発達障害の理解と支援 - Cabinet Office · 親のしつけが悪い? 違います。...

Preview:

Citation preview

発達障害の理解と支援

宇都宮大学教育学部特別支援教育教授 Ph.D.

特別支援教育SV

自閉症スペクトラム支援士Expert

梅永雄二

変わった子ども? 先生の言うことがわからない!

いつも怒られているばかり!

集中力がない!

友達と一緒に遊べない!

すぐにきれる!

片付けられない!

順番が守れない!

2

親のしつけが悪い?

違います。

これには原因があるのです。

その原因とは

→神経心理学的要因、すなわち脳機能傷害により発達障害を生じていると考えられるのです。

3

ベン、やめなさい!

やめなさいって、何を?

足を床から離して、椅子によりかかっていたこと?

実際は

→口にペンを入れていたこと。 女の子に急に関係のない話を持ちかけて

→あっちへ行って!

4

お尻につける?

先生と話をするときは必ず、「はい、リーバー先生」とお尻につけなさい。

「お尻につける」ってどういう意味だろう。

どうして怒られているんだろう?

「かんにんぶくろ」って?

学校なんて、大大大っきらいだ!

5

発達障害とは

広義の発達障害

→発達期に障害を持つ者

→古い文献では脳性マヒ、視覚障害、聴覚障害を含んでいるものもある

狭義の発達障害

→自閉症、アスペルガー症候群、LD、ADHDおよびその周辺の障害

発達障害者支援法では狭義の発達障害を対象

6

発達障害を知る前に

7

知的障害とは

精神薄弱、知恵遅れ、精神(発達)遅滞

知的水準が健常者に比べて2標準偏差以下の者

知能検査によるIQ値が70未満

療育手帳所持者

8

自閉症の特徴1

言葉が出ない、出てもオーム返しとなる

ごっこ遊びがない

友達に興味がない

注意の持続が難しい

名前を呼ばれても返事をせず、他人に無関心

激しいカンシャクを起こす

9

自閉症の特徴2

アイコンタクトが少ないか全くない

手をひらひらさせたり、身体を前後に揺すったりする行動がある

一つのこと(扇風機など)に固執する

変化を嫌う

ある特定の音や臭いに敏感

10

アスペルガー症候群の特徴1

友達がいない

友達が欲しいと思わない

友達を欲しくてもその作り方がわからない

表情のような社会的コミュニケーションを読むことができない

自分と異なる他人の感情を読むことができない

11

アスペルガーの特徴2

興味の範囲が狭い(時刻表、電話帳のように)

運動神経が鈍い、不器用

変化に弱い

機械的、ロボット的なしゃべり方をする

人の気持ちを無視してしゃべり続ける

12

PDDと自閉症スペクトラム

PDDとはPervasive Developmental Disorder(広汎性発達障害)のことで、その下位分類に自閉症やアスペルガー症候群などが位置する

自閉症スペクトラム(ASD)とは知的障害を伴う自閉症から高機能自閉症・アスペルガー症候群まですべてつながっているという考え

DSM-ⅤではPDD,自閉症、アスペルガー症候群、特定不能の自閉症が消滅ASD(Autistic Spectrum Disorder)で統一

13

LD(学習障害)とは

読みの障害

→文字の区別ができない、文字を音声に結びつけられない。 書きの障害

→うまく綴れない、鏡文字になる、句読点がうてない、助詞のつけ方がわからない

計算の障害

→繰り上がりがわからない、数字や図形を正しく写せない 附随する障害

→視空間認知の障害

14

ADHD(注意欠陥多動性障害)

不注意

→言われたことを聞いていない、課題を最後までやり遂げられない、毎日の活動や約束を忘れる

多動

→じっとしていられない、コートを着る前にドアを出てしまう、落ち着かないという気持ちがある

衝動性

→順番を待つことができない、質問が終わる前に答えてしまう、他人を妨害し邪魔をする

15

発達障害児の課題 子どものときの問題

虐待

いじめ

孤立

不登校

ひきこもり

非行

16

発達障害者の課題 大人になると

ニート

フリーター

職場でのいじめ

うつ

休職

離職・退職

子どもへの虐待

犯罪

ホームレス

17

ALAAHFAとは

Adults with LD, ADHD, Asperger syndrome and High Functioning Autism

学習障害、注意欠陥多動性障害、アスペルガー症候群、高機能自閉症の成人

18

ALAAHFAの人の特性と関連する就労上の課題

19

読みと書きができない場合(多くのLDの人)

