12
昨年の千葉大学創立60周年記念オープン・リサーチ 2009での講演に引き続き,こうしてニュースレターに寄 稿させて頂きますことに感謝申し上げます。講演では40 分という時間を頂きながら大幅に超過してしまい,関係 者の皆様にはご迷惑をおかけいたしました。産学官連携 とそれを取り巻く状況に関しては,それだけ申し上げた いことがたくさんある,課題が山積しているということ で,ご理解・ご容赦頂ければと思います。 言うまでもありませんが,我が国経済は依然として厳 しい状況にあります。政府としても昨年12月,緊急経済 対策を取りまとめるとともに,当面の難局を乗り越える ための第2次補正予算を編成しました。中小企業の資金 繰り対策や雇用対策など,足下の経済情勢への対応は 待ったなしの状況です。 こうした短期的な景気対策と併せて重要なことは,我 が国経済が中長期的に成長する基盤を確立していくこと です。少子高齢化,地球温暖化問題や資源確保競争,そ の一方でのアジア諸国の急速な発展等我が国を取り巻く 環境は益々厳しさを増しています。我々はこうした内外 の課題に立ち向かい解決していくことにより,安心して 豊かさを実感することができる社会を実現していかなけ ればなりません。このような観点から昨年12月末には, 2020年を見据えた「新成長戦略」の基本方針が閣議決定 されました。 天然資源の乏しい我が国において,内外における様々 な課題を克服し,むしろチャンスと捉え,フロンティア の開拓に挑戦することにより付加価値を産み,持続的な 経済成長へと結びつけて行くためには,イノベーション を創出する仕組みが不可欠であることは言うまでもあり ません。「知」の創出拠点であると同時に「人財」を育 成する大学と,知と人財を活用することにより付加価値 の高い様々な製品やサービスを社会に提供する企業とを 結びつける「産学官連携」は,これまでにもイノベーショ ンを創出するための重要な施策として位置付けられ,制 度整備をはじめ様々な取組が行われてきました。 言うまでもありませんが,産業界も大学も,それぞれ を取り巻く環境は常に変化しています。かつて「いつか はクラウン」というキャッチコピーがありました。高度 経済成長期,会社の業績拡大とともに自らの生活も確実 に向上していく,そのような将来に夢を持つことができ た時代を反映する名コピーでした。世界のフロントラン ナーとなった今日,研究開発投資や設備投資は益々リス クの高い,不確実なものとなっ てきています。「自前主義」と いう言葉がありますが,今や 研究開発も人材育成も「自前」 を貫くことは,大企業といえど も極めてリスクの高い選択と なっています。いわんや研究開 発資金も人材も限られる中小・ 中堅企業にとってみれば,事業 を行うにあたり外部のリソー スを必要とすることは,むしろ 当然なことと言えます。 大学を巡る状況もまた,益々厳しくなってきているこ とは確かです。国立大学の法人化とそれに伴う様々な制 度改革が行われる一方,全入時代の到来等大学間の競争 も激化しています。特に教育に関しては,これまでにも 教育再生会議等において様々な課題が指摘されています が,大学だけで対応することは困難なものも多々挙げら れています。例えばいわゆる「理科離れ」に関しては, 工学部の志望者が減少するという量的な問題のみなら ず,今や工学部の新入生に対し,中学校の数学の教科書 から始めないとおよそ授業にならないということも笑い 話では無いほど,科学・技術立国を目指す我が国にとっ て本質的な問題にもなっているのです。 前述した「新成長戦略」の基本方針では6つの戦略分 野が掲げられていますが,そのいずれもが様々な形で大 学の「知」を必要としています。「科学・技術立国戦略」 や「雇用・人材戦略」の中で大学が主体的な役割を期待 されることは当然ですが,その他の戦略分野においても, 各々の課題を解決し経済成長へと結びつけていくために は,様々な主体が日本の将来ビジョンを共有し,それぞ れの役割を認識しお互いに連携しあって取り組んで行く ことが不可欠であり,大学がその枠の外にいることなど 考えられません。 この「新成長戦略」については,今後更なる議論が行 われ,6月を目途に目標・施策の具体化・追加とともに, その実行計画である「工程表」とともに取りまとめられ る予定です。誰かが何かしてくれるかではなく,自分は 何ができるか。私たちの住む国,地域をどうしていくか という,それぞれの主体にとって人ごとではない,自ら の問題なのです。私ども関東経済産業局としても,一緒 に考え,取り組んでいきたいと思います。 Newsletter No.72010. 2 . 152006.11.1 千葉大学産学連携・知的財産機構 Organization for Academic-Industrial Collaboration and Intellectual Property 大学の役割 経済産業省関東経済産業局 地域経済部長  吉澤 雅隆 2010. 2 .15 第7号

大学の役割 - 千葉大 学術研究推進機構 ... · 大学の役割 ... 大きく異なり,長期的な展望を元に,研究開発を進め ... ます。活力ある大学こそが,革新的なイノベーションを,

  • Upload
    others

  • View
    1

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

Page 1: 大学の役割 - 千葉大 学術研究推進機構 ... · 大学の役割 ... 大きく異なり,長期的な展望を元に,研究開発を進め ... ます。活力ある大学こそが,革新的なイノベーションを,

