5
255 公募研究:2008 ~ 2009 年度 メダカ属 MHC ゲノム領域の多型と進化 ●野中 勝 東京大学大学院理学系研究科 <研究の目的と進め方> MHC(主要組織適合性抗原複合体)は有顎脊椎動物に固有のゲ ノム領域で、獲得免疫に中心的な役割を果たす多くの遺伝子が集 積しており、そのゲノム構造の生理的な意義、進化的な成立過程 に興味が持たれている。ヒト MHC の場合は、4Mb 以上の領域に 100 以上の発現している遺伝子がコードされており、その中には 複数のクラス IA 遺伝子、クラス IIA,B 遺伝子をはじめとして、 クラス I 抗原提示に関与するプロテアソームサブユニット遺伝子 や、TAP トランスポーター遺伝子、補体成分 C4, C2, B 因子の 遺伝子、TNF 遺伝子など、免疫学的に重要な遺伝子が多数含ま れている (Consortium Nature 401:921, 1999)。構造上はこれらの 免疫関連遺伝子の起源は様々であり、一方機能上は抗原提示過程 を中心とする免疫反応に関わるという共通点を持っている。これ らの遺伝子のクラスター形成の生理的な意義については、協調し た発現を可能にしているとする説と、共進化を可能にしていると いう説があり、いまだ結論が得られていない。脊椎動物における MHC の進化を明らかにするために、哺乳類以外の MHC が、鳥 類のニワトリ (Kaufman et al. Nature 401:923, 1999)、両生類のツ メガエル (Nonaka et al. PNAS 94:5789, 1997)、軟骨魚類のサメ (Ohta et al. PNAS 97:4712, 2000) で解析されたが、クラス I 遺伝 子、クラス II 遺伝子およびクラス III 補体遺伝子間の連鎖は保存 されており、これらの遺伝子間の連鎖は MHC の成立当初から存 在していた事が示唆された。しかしながら硬骨魚類は例外で、ド イツのグループによるゼブラフィッシュや我々のメダカの解析か ら、これらの遺伝子は数個の染色体に分散して存在している事が 明らかになった。にもかかわらず2つのメダカクラス I 遺伝子と その抗原提示に直接関わる4つの免疫プロテアソームサブユニッ ト遺伝子、TAP2 遺伝子、TAPBP 遺伝子は他の遺伝子の介在な し に 緊 密 な ク ラ ス タ ー を 形 成 し て い た (Matsuo et al. Immunogenetics 53:930, 2002)。さらに約 400 kb に及ぶこの領域 を2種の近交系(Hd-rR と HNI)間で比較すると、クラス I 抗原 提示に関与する MHC クラス I 遺伝子(UAA と UBA)と免疫プロ テアソームサブユニット遺伝子(PSMB8 と PSMB10)を含む約 100 kb の亜領域には、これまでに前例のないアラインする事も不 可能な著しい塩基配列の違いが存在した(Tsukamoto et al. Immunogenetics 57:420, 2005)。当研究では、哺乳類と大きく異な る遺伝子構成と驚異的な多型を特徴とするメダカ MHC クラス I 領域の構造を、メダカ属各種間で比較することにより MHC の進 化過程を解明しようとするものである。メダカの所属する Oryzias 属には約20種が知られ、東南アジアに広く分布してい る。近年の分子系統解析は、これらの種は地理的な分布と一致す る3種群、メダカ種群、ジャワメダカ種群、セレベスメダカ種群 に分かれる事を明らかにした。メダカMHC配列と比較して Oryzias 属内における MHC の進化を解明するには、各種群より 夫々1種の MHC を解析する事が望ましい。これまでに当領域の 藤山秋佐夫代表らにより、メダカ種群のルソンメダカ、ジャワメ ダカ種群のインドメダカについて BAC ライブラリーが構築され ており、我々はすでにこの両種の MHCクラス I 領域を含むクロー ンのスクリーニングを行い、塩基配列の決定を始めている。約 400 kb と予想されるこの領域の塩基配列の完全解読を行うととも に、支援班の援助を受け、セレベスメダカ種群に属するセレベス メダカの BAC ライブラリーを構築し、同様に MHC クラス I 領 域の塩基配列を解読する。また、メダカに認められた MHC の顕 著な二型の起源は、予備的な分子系統解析の結果から Oryzias 属 における種分化よりも古いことが予想され、balancing selection によって維持されていることが示唆されている。そこで Oryzias 属各種の野生集団に入手可能なものより順次この二型の有無を検 討する。メダカを他のモデル動物と比較した時の明らかな利点の ひとつは、東南アジアに広く分布する同属の近縁種の存在であ り、進化・種分化の問題解決のための絶好の材料を提供している。 ゲノムレベルでこれらの問題に取り組むためには、メダカでのゲ ノム情報を最大限に利用して他種の各ゲノム領域を解析すること が現実的と考えられる。各研究者が解析する個々の領域に関する 情報が集積すればより正確なゲノム進化の様子が明らかになる事 が期待されるが、中でも MHC 領域はその高い遺伝子密度(ヒト MHC はヒトゲノム中で最も遺伝子密度の高い領域の一つとされ る)により、効率よく情報収集ができる領域である。さらに構造 的には無関係ながら機能的には密接な関係を有する遺伝子が集積 するという進化的に興味深い領域でもある。そのため哺乳類にお いては比較ゲノム的な解析が最も進んでいる領域と言ってよい が、前述のように哺乳類と硬骨魚類の MHC の遺伝子構成は著し く異なっており、クラス I 領域に限定すれば硬骨魚類のものがよ り祖先型に近いと考えられ、硬骨魚類において進化的なデータを 収集することは脊椎動物における MHC の進化を理解するために も重要と考えられる。 我々は免疫系の進化過程、特に MHC の遺伝子構成の進化的な 意義の解明を目指して研究して来た。その過程で有顎脊椎動物の 中で硬骨魚類のみが分散型という極めて特殊な MHC を有するこ とを見いだした。ところがメダカの MHC クラス I 領域の塩基配 列を決定して、情報が集積しだしたアフリカツメガエル、サメな どの MHC の遺伝子構成と比較してみると、少なくともクラス I 領域に関してはクラス I 遺伝子とその抗原提示に直接関与する遺 伝子群が密接に連鎖するメダカ等が基本形で、両者が遠く離れて 存在する哺乳類のほうがむしろ例外である事が明らかになった。 それと平行して免疫プロテアソームサブユニット PSMB8 遺伝子 はカエル、メダカ、サメでは顕著な二型性を示すのに、哺乳類で は機能に影響を及ぼすような多型の存在は知られていない。これ らの結果から、MHC とはクラス I 遺伝子とその抗原提示に直接 的に関わる遺伝子が共進化を遂げることを保証する場と考えられ る。一度出来上がってしまえば構成遺伝子の突然変異の多くが有 害となる他の生体反応系と異なり、免疫系は種分化等に伴い新た な環境に進出して新たな病原体に出会った場合は、それを抗原と して認識できるように変化していくことが求められる。共進化を 保証するために、抗原提示に関わる遺伝子間の緊密な連鎖を保ち

