 5.14

8.00

100

10

1

14.54

4.00

CQ 4-8 NSAIDs の種類により潰瘍(出血)発生率に差があるか?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● NSAIDs 潰瘍(出血)の発生率は薬物の種類により差がある. なし A

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— 111 —

①NSAIDs 潰瘍(低用量アスピリンを含む)【疫学・病態】

び出血を含む潰瘍合併症が減少している 2).2010 年に発表されたシステマティックレビューにおいて,上部消化管出血のリスクは,非選択的NSAIDsで 4.5 倍,COX-2 選択的阻害薬で 1.88倍であった.さらに各NSAIDsにおいて差があり,セレコキシブ 1.42 倍,イブプロフェン 2.23倍,ジクロフェナク 3.61 倍,ピロキシカム 8.0 倍,ketorolac は 14.54 倍と半減期が長いNSAIDsにおいてリスクが高い傾向にあった 3)(図1).

文献

1) García Rodríguez LA. Non-steroidal anti-inflammatory drugs, ulcers and risk: a collaborative meta-analy-sis. Semin Arthritis Rheum 1997; 26 (6 Suppl 1): 16-20(メタ)

2) Hooper L, Brown TJ, Elliott R, et al. The effectiveness of five strategies for the prevention of gastrointesti-nal toxicity induced by non-steroidal anti-inflammatory drugs: systematic review. BMJ 2004; 329 (7472):948(メタ)

3) Massó González EL, Patrignani P, Tacconelli S, et al. Variability among nonsteroidal antiinflammatorydrugs in risk of upper gastrointestinal bleeding. Arthritis Rheum 2010; 62: 1592-1601(メタ)

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解説

5 件の研究で 3種類のNSAIDsにおける出血性,穿孔性潰瘍の用量によるリスクがメタアナリシスから示されている.この結果,用量依存性に傷害のリスクが増加していた 1)(図1).

2010 年の報告でもイブプロフェン,ナプロキセン,インドメタシンにおいて低用量より高用量で出血,穿孔のリスクが増加していた 2).

文献

1) García Rodríguez LA. Non-steroidal anti-inflammatory drugs, ulcers and risk: a collaborative meta-analy-sis. Semin Arthritis Rheum 1997; 26 (6 Suppl 1): 16-20(メタ)

2) Massó González EL, Patrignani P, Tacconelli S, et al. Variability among nonsteroidal antiinflammatorydrugs in risk of upper gastrointestinal bleeding. Arthritis Rheum 2010; 62: 1592-1601(メタ)

Clinical Question 4-9

NSAIDs の投与量により潰瘍(出血)発生率に差があるか?

4.薬物性潰瘍 ― ❶NSAIDs 潰瘍(低用量アスピリンを含む)【疫学・病態】

図 1 NSAIDs の投与量による傷害リスクの比較(文献 1より)

イブプロフェンナプロキセンインドメタシン

14

12

10

8

6

4

2

0低~中用量 高用量

傷害リスク

CQ 4-9 NSAIDs の投与量により潰瘍(出血)発生率に差があるか?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● NSAIDs 潰瘍(出血)の発生率は NSAIDs の投与量に依存する. なし A

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解説

坐薬の吸収経路は中・下直腸静脈から内腸骨静脈を経由して下大静脈へ至る.このため経直腸投与では経口投与に比して吸収速度が速く,血中濃度も高いとされている 1).前田らはNSAIDsの経口投与,経直腸投与のいずれにおいてもコントロール群に比して胃粘膜プロスタグランジン量は低下すると報告している 2).長期投与例において,インドメタシンの経口薬と坐薬で胃潰瘍の発生率はおのおの 15.2,16.7%と差がなかったとの報告がある 3).健常ボランティアにナプロキセンを経口投与した群と坐薬で投与した群で粘膜傷害度を検討

した成績では,28 日以内では経口投与のほうが傷害が多かったが,長期的な結果については不明である.潰瘍発生率も示されていない 4).

いずれの結果からも潰瘍発生に関して,坐薬で発生率が減少するとはいえない.

文献

1) Holt LP, Hawkins CF. Indomethacin: studies of absorption and of the use of indomethacin suppositories.Br Med J 1965; 1 (5446): 1354-1356(非ランダム)

2) 前田 淳,川村雅枝,中井呈子,ほか.坐薬による胃病変の内視鏡および病態生理学的検討.Progress ofDigestive Endoscopy(消化器内視鏡の進歩)2006; 28: 24-28(非ランダム)

3) 溝上裕士,白石貴久,大坪十四哉,ほか.NSAIDs長期投与慢性関節リウマチ患者における胃潰瘍についての臨床的検討.臨床リウマチ 1998; 10: 130-141(ケースシリーズ)

4) Lipscomb GR, Rees WD. Gastric mucosal injury and adaptation to oral and rectal administration ofnaproxen. Aliment Pharmacol Ther 1996; 10: 133-138(非ランダム)

Clinical Question 4-10

NSAIDs の経口投与と坐薬で潰瘍(出血)発生率に差があるか?

4.薬物性潰瘍 ― ❶NSAIDs 潰瘍(低用量アスピリンを含む)【疫学・病態】

CQ 4-10 NSAIDs の経口投与と坐薬で潰瘍(出血)発生率に差があるか?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● NSAIDs 経口投与と坐薬では潰瘍発生率に差がない. なし C

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解説

前述したように,5件の研究で 3種類のNSAIDにおける出血性,穿孔性潰瘍の用量によるリスクがメタアナリシスから示されている.この結果,用量依存性に傷害のリスクが増加していた 1).

文献

1) García Rodríguez LA. Non-steroidal anti-inflammatory drugs, ulcers and risk: a collaborative meta-analy-sis. Semin Arthritis Rheum 1997; 26 (6 Suppl 1): 16-20(メタ)

Clinical Question 4-11

NSAIDs の単剤投与と多剤投与で潰瘍(出血)発生率に差があるか?

4.薬物性潰瘍 ― ❶NSAIDs 潰瘍(低用量アスピリンを含む)【疫学・病態】

CQ 4-11 NSAIDs の単剤投与と多剤投与で潰瘍(出血)発生率に差があるか?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● NSAIDs 潰瘍(出血)の発生は多剤投与により増加する. なし A

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解説

1)NSAIDs の中止による治癒率NSAIDs内服中にみられる胃潰瘍,十二指腸潰瘍はNSAIDs中止のみで高率に治癒する(胃潰

瘍の治癒率;4週:47〜61%,8週:90%,十二指腸潰瘍の治癒率;4週:42%1, 2).NSAIDsの中止または継続による塩酸ラニチジン 300mg/日投与での 4週治癒率は,胃潰瘍では有意差がなかったが,十二指腸潰瘍では中止により有意に治癒率が上昇した 3).塩酸ラニチジン 300mg/日投与での他の報告では,胃潰瘍,十二指腸潰瘍ともに 4週治癒率では差がなかったが,8週治癒率はNSAIDs中止により上昇した 4).

2)NSAIDs 継続投与下での治癒率a.PG 製剤PG製剤であるエンプロスチル 75µg,105µg/日投与,ミソプロストール 800µg/日投与での

胃潰瘍,十二指腸潰瘍の治癒率はプラセボに比して有意に高率であった 3, 5).なお,エンプロスチルは販売中止に伴い,2014 年 4 月以降は使用不能となった.ミソプロストールの副作用として,下痢が問題とされており,800µg/日の投与では 13.8%に出現していた.日本リウマチ財団がNSAIDs継続投与下にミソプロストール 800µg/日を投与し,93 例の潰瘍での 8週治癒率を報告しているが,胃潰瘍 70%,十二指腸潰瘍 83.5%であった.しかし,下痢を 12.9%に認めた 6).2009 年に報告された 4,692 例の市販後調査においても,4.8%に下痢,軟便を認めた.

b.H2RA高用量のH2RA(ファモチジン 80mg/日,ニザチジン 600mg/日)投与での有用性が示されて

いるが,プラセボとの比較がなされていない 7, 8).c.PPIPPIとH2RA(オメプラゾール 20mg,40mg/日 vs. 塩酸ラニチジン 300mg/日 9),ランソプラ

Clinical Question 4-12

NSAIDs 潰瘍の治療はどのように行うべきか?

CQ 4-12 NSAIDs 潰瘍の治療はどのように行うべきか?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● NSAIDs は中止し,抗潰瘍薬の投与を推奨する. 1(100%) A

● NSAIDs 中止が不可能ならば,PPI あるいは PG 製剤の投与を推奨する.

1(100%) A

4.薬物性潰瘍 ― ❷非選択的 NSAIDs 潰瘍【治療】

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4.薬物性潰瘍

ゾール 15mg,30mg/日 vs. 塩酸ラニチジン 300mg/日 10, 11)),PPIと PG製剤(オメプラゾール20mg,40mg/日 vs. ミソプロストール 800µg/日 12))および PPIと粘膜防御因子増強薬(オメプラゾール 20mg/日 vs. スクラルファート 4g/日 13))の比較試験ではいずれも胃潰瘍,十二指腸潰瘍で PPIの治癒率が勝っていた.PPIとH2RA(エソメプラゾール 20mg,40mg/日 vs. 塩酸ラニチジン 300mg/日)の比較試験

で,4週治癒率では PPIが勝っていたが,8週治癒率では差がなかったとの報告もある 14).d.粘膜防御因子増強薬スクラルファート 4g/日投与での検討がなされているが,H2RA(塩酸ラニチジン 300mg/日)

との比較 15)では 9週での治癒率は同等であるが,症例数が少なく信憑性に乏しい.PPIとの比較では前述したように PPIの治癒率が勝っていた 13).

文献

1) Jaszewski R, Graham DY, Stromatt SC. Treatment of nosteroidal antiinflammatory drug-induced gastriculcers with misoprostol: a double-blind multicenter study. Dig Dis Sci 1992; 37: 1820-1824(ランダム)

2) Tildesley G, Ehsanullah RS, Wood JR. Ranitidine in the treatment of gastric and duodenal ulcers associat-ed with non-steroidal anti-inflammatory drugs. Br J Rheumatol 1993; 32; 474-478(ランダム)

3) Roth S, Agrawal N, Mahowald M, et al. Misoprostol heals gastroduodenal injury in patients with rheuma-toid arthritis receiving aspirin. Arch Intern Med 1989; 149: 775-779(ランダム)

4) Lancaster-Smith MJ, Jaderberg ME, Jackson DA. Ranitidine in the treatment of non-steroidal anti-inflam-matory drug associated gastric and duodenal ulcers. Gut 1991; 32: 252-255(ランダム)

5) Sontag SJ, Schnell TG, Budiman-Mak E, et al. Healing of NSAID-induced gastric ulcers with a syntheticprostaglandin analog (enprostil). Am J Gastroenterol 1994; 89: 1014-1020(ランダム)

6) 塩川優一,延永 正,齋藤輝信,ほか.非ステロイド性炎症剤(NSAID)長期投与にみられる胃・十二指腸潰瘍に対するミソプロストールの臨床的有用性の検討―第 2報・NSAID継続投与下における潰瘍治癒率の検討.リウマチ 1991; 31: 572-582(非ランダム)

7) Hudson N, Taha AS, Russell RI, et al. Famotidine for healing and maintenance in nonsteroidal anti-inflam-matory drug-associated gastroduodenal ulceration. Gastroenterology 1997; 112: 1817-1822(ランダム)

8) Simon B, Muller P. Nizatidine in therapy and prevention of non-steroidal anti-inflammatory drug-inducedgastroduodenal ulcer in rheumatic patients. Scand J Gastroenterol 1994; 29: S25-S28(ランダム)

9) Yeomans ND, Tulassay Z, Juhász L, et al. A comparison of omeprazole with ranitidine for ulcers associat-ed with nonsteroidal antiinflammatory drugs: Acid Suppression Trial: Ranitidine versus Omeprazole forNSAID-associated Ulcer Treatment (ASTRONAUT) Study Group. N Engl J Med 1998; 338: 719-726(ランダム)

10) Agrawal NM, Campbell DR, Safdi MA, et al. Superiority of lansoprazole vs ranitidine in healing nons-teroidal anti-inflammatory drug-associated gastric ulcers: results of a double-blind, randomized, multicen-ter study: NSAID-Associated Gastric Ulcer Study Group. Arch Intern Med 2000; 160: 1455-1461(ランダム)

11) Campbell DR, Haber MM, Sheldon E, et al. Effect of H. pylori status on gastric ulcer healing in patientscontinuing nonsteroidal anti-inflammatory therapy and receiving treatment with lansoprazole or raniti-dine. Am J Gastroenterol 2002; 97: 2208-2214(ランダム)

12) Hawkey CJ, Karrasch JA, Szczepañski L, et al. Omeprazole compared with misoprostol for ulcers associat-ed with nonsteroidal antiinflammatory drugs: Omeprazole versus Misoprostol for NSAID-induced UlcerManagement (OMNIUM) Study Group. N Engl J Med 1998; 338: 727-734(ランダム)

13) Bianchi Porro G, Lazzaroni M, Manzionna G, et al. Omeprazole and sucralfate in the treatment of NSAID-induced gastric and duodenal ulcer. Aliment Pharmacol Ther 1998; 12: 355-360(ランダム)

14) Goldstein JL, Johanson JF, Hawkey CJ, et al. Clinical trial: healing of NSAID-associated gastric ulcers inpatients continuing NSAID therapy: a randomized study comparing ranitidine with esomeprazole. Ali-ment Pharmacol Ther 2007; 15: 1101-1111(ランダム)

15) Malchow-Moller A. Treatment of peptic ulcer induced by non-steroidal anti-inflammatory drugs. Scand JGastroenterol 1987; 22: S87-S91(ランダム)

消化性潰瘍診療ガイドライン2015(改訂第2版),南江堂,2015

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解説

NSAIDs継続投与下での潰瘍治癒率は,H. pylori 感染の有無に影響されないとされている 1).さらに H. pylori 除菌はNSAIDs潰瘍治療に影響を与えないとする報告が多い 2, 3).治癒が遷延するとの報告 4)もあるが,少なくとも治癒を促進するとの報告はなく推奨できない(表1).

文献

1) Agrawal NM, Campbell DR, Safdi MA, et al. Superiority of lansoprazole vs ranitidine in healing nons-teroidal anti-inflammatory drug-associated gastric ulcers: results of a double-blind, randomized, multicen-ter study: NSAID-Associated Gastric Ulcer Study Group. Arch Intern Med 2000; 160: 1455-1461(ランダム)

2) Bianchi Porro G, Parente F, et al. Role of Helicobacter pylori in ulcer healing and recurrence of gastric and

Clinical Question 4-13

H. pylori 除菌治療で NSAIDs 潰瘍の治癒率は高まるか?

CQ 4-13 H. pylori 除菌治療で NSAIDs 潰瘍の治癒率は高まるか?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● 潰瘍治癒前は,NSAIDs 服用に伴い発症した潰瘍に対する H.pylori 除菌は,治癒率を高めないので行わないよう提案する.

2(100%) A

4.薬物性潰瘍 ― ❷非選択的 NSAIDs 潰瘍【治療】

表1 NSAIDs 潰瘍の 8週治癒率に及ぼす除菌の影響

報告年 報告者症例数 治癒率(%)

有意差除菌 /非除菌 除菌 /PPI

1996 Porro 2) ALL:35/32 ALL:80/88 なしGU:21/21 GU:76/90 なしDU:14/11 DU:86/91 なし

1998 Chan 3) ALL:44/37 ALL:83/86 なしGU:21/20 GU:88/94 なしDU:26/20 DU:98/100 なし

1998 Hawkey 4) ALL:44/37 ALL:89/100 なしGU:21/20 GU:72/100 あり( 0.006)DU:26/20 DU:100/100 なし

ALL:全潰瘍,GU:胃潰瘍,DU:十二指腸潰瘍

消化性潰瘍診療ガイドライン2015(改訂第2版),南江堂,2015

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4.薬物性潰瘍

duodenal ulcers in longterm NSAID users: response to omeprazole dual therapy. Gut 1996; 39: 22-26(ランダム)

3) Chan FK, Sung JJ, Suen R, et al. Does eradication of Helicobacter pylori impair healing of nonsteroidal anti-inflammatory drug associated bleeding peptic ulcers? a prospective randomized study. Aliment Pharma-col Ther 1998; 12: 1201-1205(ランダム)

4) Hawkey CJ, Tulassay Z, Szczepanski L, et al. Randomised controlled trial of Helicobacter pylori eradicationin patients on non-steroidal anti-inflammatory drugs: HELP NSAIDs study. Lancet 1998; 352: 1016-1021

(ランダム)

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解説

NSAIDs開始予定者(NSAID-naïve)での除菌の有用性は,除菌後 8週での成績 1)と 6ヵ月での成績 2)が Chanらにより報告されている.前者はナプロキセン単独と除菌後にナプロキセンを投与し比較しているが,再発率はおのおの 26%,7%でありNSAIDs投与前の除菌治療が有効であった.後者はプラセボと除菌治療での比較であるが,再発率はおのおの 34.4%,12.1%,であり除菌治療が有効であった.一方,NSAIDs継続投与中では有意な予防効果はなく 3),PPI

投与のほうが有用とされている 4〜6).さらには潰瘍治癒が遷延するとの報告もある 7).これらの結果をまとめたメタアナリシス 8)の結果からは,NSAIDs投与例の全体では,除菌治療により潰瘍発生は減少するが,NSAIDs開始予定者(NSAID-naïve)での効果は明白であるものの,NSAIDs継続投与中での効果は期待できず,PPIの投与が有効であると結論づけられる.

注:2012 年 8 月に報告されたメタアナリシス 9)でも,NSAIDs潰瘍予防における除菌の効果については同様であり,特にアジア人で効果があったとしている.

文献

1) Chan FK, Sung JJ, Chung SC, et al. Randomised trial of eradication of Helicobacter pylori before non-steroidal anti-inflammatory drug therapy to prevent peptic ulcers. Lancet 1997; 350 (9083): 975-979(ランダム)

2) Chan FK, To KF, Wu JC, et al. Eradication of Helicobacter pylori and risk of peptic ulcers in patients startinglong-term treatment with non-steroidal anti-inflammatory drugs: a randomised trial. Lancet 2002; 359: 9-13(ランダム)

3) de Leest HT, Steen KS, Lems WF, et al. Eradication of Helicobacter pylori does not reduce the incidence of

Clinical Question 4-14

NSAIDs 投与患者で H. pylori 陽性の場合,潰瘍予防として除菌治療を行うべきか?

CQ 4-14 NSAIDs 投与患者で H. pylori 陽性の場合,潰瘍予防として除菌治療を行うべきか?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● NSAIDs 投与開始予定例(NSAID-naïve)での潰瘍発生防止のため,H. pylori 除菌は行うよう推奨する.

1(100%) A

● NSAIDs 投与中での潰瘍発生予防のため,H. pylori 除菌は行わないよう推奨する.

1(100%) A

4.薬物性潰瘍 ― ❷非選択的 NSAIDs 潰瘍【予防】

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4.薬物性潰瘍

gastroduodenal ulcers in patients on long-term NSAID treatment: double-blind, randomized, placebo-con-trolled trial. Helicobacter 2007; 12: 477-485(ランダム)

4) Lai KC, Lau CS, Ip WY, et al. Effect of treatment of Helicobacter pylori on the prevention of gastroduodenalulcers in patients receiving long-term NSAIDs: a double-blind, placebo-controlled trial. Aliment Pharma-col Ther 2003; 17: 799-805(ランダム)

5) Chan FK, Chung SC, Suen BY, et al. Preventing recurrent upper gastrointestinal bleeding in patients withHelicobacter pylori infection who are taking low-dose aspirin or naproxen. N Engl J Med 2001; 344: 967-973(ランダム)

6) Labenz J, Blum AL, Bolten WW, et al. Primary prevention of diclofenac associated ulcers and dyspepsia byomeprazole or triple therapy in Helicobacter pylori positive patients: a randomised, double blind, placebocontrolled, clinical trial. Gut 2002; 51: 329-335(ランダム)

7) Hawkey CJ, Tulassay Z, Szczepanski L, et al. Randomised controlled trial of Helicobacter pylori eradicationin patients on non-steroidal anti-inflammatory drugs: HELP NSAIDs study: Helicobacter Eradication forLesion Prevention. Lancet 1998; 352: 1016-1021(ランダム)

8) Vergara M, Catalan M, Gisbert JP, et al. Meta-analysis: role of Helicobacter pylori eradication in the preven-tion of peptic ulcer in NSAID users. Aliment Pharmacol Ther 2005; 21: 1411-1418(メタ)

9) Tang CL, Ye F, Liu W, et al. Eradication of Helicobacter pylori infection reduces the incidence of peptic ulcerdisease in patients using nonsteroidal anti-inflammatory drugs: a meta-analysis. Helicobacter 2012; 17:286-296(メタ)

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解説

NSAIDsが 3週間以上投与されている例での予防に関するシステマティックレビューにおいて,出血などの潰瘍合併症の予防は PG製剤,症状を有する胃潰瘍,十二指腸潰瘍の予防にはPPI,PG製剤,内視鏡的な胃潰瘍,十二指腸潰瘍の予防には PPI,PG製剤および高用量H2RA

が有効と示されている 1).潰瘍既往のない例,つまり一次予防効果においても PG製剤(ミソプロストール 800µg/日)2, 3),PPI(オメプラゾール 20mg/日)4)ではNSAIDs短期投与での胃潰瘍,十二指腸潰瘍への予防効果を認めるが,H2RA(塩酸ラニチジン 300mg/日)では胃潰瘍より十二指腸潰瘍に効果を認めた 5).NSAIDsの 3ヵ月以上長期投与例での一次予防効果は,PG製剤(ミソプロストール 400〜

800µg/日)6〜11),PPI(オメプラゾール 20mg,40mg/日)4)および高用量H2RA(ファモチジン80mg/日)12)など多くの RCTやメタアナリシスでの有用性が報告されているが,潰瘍の既往歴の記載がないものもある.高齢者や心血管イベントを有する例では,PPI投与で潰瘍合併症のリスクを 2/3 に低減したと報告されている 13).