マニュアルが読めない

メモが取れない

報告書が書けない

情報を正確に捉えられない

20

注意に問題がある場合(多くのADHDの人)

指示が頭に入らない

やることを忘れてしまう

仕事に手をつけないままにしてしまう

問題を要約できない

21

コミュニケーションに問題がある場合(多くのアスペルガー症候群・高機能自閉症の人)

相手にどう伝えたらいいのかわからない

不必要なことをしゃべってしまう

失敗してもその理由がわからない

特定のことにこだわりが強い

社会性(対人関係)がうまくもてない

22

ALAAHFAの人の退職理由

23

仕事がつまらなかった 人間関係で問題を抱えた 雇用主に自分の障害を理解してもらえなかった 普通の人の感覚を身につけさせようとされ精神的なダメージを受けた 「障害など関係ない、努力してなおせ」と言われ重圧になった 会社でいじめを受けた 会社の業務、人間関係が出来なかった 仕事をするのが遅いので向かなかった 自分に合わない仕事だった 仕事の技術面で追いつかなかった 人より時間がかかった 簡単な作業が出来なかった 期待に応えようと頑張ったが疲れた 人間関係のややこしさ、指示の多さにパニックを引き起こした 自分の能力では手に負えなかった 自分のペースで働けなかった リストラにあった ストレスと体力的に続かなかった 仕事のレベルアップができなかった いじめにあったり、無視されたりした 24

学校教育が就労にどのように影響するか

25

学校での教育

ゆがんだ教育が与えた青年期

いい教育が与えた青年期

26

【DVD】青年期、成人期の発達障害者支援1発達障害を知っていますか?

自閉症およびアスペルガー症候群、LD、ADHD

星屑倶楽部(中島映像教材出版)

監修 梅永雄二 医学解説 内山登紀夫

27

こんなサポートがあれば! 10の提案1.発達障害本人に合った学習の方法を考慮する2.教師に対して発達障害児の理解・啓発をすすめる3.マイナス面を見ずにプラス面を評価する4.発達障害をオープンにする5.周囲への発達障害に対する理解をすすめる6.相談できる場所を作る7.保護者を含めた相談を実施する8.特別支援教育を幼児期から大学(大学院)まで実施する9.発達障害に詳しいジョブコーチを養成する

10.発達障害者の集まる場を作る

28

成人期に必要なスキル

SSTからLSTへ

29

社会性の指導?

30

青年期・成人期へつなげていくために

ソーシャルスキルの再検討

ライフスキルを中心に

→ASDの人に対人関係スキルを強要しない→友だち100人できなくてもいい→人に頼るスキルも場合によっては必要

31

ソーシャル・スキルとは(ウィキペディア)

その場の雰囲気がわかる

自分の発した言動を相手がどのように受け取るかを想像する

自分の考えを上手に相手に伝えることができる

ASD(自閉症スペクトラム)の人が学習することに限界がある

32

SSTにおける対人技能を教えたトラブル

化粧品を買わされた、宗教団体に入らされた、万引きの仲間にされた、さら金に連れて行かれて判子を押された、訪問販売で自己破産をした

原因は、何をどのようにしたらいいかわからなかった、見通しがもてなかった

自立とは何でも一人でできることか?