ݼ§ .)$ ®ÊÜ ¬w qlifesciencedb.jp/houkoku/pdf/B-50_final.pdf · 2010. 8. 24. · = $ s S p ß Q h Ô ù xz x R w ; ó L h d s X s l o M D ó Q U K { H l oz. ) $ U = w Ô q `

  • Upload
    others

  • View
    2

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

Page 1: ݼ§ .)$ ®ÊÜ ¬w qlifesciencedb.jp/houkoku/pdf/B-50_final.pdf · 2010. 8. 24. · = $ s S p ß Q h Ô ù xz x R w ; ó L h d s X s l o M D ó Q U K { H l oz. ) $ U = w Ô q `

− 255−

公募研究:2008 ~ 2009 年度

メダカ属MHCゲノム領域の多型と進化

●野中 勝東京大学大学院理学系研究科

<研究の目的と進め方>MHC(主要組織適合性抗原複合体)は有顎脊椎動物に固有のゲ

ノム領域で、獲得免疫に中心的な役割を果たす多くの遺伝子が集積しており、そのゲノム構造の生理的な意義、進化的な成立過程に興味が持たれている。ヒト MHC の場合は、4Mb 以上の領域に100 以上の発現している遺伝子がコードされており、その中には複数のクラス IA 遺伝子、クラス IIA,B 遺伝子をはじめとして、クラス I 抗原提示に関与するプロテアソームサブユニット遺伝子や、TAP トランスポーター遺伝子、補体成分 C4, C2, B 因子の遺伝子、TNF 遺伝子など、免疫学的に重要な遺伝子が多数含まれている (Consortium Nature 401:921, 1999)。構造上はこれらの免疫関連遺伝子の起源は様々であり、一方機能上は抗原提示過程を中心とする免疫反応に関わるという共通点を持っている。これらの遺伝子のクラスター形成の生理的な意義については、協調した発現を可能にしているとする説と、共進化を可能にしているという説があり、いまだ結論が得られていない。脊椎動物におけるMHC の進化を明らかにするために、哺乳類以外の MHC が、鳥類のニワトリ (Kaufman et al. Nature 401:923, 1999)、両生類のツメガエル (Nonaka et al. PNAS 94:5789, 1997)、軟骨魚類のサメ(Ohta et al. PNAS 97:4712, 2000) で解析されたが、クラス I 遺伝子、クラス II 遺伝子およびクラス III 補体遺伝子間の連鎖は保存されており、これらの遺伝子間の連鎖は MHC の成立当初から存在していた事が示唆された。しかしながら硬骨魚類は例外で、ドイツのグループによるゼブラフィッシュや我々のメダカの解析から、これらの遺伝子は数個の染色体に分散して存在している事が明らかになった。にもかかわらず2つのメダカクラス I 遺伝子とその抗原提示に直接関わる4つの免疫プロテアソームサブユニット遺伝子、TAP2 遺伝子、TAPBP 遺伝子は他の遺伝子の介在なし に 緊 密 な ク ラ ス タ ー を 形 成 し て い た (Matsuo et al. Immunogenetics 53:930, 2002)。さらに約 400 kb に及ぶこの領域を2種の近交系(Hd-rR と HNI)間で比較すると、クラス I 抗原提示に関与する MHC クラス I 遺伝子(UAA と UBA)と免疫プロテアソームサブユニット遺伝子(PSMB8 と PSMB10)を含む約100 kb の亜領域には、これまでに前例のないアラインする事も不可能な著しい塩基配列の違いが存在した (Tsukamoto et al. Immunogenetics 57:420, 2005)。当研究では、哺乳類と大きく異なる遺伝子構成と驚異的な多型を特徴とするメダカ MHC クラス I領域の構造を、メダカ属各種間で比較することにより MHC の進化過程を解明しようとするものである。メダカの所属するOryzias 属には約20種が知られ、東南アジアに広く分布している。近年の分子系統解析は、これらの種は地理的な分布と一致する3種群、メダカ種群、ジャワメダカ種群、セレベスメダカ種群に分かれる事を明らかにした。メダカ MHC 配列と比較してOryzias 属内における MHC の進化を解明するには、各種群より夫々1種の MHC を解析する事が望ましい。これまでに当領域の藤山秋佐夫代表らにより、メダカ種群のルソンメダカ、ジャワメダカ種群のインドメダカについて BAC ライブラリーが構築され