さらに潰瘍既往のない症例で,レバミピド 300mg/日での予防試験で,12 週間の観察において胃潰瘍,十二指腸潰瘍の発症抑制効果はミソプロストール 600µg/日と同等であることが示されている 14).ただし潰瘍の一次予防における投薬は,保険適用となっていない.

文献

1) Hooper L, Brown TJ, Elliott R, et al. The effectiveness of five strategies for the prevention of gastrointesti-nal toxicity induced by non-steroidal anti-inflammatory drugs: systematic review. BMJ 2004; 329 (7472):948(メタ)

Clinical Question 4-15

潰瘍既往歴がない患者における NSAIDs 潰瘍発生予防治療は必要か?

CQ 4-15 潰瘍既往歴がない患者における NSAIDs 潰瘍発生予防治療は必要か?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● NSAIDs 潰瘍の発生予防は潰瘍既往歴がない患者においても必要であるので行うよう提案する.

2(100%) A

4.薬物性潰瘍 ― ❷非選択的 NSAIDs 潰瘍【予防】

消化性潰瘍診療ガイドライン2015(改訂第2版),南江堂,2015

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4.薬物性潰瘍

2) Saggioro A, Alvisi V, Blasi A, et al. Misoprostol prevents NSAID-induced gastroduodenal lesions inpatients with osteoarthritis and rheumatoid arthritis. Ital J Gastroenterol 1991; 23: 119-123(ランダム)

3) Bocanegra TS, Weaver AL, Tindall EA, et al. Diclofenac/misoprostol compared with diclofenac in thetreatment of osteoarthritis of the knee or hip: a randomized, placebo controlled trial. ArthrotecOsteoarthritis Study Group. J Rheumatol 1998; 25: 1602-1611(ランダム)

4) Bianchi Porro G, Lazzaroni M, Petrillo M, et al. Prevention of gastroduodenal damage with omeprazole inpatients receiving continuous NSAIDs treatment: a double blind placebo controlled study. Ital J Gastroen-terol Hepatol 1998; 30: 43-47(ランダム)

5) Robinson M, Mills RJ, Euler AR. Ranitidine prevents duodenal ulcers associated with non-steroidal anti-inflammatory drug therapy. Aliment Pharmacol Ther 1991; 5: 143-150(ランダム)

6) Elliott SL, Yeomans ND, Buchanan RR, et al. Efficacy of 12 months’ misoprostol as prophylaxis againstNSAID-induced gastric ulcers: a placebo-controlled trial. Scand J Rheumatol 1994; 23: 171-176(ランダム)

7) Graham DY, Agrawal NM, Roth SH. Prevention of NSAID-induced gastric ulcer with misoprostol: multi-centre, double-blind, placebo-controlled trial. Lancet 1988; 2 (8623): 1277-1280(ランダム)

8) Raskin J, White RH, Jackson JE, et al. Misoprostol dosage in the prevention of nonsteroidal anti-inflamma-tory drug-induced gastric and duodenal ulcers: a comparison of three regimens. Ann Intern Med 1995;123: 344-350(ランダム)

9) Graham DY, White RH, Moreland LW, et al. Duodenal and gastric ulcer prevention with misoprostol inarthritis patients taking NSAIDs: Misoprostol Study Group. Ann Intern Med 1993; 119: 257-262(ランダム)

10) Koch M. Non-steroidal anti-inflammatory drug gastropathy: clinical results with misoprostol. Ital J Gas-troenterol Hepatol 1999; 31 (Suppl 1): S54-S62(メタ)

11) Agrawal NM, Roth S, Graham DY, et al. Misoprostol compared with sucralfate in the prevention of nons-teroidal anti-inflammatory drug-induced gastric ulcer: a randomized, controlled trial. Ann Intern Med1991; 115: 195-200(ランダム)

12) Taha AS, Hudson N, Hawkey CJ, et al. Famotidine for the prevention of gastric and duodenal ulcerscaused by nonsteroidal antiinflammatory drugs. N Engl J Med 1996; 334: 1435-1439(ランダム)

13) Vonkeman HE, Fernandes RW, van der Palen J, et al. Proton-pump inhibitors are associated with areduced risk for bleeding and perforated gastroduodenal ulcers attributable to non-steroidal anti-inflam-matory drugs: a nested case-control study. Arthritis Res Ther 2007; 9: R52(ケースコントロール)

14) Park SH, Cho CS, Lee OY, et al. Comparison of prevention of NSAID-induced gastrointestinal complica-tions by rebamipide and misoprostol: a randomized, multicenter, controlled trial-STORM STUDY. J ClinBiochem Nutr 2007; 40: 148-155(ランダム)

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— 123 —

解説

NSAIDs潰瘍のリスクは「CQ 4-7」に示されているように,消化性潰瘍の既往歴,高用量NSAIDsやNSAIDsの併用者,抗血栓薬や糖質ステロイド,ビスホスホネートの併用者,高齢者,重篤な合併症を有する者などである.潰瘍既往者にNSAIDsと LDAを併用した場合の予防については,PPIの半量,常用量(ラン

ソプラゾール 15mg,30mg)およびミソプロストール 800µg/日の 12 週での予防効果が示されている 1).NSAIDsに糖質ステロイド,抗凝固薬を併用すると潰瘍合併症のリスクが高まる 2)

が,これら複数のリスクを有する患者については潰瘍発生予防に関する RCTはなされていない.高齢者での潰瘍出血などの合併症予防については,PPI 3),PG製剤 4)での効果が示されている.重篤な合併症を有する患者での,潰瘍発生予防に関する RCTも示されていない.注:文献検索は 2012 年 6 月までの範囲で行われたが,その後 2014 年に薬剤併用による出血

リスクについて,114,835 例での大規模疫学研究が報告された.この結果,非選択的NSAIDsと糖質ステロイド,抗凝固薬,抗血小板薬併用によって出血性潰瘍のリスクが過剰に増加するが,COX-2 選択的阻害薬では併用によるリスクは増加しないことが示された(Gastroenterology 2014;147: 784-792 a)[検索期間外文献]).

文献

1) Goldstein JL, Huang B, Amer F, et al. Ulcer recurrence in high-risk patients receiving nonsteroidalanti-inflammatory drugs plus low-dose aspirin: results of a post HOC subanalysis. Clin Ther 2004; 26: 1637-

Clinical Question 4-16高用量 NSAIDs,抗血栓薬,糖質ステロイド,ビスホスホネートの併用者,高齢者および重篤な合併症を有する患者における NSAIDs 潰瘍予防はどうするか?

CQ 4-16 高用量 NSAIDs,抗血栓薬,糖質ステロイド,ビスホスホネートの併用者,高齢者および重篤な合併症を有する患者における NSAIDs潰瘍予防はどうするか?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● NSAIDs と低用量アスピリン(LDA)の併用者では,潰瘍再発予防に PPI,PG 製剤の投与を推奨する.

1(100%) A

● 高齢者の NSAIDs 潰瘍出血の予防には PPI,PG 製剤の投与を推奨する.

1(100%) A

4.薬物性潰瘍 ― ❷非選択的 NSAIDs 潰瘍【予防】

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— 124 —

4.薬物性潰瘍

1643(ランダム)2) Lanza FL, Chan FLK, Quigley EMM. Guidelines for prevention of NSAID-related ulcer complications. Am

J Gastroenterol 2009; 104: 728-738(ガイドライン)3) Vonkeman HE, Fernandes RW, van der Palen J, et al. Proton-pump inhibitors are associated with a

reduced risk for bleeding and perforated gastroduodenal ulcers attributable to non-steroidal anti-inflam-matory drugs: a nested case-control study. Arthritis Res Ther 2007; 9: R52(ケースコントロール)

4) Koch M, Deiz A, Tarquini M, et al. Prevention of non-steroidal anti-inflammatory drug-induced gastroin-testinal mucosal injury: risk factors for serious complications. Digest Liver Dis 2000; 32: 138-151(ランダム)

【検索期間外文献】a) Masclee GM, Valkhoff VE, Coloma PM, et al. Risk of upper gastrointestinal bleeding from different drug

combinations. Gastroenterology 2014; 147: 784-792(ケースコントロール)

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— 125 —

解説

NSAIDs潰瘍の予防効果は,PG製剤(ミソプロストール 400〜800µg/日)1〜5),PPI(オメプラゾール 20mg,40mg/日,ランソプラゾール 15mg,30mg)4, 6)および高用量H2RA(ファモチジン 80mg/日)7, 8)での RCTやメタアナリシスにより示されている 9).PG製剤 10),PPI 11)はハイリスク群(高齢または消化性潰瘍の既往)症例での二次予防効果を認めた.しかし,日本においてNSAIDs潰瘍再発予防に対するH2RA投与の保険適用はない.潰瘍既往者にNSAIDsと低用量アスピリンを併用した場合の予防については,PPIの半量,

常用量(ランソプラゾール 15mg,30mg)およびミソプロストール 800µg/日の 12 週での予防効果が示されている 12).

ミソプロストールでの下痢は用量依存性で,800µg/日では下痢が高率となり忍容性が問題となるが,200µgの 2〜3回/日投与でも潰瘍再発予防効果が期待できる.

日本からの報告でも潰瘍既往を有する例での 24 週観察において,プラセボ(防御因子増強薬)に比してランソプラゾール 15mgの有用性が報告されている 13).さらにハイリスク群の検討で,NSAIDsによる出血性潰瘍が治癒した直後から,全員に 200mg× 2/日のセレコキシブを投与し,併用薬としてエソメプラゾール 20mg×2/日またはプラセボ割り付けた検討がなされた.13 ヵ月の累積出血性潰瘍の再発率は,エソメプラゾール併用群 0%,プラセボ群 8.9%(p=0.0004)と,出血性潰瘍再発の予防効果はエソメプラゾール併用群で有意に高かった(図1)14).注:文献検索は 2012 年 6 月までの範囲で行われたが,その後,2012 年に日本より潰瘍再発の

高リスク患者で,エソメプラゾールの潰瘍再発予防効果が報告された(Aliment Pharmacol Ther

2012; 36: 115-125 a)[検索期間外文献])

Clinical Question 4-17

潰瘍既往歴,出血性潰瘍既往歴がある患者が NSAIDs を服用する場合,再発予防はどうするか?

CQ 4-17 潰瘍既往歴,出血性潰瘍既往歴がある患者が NSAIDs を服用する場合,再発予防はどうするか?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● 潰瘍既往歴のある患者の NSAIDs 潰瘍の予防には PPI,PG 製剤が有効であり,第一選択薬として PPI 併用投与を推奨する.

1(100%) A

● 出血性潰瘍既往歴のある患者の NSAIDs 出血性潰瘍の再発予防には,COX-2 選択的阻害薬セレコキシブに PPI 併用を推奨する.

1(100%) A

4.薬物性潰瘍 ― ❷非選択的 NSAIDs 潰瘍【予防】

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4.薬物性潰瘍

文献

1) Graham DY, Agrawal NM, Roth SH. Prevention of NSAID-induced gastric ulcer with misoprostol: multi-centre, double-blind, placebo-controlled trial. Lancet 1988; 2 (8623): 1277-1280(ランダム)

2) Agrawal NM, Roth S, Graham DY, et al. Misoprostol compared with sucralfate in the prevention of nons-teroidal anti-inflammatory drug-induced gastric ulcer: a randomized, controlled trial. Ann Intern Med1991; 115: 195-200(ランダム)

3) Koch M. Non-steroidal anti-inflammatory drug gastropathy: clinical results with misoprostol. Ital J Gas-troenterol Hepatol 1999; 31 (Suppl 1): S54-S62(メタ)

4) Graham DY, Agrawal NM, Lukasik NL, et al; NSAID -Associated Gastric Ulcer Prevention Study Group.Ulcer prevention in long-term users of nonsteroidal anti-inflammatory drugs: results of a double-blind,randomized, multicenter, active- and placebo-controlled study of misoprostol vs lansoprazole. Arch InternMed 2002; 162: 169-175(ランダム)

5) Hawkey CJ, Karrasch JA, Szczepanski L, et al. Omeprazole compared with misoprostol for ulcers associat-ed with nonsteroidal antiinflammatory drugs: Omeprazole versus Misoprostol for NSAID-induced UlcerManagement (OMNIUM) Study Group. N Engl J Med 1998; 338: 727-734(ランダム)

6) Yeomans ND, Tulassay Z, Juhasz L, et al. A comparison of omeprazole with ranitidine for ulcers associat-ed with nonsteroidal antiinflammatory drugs: Acid Suppression Trial: Ranitidine versus Omeprazole forNSAID-associated Ulcer Treatment (ASTRONAUT) Study Group. N Engl J Med 1998; 338: 719-726(ランダム)

7) Taha AS, Hudson N, Hawkey CJ, et al. Famotidine for the prevention of gastric and duodenal ulcerscaused by nonsteroidal antiinflammatory drugs. N Engl J Med 1996; 334: 435-1439(ランダム)

8) Hudson N, Taha AS, Russell RI, et al. Famotidine for healing and maintenance in nonsteroidal anti-inflam-

図 1 セレコキシブのエソメプラゾール併用群およびプラセボ群における累積出血性潰瘍の再発率

(文献 14より)

セレコキシブ+プラセボセレコキシブ+エソメプラゾール

0.3

0.2

0.1

0

経過

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13(月)

累積出血性潰瘍の再発率

Number at riskセレコキシブ+エソメプラゾール

セレコキシブ+プラセボ137  136  136  136  136  135  135 135136  132  130  127  125  124  123 122

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— 127 —

②非選択的 NSAIDs 潰瘍【予防】

matory drug-associated gastroduodenal ulceration. Gastroenterology 1997; 112: 1817-1822(ランダム)9) Rostom A, Dube C, Wells CA, et al. Prevention of NSAID-induced gastroduodenal utcers. Cochrane Data-

base Syst Rev 2009: CD002296(メタ)10) Koch M, Deiz A, Tarquini M, et al. Prevention of non-steroidal anti-inflammatory drug-induced gastroin-

testinal mucosal injury: risk factors for serious complications. Digest Liver Dis 2000; 32: 138-151(ランダム)

11) Scheiman JM, Yeomans ND, Talley NJ, et al. Prevention of ulcers by esomeprazole in at high risk patientsusing non-selective NSAID and COX-2 inhibitors. Am J Gastroenterol 2006; 101: 701-710(ランダム)

12) Goldstein JL, Huang B, Amer F, et al. Ulcer recurrence in high-risk patients receiving nonsteroidalanti-inflammatory drugs plus low-dose aspirin: results of a post HOC subanalysis. Clin Ther 2004; 26: 1637-1643(ランダム)

13) Sugano K, Kontani T, Katsuo S, et al. Lansoprazole for secondary prevention of gastric or duodenal ulcersassociated with long-term non-steroidal anti-inflammatory drug (NSAID) therapy: results of a prospec-tive, multicenter, double-blind, randomized, double-dummy, active-controlled trial. J Gastroenterol 2012;47: 540-552(ランダム)

14) Chan FK, Wong VW, Suen BY, et al. Combination of a cyclo-oxygenase-2 inhibitor and a proton-pumpinhibitor for prevention of recurrent ulcer bleeding in patients at very high risk: a double-blind, ran-domised trial. Lancet 2007; 369 (9573): 1621-1626(ランダム)

【検索期間外文献】a) Sugano K, Kinoshita Y, Miwa H, et al; Esomeprazole NSAID Preventive Study Group. Randomised clini-

cal trial: esomeprazole for the prevention of nonsteroidal anti-inflammatory drug-related peptic ulcers inJapanese patients. Aliment Pharmacol Ther 2012; 36: 115-125(ランダム)

消化性潰瘍診療ガイドライン2015(改訂第2版),南江堂,2015

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解説

消化性潰瘍歴のある高リスク患者においては,COX-2 選択的阻害薬を単独で使用した場合,3.7%から 24.1%の消化性潰瘍再発あるいは消化性潰瘍合併症の報告がある 1〜4).その頻度は従来のNSAIDsに PPIを併用した場合とほぼ同等と考えられている 1〜4).これに対して,COX-2 選択的阻害薬投与時に PPIを併用すると有意に消化性潰瘍再発率が低下し 1),高リスク患者にCOX-2 選択阻害薬を投与する場合には潰瘍発生予防薬として PPIの併用が推奨される.

一方,消化性潰瘍歴のない低リスク患者においては,COX-2 選択的阻害薬投与群とプラセボ群では消化性潰瘍の発生頻度に有意差はないという報告があり 5),低リスク患者に COX-2 選択阻害薬を投与する場合には潰瘍発生予防薬を併用する必要はない.

文献

1) Scheiiman JM, Yeomans ND, Talley NJ, et al. Prevention of ulcers by esomeprazole in at-risk patientsusing non-selective NSAIDs and COX-2 inhibitors. Am J Gastroenterol 2006; 101: 701-710(メタ)

2) Chan FKL, Hung LCT, Suen BY, et al. Celecoxib versus diclofenac and omeprazole in reducing the risk ofrecurrent ulcer bleeding in patients with arthritis. N Engl J Med 2002; 347: 2104-2110(ランダム)

3) Lai KC, Chu KM, Hui WM, et al. Celecoxib compared with lansoprazole and naproxen to prevent gas-trointestinal ulcer complications. Am J Med 2005; 118: 1271-1278(ランダム)

4) Chan FKL, Hung LCT, Suen BY, et al. Celecoxib versus diclofenac plus omeprazole in high-risk arthritispatients: result of a randomized double-blind trial. Gastroenterology 2004; 127: 1038-1043(ランダム)

5) Feng GS, Ma JL, Wong BC, et al. Celecoxib-related gastroduodenal ulcer and cardiovascular events in arandomized trial for cancer prevention. World J Gastroenterol 2008; 14: 4535-4539(ランダム)

Clinical Question 4-18

COX-2 選択的阻害薬服用時に潰瘍発生予防治療は必要か?(潰瘍既往歴がある患者の場合/潰瘍既往歴がない患者の場合)

CQ 4-18 COX-2 選択的阻害薬服用時に潰瘍発生予防治療は必要か?(潰瘍既往歴がある患者の場合/潰瘍既往歴がない患者の場合)

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● 潰瘍既往歴がある患者では潰瘍発生予防治療を行うことを推奨する.

1(100%) A

● 潰瘍既往歴のない患者では潰瘍発生予防治療を行わないことを推奨する.

1(100%) A

4.薬物性潰瘍 ― ❸選択的 NSAIDs(COX-2 選択的阻害薬)潰瘍【治療】

消化性潰瘍診療ガイドライン2015(改訂第2版),南江堂,2015

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— 129 —

解説

欧米では,COX-2 選択的阻害薬(セレコキシブ 1, 2),rofecoxib 3, 4),valdecoxib 5, 6),luminacoxib 7〜9),etoricoxib 10, 11))は従来の非選択的NSAIDsに比べて,胃潰瘍や十二指腸潰瘍の発生率は低率であることが報告されている.また,胃潰瘍,十二指腸潰瘍の再出血に関しては,従来のNSAIDs+PPIの併用と COX-2 選択的阻害薬を比較するとほぼ同程度の再出血率であり,完全ではないものの COX-2 選択的阻害薬の再出血予防効果が証明されている 12, 13).また,消化管に対する安全性について rofecoxibの大規模臨床試験(VIGOR試験)があり,低用量アスピリンの非服用者における潰瘍発生率および出血を含む潰瘍合併症は対照薬のナプロキセンより有意に少ないことが確認された 14).さらに,消化管の副作用についてのシステマティックレビューでは,COX-2 選択的阻害薬と非選択的 NSAIDs を比較すると,COX-2 選択的阻害薬は明らかに非選択的NSAIDsに比べて潰瘍発生率および出血を含む潰瘍合併症が低いと報告されている 15).一方,セレコキシブとジクロフェナクを内視鏡を用いて評価した RCTでは,胃潰瘍に限ると COX-2選択的阻害薬のほうが非選択的NSAIDsに比べて潰瘍発生率は低いものの(セレコキシブ群 0.5%vs. ジクロフェナク群 3.6%,p=0.002),胃潰瘍・十二指腸潰瘍全体では両群間に有意差はなかった(セレコキシブ群 2.8% vs. ジクロフェナク群 5.1%,p=0.083)という報告もある 16).一方,日本では,健常ボランティアを対象とし,セレコキシブとロキソプロフェンを 2週間

投与して胃・十二指腸潰瘍の発生の有無を内視鏡を用いて評価した RCTでは.セレコキシブはロキソプロフェンに比べて有意に潰瘍発生が少なかった(1.4% vs. 27.6%,p<0.0001)と報告されている(Aliment Pharmacol Ther 2103; 37: 346-354 a)[検索期間外文献]).また,日本人の関節リウマチ患者と変形性関節症患者を対象としたセレコキシブと COX-2 非選択的NSAIDsの有効性と副作用を比較したレビューでは,セレコキシブとロキソプロフェンの疼痛緩和効果は同等で,消化管イベントはセレコキシブのほうがロキソプロフェンに比較して有意に少なかった(p=0.039)と述べている 17).