本人のニーズと適切なサポートで自立

人に頼ることも必要

33

ライフスキルのチェック

34

日々のライフスキルチェック①

1.朝決まった時間に自分で起きることができる2.顔を洗うことができる3.朝食を(作り)取ることができる4.歯を磨くことができる5.(男性の場合)髭を剃ることができる6.(女性の場合)化粧をすることができる7.髪をセットすることができる8.適切な服に着替えることができる(靴、靴下も含む)9.家に鍵をかけることができる

10.乗り物を利用することができる(車の場合は運転ができる)

35

日々のライフスキルチェック②

11.適切に職場(学校)等の目的地に着くことができる12.タイムカードを押すことができる13.(場合によっては)適切な職場の衣服に着替えることができる14.上司、同僚に「おはようございます」の挨拶ができる15.昼食を取ることができる16.お昼休みに適切な余暇(タバコをすう、コーヒーを飲むなど)を取ることができる17.仕事が終わった後にタイムカードを押すことができる18.時に応じて残業をすることができる19.仕事が終わった後に「失礼します」の挨拶をすることができる20.スーパーやコンビニで買い物をすることができる

36

日々のライフスキルチェック③

21.ATMの利用ができる22.帰宅すると手を洗うことができる23.夕食をとることができる(自炊の場合は食器を洗うことができる)24.入浴が出きる(洗髪も含む)25.パジャマなどの部屋着に着替えることが出きる26.テレビを見たりCDを聞いたり(ゲームや読書)余暇を楽しむことができる27.寝る前に歯を磨くことが出きる28.適切な時間に就寝することが出きる

37

一週間のライフスキル

1.土、日に適切な余暇を楽しむことができる2.爪を切ることができる3.必要なものをまとめて買うことができる4.洗濯ができる(コインランドリーを使うことができる)

5.ゴミを出すことができる6.掃除ができる

38

一ヶ月のライフスキル

1.散髪や美容院に行くことができる2.部屋代、携帯・電気・ガス・水道代を支払う3.(旅行など)の余暇を楽しむことができる

39

一年のライフスキル

1.歯医者に行くことができる2.健康診断を受けることができる3.車を利用している場合は点検を受けることができる

40

その他のライフスキル

1.必要に応じて病院にかかることができる

2.給与を適切に分けて使用できる3.貯金ができる4.高額なもの(テレビ、冷蔵庫、エアコンなど)を計画的に購入することができる5.新聞の勧誘や宗教団体、他の商品の勧誘などを適切に断ることができる6.近所の人に挨拶ができる7.必要に応じた買い物(メガネやコンタクト、医薬品など)ができる8.何か問題が生じたときに保護者等の支援者に連絡することができる9.ストレスや嫌なことが生じたときに自分で気分を落ち着かせることができる10.その他必要に応じたライフスキル(緊急時の対応など)ができる

41

まとめ

42

訳のわからない目標設定をしない

人の気持ちをくんで行動する

場の空気を読むようにする

感覚過敏をなくす

こだわりをなくす

思ったことを自分の言葉で適切に表現する

誰とでも仲良くする

コミュニケーション能力を伸ばす

社会性をのばす

43

目標を設定する際

障害特性を把握した目標設定か

×集団に参加する、対人行動を高める

具体性のある目標か

×社会性を高める、みんなと仲良くする

子どもが達成可能な目標か

×こだわりをなくす、相手の目を見て話す

アセスメントに基づいた目標か

×経験論、精神論に基づいた独りよがり

環境との相互作用で検証した目標か

×音に慣れさせる、不器用さをなくす、耳押さえをなくす

将来の社会参加、自立に関連する目標か

×報告をきちんとする、読み書き計算能力を高める

44

大人の現実社会を知った目標設定

言葉の指導よりもコミュニケーション

一人で過ごす力を身につける

計算が難しい場合は電卓の使用を

ATMや携帯、パソコンは今後必要なアイテム 定型発達の人が液体とすると自閉症スペクトラムの人は固形 よって、器を検討する

得意なところ、好きなところを発見する

すべてできなくてもいい

彼らに楽しいと思わせる環境作り

45

事 例

46

個別の事例につき掲載しておりません

最後になぜライフスキルなのかというと..

一人の知的障害青年の話を聞いてください

47

どうもご静聴ありがとうございました

宇都宮大学教育学部特別支援教育教授 Ph.D.自閉症スペクトラム支援士Expert

梅永雄二

TODDS(とちぎ発達障害研究会) http://homepage3.nifty.com/todds

48

Recommended