ており、我々はすでにこの両種の MHC クラス I 領域を含むクローンのスクリーニングを行い、塩基配列の決定を始めている。約400 kb と予想されるこの領域の塩基配列の完全解読を行うとともに、支援班の援助を受け、セレベスメダカ種群に属するセレベスメダカの BAC ライブラリーを構築し、同様に MHC クラス I 領域の塩基配列を解読する。また、メダカに認められた MHC の顕著な二型の起源は、予備的な分子系統解析の結果から Oryzias 属における種分化よりも古いことが予想され、balancing selectionによって維持されていることが示唆されている。そこで Oryzias属各種の野生集団に入手可能なものより順次この二型の有無を検討する。メダカを他のモデル動物と比較した時の明らかな利点のひとつは、東南アジアに広く分布する同属の近縁種の存在であり、進化・種分化の問題解決のための絶好の材料を提供している。ゲノムレベルでこれらの問題に取り組むためには、メダカでのゲノム情報を最大限に利用して他種の各ゲノム領域を解析することが現実的と考えられる。各研究者が解析する個々の領域に関する情報が集積すればより正確なゲノム進化の様子が明らかになる事が期待されるが、中でも MHC 領域はその高い遺伝子密度(ヒトMHC はヒトゲノム中で最も遺伝子密度の高い領域の一つとされる)により、効率よく情報収集ができる領域である。さらに構造的には無関係ながら機能的には密接な関係を有する遺伝子が集積するという進化的に興味深い領域でもある。そのため哺乳類においては比較ゲノム的な解析が最も進んでいる領域と言ってよいが、前述のように哺乳類と硬骨魚類の MHC の遺伝子構成は著しく異なっており、クラス I 領域に限定すれば硬骨魚類のものがより祖先型に近いと考えられ、硬骨魚類において進化的なデータを収集することは脊椎動物における MHC の進化を理解するためにも重要と考えられる。

我々は免疫系の進化過程、特に MHC の遺伝子構成の進化的な意義の解明を目指して研究して来た。その過程で有顎脊椎動物の中で硬骨魚類のみが分散型という極めて特殊な MHC を有することを見いだした。ところがメダカの MHC クラス I 領域の塩基配列を決定して、情報が集積しだしたアフリカツメガエル、サメなどの MHC の遺伝子構成と比較してみると、少なくともクラス I領域に関してはクラス I 遺伝子とその抗原提示に直接関与する遺伝子群が密接に連鎖するメダカ等が基本形で、両者が遠く離れて存在する哺乳類のほうがむしろ例外である事が明らかになった。それと平行して免疫プロテアソームサブユニット PSMB8 遺伝子はカエル、メダカ、サメでは顕著な二型性を示すのに、哺乳類では機能に影響を及ぼすような多型の存在は知られていない。これらの結果から、MHC とはクラス I 遺伝子とその抗原提示に直接的に関わる遺伝子が共進化を遂げることを保証する場と考えられる。一度出来上がってしまえば構成遺伝子の突然変異の多くが有害となる他の生体反応系と異なり、免疫系は種分化等に伴い新たな環境に進出して新たな病原体に出会った場合は、それを抗原として認識できるように変化していくことが求められる。共進化を保証するために、抗原提示に関わる遺伝子間の緊密な連鎖を保ち

Page 2: ݼ§ .)$ ®ÊÜ ¬w qlifesciencedb.jp/houkoku/pdf/B-50_final.pdf · 2010. 8. 24. · = $ s S p ß Q h Ô ù xz x R w ; ó L h d s X s l o M D ó Q U K { H l oz. ) $ U = w Ô q `