Clinical Question 4-19

NSAIDs 潰瘍発生は COX-2 選択的阻害薬により減少するか?

CQ 4-19 NSAIDs 潰瘍発生は COX-2 選択的阻害薬により減少するか?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● NSAIDs 潰瘍発生は COX-2 選択的阻害薬により減少するので使用することを推奨する.

1(100%) A

4.薬物性潰瘍 ― ❸選択的 NSAIDs(COX-2 選択的阻害薬)潰瘍【予防】

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4.薬物性潰瘍

文献

1) Emery P, Zeidler H, Kvien TK, et al. Celecoxib versus diclofenac in long-term management of rheumatoidarthritis: randomized double-blind comparison. Lancet 1999; 354: 2106-2111(ランダム)

2) Goldstein JL, Correa P, Zhao WW, et al. Reduced incidence of gastroduodenal ulcers with celecoxib, anovel cyclooxygenase-2 inhibitor, compared to naproxen in patients with arthritis. Am J Gastroenterol2001; 96: 1019-1027(ランダム)

3) Laine L, Harper S, Simon T, et al. A randomized trial comparing the effect of rofecoxib, a cyclooxygenase-2-specific inhibitor, with that of ibuprofen on the gastroduodenal mucosa of patients with osteoarthritis:Rofecoxib Osteoarthritis Endoscopy Study Group. Gastroenterology 1999; 117: 776-783(ランダム)

4) Hawkey CJ, Laine L, Simon T, et al; Rofecoxib Rheumatoid Arthritis Endoscopy Study Group. Incidence ofgastroduodenal ulcers in patients with rheumatoid arthritis after 12 weeks of rofecoxib, naproxen, orplacebo: a multicentre, randomized, double blind study. Gut 2003; 52: 820-826(ランダム)

5) Pavelka K, Recker DP, Verburg KM. Valdecoxib is as effective as diclofenac in the management ofrheumatoid arthritis with a lower incidence of gastroduodenal ulcers: results of a 24-week trial. Rheuma-tology (Oxford) 2003; 42: 1207-1215(ランダム)

6) Goldstein JL, Eisen GM, Agrawal N, et al. Reduced incidence of upper gastrointestinal ulcer complicationswith the COX-2 selective inhibitor, valdecoxib. Aliment Pharmacol Ther 2004; 20: 527-538(ランダム)

7) Hawkey CC, Svoboda P, Fiedorowicz-Fabrycy IF, et al. Gastroduodenal safety and tolerability of lumira-coxib compared with ibuprofen and celecoxib in patients with osteoarthritis. J Rheumatol 2004; 31: 1804-1810(ランダム)

8) Farkouh ME, Kirshner H, Harrington RA, et al; TARGET Study Group. Comparison of lumiracoxib withnaproxen and ibuprofen in the Therapeutic Arthritis Research and Gastrointestinal Event Trial (TARGET),cardiovascular outcomes: randomized controlled trial. Lancet 2004; 364: 675-684(ランダム)

9) Hawkey CJ, Weinstein WM, Stricker K, et al. Clinical trial: comparison of the gastrointestinal safety oflumiracoxib with traditional nonselective nonsteroidal anti-inflammatory drugs early after the initiation oftreatment: findings from the Therapeutic Arthritis Research and Gastrointestinal Event Trial. AlimentPharmacol Ther 2008; 27: 838-845(コホート)

10) Watson DJ, Bolognese JA, Yu C, et al. Use of gastroprotective agents and discontinuations due to dyspep-sia with the selective cyclooxygenase-2 inhibitor etoricoxib compared with non-selective NSAIDs. CurrMed Res Opin 2004; 20: 1899-1908(ランダム)

11) Hunt RH, Harper S, Watson DJ, et al. The gastrointestinal safety of the COX-2 selective inhibitor etoricoxibassessed by both endoscopy and analysis of upper gastrointestinal events. Am J Gastroenterol 2003; 98:1725-1733(ランダム)

12) Lai KC, Chu KM, Hui WM, et al. Celecoxib compared with lansoprazole and naproxen to prevent gas-trointestinal ulcer complicaions. Am J Med 2005; 118: 1271-1278(ランダム)

13) Chan FK, Hung LC, Suen BY, et al. Celecoxib versus diclofenac and omeprazole in reducing the risk ofrecurred ulcer bleeding in patients with arthritis. N Engl J Med 2002; 347: 2104-2110(ランダム)

14) Bombardier C, Laine L, Reicin A, et al. Comparison of upper gastrointestinal toxicity of rofecoxib andnaproxen in patients with rheumatoid arthritis. N Engl J Med 2000; 343: 1520-1528(ランダム)

15) Hooper L, Brown TJ, Elliott R, et al. The effectiveness of five strategies for the prevention of gastrointesti-nal toxicity induced by non-steroidal anti-inflammatory drugs: systematic review. BMJ 2004; 329: 948(メタ)

16) Cheung R, Cheng TT, Dong Y, et al. Incidence of gastroduodenal ulcers during treatment with celecoxib ordiclofenac pooled results from three 12-week trials in Chinese patients with osteoarthritis or rheumatoidarthritis. Int J Rheum Dis 2010; 13; 151-157(ランダム)

17) Sakamoto C, Soen S. Efficacy and safety of the selective cyclooxygenase-2 inhibitor celecoxib in the treat-ment of rheumatoid arthritis and osteoarthritis in Japan. Digestion 2011; 83: 108-123(メタ)

【検索期間外文献】a) Sakamoto C, Kawai T, Nakamura S, et al. Comparison of gastroduodenal ulcer incidence in healthy Japan-

ese subjects taking celecoxib or loxoprofen evaluated by endoscopy: a placebo-controlled, double-blind 2-week study. Aliment Pharmacol Ther 2013; 37: 346-354(ランダム)

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— 131 —

解説

COX-2 選択的阻害薬は,一般に心血管イベントを増加させることが知られている.Hammad

らの 28 万人を対象とした大規模調査では,COX-2 選択的阻害薬使用群は,使用していないコントロール群に比べて心血管イベントの発生率が高く,ハザード比 2.11(95%CI 1.04〜4.26)と報告している 1).一方,COX-2 選択的阻害薬の種類によって,心血管イベントのリスクの評価が報告によって異なる.セレコキシブ使用群は非使用群に比べて心血管イベントの発生率が高く 2, 3),そのリスクは用量

依存性があるという論文 2)や,心血管イベントの既往のある患者では既往のない患者に比べて発生率が高まるという報告 3)がある.しかし,セレコキシブの使用の有無によって心血管イベントの発生率に有意な差はないという報告 4〜6)もあり,その評価は必ずしも一定していない.rofecoxib使用群は非使用群に対して,ハザード比が 1.22〜3.30 と論文によって数値は異なる

ものの,いずれの報告も心血管イベントの発生率が高まるという評価は一致している 4〜9).また,rofecoxib使用者は心血管イベントの既往の有無にかかわらず,その発生率が高いと報告されている 7).valtecoxib使用群は,心血管イベントの既往のない症例において心血管イベントの発生が高ま

るという論文 7)がある一方,非使用者に比べて有意な差はないという報告 4)があり,評価は一定していない.これに対して,従来の非選択的NSAIDs服用者における心血管イベントの発生率は,コント

ロール群(非服用者)に比べてハザード比 2.24(95%CI 1.13〜4.42)とリスクが有意に高いという論文 1)がある一方,ハザード比 1.47(95%CI 0.76〜2.84)と統計学的に有意差はないという報告 5)がある.この評価の違いは,様々な種類の非選択的NSAIDsを区別せずに総じて評価したためと考えられ,個別に評価すると心血管イベントのリスクは各薬剤によって異なる.

ジクロフェナク服用者は,服用していない場合に比べて心血管イベントの発生率が有意に高く,ハザード比は 1.63〜3.98 と報告されている 10〜14).特に心筋梗塞の既往や心不全などの心血管系に異常のある患者ではそのリスクが高まる傾向がある.ただし,少数ではあるが,ジクロ

Clinical Question 4-20

NSAIDs は心血管イベントを増加させるか?

CQ 4-20 NSAIDs は心血管イベントを増加させるか?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● NSAIDs は一般に心血管イベントを増加させるが,心血管イベントのリスクは薬の種類によって異なる. なし A

4.薬物性潰瘍 ― ❸選択的 NSAIDs(COX-2 選択的阻害薬)潰瘍【予防】

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4.薬物性潰瘍

フェナクは心血管イベントの発生率を増加させないと報告もある 4).インドメタシンやイブプロフェンは心血管イベントのリスクを増加させる 7, 12).一方,ナプロキセンは心血管イベントへの影響が少なく 15),コントロール群と有意な差がな

い 6, 11, 13),あるいはむしろ心血管イベントのリスクを下げる効果がある 4, 7, 12).

文献

1) Hammad TA, Graham DJ, Staffa JA, et al. Onset of acute myocardial infarction after use of non-steroidalanti-inflammatory drugs. Pharmacoepidemiol Drug Saf 2008; 17: 315-321(コホート)

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8) Baron JA, Sandler RS, Bresalier RS, et al. Cardiovascular events associated with refecoxib: final analysis ofthe APPROVe trial. Lancet 2008; 372: 1756-1764(ランダム)

9) Gudbjornsson B, Thorsteinsson SB, Sigvaldason H, et al. Rofecoxib, but not celecoxib, increases the risk ofthromboembolic cardiovascular events in young adults-a nationwide registry-based study. Eur J ClinPharmacol 2010; 66; 619-625(コホート)

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12) Trelle S, Reichenbach S, Wandel S, et al. Cardiovascular safety of non-steroidal anti-inflammatory drugs:network meta-analysis. BMJ 2011; 342: c7086(メタ)

13) Fosbøl EL, Folke F, Jacobsen S, et al. Cause-specific cardiovascular risk associated with nonsteroidal anti-inflammatory drugs among healthy individuals. Circ Cardiovasc Qual Outcomes 2010; 3: 395-405(コホート)

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消化性潰瘍診療ガイドライン2015(改訂第2版),南江堂,2015

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解説

LDA投与により消化管出血のリスクはプラセボと比較して高いことがメタアナリシスで報告されている 1).一方で,脳動脈疾患・冠動脈疾患などの血栓・塞栓形成の抑制のための二次予防における LDA内服の有益性はより大きく,消化性潰瘍出血により LDAの再開ができない場合には原疾患も含めた死亡率の増加が報告されている(図1)2).ランダム試験において,消化性潰瘍出血を伴った場合の LDA継続投与はプラセボと比較して死亡率を有意に低下させ(LDA投与

Clinical Question 4-21

低用量アスピリン(LDA)潰瘍の治療はどのように行うべきか?

CQ 4-21 低用量アスピリン(LDA)潰瘍の治療はどのように行うべきか?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● 低用量アスピリン(LDA)は可能な限り休薬せずに LDA 潰瘍を PPIで治療するよう推奨する.

1(100%) A

4.薬物性潰瘍 ― ❹低用量アスピリン(LDA)潰瘍【治療】

図 1 PPI 併用投与における LDA 継続投与群とプラセボ群の消化性潰瘍再出血率の検討ランダム試験において,消化性潰瘍出血を認めた場合の PPI(pantoprazole 40mg/日)の併用投与における 30日以

内の消化管再出血率は LDA継続投与群とプラセボ群で同等であった.(文献 2より引用)

アスピリンプラセボ

0.5

0.4

0.3

0.2

0.1

0

フォローアップ0 5 10 2015 25 30

(日)

消化性潰瘍再出血率

Log-rank test(p=0.25)ハザード比1.9(95%Cl 0.6~6.0)

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4.薬物性潰瘍

群の死亡率は 1.3%,プラセボ群は 12.9%),PPI(pantoprazole 40mg/日)の併用投与における30 日以内の消化管再出血率は LDA継続投与群とプラセボ群で同等であった.LDA継続投与はPPIを併用することで消化管再出血の増加は認められず,むしろ脳動脈疾患・冠動脈疾患および消化管合併症などによる死亡率を有意に低下させている 2).したがって,LDAは可能な限り休薬せずに LDA潰瘍を PPIで治療することを行うよう推奨する.注:ガイドラインの文献収集終了後の 2012 年に LDA潰瘍の治療をエソメプラゾール単独群

と LDA継続投与にエソメプラゾール併用した群の治癒率が同等であるという RCTが報告されている(Am J Gastroenterol 2012; 107: 1022-1029 a)[検索期間外文献]).

文献

1) Derry S, Loke YK. Risk of gastrointestinal haemorrhage with long term use of aspirin: meta-analysis. BMJ2000; 321: 1183-1187(メタ)

2) Sung JJY, Lau JYW, Ching JYL, et al. Continuation of low-dose aspirin therapy in peptic ulcer bleeding.Ann Intern Med 2010; 152: 1-9(ランダム)

【検索期間外文献】a) Liu CP, Chen WC, Lai KH, et al; Formosa Acid-Related Disease (FARD) Study Group. Esomeprazole alone

compared with esomeprazole plus aspirin for the treatment of aspirin-related peptic ulcers. Am J Gas-troenterol 2012; 107: 1022-1029(ランダム)

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解説

LDAを服用している症例における上部消化管傷害の頻度について内視鏡的な検討を行った成績では,潰瘍の頻度は約 11%との調査がある 1).また,消化管粘膜傷害全体としてみると非常に高率に発生しているとの報告 1, 2)もあり,LDA服用者では消化性潰瘍発生率,有病率が高いといえる.注:ガイドライン文献収集終了後の 2013 年に LDA内服 1,454 例のうち 29.2%にびらん性胃

炎を 6.5%に消化性潰瘍を認めた横断研究がある(J Gastroenterol 2014; 49: 814-824 a)[検索期間外文献]).

文献

1) Yeomans ND, Lanas AI, Talley NJ, et al. Prevalence and incidence of gastroduodenal ulcers during treat-ment with vascular protective doses of aspirin. Aliment Pharmacol Ther 2005; 22: 795-801(ケースコントロール)

2) Niv Y, Battler A, Abuksis G, et al. Endoscopy in asymptomatic minidose aspirin consumers. Dig Dis Sci2005; 50: 78-80(ケースコントロール)

【検索期間外文献】a) Uemura N, Sugano K, Hiraishi H, et al; MAGIC Study Group. Risk factor profiles, drug usage, and preva-

lence of aspirin-associated gastroduodenal injuries among high-risk cardiovascular Japanese patients: theresults from the MAGIC study. J Gastroenterol 2014; 49: 814-824(ランダム)

Clinical Question 4-22

低用量アスピリン(LDA)服用者では,消化性潰瘍発生率,有病率が高いか?

4.薬物性潰瘍 ― ❹低用量アスピリン(LDA)潰瘍【予防】

CQ 4-22 低用量アスピリン(LDA)服用者では,消化性潰瘍発生率,有病率が高いか?

ステートメント

● 低用量アスピリン(LDA)を服用する患者は消化性潰瘍発生率,有病率が高い.

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解説

LDA内服開始する患者にエソメプラゾール 40mg,20mgもしくはプラセボを 26 週間投与し,26 週後に内視鏡的潰瘍発生率を検討したところ,40mgおよび 20mgのエソメプラゾールはプラセボと比較して潰瘍発生率を低下させることが報告されている(図1)1).また,LDAおよびクロピドグレル,抗凝固療法を併用している冠動脈疾患患者にエソメプラゾール 20mg投与群とファモチジン 40mg投与群で潰瘍合併症の発生率を比較したところ,エソメプラゾール投与群で潰瘍合併症を抑制した RCTが報告されている(図2)2).一方で,LDA投与前の内視鏡検査

Clinical Question 4-23

低用量アスピリン(LDA)服用者ではどのような併用薬を用いれば,消化性潰瘍発生率,有病率が低くなるか?

4.薬物性潰瘍 ― ❹低用量アスピリン(LDA)潰瘍【予防】

CQ 4-23 低用量アスピリン(LDA)服用者ではどのような併用薬を用いれば,消化性潰瘍発生率,有病率が低くなるか?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● 低用量アスピリン(LDA)による消化性潰瘍の発生率,有病率の抑制には酸分泌抑制薬が有効であるので行うよう推奨する.

1(100%) A

図 1 消化性潰瘍発生率の検討LDA内服開始する患者にエソメプラゾール 40mg,20mgもしくはプラセボを 26週間投与し,26週後に内視鏡的

潰瘍発生率を検討したところ,40mgおよび 20mgのエソメプラゾールはプラセボと比較して潰瘍発生率を低下させた.(文献 1より引用)

8

6

4

2

0

経過

0 1 2 43 5 6 (月)

消化性潰瘍発生率

7.4

1.5[HR 0.19(0.10,0.37)]1.1[HR 0.14(0.07,0.30)]

エソメプラゾール 40mg(n=817)

エソメプラゾール 20mg(n=804)

プラセボ(n=805)

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④低用量アスピリン(LDA)潰瘍【予防】

で胃潰瘍および十二指腸潰瘍瘢痕を認めない症例を対象として,LDA 75〜325mg/日内服にファモチジン 40mg併用もしくはプラセボを併用し,12 週後に再度内視鏡検査を施行したところ,ファモチジン群ではプラセボ群と比較して胃・十二指腸潰瘍の発生を抑制することを報告している 3).さらに,60 歳以上の胃・十二指腸潰瘍を認めない LDA内服症例 991 例(エソメプラゾール 20mg投与群 493 例,プラセボ群 498 例)に対して LDA内服開始 26 週後に内視鏡検査を施行したところ,プラセボ群では 5.4%,エソメプラゾール群では 1.6%の胃・十二指腸潰瘍が認められ,エソメプラゾール群で胃・十二指腸潰瘍発生が抑制され,エソメプラゾールは 60 歳以上の潰瘍既往のない症例の胃・十二指腸潰瘍発生を抑制することを報告している(図3)4).したがって,LDAによる消化性潰瘍の発生率,有病率の抑制には酸分泌抑制薬が有効であるので行うよう推奨する.

文献

1) Scheiman JM, Devereaux PJ, Herlitz J, et al. Prevention of peptic ulcers with esomeprazole in patients atrisk of ulcer development treated with low-dose acetylsalicylic acid: a randomised,controlled trial(OBERON). Heart 2011; 97: 797-802(ランダム)

2) Ng FH, Tunggal P, Chu WM, et al. Esomeprazole compared with famotidine in the prevention of uppergastrointestinal bleeding in patients with acute coronary syndrome or myocardial infarction. Am J Gas-troenterol 2012; 107: 389-396(ランダム)

3) Taha AS, McCloskey C, Prasad R, et al. Famotidine for the prevention of peptic ulcers and oesophagitis in

図 2 消化性潰瘍合併症発生率の検討LDAおよびクロピドグレル,抗凝固療法を併用している冠動脈疾患患者にエソメプラゾール 20mg投与群とファモチ

ジン 40mg投与群で潰瘍合併症の発生率を比較したところ,エソメプラゾール投与群で潰瘍合併症を抑制した.(文献 2より引用)

1.00

0.98

0.96

0.94

0.92

0.90

フォローアップ

0 8 16 32 4024 48 56 (週)

消化性潰瘍合併症発生率

エソメプラゾール群

ファモチジン群

p=0.005

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4.薬物性潰瘍

patients taking low-dose aspirin (FAMOUS): a phase III, randomised, double-blind, placebo-controlledtrial. Lancet 2009; 374: 119-125(ランダム)

4) Yeomans N, Lanas A, Labenz J, et al. Efficacy of esomeprazole (20 mg once daily) for reducing the risk ofgastroduodenal ulcers associated with continuous use of low-dose aspirin. Am J Gastroenterol 2008; 103:2465-2473(ランダム)

図 3 消化性潰瘍を認めない LDA 内服症例に対する胃・十二指腸潰瘍発生率の検討60歳以上の胃・十二指腸潰瘍を認めない LDA内服症例に対して LDA内服開始 26週後に内視鏡検査を施行したとこ

ろ,プラセボ群と比較してエソメプラゾール群で胃・十二指腸潰瘍発生が抑制された.(文献 4より引用)

8

7

6

5

4

3

2

1

0

エソメプラゾールプラセボ

1.4

4.9

2.7

7.1

p=0.001

p=0.22

n=360 n=368 n=112 n=112H. pylori 陽性H. pylori 陰性

消化性潰瘍合併症発生率

(%)

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解説

消化性潰瘍および出血を含む消化管合併症の発生率は LDAの投与により高まることが示されている 1).日本における検討では LDAによる消化管出血はNSAIDs全般および日本での処方頻度の高いロキソプロフェンと同等であり,日本人では出血のリスクは欧米人に比して高いことが示唆される(表1)2).また,LDAを長期に服用している場合,年 1%の割合で消化管出血が生じる可能性を報告している 3).さらに,メタアナリシスでの検討では LDAによる消化管出血のリスクは 1.68 から 2.5 倍となっている 4〜6).消化管出血のリスクは LDA内服患者でコントロールと比較して増加し(OR 1.55,95%CI 1.27〜1.90),LDAとクロピドグレル併用は LDA単独と比較して消化管出血のリスクを上昇させ(OR 1.86,95%CI 1.49〜2.31),抗凝固薬と LDAの併用(OR 1.93,95%CI 1.42〜2.61),潰瘍出血の既往および長期間内服もリスクを上昇させる 7).以上より,LDAを服用する患者は,上部消化管出血リスク,頻度は高いといえる.