 昨年の千葉大学創立60周年記念オープン・リサーチ2009での講演に引き続き,こうしてニュースレターに寄稿させて頂きますことに感謝申し上げます。講演では40分という時間を頂きながら大幅に超過してしまい,関係者の皆様にはご迷惑をおかけいたしました。産学官連携とそれを取り巻く状況に関しては,それだけ申し上げたいことがたくさんある,課題が山積しているということで,ご理解・ご容赦頂ければと思います。 言うまでもありませんが,我が国経済は依然として厳しい状況にあります。政府としても昨年12月,緊急経済対策を取りまとめるとともに,当面の難局を乗り越えるための第2次補正予算を編成しました。中小企業の資金繰り対策や雇用対策など,足下の経済情勢への対応は待ったなしの状況です。 こうした短期的な景気対策と併せて重要なことは,我が国経済が中長期的に成長する基盤を確立していくことです。少子高齢化,地球温暖化問題や資源確保競争,その一方でのアジア諸国の急速な発展等我が国を取り巻く環境は益々厳しさを増しています。我々はこうした内外の課題に立ち向かい解決していくことにより,安心して豊かさを実感することができる社会を実現していかなければなりません。このような観点から昨年12月末には,2020年を見据えた「新成長戦略」の基本方針が閣議決定されました。 天然資源の乏しい我が国において,内外における様々な課題を克服し,むしろチャンスと捉え,フロンティアの開拓に挑戦することにより付加価値を産み,持続的な経済成長へと結びつけて行くためには,イノベーションを創出する仕組みが不可欠であることは言うまでもありません。「知」の創出拠点であると同時に「人財」を育成する大学と,知と人財を活用することにより付加価値の高い様々な製品やサービスを社会に提供する企業とを結びつける「産学官連携」は,これまでにもイノベーションを創出するための重要な施策として位置付けられ,制度整備をはじめ様々な取組が行われてきました。 言うまでもありませんが,産業界も大学も,それぞれを取り巻く環境は常に変化しています。かつて「いつかはクラウン」というキャッチコピーがありました。高度経済成長期,会社の業績拡大とともに自らの生活も確実に向上していく,そのような将来に夢を持つことができた時代を反映する名コピーでした。世界のフロントランナーとなった今日,研究開発投資や設備投資は益々リス

クの高い,不確実なものとなってきています。「自前主義」という言葉がありますが,今や研究開発も人材育成も「自前」を貫くことは,大企業といえども極めてリスクの高い選択となっています。いわんや研究開発資金も人材も限られる中小・中堅企業にとってみれば,事業を行うにあたり外部のリソースを必要とすることは,むしろ当然なことと言えます。 大学を巡る状況もまた,益々厳しくなってきていることは確かです。国立大学の法人化とそれに伴う様々な制度改革が行われる一方,全入時代の到来等大学間の競争も激化しています。特に教育に関しては,これまでにも教育再生会議等において様々な課題が指摘されていますが,大学だけで対応することは困難なものも多々挙げられています。例えばいわゆる「理科離れ」に関しては,工学部の志望者が減少するという量的な問題のみならず,今や工学部の新入生に対し,中学校の数学の教科書から始めないとおよそ授業にならないということも笑い話では無いほど,科学・技術立国を目指す我が国にとって本質的な問題にもなっているのです。 前述した「新成長戦略」の基本方針では6つの戦略分野が掲げられていますが,そのいずれもが様々な形で大学の「知」を必要としています。「科学・技術立国戦略」や「雇用・人材戦略」の中で大学が主体的な役割を期待されることは当然ですが,その他の戦略分野においても,各々の課題を解決し経済成長へと結びつけていくためには,様々な主体が日本の将来ビジョンを共有し,それぞれの役割を認識しお互いに連携しあって取り組んで行くことが不可欠であり,大学がその枠の外にいることなど考えられません。 この「新成長戦略」については,今後更なる議論が行われ,6月を目途に目標・施策の具体化・追加とともに,その実行計画である「工程表」とともに取りまとめられる予定です。誰かが何かしてくれるかではなく,自分は何ができるか。私たちの住む国,地域をどうしていくかという,それぞれの主体にとって人ごとではない,自らの問題なのです。私ども関東経済産業局としても,一緒に考え,取り組んでいきたいと思います。

�Newsletter No.7(2010. 2 . 15)

2006.11.1

創刊号

千葉大学産学連携・知的財産機構

Organization for Academic-Industrial Collaboration and Intellectual Property

大 学 の 役 割� 経済産業省関東経済産業局 地域経済部長 吉澤 雅隆 

2010. 2 .15

第7号

Page 2: 大学の役割 - 千葉大 学術研究推進機構 ... · 大学の役割 ... 大きく異なり,長期的な展望を元に,研究開発を進め ... ます。活力ある大学こそが,革新的なイノベーションを,

 �着任のご挨拶

マルチキャリアセンター       (特任教授) 藤井  知 

皆さん,はじめまして。平成21年度11月下旬より,産学連携・知的財産機構マルチキャリアセンターに勤務しております。これまでの経歴と大学に転職した経緯を述べることで,着任の挨拶と致します。私は,光ファイバを使った光通信や,携帯電話をはじめとする無線通信分野における超高速通信を支える基幹の電子部品(GaAsトランジスタや,ダイヤモンドを使ったSAWフィルタ)の事業化を目指した研究開発を,大学勤務直前まで行っておりました。1990年代後半,世界で初めてダイヤモンド薄膜を使った電子部品の開発と事業化に成功し,2000年初めには,その部品の粗利益率が50%を超え,事業規模は約11億円/年となりました。しかしながら,その後の ITバブル,記憶に新しいリーマンショックによる景気後退と,時価会計を中心とした企業経営により,心血を注いだ研究は,いとも簡単に整理されてしまいました。私が勤めいた会社だけに留まらず,事業整理や会社統合など事例が,多くの業界・企業で起こっています。過去輝かしい実績を持っている日本のメーカでさえ,グローバル競争の渦中にある今,短期的な利益追求しか追えず,現行製品の売上やシェアを守ることのみを余儀なくされております。10,20年前とは大きく異なり,長期的な展望を元に,研究開発を進めることが大変苦しくなっています。そればかりか, ’08