− 256−

続けた場が MHC であり、それを失っている哺乳類の MHC は、進化的な尺度で考えた場合は、もはや本来の機能を果たせなくなっている可能性がある。従って、MHC が共進化の場として意味を持ち続けていると考えられる Oryzias 属は、MHC の進化を解明するのに最も適した対象ということができる。我々の MHC領域の進化に関する問題意識と、当領域の BAC ライブラリーの構築、大量の塩基配列決定能力が結びつくことによって、近縁種群における特定のゲノム領域の進化過程が、精度よく解明されることが期待される。約6億年前に有顎脊椎動物の共通祖先で確立されたと考えられる獲得免疫において抗原提示は中心的な役割を果たしており、その過程に関わる多くの遺伝子が MHC 領域に存在するのは極めて興味深い現象である。そのため、これまでにも多くの研究者が MHC の遺伝子構造の生物学的な意義を明らかにすべく研究を重ねて来たが、これまでのところ明確な結論を得るに至っていない。一番の問題点はヒト、マウス等の哺乳類を用いてこの問題の解決を試みた事にあると思われる。前述のごとく哺乳類の MHC は極めて特殊な遺伝子配置をしており、機能関連遺伝子が緊密な連鎖により共進化を遂げる場としての機能を失っている可能性が高い。それに対してメダカのMHCのゲノム構造は、共進化の場としての機能を保持していることを強く示唆しており、近縁種の MHC の構造および多型性を明らかにすることにより、実際に共進化が生じていることが証明されることが期待される。淡水から海水、熱帯から温帯の様々な生息環境に適応分化したと考えられる約20種に及ぶ Oryzias 属の各種の存在は、この種の解析に最適な材料を提供している。

<研究開始時の研究計画>ルソンメダカ、インドメダカのMHCクラスI領域の完全解読:我々はすでに両種のBACライブラリーより、メダカのMHCクラスI遺伝子、PSMB8遺伝子をプローブとしてスクリーニングを行い、それぞれ数個のBACクローンを単離してある。メダカの様々な遺伝子プローブ、及びBAC末端配列決定の結果から、それぞれの種からメダカMHCクラスI領域の中心部分約200̶300 kbをカバーする2個ずつのBACクローンを選択した。そこでこれら4個のBACクローンをSau3AIで不完全切断し、アガロースゲルで2 ‒ 4 kbの断片を精製し、pGEM3ベクターに入れ両端の配列を決定する。約1000クローン読んだ時点で、PhredPhrapによるアセンブルを試みる。10 ‒20程度のギャップの存在が予想されるので、ギャップを跨ぐPCRプライマーを合成してその部分の配列を決定し、最終的には200 ‒ 300 kbの完全塩基配列を得る。メダカのMHC領域にはG/Cの連続配列、ATリッチ領域等塩基配列の決定を妨げる配列が多く存在し、その問題はルソンメダカ、インドメダカでも同様であることが予想される。メダカでの経験を生かし、これらの配列に強いシーケンス反応試薬の使用や、シーケンス反応の際のアニーリング温度を上げる事により、これらの問題に対処する。メダカの場合、他の脊椎動物のMHCと共通な遺伝子は約450 kbにわたって存在している。支援班による塩基配列決定の支援が受けられる場合は、ルソンメダカ、インドメダカMHCについても隣接するBACクローンを単離して塩基配列の決定を行う。3種の配列を比較することにより、Oryzias属MHCの進化過程を、メダカ種群とジャワメダカ種群が分かれて以来、あるいはメダカ種群内の種分化過程という二つのタイムスケールで、一塩基レベルの精度を持って比較する事が可能になる。セレベスメダカBACライブラリーの構築とMHCクラスI領域の完全解読:支援班の支援を得て、Oryzias属3種群のうち未だBACライブラリーが存在しないセレベスメダカ種群の代表種セレベスメダカよりBACライブラリーを構築する。3Dプールを作成して