文献

1) García Rodríguez LA, Hernández-Díaz S, de Abajo FJ. Association between aspirin and upper gastroin-testinal complications: systemic review of epidemiologic studies. Br J Clin Pharmacol 2001; 52: 563-571(メタ)

2) Sakamoto C, Sugano K, Ota S, et al. Case-control study on the association of upper gastrointestinal bleed-ing and nonsteroidal anti-inflammatory drugs in Japan. Eur J Clin Pharmacol 2006; 62: 765-772(ケースコントロール)

3) Serrano P, Lanas A, Arroyo MT, et al. Risk of upper gastrointestinal bleeding in patients taking low-doseaspirin for the prevention of cardiovascular diseases. Aliment Pharmacol Ther 2002; 16: 1945-1953(コホート)

4) Weisman SM, Graham DY. Evaluation of the benefits and risks of low-dose aspirin in the secondary pre-vention of cardiovascular and cerebrovascular events. Arch Intern Med 2002; 162: 2197-2202(メタ)

5) Derry S, Loke YK. Risk of gastrointestinal haemorrhage with long term use of aspirin: meta-analysis. BMJ2000; 321: 1183-1187(メタ)

Clinical Question 4-24

低用量アスピリン(LDA)服用者では,上部消化管出血リスク,頻度は高いか?

4.薬物性潰瘍 ― ❹低用量アスピリン(LDA)潰瘍【予防】

CQ 4-24 低用量アスピリン(LDA)服用者では,上部消化管出血リスク,頻度は高いか?

ステートメント

● 低用量アスピリン(LDA)を服用する患者では上部消化管出血リスク,頻度が高い.

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4.薬物性潰瘍

6) Mcquaid KR, Laine L. Systemic review and meta-analysis of adverse events of low-dose aspirin and clopi-dogrel in randomized controlled trials. Am J Med 2006; 119: 624-638(メタ)

7) Lanas A, Wu P, Medin J, et al. Low doses of acetylsaiicyiic acid increase risk of Gastrointestinal bleeding ina meta-analysis. Clin Gastroenterol Hepatol 2011; 9: 762-768(メタ)

表1 上部消化管出血のリスクAnalgesics Cases

( 175)Controls( 347)

Crude odds ratio

Multivariate odds ratio(95% CI)

アセトアミノフェン a) 11 25 0.9 0.8(0.3~1.9)アスピリン overall アスピリン regular  ≧ 3.25mg/day  < 3.25mg/day  Dose unknown アスピリン occasional

231801625

231501328

212.6-2.6-1.3

5.5(2.5~11.9)7.7(3.2~18.7)

8.2(3.3~20.7)

2.0(0.5~8.5)NANSAID overall NANSAID regular  High dose b)  Low dose  Dose unknown NANSAID occasional

282012718

211163210

3.04.04.45.2-1.8

6.1(2.7~13.4)7.3(2.8~18.7)7.4(2.3~23.9)16.8(2.7~104.3)

4.1(1.2~14.5)ロキソプロフェン overall ロキソプロフェン regular  ≧ 180mg/day  < 180mg/day  Dose unknown ロキソプロフェンoccasional

1085212

642202

3.44.1----

5.9(1.5~22.7)5.2(1.2~22.7)

ジクロフェナク overall ジクロフェナク regular  ≧ 75mg/day  < 75mg/day  Dose unknown ジクロフェナク occasional

1074303

320111

6.9-----

10.9(2.5~48.4)

LDAによる上部消化管出血はNSAIDs 全般およびロキソプロフェンと同等である.(文献2より引用)a): Daily dose was 75 ~ 800mg for cases and 150 ~ 1350mg for controlsb): Equal to or higher than the minimum daily dose for rheumatoid arthritis given in the data sheet: ≧ 180mg/day for loxoprofen, ≧ 75mg/day for diclfenac, ≧ 27mg/day for ampiroxicam, ≧ 600mg/day for ibuprofen, ≧ 400mg/day for etodolac, ≧ 150mg/day for ketoprofen, ≧ 240mg/day for zaltoprofen, ≧ 225mg/day for pranoprofen, ≧ 10mg/day for meloxicam, ≧ 12mg/day for lomoxicam, Regular used in 4 or more days of the last 7 days; occasional: used on not more than 3 days in the last 7 days; NANSAID: non-aspirin NSAID

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解説

LDAを服用する 903 例の平均 45 ヵ月の追跡調査に関するコホート研究では,1.2%の患者に出血を認め,酸分泌抑制薬投与患者では出血病変が抑制されることが示され,上部消化管出血をきたした症例と対照の症例対照研究においても,出血患者の服薬状況からH2RA,PPIの有効性が報告されている 1〜3).また,LDAおよびクロピドグレル内服にオメプラゾール 20mgを併用すると出血が抑制されたことも報告されている 4).さらに,PPI服用で消化管出血のリスクを低下させるメタアナリシスが報告されている(図1)5).以上より,酸分泌抑制薬,特に PPIの併

Clinical Question 4-25

低用量アスピリン(LDA)服用者ではどのような併用薬を用いれば,上部消化管出血発生率,有病率が低くなるか?

4.薬物性潰瘍 ― ❹低用量アスピリン(LDA)潰瘍【予防】

CQ 4-25 低用量アスピリン(LDA)服用者ではどのような併用薬を用いれば,上部消化管出血発生率,有病率が低くなるか?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● 低用量アスピリン(LDA)による上部消化管出血の発生率,有病率の抑制には酸分泌抑制薬が有効であるので投与するよう推奨する.

1(100%) A

図 1 LDA 服用における消化管出血のリスクPPI 服用で消化管出血のリスクを低下させる.

(文献 5より引用)

0 1 10 100

LDAとクロピドグレル併用による消化管出血

消化管出血顕性

PPI と LDA服用による消化管出血

Peto OR,95%Cl

1.46,1.15~1.86

1.86,1.49~2.31

0.34,0.21~0.57

ProtectPeto OR(95%Cl)

Harm

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— 142 —

4.薬物性潰瘍

用は LDAを服用する患者において消化管出血のリスクを低下させるので行うよう推奨する.

文献

1) Serrano P, Lanas A, Arroyo MT, et al. Risk of upper gastrointestinal bleeding in patients taking low-doseaspirin for the prevention of cardiovascular diseases. Aliment Pharmacol Ther 2002; 16: 1945-1953(コホート)

2) Lanas A, García-Rodríguez LA, Arroyo MT, et al; Investigators of the Asociación Española de Gastroen-terología (AEG). Effect of antisecretory drugs and nitrates on the risk of ulcer bleeding associated withnonsteroidal anti-inflammatory drugs, antiplatelet agents, and anticoagulants. Am J Gastroenterol 2007;102: 507-515(ケースコントロール)

3) Lanas A, Bajador E, Serrano P, et al. Nitrovasodilators, low-dose aspirin, other nonsteroidal antiinflamma-tory drugs, and the risk of upper gastrointestinal bleeding. N Eng J Med 2000; 343: 834-839(ケースコントロール)

4) Bhatt DL, Cryer BL, Contant CF, et al; the COGENT Investigators. Clopidogrel with or without omepra-zole in coronary artery disease. N Engl J Med 2010; 363: 1909-1917(ランダム)

5) Lanas A, Wu P, Medin J, et al. Low doses of acetylsaiicyiic acid increase risk of gastrointestinal bleeding ina meta-analysis. Clin Gastroenterol Hepatol 2011; 9: 762-768(メタ)

消化性潰瘍診療ガイドライン2015(改訂第2版),南江堂,2015

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— 143 —

解説

上部消化管出血既往歴がある患者が LDAを服用すると,消化性潰瘍および出血を含む消化管合併症の発症率が高まることが示されている 1).さらに,LDAにより上部消化管出血をきたした例において,Chanらは治癒後 6ヵ月以内の消化性潰瘍からの再出血は H. pylori 除菌群では3.5%であり,オメプラゾール投与群の 1.7%と同等であり,RCTにより H. pylori 除菌による出血の再発予防効果が示されている 2).その後,Laiらは,出血を伴う消化性潰瘍の治癒後 8週以内の再発は H. pylori 除菌+プラセボ群で 46.7%と高いが,H. pylori 除菌+ランソプラゾール群で5.6%と有意に抑制されていると報告しており,H. pylori 除菌後に発生する LDAによる出血性潰瘍再発は PPIにより有意に抑制することを示している 3).また,エソメプラゾールと LDAの併用はクロピドグレル単独と比較して出血を抑制することも示されている 4, 5).したがって,LDA

潰瘍出血という合併症の重篤さを考慮すると,LDAによる上部消化管出血の再発予防には H.

pylori 除菌,あるいは PPI投与が有効であるが,除菌単独療法に比べ,除菌に加えて PPIを投与するほうが有効である.注:ガイドライン文献収集終了後の 2013 年に最近の 4年にわたるコホート研究の結果,除菌

単独で再出血予防効果があるとした報告がある(Gastroenterology 2013; 144: 528-535 a)[検索期間外文献]).

文献

1) Chan FK, Chung SC, Suen BY, et al. Preventing recurrent upper gastrointestinal bleeding in patients withHelicobacter pylori infection who are taking low-dose aspirin or naproxen. N Engl J Med 2001; 344: 967-973

(ランダム)

Clinical Question 4-26上部消化管出血既往歴がある患者が低用量アスピリン(LDA)を服用する場合,どのような併用薬を用いれば,再出血が少なくなるか?

4.薬物性潰瘍 ― ❹低用量アスピリン(LDA)潰瘍【予防】

CQ 4-26 上部消化管出血既往歴がある患者が低用量アスピリン(LDA)を服用する場合,どのような併用薬を用いれば,再出血が少なくなるか?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● 低用量アスピリン(LDA)による上部消化管出血の再発抑制には,除菌単独療法に比べ,除菌に加えて PPI の投与が有効であるので行うよう推奨する.

1(100%) A

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— 144 —

4.薬物性潰瘍

2) García Rodríguez LA, Hernández-Díaz S, de Abajo FJ. Association between aspirin and upper gastroin-testinal complications: systemic review of epidemiologic studies. Br J Clin Pharmacol 2001; 52: 563-571(メタ)

3) Lai KC, Lam SK, Chu KM, et al. Lansoprazole for the prevention of recurrence of ulcer complications fromlong-term low-dose aspirin use. N Engl J Med 2002; 346: 2033-2038(ランダム)

4) Lai KC, Chu KM, Hui WM, et al. Esomeprazole with aspirin versus clopidogrel for prevention of recurrentgastrointestinal ulcer complications. Clin Gastroenterol Hepatol 2006; 7: 860-865(ランダム)

5) Chan FK, Ching JYL, Hung LCT, et al. Clopidogrel versus aspirin and esomeprazole to prevent recurrentulcer bleeding. N Engl J Med 2005; 352: 238-244(ランダム)

【検索期間外文献】a) Chan FK, Ching JY, Suen BY, et al. Effects of Helicobacter pylori infection on long-term risk of peptic ulcer

bleeding in low-dose aspirin users. Gastroenterology 2013; 144: 528-535(コホート)

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図 1 消化性潰瘍累積発生率の検討消化性潰瘍既往のある LDA内服開始する患者に対して,ランソプラゾール内服群とゲファルナート内服群で消化性潰

瘍の累積発生率を比較検討したところ,ランソプラゾール群はゲファルナート群と比較して消化性潰瘍再発率を低下させた.(文献 2より引用)

— 145 —

解説

LDA起因性潰瘍にファモチジン 40mg群と pantoprazole 20mg群における 48 週後の潰瘍もしくは出血の再発を検討したところ,LDA 80mgの継続投与では,消化性潰瘍もしくは出血の再発はファモチジン群では 20%,pantoprazole群では 0%であった.pantoprazole群はファモチジン群と比較して潰瘍および出血の再発予防効果が高いことを示している 1).さらに,消化性潰

Clinical Question 4-27

潰瘍既往歴がある患者が低用量アスピリン(LDA)を服用する場合,どのように潰瘍再発を予防するのか?

4.薬物性潰瘍 ― ❹低用量アスピリン(LDA)潰瘍【予防】

CQ 4-27 潰瘍既往歴がある患者が低用量アスピリン(LDA)を服用する場合,どのように潰瘍再発を予防するのか?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● 低用量アスピリン(LDA)による上部消化性潰瘍の再発予防にはPPI の投与が有効であるので投与するよう推奨する.

1(100%) A

ランソプラゾール ゲファルナート

100

90

80

70

60

50

40

30

20

10

0

0 91 181 271 361 451 541 631 721(日)

消化性潰瘍累積発生率

(%)

ランソプラゾール(n)ゲファルナート(n)

168 129 98 80 57 27 12 1162 102 74 62 32 19 5

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— 146 —

4.薬物性潰瘍

瘍既往のある LDA内服開始する患者に対して,ランソプラゾール内服群とゲファルナート内服群で第 91 日,181,361 日の消化性潰瘍の累積発生率を比較検討したところ,ランソプラゾール15mg群で 1.5,2.1,3.7%,ゲファルナート群では 15.2,24.0,31.7%であり,ランソプラゾール群はゲファルナート群と比較して消化性潰瘍再発率を低下させている(図1)2).したがって,LDAによる上部消化性潰瘍の再発予防には PPIの投与が有効であるので行うよう推奨する.注:ガイドラインの文献収集終了後の 2012 年(J Gastroenterol 2012; 47: 1186-1197 a)[検索期間

外文献])および 2013 年(Gut 2014; 63: 1061-1068 b)[検索期間外文献])にそれぞれラベプラゾールナトリウム(10mg,20mg)およびエソメプラゾール(20mg)は LDA起因性消化性潰瘍既往者における潰瘍再発抑制に有用であるという RCTが報告されている.

文献

1) Ng FH, Wong SY, Lam KF, et al. Famotidine is inferior to pantoprazole in preventing recurrence ofaspirin-related peptic ulcers or erosions. Gastroenterology 2010; 138: 82-88(ランダム)

2) Sugano K, Matsumoto Y, Itabashi T, et al. Lansoprazole for secondary prevention of gastric or duodenalulcers associated with long-term low-dose aspirin therapy: results of a prospective, multicenter, double-blind, randomized, double-dummy, active-controlled trial. J Gastroenterol 2011; 46: 724-735(ランダム)

【検索期間外文献】a) Sanuki T, Fujita T, Kutsumi H, et al. Rabeprazole reduces the recurrence risk of peptic ulcers associated

with low-dose aspirin in patients with cardiovascular or cerebrovascular disease: a prospective random-ized active-controlled trial. J Gastroenterol 2012; 47: 1186-1197(ランダム)

b) Sugano K, Choi MG, Lin JT, et al. Multinational, double-blind, randomised, placebo-controlled, prospec-tive study of esomeprazole in the prevention of recurrent peptic ulcer in low-dose acetylsalicylic acidusers: the LAVENDER study. Gut 2014; 63: 1061-1068(ランダム)

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解説

LDA投与前の内視鏡検査で胃潰瘍および十二指腸潰瘍瘢痕を認めない症例を対象として,LDA 75〜325mg/日内服にファモチジン 40mg併用もしくはプラセボを併用し,12 週後に再度内視鏡検査を施行したところ,ファモチジン群では 3.4%,プラセボ群では 15.0%に胃潰瘍の出

図 1 消化性潰瘍を認めない症例における LDA 投与後の胃・十二指腸潰瘍発生率の検討LDA投与前の内視鏡検査で胃潰瘍および十二指腸潰瘍瘢痕を認めない症例を対象として,LDA 75〜325mg/日内服に

ファモチジン 40mg併用もしくはプラセボを併用し,12週後に再度内視鏡検査を施行したところ,プラセボ群と比較してファモチジン群で胃・十二指腸潰瘍の発生を抑制した.(文献 1より引用)

Clinical Question 4-28

潰瘍既往歴など潰瘍発生リスクがない患者が低用量アスピリン(LDA)を服用する場合,潰瘍発生予防策は必要か?

4.薬物性潰瘍 ― ❹低用量アスピリン(LDA)潰瘍【予防】

CQ 4-28 潰瘍既往歴など潰瘍発生リスクがない患者が低用量アスピリン(LDA)を服用する場合,潰瘍発生予防策は必要か?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● 酸分泌抑制薬は低用量アスピリン(LDA)起因性消化性潰瘍発生の一次予防に有用であるので投与するよう推奨する.

1(100%) A

16

14

12

10

8

6

4

2

0胃潰瘍 十二指腸潰瘍

消化性潰瘍

プラセボ(n=200)ファモチジン(n=204)

(%)

潰瘍発生率

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— 148 —

4.薬物性潰瘍

現を認め,十二指腸潰瘍はファモチジン群で 0.5%,プラセボ群で 8.5%であり,ファモチジンは胃・十二指腸潰瘍の発生を抑制することを報告していることから,酸分泌抑制薬が LDA起因性消化性潰瘍発生の一次予防に有用であるので行うよう推奨する(図1)1).

文献

1) Taha AS, McCloskey C, Prasad R, et al. Famotidine for the prevention of peptic ulcers and oesophagitis inpatients taking low-dose aspirin (FAMOUS): a phase III, randomised, double-blind, placebo-controlledtrial. Lancet 2009; 374: 119-125(ランダム)

消化性潰瘍診療ガイドライン2015(改訂第2版),南江堂,2015

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— 149 —

解説

LDAとNSAIDsの併用では,上部消化管出血をきたした症例 1,122 例のうちNSAIDs服用者317 例とNSAIDs服用対照例 187 例の LDA服薬状況の解析から,LDAはNSAIDsの出血リスクを 3.1 倍増加させることが報告されている 1).また,LDA服用患者 27,694 例における検討でLDAとNSAIDsの併用は上部消化管出血の発症のリスクを高めると報告している 2).さらに,LDAと抗血小板薬の併用における検討では,重篤な消化管出血をきたした群は,対照と比較して LDA単独投与および複数の抗血小板薬を服用していることが示されている 3).さらに,NSAIDsを服用している症例におけるNSAIDsと LDAの併用による消化性潰瘍はNSAIDs単独投与と比較して消化性潰瘍発生の割合が増加している 4).以上より,LDA常用者におけるNSAIDs投与は潰瘍発生および出血のリスクを高める.

文献

1) Lanas A, Bajador E, Serrano P, et al. Nitrovasodilators, low-dose aspirin, other nonsteroidal antiinflamma-tory drugs, and the risk of upper gastrointestinal bleeding. N Eng J Med 2000; 343: 834-839(ケースコントロール)

2) Sørensen HT, Mellemkjaer L, Blot WJ, et al. Risk of upper gastrointestinal bleeding associated with use oflow-dose aspirin. Am J Gastroenterol 2000; 95: 2218-2224(ケースコントロール)

3) Hallas J, Dall M, Andries A, et al. Use of single and combined antithrombotic therapy and risk of seriousupper gastrointestinal bleeding: population based case-control study. BMJ 2006; 333: 726-728(ケースコントロール)

4) Lanas A, García-Rodríguez LA, Arroyo MT, et al; Asociación Española de Gastroenterología. Risk ofupper gastrointestinal ulcer bleeding associated with selective cyclo-oxygenase-2 inhibitors, traditionalnon-aspirin non-steroidal anti-inflammatory drugs, aspirin and combinations. Gut 2006; 55: 1731-1738

(ケースコントロール)

Clinical Question 4-29

低用量アスピリン(LDA)服用者における NSAIDs 投与は潰瘍発生のリスクを上げるか?

4.薬物性潰瘍 ― ❹低用量アスピリン(LDA)潰瘍【予防】

CQ 4-29 低用量アスピリン(LDA)服用者における NSAIDs 投与は潰瘍発生のリスクを上げるか?

ステートメント

● 低用量アスピリン(LDA)と NSAIDs の併用は潰瘍および出血リスクを高める.