年末と比較し,赤字決算が続き,従業員の生活レベルが維持出来ない会社さえ出てきております。一方,世界や,日本が置かれている状況を考えると,直近の世界経済見通しは改善してきているものの,経済や社会の長期的な見通しは,決して明るいとは言えません。例えば,世界の人口が90億人を超えようとしている中,環境,食糧,エネルギー,医療分野にて,待ったなしの,差し迫った事態となっており,その解決策として,革新的なイノベーションと,社会システムの変革が求められています。日本に限ると,少子高齢化や,日本政府借金が1000兆円を超える状況となっています。さらに,社会ニーズの高い環境やエネルギーなどの技術開発において企業利益へと結びつけることが難しいことから,企業が中心となって進める技術開発活動だけでは,社会全体を最適化させる効果的な解が見出せておりません。この経済状況や社会的な閉塞感を打破するには,大学が従来の殻を破り,研究開発と人材育成を両輪で進めるしかないと考えます。若手は,もちろん,幅広い世代に渡り,大きく門戸を開き,人材育成や再教育を行うこと,利害関係を超えて,これまで培われた企業の優れた技術資産に,大学の知識や知恵を加えていく,そんな理想的な大学の姿を描いております。活力ある大学こそが,革新的なイノベーションを,地域から,起こせると信じています。野波機構長の産学連携と人材育成にかける熱い思いに心を打たれると,同時に,前述の思いから,大学へ転身する決心を致しました。誠に微力ではありますが,全身全霊を打ち込み,職務に邁進したい所存でございます。ただ,私,一人では何も出来ないことも,十分,承知しております。野波機構長をはじめとする産学連携・知的財産機構の方々,それ以外の大学教職員の方々など,多くの皆様方に,ご教示やご鞭撻を仰ぎたいと思います。浅学菲才の身でございますが,何とぞ,宜

しくお願いします。

 本プログラムはイノベ-ション創出の中核となる若手研究人材(千葉大学博士後期課程の学生や博士号取得後5年間程度までの千葉大学の研究者)が,狭い学問分野の専門能力だけでなく,国際的な幅広い視野や産業界などの実社会のニ-ズを踏まえた発想を身に付けるシステムです。2009年度に文部科学省の「イノベ-ション創出若手研究人材養成プログラム」に採択されました。

 高い研究開発能力と深い専門性を身に付けた「千葉大学博士後期課程の学生」や「博士号取得後5年間程度までの本学の研究者」に対して,「研究成果をもとに新製品を創出する技術完成力」,「新製品をもとに事業を発展させる技術経営力」,および「グロ-バル市場で勝ち抜くための国際競争力」を合わせ持つマルチキャリアドクタ-を養成します。

� Newsletter No.7(2010. 2 . 15)

▲ ▲着 任 挨 拶

▲ ▲

●●先進的マルチキャリア博士人材養成プログラム●●

Page 3: 大学の役割 - 千葉大 学術研究推進機構 ... · 大学の役割 ... 大きく異なり,長期的な展望を元に,研究開発を進め ... ます。活力ある大学こそが,革新的なイノベーションを,

�Newsletter No.7(2010. 2 . 15)

技術をマネジメントする能力の向上

大学発ベンチャーの経営の健全化

国際競争力の強化(システム売り込み・標準化の獲得)

基礎研究から製品化研究開発までの幅広い経験

博士修了者やポスドクの能力のさらなる発揮

特定分野に限らず他分野へも積極的対処

専門分野以外の幅広い分野への適応

専門知識に加えて経営系の知識修得と実践

英語による発表やディスカッション等の経験

グローバルな知識の習得と活用

我が国大学院の理工系博士への要求

民間企業の要求

国レベルでの要求

技術完成力

技術経営力

国際競争力

求められる能力等

基礎研究から製品化まで行え、マネジメント能力に優れ、

幅広い視野を持ったグローバル人材として

産業界での大活躍が期待される

マルチキャリアドクター

技術経営力新製品創出

技術完成力

国際競争力グローバル市場

事業発展

技術完成力

国際競争力グローバル市場

事業発展

高い研究開発能力と深い専門性を持った博士

Page 4: 大学の役割 - 千葉大 学術研究推進機構 ... · 大学の役割 ... 大きく異なり,長期的な展望を元に,研究開発を進め ... ます。活力ある大学こそが,革新的なイノベーションを,

 技術完成力,技術経営力,国際競争力の各プログラムは講義とインタ-ンシップで構成されています。講義による基礎知識の修得に加え,合計 約半年間のインタ-ンシップを通じて,現場における実践力を養います(講義+インタ-ンシップコ-ス)

 加えて,2010年4月には講義のみのコ-スも開設する予定です。 2009年10月からスタ-トしている(講義+インタ-ンシップ)コ-スのカリキュラム例を示します。

� Newsletter No.7(2010. 2 . 15)2009 10 1112

1 8

2010 4

21 9 28

OB ( )