PCRによるスクリーニングを可能にする。ライブラリーが構築されたら、ルソンメダカ、インドメダカと同様な方法により、セレベスメダカMHCクラスI領域の塩基配列をできるだけ広い範囲で決定する。約400 kbになる事が期待されるこの領域の塩基配列を、メダカ、ルソンメダカ、インドメダカ、セレベスメダカの4者間で比較し、ミトコンドリア遺伝子の分子系統解析から推定されたこれら4種の系統関係に基づき、Oryzias属におけるMHCクラスIゲノム領域の進化過程を明らかにする。この過程で、メダカ種群、ジャワメダカ種群、セレベスメダカ種群の他種について解析する必要が生じる可能性が高く、その場合は至急その種についてBACライブラリーを構築し、MHCクラスI領域の塩基配列を決定する。メダカ野生集団におけるMHCクラスI領域多型の解析:Oryzias属内でのMHCクラスI領域の進化を種内多型も含めて明らかにするための基礎的な情報を得るために、まずメダカの各地の野生集団を用いてこの領域の多型の様子を明らかにする。これまでのPSMB8遺伝子をもちいた予備的な解析により、約500万年前に分岐したとされる北日本集団、南日本集団のいずれからも、Hd-rR型、HNI型の両者がみつかっており、この顕著な2型は南北両集団の分岐に先駆けて成立していたことが明らかになっている。この解析を隣接するPSMB10, UAA, UBA遺伝子にも拡大することによって顕著な2型の範囲を明らかにするとともに、これら緊密に連鎖する遺伝子がハプロタイプを形成して、共進化してきた可能性を検討する。また、Hd-rR型、HNI型の中に亜型が存在する可能性を検討し、後に近縁各種での多型解析を行う際に、種間で共有される多型と、各種に固有の多型を識別することを可能にする。これらの解析は基本的に、各遺伝子の両端のエクソン上に設計したプライマーを用いて、ゲノムDNAを鋳型にしたPCRを行ってイントロンを含む全遺伝子領域を増幅して行う。PSMB8遺伝子とPSMB10遺伝子の間の間隙は極めて短いため、両遺伝子は一緒に増幅して解析する。これによって遺伝子配置の多型が存在した場合にも、それを含めた多型の検出が可能になり、Oryzias属におけるMHCクラスI領域の多型の進化をより包括的に理解することが可能になる。Oryzias属各種の野生集団を用いたMHCクラスI領域多型の解析:メダカでの解析から、PSMB10, PSMB8、及び二つのMHCクラスI遺伝子を含む約100 kbの領域は、アラインすることが困難なほどの著しい2型性(Hd-rR型とHNI型)を示すことが明らかになった。日本各地の野生集団を調べたところ、この2型性は殆どの集団において保たれており、また常にHd-rR型の頻度が高く、NHI型の遺伝子頻度は1~20 %程度であり、偏ったbalancing selectionの存在を示唆した。またPSMB8遺伝子を用いた分子系統解析は、両型の分岐は約1億年前と、Oryzias属の各種の種分化が開始されたと考えられる数千年前より遥かに古い事を示した。従ってOryzias属各種において両型の有無、頻度を明らかにする事により、balancing selectionの実態を解明する。この種の解析には少なくとも100頭程度の野生集団からのサンプルが必要であり、サンプルが入手できたものより順次解析を進めてゆく。これまでに既にタイのSrinakharinwirot大学のMagtoon博士の協力でタイメダカを、またシンガポールのシンガポール国立大学のNg博士の協力でジャワメダカを各200 ‒ 300個体入手済みであり、中国の香港市立大学のCheng博士からは近くハイナンメダカのサンプルが送られてくる予定になっている。まず、PSMB8遺伝子のHd-rR、HNI両型のエクソン部分に作られた特異的なプライマーを用いて、メダカ近縁各種のゲノムDNAを鋳型としたPCRをおこない、得られたバンドの塩基配列を決定する事によりタイピングを行う。クラスI遺伝子についても同様な解析を行い、両遺伝子が

Page 3: ݼ§ .)$ ®ÊÜ ¬w qlifesciencedb.jp/houkoku/pdf/B-50_final.pdf · 2010. 8. 24. · = $ s S p ß Q h Ô ù xz x R w ; ó L h d s X s l o M D ó Q U K { H l oz. ) $ U = w Ô q `

− 257−

ハプロタイプを形成して進化しているかどうかを明らかにする。またこれまでに入手の見込みのついていないセレベス種群のいずれかの種の野生集団の解析を行うため、セレベス島にて採集を試みる。MHCクラスI領域の完全解読を計画しているセレベスメダカを始めとして、いずれもセレベスメダカ種群に属する数種を採集できる可能性があり、生息環境の情報とあわせて、MHCクラスI領域の適応的な進化の様子が解明される事が期待される。