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— 150 —

解説

LDA服用者に COX-2 選択的阻害薬を用いた場合,COX-2 選択的阻害薬単独投与に比べ,消化性潰瘍発生率は増加する 1〜3)が,この潰瘍発生率は LDAに通常のNSAIDsを併用する場合よりは低い 4, 5).しかしながら,COX-2 選択的阻害薬および通常のNSAIDsの服用は服用しない場合と比べて,心血管イベントのリスクおよび頻度を増加させるため 6),LDA服用者の心血管系リスクを考慮すると LDAを服用する心血管リスクのある患者への COX-2 選択的阻害薬や通常のNSAIDsの併用は一般的には行わないよう提案する 7).また,LDA服用者に COX-2 選択的阻害薬もしくは通常のNSAIDsに PPIを併用した場合に,消化管傷害のリスクは同等であるという RCTの報告がある 8).したがって,LDA服用者にNSAIDs併用投与が必要な患者で消化管傷害リスクが高い患者は COX-2 選択的阻害薬と PPIの併用を推奨する.一方,ナプロキセンは心血管イベントへの影響が少ないと報告があり 7, 9),(Lancet 2013; 382 (9894): 769-779 a)[検索期間外文献]),LDA服用者にNSAIDs併用投与が必要な患者で消化管傷害リスクが低い患者にはナプロキセンと PPIの併用を提案する.しかしながら,LDAとナプロキセンの相互作用,ナプロキセンが LDAの作用を競合阻害する可能性も考えられる.

文献

1) Silverstein FE, Faich G, Goldstein JL, et al. Gastrointestinal toxicity with celecoxib vs non-steroidal anti-inflammatory drugs for osteoarthritis and rheumatoid arthritis. JAMA 2000; 284: 1247-1255(ランダム)

2) Laine L, Maller ES, Yu C, et al. Ulcer formation with low-dose enteric-coated aspirin and the effect ofCOX-2 selective inhibition: a double-blind trial. Gastroenterology 2004; 127: 395-402(ランダム)

3) Lanas A, García-Rodríguez LA, Arroyo MT, et al; Asociación Española de Gastroenterología. Risk ofupper gastrointestinal ulcer bleeding associated with selective cyclo-oxygenase-2 inhibitors, traditionalnon-aspirin non-steroidal anti-inflammatory drugs, aspirin and combinations. Gut 2006; 55: 1731-1738

(ケースコントロール)4) Strand V. Are COX-2 inhibitors preferable to non-selective non-steroidal anti-inflammatory drugs in

Clinical Question 4-30

低用量アスピリン(LDA)服用者における COX-2 選択的阻害薬は通常の NSAIDs より潰瘍リスクを下げるか?

4.薬物性潰瘍 ― ❹低用量アスピリン(LDA)潰瘍【予防】

CQ 4-30 低用量アスピリン(LDA)服用者における COX-2 選択的阻害薬は通常の NSAIDs より潰瘍リスクを下げるか?

ステートメント

● 低用量アスピリン(LDA)服用者に COX-2 選択的阻害薬を用いると,LDA 服用者に通常のNSAIDs を併用する場合に比べて潰瘍および出血のリスクは下がる.

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— 151 —

④低用量アスピリン(LDA)潰瘍【予防】

patients with risk of cardiovascular events taking low-dose aspirin. Lancet 2007; 370: 2138-2151(メタ)5) Goldstein J, Lowry SC, Lanza FL, et al. The impact of low-dose aspirin on endoscopic gastric and duode-

nal ulcer rates in users of a non-selective non-steroidal anti-inflammatory drug or a cyclo-oxygenase-2-selective inhibitor. Alm Pharmacol Ter 2006; 23: 1489-1498(ランダム)

6) Mcgettigan P, Henry D. Cardiovascular risk and inhibition of cyclooxygenase: a systematic review of theobservational studies of selective and nonselective inhibitors of cyclooxygenase 2. JAMA 2006; 296: 1633-1644(メタ)

7) Lanza FL, Chan FKL, Quigley EMM. Guidelines for prevention of NSAID-related ulcer complications. AmJ Gastroenterol 2009; 104: 728-738(ガイドライン)

8) Goldstein JL, Cryber B, Amer F, et al. Celecoxib plus aspirin versus naproxen and lansoprazole plusaspirin: a randomized, double-blind, endoscopic trial. Clin Gasrtroenterol Hepatol 2007; 5: 1167-1174(ランダム)

9) Kearney PM, Baigent C, Godwin J, et al. Do selective cyclo-oxygenase-2 inhibitors and traditional non-steroidal anti-inflammatory drugs increase the risk of atherothrombosis? meta-analysis of randomised tri-als. BMJ 2006; 332: 1302-1308(メタ)

【検索期間外文献】a) Bhala N, Emberson J, Merhi A, et al; Coxib and traditional NSAID Trialists’ (CNT) Collaboration. Vascular

and upper gastrointestinal effects of non-steroidal anti-inflammatory drugs: meta-analyses of individualparticipant data from randomised trials. Lancet 2013; 382 (9894): 769-779(メタ)

消化性潰瘍診療ガイドライン2015(改訂第2版),南江堂,2015

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— 152 —

解説

LDAとNSAIDsを併用すると出血潰瘍リスクが上がるとする疫学研究がある 1, 2).また,LDA

とNSAIDsの併用により LDA単独に比べ胃潰瘍発生率が上がるとする RCTがある 3).一方で,潰瘍再発予防に関して,LDAとNSAIDsの併用例においてランソプラゾールの併用は PG製剤と同等の再発予防効果が確認され 4),ナプロキセンと LDAの併用におけるエソメプラゾール20mgの併用は潰瘍再発率を低下させている 5).さらに,LDAとセレコキシブの併用もしくはLDAとナプロキセンおよびランソプラゾール 30mgの併用における消化性潰瘍の発生率も同等であることが示されている 6).一般的に心筋梗塞,脳梗塞の予防のため LDAを必要とする患者は高齢者が多く,さらにNSAIDsを併用する患者はこれら疫学研究から胃・十二指腸潰瘍および出血性潰瘍高リスク群と考えられ,NSAIDs潰瘍の予防が必要と思われる.これらのことから,LDAとNSAIDs併用による潰瘍再発予防には PPIが有効であるので行うよう推奨する.一方で,LDA,NSAIDs併用による潰瘍一次予防について明らかなエビデンスは得られていないが,何らかの対応は要すると考える.

文献

1) Lanas A, Bajador E, Serrano P, et al. Nitrovasodilators, low-dose aspirin, other nonsteroidal antiinflamma-tory drugs, and the risk of upper gastrointestinal bleeding. N Eng J Med 2000; 343: 834-839(ケースコントロール)

2) Sørensen HT, Mellemkjaer L, Blot WJ, et al. Risk of upper gastrointestinal bleeding associated with use oflow-dose aspirin. Am J Gastroenterol 2000; 95: 2218-2224(ケースコントロール)

3) Laine L, Maller ES, Yu C, et al. Ulcer formation with low-dose enteric-coated aspirin and the effect ofCOX-2 selective inhibition: a double-blind trial. Gastroenterology 2004; 127: 395-402(ランダム)

4) Goldstein JL, Huang B, Amer F, et al. Ulcer recurrence in high-risk patients receiving non-steroidalanti-

Clinical Question 4-31

低用量アスピリン(LDA)服用者における NSAIDs 併用時の潰瘍予防法はあるか?

4.薬物性潰瘍 ― ❹低用量アスピリン(LDA)潰瘍【予防】

CQ 4-31 低用量アスピリン(LDA)服用者における NSAIDs 併用時の潰瘍予防法はあるか?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● 低用量アスピリン(LDA)と NSAIDs 併用による潰瘍再発予防にはPPI が有効であるので投与するよう推奨する.

1(100%) A

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— 153 —

④低用量アスピリン(LDA)潰瘍【予防】

inflammatory drugs plus low-dose aspirin: results of a post Hoc subanalysis. Clin Ther 2004; 26: 1637-1643(ランダム)

5) Goldstein JL, Hochberg MC, Fort JG, et al. Clinical trial: the incidence of NSAID-associated endoscopicgastric ulcers in patients treated with PN 400 (naproxen plus esomeprazole magnesium) vs. enteric-coatednaproxen alone. Aliment Pharmacol Ther 2010; 32: 401-413(ランダム)

6) Goldstein JL, Cryer B, Amer F, et al. Celecoxib plus aspirin versus naproxen and lansoprazole plus aspirin:a randomized, double-blind, endoscopic trial. Clin Gastroenterol Hepatol 2007; 5: 1167-1174(ランダム)

消化性潰瘍診療ガイドライン2015(改訂第2版),南江堂,2015

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— 154 —

解説

1)アレンドロン酸H. pylori 感染者を除外した健康成人を対象とした研究で,ビスホスホネート系薬剤の代表であ

るアレンドロン酸を高用量投与する際に,保護されたアレンドロン酸製剤を投与された群は通常のアレンドロン酸投与群と比較して胃潰瘍の発生率が有意に低かった(3.3% vs. 21.4%,p=0.015)1).骨粗鬆症の治療に用いる量については,リセドロン酸はアレンドロン酸より胃潰瘍発生率が有意に低かった 2, 3).Etminanらは冠動脈再灌流療法を受けた 65 歳以上の患者データベースを用いたケースコント

ロールスタディでビスホスホネート単独では上部消化管出血のリスクは OR 1.01(0.72〜1.43)と上昇しなかったと報告した 4).しかし,この報告は対象が上部消化管出血であり消化性潰瘍ではない.日本からは,MiyakeらがNSAIDsを 3ヵ月以上継続して内服している関節リウマチ患者を対

象に後ろ向きコホート研究を行っており,消化性潰瘍のリスクを高めるのはビスホスホネート[OR 2.29(1.09〜4.81)],喫煙[OR 2.71(1.13〜6.53)],60 歳以上[OR 2.58(1.03〜6.49)]との結果が示されている 5).

2)抗癌薬(①シクロホスファミド+メトトレキサート+フルオロウラシル,②フルオロウラシル単独)シクロホスファミド,メトトレキサート,およびフルオロウラシルを併用する化学療法,な

いしフルオロウラシル単独の化学療法において,オメプラゾールないし塩酸ラニチジンを併用すると,潰瘍発生率がプラセボ群よりも有意に低下した.この結果から,上記抗癌薬は消化性潰瘍発生のリスクを高めることが示されている 6).

3)選択的セロトニン再取り込み阻害薬デンマークで 3つのデータベースを使用して行われた大規模なケースコントロールスタディ

(ケース 4,862 名,コントロール 19,448 名)において,選択的セロトニン再取り込み阻害薬(selec-

Clinical Question 4-32

NSAIDs 以外に潰瘍発生リスクを高める薬物は?

4.薬物性潰瘍 ― ❺その他の薬物

CQ 4-32 NSAIDs 以外に潰瘍発生リスクを高める薬物は?

ステートメント

● アレンドロン酸,抗癌薬(①シクロホスファミド+メトトレキサート+フルオロウラシル,②フルオロウラシル単剤)および選択的セロトニン再取り込み阻害薬が潰瘍発生リスクを高める.

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⑤その他の薬物

tive serotonin reuptake inhibitors:SSRI)使用者では消化性潰瘍発生リスクが OR 1.50(95%CI

1.18〜1.90)と上昇し,PPIを併用すると OR 0.76(0.46〜1.25)とリスクが上昇せず,SSRIが消化性潰瘍のリスクを上昇させることが示唆されている 7).日本からはケース 41 名,コントロール 82 名でのケースコントロールスタディが報告され,

その結果では SSRIはリスクを上昇させなかった 8)が,H. pylori 感染などその他のリスクについての評価が十分ではない.

文献

1) Marshall JK, Thabane M, James C. Randomized active and placebo-controlled endoscopy study of a novelprotected formulation of oral alendronate. Dig Dis Sci 2006; 51: 864-868(ランダム)

2) Lanza FL, Hunt RH, Thomson AB, et al. Endoscopic comparison of esophageal and gastroduodenal effectsof risedronate and alendronate in postmenopausal women. Gastroenterology 2000; 119: 631-638(ランダム)

3) Thomson AB, Marshall JK, Hunt RH, et al; Risedronate Endoscopy Study Group. 14 day endoscopy studycomparing risedronate and alendronate in postmenopausal women stratified by Helicobacter pylori status. JRheumatol 2002; 29: 1965-1974(ランダム)

4) Etminan M, Lévesque L, Fitzgerald JM, et al. Risk of upper gastrointestinal bisphosphonates and nonsteroidal anti-inflammatory drugs: a case-control study. Aliment Pharamacol Ther 2009; 29: 1188-1192(コホート)

5) Miyake K, Kusunoki M, Shinji Y, et al. Bisphosphonate increases risk of gastroduodenal ulcer in rheuma-toid arthritis patients on long-term nonsteroidal anti-inflammatory drug therapy. J Gastroenterol 2009; 44:113-120(コホート)

6) Sartori S, Trevisani L, Nielsen I, et al. Randomized trial of omeprazole or ranitidine versus placebo in theprevention of chemotherapy-induced gastroduodenal injury. J Clin Oncol 2000; 18: 463-467(ランダム)

7) Dall M, de Muckadell OBS, Lassen AT, et al. There is an association between selective serotonin reuptakeinhibitor use and uncomplicated peptic ulcers: a population-based case-control study. Aliment Pharama-col Ther 2010; 32: 1383-1391(ケースコントロール)

8) Itatsu T, Nagahara A, Hojo M, et al. Use of selective serotonin reuptake inhibitors and upper gastrointesti-nal disease. Intern Med 2011; 50: 713-737(ケースコントロール)

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解説

1983 年に掲載されたMesserら 1)のメタアナリシスでは,無作為割付 71 試験(糖質ステロイド治療群 3,135 例,対照群 2,976 例)の解析を行い,潰瘍を有していたのは糖質ステロイド治療例 3,064 例中 55 例(1.8%)に対し,対照群 2,897 例中 23 例(0.8%)であったと報告した(RR 2.3,95%CI 1.4〜3.7,p<0.001).糖質ステロイドは消化性潰瘍と消化管出血のリスクを増加させると結論づけた.しかし Connら 2)は 1985 年,このメタアナリシスについて,複数の欠陥(非盲検試験,非コントロール試験,無作為割付を維持されていない試験が含まれている,検討すべき件数の不足,リスク比の計算,最大規模の二重盲検試験を明確な理由なく除外)があることを指摘し,除外すべき試験を排除して再検討したところ有意差がなかったと報告した.さらに Connら 3)は 1994 年に新たなメタアナリシスで 93 の無作為割付二重盲検試験の解析

を行い,消化性潰瘍の発症はプラセボ群 3,267 例中 9例(0.3%)と糖質ステロイド群 3,335 例中13 例(0.4%)であった(オッズ比 1.2,95%CI 0.8〜2.1,p>0.25)ことから,消化性潰瘍は糖質ステロイドのまれな合併症で,糖質ステロイド治療が適応の場合には禁忌と考えるべきではないと結論づけた.これらのメタアナリシスから,のちに報告された Connらの結果を採用した.Piperら 4)のケースコントロールスタディでは,経口糖質ステロイド服用例の消化性潰瘍発生

の RRは 2.0(95%CI 1.3〜3.0)であったが,実はそのリスクはNSAIDsを併用している症例でのみ増加しており,糖質ステロイド使用に関連した RRは 4.4(CI 2.0〜9.7)であった.NSAIDs非併用例の RRは 1.1(CI 0.5〜2.1)で,糖質ステロイドではなくあくまでNSAIDsが潰瘍発生に関連していたことが示されている.

文献

1) Messer J, Reitman D, Sacks HS, et al. Association of adrenocorticosteroid therapy and peptic ulcer disease.N Engl J Med 1983; 309: 21-24(メタ)

Clinical Question 4-33

糖質ステロイド投与は,消化性潰瘍発生(再発)のリスクファクターか?

4.薬物性潰瘍 ― ❺その他の薬物

CQ 4-33 糖質ステロイド投与は,消化性潰瘍発生(再発)のリスクファクターか?

ステートメント

● 糖質ステロイドは,消化性潰瘍発生のリスクファクターとはならない.

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⑤その他の薬物

2) Conn HO, Poynard T. Adrenocorticosteroid administration and peptic ulcer: a critical analysis. J ChronicDis 1985; 38: 457-468(メタ)

3) Conn HO, Poynard T. Corticosteroids and peptic ulcer: meta-analysis of adverse events during steroidtherapy. J Intern Med 1994; 236: 619-632(メタ)

4) Piper JM, Ray WA, Daugherty JR, et al. Corticosteroid use and peptic ulcer disease: role of nonsteroidalanti-inflammatory drugs. Ann Intern Med 1991; 114: 735-740(ケースコントロール)

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5.非 H. pylori ・非 NSAIDs 潰瘍

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解説

消化性潰瘍の二大要因は H. pylori 感染とNSAIDsあるいはアスピリンの服用と考えられている.その他の要因として Crohn病,Zollinger-Ellison症候群,感染[non-H. pylori Helicobacter

species(NHPH),サイトメガロウイルス,ヘルペスウイルス]がある.近年,これらの要因以外の潰瘍は特発性潰瘍と定義されている.特発性潰瘍は 1990 年代に北米からいくつかの報告 1)

があり,アジアでの頻度は 1990 年代に低率であったが,2000 年代に入り,その頻度は約 10〜40%と増加傾向にある.高齢,重篤な全身合併症(門脈圧亢進症を伴う肝硬変),心理的なストレスが特発性潰瘍の潜在的な原因と考えられている.特発性潰瘍の頻度に関する主な文献報告を表1にまとめた.1990 年代のアジアにおける特発性潰瘍の頻度は欧米より低いことが報告されている.日本で

は 1%(5/389)3),香港では 4%(40/954)7),欧米では 20〜40%と報告されている.日本のNishikawaらの報告 3)では胃潰瘍 246 例中,H. pylori 陰性は 12 例(4.9%),このうちNSAIDs

陰性潰瘍は 4例であり,胃潰瘍全体のうち特発性潰瘍の占める頻度は 1.6%であった.また,十二指腸潰瘍 152 例中,H. pylori 陰性は 2例(1.3%),このうちNSAIDs陰性潰瘍は 1例であったため,十二指腸潰瘍全体のうち特発性潰瘍の占める頻度は 0.7%であった.このように日本での特発性潰瘍は低頻度であり,特発性胃潰瘍と特発性十二指腸潰瘍との間には明らかな差は認めなかった.その他,木平らの報告 2)では特発性潰瘍の頻度は胃潰瘍全体 729 症例中 6例と報告され,その頻度は 0.8%であった.香港のHungら 12)は特発性出血性潰瘍の頻度は 4.2%(1997〜1998 年)から 18.8%(2000 年)と近年増加し,特発性潰瘍の 12 ヵ月累積再発率は 13.4%であり,除菌治療を受けた潰瘍の 2.5%より高いことが報告されている.また,香港のWongら 16)

は特発性出血性潰瘍の 7年間累積出血再発率は 42.3%であり,H. pylori 潰瘍の 11.2%より高いことが報告されている.検索期間外文献であるが,Kannoら( J Gastroenterol Hepatol 2014 a)[検索期間外文献])の多施設共同前向き研究(2012〜2013 年)では,特発性胃潰瘍の頻度は 12.2%(33/271),特発性十二指腸潰瘍 11.1%(10/90),特発性潰瘍 12.0%(46/382)であると報告し,日本においても特発性潰瘍の頻度が近年増加傾向にあることが指摘されている.なお,H. pylori

Clinical Question 5-1

非 H. pylori・非 NSAIDs 潰瘍の頻度は?

5.非 H. pylori・非 NSAIDs 潰瘍

CQ 5-1 非 H. pylori・非 NSAIDs 潰瘍の頻度は?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● 日本における非 H. pylori・非 NSAIDs 潰瘍の頻度は胃潰瘍全体の約 1〜5%,十二指腸潰瘍全体の 2%以下である. なし C

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を代表とする Helicobacter 属は現在 30 菌種以上あり,H. pylori 以外はすべて non-H. pylori Heli-

cobacter species(NHPH)と呼称されている.NHPHは人獣共通感染症であり胃に主に存在するgastric Helicobacter spp.と主に腸と肝臓に生息する enterohepatic Helicobacter spp.(EHS)に大別される.動物の胃に感染するNHPHがときにヒトの胃にも感染し,病原性を有することが知られている.