1~2

プログラム概要(技術経営力)

プログラム概要(国際競争力)

Page 5: 大学の役割 - 千葉大 学術研究推進機構 ... · 大学の役割 ... 大きく異なり,長期的な展望を元に,研究開発を進め ... ます。活力ある大学こそが,革新的なイノベーションを,

 2009年10月,第1期生12名を対象に本プログラムがスタ-トし,11月末に技術完成力の講義が終了しました。12月からは,技術経営力講義の受講を開始したグル-プと,インタ-ンシップを開始したグル-プに分かれました。1月8日の時点で,3名が企業にて技術完成力インタ-ンシップを実施しています。   また,2010年4月にスタ-トする第2期生の募集を開始しました。さらに,大学院博士後期課程の共通科目として単位認定する動きも出てくる中,本人材養成システムの定着および発展を目指しています。

千葉大学 先進的マルチキャリア博士人材養成プログラム

オープンニングセレモニー

 平成21年9月28日(月)に本学自然科学系総合研究棟において「先進的マルチキャリア博士人材養成プログラム オープンニングセレモニー」が開催しました。 セレモニーでは,齋藤学長,文部科学省科学技術・学術政策局の川端基盤政策課長の挨拶後,このイノベーション創出若手研究人材プログラムを昨年より行っている東京工業大学の古田特任教授および千葉大学OBでもある出光興産(株)大宮代表取締役副社長による特別講演が行われ,さらにプログラム履修者を代表してDwi Pebriantiさんが抱負を述べました。

【プログラム】1.日 時 平成21年9月28日(月)15:00~17:002.場 所 千葉大学 自然科学系総合研究棟1 

大会議室3.次 第 ○主催者挨拶:千葉大学長 齋藤  康 ○挨   拶: 文部科学省科学技術・学術政策局基盤

政策課長 川端 和明 氏 ○特別講演  (1) 先行大学事例紹介    東京工業大学・プロダクティブリーダー

養成コーディネーター    特任教授 古田 健二 氏     「成功例/失敗例紹介,履修者・教員・

養成関係者へ望むこと」  (2) 産業界が求める博士人材像について    出光興産 (株 )    代表取締役副社長 大宮 秀一 氏

(千葉大学経済人倶楽部「絆」会員)     「グローバルな競争を勝ち抜くことが

できる自然科学系博士人材とは」4.プログラム概要説明   千葉大学 マルチキャリアセンター長 

野波 健蔵(千葉大学 理事)5.履修生代表挨拶: 大学院工学研究科 人工システム

科学専攻(機械系)                Dwi Pebrianti

交 流 会:けやき会館1階 コルザ 17:30~18:50

�Newsletter No.7(2010. 2 . 15)

Page 6: 大学の役割 - 千葉大 学術研究推進機構 ... · 大学の役割 ... 大きく異なり,長期的な展望を元に,研究開発を進め ... ます。活力ある大学こそが,革新的なイノベーションを,

第8回産学官連携推進会議(京都)

 平成21年6月20日(土)・21日(日)に国立京都国際会館において「第8回産学官連携推進会議」(参加者総数:約4,500名)が開催され,千葉大学も参加しました。本会議は,内閣府,総務省,文部科学省,経済産業省等の主催で,産学官連携の推進を担う第一線のリーダーや実務経験者等が一堂に会し,具体的な課題について,研究協議,情報交換,対話・交流・展示等の機会を設けることにより,産学官連携の新たな展開を図ることを趣旨として毎年開催されるもので,本学の参加は今回で6回目となります。 本会議は,特別講演会・分科会等が行われる「会議の部」と,各団体(企業・大学・研究機関・自治体等)の研究成果等を発表する「展示の部」で構成され,「会議の部」へは野波理事(産学連携・知的財産機構長)を始め本学関係職員が参加し,「展示の部」へは本学研究シーズ等の展示を行いました。 本学展示ブースには300名を超える来場者が訪れ,研究内容についての質問や,担当教員等との意見交換が活発に行われました。

【本学展示内容】○ 産学連携・知的財産機構の活動 (産学連携・知的財産機構)○ 先進的マルチキャリア博士人材養成プログラム (産学連携・知的財産機構)

○ ニッケル触媒による機能性分子の創成と触媒の磁気分離(理学研究科 荒井 孝義 准教授)

○ 低分子機能性RNA を指標とした尿路上皮癌の早期診断法の開発研究(医学研究院 関 直彦 准教授)

○ 小動物用SPECT/CTを利用した分子イメージングプローブの開発(薬学研究院 荒野 泰 教授)

○ 分子認識型ナノカプセルの開発 (園芸学研究科 西田 芳弘 教授)○ カラー電子ペーパーの研究開発 (融合科学研究科 北村 孝司 教授) など

イノベーション・ジャパン2009― 大学見本市 ―

 平成21年9月16日(水)~18日(金)に東京・有楽町の東京国際フォーラムにおいて「イノベーション・ジャパン2009-大学見本市」(来場者総数: 約4万1千名)が開催され,千葉大学も展示会に出展しました。 本イベントは,独立行政法人科学技術振興機構及び独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構の主催で,国内大学の最先端技術シーズと産業界のマッチングを促進するイベントとして毎年開催されるもので,今回で6回目となります。展示会場は大学発の最先端技術を分野等別に展示する「大学・TLOゾーン」を柱に,「大 学発ベンチャーゾーン」,「大学発ベンチャー支援ゾーン」及び「研究機関ゾーン」で構成され,本学は「大学・TLOゾーン」に「産学連携・知的財産機構の活動紹介」,研究シーズの紹介として「c-myc 遺伝子抑制因子を指標にしたがん治療法・診断法の開発(大学院医学研究院 松下一之 講師)」,「スマート機械材料システムの提案と応用展開(大学院工学研究科 浅沼博 教授)」及び「近赤外蛍光型医療用組織マーカー(大学院工学研究科 豊田太郎 助教)」を展示しました。 本学展示ブースには多数の来場者が訪れ,産学連携活動や研究シーズについての質問や,担当教職員との意見交換が活発に行われました。