<研究期間の成果>ルソンメダカ、インドメダカのMHCクラスI領域の完全解読:ルソンメダカは2つの一部重複するBACクローンから、193,474bpの連続配列が得られ、PSMB8遺伝子はHd-rR型であった。インドメダカは2つのBACライブラリーを使い、一方のライブラリーからはHd-rR型のPSMB8遺伝子を含む一つのBAC配列、141,664bpを決定した。もう一方のライブラリーからは2つのBACクローンから340,769bpの連続配列を決定したが、PSMB8遺伝子はHNI型であった。これまでインドメダカの属するジャワメダカ種群からはHNI型PSMB8遺伝子は確認されておらず、この結果により初めてPSMB8遺伝子の二型性は数千万年前とされるメダカ種群、ジャワメダカ種群の分岐以前から存在し、trans-speciesに伝えられてきたことが明らかになった。ここで明らかにした3つのMHCクラスI領域の配列と、これまでメダカで明らかにされていた2つの配列を互いに比較した結果、PSMB10, PSMB8及びいくつかのclass IA遺伝子を含む領域は配列間で大きな違いを示し、MHC領域特有の進化をしているが、それ以外の領域は比較的高い保存性を保ち、通常の非MHC領域と同様の進化をしていることが示唆された。また、MHC特有の進化を示す領域のうち、PSMB10, PSMB8遺伝子は種を超えた二型性を示すのに対して、class IA遺伝子はそれぞれの種に固有なコピー数を示し、メダカにはUAAとUBAが各1コピー存在したのに対して、ルソンメダカにはUAAが3コピーUBAが1コピー、インドメダカにはUAAが4コピーUBAが0コピー存在した。class IA遺伝子の系統樹は、同種の遺伝子がクラスターを形成し、それぞれの種内でhomogenizationが行われていることが示唆された。以上の結果はメダカ属のMHCクラスI領域は3つの亜領域に分かれ、それぞれが異なる淘汰圧を受けていることを示した。セレベスメダカBACライブラリーの構築とMHCクラスI領域の完全解読:基礎生物学研究所の成瀬班員と協力して、基礎生物学研究所で保持しているセレベスメダカについてPSMB8遺伝子のタイピングを行い、Hd-rR型、HNI型をヘテロに有する個体から培養細胞を確立してDNAを抽出した。支援班によりこのDNAから約6xのBACライブラリーが構築された。PSMB8, DAX, RING3遺伝子にPCRプライマーを設定してスクリーニングし、それぞれ2,2,7個のBACクローンを得た。二型性領域を含むPSMB8, DAXのプライマーにより得られたクローンを検討した結果、PSMB8で得られたものはHd-rR型、HNI型が各一個、DAXで得られたものは共にHd-rR型であった。PSMB8で得られた2クローンを完全解読することにして、現在Hd-rR型のもののショットガンライブラリーを作成し解読を開始した所である。メダカ野生集団におけるMHCクラスI領域多型の解析:メダカ野生集団における多型性を明らかにするために、4つ存在するメダカの地域集団のうち北日本集団、南日本集団、中国西韓集団に属する10地点からの1245個体のPSMB8, PSMB10遺伝子のタイピングを行った。得られた全ての配列はHd-rR型かHNI型のいずれかに明確に分類され、メダカのこれらの遺伝子は多型性ではなく、二型性を示すことが明らかになった。また両遺伝子の型は常に一致してハプロタイプを形成していた。更にどの地域集団において

もHNI型の頻度は0-27%と低く、これら2つの遺伝子を含むハプロタイプの二型性はHd-rR型に偏った形のbalancing selectionによって保たれていることが示された。その原因については、超優性や頻度依存性選択よりも時間、場所により変化する淘汰圧による可能性が強いことが示唆された。Oryzias属各種の野生集団を用いたMHCクラスI領域多型の解析

メダカ種群のハイナンメダカ、ジャワメダカ種群のジャワメダカ、インドメダカ、タイメダカ、及びセレベスメダカ種群のセレベスメダカ、マタネンシスメダカ、マルモラタスメダカについて、各 100 個体程度の野生集団の PSMB8, PSMB10 遺伝子のタイピングを行った。その結果、インドメダカ、タイメダカからはHd-rR 型のみが、その他の各種からは Hd-rR 型、HNI 型の両型が検出された。ただしインドメダカは日本に維持されているラボストック中に二型が認められ、種としては二型を保持していることが判明しており、タイメダカも今後別の産地のものを調べることにより二型が確認される可能性が高いと思われた。二型が認められた各種では、メダカ同様に Hd-rR 型の頻度が高くなっており、これらの結果から PSMB8 遺伝子の二型性は Oryzias 属の共通祖先の段階で既に存在しており、一方に偏った形の平衡淘汰により種を越えて維持されてきたことが示唆された。

<国内外での成果の位置づけ>メダカ以外の魚類を用いた MHC 領域の構造、多型の解析は国

内外で行われているが、クラス I 遺伝子のように重複して、しかも多型を示す遺伝子ではアレルとアイソタイプの区別すら容易でなく、しかも産業的に重要で解析の進んでいるサケ科やコイ科の魚は最近の4倍体化を経験しているために MHC 領域の解読は困難を極めている。ここで述べたような高精度の解析は BAC ライブラリーや近交系等の基盤が整備されているメダカでのみ可能となっており、既に発表済みの2種の近交系の MHC 配列の論文も他種の研究者から高い評価を受けている。更に系統関係が明らかにされている近縁種の存在、及び支援班によって進められている近縁種での BAC ライブラリーの整備は、メダカを進化的な側面の研究に圧倒的に優れた対象としている。

<達成できなかったこと、予想外の困難、その理由>メダカ近縁種で解析を予定していたもののうち、メコンメダカ

とインド産のインドメダカを入手することが出来なかった。前者はバンコクで行われたメダカ国際会議で知り合ったタイ北東部の研究者から共同研究としてサンプルを提供してもらう話が進んでいたが、途中から連絡が取れなくなってしまった。また、インドメダカはマレーシアのものを自ら採集して解析することが出来たが、遺伝的にかなり異なっていると思われるインド産のものについては、インド国内のメダカ研究者を見つけることができず、また自ら採集するためにインド政府に提出した許可申請も認可されなかった。