文献

1) Ciociola AA, McSorley DJ, Turner K, et al. Helicobacter pylori infection rates in duodenal ulcer patients inthe United States may be lower than previously estimated. Am J Gastroenterol 1999; 94: 1834-1840(横断)

2) 木平 健,佐藤貴一,菅野健太郎.H. pylori 陰性潰瘍と H. pylori 陽性潰瘍の病態と治療をめぐって―非 H.pylori・非NSAIDs潰瘍の存在について.消化器研究の新たな進歩 1999: 4: 21-25(横断)

3) Nishikawa K, Sugiyama T, Kato M, et al. Non-Helicobacter pylori and non-NSAID peptic ulcer disease inthe Japanese population. Eur J Gastroenterol Hepatol 2000; 12: 635-640(コホート)

4) Sugiyama T, Nishikawa K, Komatsu Y, et al. Attributable risk of H. pylori in peptic ulcer disease: doesdeclining prevalence of infection in general population explain increasing frequency of non-H. pyloriulcers? Dig Dis Sci 2001; 46: 307-310(横断)

5) Kamada T, Haruma K, Kusunoki H, et al. Significance of an exaggerated meal-stimulated gastrin responsein pathogenesis of Helicobacter pylori-negative duodenal ulcer. Dig Dis Sci 2003; 48: 644-651(横断)

6) Ootani H, Iwakiri R, Shimoda R, et al. Role of Helicobacter pylori infection and nonsteroidal anti-inflamma-tory drug use in bleeding peptic ulcers in Japan. J Gastroenterol 2006; 41: 41-46(コホート)

7) Xia HH, Phung N, Kalantar JS, et al. Demographic and endoscopic characteristics of patients with Heli-cobacter pylori positive and negative peptic ulcer disease. Med J Aust 2000; 173: 515-519(コホート)

8) Chan HL, Wu JC, Chan FK, et al. Is non-Helicobacter pylori, non-NSAID peptic ulcer a common cause ofupper GI bleeding? a prospective study of 977 patients. Gastrointest Endosc 2001; 53: 438-442(コホート)

9) Xia HH, Wong BC, Wong KW, et al. Clinical and endoscopic characteristics of non-Helicobacter pylori, non-NSAID duodenal ulcers: a long-term prospective study. Aliment Pharmacol Ther 2001; 15: 1875-1882(コホート)

表1 特発性潰瘍の頻度に関する主な文献報告文献 著者 報告年 国 特発性胃潰瘍 特発性十二指腸潰瘍 特発性潰瘍2 木平ら 1999 日本 6/729(0.8%)    3 Nishikawa K, et al 2000 日本 4/246(1.6%) 2/152(0.7%)  4 Sugiyama T, et al 2001 日本 4/96(4.2%) 2/102(1.9%)  5 Kamada T, et al 2003 日本   6/464(1.3%)  6 Ootani H, et al 2006 日本     2/116(1.7%)7 Xia HH, et al 2000 香港 14/36(38.9%) 4/15(26.7%)  8 Chan HL, et al 2001 香港     40/977(4.1%)9 Xia HH, et al 2001 香港   104/1153(17%)  10 Arroyo MT, et al 2004 スペイン 8/193(4.1%) 8/472(1.7%)  11 Yakoob J, et al 2005 パキスタン   62/217(29%)  12 Hung LC, et al 2005 香港     120/638(18.8%)13 Goenka MK, et al 2011 インド 36/74(45.9%) 16/54(29.6%)  14 Musumba C, et al 2012 英国 33/204(16.1%) 24/137(17.5%)  15 Wong GL, et al 2012 香港     663/4827(13.8%)a Kanno T, et al 2014 日本 33/271(12.2%) 10/90(11.1%) 46/382(12.0%)

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5.非 H. pylori・非 NSAIDs 潰瘍

10) Arroyo MT, Forne M, de Argila CM, et al. The prevalence of peptic ulcer not related to Helicobacter pylorior non-steroidal anti-inflammatory drug use is negligible in southern Europe. Helicobacter 2004; 9: 249-254

(コホート)11) Yakoob J, Jafri W, Jafri N, et al. Prevalence of non-Helicobacter pylori duodenal ulcer in Karachi, Pakistan.

World J Gastroenterol 2005; 11: 3562-3565(横断)12) Hung LC, Ching JY, Sung JJ, et al. Long-term outcome of Helicobacter pylori-negative idiopathic bleeding

ulcers: a prospective cohort study. Gastroenterology 2005; 128: 1845-1850(コホート)13) Goenka MK, Majumder S, Sethy PK, et al. Helicobacter pylori negative, non-steroidal anti-inflammatory

drug-negative peptic ulcers in India. Indian J Gastroenterol 2011; 30: 33-37(コホート)14) Musumba C, Jorgensen A, Sutton L, et al. The relative contribution of NSAIDs and Helicobacter pylori to the

aetiology of endoscopically-diagnosed peptic ulcer disease: observations from a tertiary referral hospital inthe UK between 2005 and 2010. Aliment Pharmacol Ther 2012; 36: 48-56(横断)

15) Wong GL, Au KW, Lo AO, et al. Gastroprotective therapy does not improve outcomes of patients withHelicobacter pylori-negative idiopathic bleeding ulcers. Clin Gastroenterol Hepatol 2012; 10: 1124-1129(コホート)

16) Wong GL, Wong VW, Chan Y, et al. High incidence of mortality and recurrent bleeding in patients withHelicobacter pylori-negative idiopathic bleeding ulcers. Gastroenterology 2009; 37: 525-531(コホート)

【検索期間外文献】a) Kanno T, Iijima K, Abe Y, et al. A multicenter prospective study on the prevalence of Helicobacter pylori-

negative and NSAIDs-negative idiopathic peptic ulcers in Japan. J Gastroenterol Hepatol 2014 Dec 23. doi:10.1111/jgh.12876. [Epub ahead of print](コホート)

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解説

消化性潰瘍の二大要因は H. pylori 感染とNSAIDsあるいはアスピリンの服用と考えられている.その他の要因として Crohn病,Zollinger-Ellison症候群,感染[non-H. pylori Helicobacter

species(NHPH),サイトメガロウイルス,ヘルペスウイルス]がある.近年,これらの要因以外の潰瘍は特発性潰瘍と定義されている.高齢,重篤な全身合併症(門脈圧亢進症を伴う肝硬変),心理的なストレスが特発性潰瘍の潜在的な原因と考えられている.高齢者では胃粘膜内プロスタグランジンが低値であるため,胃粘膜防御機能が弱いことによる 1〜3).その病態はこれまでに酸分泌亢進(特に,ペンタガストリン刺激後の最高酸分泌量亢進),高ガストリン血症,胃排泄亢進などが関与しており 4, 5),その他,遺伝的素因,喫煙,粘膜防御機構の脆弱などが指摘されている 4).なお,H. pylori を代表とする Helicobacter 属は現在 30 菌種以上あり,H. pylori 以外はすべて non-H. pylori Helicobacter species(NHPH)と呼称されている.NHPHは人獣共通感染症であり胃に主に存在する gastric Helicobacter spp.と主に腸と肝臓に生息する enterohepatic

Helicobacter spp.(EHS)に大別される.動物の胃に感染するNHPHがときにヒトの胃にも感染し,病原性を有することが知られている.

文献

1) Chan HL, Wu JC, Chan FK, et al. Is non-Helicobacter pylori, non-NSAID peptic ulcer a common cause ofupper GI bleeding? a prospective study of 977 patients. Gastrointest Endosc 2001; 53: 438-442(コホート)

2) ChowDK, Sung JJ. Non-NSAIDnon-H. pyloriulcer disease. Best Pract Res ClinGastroenterol 2009; 23: 3-9(横断)3) Ootani H, Iwakiri R, Shimoda R, et al. Role of Helicobacter pylori infection and nonsteroidal anti-inflamma-

tory drug use in bleeding peptic ulcers in Japan. J Gastroenterol 2006; 41: 41-46(コホート)4) Quan C, Talley NJ. Management of peptic ulcer disease not related to Helicobacter pylori or NSAIDs. Am J

Gastroenterol 2002; 97: 2950-2961(横断)5) Freston JW. Helicobacter pylori-negative peptic ulcers: frequency and implications for management. J Gas-

troenterol 2000; 35 (Suppl 12); 29-32(横断)

Clinical Question 5-2

非 H. pylori・非 NSAIDs 潰瘍の原因や病態は?

5.非 H. pylori・非 NSAIDs 潰瘍

CQ 5-2 非 H. pylori・非 NSAIDs 潰瘍の原因や病態は?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● 非 H. pylori・非 NSAIDs 潰瘍の原因は Crohn 病,Zollinger-Elli-son 症 候 群 ,感 染[ non-H. pylori Helicobacter species

(NHPH),サイトメガロウイルス,ヘルペスウイルス],その他,高齢,重篤な全身合併症(門脈圧亢進症を伴う肝硬変),心理的なストレスであり,その病態は酸分泌亢進,高ガストリン血症,胃排泄亢進である.

なし C

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解説

消化性潰瘍の二大要因は H. pylori 感染とNSAIDsあるいはアスピリンの服用と考えられている.その他の要因として Crohn病,Zollinger-Ellison症候群,感染[non-H. pylori Helicobacter

species(NHPH),サイトメガロウイルス,ヘルペスウイルス]がある.近年,これらの要因以外の潰瘍は特発性潰瘍と定義されている.今回,特発性潰瘍に対する治療に関する原著論文は検索ヒットしなかった.特発性潰瘍の頻度は低いため,治療に関するエビデンスの高い RCTは現在までに行われていない.特発性潰瘍の病態は酸分泌亢進や高ガストリン血症などが関与していることから,PPIが治療の第一選択として提案される 1).Hungらは特発性潰瘍の 12 ヵ月累積再発率は 13.4%であり,除菌治療を受けた潰瘍の 2.5%より高いことが報告されている 2).また,香港のWongら 3)は特発性出血性潰瘍の 7年間累積出血再発率は 42.3%であり,H. pylori

潰瘍の 11.2%より高いことが報告されている.さらに,特発性潰瘍は H. pylori 陽性潰瘍と比較し再出血のリスクが高く,高齢者に多く死亡率も高いため,酸分泌抑制薬によるマネジメントと予防が必要であると報告されている 4).防御因子増強薬は特発性出血性潰瘍の転帰を改善しなかったことが報告されている 5).今後は特発性潰瘍に対する PPIなどの治療効果を検証するための比較試験が望まれる.

文献

1) Freston JW. Review article: role of proton pump inhibitors in non-H. pylori-related ulcers. Aliment Phar-macol Ther 2001; 15 (Suppl 2): 2-5(横断)

2) Hung LC, Ching JY, Sung JJ, et al. Long-term outcome of Helicobacter pylori-negative idiopathic bleedingulcers: a prospective cohort study. Gastroenterology 2005; 128: 1845-1850(コホート)

3) Chow DK, Sung JJ. Non-NSAID non-H. pylori ulcer disease. Best Pract Res Clin Gastroenterol 2009; 23: 3-9(横断)

4) Wong GL, Wong VW, Chan Y, et al. High incidence of mortality and recurrent bleeding in patients withHelicobacter pylori-negative idiopathic bleeding ulcers. Gastroenterology 2009; 37: 525-531(コホート)

5) Wong GL, Au KW, Lo AO, et al. Gastroprotective therapy does not improve outcomes of patients withHelicobacter pylori-negative idiopathic bleeding ulcers. Clin Gastroenterol Hepatol 2012; 10: 1124-1129(コホート)

Clinical Question 5-3

非 H. pylori・非 NSAIDs 潰瘍の治療はどのように行うべきか?

5.非 H. pylori・非 NSAIDs 潰瘍

CQ 5-3 非 H. pylori・非 NSAIDs 潰瘍の治療はどのように行うべきか?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● 非 H. pylori・非 NSAIDs 潰瘍の治療は PPI を選択するように提案する.

2(100%) C

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6.外科的治療

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解説

ランダム化比較試験は古いもの 1件のみで 1),それ以外はケースシリーズ,もしくは手術に移行した症例の検討からであるが,手術移行に相関した因子は,①血行動態が安定しない,②発症後経過時間(6時間または 12 時間または 24 時間以上),③腹膜炎が上腹部に限局しない,④腹水が多量である,⑤経時的 CTで腹腔内ガスや腹水の増量を認める,⑥重篤な併存疾患がある,⑦70 歳以上の高齢者である,⑧胃内容物が大量である,⑨腹部筋性防御が 24 時間以内に軽快しない,のいずれかが満たされたときであった.エビデンスレベルが低く,表現も相対的であるため,この適応に基づき保存的治療を選択した場合には経時的に CTを撮影する必要がある 2〜10).また,十二指腸潰瘍穿孔の手術適応決定にガストログラフィン造影を加え,2 cm以上流出の

場合には手術とする基準を設けたところ,手術適応の不必要な拡大を防止できたという日本からの報告があったが,28 例と症例数が少ないため,ステートメントには入れなかった.

近年,H2RA,PPI,さらには除菌療法の登場により,消化性潰瘍に対する手術は激減した.しかし,消化性潰瘍穿孔の発生は決して減少してはいない.以前は消化性潰瘍に対する治療法として,かなりの確率で手術が選択されたが,昨今,できるだけ保存的治療を行う風潮があり,成功をおさめている.保存的治療を推進するあまり,手術の時期を逸し失う症例がないことが肝要である.胃,十二指腸いずれの潰瘍穿孔であっても,高齢で全身状態が悪い場合に,より早く手術に

移行する必要性がある.また,保存的治療を選択した場合には経時的観察が必要であり,改善が認められなければ,手術に移行する.

Clinical Question 6-1

消化性潰瘍穿孔の手術適応は?

6.外科的治療 ― ❶手術適応

CQ 6-1 消化性潰瘍穿孔の手術適応は?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● 消化性潰瘍穿孔に対しては,発生後時間経過が長いとき,腹膜炎が上腹部に限局しないとき,腹水が多量であるとき,胃内容物が大量にあるときは,早期の手術を推奨する.

1(100%) B

● 消化性潰瘍穿孔に対しては,年齢 70 歳以上であるとき,重篤な併存疾患があるとき,血行動態が安定しないときは,早期の手術を推奨する.

1(100%) C

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①手術適応

文献

1) Crofts TJ, Park KG, Steele RJ, et al. A randomized trial of nonoperative treatment for perforated pepticulcer. N Engl J Med 1989; 320: 970-973(ランダム)

2) Kujath P, Schwandner O, Bruch HP. Morbidity and mortality of perforated peptic gastroduodenal ulcerfollowing emergency surgery. Langenbecks Arch Surg 2002; 387: 298-302(ケースシリーズ)

3) Testini M, Portincasa P, Piccinni G, et al. Significant factors associated with fatal outcome in emergencyopen surgery for perforated peptic ulcer. World J Gastroenterol 2003; 9: 2338-2340(ケースシリーズ)

4) 井上 暁,梅北信孝,宮本幸雄,ほか.胃,十二指腸潰瘍穿孔に対する保存的治療法の適応について.日本臨床外科学会雑誌 2003; 64: 2665-2670(ケースシリーズ)

5) 津村裕昭.穿孔性十二指腸潰瘍の治療法別成績.日本腹部救急医学会雑誌2003; 23: 575-580(ケースシリーズ)

6) 轟木秀一,宮下 薫,藍澤喜久雄,ほか.胃・十二指腸潰瘍穿孔に対する保存的治療.日本外科系連合学会誌 2004; 29: 18-24(ケースシリーズ)

7) 安藤正幸,青柳治彦,本山一夫,ほか.上部消化管潰瘍に対する治療―保存的治療とその限界.埼玉県医学会雑誌 2005; 40: 165-168(ケースシリーズ)

8) 永野元章,島山俊夫,高橋伸育,ほか.十二指腸潰瘍穿孔に対する保存的治療法の適応基準と有用性.日本消化器外科学会雑誌 2006; 39: 643-648(ケースシリーズ)

9) 岩崎晃太,福島亮治,稲葉 毅,ほか.胃・十二指腸潰瘍穿孔に対する治療法の選択―十二指腸潰瘍穿孔に対する保存的治療の検討.日本腹部救急医学会雑誌 2006; 26: 841-844(ケースシリーズ)

10) 岡村行泰,原田明生,猪川祥邦,ほか.上部消化管潰瘍穿孔の手術適応判断における CTの有用性について.日本消化器外科学会雑誌 2007; 40: 529-535(ケースシリーズ)

消化性潰瘍診療ガイドライン2015(改訂第2版),南江堂,2015

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解説

1)内視鏡的止血術消化性潰瘍出血に対する内視鏡的止血術は今日では当然のごとく施行されているが,海外か

らの報告において,内視鏡的治療の試みは手術移行時のリスク,再手術率,死亡率をむしろ上昇させるという報告があった 1).この報告は手術に移行した患者のみを比較したもので,内視鏡的治療にて手術を回避できた効果はいっさい無視した結果である.したがって,消化性潰瘍出血に対する内視鏡的治療が否定されるわけではない.しかし,手術に移行すべき症例は迅速に手術に移行すべきであるという警鐘となりうる.

2)高齢者の消化性潰瘍出血に対する手術適応全身状態が悪化しやすい高齢者に対しては,より迅速に手術移行を決定する.報告されてい

た内容は,高度の貧血を伴う場合,または,2回の出血性ショックを呈したら,または,輸血量が少ないうちに手術に移行すべき,とあった.実際問題としては,ショック状態で内視鏡,手術を施行することは困難であるから,ショックを呈した場合には,いったんショックを離脱させ,内視鏡を行い,出血部位を確認し,上記の手術適応に従うべきである.高齢者を定義する年齢,少ない輸血量の定義は文献により異なったため,ステートメントには具体的な数値は記載しなかった 2〜9).

3)一般的消化性潰瘍出血に対する手術適応高齢者でない場合にも,内視鏡的止血術が 2回で成功しないとき,または内視鏡的止血術が

容易に成功しないときには手術に移行する.

4)interventional radiology(IVR)の有用性IVRは手術移行症例減少に有用であると報告されているが,意外と報告が少なかった 10).実

際の臨床の現場においては内視鏡的止血術が成功しない場合,または,内視鏡的止血術後に再

Clinical Question 6-2

消化性潰瘍出血の手術適応は?

6.外科的治療 ― ❶手術適応

CQ 6-2 消化性潰瘍出血の手術適応は?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● 内視鏡的止血術が容易に成功しないときには手術に移行することを推奨する.高齢者ではより迅速に手術に移行することを推奨する.

1(80%) B

消化性潰瘍診療ガイドライン2015(改訂第2版),南江堂,2015

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①手術適応

出血する場合には試みられている.ただし,IVRは施行できる施設が限られており,多くの施設で可能であるわけではない.

文献

1) Olejnik J, Labas P, Zahradnik V. Possible risks in combining endoscopic and surgical therapy of bleedingpeptic ulcers. Hepatogastroenterology 2003; 50: 1169-1172(横断)

2) Morris DL, Hawker PC, Brearley S, et al. Optimal timing of operation for bleeding peptic ulcer: prospec-tive randomized trial. Br Med J (Clin Res Ed) 1984; 288: 1277-1280(ランダム)

3) 吉野肇一,熊井浩一郎,窪地 淳.出血性潰瘍の手術適応と術式の選択.消化器外科 1985; 8: 325-329(ケースシリーズ)

4) Greiser WB, Bruner BW, Shamoun JM, et al. Factors affecting mortality in patients operated upon for com-plications of peptic ulcer disease. Am Surg 1989; 55: 7-11(ケースシリーズ)

5) 秋庭宏紀,増田勝紀,大政良二.消化性潰瘍からの出血出血性消化性潰瘍に対する内視鏡的止血法の適応と限界―手術移行へのタイミング.消化器内視鏡 1991; 3: 1185-1191(ケースシリーズ)

6) 石川正志,菊辻 徹,宮内隆行.出血性消化性潰瘍に対する内視鏡的止血法―その限界と手術適応について.日本臨床外科医学会雑誌 1991; 52: 2816-2820(ケースシリーズ)

7) Zed PJ, Loewen PS, Slavik RS, et al. Meta-analysis of proton pump inhibitors in treatment of bleeding pep-tic ulcers. Ann Pharmacother 2001; 35: 1528-1534(メタ)

8) 轟木秀一,伊藤重彦.救急止血の最前線―胃十二指腸潰瘍出血に対する止血術―手術移行例を中心に.消化器内視鏡 2005; 17: 1977-1980(ケースシリーズ)

9) Ralph-Edwards A, Himal HS. Bleeding gastric and duodenal ulcers: endoscopic therapy versus surgery.Can J Surg 1992; 35: 177-181(ケースシリーズ)

10) Ripoll C, Banares R, Beceiro I, et al. Comparison of transcatheter arterial embolization and surgery fortreatment of bleeding peptic ulcer after endoscopic treatment failure. J Vasc Interv Radiol 2004; 15: 447-450(ケースシリーズ)

消化性潰瘍診療ガイドライン2015(改訂第2版),南江堂,2015

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解説

消化性潰瘍穿孔に対する術式は歴史的には,広汎胃切除術が長期にわたり標準術式として採用されていたが,H2RA,PPI,除菌治療法の出現とあいまって,大規模 RCTが行われないままに,腹腔洗浄ドレナージ+穿孔部単純閉鎖(+大網被覆)が通常行われる術式と変化した(図1)1).その変化を科学的に証明する文献がないのが残念であるが,海外からは腹腔洗浄ドレナージ+穿

Clinical Question 6-3

消化性潰瘍穿孔に対する最適な手術術式は?

6.外科的治療 ― ❷手術術式

CQ 6-3 消化性潰瘍穿孔に対する最適な手術術式は?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● 胃・十二指腸潰瘍穿孔に対し推奨される術式は腹腔洗浄ドレナージ+穿孔部閉鎖+大網被覆を推奨する.