� Newsletter No.7(2010. 2 . 15)

産学連携統括推進部の活動

千葉大学展示ブース風景

� 産学連携統括推進部副部長(融合科学研究科 准教授) 高原 茂 

Page 7: 大学の役割 - 千葉大 学術研究推進機構 ... · 大学の役割 ... 大きく異なり,長期的な展望を元に,研究開発を進め ... ます。活力ある大学こそが,革新的なイノベーションを,

千葉大学オープン・リサーチ 2009

 平成21年10月24日(土)に千葉大学 けやき会館(西千葉キャンパス)において「千葉大学 オープン・リサーチ 2009」を開催しました。 オープン・リサーチは,本学で創出された学術研究成果や事業活動等を広く企業や地域社会に公開し,産学官出会いの機会を設け,本学研究シーズ・成果を活かした更なる新技術の開発や新規事業の育成及びイノベーション創成を図ることを目的に,1999年に第1回を開催して以来,毎年開催しており,今回で11回目となりました。なお,本年は千葉大学の創立60周年でありオープン・リサーチもその記念事業の一環として「見せるぞ底力!~創立60周年を迎えて~」をテーマに,研究シーズ展示会,特別講演会及び産学官交流会を実施しました(プログラム詳細は下記参照)。 当日は,産業界,官界及び大学関係から約250名の参加者があり,今後,技術移転や共同研究等につながることが期待できるイベントとして成功裏に終えることができました。

【千葉大学オープン・リサーチ2009プログラム】○研究シーズ展示会 10:30~14:00   学内外からのパネル展示やデモンストレーションなどによる研究紹介○特別講演会 14:15~17:10◆主催者挨拶: 千葉大学長 齋藤 康◆来 賓 挨 拶: 千葉県知事 森田 健作 氏

〔代理(代読) 千葉県商工労働部長 髙橋 渡 氏〕◆特 別 講 演:・「今後の科学技術と産学連携のあり方について」  内閣府総合科学技術会議議員(常勤),知的財産戦略本部員

(元国立大学法人東京工業大学長,      元国立大学協会会長) 相澤 益男 氏

・「地域経済発展のための産学官連携」経済産業省 関東経済産業局       

地域経済部長 吉澤 雅隆 氏・「不況にも動じない人材の育成とは」

株式会社帆風 代表取締役,       千葉大学経済人倶楽部「絆」会長 犬養 俊輔 氏

◇総合司会:NHK千葉放送局 竹山理恵子 キャスター○産学官交流会 17:25~18:45

 研究シーズ展示会への出展の中で,特に優れていると認められた以下の11件(最優秀賞1件,優秀賞10件)が,学長賞に選ばれました。学長賞・最優秀賞 星野 勝義(大学院融合科学研究科)学長賞・優秀賞 五十嵐 辰男(フロンティアメディカル工学研究開発センター),大鳥 精司(大学院医学研究院),高山 廣光(大学院薬学研究院),宮崎 良文(環境健康フィールド科学センター),野波 健蔵(大学院工学研究科), 鷹野 敏明(大学院工学研究科),加藤 顕(大学院園芸学研究科),泉 康雄(大学院理学研究科),中村 雅一(大学院工学研究科),高原 茂(大学院融合科学研究科)(受賞題目などについては産学連携・知的財産機構のホームページhttp://www.ccr.chiba-u.jp/をご覧ください)

�Newsletter No.7(2010. 2 . 15)

産学連携・知的財産機構展示ブース風景

研究シーズ展示会

特別講演会

Page 8: 大学の役割 - 千葉大 学術研究推進機構 ... · 大学の役割 ... 大きく異なり,長期的な展望を元に,研究開発を進め ... ます。活力ある大学こそが,革新的なイノベーションを,

千葉大学産学官連携イノベーションフォーラム― ライフサイエンスにおける

新たなパートナーシップ形成に向けて ―

平成21年9月30日(水)に千葉大学 医学部附属病院 第一講堂(亥鼻キャンパス)において,「平成21年度第1回千葉大学産学官連携イノベーションフォーラム」を開催しました。本フォーラムは,地域産業界・地域経済界・地方自治体の技術者・研究者の方々と本学教員等とが技術交流・研究交流を通じてお互いに密接な連携を構築する場を設け,地域社会の活性化促進に貢献することを目的として年数回開催しております。今年度は本学各キャンパスの特性を活かした内容で実施することとしており,今回は「ライフサイエンスにおける新たなパートナーシップ形成に向けて」と題し,医・薬・バイオ分野をメインに亥鼻キャンパスを会場として開催しました(プログラム詳細は下記参照)。 当日は,産業界,官界及び大学関係から85名の参加者があり,また,フォーラム終了後に行いました交流会にも多数の方にご参加いただき,所期の目的を達成し成功裏に終えることができました。