<今後の課題、展望>これまでに PSMB8 遺伝子の顕著な二型性は、メダカ以外でも

サメ、ツメガエルからも報告されていたが、系統解析の結果はこれらの二型性は独立に生じたことを示していた。しかし最近データベースに登録されている PSMB8 遺伝子の配列を調べ直したところ、以下のような事実が判明した。サメと硬骨魚類の一部にはそれらの共通祖先に由来すると考えられる共通の二型、A 型と F型が存在する。メダカとツメガエルにはそれぞれ独特の二型が認められるが、それらは配列からは全て祖先的な二型の A 型の系統に属し、進化過程のどこかで F 型が失われた後、A 型から再生さ

Page 4: ݼ§ .)$ ®ÊÜ ¬w qlifesciencedb.jp/houkoku/pdf/B-50_final.pdf · 2010. 8. 24. · = $ s S p ß Q h Ô ù xz x R w ; ó L h d s X s l o M D ó Q U K { H l oz. ) $ U = w Ô q `

− 258−

れた二型と考えられる。ヒト、マウス等の哺乳類には A 型のみが存在する。ニワトリからは PSMB8 遺伝子が失われている。これらの断片的な情報からは、MHC の成立と時を同じくして有顎脊椎動物の共通祖先で PSMB5 遺伝子から遺伝子重複により生じた PSMB8 遺伝子は、出現直後から二型性を示し、その二型性は一部の動物では5億年以上にわたって現在まで継承されており、また他の系統では二型性の消失、再生が複数回行われてきたことを示唆するが、具体的な回数と系統樹上の位置は特定されていない。これらの事象を特定して、PSMB8 遺伝子の進化過程の全貌を明らかにすることが今後の重要な課題と考えられる。そのためには、条鰭類、肉鰭類のそれぞれの系統で重要な位置を占める動物を選定して、これまでに知られている全ての PSMB8 配列に対応できるユニバーサルなディジェネレートプライマーを用いてゲノム DNA を鋳型とした PCR を行う必要がある。これまでに解析された全ての動物の PSMB8 遺伝子において、イントロンの挿入位置は完全に保存されており、また各エクソンは比較的短いため、ユニバーサルプライマーはエクソン2、3上に二型の判定に使う成熟ペプチドの 31 番目の残基を挟む様に設計してある。条鰭類の系統では祖先的な二型の存在が知られているのはサケ科、コイ科の魚に限られているため、それより根元で分岐したポリプテルス、アナゴおよびそれ以後に分岐したシクリッド等について検討する。また、肉鰭類については肺魚、有尾類のイモリ、は虫類のヤモリ、単孔類のカモノハシ、有袋類のワラビーを調べる。50 頭程度の野生個体からのゲノム DNA を鋳型に PCR を行い、得られるバンドの塩基配列を決定し 31 番目の残基に基づくタイピングをおこなう。A 型または F 型のホモとタイピングされた個体から、RNA が利用できる場合は 3’ RACE により、利用できない場合はインバース PCR により成熟ペプチドの全アミノ酸配列を決定し、既知の配列と系統樹解析を行うことにより、祖先的な二型がどの種で保存されているか、あるいは新たに形成されたと思われる二型が存在するかどうかを明らかにすることができる。

またメダカ属のメダカ近縁種については、これまでに解析できていない種に付いて、野生集団のサンプルが入手できるものから二型性の有無を検証し、100 頭程度を目安に二型の相対的な遺伝子頻度を明らかにする必要がある。また、支援班によって更に構築されているメダカ近縁種の BAC ライブラリーについても、利用可能なものから二型に対応するクローンを単離、解析する。それぞれの型について MHC クラス I 領域の中心部分約 300 kb を最小限の重複でカバーする2個ずつの BAC クローンを選択し、Sau3AI で不完全切断し、アガロースゲルで 2 ‒ 4 kb の断片を精製し、pGEM3 ベクターに入れ両端の配列を決定する。約 1000 クローン読んだ時点で、PhredPhrap によるアセンブルを試みる。10 ‒20 程度のギャップの存在が予想されるので、ギャップを跨ぐPCR プライマーを合成してその部分の配列を決定し、最終的には完全塩基配列を得る。得られた結果をこれまでに解析したメダカの二型、ルソンメダカの d 型、インドメダカの二型、及び現在解析が進んでいるセレベスメダカの二型の MHC クラス I 領域の配列と比較することにより、種の系統に従って進化している領域と、二型性に従って種を超えて進化している領域が明確になることが期待され、メダカ属 MHC 領域の進化の全貌を明らかにすることができる。前述のごとくこれまで MHC の進化的な研究は主に PSMB8 遺伝子の二型が存在しない有胎盤類で行われてきたが、その MHC 構造は派生的であることが明らかになりつつある。従って脊椎動物 MHC の進化過程の本流を理解するためには、PSMB8 遺伝子の二型もふくめてより祖先的な MHC のゲノム構造を有する分類群における解析が必要と思われ、メダカ属は格好な研究対象といえる。近縁種について BAC ライブラリーの構築が