1(100%) A

図 1 穿孔部閉鎖大網被覆術

十二指腸

大網

消化性潰瘍診療ガイドライン2015(改訂第2版),南江堂,2015

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— 171 —

②手術術式

孔部単純閉鎖術が推奨される術式であることが報告されている.ここ数年の腹腔鏡下手術の普及に伴い,開腹術と腹腔鏡下手術とを比較した試験が多くなさ

れている.結果は同等というものもあるが,腹腔鏡が術後の鎮痛薬使用,創部感染の減少で勝っているが,手術時間は長かった,とメタアナリシスで報告されている.いずれの試験も登録は全身状態のよい患者に限っている.腹腔鏡下手術の開腹術に比したメリットは生命にかかわることは少なく,緊急手術の場において腹腔鏡手術が行える設備や技術も施設間に差があることから,腹腔鏡下手術は今回は推奨とはしなかった 2〜20).

ケースシリーズでの報告ではあるが,腹腔鏡下手術の場合,より簡便な操作が望まれるため,単純閉鎖はせずに大網被覆のみで同じ結果であった,という報告がある 21).また,十二指腸潰瘍の穿孔であると確認されたら,腹腔鏡下腹腔洗浄ドレナージのみで穿孔部には何も操作を施さなくても,13 例中 11 例で自然被覆が認められたという報告もある 22).

インドからの非ランダム試験の報告であるが,十二指腸潰瘍穿孔患者に対して,開腹洗浄,大網被覆を施行したのち,ドレーンをモリソンとダグラスに挿入する群とドレーンを挿入しない群とでは術後感染に差がなく,ドレーン群でイレウスの増加があった,と報告されている.参考としてここに記載した 23).

文献

1) 国崎主税,小林俊介,城戸泰洋.十二指腸潰瘍穿孔例に対する大網被覆を加えた単純縫合閉鎖術の有用性.日本腹部救急医学会雑誌 1996; 16: 331-336(ケースシリーズ)

2) 福田直人,宮島伸宜,加納宣康.穿孔性十二指腸潰瘍に対する腹腔鏡下大網被覆術―開腹術との比較検討日本臨床外科学会雑誌 1996; 57: 798-803(ケースシリーズ)

3) 伊藤重彦,岡田代吉,田川 努.十二指腸潰瘍穿孔に対する腹腔鏡下穿孔部単純閉鎖術―小切開(5cm)開腹単純閉鎖術との比較.日本腹部救急医学会雑誌 1996; 16: 1099-1104(ケースシリーズ)

4) Druart ML, Van Hee R, Etienne J, et al. Laparoscopic repair of perforated duodenal ulcer: a prospectivemulticenter clinical trial. Surg Endosc 1997; 11: 1017-1020(ケースシリーズ)

5) 北川雄一,山口晃弘,磯谷正敏.十二指腸潰瘍穿孔に対する endo staplerを用いた腹腔鏡下大網被覆術―他の手術術式との比較を含めて.日本腹部救急医学会雑誌 1997; 17: 815-820(ケースシリーズ)

6) 長島 敦,吉井 宏,北野光秀,ほか.穿孔性十二指腸潰瘍に対する腹腔鏡下穿孔部閉鎖術の有用性に関する検討.日本消化器外科学会雑誌 2000; 33: 1875-1879(ケースシリーズ)

7) 北野光秀.内視鏡外科 UPDATE―十二指腸潰瘍穿孔の標準術式としての腹腔鏡下手術.医学のあゆみ2001;197: 383-386(ケースシリーズ)

8) 土田明彦,小木曽 実,深澤雄一,ほか.胃・十二指腸潰瘍穿孔の治療法の検討.東京医科大学雑誌2001;59: 68-72(ケースシリーズ)

9) 天池 寿,玉井秀政,島田順一,ほか.十二指腸潰瘍穿孔に対する外科的治療法の検討―大網被覆術の有用性と問題点について.京都府立与謝の海病院誌 2002; 2: 9-14(ケースシリーズ)

10) 岡崎 誠,梅本健司,多根井智紀,ほか.十二指腸潰瘍穿孔に対する小切開法による手術法の検討.手術2004; 58: 1915-1918(ケースシリーズ)

11) Siu WT, Chau CH, Law BK, et al. Routine use of laparoscopic repair for perforated peptic ulcer. Br J Surg2004; 91: 481-484(ケースシリーズ)

12) Rodríguez-Sanjuán JC, Fernández-Santiago R, García RA, et al. Perforated peptic ulcer treated by simpleclosure and Helicobacter pylori eradication. World J Surg 2005; 29: 849-852(ケースシリーズ)

13) Sanabria AE, Morales CH, Villegas MI. Laparoscopic repair for perforated peptic ulcer disease. CochraneDatabase Syst Rev 2005; CD004778(メタ)

14) Lau WY, Leung KL, Kwong KH, et al. A randomized study comparing laparoscopic versus open repair ofperforated peptic ulcer using suture or sutureless technique. Ann Surg 1996; 224: 131-138(ランダム)

15) Lunevicius R, Morkevicius M. Systematic review comparing laparoscopic and open repair for perforatedpeptic ulcer. Br J Surg 2005; 92: 1195-1207(メタ)

消化性潰瘍診療ガイドライン2015(改訂第2版),南江堂,2015

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6.外科的治療

16) Ishida H, Ishiguro T, Kumamoto K, et al. Minilaparotomy for perforated duodenal ulcer. Int Surg 2011; 96:194-200(ケースシリーズ)

17) Lau H. Laparoscopic repair of perforated peptic ulcer: a meta-analysis. Surg Endosc 2004; 18: 1013-1021(メタ)

18) Bertleff MJ, Halm JA, Bemelman WA, et al. Randomized clinical trial of laparoscopic versus open repair ofthe perforated peptic ulcer: the LAMA Trial. World J Surg 2009; 33: 1368-1373(ランダム)

19) Lo HC, Wu SC, Huang HC, et al. Laparoscopic simple closure alone is adequate for low risk patients withperforated peptic ulcer. World J Surg 2011; 35: 1873-1878(ケースシリーズ)

20) 木村雅美,長谷川 格,沖田憲司,ほか.手術手技の工夫―腹腔鏡下手術における腹腔内洗浄・ドレナージの工夫.消化器外科 2006; 29: 967-972(ケースシリーズ)

21) 福田直人,石山純司,春日井 尚,ほか.穿孔性十二指腸潰瘍に対する腹腔鏡下手術―単純閉鎖+大網被覆法と大網充填被覆法の比較.臨床外科 1997; 52: 383-386(ケースシリーズ)

22) 都津川敏範,三村卓司,宇田征史,ほか.手術手技―十二指腸潰瘍穿孔に対する穿孔部非接触・腹腔鏡下腹腔ドレナージ術.手術 2000; 54: 381-384(ケースシリーズ)

23) Pai D, Sharma A, Kanungo R, et al. Role of abdominal drains in perforated duodenal ulcer patients: aprospective controlled study. Aust N Z J Surg 1999; 69: 210-213(非ランダム)

消化性潰瘍診療ガイドライン2015(改訂第2版),南江堂,2015

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解説

胃切開+露出血管縫合止血+潰瘍縫縮術は有用な術式であるとケースシリーズより報告されている.比較対象は行っていない 1〜3).その他のエビデンスレベル V以上の文献はみつからなかった.海外からの報告において十二指腸潰瘍出血に対して広汎胃切除術は再発が少なく,推奨され

るという文献を見い出したが,1993 年の報告と古く,対照群の潰瘍縫縮+迷走神経切離術ではPPI治療,除菌は行っておらず,この結果を即,今日の推奨術式にあてはめるのは困難と思われる 4).しかし,胃切開+露出血管縫合止血+潰瘍縫縮術では容易に止血が得られず,潰瘍の状態からも広汎胃切除がより安全であると術者が判断すれば,今回のガイドラインの推奨はそれを妨げるものではない 5).今回の改訂ガイドラインにおける文献検索では,慢性出血性十二指腸潰瘍に対しては Dubois

手術が有用である,というケースシリーズを見い出した(図1)6).症例数は 28 例と多くはないが,困難な状況において,有用な術式と思われた.また,大量出血の十二指腸潰瘍出血患者では十二指腸前壁切開後にWinslow孔に手を入れて,胃・十二指腸動脈を圧迫すると出血部位同定困難な 14 例すべてにおいて一時的止血が得られ,出血部位が同定できた,という海外からの報告が見い出された.あまりに基本的な手術操作であるため,あえてステートメントにはしなかったが,参考にされたい 7).

文献

1) 矢野正雄,猪口正孝,白木康夫.出血性胃潰瘍第一選択手術術式の再考.日本外科系連合学会誌 1999; 24:222-225(ケースシリーズ)

Clinical Question 6-4

消化性潰瘍出血に対する最適な手術術式は?

6.外科的治療 ― ❷手術術式

CQ 6-4 消化性潰瘍出血に対する最適な手術術式は?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● 内視鏡的止血不能胃潰瘍に対しては胃切開+露出血管縫合止血+潰瘍縫縮術を推奨する.

1(100%) C

● 慢性出血性十二指腸潰瘍に対しては Dubois 手術を推奨する. 1(100%) C

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6.外科的治療

2) 岩代 望,川崎亮輔,齋藤克憲,ほか.出血性胃十二指腸潰瘍の外科治療―直視下縫合止血術.道南医学会誌 1998; 33: 242-244(ケースシリーズ)

3) 佐藤尚文,高井良樹,小林 功,ほか.出血性胃潰瘍に対する緊急止血手術―小切開開腹による直視下縫合止血術.北関東医学 1995; 45: 551-555(ケースシリーズ)

4) Millat B, Hay JM, Valleur P, et al. Emergency surgical treatment for bleeding duodenal ulcer: oversewingplus vagotomy versus gastric resection, a controlled randomized trial. French Associations for SurgicalResearch. World J Surg 1993; 17: 568-573; discussion: 574(ケースシリーズ)

5) Ripoll C, Banares R, Beceiro I, et al. Comparison of transcatheter arterial embolization and surgery fortreatment of bleeding peptic ulcer after endoscopic treatment failure. J Vasc Interv Radiol 2004; 15: 447-450(ケースシリーズ)

6) Guinier D, Destrumelle N, Denue PO, et al. Technique of antroduodenectomy without ulcer excision as asafe alternative treatment for bleeding chronic duodenal ulcers. World J Surg 2009; 33: 1010-1014(ケースシリーズ)

7) Bernardes A, Dionisio J, Diogo D, et al. A simple intra-operative maneuver to decrease a duodenal ulcerhemorrhage temporarily: description and anatomical bases. Surg Radiol Anat 2005; 27: 79-85(ケースシリーズ)

図 1 Dubois 手術a:十二指腸球部前壁のみ切除し,後壁の潰瘍はそのままとする.残胃は部分的に閉鎖し,B-Ⅰ吻合ができるように準

備をする.b:残胃後壁と潰瘍の前壁,右壁側とを縫合する.つまり,潰瘍底は吻合外となる.

(文献 6より改変)

残胃

膵臓

十二指腸

潰瘍

残胃

十二指腸

潰瘍

a b

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解説

ここで記載する消化性潰瘍による狭窄とは急性期の浮腫による狭窄ではなく,慢性に再燃を繰り返した潰瘍による瘢痕狭窄を意味する.十二指腸慢性潰瘍による狭窄に対し,超選択的迷走神経切離+胃・十二指腸側側吻合は有用

な術式であると海外より報告されているが 1),この報告は 1995 年の報告であり,除菌治療が行われる前の報告である.よって,現代への応用としては胃・十二指腸側側吻合術(図1)は狭窄に対し同様に推奨されるべきであるが,超選択的迷走神経切離術による潰瘍再発防止の必要性の有無は再考の余地がある 2).「消化性潰瘍診療ガイドライン」初版では胃・十二指腸側側吻合(Jaboulay法)を推奨術式としたが,国内からの症例数 7のケースシリーズの報告ではあるが,術後短期的には広汎胃切除のほうが摂食でき,胃・十二指腸側側吻合よりも勝っていた,という報告が見い出された 3).長期的な成績や臓器温存という側面からはどちらがよいか不明ではあるが,すぐに摂食できることも術式としては重要であるので,広汎胃切除もほぼ同等の推奨として加えた.

海外の 1施設からの報告であるが,十二指腸断端閉鎖が困難な症例には Findterer-Bancroft手術は安全で有用である,という報告があり,有用な情報なので,ステートメントに加えた 4).体部前庭部境界にて漿膜筋層切開をおき,前庭部の粘膜のみ切除し,粘膜断端と前庭部の漿膜筋層を縫合して閉鎖する方法である(図2).

Clinical Question 6-5

消化性潰瘍による狭窄に対する手術術式は?

6.外科的治療 ― ❷手術術式

CQ 6-5 消化性潰瘍による狭窄に対する手術術式は?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● 消化性潰瘍による狭窄に対し,胃・十二指腸側々吻合を推奨する. 1(100%) B

● 消化性潰瘍による狭窄に対し,広汎胃切除も場合により推奨する. 1(100%) C

● 十二指腸断端閉鎖が困難な症例には Findterer-Bancroft 手術を推奨する.

1(100%) C

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6.外科的治療

文献

1) Dittrich K, Blauensteiner W, Schrutka-Kolbl C, et al. Highly selective vagotomy plus Jaboulay: a possiblealternative in patients with benign stenosis secondary to duodenal ulceration. J Am Coll Surg 1995; 180:654-658(横断)

2) Lacitignola S, Minardi M, Palmieri R, et al. Laparoscopic subtotal gastric resection for chronic gastriculcers. JSLS 2006; 10: 37-38(ケースシリーズ)

3) 川崎篤史,大井田尚継,三松謙司,ほか.手術手技―十二指腸瘢痕狭窄に対する手術の留意点と対処法―Jaboulay法との比較から.手術 2008; 62: 67-71(ケースシリーズ)

4) Malheiros CA, Moreno CH, Rodrigues FC, et al. Finsterer-Bancroft operation: an option for the treatmentof difficult duodenal ulcers. Int Surg 1998; 83: 111-114(ケースシリーズ)

図 1 胃・十二指腸側々吻合術(Jaboulay 法)

潰瘍

切開

十二指腸

図 2 Findterer-Bancroft 手術胃体部前庭部境界に漿膜筋層切開をおき,前庭部の粘膜のみ切除する.粘膜断端と前庭部の漿膜筋層をそれぞれ縫合

切開する.

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— 177 —

解説

術後療法を検討した文献としては除菌に関するもののみで,PPIやH2RAを用いた術後療法に関する文献はみつからなかった.メタアナリシスを含む複数ある報告の結果は,ほぼ一致しており,胃を温存する術式では消化性潰瘍再発防止に除菌が推奨されている 1〜8).また,短期的にも RCTにて,十二指腸潰瘍穿孔に対する大網パッチ術後 8週における潰瘍の治癒率が除菌群で勝っている報告があり,術後早期の除菌が推奨されている 9).胃切除術後の除菌による効果は報告により不定であった.除菌後の酸分泌能の回復がどのよ

うに影響するか,除菌による残胃癌の発生予防効果などは今後の検討が必要である.

文献

1) Archimandritis A, Apostolopoulos P, Sougioultzis S, et al. The CLO test is unreliable in diagnosing H.pylori infection in post-surgical stomach; is there any role of H. pylori in peptic ulcer recurrence? Eur J Gas-troenterol Hepatol 2000; 12: 93-96(横断)

2) Kumar D, Sinha AN. Helicobacter pylori infection delays ulcer healing in patients operated on for perforat-ed duodenal ulcer. Indian J Gastroenterol 2002; 21: 19-22(ケースシリーズ)

3) 岩瀬和裕,檜垣 淳,尹 亨彦,ほか.臨床と研究―胃十二指腸潰瘍穿孔に対する腹腔鏡下大網充填術の遠隔成績.外科 2003; 65: 695-701(ケースシリーズ)

4) Huang WH, Wang HH, Wu WW, et al. Helicobacter pylori infection in patients with ulcer recurrence afterpartial gastrectomy. Hepatogastroenterology 2004; 51: 1551-1553(横断)

5) Rodríguez-Sanjuán JC, Fernández-Santiago R, García RA, et al. Perforated peptic ulcer treated by simpleclosure and Helicobacter pylori eradication. World J Surg 2005; 29: 849-852(ケースシリーズ)

6) Ng EK, Lam YH, Sung JJ, et al. Eradication of Helicobacter pylori prevents recurrence of ulcer after simpleclosure of duodenal ulcer perforation: randomized controlled trial. Ann Surg 2000; 231: 153-158(ランダム)

7) Kate V, Ananthakrishnan N, Badrinath S. Effect of Helicobacter pylori eradication on the ulcer recurrencerate after simple closure of perforated duodenal ulcer: retrospective and prospective randomized con-trolled studies. Br J Surg 2001; 88: 1054-1058(ランダム)

Clinical Question 6-6

消化性潰瘍の術後に除菌療法は必要か?

6.外科的治療 ― ❸術後維持療法

CQ 6-6 消化性潰瘍の術後に除菌療法は必要か?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● 消化性潰瘍に対する大網被覆または充塡術後は,H. pylori 陽性であれば除菌を行うことを推奨する.

1(100%) A

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6.外科的治療

8) Tomtitchong P, Siribumrungwong B, Vilaichone RK, et al. Systematic review and meta-analysis: Helicobac-ter pylori eradication therapy after simple closure of perforated duodenal ulcer. Helicobacter 2012; 17: 148-152(メタ)

9) El-Nakeeb A, Fikry A, Abd El-Hamed TM, et al. Effect of Helicobacter pylori eradication on ulcer recurrenceafter simple closure of perforated duodenal ulcer. Int J Surg 2009; 7: 126-129(ランダム)

消化性潰瘍診療ガイドライン2015(改訂第2版),南江堂,2015

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7.穿孔・狭窄に対する内科的(保存的)治療

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解説

消化性潰瘍による穿孔は程度の軽い限局性腹膜炎が内科的治療の適応となりうる.具体的な判断基準としては,24 時間以内の発症,空腹時の発症,重篤な合併症がなく全身状態が安定,腹膜刺激症状が上腹部に限局,腹水貯留が少量の場合などである.消化性潰瘍穿孔の内科的治療に対するステートメントは「消化性潰瘍診療ガイドライン」初版と不変である.内科的治療の適応については,Oidaら 1)が消化性潰瘍穿孔症例に保存的(内科的)治療を実施

した群と保存的治療に加えて経皮的ドレナージを実施した群とを比較した後ろ向き研究において,保存的治療の適応として①患者の全身状態が安定しており,重篤な合併症がない,②60 歳未満,③腹痛が上腹部に限局,④腹水貯留が少量,⑤発症から入院までの時間が 12 時間以内といった因子をあげている.日本で消化性潰瘍穿孔に対する治療法選択についての検討は多数実施されており 2〜7),その適

応基準については Oidaらの検討と同様である.しかし,後ろ向き研究が多く,エビデンスの質は高くない.保存的治療の適応基準を準拠した検討における保存的治療の完遂率は 83.4(76〜100)%と良好であった 2〜7).秋山ら 4)の検討では胃潰瘍に対する保存的治療は手術治療に比して合併症の発症率が高いという結果であった.この理由として,胃潰瘍穿孔は十二指腸潰瘍穿孔と比較して穿孔部が深い潰瘍底であることが多く,自然閉鎖が困難であることから,保存的治療の適応とはなりにくいとしている.保存的治療が適応となる年齢は 70 歳未満としている検討が多くみられた.「消化性潰瘍診療

ガイドライン」初版で採用した RCTの 1論文では,内科的治療は死亡率,合併症とも外科的治療が同等であったが,内科的治療を受けた 70 歳を超える患者 9例中 6例が外科的治療に移行したのに対し,70 歳以下の 31 例では外科的治療への移行が 5例と有意に少なかったとしている 8).

Clinical Question 7-1

穿孔に対する内科的治療の適応は?

7.穿孔・狭窄に対する内科的(保存的)治療 ― ❶穿孔

CQ 7-1 穿孔に対する内科的治療の適応は?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● 内科的治療の適応として程度の軽い限局性腹膜炎が提案される.具体的な判断基準としては,24 時間以内の発症,空腹時の発症,重篤な合併症がなく全身状態が安定,腹膜刺激症状が上腹部に限局,腹水貯留が少量の場合などである.

2(100%) D

● 70 歳を超える高齢者では外科手術が優先することを提案する. 2(100%) C

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①穿孔

高橋ら 6)は 70 歳未満の消化性潰瘍穿孔 29 例のうち 89.7%に保存的治療を行い,全例で完遂した.70 歳以上で保存的治療が不成功になる確率が高くなる理由は高齢になると併存疾患が増加するためである.こうした結果を踏まえて,70 歳以上の穿孔例は外科手術が提案される.