【プ�ログラム】

Ⅰ 主催者挨拶 千葉大学長 齋藤 康Ⅱ 産学官連携の取り組み○ 学の立場から:千葉大学 産学連携・知的財産機構 特任教授 井上 里志

○ 官の立場から:(独)科学技術振興機構 JST イノベーションサテライト茨城 館長 後藤 勝年 氏

  (財)千葉県産業振興センター 科学技術コーディネーター 富岡 登 氏

Ⅲ 産学官連携の取り組/特別講演(産の立場から)  「アカデミアとベンチャーの偶然と必然」   (株)DNAチップ研究所 代表取締役社長/

大阪大学名誉教授 松原 謙一 氏Ⅳ 千葉大発ベンチャーの紹介  「初期脳梗塞(隠れ脳梗塞)のバイオマーカーの開発」   (株)アミンファーマ研究所 代表取締役社長/

千葉大学名誉教授 五十嵐 一衛 氏Ⅴ 千葉大学内の研究シーズ紹介  「ビタミンE 添加超高分子量ポリエチレンの

開発について」千葉大学 大学院医学研究院 講師 鈴木 昌彦

  「千葉県産バカ貝由来コンドロイチン硫酸E の免疫賦活活性」

千葉大学 大学院薬学研究院 教授 戸井田 敏彦  「消化器癌に対するペプチド抗体と分子治療開発」

千葉大学 大学院医学研究院 教授 松原 久裕Ⅵ 閉会挨拶      千葉大学 産学連携・知的財産機構

副機構長 北村 孝司Ⅶ 交 流 会

� Newsletter No.7(2010. 2 . 15)

亥鼻地区産学連携推進部の活動 � 亥鼻地区産学連携推進部副部長(医学研究院 准教授) 関  直彦 

第1回フォーラム会場風景

Page 9: 大学の役割 - 千葉大 学術研究推進機構 ... · 大学の役割 ... 大きく異なり,長期的な展望を元に,研究開発を進め ... ます。活力ある大学こそが,革新的なイノベーションを,

千葉大学産学官連携イノベーションフォーラム― 食と緑の研究シーズ発表会 ―

 平成21年11月20日(金)に東葛テクノプラザ(柏市)において第3回千葉大学産学官連携イノベーションフォーラムを以下の内容で開催しました。● 講演(産学官連携に向けたシーズの発信) ・ 野菜の刈り取り再生栽培-手賀沼プロジェクトから産学協同開発への発展へ-(千葉大学大学院園芸学研究科教授 篠原 温)

 ・ 好熱菌発酵産物を用いた環境配慮型の農業・畜産業への展開とその分子メカニズム(千葉大学大学院園芸学研究科准教授 児玉 浩明)

 ・ 生理的快適性評価法の開発-自然セラピーを例として-   (千葉大学環境健康フィールド科学センター 

教授 宮崎 良文)● ポスター展示(研究シーズ紹介)<千葉大学大学院園芸学研究科> ・ 近藤 悟:果実の着色促進(アントシアニン生合成)への植物成長調節物質の利用

 ・ 三位正洋:アカシアを利用した持続的熱帯林業の構築と熱帯林再生

 ・ 菊池真司:次世代バイオ燃料植物ジャトロファにおける遺伝育種研究への基盤整備と展開

 ・ 石神靖弘:太陽光利用型植物工場における高度環境制御技術の開発

 ・ 小川幸春:スタンドアローンカルチベーションによる壁面緑化法の開発

 ・宇佐見俊行:光のちからで植物の病害を防ぐ ・ 坂本一憲・小島倫子:マメ科牧草と植物共生菌を用いた房総半島における山砂採取跡地の植生回復

 ・園田雅俊:高温でも実をつけるトマトの開発に向けて ・江頭祐嘉合:未利用資源を活用した食品素材の開発 ・高橋輝昌:剪定枝葉の土壌改良資材としての活用 ・ 加藤 顕:航空機レーザー測量を用いた森林資源,資産価値把握

 ・齋藤 修:農商工連携とフードシステムの革新<千葉大学環境健康フィールド科学センター> ・ 渡辺 均:花卉生産における高収益性を目指したビジネスモデル

 ・ 北条雅章:閉鎖型苗生産システムを利用した野菜の接ぎ木苗生産

 ・ 徳山郁夫:フィールド実験における生理的快適性評価法 

-主観評価と生理応答の対応について- ・李 宙営:木造住宅の生理的快適性増進効果 ・ 朴 範鎭:病院屋上森林環境が要介護高齢者に及ぼす生理的リラックス効果

 ・ 宮崎良文,朴 範鎭,李 宙営:室内ならびにフィール実験における生理的快適性評価システムの開発

 ・ 朴 範鎭,李 宙営,宮崎良文:森林浴の生理的快適性増進効果-全国35ヶ所のフィールド実験から-

<千葉県農林総合研究センター> ・ 野菜研究室と砂地野菜研究室共同:低濃度エタノールを用いた新規土壌消毒技術

 ・果樹研究室:ナシ用カラーチャートの開発 ・ 砂地野菜研究室:ピーマン促成栽培における高効率ヒートポンプ利用技術の開発

 来場者は出展者を含めて91名(内訳:産業界関係者41名,官界関係者21名,大学関係者29名)で,会場では発表者との質疑応答が活発に行われ,食と緑に対する関心の高さが伺えました。 