これほど精力的に進められている MHC 領域を有する分類群は他に存在しないと思われ、この解析により 1 塩基レベルという高解像度で、最も包括的な MHC 領域の進化過程の解明が成し遂げられるものと思われる。

また、PSMB8 の二型間の機能的な違いを検証するために、メダカを用いてそのアッセイ系を確立する。真核生物の 20S プロテアソームは 14 種類のサブユニット各ふたつずつ計 28 のサブユニットからなり、全ての細胞の生存に必須な巨大なタンパク分解酵素で、細胞内タンパク分解の主要な部分を担っている。酵素活性を持つのは PSMB5, PSMB6, PSMB7 と呼ばれる三種のサブユニットであるが、免疫反応が惹起されインターフェロン g が分泌されると PSMB8,9,10 と呼ばれるサブユニットが誘導され、これらが PSMB5,6,7 と置換することにより免疫プロテアソームが形成される。免疫プロテアソームは通常のプロテアソームとは異なる切断特異性を有し、免疫プロテアソームによって切り出されたペプチドは MHC クラス I 分子による抗原提示により適していると言われている。各サブユニットは単体では酵素活性を示さないため、PSMB8 の活性を測るのは6種類のプロテアーゼ活性を示す可能性のあるサブユニット、PSMB5,6,7,8,9,10 の存在下で行われなければならず現在そのための準備を整えている。先ずメダカには汎用される2つの近交系、Hd-rR と HNI が存在し、PSMB8の型は前者が祖先型二型の A 型に相当する活性を示すと考えられる d 型、後者が祖先型二型の F 型に相当する活性を示すと考えられる N 型である。これらの近交系からは繊維芽細胞用の株が確立されているので、それを活性測定に用いる。メダカのインターフェロン g はこれまでにクローニングされていなかったため、メダカドラフトゲノム配列にインターフェロン g としてアノテートされていた2つの遺伝子のうち、生物活性があることが確認されているニジマスインターフェロン g と系統樹上同じクレードに属する方の遺伝子をクローニングし、大腸菌に発現させて GST タグ付きの組換えタンパクを得た。前述の培養細胞で組換えインターフェロンgの効果を調べたところ、添加前には殆ど検出されなかった PSMB8 の mRNA がインターフェロン g の添加によって強く誘導されることが確認された。従って Hd-rR と HNI 由来の2種の培養細胞を使って、インターフェロン g の添加前後で切断特異性を比較することにより、PSMB8 の二型間の切断特異性の違いを検出できると思われる。増殖期の培養細胞をインターフェロンg 処理したものとしないものについて 24 時間後にホモジェネートを調整し、グルコース密度勾配遠心により 26S, 20S 分画を分離し、切断部位に様々なアミノ酸残基を有する各種 MCA 基質を用いて特異性を比較する。31 番目の残基は立体構造の決定されているウシプロテアソームでは S1 ポケットの側壁を形成しており、ここに Val がある d 型ではキモトリプシン様活性が、ここにTyr がある H 型ではエラステース様活性が予測される。また、インターフェロン g の誘導により実際にタンパクレベルで PSMB5から PSMB8 への置換が生じていることを確認するために、20S分画を二次元電気泳動で分離し、各スポットをトリプシン処理後質量分析にかけることで同定する。硬骨魚類の MHC クラス I 領域には、PSMB8,9,10 遺伝子の他に、PSMB9-like と呼ばれる硬骨魚類固有の遺伝子が存在することが知られているが、その産物が免疫プロテアソームに組み込まれるかどうかについてはこれまで全く解析されていない。このことについても同時に明らかになると思われ、もし組み込まれる場合には PSMB9 と PSMB9-likeの間の特異性の違いも判明するものと思われる。 

<研究期間の全成果公表リスト>1) 論文/プロシーディング

Page 5: ݼ§ .)$ ®ÊÜ ¬w qlifesciencedb.jp/houkoku/pdf/B-50_final.pdf · 2010. 8. 24. · = $ s S p ß Q h Ô ù xz x R w ; ó L h d s X s l o M D ó Q U K { H l oz. ) $ U = w Ô q `

− 259−

1. 0812251442 Tsukamoto, K., Sakaizumi, M., Hata, M., Sawara, Y., Eah, J.,

Kim, C.B. and Nonaka, M.: Dichotomous haplotypic lineages of the immunoproteasome subunit genes, PSMB8 and PSMB10, in the MHC class I region of a teleost medaka, Oryzias latipes, Mol.Biol. Evol. 26(4), 769-781 (2009).

2. 0911301152 Mehta, R. B., Nonaka, M. I., and Nonaka, M.: Comparative

genomic analysis of the major histocompatibility complex class I region in the teleost genus Oryzias, Immunogenetics 61,385-399 (2009)