文献

1) Oida T, Kano H, Mimatsu K, et al. Percutaneous drainage in conservative therapy for perforated gastro-duodenal ulcers. Hepatogastroenterology 2012; 59: 168-170(ケースシリーズ)

2) 川口 直,桑原道郎,関岡明憲,ほか.当センターにおける上部消化管穿孔に対する治療の検討.日本赤十字社和歌山医療センター医学雑誌 2011; 29: 71-76(ケースシリーズ)

3) 大谷 聡,伊東藤男,押部郁朗,ほか.胃,十二指腸潰瘍穿孔に対する治療法の検討.福島医学雑誌 2009;59: 172-177(ケースシリーズ)

4) 秋山貴洋,松本 潤,高見 実,ほか.消化性潰瘍穿孔例における治療法の検討.多摩消化器シンポジウム誌 2010; 24: 44-48(ケースシリーズ)

5) 直井大志,佐野 渉,中田泰幸,ほか.上部消化管穿孔に対する保存的治療症例の検討.日本臨床外科学会雑誌 2009; 70: 667-672(ケースシリーズ)

6) 高橋雅哉,蜂須賀仁志,中本寿宏,ほか.70 歳未満の上部消化管穿孔症例に対する保存的治療の検討.臨床外科 2008; 63: 1259-1266(ケースシリーズ)

7) 伊藤重彦,木戸川秀生.胃・十二指腸潰瘍穿孔が疑われる場合の対応と治療―保存療法と腹腔鏡手術,どちらを選択するか?消化器内視鏡 2008; 20: 826-830(ケースシリーズ)

8) Crofts TJ, Park KG, Steele RJ, et al. A randomized trial of nonoperative treatment for perforated pepticulcer. N Engl J Med 1989; 320: 970-973(非ランダム)

消化性潰瘍診療ガイドライン2015(改訂第2版),南江堂,2015

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解説

消化性潰瘍穿孔に対する内科的治療は一般的に絶飲食,補液,経鼻胃管留置,抗菌薬およびH2RAまたは PPIの経静脈投与が行われる.消化性潰瘍穿孔に対して内科的治療を行った報告によると,その治療方法はほぼ同様である 1〜6).Bertleffらによるレビュー 7)では内科的治療の方法として経鼻胃管留置による胃内容の吸引,

抗菌薬の投与および補液のほかに H. pylori 除菌療法をあげている.また,Oidaら 8)の後ろ向き研究では内科的治療の方法として経鼻胃管留置と抗菌薬およびH2RAまたは PPIの経静脈投与を行った群と内科的治療に加えて経皮的ドレナージを実施した群とを比較した後ろ向き研究を行っており,経皮的ドレナージを実施した群は手術への移行率が有意に減少したとしている.大谷らの検討 3)では内科的治療の方法について上記のほかに硬膜外ドレナージ留置による除痛をあげている.高橋らの検討 5)でも十分な除痛の必要性を述べている.

一方,2010 年に米国内視鏡学会より発表されたガイドラインには,消化性潰瘍による穿孔時にクリップで穿孔部位を縫縮する治療は現在のところ推奨されないとしている 9).すなわち,医原性に生じた穿孔に対してクリップにより閉鎖が行われているが,消化性潰瘍による穿孔では組織のコンプライアンスが異なるためとしている.

文献

1) Croft TJ, Park KG, Steele RJ, et al. A randomized trial of nonoperative treatment for perforated pepticulcer. N Engl J Med 1989; 320: 970-973(非ランダム)

2) 川口 直,桑原道郎,関岡明憲,ほか.当センターにおける上部消化管穿孔に対する治療の検討.日本赤十字社和歌山医療センター医学雑誌 2011; 29: 71-76(ケースシリーズ)

3) 大谷 聡,伊東藤男,押部郁朗,ほか.胃,十二指腸潰瘍穿孔に対する治療法の検討.福島医学雑誌 2009;59: 172-177(ケースシリーズ)

4) 直井大志,佐野 渉,中田泰幸,ほか.上部消化管穿孔に対する保存的治療症例の検討.日本臨床外科学会雑誌 2009; 70: 667-672(ケースシリーズ)

Clinical Question 7-2

穿孔に対する内科的治療はどのように行うべきか?

7.穿孔・狭窄に対する内科的(保存的)治療 ― ❶穿孔

CQ 7-2 穿孔に対する内科的治療はどのように行うべきか?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● 絶飲食,補液,経鼻胃管留置,抗菌薬および H2RA または PPI の経静脈投与を行うことを提案する.

2(100%) D

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— 183 —

①穿孔

5) 高橋雅哉,蜂須賀仁志,中本寿宏,ほか.70 歳未満の上部消化管穿孔症例に対する保存的治療の検討.臨床外科 2008; 63: 1259-1266(ケースシリーズ)

6) 伊藤重彦,木戸川秀生.胃・十二指腸潰瘍穿孔が疑われる場合の対応と治療―保存療法と腹腔鏡手術,どちらを選択するか?消化器内視鏡 2008; 20: 826-830(ケースシリーズ)

7) Bertleff MJ, Lange JF. Perforated peptic ulcer disease: a review of history and treatment. Dig Surg 2010; 27:161-169(ケースシリーズ)

8) Oida T, Kano H, Mimatsu K, et al. Percutaneous drainage in conservative therapy for perforated gastro-duodenalulcers. Hepatogastroenterology 2012; 59: 168-170(ケースシリーズ)

9) Banerjee S, Cash BD, Dominitz JA, et al; ASGE Standards of Practice Committee. The role of endoscopy inthe management of patients with peptic ulcer disease. Gastrointest Endosc 2010; 71: 663-668(ガイドライン)

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— 184 —

解説

Bertleffらのレビュー 1)によれば消化性潰瘍穿孔患者においては発症後 12 時間以降の手術成績が悪化するので,内科的治療から穿孔閉鎖などの外科的治療を考慮するタイミングとして発症後 12 時間を目安としている.また,Napolitanoらによるレビュー 2)によれば外科的治療を考慮するタイミングとして発症後 24 時間以上としている.日本での消化性潰瘍穿孔患者に対する治療法の検討のうち,伊藤ら 3)は発症から 24 時間以上経過した症例の保存的治療の成績は不良であることから,発症 24 時間を経過した症例は腹腔鏡手術または開腹手術を選択すると報告している.近藤ら 4)は保存的治療を選択した場合に経時的に CTを撮影し,腹腔内ガスや腹水の増量を認めるとき,または腹部筋性防御が 24 時間以内に軽快しない症例は手術適応としている.秋山ら 5)は年齢が 76 歳以上の高齢者,穿孔後 24 時間以上の症例は保存的治療から手術治療への移行率が 50%と高率であったとしている.これらの検討から総合的に判断して,内科的治療を実施しても 24 時間以内に臨床所見および画像所見が改善しない場合に外科的治療へ切り替えを考慮することが望ましい.

文献

1) Bertleff MJ, Lange JF. Perforated peptic ulcer disease: a review of history and treatment. Dig Surg 2010; 27:161-169(ケースシリーズ)

2) Napolitano L. Refractory peptic ulcer disease. Gastroenterol Clin North Am 2009; 38: 267-288(ケースシリーズ)

3) 伊藤重彦,木戸川秀生.胃・十二指腸潰瘍穿孔が疑われる場合の対応と治療―保存療法と腹腔鏡手術,どちらを選択するか?消化器内視鏡 2008; 20: 826-830(ケースシリーズ)

4) 近藤泰理.穿孔性潰瘍.日本臨牀 2010; 68: 2102-2105(ケースシリーズ)5) 秋山貴洋,松本 潤,高見 実,ほか.消化性潰瘍穿孔例における治療法の検討.多摩消化器シンポジウ

ム誌 2010; 24: 44-48(ケースシリーズ)

Clinical Question 7-3

穿孔に対する内科的治療から外科的治療に移行するタイミングは?

7.穿孔・狭窄に対する内科的(保存的)治療 ― ❶穿孔

CQ 7-3 穿孔に対する内科的治療から外科的治療に移行するタイミングは?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● 24 時間を経過しても臨床所見,画像所見が改善しない場合に外科的治療を行うことを提案する.

2(100%) D

消化性潰瘍診療ガイドライン2015(改訂第2版),南江堂,2015

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解説

消化性潰瘍の狭窄によるステートメントは穿孔と同様,「消化性潰瘍診療ガイドライン」初版と不変である.内科的治療の適応は通過障害による症状,たとえば嘔吐,体重減少,内視鏡の通過不能など

が認められる場合であった 1〜5).

文献

1) 岡村治明,渡辺寿和,都築秀至,ほか.消化性潰瘍による幽門狭窄に対する内視鏡的拡張術.日大医学雑誌 1996; 55: 399-403(ケースシリーズ)

2) Misra SP, Dwivedi M. Long-term follow-up of patients undergoing ballon dilation for benign pyloricstenoses. Endoscopy 1996; 28: 552-554(ケースシリーズ)

3) 立花美樹,桑山 肇.十二指腸・小腸の内視鏡治療は,いま―十二指腸潰瘍狭窄例に対する内視鏡的バルーン拡張術.消化器内視鏡 1998; 10: 1191-1193(ケースシリーズ)

4) Lam YH, Lau JY, Fung TM, et al. Endoscopic balloon dilation for benign gastric outlet obstruction with orwithout Helicobacter pylori infection. Gastrointest Endosc 2004; 60: 229-233(ケースシリーズ)

5) Shabbir J, Durrani S, Ridgway PF, et al. Proton pump inhibition is a feasible primary alternative to surgeryand balloon dilatation in adult peptic pyloric stenosis (APS): report of six consecutive cases. Ann R CollSurg Engl 2006; 88: 174-175(ケースシリーズ)

Clinical Question 7-4

狭窄に対する内科的治療の適応は?

7.穿孔・狭窄に対する内科的(保存的)治療 ― ❷狭窄

CQ 7-4 狭窄に対する内科的治療の適応は?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● 通過障害による症状(嘔吐,体重減少,内視鏡の通過不能など)が認められる場合に内科的治療を行うことを提案する.

2(100%) D

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— 186 —

解説

採用された論文では,消化性潰瘍(胃潰瘍,十二指腸潰瘍)による狭窄はほとんど幽門輪の狭窄であった 1〜5).治療法は 1文献が PPIを用いた薬物療法による内科的治療 5),他は内視鏡バルーン拡張術であった 1〜4).短期間での奏効率は平均 82%(75〜100%)と良好であったが 1〜5),長期的(約 2年後)の開存率は平均で 53%(49〜83%)と低下した 2, 4, 5).

米国内視鏡学会(ASGE)が発表したガイドライン 6)によれば,活動性の潰瘍により胃排出路閉塞(幽門狭窄)が生じる場合は PPI投与やNSAIDsの除去,H. pylori 除菌療法を行うとしている.潰瘍の慢性狭窄による通過障害には内視鏡的バルーン拡張術が有用であるとして推奨しており,バルーン拡張術によって 67〜83%に症状の改善がみられるとしている.バルーン拡張による穿孔は 4〜7%と比較的高率である.長期予後は不良である.

文献

1) 岡村治明,渡辺寿和,都築秀至.消化性潰瘍による幽門狭窄に対する内視鏡的拡張術.日大医学雑誌 1996;55: 399-403(ケースシリーズ)

2) Misra SP, Dwivedi M. Long-term follow-up of patients undergoing ballon dilation for benign pyloricstenoses. Endoscopy 1996; 28: 552-554(ケースシリーズ)

3) 立花美樹,桑山 肇.十二指腸・小腸の内視鏡治療は,いま―十二指腸潰瘍狭窄例に対する内視鏡的バルーン拡張術.消化器内視鏡 1998; 10: 1191-1193(ケースシリーズ)

4) Lam YH, Lau JY, Fung TM, et al. Endoscopic balloon dilation for benign gastric outlet obstruction with orwithout Helicobacter pylori infection. Gastrointest Endosc 2004; 60: 229-233(ケースシリーズ)

5) Shabbir J, Durrani S, Ridgway PF, et al. Proton pump inhibition is a feasible primary alternative to surgeryand balloon dilatation in adult peptic pyloric stenosis (APS): report of six consecutive cases. Ann R CollSurg Engl 2006; 88: 174-175(ケースシリーズ)

6) Banerjee S, Cash BD, Dominitz JA, et al; ASGE Standards of Practice Committee. The Role of endoscopy inthe management of patients with peptic ulcer disease. Gastrointest Endosc 2010; 71: 663-668(ガイドライン)

Clinical Question 7-5

狭窄に対してどのような治療を選択すべきか?

7.穿孔・狭窄に対する内科的(保存的)治療 ― ❷狭窄

CQ 7-5 狭窄に対してどのような治療を選択すべきか?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● 消化性潰瘍による狭窄に対して,内視鏡下のバルーン拡張術を行うことを提案する.

2(100%) D

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欧文索引

CCOX-2 選択的阻害薬 123, 128, 129, 131, 150Crohn病 163, 164

DDubois手術 173

Eenterohepatic Helicobacter spp.(EHS) 161, 163

FFindterer-Bancroft手術 175Forrest分類 4

Ggastric Helicobacter spp. 161, 163GERD 54

HH. pylori 再陽性化 52H. pylori 除菌 24, 28, 30, 32, 34, 36, 37, 47, 54, 117H2RA 11, 65, 66, 74, 75, 115, 121, 125

Iinterventional radiology(IVR) 22, 168

JJaboulay法 175

LLDA 133, 135, 136, 139, 141, 143, 145, 147, 149, 150,152

Nnon-H. pylori Helicobacter species( NHPH)   161,

163, 164NSAID-naïve 119NSAIDs潰瘍 98, 99, 101, 103, 105, 107, 108, 115, 117,

121, 123, 125

Ppantoprazole 145PG製剤 115, 121, 123, 125potassium-competitive acid blocker(P-CAB) 42PPI 11, 20, 30, 32, 36, 37, 39, 40, 65, 72, 74, 79, 115,121, 123, 125

Rrofecoxib 129, 131

Sselective serotonin reuptake inhibitors(SSRI) 154

Vvaltecoxib 131vonoprazan 42

ZZollinger-Ellison症候群 163, 164

和文索引

あアスピリン 20, 99アモキシシリン 39, 40, 46アルギン酸ナトリウム 14, 79アルゴンプラズマ凝固(APC) 6アルジオキサ 79アレンドロン酸 154

い胃潰瘍 28, 30, 64, 72, 81, 83, 85, 86, 88胃癌 57, 88胃・十二指腸側側吻合 175, 175萎縮性胃炎 57胃食道逆流症 54維持療法 24, 81, 83, 85, 86, 88, 89, 91, 93, 94, 95胃切開+露出血管縫合止血+潰瘍縫縮術 173胃体部 105

索 引

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一次除菌 39イブプロフェン 132胃幽門部 105インドメタシン 132

えエカベトナトリウム 68, 72エグアレンナトリウム 68, 72エソメプラゾール 40, 46, 66, 75, 116, 125, 134, 136,

146, 152エピネフリン局注 6塩酸セトラキサート 68塩酸ピレンゼピン 66, 67, 75塩酸ベネキサートベータデクス 68塩酸ラニチジン 66, 73, 75, 76, 79, 83, 86, 89, 91, 115,

116, 121, 154塩酸ロキサチジンアセタート 66, 75, 75, 83, 89, 91エンプロスチル 115

おオメプラゾール 40, 46, 66, 75, 85, 89, 91, 115, 116,121, 125, 141, 143, 154

オルノプロスチル 68

か開放性(活動期)胃潰瘍 28, 32開放性(活動期)十二指腸潰瘍 34, 37潰瘍再発予防 47, 50活動性出血 4カリウムイオン競合型酸分泌抑制薬 42

き逆流性食道炎 54急性出血 15凝固法 6, 8狭窄 175, 185, 186局注法 6

くクラリスロマイシン 39, 40, 46クリップ法 7L-グルタミン 79クロピドグレル 136, 139, 141, 143

け経鼻胃管留置 182血管収縮薬局注 6

血小板濃厚液 15ゲファルナート 66, 67, 75, 76, 79, 146限局性腹膜炎 180

こ抗ガストリン薬 67抗凝固薬 19, 21, 123抗血小板薬 19, 21抗コリン薬 79高周波凝固 6広汎胃切除術 170, 173, 175

さ再出血予防 24サイトメガロウイルス 163, 1643 剤療法 41三次除菌 46酸分泌抑制薬 11, 19, 24, 67, 72, 76, 79

しシーケンシャル治療 39, 41, 42ジクロフェナク 129, 131シクロホスファミド 154シタフロキサシン 46シメチジン 66, 72, 75, 76, 79, 81, 83, 89, 91, 95臭化チキジウム 79臭化プロパンテリン 79十二指腸潰瘍 34, 36, 37, 74, 79, 89, 91, 93, 94, 95出血性消化性潰瘍 2出血性消化性潰瘍 4, 6, 17, 18, 19, 21, 22, 24消化性潰瘍出血 168, 173初期治療 64, 72, 74, 79食事開始時期 17食事内容 17食道裂孔ヘルニア 54心血管イベント 131新鮮凍結血漿 15

すスクラルファート 14, 66, 67, 73, 75, 76, 79, 83, 89, 91,116

スルピリド 79

せセカンド・ルック 9, 21絶飲食 182赤血球濃厚液 15

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索 引

絶食 17セレコキシブ 125, 129, 131, 152穿孔 166, 170, 180, 182, 184穿孔部閉鎖大網被覆術 170選択的セロトニン再取り込み阻害薬 154選択的ムスカリン受容体拮抗薬 66, 67, 75

そソファルコン 67, 73

ち超選択的迷走神経切離+胃・十二指腸側側吻合 175

てディスぺプシア症状 103低用量アスピリン 99, 105, 123, 125, 133, 135, 136,

139, 141, 143, 145, 147, 149, 150, 152テプレノン 67, 73

と糖質ステロイド 123, 156等張アルブミン製剤 15特発性潰瘍 160, 164トロキシピド 68

な内視鏡的止血 4, 6, 168内視鏡的治療 2内視鏡的バルーン拡張術 186ナプロキセン 113, 119, 132, 150, 152

にニザチジン 66, 75, 83, 89, 91, 115二次除菌 44入院治療 18

は瘢痕狭窄 175

ひ非 H. pylori・非NSAIDs潰瘍 160, 163, 164ヒータープローブ 6非出血性露出血管 4非除菌治療 64, 72, 74, 79, 81, 83, 85, 86, 88, 89, 91, 93,94, 95

ビスホスホネート 108, 154非選択的NSAIDs潰瘍 119, 123

びらん 107

ふファモチジン 66, 75, 83, 89, 91, 115, 121, 125, 136,

145, 147腹腔洗浄ドレナージ+穿孔部単純閉鎖(+大網被覆)170

プラウノトール 68フルオロウラシル 154プログルミド 67

へヘルペスウイルス 163, 164

ほ防御因子増強薬 14, 66, 67, 72, 75, 76, 79, 116補液 182ポラプレジンク 68

まマイクロ波凝固 6マレイン酸イルソグラジン 67

みミソプロストール 66, 67, 68, 75, 76, 79, 115, 116, 121,123, 125

未治癒潰瘍 59

めメトトレキサート 154メトロニダゾール 40, 46

もモキシフロキサシン 44

や薬物性潰瘍 98

ゆ幽門狭窄 186幽門前庭部 103輸血 15

よ4 剤療法 42

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らラフチジン 66, 75ラベプラゾールナトリウム 40, 66, 75, 146ランソプラゾール 66, 72, 75, 79, 89, 91, 115, 123, 125,

143, 146, 152

りリセドロン酸 154リファブチン 46

れレーザー 6

レジメン 39レバミピド 68, 73, 121レボフロキサシン 44

ろロキソプロフェン 129, 139

わワルファリン 20

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2009 年 10月25日 第 1 版第 1刷発行2011 年 5 月 1 日 第 1 版第 4刷発行2015 年 5 月 5 日 改訂第 2版発行

消化性潰瘍診療ガイドライン 2015(改訂第 2版)

編集 一般財団法人日本消化器病学会理事長 下瀬川 徹〒104-0061 東京都中央区銀座 8-9-13 K-18ビル8階電話 03─3573─4297

印刷・製本 日経印刷株式会社

発行 株式会社 南 江 堂発行者 小立鉦彦〒113-8410 東京都文京区本郷三丁目42 番 6 号電話 (出版)03─3811─7236 (営業)03─3811─7239ホームページ http://www.nankodo.co.jp/

The Japanese Society of Gastroenterology, 2015定価は表紙に表示してあります.落丁・乱丁の場合はお取り替えいたします.

Printed and Bound in JapanISBN978─4─524─26776─7

本書の無断複写を禁じます.   〈(社)出版者著作権管理機構 委託出版物〉本書の無断複写は,著作権法上での例外を除き禁じられています.複写される場合は,そのつど事前に,(社)出版者著作権管理機構(電話 03̶3513̶6969,FAX 03̶3513̶6979,e-mail: [email protected])の許諾を得てください.

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Evidence-based Clinical Practice Guidelines for Peptic Ulcer 2015(2nd Edition)

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編集・発行 一般財団法人日本消化器病学会理事長 下瀬川 徹〒104-0061 東京都中央区銀座 8-9-13 K-18ビル8階電話 03─3573─4297

印刷・製本 日経印刷株式会社

制作 株式会社 南 江 堂〒113-8410 東京都文京区本郷三丁目42 番 6 号電話 (出版)03─3811─7236 (営業)03─3811─7239

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