アグリビジネス創出フェア 2009

 平成21年11月25日(水)~27日(金)に幕張メッセにおいて「アグリビジネス創出フェア2009」(来場者総数約2万3千人:主催者公表)が開催され,千葉大学も「生産技術ゾーン」に,産学連携・知的財産機構の活動紹介等と食と緑をキーワードにした研究シーズを13件展示しました(園芸学研究科5件,環境健康フィールド科学センター6件,医学研究院2件)。本学展示ブースには多数の来場者が訪れ,産学連携活動や研究シーズについての質問や,担当教職員との意見交換が活発に行われました。

�Newsletter No.7(2010. 2 . 15)

松戸・柏の葉地区産学連携推進部の活動� 松戸・柏の葉地区産学連携推進部長(園芸学研究科�教授) 雨宮 良幹 

千葉大学の展示風景

Page 10: 大学の役割 - 千葉大 学術研究推進機構 ... · 大学の役割 ... 大きく異なり,長期的な展望を元に,研究開発を進め ... ます。活力ある大学こそが,革新的なイノベーションを,

技術移転推進部(TLO部)では,本学の技術シー

ズを企業などにライセンシングすることを主目的に,

研究室訪問を通したシーズ発掘や,出願された特許に

基づくマーケティング,その他の活動を行っています。

今回は,研究室訪問,知財セミナー,21年度特許出

願件数の中間報告,および,TLO会員増に向けた活

動について報告します。

1.研究室訪問 教員の研究シーズ発掘を目的に研究室訪問を行っています。原則としてマネージャーとアソシエイトがペアになり研究室を訪ねて,研究進展状況,先生方の研究成果,研究に関連する市場状況などに関する意見交換を行なっています。前回のニュースレター6号本欄に掲載以降,さらに,以下の研究室訪問を実施しました。�研究室訪問先

〔工学研究科〕近藤圭一郎研究室,佐藤之彦研究室,下馬場朋禄研究室,伊藤智義研究室,石谷善博研究室,岩坂正和研究室,串田正人研究室,佐藤之彦研究室,坪田健一研究室,中村雅一研究室,中田裕之研究室,兪文偉研究室,太田匡則研究室,日比野治雄研究室,酒井正俊研究室,梅野太輔研究室,腰越秀之研究室,塩田茂雄研究室〔融合科学研究科〕高原茂研究室,溝上陽子研究室,中口俊哉研究室,小室信喜研究室,大澤範高研究室,青木直和研究室,坂本一之研究室,中村一希研究室(小林範久研究室),柴史之研究室,宮川信一研究室,宮本克彦研究室,解良聡研究室〔理学研究科〕吉田和弘研究室〔園芸学研究科〕加藤顕研究室〔フロンティアメディカル工学研究開発センター〕大須賀敏明研究室〔総合メディア基盤センター〕全へい東研究室

2�.知財セミナーの実施 昨年度に引き続き,今年度も,発明提案の活性化と,発明をより優れた特許出願につなげるため下表に示す通り3回の知財セミナーを企画し,実施しています。

回 開催場所 期 日 対象分野1 西 千 葉 2009. 10. 14 理 工 学2 松 戸 2010. 1 園 芸 学3 西 千 葉 2010. 2. 4 理 工 学

3.特許の出願・権利化状況 本年4月から11月末までの出願件数を下表に示します。

単願 共願 計国 内 出 願 31 27 58外 国 出 願 6 7 13

 また,同じく本年4月から11月末の期間に権利化できた特許件数は17件でした。

4.�千葉大学技術交流会(TLO会員制度)の増員の活動

 現在千葉大TLOには43の団体ないし個人が会員として登録されています。この数字は年々増加してはいますが,さらに拡大することで,大学における広範な研究シーズと多様な企業ニーズとのスムーズなマッチングを実現していくことが望まれます。 機構としては今後大幅な会員増をめざして方策を検討してきました。そして,具体的にまず,会員への新たなサービスとして千葉大TLO会員報(月報)を作成し,郵送にて送付することとしました。このように会員サービスの一層の充実を図った上で,入会の勧誘を積極的に進めることといたしました。このために入会案内用のパンフレットも新規に作成いたしました。これらの準備のもと,今後は学内の共同研究先企業や千葉県内の企業をはじめとして,多くの企業に千葉大TLOへの入会を勧めてまいります。

�0 Newsletter No.7(2010. 2 . 15)

技術移転推進部の活動 � 技術移転推進協力員                        

フロンティアメディカル工学研究開発センター 教授 羽石 秀昭 

TLO会員制度のパンフレット(表紙)

紙ベースで送付しているTLO会員報(月報)

Page 11: 大学の役割 - 千葉大 学術研究推進機構 ... · 大学の役割 ... 大きく異なり,長期的な展望を元に,研究開発を進め ... ます。活力ある大学こそが,革新的なイノベーションを,

昨年12月の5日(土),12日(土),そして22日(火)に,

教員版:ベンチャービジネス部門,教員版:自然科学先

端研究部門,学生版それぞれ1日をかけて,書類審査を

通過した応募者が発表審査を受け,受賞者が決まりまし

た。なのはなコンペ(教員版)の受賞者は,今後,双葉

電子記念財団の理事会で正式承認されます。4月に千葉

大学で授賞式が開かれます。なお,今回から,なのはな

コンペ(学生版)に,審査委員でいらっしゃる日本イン

サイトテクノロジー(株)の社長の池和田暁氏と(株)光

と風の研究所の社長の堀内道夫氏から,それぞれ“IT

賞”と“環境賞”という特別賞を設置していただきました。

受賞者には10万円の副賞が贈呈されることになりました。

なのはなコンペ(教員版)

1)コンペの目的 

 研究成果を起業して製品化したい,社会に役立てたい

という希望をもっている千葉大学教員を支援しようとす

るのが,このコンペティションの目的です。「なのはな

コンペ」を受賞した教員が,起業した例がこれまでに3

件あります。

2)研究経費 

 千葉県茂原市に本社を置く“双葉電子工業株式会社”

の創業者でいらっしゃる故衛藤五郎氏と細矢礼二氏が設

立した“双葉電子記念財団”が,千葉大学の「なのはな

コンペ」(教員版:ベンチャービジネス部門,教員版:

自然科学先端研究部門)に対して,1500万円の研究経費

を助成しています。また,千葉銀行が「なのはなコンペ」

(教員版:ベンチャービジネス部門)の受賞の優秀研究

者に300万円を支援しています。このような大きな研究

経費をいただいている意図を十分に汲んで,このコンペ

の審査を運営するのがVBLの役割です。

3)審査方法 

 「なのはなコンペ」の審査方法を教員版:ベンチャー

ビジネス部門を例にとって説明します。9月になると,

学内のさまざまなところで「なのはなコンペ」のポスター

が掲載されます。同時に,大学のホームページやちらし

などを通して学内に募集の案内が周知徹底されます。11

月上旬には,A4,A3版それぞれ1枚からなる申請書の提出が締切となります。即日,書類が整理され,書類

審査に入ります。書類審査は,学内を中心とした9名の

審査委員によって行われます。審査委員は,広範な学問

分野にわたっていて,ベンチャー・マインドを理解して

いる方々です。この書類審査の結果,上位10名が発表審

査に進みます。

 発表審査は12月のある土曜日に1日をかけて実施しま

す。発表審査委員は学内外の審査委員の8名とVBL施設長の計9名からなります。学外の審査委員は産官学の

ベンチャービジネスの関係者です。一人12分の発表の

後,8分質疑討論がなされます。審査の結果が評価基準

に従って点数化されます。発表審査委員全員による判定

会議を開き,書類と発表審査の合計点に基づいて,議論

のうえ,受賞者を内定します。

 このように公平かつ厳正な審査システムをもつ「なの

はなコンペ」は学内そして学外の多くの方々のご協力の

おかげで成立しています。発表審査委員から「千葉大学

の活力に,短時間かつ直接に触れることができ,ワクワ

クする時間を過ごせました」という感想をいただいてい

ます。

 引続き,応募の教員,学内の審査委員の先生方,そし

て学外の審査委員の皆さんのご理解とご協力をいただい

て,実りあるコンペにしたいと思います。

「なのはなコンペ2010」(教員版)の応募および受賞件数

応募件数 受賞者数

ベンチャービジネス部門(100~300万円 /件) 19件 5件

自然科学先端研究部門(50~100万円 /件) 35件 6件

��Newsletter No.7(2010. 2 . 15)

ベンチャービジネスラボラトリー(VBL)の活動 � VBL施設長 斎藤 恭一 

 “なのはなコンペ2010”受賞者が決まりました!

Page 12: 大学の役割 - 千葉大 学術研究推進機構 ... · 大学の役割 ... 大きく異なり,長期的な展望を元に,研究開発を進め ... ます。活力ある大学こそが,革新的なイノベーションを,

なのはなコンペ(学生版)

 千葉大学の大学院生(入学予定者を含む)を対象にして,優秀なアイデア,研究計画に対して研究経費を助成するコンペティションを毎年実施しています。千葉県の県の花である“菜の花”を冠して「なのはなコンペ」(学

生版)という名前です。書類審査と発表審査を経て,毎年5~6名を選考しています。「なのはなコンペ2010」では,応募件数20件の中から,つぎの6件が採択されました。

受賞者 所 属(2010 年4月) 研  究  課  題

八十歩直子 医学薬学府創薬生命科学専攻

がん細胞選択毒性を有するコルヒチン系抗腫瘍薬の創製研究

高見 行洋 工学研究科共生応用化学専攻

遷移金属フリーの固体塩基触媒を用いた固相酸化反応による高付加価値生成物の合成プロセスの構築

木村 拓馬 工学研究科共生応用化学専攻

光照射波長の変化による全自動合成装置を志向した糖鎖合成反応の開拓

石原  量 工学研究科共生応用化学専攻

都市鉱山からのレアメタル高速回収のための抽出試薬担持多孔性シートの開発

岡  和輝 理学研究科基盤理学専攻

代替白金金属粒子界面の化学的制御により白金比 10 倍活性向上する燃料電池カソード触媒の創製

田代 洋平 工学研究科共生応用化学専攻 センサバクテリアの高速開発法

 なお,IT賞は,工学研究科建築・都市科学専攻の岩井玲子さんの「非整数次フーリエ変換を適用した指紋認証アルゴリズムによる指紋検出照合装置の研究開発」に,

環境賞は,上の表の高見行洋さんに贈られることが決まりました。

以上です

�� Newsletter No.7(2010. 2 . 15)

千葉大学産学連携・知的財産機構ニューズレターVol.4 No.2 通巻第7号平成22年2月15日発行

発行者:千葉大学産学連携・知的財産機構広報委員会    〠263-8522 千葉市稲毛区弥生町1-33

    Tel. 043-290-2111,3565    Fax. 043-290-3519    URL http://www.ccr.chiba-u.jp/    E-mail [email protected]